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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E03C
管理番号 1067005
審判番号 不服2000-20884  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-01-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-28 
確定日 2002-11-13 
事件の表示 平成8年特許願第188278号「排水トラップ」拒絶査定に対する審判事件〔平成10年1月20日出願公開、特開平10-18381、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年6月28日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」、「本願発明2」という。)は、平成13年1月24日付け手続補正書により補正された明細書、及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】 シンク面所定箇所に、少なくとも1つの段部が形成され、前記段部の側面に開口が、さらに段部の上部および下部のシンク面に排水部としての開口が延設されている流し台用シンクの排水トラップであって、前記排水トラップの上縁部は、前記段部の側面の開口と、段部の上部および下部に形成された開口の周囲を全て水封状態に当接できる形状になっていると共に、前記排水トラップ内にゴミカゴを着脱可能に設け、かつ前記排水トラップ上面には、上部のシンク面の一部を構成する取外し可能な覆い蓋を載置したことを特徴とする排水トラップ。
【請求項2】 前記覆い蓋とゴミカゴが一体に形成されている請求項1に記載の排水トラップ。」

2.引用刊行物に記載の発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭52-1121号(実開昭53-96456号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「本考案は流し台のシンク(水槽)など水槽の底部に排水溝を設け、排水および廃物処理の効率化をはかるものである。」(1頁7〜9行)
(イ)「図1に示す如くシンクの底部(4)の周囲に排水溝(2)を設ける。又、第2図、第3図の如く底部(4)は水平とし、排水溝(2)とともに排水口(3)の方へ傾斜をさせる。このような構造により拡散した水はほとんど戻らないで周囲の排水溝に流れて、水はけがよく残留廃物も少なく、且つ残留廃物の水流しによる処理が簡単に出来る。」(1頁16行〜2頁3行)
これらの記載及び第1図ないし第3図の記載からみて、引用刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「シンクの底部の周囲に、排水溝が形成され、該排水溝の下部のシンク面に排水口が設けられ、シンク底部を排水溝とともに排水口の方へ傾斜させる構造とした流し台のシンク」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願平3-59770号(実開平5-14263号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ウ)「浴槽と洗い場とを一体的に連ねてなるユニットバスにおいて、前記洗い場の浴槽側に、凹状の排水口が設けられているとともに、浴槽エプロンに沿って前記排水口へ湯水を集める排水溝が設けられ、さらに、前記排水口に洗い場とほぼ面一の高さになる排水口カバーが取り付けられ、排水口カバーはその排水溝側を除いて側壁が設けられた蓋のようなものからなり、かつ、排水溝における排水口への入口部分に凹みが設けられている、ことを特徴とするユニットバス。」(実用新案登録請求の範囲)
(エ)「排水溝における排水口への入口部分に設けてある凹みによって、排水口カバーと排水溝の排水口入口部分とで形成する湯水導入開口の面積が大きくなるので、水はけがスムーズとなる。」(段落【0009】)

3.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「排水溝」、及び「排水口」が、本願発明1の「段部」、及び「排水部としての開口」に、それぞれ相当する。また、刊行物1に記載のものは、シンク底部を排水溝とともに排水口の方へ傾斜させることにより、水を排水溝へ滞りなく導いており、排水のトラップ機能を果たしていると認められる。したがって、両者は、「シンク面所定箇所に、少なくとも1つの段部が形成され、段部の下部のシンク面に排水部としての開口が設けられている流し台用シンクの排水トラップ」の点で一致し、次の3点で相違する。
相違点1:本願発明1の排水トラップは、段部の側面、さらに段部の上部および下部のシンク面に排水部としての開口が延設されている流し台用シンクの排水トラップであって、その上縁部は、前記段部の側面の開口と、段部の上部および下部に形成された開口の周囲を全て水封状態に当接できる形状になっているのに対し、刊行物1に記載の発明の排水トラップの上縁部は、そのような形状になっていない点。
相違点2:本願発明1は、排水トラップ内にゴミカゴを着脱可能に設けているのに対し、刊行物1に記載の発明は、排水トラップ内にゴミカゴが設けられていない点。
相違点3:本願発明1は、排水トラップ上面に上部のシンク面の一部を構成する取外し可能な覆い蓋を載置したのに対し、刊行物1に記載の発明は、そのような覆い蓋が設けられていない点。

そこで、上記相違点について検討すると、刊行物2には、「排水溝」(本願発明1の「段部」に相当)の側面、さらにその上部および下部に排水部としての開口を延設する点、及び排水トラップ上面に洗い場面の一部を構成する「排水口カバー」(本願発明1の「覆い蓋」に相当)を設ける点が記載されている。しかし、上記相違点1に摘記した本願発明1の構成のうち、「排水トラップの上縁部を、段部の側面の開口と、段部の上部および下部に形成された開口の周囲を全て水封状態に当接できる形状」にするという事項は、上記刊行物2に記載も示唆もされていない。そして、当該事項により本願発明1は、排水トラップの上縁部が、シンク面所定箇所に形成される開口の形状に合わせて形成されるため、シンク面の開口周縁に特別な加工を施すことなく、開口下方を排水トラップにより水封状態で容易に覆うことが可能となるという、刊行物1及び2に記載の発明からは予測し得ない顕著な効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
なお、排水トラップ内にゴミカゴを着脱可能に設けること、及び、排水トラップ上面に上部のシンク面の一部を構成する取外し可能な覆い蓋を載置することは、従来から広く一般に行なわれている慣用手段にすぎず、そのような慣用手段により新たな作用効果を奏するとも認められないので、相違点2,3に摘記した本願発明1の構成は、格別なものではない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1を引用してさらに構成を限定したものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-10-22 
出願番号 特願平8-188278
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E03C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 赤木 啓二横井 巨人  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 藤原 伸二
鈴木 憲子
発明の名称 排水トラップ  
代理人 日高 一樹  
代理人 重信 和男  
代理人 渡邉 知子  

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