• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
管理番号 1067407
異議申立番号 異議2002-70170  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-07-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-22 
確定日 2002-08-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3191299号「塗料」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3191299号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3191299号は、平成2年11月29日に出願され、平成13年5月25日にその特許の設定登録がなされ、その後、日本ゼオン株式会社より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年6月24日付で訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正事項
〔訂正事項a〕
特許請求の範囲の、
「【請求項1】下記(a)成分が溶媒に溶解してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表される少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)



〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、mは0または1である。〕」との記載を、
「【請求項1】下記(a)成分が溶媒に溶解してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表される少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)



〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1 で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕」と訂正する。

〔訂正事項b〕
明細書第3頁下から5行〜下から2行(特許公報第2頁第3欄27行〜30行参照)の、
「〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、mは0または1である。〕」との記載を、
「〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1 で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕」と訂正する。

〔訂正事項c〕
明細書第5頁第17行、第6頁第1行、同じく第5行(特許公報第2頁第4欄第12行、第15行、第19行参照)の、
「単素数」との記載を、
「炭素数」と訂正する。

〔訂正事項d〕
明細書第7頁第8行〜第13行(特許公報第2頁第4欄第38行〜第42行参照)の、
「8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10 〕-3-ドデセン、8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10 〕-3-ドデセン、5-カルボキシメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-2-ヘプテンなど」との記載を、
「8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10 〕-3-ドデセンなど」と訂正する。

〔訂正事項e〕
明細書第20頁第12行(特許公報第5頁第10欄第9行参照)の、
「実施例9、比較例1」との記載を、
「実施例9、10」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲請求項1において、一般式(I)のXおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であることを特定し、かつ当該式-(CH2)nCOOR1 で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基であることを特定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。またこの訂正は、明細書第4頁20行〜第6頁第10行(特許公報第2頁第3欄第48行〜第4欄第23行参照)の記載により支持されているから、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
訂正事項b及びdは、特許請求の範囲の訂正によって生じた明細書の記載中の不整合部分を、特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するものであり、また、訂正事項eは、表-1の記載に合わせて「比較例1」を実施例「10」に訂正するものであり、いずれも明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項cは、「炭素数」と記載すべきところを誤って「単素数」と記載されたものを正すものであり、誤記の訂正を目的とするものである。
またこれらb〜eの訂正は、特許明細書に記載された事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、本件訂正請求は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立について
1.本件発明
本件請求項1に係る発明は、訂正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりである。
「【請求項1】下記(a)成分が溶媒に溶解してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表される少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)



〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1 で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕」

2.申立ての理由の概要
特許異議申立人 日本ゼオン株式会社は、証拠として本願出願前に頒布されたことが明らかな刊行物である甲第1号証(特開昭62-181365号公報)、甲第2号証(特開昭62-206704号公報)、甲第3号証(特開昭60-26024号公報)および甲第4号証(特開平1-311120号公報)を提出し、訂正前の本件請求項1に係る発明は、上記甲第1号証ないし甲第3号証のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり(理由1)、また、訂正前の本件請求項1に係る発明は、上記甲第1号証ないし甲第3号証、および甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり(理由2)、よって本件請求項1に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであると主張している。
なお、当審において通知した取消の理由の趣旨は、異議申立人の主張する上記(理由1)および(理由2)と同じである。

3.甲第1号証ないし甲第4号証の記載
甲第1号証には、下記の記載がある。
1-イ:「1.被膜、フィルム及びシートの形のポリシクロオレフィン生成物の製造方法であって、支持体表面上に薄層でポリマー溶液を付着せしめる工程を含み、前記ポリマー溶液が前記ポリマーのために溶剤中にノルボルネン基を含む少なくとも1つのシクロオレフィンモノマーのポリマーの溶液であり;そして前記溶剤を除去するために前記ポリマー溶液を乾燥せしめ、その結果前記ポリマーを、前記支持体表面上に均一な薄層で付着せしめることを含んで成る方法。・・・3.前記ポリマー溶液の層厚を調節する工程を含む特許請求の範囲第1項記載の方法。・・・8.前記ポリマーが置換及び非置換ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ヘキサシクロヘプタジエン、及びこれらの混合物から選択されたモノマー仕込み物の反応生成物である特許請求の範囲第3項記載の方法。・・・10.前記モノマー仕込み物がその約50重量%まで、1種以上の他の重合性コモノマーを含む特許請求の範囲第8項記載の方法。」(特許請求の範囲第1項〜第10項)
1-ロ:被膜の形成について、「重合操作から得られるか、又は乾燥ポリマーを溶剤に溶解して調整する場合、使用されるポリマーセメントは、被膜、フィルム又はシートとして成形する前に他の添加剤と配合される。・・・・・次いで、ポリマーセメントを基材に常法で、例えば噴霧、ロール塗布、フローコーティング、浸漬等によって被膜として施すことができる。」(公報第6頁右下欄第19行〜第7頁左上欄第7行)
1-ハ:ポリシクロオレフィンの製造について、「本発明におけるポリシクロオレフィンは、周知の方法で、置換又は非置換の、下記の式(I)、(II)及び(III) で示される成分の存在を特徴とするノルボルネンシクロオレフィンモノマーの1種以上を重合させることによって製造される:



・・・・・ノルボルネン型モノマー上の置換基は、水素、シアノ基、カルボキシ基、カルボキシレート基、炭素原子数1〜20のアルキル基及びアリール基、並びに、1個以上、好ましくは2個の環炭素原子と共に形成されていてもよい炭素原子数3〜12の飽和及び不飽和環式基から選択される。」(公報第9頁右上欄第18行〜右下欄第5行)
1-ニ:実施例として、「例6 この例は、更に、水素添加MTDフィルムの架橋を示すものである。下記の成分を下記の量で使用してフィルム試料を製造した:
水素添加MTDホモポリマー 1.0g
トルエン 9.0g
TMPTA 0.02g
4-クロロベンゾフェノン 0.02g
前記と同じ製造及び露光操作により、・・・・架橋フィルムが得られた。」(公報第12頁右下欄第19行〜第13頁左上欄第11行)

甲第2号証には、下記の記載がある。
2-イ:「(1)テトラシクロドデセンまたはその誘導体:50〜100モル%およびノルボルネンまたはその誘導体:0〜50モル%からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体の延伸または無延伸のシートまたはフィルムの表面に導電性の有機膜または金属膜を設けたことを特徴とする導電性複合材料。」(特許請求の範囲第1項)
2-ロ:塗料の形成について、「また、別の方法として、本発明の重合体又は本発明の重合体の不飽和カルボン酸変性物を含むポリマー成分と導電性材料(金属、有機物)とからなる塗料を形成し(導電性塗料)、スクリーン印刷法などで回路形成すすることができる。」(公報第4頁左上欄第16行〜右上欄第1行)
2-ハ:実施例について、「実施例5 参考例2の重合体に無水マレイン酸をグラフト共重合し、無水マレイン酸含量1.5wt%の変性物を得た。・・・・・実施例6 参考例4の重合体をシクロヘキサンに溶解し、プリント基板用ガラスクロスに含浸させ、乾燥させた。・・・・・その後実施例5に記載の変性物を表面に10μ厚にコートした銅箔を積層体表面に誘着させた。」(公報第7頁左下欄第1行〜第17行、及び第6頁表1参照)

甲第3号証には、下記の記載がある。
3-イ:テトラシクロドデセン又はその誘導体単位100〜50モル%とノルボルネン又はその誘導体単位0〜50モル%からなる開環重合体を水素添加反応させて得られた重合体を構成成分とすることを特徴とする光学材料。」(特許請求の範囲)
3-ロ:水素添加反応前の開環重合体について、「本発明において用いられる水素添加反応前の開環重合体は、一般式



(R1,R2,R3,R4は水素又は低級アルキル基に代表される炭化水素残基であり、X/Y=100/0〜50/50(モル比)である。)で示されるものであって、通常の環状オレフィンの重合法により製造される。」(公報第2頁左上欄第16行〜右上欄第5行)
3-ハ:水素添加重合体の特性及びその成形方法について、「このようにして得られる水素添加重合体は透明性、耐湿性、耐光劣化性及び耐熱劣化性が優れ、複屈折率も小さく、しかも加熱時に分解、ゲル化等が生じないため熱成形加工性も優れた樹脂である。・・・・・本発明の水添物を光学材料として成形する方法としては、圧縮成形法、射出成形法、スピンコート法等の通常の成形方法が挙げられる。」(公報第2頁右下欄第17行〜第3頁左上欄第9行)

甲第4号証には、下記の記載がある。
4-イ:「1)下記一般式(I)で表わされる少なくとも1種の単量体またはこの単量体と共重合可能な他の単量体とを有機溶媒中でメタセシス開環重合させる重合工程と、この重合工程で得られる重合体または共重合体を、前記重合工程と実質的に同じ有機溶媒中で水素添加して水素添加重合体を得る水素添加工程とからなり、前記有機溶媒として、飽和カルボン酸エステル、飽和脂環族炭化水素化合物およびエーテル化合物から選ばれる少なくとも1つ以上の化合物を用いることを特徴とする水素添加重合体の製造方法。
一般式(I)



〔式中AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、XおよびYは水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1〜10の炭化水素基、-(CH2)nCOOR1、-(CH2)nOCOR1、-(CH2)nCN、・・・・・を示し、XおよびYの少なくとも1つは水素原子および炭化水素基から選ばれる基以外の基、mは0または1である。なお、R1、R2、R3およびR4は炭素数1〜20の炭化水素基、・・・・・、nは0〜10の整数を示す。〕」(特許請求の範囲)
4-ロ:水素添加重合体の特性およびその使用について、「本発明の方法によって製造される水素添加重合体は、一般に透明性を有し、特に光学特性、耐熱性、耐熱分解性、耐候性、機械的性質などの諸特性に優れ、吸水率の低いものであるので、これらの特性を利用する分野において好適に使用することができる。また、本発明によって製造された重合体は、既知の樹脂材料、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、・・・・・などとブレンドし、個々の樹脂では不十分な特性を付与することができる。」(公報第12頁左上欄第8行〜右上欄第2行)

4.対比・判断
(理由1について)
本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と、上記甲第1号証に記載された発明とを比較すると、甲第1号証には、ノルボルネン基を含む少なくとも1つのシクロオレフィンモノマー及びその他の重合性コモノマーの反応生成物であるポリマーの溶液を薄層で付着せしめて被膜を形成する方法が記載されており(上記記載1-イ参照)、ポリマーを溶剤に溶解したポリマー溶液は噴霧、ロール塗布、フローコーティング等によって被膜として施され(上記記載1-ロ参照)、実施例においては水素添加されたメチルテトラシクロドデセンホモポリマーが用いられていることから(上記記載1-ニ参照)、本件発明の塗料と上記甲第1号証に記載されたポリマー溶液とは、「少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体が溶媒に溶解してなる塗料」である点で共通するものである。しかしながら、本件発明においては、ノルボルネン誘導体よりなる単量体が、「一般式(I)



〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1 で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕」で表される特定の単量体であるのに対して、甲第1号証記載の発明においては、ノルボルネンモノマーあるいはテトラシクロドデセンモノマーがカルボキシル基や炭素原子数1〜20のアルキル基等の置換基を有していてもよい旨の記載があるものの(上記記載1-ハ参照)、置換基の種類や数、その位置などについては何も特定されておらず、上記一般式(I)で表される単量体が上記甲第1号証に実質的に記載されているものとは認めることができない。したがって、本件発明は上記甲第1号証に記載された発明ではない。
次に、本件発明と、上記甲第2号証に記載された発明とを比較すると、甲第2号証にはテトラシクロドデセンまたはその誘導体、あるいはこれとノルボルネンまたはその誘導体からなる開環重合体を水添反応させて得られる重合体からなる塗料が記載されているが(上記記載2-イ、2-ロ参照)、実際に用いられているのはメチルテトラシクロドデセンおよびメチルノルボルネンのみであり(上記記載2-ハ参照)、上記一般式(I)で表される単量体については記載されていない。したがって、本件発明は上記甲第2号証に記載された発明ではない。
さらに、本件発明と上記甲第3号証に記載された発明とを比較すると、甲第3号証にはテトラシクロドデセンまたはその誘導体、あるいはこれとノルボルネンまたはその誘導体からなる開環重合体を水素添加反応させて得られる重合体を構成成分とする光学材料が記載されているが(上記記載3-イ参照)、テトラシクロドデセンモノマーおよびノルボルネンモノマーの置換基は水素又は炭化水素基のみに限られており(上記記載3-ロ参照)、上記一般式(I)で表される単量体については記載されていない。また、得られた水添物は光学材料として成形されるものであり(上記記載3-ハ参照)、溶剤に溶解して塗料として用いることについては何も記載されていない。したがって、本件発明は上記甲第3号証に記載された発明ではない。

(理由2について)
本件発明と、上記甲第4号証に記載された発明とを比較すると、甲第4号証には上記一般式(I)で表される単量体またはこの単量体と共重合可能な他の単量体とを開環重合させ、得られた重合体をさらに水素添加してなる水素添加重合体が記載されており(上記記載4-イ参照)、したがって本件発明と上記甲第4号証記載の発明とは、本件発明が、上記一般式(I)で表される単量体を含む単量体から得られた水素添加重合体((a)成分)が「溶媒に溶解してなる塗料」であるのに対して、上記甲第4号証記載の発明においては、得られた水素添加重合体を塗料として用いることについては明記されていない点で相違し、その余の点では一致している。
上記相違点について検討するに、本件発明において、特定の単量体を含む単量体から得られたノルボルネン系重合体の水素添加物を塗料として用いているのは、乾燥後の塗膜の優れた耐熱性、電気特性、耐光性、着色性に加えて、高いガラス転移温度及び低い吸湿性を得るためである(本件明細書第2頁第3行〜第5行(特許公報第1頁第2欄第6行〜第8行参照)及び本件明細書第4頁20行〜第6頁第10行(特許公報第2頁第3欄第48行〜第4欄第23行参照))。これに対して、甲第4号証記載の水素添加重合体は透明性を有し、特に光学特性、耐熱性、耐熱分解性、耐候性、機械特性などの諸特性に優れ、吸水率も低いことから、このような特性を利用する分野に好適に使用されることが記載されているが(上記記載4-ロ参照)、具体的な用途、特にこの重合体を溶媒に溶解して塗料の用途に供することについては何も記載がなく、示唆もされていない。また、甲第1号証及び甲第2号証には、ノルボルネン系重合体の水素添加物を塗料として用いることが記載されているものの(上記記載1-ロ、2-ロ参照)、特に高いガラス転移温度及び低い吸湿性を有する塗膜を得るためにノルボルネン系重合体の中から特定のモノマーを選択することについては記載も示唆もされておらず、甲第3号証には、塗料の用途に係る記載がない。したがって、甲第1号証ないし甲第3号証の記載を参照したとしても、甲第4号証記載の水素添加重合体を塗料の用途に供するという、上記相違点に挙げられた構成を導き出すことはできない。そして本件発明は、特定の単量体から得られた水素添加重合体を用いることによって、耐熱性、電気特性、耐光性、透明性、着色性に優れ、特に電気・電子関係の絶縁塗料として有効であるという、明細書記載の効果を奏するものであると認められる。よって、本件発明は上記甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
塗料
(57)【特許請求の範囲】
(1)下記(a)成分が溶媒に溶解してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表される少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単履体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)

〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は水添ノルボルネン系樹脂を主成分とし、乾燥後のフィルムが優れた耐熱性、電気特性、耐光性を有し、着色が自由にできる塗料に関する。
[従来の技術]
本発明の塗料とは、顔料を含有する不透明塗料(一般にペイント、エナメルと言われている)と顔料を含有しない塗料(一般にワニス、クリア塗料と言われている)を総称する。
現在上市されている塗料は、耐熱性あるいは電気特性あるいは耐光性と個々の性能は優れているが、これらを同時に持ち合わせたものはない。特に耐熱性の高い塗料は原料の高分子の色から自由な色に着色できず、電子回路の基盤作成時の絶縁材料として用いる場合、作業性が悪いなどの問題がある。
[本発明が解決する課題]
本発明は前記従来技術の課題を背景になされたもので、乾燥後の塗膜が優れた耐熱性、電気特性、耐光性を有し、かつ着色が自由にできる塗料を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
すなわち本発明は、
下記(a)成分が溶媒に溶解あるいは分散してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表わされる少なくとも1種のノルボルネン誘電体よりなる単量体またはこの単量体およびこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)

〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕
を提供するものである。
以下、本発明について具体的に説明する。
<(a)成分>
本発明の塗料における樹脂成分を形成する(a)成分は、上記の一般式(I)で表わされるノルボルネン誘導体よりなる単量体(以下「特定単量体」という)を単独で、または特定単量体をこれと共重合可能な共重合性単量体とともにメタセシス重合触媒を用いて開環共重合させることによって得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体であり、以下において「水素添加重合体(a)」ともいう。
この水素添加重合体(a)の分子量は、ポリスチレン換算による重合平均分子量で、通常20,000から700,000、特に30,000から500,000であることが好ましい。
本発明において、水素添加重合体(a)としては、例えば特開平1-132626号公報に記載されたノルボルネン環を有する化合物の開環(共)重合体を水素添加して得られる重合体を挙げることができる。これらの特定単量体のうち、上記一般式(I)におけるXまたはYが式-(CH2)nCOOR1で表わされるカルボン酸エステル基である特定単量体は、得られる重合体が高いガラス転移温度と低い吸湿性を有するものとなる点で好ましい。
特にこのカルボン酸エステル基よりなる極性置換基は、特定単量体の1分子当たりに1個含有されることが、得られる重合体の吸湿性が低くなる点で好ましい。
また、式-(CH2)nCOOR1で示されるカルボン酸エステル基のうち、nの値が小さいものほど得られる重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単最体は、その合成が容易である点で、また得られる重合体に良好な特性が得られる点で好ましい。
上記の式において、R1は炭素数1〜20の炭化水素基であるが、炭素数が多くなるほど得られる重合体の吸湿性が小さくなる点では好ましい。しかし、得られる重合体のガラス転移温度とのバランスの点から、炭素数が1〜4の鎖状アルキル基または炭素数が5以上の(多)環状アルキル基であることが好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
さらに、カルボン酸エステル基が結合した炭素原子に、同時に炭素数1〜10の炭化水素基が置換基として結合されている特定単量体は、得られる重合体のガラス転移温度を低下させずに吸湿性を低下させるので好ましい。そして、特にこの置換基がメチル基である特定単量体は、その合成が容易な点で好ましい。
本発明に用いる水素添加重合体(a)に係る開環重合体は、特定単量体を単独で開環重合させたものであってもよいが、当該特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させたものであってもよい。このように共重合性単量体が使用される場合において、開環重合体における特定単量体の割合は5モル%以上、好ましくは20モル%以上とされる。使用される共重合性単量体としては、メタセシス重合触媒によって開環重合し得る単量体、および重合体の主鎖に炭素一炭素二重結合を有する一部重合された低重合度体を挙げることができる。
上記特定単量体のうちでは、上記一般式(I)においてmが1であるテトラシクロドデセン誘導体が、ガラス転移点の高い重合体が得られる点で好ましい。一般式(I)において、mが1であるテトラシクロドデセン誘導体のうち、好ましい化合物としては、8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-3-ドデセンなどを挙げることができる。
特定単量体は環状オレフィン化合物と共重合することもできる。
かかる環状オレフィン化合物の具体例としては、シクロペンテン、シクロオクテン、1,5-シクロオクタジエン、1,5,9-シクロドデカトリエンなどのシクロオレフィン類;ビシクロ〔2.2.1〕-2-ヘプテン、トリシクロ〔5 2.1.02,6〕-8-デセン、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕-3-デセン、トリシクロ〔6.2.1.01,8〕-9-ウンデセン、トリシクロ〔6.2.1.01,8〕-4-ウンデセン、テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-3-ドデセン、ペンタシクロ〔6.5.1.13,602,709,13〕-4-ペンタデセン、ペンタシクロ〔6.6.1.13,6.02,7.09,14〕-4-ヘキサデセン、ペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕-11-ペンタデセン、ジシクロペンタジエン、ペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕-ペンタデカ-4,11-ジエンなどのポリシクロアルケンを挙げることができる。
さらに特定単量体は、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン非共役ジエン共重合ゴム、ポリノルボルネン、ポリペンテナマーなどの重合体の主鎖に炭素-炭素二重結合を含んだ不飽和炭化水素系重合体の存在下で開環重合することもできる。
特定単量体とこれと共重合可能な共重合性単量体との開環重合の方法および水素添加の方法は、特開平1-132626号公報に記載される方法と同様の方法を挙げることができる。
得られる水素添加重合体(a)の水素添加率は、通常50%以上、好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上とされる。水素添加率が50%未満の重合体は、水素添加率が低いことにより、塗料塗布後の樹脂フィルムの耐光性が低下する。
本発明では、上記水素添加重合体(a)を溶媒に溶解させて適度の濃度の塗料を製造する。ここで、塗料中の水素添加重合体(a)の割合は、通常0.01-30重量%、好ましくは0.1-25重量%である。
溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物、酢酸ブチル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、四塩化炭素、クロロホルム、二塩化メチレン等が挙げられ、これらの混合溶媒でもよい。水素添加重合体(a)を溶媒で溶解する場合、室温でも高温でも良い。十分に攪拌することにより、均一な溶液が得られる。なお、着色する場合にはワニス溶液にカラーを添加すればよい。
塗布方法としては、スプレー、ハケ、ロール、スピンコート、デッピングなどで行ない、温度、時間を任意にかけることにより、目標の物性値をもつ膜が得られる。
<(b)成分>
本発明では、塗料中にさらにゴム質重合体および/または上記(a)成分以外の熱可塑性樹脂(以下、総称して「(b)成分」という)を添加してもよい。
(b)成分として用いられるゴム質重合体は、ガラス転移温度が0℃以下の重合体であって、通常のゴム状重合体および熱可塑性エラストマーが含まれる。
ゴム状重合体としては、例えばエチレン-α-オレフィン系ゴム質重合体;エチレン-α-オレフィン-ポリエン共重合ゴム;エチレン-メチルメタクリレート、エチレン-ブチルアクリレートなどのエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体;エチレン-酢酸ビニルなどのエチレンと脂肪酸ビニルとの共重合体;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリルなどのアクリル酸アルキルエステルの重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンまたはスチレン-イソプレンのランダム共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ブタジエン-イソプレン共重合体、ブタジエン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、ブタジエン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル-アクリロニトリル共重合体、ブタジエン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル-アクリロニトリル-スチレン共重合体などのジエン系ゴム;ブチレン-イソプレン共重合体などがあり、これらは、その1種のみでなく2種以上を用いることもできる。
ゴム質重合体は、上記のゴム状重合体をジビニルベンゼンなどの公知の架橋剤を使用して架橋させたものであってもよい。
上記のゴム状重合体よりなるゴム質重合体は、そのムーニー粘度(ML1+4、100℃)が5〜200であることが好ましい。
ゴム質重合体として用いられる熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン-ブタジエンブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレンブロック共重合体などの芳香族ビニル-共役ジエン系ブロック共重合体、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン-プロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン-プロピレンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂などを挙げることができる。
特に優れた透明性および鮮明性を有する塗料を得るために好ましいゴム質重合体としては、水素化スチレン-ブタジエンのランダム共重合体、ブロック共重合体またはブロック-ランダム共重合体であって、スチレン含有量が20〜45重量%のもの、並びにブタジエンとアクリル酸エステルの共重合体であって、しかもブタジエンとアクリル酸エステルの重量比が10〜90:90〜10であるもの、並びにこれらの100重量部にスチレンおよび/またはアクリロニトリルが0〜30重量部の割合で共重合されたものおよびその水素添加物を挙げることができる。
ゴム質重合体は、水素添加重合体(a)との相溶性を向上させる目的で、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基などの特定の官能基によって変性されたものであってもよい。
ゴム質重合体を(b)成分として含有させることにより、最終的に得られる塗膜は、一段と優れた耐衝撃性および延性を有することができる。
(b)成分として用いられる熱可塑性樹脂は、ガラス転移温度が25℃以上の重合体であり、非晶性ポリマー、結晶性ポリマー、液晶ポリマーなどが含まれる。
具体的には、ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポシアミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂などを挙げることができる。
本発明に有用なポリオレフィン系樹脂としてはポリプロピレンなどを挙げることができ、スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ポリクロルスチレン、ポリα-メチレンスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-α-メチレンスチレン共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリロニトリル-メタクリル酸メチル共重合体などを挙げることができ、これらは、その1種のみでなく2種以上を用いることもできる。
上記の熱可塑性樹脂を(b)成分として含有させることにより、最終的に得られる塗膜は優れた電気特性、耐光性を有するものとなる。
(b)成分の使用できる最は、水素添加重合体(a)の、通常50重量%以下、好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下である。
[実施例]
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。
なお、各特性の測定、評価は下記の条件に従って行なった。
外観:目視判定
耐熱性:DSC法(Differential Scaniny Caloryneter)により20℃/minの温度上昇でTgを測定した。
電気特性:絶縁破壊(ASTMD149)、体積抵抗率(ASTMD257)、比誘電率、誘電正接(1MHz、ASTMD150)を測定した。
耐光性:フェードメータ(63℃、雨なし)により500時間後の変色度(ΔE)を測定した。
(a)成分
重合体a-1
窒素ガスで置換した反応容器内に、下記構造式(1)で示される特定単量体8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-3-ドデセン500gと、1,2-ジクロロエタン2000mlと、分子量調節剤である1-ヘキセン3.8gと、触媒として、六塩化タングステンの濃度0.05M/lのクロロベンゼン溶液91.6mlと、パラアルデヒドの濃度0.1M/lの1,2-ジクロロエタン溶液68.7mlと、トリイソブチルアルミニウムの濃度0.5M/lのトルエン溶液37mlとを加え、60℃で10時間反応させることにより、固有粘度(ηinh)0.56dl/g(クロロホルム中、30℃、濃度0.5g/dl)の開環重合体450gを得た。
この開環重合体を9000mlのテトラヒドロフランに溶解し、パラジウム濃度が5重量%のパラジウム-アルミナ触媒45gを加え、水素ガスを圧力が100kg/cm2となるよう仕込んで、150℃で5時間水素添加反応させた。
水素添加反応後、触媒を▲戸▼別し、▲戸▼液を塩酸酸性の大過剰量のメタノール中に注いで、水素添加された重合体a-1を製造した。
この重合体a-1の水素添加率は実質上100%であった。
構造式(1)

(b)成分
ゴム質重合体b-1
下記の方法により製造された水素化スチレン-ブタジエンのブロック共重合体。
▲1▼ 内容積5lのオートクレーブに、脱気処理および脱水処理したシクロヘキサン2500gと、スチレン100gとを仕込んだ後、テトラヒドロフラン9.8gと、n-ブチルリチウム0.2gとを加えて、50℃で等温重合反応を行なった(第1段目重合)。
重合転化率がほぼ100%となった時点において、1,3-ブタジエン325gとスチレン75gとの混合物を10分間当り75gの速度で連続的に添加しながら、70℃で重合反応を行なった(第2段目重合)。
▲2▼ 添加した単量体の重合添加率がほぼ100%に達した時点において、n-ブチルリチウム0.6gと、2,6-t-ブチルクレゾール0.6gと、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド0.28gと、ジエチルアルミニウム1.1gとを加え、水素ガスを1.0kg/cm2の圧力に保ちながら1時間水素化反応を行なった。
次いで、反応液を室温まで冷却し、オートクレーブより取り出した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、温度120℃のロールで乾燥して、水素化スチレン-ブタジエンのブロック共重合体を得た。
なお、水素化前のスチレン-ブタジエンのブロック共重合体の分子特性は、
全結合スチレンの含有量; 35%
ブロック中のブタジエン部分のビニル結合の含有量; 40%
であった。
水素化スチレン-ブタジエンのブロック共重合体の特性は、
水素化率; 98%
分子量; 16×104
メルトフローレート(230℃、50kg); 30g/10min
屈折率; 1.515
であった。
熱可塑性樹脂b-2
ポリプロピレン「BC-8」(三菱油化(株)製)
実施例1〜4
溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、重合体(a-1)の5重量%溶液を表-1のカラーを含めて製造し、アルミ板の上に膜厚20mμのフィルムを作成し、物性・外観を評価した。結果を表-1に示す。
実施例5、6
実施例1の重合体(a-1)の濃度を変え、膜厚を変化させ、評価した。結果を表-1に示す。
実施例7
実施例1の溶媒をトルエンに変更し、評価した。結果を表-1に示す。
実施例8
重合体(a-1)と(b-1)をTHFに溶解し、評価した。結果を表-1に示す。
実施例9、10
重合体(a-1)と(b-2)を溶媒m-キシレン中で温度を110℃に上昇して溶解させ、評価した。結果を表-1に示す。

[発明の効果]
本発明の水添ノルボルネン系樹脂を主成分とする塗料は耐熱性、電気特性、耐光性、透明性に優れ、そして自由に着色できることを特徴とするものであり、特に電気・電子関係の絶縁塗料として有効である。
本発明の塗料は耐熱性、電気特性、耐光性、透明性、そして着色する場合には着色性に優れており、従来の塗料では得られなかった優れた塗料である。特に、電気・電子関係の絶縁塗料として極めて有効である。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3191299号発明の明細書を、下記のとおり訂正する。
1.特許請求の範囲の、
「【請求項1】下記(a)成分が溶媒に溶解してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表される少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)

〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、mは0または1である。〕」との記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】下記(a)成分が溶媒に溶解してなる塗料。
(a)成分:下記一般式(I)で表される少なくとも1種のノルボルネン誘導体よりなる単量体またはこの単量体及びこれと共重合可能な共重合性単量体を開環重合させて得られる開環重合体をさらに水素添加して得られる水素添加重合体。
一般式(I)

〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕」と訂正する。
2.明細書第3頁下から5行〜下から2行(特許公報第2頁第3欄27行〜30行参照)の、
「〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、mは0または1である。〕」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「〔式中、AおよびBは水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基であり、XおよびYは水素原子、ハロゲン原子または一価の有機基であって、XおよびYのうち1つは式-(CH2)nCOOR1(但し、R1は炭素数1〜20の炭化水素基を示し、nは0以上の整数である。)で表わされる基であり、当該式-(CH2)nCOOR1で表わされる基が結合した炭素原子に結合されているAまたはBは、炭素数1〜10の炭化水素基である。mは0または1である。〕」と訂正する。
3.明細書第5頁第17行、第6頁第1行、同じく第5行(特許公報第2頁第4欄第12行、第15行、第19行参照)の、
「単素数」との記載を、誤記の訂正を目的として、
「炭素数」と訂正する。
4.明細書第78頁第8行〜第13行(特許公報第2頁第4欄第38行〜第42行参照)の、
「8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-3-ドデセン、8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-3-ドデセン、5-カルボキシメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-2-ヘプテンなど」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕-3-ドデセンなど」と訂正する。
5.明細書第20頁第12行(特許公報第5頁第10欄第9行参照)の、
「実施例9、比較例1」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「実施例9、10」と訂正する。
異議決定日 2002-07-29 
出願番号 特願平2-331837
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09D)
P 1 651・ 113- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 木村 敏康  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 鈴木 紀子
佐藤 修
登録日 2001-05-25 
登録番号 特許第3191299号(P3191299)
権利者 ジェイエスアール株式会社
発明の名称 塗料  
代理人 大井 正彦  
代理人 大井 正彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ