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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1067052
審判番号 不服2000-1942  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-08-01 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-02-17 
確定日 2002-10-09 
事件の表示 平成 1年特許願第316088号「転写箔及び賦形フィルム」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年 8月 1日出願公開、特開平 3-177474]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1. 手続きの経緯、本願発明
本願は、平成1年12月5日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明(以下、「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、平成8年12月4日及び平成11年7月26日に適法に補正された明細書の記載からみて、平成11年7月26日付手続補正書の特許請求の範囲請求項1〜3に記載された以下のとおりのものである。
『(1)ポリエチレンナフタレートからなる基材フィルムの表面に装飾層を設けたことを特長とするプレス成形同時転写又は射出成形同時転写用の転写箔。
(2)基材フィルムと装飾層との間に離型層を設けることを特長とする請求項1記載の転写箔。
(3)装飾層として金属薄膜層を設けた請求項2記載の転写箔。』

2.引用文献等
これに対して、原査定の拒絶の理由(平成11年9月2日付)において引用された下記引用文献1〜2及び同周知技術として引用された下記引用文献3〜5には、それぞれ次の点が記載されている。

(1)引用文献1:特開平1-130999号公報(拒絶の理由における引用文献1)
(1-a)『基体シート(1)上に各種デザイン層や接着層が形成された転写材において、第1金属蒸着層(5)・透明樹脂層(6)・第2金属蒸着層(7)からなる金属層(10)を一構成層として含むことを特徴とする蒸着転写材。』(特許請求の範囲第1項)、
(1-b)『基体シート1としては、ポリエチレンテレフタレート・・・など、通常の転写材の基体シートとして用いられているものを使用する。 基体シート1に剥離性を付与するためには、この基体シート1にシリコンコートやワックスコートを施したり、剥離層2を設けるとよい。剥離層2は、基体シート1の上に全面または部分的に設けられ、転写後に基体シート1が剥離除去された後は、金属蒸着層5・7を保護する機能をも有するものである。』(2頁右上欄11行〜同左下欄3行)、
(1-c)『上記の蒸着転写材を用いてインモールド成型を行なうには、まず蒸着転写材を射出成型用金型内の所定の位置に固定する。固定する金型は固定側金型であっても可動側金型であってもよい。この際、蒸着転写材の接着層側が後述する射出成型用樹脂側になるように固定する。』(3頁左下欄1〜6行)、
(1-d)『このようにして金型内に樹脂を射出することによって蒸着転写材は成型品表面に密着し、冷却・金型開放・成型物取り外しを行なう。ベースシートを剥離してインモールド成型品が得られる。』(4頁左上欄4〜7行)

(2)引用文献2:特開平1-141014号公報(同引用文献3)
(2-a)『ヘアライン意匠を設けたい部分にヘアライン形状の凹凸がその裏面に形成された基材シート(1)表面に剥離層(3)・図柄層(4)・接着層(5)が順次形成された転写材(6)を、転写材(6)の接着層(5)側が射出成形用の樹脂(7)と接するように射出成型用の金型(8)内の所定の位置に固定し、金型(8)を閉じ、金型(8)内に射出成型用の樹脂(7)を充填することを特徴とするヘアライン表面を有するインモールド成型品の製造方法。』(特許請求の範囲第1項)、
(2-b)『基体シート1としては、その裏面にヘアライン形状の凹凸を有するものを用いる。・・・具体的には、ポリエチレンテレフタレート・・・などのプラスチックフィルム・・・など通常の転写材の基体シートとして用いられるものの裏面に、サンドペーパーや不織布などで表面を引っかく物理的加工法などによりヘアライン形状の凹凸が設けられたものを使用するとよい。』(2頁左下欄下から4行〜同右下欄8行)、
(2-c)『剥離層3は、基体シート1の凹凸を有する面と逆の面上に全面あるいは必要に応じて部分的に設けられる。転写後は基体シート1から剥離し、基体シート1の凹凸に対応して剥離層3表面に基体シート1と逆パターンの凹凸が形成されるものである。』(3頁左上欄1〜6行)、
(2-d)『図柄層4は、真空蒸着法やスパッタリング法・イオンプレーティング法などで形成されたアルミニウムやニッケルなどの金属薄膜層を含むものであってもよい。』(3頁右上欄5〜8行)、
(2-e)『上記の転写材6を用いてインモールド成型を行なうには、まず転写材6を射出成型用金型8内の所定の位置に固定する。固定する金型8は固定側金型8であっても可動側金型8であってもよい。この際、転写材6の接着層側が後述する射出成型用の樹脂7側と接するようになるよう固定する。』(3頁左下欄5〜10行)

(3)引用文献3:特開昭62-113529号公報(同引用文献4)
(3-a)『一方、近年ポリエチレンナフタレートの二軸配向フイルムが知られるようになり、該フイルムはかかるヤング率や耐熱寸法安定性の点でポリエチレンテレフタレートのそれより優れていることが明らかにされている。』(2頁左上欄下から2行〜同右上欄3行)、
(3-b)『本発明はポリエチレンテレフタレートに比べ機械的特性、熱的特性に優れたポリエチレンナフタレートフイルムを磁気記録媒体の基材として用いる』(6頁左上欄13〜16行)

(4)引用文献4:特開昭62-111719号公報(同引用文献5)
(4-a)『本発明は感熱転写材用フイルムに関する。更に詳しくは、縦方向のヤング率が高く、感熱転写材の薄膜化可能で耐熱性があり印字の鮮明な感熱転写材用ポリエチレン-2,6-ナフタレートフイルムに関する。』(1頁左下欄下から6〜2行)、
(4-b)『このようにして得たフイルムは、ポリエチレンテレフタレートに比べて、耐熱性に優れると共に極薄化可能であり、感熱転写材として好適に使用することができる。』(4頁左下欄3〜6行)

(5)引用文献5:特開昭62-116945号公報(同引用文献6)
(5-a)『180℃における飽和収縮率が縦横共に0.3%以下であり、ヤング率が縦横共に600kg/mm2以上であるポリエチレン-2,6-ナフタレートフイルムからなることを特徴とする電子写真用フイルム。』(特許請求の範囲第1項)、
(5-b)『従来のOHPフイルム等はポリエチレンテレフタレートを基材とするものであり、このフイルムは、寸法安定性の点及びフイルムの腰の点で必ずしも充分とは言えない。特に原稿を転写するに際し、既存の複写機を用いる場合トナーの固定ゾーンにおいて180℃以上の温度に曝されるためフイルムの収縮をきたし、また加熱されたフイルムは一般に波打つようになつて平面性が著しく阻害される結果、OHP用フイルムの場合には、スクリーンに投影される像が歪んで見にくくなる。』(1頁右下欄9〜19行)、
(5-c)『本発明の目的は、フイルム単独で用いた時でも、複写後波打ちがなく、転写性が良好かつシートの給送がスムーズに行なわれる電子写真用フイルムを提供することにある。』(2頁左上欄下から4〜最下行)

3.当審の判断
(1)対比
上記2.の摘示記載(1-a)〜(1-d)ならびに(2-a)〜(2-e)を総合すると、引用文献1には、
「ポリチレンテレフタレートからなる基体シート上に金属蒸着層を設け、基体シートと金属蒸着層との間に剥離層を設けた、射出成形同時転写用の蒸着転写材。」(以下、「引用文献1の発明」という。)が、また引用文献2には、
「ポリエチレンテレフタレートからなる基体シート表面に、剥離層・金属薄膜層からなる図柄層・接着層が順次形成された、射出成形同時転写用の転写材。」(同、「引用文献2の発明」という。)の発明が記載されているものと認められる。
そこで、本願発明3と引用文献1及び2の発明とを対比すると、引用文献1及び2の発明における「基体シート」は本願発明3の「基材フィルム」に、引用文献1の発明における「金属蒸着層」ならびに引用文献2の発明における「金属薄膜層からなる図柄層」は本願発明3の装飾層としての「金属薄膜層」に、引用文献1の発明における「蒸着転写材」ならびに引用文献2の発明における「転写材」は本願発明3の「転写箔」にそれぞれ相当するから、両者は、
「基材フィルムの表面に装飾層として金属薄膜層を設け、基材フィルムと装飾層との間に離型層を設けたことを特長とする射出成形同時転写用の転写箔。」
である点で一致し、
引用文献1あるいは2の発明における基材フィルムがポリエチレンテレフタレートであるのに対し、本願発明3の基材フィルムはポリエチレンナフタレートである点で相違する。

(2)相違点についての検討
上記引用文献3〜5の記載から明らかなように、ポリエチレンテレフタレートフィルムに比べ耐熱性や寸法安定性等の面でポリエチレンナフタレートフィルムが優れていることは、本願出願前に周知である。そして、射出成形同時転写用の転写箔として高温状況下における耐熱寸法安定性を考慮することは、当業者であれば自明の課題である。
さすれば、引用文献1及び2の発明のポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムより構成される転写箔について、耐熱寸法安定性を考慮しつつ上記周知技術を適用すること、すなわちポリエチレンテレフタレートに代えポリエチレンナフタレートを適用して本願発明3のようにすることは、当業者が格別困難なく想到し得る程度のことである。しかも、本件発明3が、特に予測し難い効果を発揮しているものとも認められない。
また、本願発明1及び2は、本願発明3により引用される発明であるから、上述と同じ理由により当業者が容易に成し得たものである。
なお、本件審判請求人は、審判請求書の中で、「引用例4〜7(当審注:上記周知技術のことと認められる。)は、本件発明転写箔とは技術分野が相違し、利用形態が本件発明転写箔とは類似性はなく、ポリエチレンナフタレートの耐熱性の技術的意味が大きく異なるのは明らかである。」と主張するが、引用文献3〜5に記載のフィルムも、本願発明3のそれと同様に、高温環境下で使用されるプラスチックフィルムが従来有していた課題を解決するためのものであり、しかも引用文献1及び2の発明へ上記周知技術を適用することを阻害する要因は見出せないから、審判請求人の上記主張を採用することはできない。

4.むすび
したがって、本願発明1〜3は、引用文献1あるいは2記載の発明及び引用文献3〜5の記載に基づく周知技術から当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-07 
結審通知日 2002-08-07 
審決日 2002-08-28 
出願番号 特願平1-316088
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤井 勲野田 定文  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 克彦
須藤 康洋
発明の名称 転写箔及び賦形フィルム  
代理人 細井 勇  

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