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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1067248
審判番号 審判1999-10490  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-24 
確定日 2002-11-06 
事件の表示 平成 7年特許願第255486号「コンピューター」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 4月16日出願公開、特開平 8-101725]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、昭和63年9月6日に特許出願した特願昭63-222743号の一部を平成7年9月6日に新たな特許出願(特願平7-255486号)としたものであり、その発明は、平成7年10月9日付け、平成10年12月17日付け、及び、平成11年7月23日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりの「コンピューター」であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。

「【請求項1】 実行中の処理を中断し、その後、中断した時点から再開可
能なコンピューターであって、
コンピューターの処理を中断する要求を検出する退避処理開始検出手段と、
該退避処理開始検出手段が前記中断の要求を検出したとき、前記コンピューターの処理を中断し、該コンピューターの処理の続行に必要なシステム状態として、少なくともメインメモリの内容、CPUのステータスおよび入出力部の設定を、不揮発的に記憶する外部記憶装置に出力するシステム状態退避手段と、
処理の再開が要求された場合には、前記外部記憶装置に記憶されたシステムの状態を読み出し、前記コンピューターを前記処理の中断時の状態に回復するシステム状態回復手段と、
該中断時の状態に回復した後の処理を予め記憶する記憶手段と、
前記システム状態回復手段により前記コンピューターの前記処理の中断時の状態への回復がなされたとき、前記記憶手段に予め記憶した処理に基づいて、前記システム状態を読み出してコンピューターを中断時の状態に回復した後の処理の選択肢を表示する選択肢表示手段と、該選択肢に対する選択を受け付ける選択受付手段と、該選択された選択肢に従って処理を続行する処理続行手段と、を有する回復後処理手段と
を備えたコンピューター。」

2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-255440号公報(以下、「引用例1」という。)は、プログラム中断制御方式に関するもので、図面と共に次の技術事項が記載されている。
(i) 「技術分野
本発明は、プログラム中断制御方式に関し、特にマイクロプロセッサを用いたマイクロプログラム制御によりデータを処理する装置におけるプログラム中断再開制御方式に関する。」(第1頁第17〜20行)
(ii)「発明の構成
本発明によるプログラム中断制御方式は、中断指示に応答して主記憶装置に展開されている利用者プログラムの占有している当該主記憶装置内の記憶内容、次に実行すべき利用者プログラムのアドレス情報、スタック情報及び入出力装置制御情報を読込む手段と、この読込んだこれ等各情報を外部記憶装置に書込む手段とを含み、この書込み終了後に利用者プログラムの実行を強制的に終了する・・・。
本発明の他のプログラム中断制御方式は、上記構成の他に更に、利用者プログラムの再開指示に応答して外部記憶装置に書込まれている当該利用者プログラムを主記憶装置内に取込む手段と、次に実行を開始すべき利用者プログラムのアドレス情報、スタック情報及び入出力制御情報を元にして中断直前の利用者プログラムの環境を設定する手段とを含み、利用者プログラムの中断及びこの中断直前に続く実行再開を可能としてなる・・・。」(第2頁右上欄第7行〜同頁左下欄第6行)
(iii)「実施例
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
第1図は本発明の実施例の概略ブロック図であり、主記憶装置1、プログラム中断処理部2、プログラム再開処理部3、入出力装置制御部4及び入出力端末装置5とからなる。
入出力端末装置5としては、例えば図示する如く、ワークステーション装置、フロッピィディスク装置、磁気テープ装置及び磁気ディスク装置等からなっている。
第2図は、第1図におけるプログラム中断処理部2における中断処理を制御するプログラムの動作例である。中断処理プログラムが開始されると、主記憶装置の領域管理情報を参照し、実行中の利用者プログラムに割当てられている主記憶装置のアドレスと大きさを求める(ステップ10)。利用者プログラムが次に実行すべき命令のアドレスを求める(ステップ11)とともに、この利用者プログラムのスタック情報を求める(ステップ12)。また、利用者プログラムが入出力装置を使用中か否か調べ(ステップ13)、使用中であれば現在入出力動作の終了していないものがあるか調べる(ステップ14)。入出力動作が終了していなければ終了するまで待ち、終了した時点で入出力装置の制御情報を取込む(ステップ15)。
利用者プログラムに関する情報の取込みが終了するとこれらの情報を記録するために外部記憶装置に対して領域を確保する(ステップ16)。外部記憶装置の領域確保が終了すると、利用者プログラムに割当てられている主記憶の内容を確保した外部記憶装置へ書込む(ステップ17)。同様に、次に実行すべき利用者プログラムの命令のアドレス情報(ステップ18)、入出力装置の制御情報(ステップ19)、利用者プログラムのスタック情報(ステップ20)、主記憶管理情報(ステップ21)を外部記憶装置に書込み、外部記憶装置の索引領域にこの利用者プログラムの名前を登録(ステップ22)し、利用者プログラムを終了(ステップ23)させ処理を終了する。
・・・次は、中断した利用者プログラムをプログラム再開処理部3の動作について説明する。第2図は、本発明の中断した利用者プログラムの再開を制御するプログラムの動作例である。再開処理プログラムが開始されると、外部記憶装置の索引を取込み(ステップ24)、目的の利用者プログラム名Aが登録されているか調べる(ステップ25)。Aが登録されていれば外部記憶装置に書込まれている主記憶管理情報を読込み(ステップ26)、Aに割当てられていた主記憶領域の大きさを求め、現在空き領域があるかどうか判断(ステップ27)し、空き領域があれば主記憶に領域を確保する(ステップ28)。
次に、Aのスタック情報を読込み(ステップ29)、スタックアドレスとスタックの内容を中断時の状態に設定(ステップ30)し、そして、入出力制御情報を読込み(ステップ31)、入出力装置を使用中であれば(ステップ32)入出力装置を中断時の状態に設定する(ステップ33)。
以上、Aの中断時の環境設定が終了すると、次にAの命令アドレス情報を読込む(ステップ34)と共に中断時に外部記憶装置に退避したAの内容をマイクロプロセッサに設定(ステップ36)して処理を終了する。処理が終了するとAが中断時の次の命令から実行され、中断時の処理途中での結果が保障される。」(第2頁左下欄第7行〜第3頁右上欄第11行)
(iv)「例えば、あるデータの処理に長時間を必要とするプログラムをデータ処理装置上で実行したとき、偶然にも処理が半分経過した時点でデータ処理装置の電源を切断する必要性が生じたとする。・・・本発明では、処理途中の結果が保障されるため処理効率を向上させることができる。
・・・いまAプログラム実行中に緊急プログラムBを実行しなければならない事態が発生し、たまたまこの緊急プログラムBの必要とする主記憶領域が大きく、Aと同時に実行できないとする。・・・本発明では直ちにAを中断してBを実行できることになるのである。」(第3頁右上欄第12行〜同頁左下欄第9行)

同じく引用された特開昭62-169218号(以下、「引用例2」という。)は、情報処理システムのアプリケーション中断再開装置に関するもので、図面と共に次の技術事項が記載されている。
(i) 「本発明は、コンピュータ・システムの電源オン・オフに関し、さらに具体的には、電源オフ・オン・サイクル中に、コンピュータ・システムで実行中のソフトウェア・アプリケーションを中断および再開する能力に関するものである。」(第1頁右下欄第3〜7行)
(ii)「本発明の一つの目的は、電源オフ/オン・サイクル中に、コンピュータ・システムで実行中のソフトウェア・プログラムを中断および再開するための装置および方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、電源オフ前にソフトウェア・アプリケーションが実行されていたのと厳密に同じ点からソフトウェア・アプリケーションを再開するための装置および方法を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、電源オフ動作中に、コンピュータ・システム内の全てのメモリおよび入出力装置の状態を保管するための装置および方法を提供することにある。」(第2頁右下欄第6〜19行)
(iii)「次に電源オン/オフ・サイクル中の中断および再開動作について、それぞれ第3A図ないし第3C図および第4A図ないし第4E図を参照しながらさらに詳細に説明する。操作に当たって、電源オン/オフ・スイッチ41を押すと、ほぼ2秒の時間内に中断NMIが発生して、システムの現状態を保管する動作が開始される。ステップ84に示すように、電源スイッチ41を押した後最初に実行される操作は、CPU11の全てのレジスタの内容を保管することである。・・(中略)・・
・・・「強制」再開が設定されていると、ステップ87で読み取られたシステム・プロフィル域中の情報が無効化されて、システムがその中断された実行点から再開できる。・・・本明細書に開示する好ましい実施例では、電力はバッテリーからシステムに供給される。すなわち、電源42はバッテリーである。このようにすると、アプリケーション・プログラムの実行中にバッテリのレベルが低くなった場合に、復元できないデータを失うことなく、システムの状態を保管することができる。・・・判断ブロック88または判断ブロック89のどちらかに対する答が肯定の場合は、ステップ91に示すように、RAM35内の特別保管域が活動化される。・・・
・・・ステップ95に続いて幾つかの機能が実行される。ステップ96に示すように、CPU11内のスタック・セグメント・レジスタおよびスタック・ポインタ・レジスタの内容が保管される。ステップ97および98に示すように、表示制御装置14の状態およびシステム・タイマ18の状態がそれぞれ保管される。ステップ101および102に示すように、割込み制御装置12およびDMA制御装置13の両方のレジスタの内容が保管される。・・・最後に、ステップ105に示すように、キーボード制御装置17のレジスタの状態が保管される。・・・
第3C図のステップ106に示すように、システムの状態の保管が続けられる。・・・ステップ107および108に示すように、伝送すべき情報を含むレジスタの内容が、電源切断時またはシステム中断時に保管される。・・・」(第4頁左上欄第3行〜第5頁右上欄第8行)
(iv)「第4A図ないし第4E図は、電源オン再開動作中に実行される操作および機能を示す。電源オン再開動作がうまくいくと、コンピュータ・システム上で実行されていたアプリケーション・プログラムが、電源切断中断動作時にその実行が中止されたのと厳密に同じ点から実行を開始できることにもう一度留意すべきである。ステップ113に示すように、オペレータがオン/オフ・スイッチ41を押して・・・システムに再び電力が供給される。・・・リセット・フラグがセットされていなかった場合、再開処理が最後の実行点から始まる。・・・
・・・判断ブロック125(第4B図参照)で、中断フラグがセットされているか否かについて判定が行われる。中断フラグがセットされていなかった場合は、システムの状態はその最初の状態に復元される。・・・
中断されたアプリケーション・プログラムを前の実行点から再開すべき場合、ステップ125の肯定分岐に進む。ステップ127で、RAM15の主メモリを大幅に変更することなく、またフォント/中断RAM35および表示RAM34を変更することなく、電源オン自己試験(POST)が実行される。しかし、判断ブロック133に示すように何らかの重大なエラーが発見された場合、エラーが表示され、システムは運転停止される。重大なエラーが発見されなかった場合は、全ての割込みが使用禁止になり、RAM35内の中断保管域がアクセスされて、再開プロセスが続行する。さらに、ステップ135ないし137に示すように、表示制御装置14のレジスタ、およびシステム・タイマ18がその以前の状態に復元される。再開プロセスは第4C図に示すステップ139に続く。この時点で、割込み制御装置12が復元され、POSTが使用したRAM15の主記憶域も復元される。さらに、キーボード20のキー押上げフラッグがクリアされ、キーボード28の保留中のキーが除去され、システム構成情報が、電源オフの間に生じた変更にもとづいて更新される。最後に、キーボード制御装置17のレジスタが復元される。
・・・次に、CPU11のスタック・セグメント・レジスタおよびスタック・ポインタ・レジスタが復元され、・・・続いてプリンタ20が使用可能になる。・・・」(第5頁右上欄第9行〜第6頁右上欄第20行)
(v) 「再開動作を終了するために実行される最後の動作を、第4E図に詳しく示す。
ステップ157で、ディスケット26および27に関する交換フラッグがセットされ、書込み操作開始前に、適切なディスケットがディスケット駆動機構26または27の一方にロードされているかどうかを、オペレーティング・システムに強制的にチェックさせる。これは、書き込まれるディスケットが、中断された操作の開始時点で書き込まれていたディスケットと同じであることを確認するためである。ディスケット制御装置19の状態は保管し、復元することができるが、本発明の最良の態様では・・・オペレーティング・システムがディスケットの妥当性を検査し、操作を再試行する。続いて、オペレーティング・システム・プログラムに対して再開呼出しが出され、それによって、プリンタ20を以前の状態に復元することが可能になり、実時間クロック21からの現在の時刻と日付を更新することも可能になる。このようにすることにより、正しい時刻と日付を表示装置25上に表示することができる。CPU11内の全てのレジスタがスタックから復元され、ビデオ・データを表示装置25上に表示させる信号が表示制御装置14に供給される。最後に、中断割込みからの復帰が実行され、中断されたアプリケーション・プログラムが以前の実行点から再開される。」(第6頁左下欄第4行〜同頁右下欄第11行)
(vi)「この発明によれば電源遮断時に全能動レジスタの内容および全I/O装置の状態を保管するようにしているので、アプリケーションの実行をまさに電源遮断時の状態から再開させることができる。」(第7頁左下欄第16〜20行)

3.対 比
本願発明と上記引用例1に記載されたものとを対比する。引用例1に記載されたものは、あるデータの処理が途中まで経過した時点でデータ処理装置の電源を切断する必要性が生じた場合や、Aプログラム実行中に緊急プログラムBを実行しなければならない事態が生じた場合、すなわちコンピュータの処理を中断せざるを得ない事態が生じたときプログラムの中断処理を行う(中断処理プログラムを開始する)ものである(引用例1の上記記載事項(iv)を参照)から、コンピュータの処理を中断する要求を検出する手段を備えるものであり、これは本願発明における「退避処理開始検出手段」に相当する。引用例1に記載されたものは、中断指示に応答して利用者プログラムの占有している主記憶装置(メインメモリ)内の記憶内容、次に実行すべき利用者プログラムのアドレス情報、スタック情報及び入出力装置制御情報を読み込む手段と、この読み込んだ各情報を外部記憶装置に書き込む手段とを備えるものであり(引用例1の上記記載事項(ii)、(iii)を参照)、ここで、「利用者プログラムのアドレス情報、スタック情報」はCPUの動作状態を示すものであるから、本願発明における「CPUのステータス」に、「入出力装置制御情報」は本願発明における「入出力部の設定」に、それぞれ相当し、いずれも「システム状態」を指すものである。また、上記「外部記憶装置」が不揮発性のものであることは明らかである。したがって、引用例1に記載されたものにおける上記「読み込み手段」及び「書き込み手段」は、本願発明における「システム状態退避手段」に相当する。引用例1に記載されたものは、再開処理プログラムが開始されると、外部記憶装置の索引を取込み(ステップ24)、目的の利用者プログラム名Aが登録されているか調べ(ステップ25)、Aが登録されていれば外部記憶装置に書込まれている主記憶管理情報を読込み(ステップ26)、Aに割当てられていた主記憶領域の大きさを求め、現在空き領域があるかどうか判断(ステップ27)し、空き領域があれば主記憶に領域を確保する(ステップ28)ものであり、次に、Aのスタック情報を読込み(ステップ29)、スタックアドレスとスタックの内容を中断時の状態に設定し(ステップ30)、そして、入出力制御情報を読込み(ステップ31)、入出力装置を使用中であれば(ステップ32)入出力装置を中断時の状態に設定する(ステップ33)ものである(引用例1の上記記載事項(iii)を参照)。ここで、「プログラムAのスタック情報、アドレス情報」は上記のように本願発明における「CPUのステータス」に、「入出力装置制御情報」は本願発明における「入出力部の設定」にそれぞれ相当し、これらは「外部記憶装置に記憶されたシステムの状態」といえるものであるから、その限りで本願発明における「コンピュータを処理の中断時の状態に回復するシステム状態回復手段」を有するものである。引用例1に記載されたものは、プログラムAの中断時の環境設定が終了すると、次にAの命令アドレス情報を読込む(ステップ34)と共に中断時に外部記憶装置に退避したAの内容をマイクロプロセッサに設定(ステップ36)して処理を終了し、処理が終了するとAが中断時の次の命令から実行されるものであり(引用例1の記載事項(iii)を参照)、このことは本願発明における「処理続行手段」に相当する。そうすると、本願発明と引用例1に記載されたものとは、次の点で一致する。
実行中の処理を中断し、その後、中断した時点から再開可能なコンピューターであって、
コンピューターの処理を中断する要求を検出する退避処理開姶検出手段と、
該退避処理開姶検出手段が前記中断の要求を検出したとき、前記コンピューターの処理を中断し、該コンピューターの処理の続行に必要なシステム状態として、少なくともメインメモリの内容、CPUのステータスおよび入出力部の設定を、不揮発的に記憶する外部記憶装置に出力するシステム状態退避手段と、
処理の再開が要求された場合には、前記外部記憶装置に記憶されたシステムの状態を読み出し、前記コンピューターを前記処理の中断時の状態に回復するシステム状態回復手段と、
前記システム状態回復手段により前記コンピューターの前記処理の中断時の状態への回復がなされたとき、前記システム状態を読み出して処理を続行する処理続行手段を有する回復後処理手段と
を備えたコンピューター。
そして、次の各点で相違する。
(a) 本願発明は、中断時の状態に回復した後の処理を予め記憶する記憶手段を備えるものであるのに対し、引用例1に記載されたものはこのような記憶手段を備えるものではない点(以下、「相違点a」という。)
(b) 回復後処理手段に関し、本願発明においては、記憶手段に予め記憶した処理に基づいて、システム状態を読み出してコンピューターを中断時の状態に回復した後の処理の選択肢を表示する選択肢表示手段と、該選択肢に対する選択を受け付ける選択受付手段と、該選択された選択肢に従って処理を続行する処理続行手段とを有するものであるのに対し、引用例1に記載されたものにおいては、処理を続行するものであるが、上記選択肢表示手段、選択肢受付手段について言及されていない点(以下、「相違点b」という。)。

4.当審の判断
そこで、上記各相違点について検討する。
相違点a、bについて
コンピュータ処理において、電源オン動作後、次の処理の選択肢を表示して、選択を受け付け、選択された選択肢に従って次の処理に移行すること自体は本願出願前に周知の技術であり(必要があれば、特開昭55-52138号公報、特開昭62-236018号公報を参照されたい。)、この場合上記(次の)処理は記憶手段に記憶されているものであることは明らかである。引用例2に記載されたものは、電源オン再開動作実行時、中断フラグがセットされているか否かについて判定が行われ(図4Bの判断ブロック125)、中間フラグがセットされている場合、重大なエラーが発見されたかどうか判定し(図4Bの判断ブロック133)、重大なエラーが発見されなかったとき、中断された実行点から再開プロセスを実行するものであり(引用例2の上記記載事項(iv)を参照)、電源オン再開動作実行時に必要な時期に処理の選択が行われることが開示されている。したがって、引用例1に記載されたものにおいて、電源オン再開動作実行時、中断時の状態に回復した後に処理の選択を行おうとする場合(本願明細書の記載によれば、上記回復した後の処理としては継続、継続中止の2つのうちから選択されるに過ぎないものであり、継続以外の選択として継続中止の選択については当業者が通常想起できる程度のものであって特に意義を有する選択肢とはいえず、回復した後の処理としてこのような選択肢を設けること自体は単なる設計事項である。)にも、上記周知技術のように次の(回復した後の)処理の選択肢を表示して、選択を受け付け、選択された選択肢に従って次の(回復した後の)処理に移行するように構成することは当業者が容易に想到できたものである。この場合、上記(回復した後の)処理は記憶手段に記憶されているものであることは明らかである(なお、請求の範囲中の「中断時の状態にコンピュータが回復した後の処理を予め記憶する手段(補正後の図面符号16-1)」については、本願の出願当初の明細書、図面には明示されていなかったものである。)。

そして、本願発明の奏する効果は、上記引用例1、2に記載されたものから当業者が十分に予測できるものであって格別のものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用例1、2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-08-12 
結審通知日 2002-08-23 
審決日 2002-09-03 
出願番号 特願平7-255486
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅原 浩二安島 智也  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 吉村 宅衛
千葉 輝久
発明の名称 コンピューター  
代理人 下出 隆史  
代理人 五十嵐 孝雄  

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