• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効としない F41B
管理番号 1067350
審判番号 審判1999-35186  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-04-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-04-20 
確定日 2001-04-18 
事件の表示 上記当事者間の特許第2561429号発明「自動弾丸供給機構付玩具銃」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.[手続の経緯]
本件特許第2561429号(請求項の数6、以下、「本件特許」という)は、平成5年10月8日の出願に係り、平成8年9月19日にその設定登録がされたが、これに対して、有限会社マルゼン及び株式会社ケーエスシーより、全請求項に関して特許無効の審判が請求されたものである。
2.[本件特許発明]
本件特許発明は、設定登録後の平成9年11月12日付で訂正請求され、その請求が認容された本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜6のそれぞれに記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。(なお、請求項1に関しては、便宜上、構成要件A〜Iに分説している。)
【請求項1】
「A グリップ部内に配される弾倉部と、
B 上記グリップ部内にガス導出通路部が連結されて配される蓄圧室と、
C 銃身部の後端部に設けられ、上記弾倉部における一端の近傍に配される装弾室と、
D 該装弾室に供給された弾丸を発射させるべく操作されるトリガに連動して上記ガス導出通路部を開閉制御する開閉弁部と、
E 上記銃身部に対して設けられ、該銃身部に沿って移動し得るものとされたスライダ部と、
F 該スライダ部における上記銃身部の後方となる部分内に設けられ、上記スライダ部と一体的に移動する部材である受圧部と、
G 上記装弾室と上記受圧部との間に配され、上記スライダ部の移動方向に沿う方向に移動可能とされた可動部材と、
H 該可動部材内において移動可能に設けられ、上記ガス導出通路部から上記可動部材内を通じて上記装弾室に至る第1のガス通路及び上記ガス導出通路部から上記可動部材内を通じて上記受圧部に至る第2のガス通路の夫々を開閉制御し、上記開閉弁部により上記ガス導出通路部が開状態とされている期間において、上記第1のガス通路を開状態として、上記蓄圧室からのガスを上記装弾室に供給する第1の状態から、上記第2のガス通路を開状態として、上記蓄圧室からのガスを上記受圧部に作用させて上記スライダ部を後退させ、それに伴う上記可動部材の後退を生じさせて、上記弾倉部の一端から上記装弾室への弾丸の供給のための準備を行う第2の状態に移行するガス通路制御部と、
I を備えて構成される自動弾丸供給機構付玩具銃。」(この請求項1に係る発明を、以下、「本件発明」という)
【請求項2】「受圧部が有底筒状部材における底部により形成され、ガス通路制御部が第2のガス通路を開状態とするとき、該第2のガス通路を通じたガスが、上記有底筒状部材における筒状部内側から上記底部に向けて噴射されることを特徴とする請求項1記載の自動弾丸供給機構付玩具銃。」
【請求項3】「可動部材における内部に第2のガス通路の一部を形成する通路部が形成された後方部分が、有底筒状部材における筒状部内に挿入される状態と該有底筒状部材における筒状部外に位置する状態とを選択的にとるものとされることを特徴とする請求項2記載の自動弾丸供給機構付玩具銃。」
【請求項4】「可動部材が、第1のガス通路の一部を形成する通路部及び第2のガス通路の一部を形成する通路部の夫々に連結されて上記第1及び第2のガス通路の夫々の一部を共通に形成する共通通路部が設けられたものとされるとともに、上記共通通路部が、上記可動部材の位置に応じて、上記第1及び第2のガス通路の夫々の一部を共通に形成して蓄圧室に通じるガス導出通路部に連結されるものとされ、上記ガス導出通路部における上記共通通路部に連結される連結部分が、上記蓄圧室側から上記共通通路部側に向けて付勢された可動筒状シール部材により形成されることを特徴とする請求項1記載の自動弾丸供給機構付玩具銃。」
【請求項5】「可動筒状シール部材の端面部が、可動部材の位置に応じて、該可動部材の外面部における共通通路部が開口する部分の周囲に当接せしめられることを特徴とする請求項4記載の自動弾丸供給機構付玩具銃。」
【請求項6】「可動部材が、第1のガス通路の一部を形成する通路部及び第2のガス通路の一部を形成する通路部の夫々に連結されて上記第1及び第2のガス通路の夫々の一部を共通に形成する共通通路部が設けられたものとされるとともに、上記共通通路部が、上記可動部材の位置に応じて、上記第1及び第2のガス通路の夫々の一部を共通に形成して蓄圧室に通じるガス導出通路部に連結されるものとされ、上記ガス導出通路部が、開閉弁部が設けられるとともに、上記蓄圧室と上記開閉弁部との間の部分、及び、上記開閉弁部と上記共通通路部に対する連結部分との間の部分の夫々が、略直線的に伸びるものとされることを特徴とする請求項1記載の自動弾丸供給機構付玩具銃。」
2.[当事者が提出した証拠]
これに対して、請求人が提出した成立に争いのない証拠と、その主要な記載事項の概要は、次のとおりである。
甲第1号証:本件特許登録原簿
甲第2号証:本件特許公報
甲第3号証:「Gun」1992年10月号(1992年10月1日、国際出版株式会社発行)第70、71頁
バレル(銃身)と、フィーディングポート(弾倉部)と、アッパー・ボルト及びローア・ボルトと、CO2ガスタンク(蓄圧室)と、を備えたペイントガンに関して、ガスはアッパー・ボルト先端のノズルに達して、「ペイント弾を加速、発射」した後、「ローア・ボルトを押し戻す」旨の記載がある。
甲第4号証:実開平5-8285号公報
グリップ部内に配される弾倉部と、同じくグリップ部内に配される蓄圧室を備えた玩具空気銃に関する記載がある。
甲第5号証:「月刊アームズマガジン」1993年2月号(平成5年2月1日、株式会社ホビージャパン発行)第90〜94頁
第94頁の「作動の説明」欄には、「ガス圧でピストンロッドが後退し、ピストンと連結されているスライドも後退する。全ストロークの約半分後退した所で、ピストンロッドがピストンシリンダーから抜け、ガスがチャンバー方向へ流れBB弾を飛ばす。」等の記載があり、シリンダー内で、ピストンシリンダーが摺動する状態や、ピストンシリンダー内でピストンロッドが摺動する状態が図示されている。
甲第6号証:実願平1-69416号(実開平3-14595号)のマイクロフィルム
グリップ部内に配される弾倉部と、同じくグリップ部内に配される蓄圧室を備えた玩具銃に関する記載がある。
甲第7号証:実願平1-103470号(実開平3-46787号)のマイクロフィルム
グリップ部内に配される弾倉部と、同じくグリップ部内に配される蓄圧室を備えたガス銃に関する記載がある。
甲第8号証:実願平1-92989号(実開平3-38592号)のマイクロフィルム
グリップ部内に配される弾倉部と、同じくグリップ部内に配される蓄圧室を備えたエアーガンに関する記載がある。
甲第9号証:「Gun」1986年5月号(1986年5月1日、国際出版株式会社発行)第112〜115頁
レシーバー(銃身部)の中をレシーバーに沿って移動するブリーチを備えたガスガンに関する記載があり、ブリーチ中には、ガスの通路を制御するノズルが設けられることが示されている。
甲第10号証:訴状(事件番号平成9年(ワ)第16900号)
甲第11号証:同事件についての東京地裁判決
一方、被請求人が提出した、成立に争いのない証拠は、次のとおりである。
乙第1号証:特許庁編「特許・実用新案 審査基準」(平成6年12月改訂版 発明協会発行)
3.[請求人の主張の概要]
上記の証拠をもとに、請求人は、本件発明の構成を、上記のとおりA〜Iの構成に分説し、そのうちのHの構成について、更に、3部分に分説すると、分説されたそれぞれの構成は、甲第3〜9号証のいずれかに記載されており、したがって、本件発明は、甲第3〜9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反して受けたもので、無効とされるべきである旨の主張をしている。
4.[被請求人の主張の概要]
これに対して、被請求人は本件発明をA〜Iの構成に分説することは適切といえるが、Hの構成を更に3分割して、各甲号証と対比するのは適切な判断とはいえず、また、乙第1号証として提出した特許庁の審査基準に照らしても、発明の構成の各部分が複数の引用文献にそれぞれ記載されているというのみでは、当該発明の進歩性を否定する理由とはならないのであるから、本件発明は、甲第3〜9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない旨の主張をしている。
5.[当審の判断]
本件発明の上記Hの「ガス通路制御部」の構成について、これを更に3分割するという、請求人の主張を更に詳細にみると、当該ガス通路制御部について、次の▲1▼〜▲3▼の要件に分説するというものである。
▲1▼ガス通路制御部は可動部材内において移動可能に設けられること、
▲2▼ガス通路制御部は、ガス導出通路部から上記可動部材内を通じて装弾室に至る第1のガス通路及び上記ガス導出通路部から上記可動部材内を通じて可動部材のガス受圧部に至る第2のガス通路の夫々を開閉制御するものであること、
▲3▼ガス通路制御部は、開閉弁部により上記ガス導出通路部が開状態とされている期間において、上記第1のガス通路を開状態として、上記蓄圧室からのガスを上記装弾室に供給する第1の状態から、上記第2のガス通路を開状態として、蓄圧室からのガスを上記受圧部に作用させてスライダ部を後退させ、それに伴う上記可動部材の後退を生じさせて、弾倉部の一端から上記装弾室への弾丸の供給のための準備を行う第2の状態に移行するものであること。
そして、請求人は本件発明のHの構成について上記各要件に分説した上で、甲第3号証記載の「アッパー・ボルト」は、本件発明の上記Gの「可動部材」に相当するものであると共に、当該アッパー・ボルトは、上記▲1▼の要件と、▲2▼の要件のうちの「可動部材内を通じて」の点とを除いて、残る要件は満たすものであり、当該アッパー・ボルトが満たさない上記▲1▼及び▲2▼の要件については、甲第5号証記載のピストンロッドや、甲第9号証記載のノズルなどがこれを満たすものであるし、甲第4号証には、装弾室に至る第1のガス通路と、スライダ部と一体の受圧部に至る第2のガス通路へのガス流入順序が逆である以外は、甲第5号証と同様に、本件発明のガス通路制御部と同じ作用をするピストンシリンダが記載されているから、結局、本件発明の上記G及びHの構成は、これら甲各号証記載の事項から、当業者が容易に想到できる旨の主張をしている。
そこでこの請求人の主張の当否について検討すると、特許請求の範囲の請求項1において、上記Gとして「可動部材」の構成を規定した上で、Hの「ガス通路制御部」に関する構成として、「該可動部材内において」という記載や、「上記可動部材内を通じて」という記載があることからみて、上記Gの可動部材と上記Hのガス通路制御部とは、互いに他の構成との関連において、それぞれが一体の構成をなすものとして規定されていることは明らかである。しかも、本件発明においては、上記Gとして規定される可動部材と、Hの上記▲1▼〜▲3▼の全ての要件を満たすガス通路制御部とが、互いの関連構成を有するものとして採用されることによって、ガス通路を極めて短くできると共に、装弾室に装填された弾丸の発射後にスライダ部の移動が開始されるために弾道に狂いが生じにくい等の、独自の作用効果を奏することが可能となっている。
そうすると、請求人が主張するように、上記Hのガス通路制御部の構成に関して、上記▲1▼〜▲3▼の各要件に分割して、その内の一部の要件のみをGの可動部材と組み合わせて、各甲号証に記載されたものと対比することは適切とはいえない。そして、玩具銃において、上記Gとして規定される可動部材と、Hの上記▲1▼〜▲3▼の全ての要件を満たすガス通路制御部とを備えるようにすることは、甲第3〜9号証のいずれにも記載されていないし、そのことを示唆するものもない。
更にいえば、本件発明における、上記Eの「銃身部に対して設けられ、該銃身部に沿って移動し得るものとされたスライダ部」は、その主要部分が銃身の外側に設けられる、遊底とも称される部材であって、甲第3号証記載のローア・ボルトとは、設置部位や形状及び機能が全く相違している。したがって、甲第3号証記載のアッパー・ボルトは、「蓄圧室からのガスを上記受圧部に作用させてスライダ部を後退させ」る部材とはいえないから、当該アッパー・ボルトが上記▲3▼の要件を満たすという前提自体が適切なものではなく、上記▲3▼の要件を備えたガス通路制御部を示す公知例が示されていないことになる。
なお、請求人は、本件発明の上記構成Hを上記▲1▼〜▲3▼の3要件に分割することの適切性を主張するために、甲第10号証(訴状)及び甲第11号証(判決)を提出しており、当該訴状及び判決では、確かにHの構成を便宜上3要件に分けて論じてはいるが、それらの3要件は一体のものとして取り扱われていて、請求人が主張するように、各分割された要件の一部のみを他の要件とは切り離して、対象となる構成事項と対比しているわけではないから、甲第10号証及び甲第11号証によって、上記判断が左右されるものではない。
以上の検討から明らかなように、本件発明の上記G及びHの構成は、甲第3、4、5、9号証の記載事項から当業者が容易に想到しうるものではないし、また、当該甲各号証の記載事項に加えて、甲第6〜8号証に記載されている玩具銃等の基本的な構造や、ガス通路を制御する部材を参酌しても、やはり当該G及びHの構成は、それらの記載事項から当業者が容易に想到しうるものとはいえない。そして、本件発明の特徴的構成をなしている、上記G及びHの構成が、甲第3〜9号証の記載事項から容易に想到できるものではない以上、本件発明を、甲第3〜9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(請求項2〜6の発明について)
請求項2〜6の発明は、本件発明を引用するもので、本件発明と同様に上記G及びHの構成を備えるものであるから、本件発明と同様に、甲第3〜9号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
6.[むすび]
以上のとおりであるから、本件請求項1〜6の特許について、請求人が主張する理由及びその提出した証拠によっては、無効とすることはできないし、また、他に無効とすべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 1999-11-12 
結審通知日 1999-11-12 
審決日 1999-12-03 
出願番号 特願平5-252881
審決分類 P 1 112・ 121- Y (F41B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 神崎 潔
特許庁審判官 玉城 信一
清水 英雄
登録日 1996-09-19 
登録番号 特許第2561429号(P2561429)
発明の名称 自動弾丸供給機構付玩具銃  
代理人 神原 貞昭  
代理人 安原 正之  
代理人 安原 正義  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ