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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  A01B
管理番号 1067375
異議申立番号 異議2000-74478  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-15 
確定日 2002-08-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3053342号「トラクタの作業機上昇装置」の請求項1、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3053342号の請求項1、4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3053342号の請求項1、4に係る発明(平成6年11月4日出願、平成12年4月7日特許権の設定登録)は、申立人石川島芝浦機械株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成13年3月29日付けで取消しの理由が通知され、平成13年6月8日付けで訂正請求がなされ(その後取り下げ)、平成13年6月14日付けで申立人に審尋がなされ、平成13年7月13日付けで申立人が回答書を提出し、平成14年1月22日付けで取消しの理由が通知され、平成14年3月28日付けで訂正請求がなされ(その後取り下げ)、平成14年5月14日付けで取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年7月19日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
訂正事項a:
【特許請求の範囲】の請求項1を、次のとおりに訂正する。
「 【請求項1】 ピットマンアーム(2)の回動で操向される車輪(3)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)と、前記ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム(2)の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段(9)を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。」
訂正事項b:
【特許請求の範囲】の請求項4を、次のとおりに訂正する。
「 【請求項4】 前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪(3)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出することによって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。」
訂正事項c:
段落【0008】を、次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】
本発明における課題解決のための第1の具体的手段は、ピットマンアーム2の回動で操向される車輪3と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2と一体回動する作動体10の回動を1つのスイッチ70で検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム2の角度を前記1つのスイッチ70の作動体10に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段9を設けていることである。
本発明における課題解決のための第2の具体的手段は、ピットマンアーム2の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2の回動を伝達して操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8とを有し、ピットマンアーム2の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段9を設けていることである。」
訂正事項d:
段落【0010】を、次のとおりに訂正する。
「本発明における課題解決のための第4の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体10の回動を1つのスイッチ70で検出することによって油圧装置7に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ70の作動体10に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構を設けていることである。
本発明における課題解決のための第5の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けていることである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段(9)を、「ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム(2)の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段(9)」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、又、特許明細書の段落【0017】、【0023】ないし【0026】及び【図1】ないし【図5】に記載されている範囲内のものである。
訂正事項bは、操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材の回動によって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構を、「操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出することによって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、又、特許明細書の段落【0017】、【0023】ないし【0026】及び【図1】ないし【図5】に記載されている範囲内のものである。
訂正事項c、dは、特許請求の範囲との整合を図るものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項aないしdは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
申立人は、甲第1号証ないし甲第3号証を提出し、本件請求項1、4に係る発明が下記甲第1号証に記載された発明であるから、本件請求項1、4に係る特許が特許法第29条第1項第3号に該当し、取り消されるべきであると主張している。

(2)本件の請求項1、4に係る発明
本件の請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)は、上記訂正事項aに、本件の請求項4に係る発明(以下、本件発明4という。)は、上記訂正事項bに、それぞれ記載されたとおりのものである。

(3)刊行物等
平成14年1月22日付けの取消理由通知書に引用した刊行物は、以下のとおりである。
刊行物1:実願昭58ー144382号(実開昭60-51909号)のマイクロフィルム(甲第1号証の2)
刊行物2:特開平2-136328号公報(甲第3号証)
刊行物3:特開昭63-110030号公報(平成13年7月13日付け回答書添付の参考資料2)

刊行物1(実願昭58ー144382号(実開昭60-51909号)のマイクロフィルム)には、次のことが記載されている。
「走行機体に昇降機構を介し農作業機を昇降自在に連結支持させた構造において、走行機体のかじ取角を感知する旋回センサを、前記昇降機構に連動連結させて、走行機体が一定角以上旋回すると農作業機を自動的に上昇させるように構成したことを特徴とする農作業機用昇降装置。」(実用新案登録請求の範囲)、
「第1図は本考案に係る全体の側面図であり、走行機体であるトラク夕(1)の後部にロータリ耕転作業機(2)を装備させるもので、図中(3)はトラク夕(1)に搭載するエンジン、…(6)は前輪、…(9)はリフトアーム(10)及び昇降レバー(11)を備えた昇降制御機構である油圧リフト、…昇降機構である三点リンク機構(14)を介してトラク夕(1)の後側に昇降自在に前記作業機(2)を取付ける。」(明細書2頁6〜15行目)、
「さらに第8図に示す如く、操向制御を行うステアリングリンク機構(49)のステアリングアーム(50)部にかじ取角感知用の旋回センサ(51)(52)を設置し、一定角度以上左右にハンドル(13)をきると、これを前記センサ(51)(52)で検出するように構成している。」(同5頁5〜9行目)、
「このような作業中における作業機(2)の上昇動作は前記スイッチ(53)操作以外にも自動的に行われるもので、今機体(1)を一定角以上左右に旋回させた場合にはこれを前記スイッチ(51)(52)が検出し前述同様作業機(2)を上昇させる。」(同9頁20行目〜10頁4行目)。
したがって、刊行物1には、ステアリングアーム(50)の回動で操向される前輪(6)と、油圧リフト(9)と、前記ステアリングアーム(50)が左右各一定角度以上回動されたときにステアリングアーム(50)の回動を2つの旋回センサ(51)、(52)で検出して油圧リフト(9)に農作業機上昇動作させる農作業機用昇降装置が記載されていると認められる。

刊行物2(特開平2-136328号公報)には、次のことが記載されている。
「ピットマンアーム(1)の回動軸(2)部回りに、このピットマンアーム(1)の回動角を検出して操向側の前車輪(3)の伝動回転を高速に切換える操向センサ(4)のセンサカム(5)を、回動調節可能に設けてなるトラクタ等の操向装置。」(特許請求の範囲)、
「回動軸(2)に固定の基準盤(22)に対し、左右対称形状のセンサカム(5)を外周に形成した一対のカム盤(23)(24)を、軸(2)方向に重合し、各カム盤(23)と(24)は、基準盤(22)に対して左右対称状に回動させて、この回動位置を固定するためのピン孔(25)(26)を形成し、該基準盤(22)の軸方向の両面には、これらピン孔(25)(26)を嵌合させると共に、この嵌合位置を軸(2)回りに差換自在のピン(27)を設けている。」(2頁左下欄7〜14行)、
「左右のセンサカム(5)は、該ピットマンアーム(1)乃至基準盤(22)に対して左右対称位置に回動調節する。」(2頁右下6〜8行欄)。
したがって、刊行物2には、「ピットマンアームの左右各一定角度以上の回動を検出して制御対象(前車輪(3))を動作させる(高速に切換える)トラクタにおいて、制御対象を動作させるときのピットマンアームの角度を変更可能にした連動手段」または「操舵部材(ピットマンアーム)が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材の回動によって制御対象を動作させるトラクタにおいて、制御対象を動作させるときの操舵部材の角度を変更可能にした連動機構」が事実上記載されていると認められる。

刊行物3(特開昭63-110030号公報)には、次のことが記載されている。
「第1図に示すように、前車輪(1a)(1b)の直進用位置(N)から左向き側及び右向き側の操向角(α)を検出する回転式可変抵抗器型の操向角センサ(21)を、ピットマンアーム(22)の操向角に基いて検出するように、かつ、検出結果を電気信号として出力するようにピットマンアーム(22)に連動させると共に制御機構(23)に連係してある。この制御機構(23)は、前記操向角センサ(21)、及び、制御用前輪操向角の設定器(24)からの上方に基いて前記第1油圧ピストン(12)及び第2油圧ピストン(18)を自動操作するように、前記設定器(24)、並びに、前記第1油圧ピストン(12)及び第2油圧ピストン(18)の夫々を操作するための電磁操作式の第1コントロ-ルバルブ(25)と第2コントロールバルブ(26)の夫々に連係すると共に、操向センサ(21)による検出操向角(α)と設定器(24)による設定操作角(β)とを比較し、・・・検出操作角(α)が設定操作角(β)以上であると判別すると、前輪変速装置(6)を増速伝動状態に切換えるように第1コントロ-ルバルブ(25)と第2コントロールバルブ(26)を自動的に操作するように構成してある。そして、前記設定器(24)には設定操向角(β)の変更調節が可能なように人為操作部(24a)を備えてあり、・・・設定器(24)の調節操作をするだけで、前車輪(1a)(1b)が増速伝動状態に切換わる時の前輪操向角を変更調節できるように構成してある。」(3頁左下欄15行〜4頁13行)。
したがって、刊行物3には、「ピットマンアームの左右各一定角度以上の回動を検出して制御対象(前車輪(3))を動作させる(増速状態に切換える)トラクタにおいて、制御対象を動作させるときのピットマンアームの角度を変更可能にした連動手段」または「操舵部材(ピットマンアーム)が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材の回動によって制御対象を動作させるトラクタにおいて、制御対象を動作させるときの操舵部材の角度を変更可能にした連動機構」が事実上記載されていると認められる。

(4)対比・判断
(請求項1に係る発明について)
本件の請求項1に係る発明(以下、本件発明1という。)と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1の「ステアリングアーム(50)」、「前輪(6)」、「農作業機」,「油圧リフト(9)」、「農作業機用昇降装置」は、本件発明1の「ピットマンアーム(2)」、「車輪(3)」、「対地作業機(6)」,「対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)」、「トラクタの作業機上昇装置」に相当し、刊行物1記載の「2つの旋回センサ51、52」と本件発明1の「1つのスイッチ(70)」は、スイッチである点で共通し、刊行物1の発明は、走行機体が一定角以上旋回すると農作業機を自動的に上昇させるように構成したものであるから、本件発明の「上昇連動手段(9)」が事実上記載され、
両者は、「ピットマンアームの回動で操向される車輪と、対地作業機を昇降する油圧装置と、前記ピットマンアームが左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアームの回動をスイッチで検出して油圧装置に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段(9)を設けているトラクタの作業機上昇装置。」である点で一致し、
少なくとも、本件発明1の上昇連動手段が「対地作業機上昇動作させるときのピットマンアームの角度を1つのスイッチの作動体に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした」のに対し、刊行物1記載の上昇連動手段は、2つのスイッチ(旋回センサ51、52)からなり、位置調整することが明確でない点で相違する。
上記相違点を検討すると、刊行物2(甲第3号証)には、ピットマンアームの左右各一定角度以上の回動を検出して制御対象(前車輪(3))を動作させる(高速に切換える)トラクタにおいて、制御対象を動作させるときのピットマンアームの角度を変更可能にした連動手段が、刊行物3(参考資料2)には、ピットマンアームの左右各一定角度以上の回動を検出して制御対象(前車輪(3))を動作させる(増速状態に切換える)トラクタにおいて、制御対象を動作させるときのピットマンアームの角度を変更可能にした連動手段が、それぞれ記載されているものの、本件発明1のように、「対地作業機上昇動作させるときのピットマンアームの角度を1つのスイッチの作動体に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした」ことは記載されていない。
なお、特開平2ー128925号公報(甲第2号証)には、回動アームの左右各一定角度以上の回動を検出して前車輪を増速動作させるトラクタにおいて、前車輪を増速を動作させるときの回動アームの角度を変更可能にした連動手段が、特開昭63-270234号公報(平成13年7月13日付け回答書添付の参考資料1)には、前輪が設定角度以上に走行操作されると、カム部材によりスリーブ及び操作軸が軸芯方向に摺動操作され、前輪が増速駆動状態となり、操作軸端部のナット(36)を回動操作することによって、摩擦クラッチ(29)の押圧力を調節することが、それぞれ記載されているものの、いずれにも、本願発明1の「対地作業機上昇動作させるときのピットマンアームの角度を1つのスイッチの作動体に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした」ことは記載されていない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明でもなく、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明でもない。

(請求項4に係る発明について)
本件の請求項4に係る発明(以下、本件発明4という。)と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1の「ステアリングアーム(50)」、「前輪(6)」、「農作業機」,「油圧リフト(9)」、「農作業機用昇降装置」は、本件発明4の「操舵部材」、「左右前輪(3)」、「対地作業機(6)」,「対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)」、「トラクタの作業機上昇装置」に相当し、刊行物1記載の「2つの旋回センサ51、52」と本件発明1の「1つのスイッチ(70)」は、スイッチである点で共通し、刊行物1の発明は、走行機体が一定角以上旋回すると農作業機を自動的に上昇させるように構成したものであるから、本件発明4の「上昇連動機構」が事実上記載され、
両者は、「前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される左右前輪と、対地作業機を昇降する油圧装置とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材の回動によって油圧装置に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構を設けているトラクタの作業機上昇装置。」である点で一致し、
少なくとも、本件発明4の上昇連動手段が「対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を1つのスイッチの作動体に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした」のに対し、刊行物1記載の上昇連動手段は、2つのスイッチ(旋回センサ51、52)からなり、位置調整することが明確でない点で相違する。
上記相違点を検討すると、刊行物2(甲第3号証)には、操舵部材の左右各一定角度以上の回動を検出して制御対象(前車輪(3))を動作させる(高速に切換える)トラクタにおいて、制御対象を動作させるときの操舵部材の角度を変更可能にした連動手段が、刊行物3(参考資料2)には、操舵部材の左右各一定角度以上の回動を検出して制御対象(前車輪(3))を動作させる(増速状態に切換える)トラクタにおいて、制御対象を動作させるときの操舵部材の角度を変更可能にした連動手段が、それぞれ記載されているものの、本件発明4のように、「対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を1つのスイッチの作動体に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした」ことは記載されていない。
なお、特開平2ー128925号公報(甲第2号証)には、回動アームの左右各一定角度以上の回動を検出して前車輪を増速動作させるトラクタにおいて、前車輪を増速を動作させるときの回動アームの角度を変更可能にした連動手段が、特開昭63-270234号公報(参考資料1)には、前輪が設定角度以上に走行操作されると、カム部材によりスリーブ及び操作軸が軸芯方向に摺動操作され、前輪が増速駆動状態となり、操作軸端部のナット(36)を回動操作することによって、摩擦クラッチ(29)の押圧力を調節することが、それぞれ記載されているものの、いずれにも、本願発明1の「対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を1つのスイッチの作動体に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした」ことは記載されていない。
したがって、本件発明4は、刊行物1に記載された発明でもなく、刊行物1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明でもない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明1、4についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、4についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1、4についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
トラクタの作業機上昇装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ピットマンアーム(2)の回動で操向される車輪(3)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)と、前記ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム(2)の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段(9)を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【請求項2】 ピットマンアーム(2)の回動で操向される前輪(3)と、左右独立作動可能なブレーキ機構(4)で制動される後輪(5)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)と、前記ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)の回動を伝達して操向側のブレーキ機構(4)を作動するブレーキ連動機構(8)とを有し、ピットマンアーム(2)の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段(9)を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【請求項3】 ピットマンアーム(2)の回動で操向される前輪(3)と、左右独立作動可能なブレーキ機構(4)で制動される後輪(5)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)と、前記ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)と一体回動する作動体(10)の回動を伝達して操向側のブレーキ機構(4)を作動するブレーキ連動機構(8)とを有し、前記作動体(10)の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段(9)を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【請求項4】 前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される左右前輪(3)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出することによって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【請求項5】 前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪(3)と、左右独立作動可能なブレーキ機構(4)で制動される後輪(5)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構(4)を作動するブレーキ連動機構(8)と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【請求項6】 前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪(3)と、左右独立作動可能なブレーキ機構(4)で制動される後輪(5)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構(4)を作動するブレーキ連動機構(8)と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって前輪(3)を後輪(5)に対して等速状態から増速状態に切り換える前輪増速機構(20)と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【請求項7】 前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪(3)と、左右独立作動可能なブレーキ機構(4)で制動される後輪(5)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構(4)を作動するブレーキ連動機構(8)と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって前輪(3)を後輪(5)に対して等速状態から増速状態に切り換える前輪増速機構(20)を作動する前輪速連動機構(43)と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けて、前記前輪速連動機構(43)とブレーキ連動機構(8)とは操舵部材の左右各一定角度以上の回動で前記対地作業機上昇動作と同時期又は前後にずれて作動することを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一定角度以上の操向に連動して作業機を上昇させるようにしたトラクタの作業機上昇装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来トラクタにおいて、一定角度以上の操向に連動して作業機を上昇させるものとして、特開昭63-270234号公報及び特開平1-141505号公報(第1従来技術)に開示されたものがある。
これらの第1従来技術は、ピットマンアームの回動で操向される前輪と、左右独立作動可能なブレーキ機構で制動される後輪と、対地作業機を昇降する油圧装置と、前輪周速を後輪周速に対して略等速の状態から増速の状態に切り換え可能な前輪増速機構と、前記前輪が一定角度以上操向されたときに前輪増速機構を等速状態から増速状態に切り換える前輪速連動手段とを有し、この前輪速連動手段に連動して油圧装置に対地作業機上昇動作させるように構成している。
【0003】
従って、前輪が一定角度以上操向されたときにこれを検出して前輪増速機構を切り換えると同時に油圧装置を作動して対地作業機を上昇動作でき、トラクタ旋回時に自動的に対地作業機を持ち上げることができ、上昇忘れをなくすことができるようになっている。
ところで、特開平6-16059号公報(第2従来技術)には、ピットマンアームの回動で操向される前輪と、左右独立作動可能なブレーキ機構で制動される後輪と、対地作業機を昇降する油圧装置と、前輪周速を後輪周速に対して略等速の状態から増速の状態に切り換え可能な前輪増速機構と、前記前輪が一定角度以上操向されたときに前輪増速機構を等速状態から増速状態に切り換える前輪速連動手段と、前記ピットマンアームが左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアームの回動を伝達して操向側のブレーキ機構を作動するブレーキ連動機構とを有し、前輪速連動手段とブレーキ連動機構とを略同時に作動させるように構成した技術が開示されている。
【0004】
前記第2従来技術では、前輪が一定角度以上操向されたときにこれを機械的に検出して、前輪増速機構を増速状態に切り換えると同時に操向側の後輪を制動することができ、前輪増速と片ブレーキにより旋回性能を向上できるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記第1従来技術では、油圧装置を作動して対地作業機を上昇動作させる手段は、前輪の一定角度以上の操向を検出する手段を前輪速連動手段のものと兼用しており、安価に製作できるようになっているが、前輪増速機構を具備しない場合は構成できなく、また、前輪速連動手段と前輪の操向角度と異なる角度で作動させるようにすることも困難であり、更に、角度検出手段が前輪の近傍にあると、泥土の浸入等によって耐久性が低くなるという問題もある。
【0006】
そこで本発明は、ピットマンアームと一体回動する作動体の回動を検出して、油圧装置に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段を作動させるようにすることにより、トラクタ旋回時に油圧装置を作動して対地作業機を上昇動作させることができるトラクタの作業機上昇装置を提供することを目的とする。
また、前記第2従来技術のブレーキ連動機構の一部を利用して、ピットマンアームと一体回動する作動体の回動を検出して、油圧装置に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段を作動させるようにすることにより、前輪増速機構を具備しない場合でも、また、前輪速連動手段及びブレーキ連動機構と前輪の操向角度が異なる角度で作動させたい場合でも、トラクタ旋同時に油圧装置を作動して対地作業機を上昇動作させることができるトラクタの作業機上昇装置を提供することを目的とする。
【0007】
さらに本発明は、前輪を一定角以上に操向したときに、前輪を等速状態から増速状態に切り換えると共に操向側のブレーキ機構を作動し、かつ対地作業機を上昇動作させることができるトラクタの作業機上昇装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明における課題解決のための第1の具体的手段は、ピットマンアーム2の回動で操向される車輪3と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2と一体回動する作動体10の回動を1つのスイッチ70で検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム2の角度を前記1つのスイッチ70の作動体10に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段9を設けていることである。
本発明における課題解決のための第2の具体的手段は、ピットマンアーム2の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2の回動を伝達して操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8とを有し、ピットマンアーム2の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段9を設けていることである。
【0009】
本発明における課題解決のための第3の具体的手段は、ビットマンアーム2の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2と一体回動する作動体10の回動を伝達して操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8とを有し、前記作動体10の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段9を設けていることである。
【0010】
本発明における課題解決のための第4の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体10の回動を1つのスイッチ70で検出することによって油圧装置7に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ70の作動体10に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構を設けていることである。
本発明における課題解決のための第5の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けていることである。
【0011】
本発明における課題解決のための第6の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって前輪3を後輪5に対して等速状態から増速状態に切り換える前輪増速機構20と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けていることである。
【0012】
本発明における課題解決のための第7の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって前輪3を後輪5に対して等速状態から増速状態に切り換える前輪増速機構20を作動する前輪速連動機構43と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けて、前記前輪速連動機構43とブレーキ連動機構8とは操舵部材の左右各一定角度以上の回動で前記対地作業機上昇動作と同時期又は前後にずれて作動することである。
【0013】
【作用】
ピットマンアーム2を回動してトラクタを旋回するとき、作動体10がピットマンアーム2と一体的に回動し、その回動が一定角度以上になるとブレーキ連動機構8を作動して操向側のブレーキ機構4を作動する。
前記作動体10の一定角度以上の回動によって上昇連動手段9が作動し、油圧装置7を上昇動作して対地作業機6を持ち上げる。
【0014】
【実施例】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1〜8において、13は4輪駆動トラクタで、エンジン14、ミッションケース15等を直結して車体が形成され、エンジン14から前方に突出した前車軸フレーム16に前車軸17が支持され、この前車軸17の左右に前輪3が縣架されている。ミッションケース15の左右側部にブレーキケースを介して後車軸ケースが固定され、後輪5が縣架されており、左右各後輪5は左右ブレーキケース内のブレーキ機構4によって独立制動可能になっている。
【0015】
前記ミッションケース15内にはエンジン14からの動力を変速して後輪デフ装置18へ伝達する主変速機構、副変速機構及び超減速機構等が内蔵され、後輪デフ装置18へ動力を伝達するべべルピニオン軸19から分岐して前輪3への動力伝達系が形成されている。
20は前輪増速機構で、その出力軸は伝動軸21を介して前輪デフ装置22に動力可能になっており、シフタ23を介してクラッチ24をギヤ25に咬合させると、前輪3を後輪5と略等周速で駆動し、クラッチ24及び摩擦クラッチ26を介してギヤ27を出力軸に一体化させると、前輪3を後輪5に対して1.5〜2倍の増周速で駆動可能であり、前輪3を等速状態と増速状態とに切り換え自在になっている。
【0016】
30は前輪3用のステアリング機構であり、前車軸フレーム16に固定の上下支持板31、32に縦軸33を設け、この縦軸33にピットマンアーム2を相対回動自在に支持しており、ピットマンアーム2の一端は左右一対のタイロッド34を介してナックルアーム35に連結され、ピットマンアーム2の他端は前車軸フレーム16に枢支されたステアリングシリンダ36に連結されている。
前記ピットマンアーム2の一端側下面にはカム板39が固定されており、このカム板39には略M字状のカム溝39Aが形成されている。40は一端が前車軸フレーム16に枢支されたカムレバーで、その中途には前記カム溝39Aに係合したカムピン41が固定されており、このカムレバー40の他端は連動ロッド42又はプッシュプルケーブルを介して前記前輪増速機構20のシフタ23と連動連結されている。
【0017】
前記カム板39、カムレバー40及び連動ロッド42等によって前輪速連動機構43が構成されており、ピットマンアーム2が中央位置から前輪3操向のために例えば40度前後回動すると、図5に示すように、カムピン41がカム溝39A内を摺動してカムレバー40を前方へ揺動し、連動ロッド42を介してシフタ23を移動してクラッチ24を前方に駆動し、前輪増速機構20を等速状態から増速状態に切り換えることができる。
ピットマンアーム2のボス部の上面には、ブレーキ連動機構8の一部を構成する三日月形状の作動体10が固着されている。縦軸33の上部には取り付け板46が固定され、この取り付け板46に左右一対の連動レバー47L、47Rがピン48を介して揺動可能に支持されている。
【0018】
前記作動体10はその両端が各連動レバー47L、47Rの内端側に対向しており、ピットマンアーム2と共に縦軸33廻りに回動することにより、作動体10の両端部が択一的に左右連動レバー47L、47Rと当接して、これをピン48廻りに揺動する。左右各連動レバー47を回動開始する作動体10の角度は、例えば40度前後であり、前輪増速機構20の切り換えと同時期でも良く、また先後にずれていても良い。
左右連動レバー47L、47Rの各外端は、それぞれブレーキ力中継手段49を介して左右各ブレーキ機構4に連動連結されており、これらは前記作動体10と共にブレーキ連動機構8を構成している。
【0019】
左右各ブレーキ力中継手段49は、図6、7に示すように、ミッションケース15に固定された第1軸52にカムレバー53と連動アーム54とが回動可能に設けられ、第2軸55にLの字又はレの字状のベルクランク56が枢支されている。
前記カムレバー53は先端が連動レバー47の外端とワイヤ57を介して連結され、そのボス部の端面にはカム面53Aが形成されており、連動アーム54は先端にフック部材58を枢支し、そのボス部の端面にはカム面53Aと咬合したカム面54Aが形成されており、第1軸52に嵌装したスプリング59によって互いに弾圧されている。52Aはスプリング59を調整可能なロックナットである。
【0020】
ベルクランク56は一端にピン60を有し、他端がブレーキ機構4と連動するためのロッド61が連結されており、フック部材58にはピン60と係合して反時計方向の回動をベルクランク56に伝達する係合凹部58Aが形成されており、この係合凹部58Aはフック枢支点側に長く形成され、連動アーム54の時計方向の回動をベルクランク56に伝達しないようになっている。
前記ベルクランク56のピン60には左右のブレーキペダル62によって引き動作されるワイヤ63の先端の連結金具64が連結されており、この連結金具64にはピン60に嵌合する長孔64Aが形成されている。そして、ブレーキペダル62の踏み込みでピン60を引き上げることにより、ベルクランク56の回動を介してブレーキ機構4を作動し、フック部材58によるピン60の引き上げは長孔64Aで許容するようになっている。
【0021】
前記フレーキ中継手段49は、カムレバー53と連動アーム54とにスプリング59によって初期荷重がかけられており、連動レバー47の揺動でカムレバー53が回動すると連動アーム54も変位し、フック部材58を介してベルクランク56を作動するが、ブレーキ機構4が作動してスプリング59の設定圧以上になると、カム面53A、54A間でずれ動きが生じ、連動アーム54が変位しなくなり、ブレーキ機構4におけるブレーキ力が一定に維持される。
これにより、従来連動レバー47とカムレバー53との間に設けられていた、ブレーキ力の一定維持及び調整するための連動レバー47及びカムレバー53等が不要になり、ブレーキ力調整も容易になる。
【0022】
フック部材58の先端にはワイヤ65が連結されており、左右のワイヤ65は3端部を有する解除部材66の2端部に連結されている。この解除部材66はトラクタの操縦部近傍に枢支されており、ハンドル67を介して回動することにより、前記ワイヤ65を介してフック部材58のピン60との係合を解除可能になっており、この係合解除によってブレーキ連動機構8によるブレーキ連動が解除される。
解除部材66の第3端部はワイヤ68を介して主変速操作レバー又は副変速操作レバー等に連結されていて、それらのレバーを高速側に操作したとき、解除部材66を介してブレーキ連動機構8を連動解除できるようになっている。
【0023】
前記取り付け板46の左右連動レバー47L、47R間には、支持板69を介して作動体10に対向してマイクロスイッチ70が配置されている。このマイクロスイッチ70は三日月形状の作動体10の内面10Aの円弧中心側に位置し、作動体10が左右どちら方向に回動しても、一定角度以上の回動で作動するようになっている。
作動体10の円弧内面10Aは、縦軸33までの距離より短い寸法で曲率半径が設定されており、例えば、ピットマンアーム2が左右各30度前後(25〜35度)に回動されたときに、マイクロスイッチ70をオンする。
【0024】
前記マイクロスイッチ70は油圧装置7を昇降動作させるコントロールボックス71の電磁弁72の上昇側に接続されており、作動体10によって作動することにより、電磁弁72を介して油圧装置7を上昇側に作動し、対地作業機6を持ち上げる。
このマイクロスイッチ70は取り付け板46に対して前後方向位置調整可能に取り付けておくことが好ましく、前後位置調整することにより作動されるときの作動体10の角度が変更でき、前輪速連動機構43及びブレーキ連動機構8が作動する時期と同一にしたり、ずらし量を変更したりすることができる。
【0025】
前記マイクロスイッチ70、コントロールボックス71等によって、作動体10の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段9が構成されており、この上昇連動手段9と作動体10とを有して上昇連動機構が構成されている。従って、図8に示すように、前輪3の近傍に配置された操舵部材であるピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときに、前輪増速機構20により前輪3を後輪5に対して等速状態から増速状態に切り換わり、ブレーキ連動機構8により操向側のブレーキ機構4を作動し、それらと同時期又は前後にずれて上昇連動機構が作動して、油圧装置7に対地作業機を上昇動作させる。
【0026】
マイクロスイッチ70は接点スイッチの他、無接点スイッチでも良く、油圧装置7のコントロールボックス71の作業機上げの回路と並列に接続した回路で、昇降用バルブに上げの指示を与えるようになっておれば良い。
図9(I)(II)(III)は対地作業機6に代えてミッションケース15の後下部に装着可能な牽引ドローバの1例を示しており、ミッションケース15に固定のドローバフレーム75は左右側板76間に前後支持板77、78を固着しており、各支持板77、78は上下2枚で構成され、その上下間にドローバ79を挿入し、後支持板78とドローバ79を貫通するピン80で連結するようになっている。
【0027】
前記ドローバ79側からドローバフレーム75にかかる曲げ応力Dは、通常、後支持板78の後端で最大になり、後支持板78のピン80用の孔78Aに応力集中を生じる。そこで、ここでは、後支持板78に前支持板77より幅広の板材を使用すると共に、孔78Aの位置を後支持板78の後端より可及的に前側に形成し、孔78Aの位置を曲げ応力Dの最大位置からずらすことにより、ドローバフレーム75の耐久性を向上できるようにしている。
図10〜12はフロントウエイト及びフロントヒッチの取り付け構造の1例を示しており、前車軸フレーム16の前面にフロントバンパ83が固定されており、フロントバンパ83は取り付け板83Aと、平面視コ字状のバンパ板83Bと、取り付け板83A及びバンパ板83Bに固着の保持板83Cとを有し、フロントウエイト84はバンパ板83Bに引っ掛けて保持板83Cに貫通するボルトで落下防止をするようになっている。
【0028】
フロントヒッチ86はヒッチピン88と4つのボルト孔86Aを有し、フロントウエイト84を使用しないとき、取り付け板83Aに形成した4つのボルト孔83Dに対向してボルト87固定するようになっており(図11)、また、このフロントヒッチ86をフロントウエイト84と共着する場合は、上側の2つのボルト孔86Aを取り付け板83Aの下側の2つのボルト孔83Dに対向させて取り付けるようになっている(図12)。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述した本発明によれば、ピットマンアーム2と一体回動する作動体の左右各一定角度以上の回動を検出して上昇連動手段9を作動させるので、操向操作で油圧装置7に対地作業機上昇動作をさせることができる。
前輪3を一定角以上に操向したときに、前輪3を等速状態から増速状態に切り換えると共に操向側のブレーキ機構4を作動し、かつ対地作業機を上昇動作させることができる
また、ピットマンアーム2と一体回動するブレーキ連動機構8の作動体10の左右各一定角度以上の回動を検出して、油圧装置7に対地作業機上昇動作させるので、前輪増速機構20を具備しない場合でも、また、前輪速連動手段43及びブレーキ連動機構8と前輪3の操向角度が異なる角度で作動させたい場合でも、トラクタ旋回時に油圧装置7を作動して対地作業機6を上昇動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施例の要部を示す平面説明図である。
【図2】
同全体平面説明図である。
【図3】
ピットマンアーム及びその近傍の断面側面図である。
【図4】
ピットマンアーム及びその近傍の断面正面図である。
【図5】
前輪増速機構、ブレーキ連動機構及び上昇連動手段の動作を示す平面説明図である。
【図6】
ブレーキ連動機構の全体説明図である。
【図7】
ブレーキ連動機構のブレーキ力中継手段の正面図である。
【図8】
本発明を適用可能なトラクタの側面図である。
【図9】
牽引ドローバの1例を示しており、(I)は断面側面図、(II)はドローバの平面図、(III)は応力線図である。
【図10】
フロントウエイト及びフロントヒッチの分解斜視図である。
【図11】
フロントヒッチの取り付け状態を示す側面図である。
【図12】
フロントウエイト及びフロントヒッチの供着状態を示す側面図である。
【符号の説明】
2 ピットマンアーム
3 前輪
4 ブレーキ機構
5 後輪
6 対地作業機
7 油圧装置
8 ブレーキ連動機構
9 上昇連動手段
10 作動体
20 前輪増速機構
43 前輪速連動機構
70 マイクロスイッチ
 
訂正の要旨 訂正の要旨
訂正事項a:
【特許請求の範囲】の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のとおりに訂正する。
「【請求項1】 ピットマンアーム(2)の回動で操向される車輪(3)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)と、前記ピットマンアーム(2)が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム(2)と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出して油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム(2)の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段(9)を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。」
訂正事項b:
【特許請求の範囲】の請求項4を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のとおりに訂正する。
「【請求項4】 前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪(3)と、対地作業機(6)を昇降する油圧装置(7)とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体(10)の回動を1つのスイッチ(70)で検出することによって油圧装置(7)に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ(70)の作動体(10)に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構を設けていることを特徴とするトラクタの作業機上昇装置。」
訂正事項c:
段落【0008】を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段】
本発明における課題解決のための第1の具体的手段は、ピットマンアーム2の回動で操向される車輪3と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2と一体回動する作動体10の回動を1つのスイッチ70で検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときのピットマンアーム2の角度を前記1つのスイッチ70の作動体10に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動手段9を設けていることである。
本発明における課題解決のための第2の具体的手段は、ピットマンアーム2の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7と、前記ピットマンアーム2が左右各一定角度以上回動されたときにピットマンアーム2の回動を伝達して操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8とを有し、ピットマンアーム2の左右各一定角度以上の回動を検出して油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動手段9を設けていることである。」
訂正事項d:
段落【0010】を、明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正する。
「本発明における課題解決のための第4の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材が左右各一定角度以上回動されたときにその操舵部材と一体回動する作動体10の回動を1つのスイッチ70で検出することによって油圧装置7に対地作業機上昇動作させると共にこの対地作業機上昇動作させるときの操舵部材の角度を前記1つのスイッチ70の作動体10に対する前後位置調整で左右同時に変更可能にした上昇連動機構を設けていることである。
本発明における課題解決のための第5の具体的手段は、前輪近傍配置の操舵部材の回動で操向される前輪3と、左右独立作動可能なブレーキ機構4で制動される後輪5と、対地作業機6を昇降する油圧装置7とを有し、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって操向側のブレーキ機構4を作動するブレーキ連動機構8と、前記操舵部材の左右各一定角度以上の回動によって油圧装置7に対地作業機上昇動作させる上昇連動機構とを設けていることである。」
異議決定日 2002-08-05 
出願番号 特願平6-271615
審決分類 P 1 652・ 113- YA (A01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山田 昭次  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 白樫 泰子
平瀬 博通
登録日 2000-04-07 
登録番号 特許第3053342号(P3053342)
権利者 株式会社クボタ
発明の名称 トラクタの作業機上昇装置  
代理人 安田 敏雄  
代理人 安田 敏雄  

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