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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G03F
管理番号 1067418
異議申立番号 異議2001-72031  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-03-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-27 
確定日 2002-09-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3128876号「パターン作成方法、及びパターン作成システム」の請求項1ないし3、6、9、12、19ないし23、27、35に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3128876号の請求項1ないし3、6、9、12、18ないし22、26、33に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3128876号の発明は、平成3年8月22日に特許出願され、平成12年11月17日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、吉川 喜一郎より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年12月25日に訂正請求がなされた後、再度取消理由がなされ、その指定期間内である平成14年7月26日に、平成13年12月25日付けの訂正請求を取り下げるとともに、新たに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:
特許明細書の請求項13、28を削除するとともに、特許明細書の請求項14ないし27を請求項13ないし26に繰り上げ、同じく特許明細書の請求項29ないし35を請求項27ないし33に繰り上げて、特許請求の範囲の請求項1、3ないし5、13ないし33を以下のとおり訂正する。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、
前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項3】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。
【請求項4】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開し、該展開された2値化画像の情報に基づいて、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素に存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン作成方法。
【請求項5】
前記対象となるパターン要素の少なくとも一部のエッジが他のパターン要素から一定画素数以上離れているとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項4に記載のパターン作成方法。
【請求項13】
前記長手終端近傍であるエッジが更に他のパターン要素から一定間隔以上離れているとき、前記長手終端近傍であるエッジを拡張するための修正量と、前記一定間隔以上離れるエッジを拡張するための修正量との合成で決まる量だけ前記長手終端近傍のエッジが拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項14】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定し、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが前記終端近傍であるときは、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項15】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記直線部の短手方向の線幅が中心部よりも終端近傍で相対的に太くなるように、前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1又は14に記載のパターン作成方法。
【請求項16】
前記複数のパターン要素は孤立部と密集部との少なくとも一方を含み、前記直線部は、前記孤立部又は前記密集部の少なくとも一部を構成する線状パターンであることを特徴とする請求項15に記載のパターン作成方法。
【請求項17】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記直線部の長さを規定するエッジが前記設計データに比べて前記長手方向に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項18】
前記マスクは、前記感光基板に照射される露光用照明光が透過する透過型であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項19】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光工程を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項20】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、
前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項21】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素に該当する前記設計データの一部を修正する修正手段を有することを特徴とする請求項20に記載のパターン作成システム。
【請求項22】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項20又は21に記載のパターン作成システム。
【請求項23】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開する2値化展開手段を更に備え、前記第1検定手段は、前記展開された2値化画像の情報に基づいて、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素に存在するか否かを検定することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項24】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部のエッジが他のパターン要素から一定画素数以上離れているとき、前記少なくとも一部のエッジが前記設計データに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項23に記載のパターン作成システム。
【請求項25】
前記パターンデータ作成手段は、前記少なくとも一部のエッジの拡張量が前記対象となるパターン要素の線幅の10〜15%程度となるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜24のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項26】
前記パターンを前記感光基板上に転写する露光装置の解像限界の線幅値に対応して前記一定間隔が定められることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項27】
前記長手終端近傍であるエッジが更に他のパターン要素から一定間隔以上離れているとき、前記パターンデータ作成手段は、前記長手終端近傍であるエッジを拡張するための修正量と、前記一定間隔以上離れるエッジを拡張するための修正量との合成で決まる量だけ前記長手終端近傍のエッジが拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜26に記載のパターン作成システム。
【請求項28】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定する検定手段と、
前記対象となるパターン要素の着目するエッジが終端近傍であるとき、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項29】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開する2値化展開手段を更に備え、前記検定手段は、前記展開された2値化画像の情報に基づいて、前記着目するエッジが終端近傍であるか否かを検定することを特徴とする請求項28に記載のパターン作成システム。
【請求項30】
前記パターンデータ作成手段は、前記着目するエッジが終端近傍であるとき、前記着目するエッジが他のエッジに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項29に記載のパターン作成システム。
【請求項31】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記パターンデータ作成手段は、前記直線部の短手方向の線幅が中心部よりも終端近傍で相対的に太くなるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項26又は28に記載のパターン作成システム。
【請求項32】
前記対象となるパターン要素が所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含むとき、前記パターンデータ作成手段は、前記直線部の長さを規定するエッジが前記設計データに比べて前記長手方向に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜31のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項33】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光装置を更に備えることを特徴とする請求項20〜32のいずれか一項に記載のパターン作成システム。」
訂正事項b:
本件特許明細書の段落番号【0011】を、以下のように訂正する。
「【課題を解決する為の手段】
上記目的のために請求項1に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することとした。
また、請求項14に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定し、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが前記終端近傍であるときは、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定することとした。
また、請求項20に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段ととした。
また、請求項28に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定する検定手段と、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが終端近傍であるとき、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備える構成とした。」

(2)[訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否]
訂正事項a
A.請求項1
ア)訂正前の請求項1に係る発明の「前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定し」を、「前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し」と限定するものである。また、訂正前の請求項1に係る発明の「該一定間隔以上となるエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、該少なくとも一部のエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定する」を、「前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定する」と限定するものである。
イ)当該「該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し」及び「前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定する」は、訂正前の特許請求の範囲の請求項13、段落【0024】及び段落【0025】の記載に基づくものである。
B.請求項21(訂正後の請求項20に対応)
ア)訂正前の請求項21に係る発明に「前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段」を記載した。
さらに、訂正前の請求項21に係る発明の「前記一定間隔以上となるエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するとき、前記少なくとも一部のエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段」を「前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段」と限定するものである。
イ)当該「前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段」及び「前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段」は、訂正前の特許請求の範囲の請求項28、段落【0024】及び段落【0025】の記載に基づくものである。
C.上記A、Bの訂正に伴い、請求項1に従属する請求項3、4、5、13、請求項20に従属する請求項22、23、27の記載を、訂正後の請求項1、20の記載と整合をとるために訂正する。
従ってこの訂正は、特許請求の範囲の減縮または、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
訂正事項b
上記訂正事項bについては、特許請求の範囲の訂正に伴い、課題を解決する為の手段を特許請求の範囲の記載と整合をとるため、明瞭でない記載の釈明を目的とした訂正である。この訂正は、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。
上記訂正事項a、bは、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

(3)独立特許要件
上記訂正事項aの訂正明細書の請求項4、5、13、23、27に係る訂正は、特許異議の申立てがされていない請求項についての訂正であって、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに該当するから、独立特許要件について検討する。
訂正明細書の請求項4、5、13に係る発明は、訂正明細書の請求項1に係る発明の構成要件を全て含むものである。
そして、当該請求項1に係る発明が、下記3.特許異議の申立てについて、(4)[対比・判断]、[本件発明1について]で述べているように、申立人が提出した甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができないので、同様の理由により、訂正明細書の請求項4、5、13に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
訂正明細書の請求項23、27に係る発明は、訂正明細書の請求項20に係る発明の構成要件を全て含むものである。
そして、当該請求項20に係る発明が、下記3.特許異議の申立てについて、(4)[対比・判断]、[本件発明20について]で述べているように、申立人が提出した甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることができないので、同様の理由により、訂正明細書の請求項23、27に係る発明は、申立人が提出した甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、訂正明細書の請求項4、5、13、23、27に係る発明は、出願の際、独立して特許を受けることができるものである。

(4)[結び]
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第1項ただし書、第2項、第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)[申立ての理由の概要]
特許異議申立人吉川 喜一郎は、下記甲第1号証刊行物を提出し、請求項1ないし3、6、9、12、19ないし23、27、35に係る発明の特許は、甲第1号証刊行物に記載された発明あるいは甲第1号証刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから取り消すべき旨主張している。
甲第1号証刊行物:「1987 SYMPOSIUM ON VLSI TECHNOLOGY」
DIGEST OF TECHNICAL PAPERS, IEEE CAT. No. 87, 1987, 第13,14頁

(2)[本件発明]
異議申立ての対象となる訂正後の請求項は、訂正前の請求項1ないし3、6、9、12、19ないし23、27、35をそれぞれ訂正した請求項1ないし3、6、9、12、18ないし22、26、33であり、これらの請求項に係る発明は、平成14年7月26日付けの訂正明細書に記載された次のとおりのものである。(以下、「本件発明1ないし3、6、9、12、18ないし22、26、33」という。)
【請求項1】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、
前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項2】
前記作成データは、前記対象となるパターン要素に該当する前記設計データの一部を修正したものであることを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。
【請求項3】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。
【請求項6】
前記対象となるパターン要素は、線幅を規定する一対のエッジが共に前記一定間隔以上となる孤立部を少なくとも一部に含み、前記一対のエッジがそれぞれ拡張されるように前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項9】
前記複数のパターン要素は少なくとも一部が前記一定間隔よりも狭い間隔で配列される密集部となり、該密集部の両端のパターン要素でそれぞれ外側のエッジが拡張されるように、前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項12】
前記パターンを前記感光基板上に転写する露光装置の解像限界の線幅値に対応して前記一定間隔が定められることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項18】
前記マスクは、前記感光基板に照射される露光用照明光が透過する透過型であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項19】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光工程を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項20】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、
前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項21】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素に該当する前記設計データの一部を修正する修正手段を有することを特徴とする請求項20に記載のパターン作成システム。
【請求項22】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項20又は21に記載のパターン作成システム。
【請求項26】
前記パターンを前記感光基板上に転写する露光装置の解像限界の線幅値に対応して前記一定間隔が定められることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項33】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光装置を更に備えることを特徴とする請求項20〜32のいずれか一項に記載のパターン作成システム。」

(3)[刊行物記載の発明]
特許異議申立人の提出した甲第1号証刊行物には、
「The windage, or proximity bias , is selective and adjustable to the distance between features. Isolated features get full windage, features in intermediate proximity get a smaller and space size dependent windage, while minimum size spaces and features remain unchanged. 」(第13頁左欄最下行から6行目〜最下行)が記載され、
そして、フォトリソグラフィに使用される感光用のマスクに係るもので、スペース幅、ライン幅が、解像限界である0.7μmに近い値となる場合に近接効果によりエッチングされた後のpoly Si の孤立部(isolated features)におけるパターン幅が減少すること、そして、これを解消するために修正関数(correction function)に基づいて設計スペース幅が所定値を越える場合のラインのパターン幅を拡張するようなマスクパターンの補正をすることが示され、Fig.4に関する記載には、設計ライン幅が0.8〜2.0μmの範囲で最大0.05μmの補正量とすることが示され、また、Fig.5,(a)に関する記載には、同図におけるラインAの幅方向だけではなく、長手方向にも拡張するような補正を加える場合、矩形状パターンの直交2方向について幅の補正を加える場合が示されている。

(4)[対比・判断]
[本件発明1について]
本件発明1と甲第1号証刊行物記載の発明とを対比すると、甲第1号証刊行物記載の発明は、本件発明1が具備する、
「前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定する」という構成を具備していないし、また、かかる点について示唆もされていない。
しかも本件発明1は、前記構成を有することで、明細書記載の「孤立パターンや、周期パターン部での線幅の部分的な細りを解決し、設計値通りの大きさのレジストパターン、及び回路パターン等を得ることができる。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明1は、甲第1号証刊行物に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとは認められないから、本件発明1は、甲第1号証刊行物に記載された発明と同一であるとも、また甲第1号証刊行物に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたとも認めることはできない。
したがって、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。

[本件発明2、3、6、9、12、18、19について]
本件発明2、3、6、9、12、18、19は、本件発明1の構成要件を全て含み、さらに設計データの修正や露光工程について他の構成要件を付加したものに相当するから、本件発明1について説示したのと同様の理由により、甲第1号証刊行物に記載された発明と同一であるとも、また甲第1号証刊行物に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたとも認めることはできない。
したがって、本件発明2、3、6、9、12、18、19は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。

[本件発明20について]
本件発明20と甲第1号証刊行物記載の発明とを対比すると、甲第1号証刊行物記載の発明は、本件発明20が具備する、
「前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段」という構成を具備していないし、また、かかる点について示唆もされていない。
しかも本件発明20は、前記構成を有することで、明細書記載の「孤立パターンや、周期パターン部での線幅の部分的な細りを解決し、設計値通りの大きさのレジストパターン、及び回路パターン等を得ることができる。」といった顕著な効果を奏するものと認められる。
してみると、本件発明20は、甲第1号証刊行物に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものとは認められないから、本件発明20は、甲第1号証刊行物に記載された発明と同一であるとも、また甲第1号証刊行物に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたとも認めることはできない。
したがって、本件発明20は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。

[本件発明21、22、26、33について]
本件発明21、22、26、33は、本件発明1の構成要件を全て含み、さらに設計データの修正や露光装置について他の構成要件を付加したものに相当するから、本件発明1について説示したのと同様の理由により、甲第1号証刊行物に記載された発明と同一であるとも、また甲第1号証刊行物に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたとも認めることはできない。
したがって、本件発明21、22、26、33は、特許法第29条第1項第3号または同法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。

(5)[結び]
したがって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
パターン作成方法、及びパターン作成システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、
前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項2】
前記作成データは、前記対象となるパターン要素に該当する前記設計データの一部を修正したものであることを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。
【請求項3】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。
【請求項4】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開し、該展開された2値化画像の情報に基づいて、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素に存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン作成方法。
【請求項5】
前記対象となるパターン要素の少なくとも一部のエッジが他のパターン要素から一定画素数以上離れているとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項4に記載のパターン作成方法。
【請求項6】
前記対象となるパターン要素は、線幅を規定する一対のエッジが共に前記一定間隔以上となる孤立部を少なくとも一部に含み、前記一対のエッジがそれぞれ拡張されるように前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項7】
前記一対のエッジの各拡張量は前記孤立部の線幅の10〜15%程度であることを特徴とする請求項6に記載のパターン作成方法。
【請求項8】
前記対象となるパターン要素は、前記一対のエッジの延設方向が長手方向となる線状パターンであることを特徴とする請求項7に記載のパターン作成方法。
【請求項9】
前記複数のパターン要素は少なくとも一部が前記一定間隔よりも狭い間隔で配列される密集部となり、該密集部の両端のパターン要素でそれぞれ外側のエッジが拡張されるように、前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項10】
前記外側のエッジの拡張量はそのパターン要素の線幅の10〜15%程度であることを特徴とする請求項9に記載のパターン作成方法。
【請求項11】
前記密集部内のパターン要素はその線幅を規定する一対のエッジの延設方向を長手方向とする線状パターンであることを特徴とする請求項9又は10に記載のパターン作成方法。
【請求項12】
前記パターンを前記感光基板上に転写する露光装置の解像限界の線幅値に対応して前記一定間隔が定められることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項13】
前記長手終端近傍であるエッジが更に他のパターン要素から一定間隔以上離れているとき、前記長手終端近傍であるエッジを拡張するための修正量と、前記一定間隔以上離れるエッジを拡張するための修正量との合成で決まる量だけ前記長手終端近傍のエッジが拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項14】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定し、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが前記終端近傍であるときは、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項15】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記直線部の短手方向の線幅が中心部よりも終端近傍で相対的に太くなるように、前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1又は14に記載のパターン作成方法。
【請求項16】
前記複数のパターン要素は孤立部と密集部との少なくとも一方を含み、前記直線部は、前記孤立部又は前記密集部の少なくとも一部を構成する線状パターンであることを特徴とする請求項15に記載のパターン作成方法。
【請求項17】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記直線部の長さを規定するエッジが前記設計データに比べて前記長手方向に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項18】
前記マスクは、前記感光基板に照射される露光用照明光が透過する透過型であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項19】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光工程を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項20】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、
前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項21】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素に該当する前記設計データの一部を修正する修正手段を有することを特徴とする請求項20に記載のパターン作成システム。
【請求項22】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項20又は21に記載のパターン作成システム。
【請求項23】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開する2値化展開手段を更に備え、前記第1検定手段は、前記展開された2値化画像の情報に基づいて、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素に存在するか否かを検定することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項24】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部のエッジが他のパターン要素から一定画素数以上離れているとき、前記少なくとも一部のエッジが前記設計データに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項23に記載のパターン作成システム。
【請求項25】
前記パターンデータ作成手段は、前記少なくとも一部のエッジの拡張量が前記対象となるパターン要素の線幅の10〜15%程度となるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜24のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項26】
前記パターンを前記感光基板上に転写する露光装置の解像限界の線幅値に対応して前記一定間隔が定められることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項27】
前記長手終端近傍であるエッジが更に他のパターン要素から一定間隔以上離れているとき、前記パターンデータ作成手段は、前記長手終端近傍であるエッジを拡張するための修正量と、前記一定間隔以上離れるエッジを拡張するための修正量との合成で決まる量だけ前記長手終端近傍のエッジが拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜26に記載のパターン作成システム。
【請求項28】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定する検定手段と、
前記対象となるパターン要素の着目するエッジが終端近傍であるとき、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項29】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開する2値化展開手段を更に備え、前記検定手段は、前記展開された2値化画像の情報に基づいて、前記着目するエッジが終端近傍であるか否かを検定することを特徴とする請求項28に記載のパターン作成システム。
【請求項30】
前記パターンデータ作成手段は、前記着目するエッジが終端近傍であるとき、前記着目するエッジが他のエッジに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項29に記載のパターン作成システム。
【請求項31】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記パターンデータ作成手段は、前記直線部の短手方向の線幅が中心部よりも終端近傍で相対的に太くなるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項26又は28に記載のパターン作成システム。
【請求項32】
前記対象となるパターン要素が所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含むとき、前記パターンデータ作成手段は、前記直線部の長さを規定するエッジが前記設計データに比べて前記長手方向に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜31のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項33】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光装置を更に備えることを特徴とする請求項20〜32のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、半導体集積回路等の回路パターン等の露光転写、特に投影式露光転写に用いられるレチクル(フォトマスク)及びその製造方法に関し、特にそのパターン作成方法、作成システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のレチクルでは、露光転写後に得られるフォトレジスト像パターン、すなわち回路パターンの形状が、そのままレチクル上でのパターンとなっていた。従って、得たい回路パターンの線幅が同一の複数のパターンがあれば、各パターンの周囲にどのようなパターンが存在しようとも、各パターンの線幅は同一とされていた。
【0003】
また、従来は投影露光装置の照明光学系のσ値が0.5〜0.7と比較的大きく、従ってレチクルパターン面での照明光の可干渉性が低かった。このため、特定のパターンの周囲にどのようなパターンがあっても、パターン間で相互に影響をおよぼし合うことは少なかった。ただし、従来においても、例えば微小四角形透過パターン(コンタクトホールパターン)の4隅をより角張らせるために、四角形の頂点近傍に補助パターンを追加する手法は報告されているが、これは、必要なパターン間の相互作用を考慮した補正ではない。
【0004】
また最近、特公昭62-50811号公報に開示されているような位相部材付きのマスクを使った露光方法、いわゆる位相シフト法の効果を高める為に、本来のパターンの近傍に補助パターンを設ける方法等が報告されているが、これもやはり必要パターン間の相互作用を考慮して補正するものではない。また、上記方法の補正方法は、人手と経験等にたよるものであり、アルゴリズムの確立された自動補正方法とは言えないものであった。さらに、照明光学系のフーリエ変換面での照明光分布を輪帯状等に変更した投影型露光装置によって、パターンの解像度と焦点深度を改善できることが報告されている。
【0005】
図1は照明光学系によるレチクルへの照明を特殊な方法に変更した装置の例を示し、レチクルRと感光基板(ウェハ)Wとの間には投影光学系PLが配置され、レチクルR上のパターンはウェハW上に結像される。このとき、レチクルRは照明光学系内のコンデンサーレンズCLを介して露光用の照明光の照射を受けるが、照明光学系内のフーリエ変換面には照明光ILを輪帯状に制御する空間フィルターSF1、もしくはフーリエ変換面内の離散的な2〜4ヶ所に微小円形開口を有する空間フィルターSF2が配置される。これらの空間フィルターSF1、又はSF2によって、レチクルRには、投影レンズPLの光軸と平行な光線成分が除去され、特定の角度の光線成分のみをもった照明光が達する。空間フィルターSF1、SF2は照明光学系のフーリエ変換面に配置されるが、空間フィルターSFは投影光学系PLの瞳面epとも共役となる。
【0006】
このように、照明光学系によってレチクルRに対する照明光束の配向特性を特殊なものにすると、パターンの解像度と焦点深度とを10〜40%程度改善することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図1のように照明光学系に変更を施した露光装置を使用する場合、レチクルに対する照明光束の入射方向が、従来とは異なる方向で制限される。このため、従来とは異なる可干渉性がレチクル上の照明光束に生じ、近接パターン同士の相互作用が無視できない状態となってしまう。このため、レチクル上で同一寸法のパターンが数個存在する場合、そのウェハへの露光転写像(フォトレジスト像)は、それぞれのパターンの周辺のパターンによって、線幅が太く、あるいは細くなるという問題が生じてしまう。
【0008】
実験等によって得られた結論から述べると、図1のような特殊な照明光学系を使う場合においては、周期的パターンのレジスト線幅に比べ、孤立的パターン及び、周期的パターンの周期方向の終端部のレジスト線幅が細くなる傾向にある。これはもちろん、比較すべきパターンがレチクル上同一サイズであり、同一露光量で露光転写されることを前提としている。さらに、孤立的なパターンがライン状であるとすると、そのラインの長手方向についても寸法が若干短くなることがわかった。
【0009】
従って、上述の如き露光技術を使用する場合に、レジスト像として(すなわち、パターンエッチング後の回路パターンサイズとして)、周期的パターンと孤立的パターンの両者を共に所望の線幅及び長さとする為には、レチクルパターン上の各パターンの形状に予め修正を加えておく必要がある。
しかしながら従来においては、そのような修正を自動的に行なう為のアルゴリズム(補正方法)及び修正装置は確立されていなかった。
【0010】
本発明は、このような補正を自動的に行なう為のアルゴリズム及び修正処理装置を備えたマスクパターンの作成システムの提供を目的とし、かつ補正の施されたレチクルの量産を可能とすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決する為の手段】
上記目的のために請求項1に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することとした。
また、請求項14に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定し、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが前記終端近傍であるときは、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定することとした。
また、請求項20に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段ととした。
また、請求項28に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定する検定手段と、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが終端近傍であるとき、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備える構成とした。
【0012】
【作用】
図2は従来のパターン形状の一例を示し、図2(A)はレチクル上の設計値に基づいたパターン形状を示す。このパターン形状は、5本のラインアンドスペースであり、ここでは5本のライン部(閉領域)PC1、PC2、PC3、PC4、PC5が露光光に対する透明部であり、その周囲(下地)は遮光部であるものとする。もちろん、透明部と遮光部の関係はその逆であっても同じである。
【0013】
図2(A)において、5本のライン部のうち中央の1本のライン部PC3は他のライン部に比べて2倍程度長い。このため、ライン部PC3の一部は、他のライン部との周期的な相関を持たない孤立的な部分になっている。また、周期方向の両端に位置する2本のライン部PC1、PC5についても、周期方向の片側のみにライン部PC2、PC4が隣接するだけなので、部分的に孤立的とも言える。尚、図2(A)のライン幅は投影露光装置の解像限界に近い値とする。
【0014】
このようなレチクルパターンを、図1に示した特殊照明光学系をもつ投影露光装置によって感光基板上に投影露光し、露光された基板を現像すると、図2(B)のようなレジスト像が得られる。図2(B)において中央のライン部PC3に対応したレジスト像は、先端の孤立的な部分でライン幅が設計値よりも細くなり、同時に両端の2本のライン部PC1、PC5の夫々に対応したレジスト像も、全体に細くなっている。さらに、5本のライン部の夫々は、ラインの長手方向についても若干短くなっている。
【0015】
そこで、図2(A)に示した設計上のレチクルパターンを、図3(A)に示すように、ライン部の一部のパターン線幅及びライン長さを修正して、最終的に得られるレジスト像を、図3(B)のように設計上の形状、寸法と一致させるのである。
図3(A)において、中央のライン部PC3はライン部PC3’のように、周囲パターンとの相関から周期性の強い中央部以外はライン終端にいくに従って線幅を所定量だけ太らせるとともに、ライン長手方向にも拡張する。但し、ライン長手方向の拡張は必ずしも必要ではない。さらに、両端の2本のライン部PC1、PC5は夫々ライン部PC1’、PC5’のように、全体の線幅を太らせるとともに、終端部でさらに所定量太らせる。但し、ライン部PC1’、PC5’については、隣接するライン部PC2、PC4が存在しない側のエッジのみを太らせるようにする。そして、ライン部PC2、PC4については、ラインの両終端部で一定量だけ線幅を太らせる。これらライン部PC1’、PC5’、PC2’、PC4’は、いずれも長手方向の寸法も一定量だけ拡張される。
【0016】
このようなパターン修正を自動的に行うために、図4に示すように、鳥が翼を広げて滑空しているような形状の検定子を用意する。この検定子は、例えば図2(A)に示した設計上のパターンの2値化されたビットイメージ上を画素(ビット)単位で走査して、着目するパターンエッジを修正すべきか否かを判断するために使われる一種のテンプレートでもある。
【0017】
図4において、画素点Apxは着目すべきレチクルパターン上の点であり、直線状の領域Cpx、長方形、又は楕円形の領域Bpx、2枚の羽根状の領域DAp、EAp、及び4つの円形状の領域DBp、DCp、EBp、ECpは、点Apxのパターンエッジ部を修正するか否かを決定するための検定子である。図4の検定子テンプレートは着目点Apxに対して直線状の検定子Cpxを先頭にして、ビットイメージに対し同図中右方向に走査される。図4に示すようにXY座標系を定めると、直線状検定子Cpxは着目点Apxと同一のY座標上に設定され、着目点Apxとは+X方向に距離Lだけ隔てられ、かつX方向の長さも距離Lに定められる。この距離Lは図1に示した投影露光装置で得られる解像限界の線幅値に対応して定められ、例えばウェハW上での解像限界を0.4μmとし、投影レンズPLの縮小倍率を1/5とすると、距離Lはレチクルパターン上で約2μmの寸法に対応する。
【0018】
楕円状の検定子Bpxは、その中心が着目点Apxから-X方向に距離3L/2だけ隔てられ、かつX方向の幅がほぼLに定められる。さらに、検定子BpxのY方向の幅はほぼ2Lに定められ、着目点Apxを通るX軸と平行な中心線CCに関して対称な大きさとなっている。
2枚のほぼ同じ大きさの羽根状の検定子DAp、EApは中心線CCに対して対称に配置され、X方向の幅がL/2、Y方向の幅が3L/2程度に定められる。2枚の羽根状検定子DAp、EApは中心線CC上で一部重複しており、その位置は着目点Apxから+X方向にL/2の距離に設定される。
【0019】
さらに4つの円形状の検定子DBp、DCp、EBp、ECpの各中心は、中心線CCから±Y方向にいずれも距離Lの位置に設定され、さらに検定子DBpとEBpの各中心は着目点Apxから+X方向に距離3L/2だけ隔てられ、検定子DCpとECpの各中心は着目点Apxから-X方向に距離L/2だけ隔てられる。また、4つの検定子DBp、DCp、EBp、ECpの大きさは半径がL/2〜L/4程度の円形に内包されるものとする。
【0020】
これらの検定子Bpx、Cpx、DAp、DBp、DCp、EAp、EBp、ECpは、着目点ApxにY方向に伸びたパターンエッジが位置したときに、各検定子に内包されるビットイメージの論理値「0」、「1」の状態を判断するように働く。従って、各検定子は、それらの領域内の全ての画素(ビット)をチェックするのではなく、その領域内の離散的な点を選んでチェックするだけで良い。また、距離Lは投影光学系PLの解像限界程度の値(レチクル側での値)とするが、図1のような特殊な照明法によって解像力を上げた場合は、その向上した解像力によって得られる限界の線幅値(レチクル側での値)とほぼ等しくなるように定められる。また、円形状の検定子DBp、DCp、EBp、ECpは、ここでは面積(半径L/2〜L/4)を有するものとしたが、それぞれの中心位置の1画素の点のみで判断するようにしても良い。
【0021】
この図4の検定子のテンプレートは、パターンの2次元ビットイメージに対して相対的に+X方向、すなわち線状検定子Cpx側を先頭にしてスキャンされる。ただし実際は、テンプレート側をビットイメージ上で走査することは難しいので、テンプレートに対してビットイメージの方を1画素ずつX方向に1ライン分走査したら、Y方向に1画素だけステップさせて再びX方向に走査することを繰り返していく。
【0022】
次に、図4の検定子テンプレートを用いたパターン修正の判断アルゴリズムの原理を図5、図6を参照して説明する。まず、図5(A)、(B)は、線幅が解像限界程度のL、長さが6L程度の孤立したラインパターンPA(斜線部)を修正する例を示し、ラインパターンPAはここではレチクル上で遮光部となり、ビットイメージ上では論理値「1」をとるものとする。そして、その周辺部は全て透明部(下地)であり、論理値「0」をとるものとする。
【0023】
図5(A)は、このようなパターンPAのY方向に伸びるパターンエッジに着目点Apxが+X方向に矢印のようにスキャンしながら当たった状態を示す。このとき、楕円状検定子Bpx中に設定された検定ビットは全て論理値「0」(下地)であるので、着目点Apxに位置するパターンエッジ部は孤立的であると判断する。このとき着目点Apxのスキャン方向の逆方向(-X方向)にパターンエッジを一定量だけ拡張する。この拡張する量ΔLは、図1の特殊照明法による露光の際は、寸法L(解像限界値)の10〜15%程度とする。
【0024】
次に、検定子DAp、DBp、DCp、検定子EAp、EBp、ECp、及び直線状検定子Cpxを用いて、着目点のエッジ部がパターンPAの長辺側終端部近傍(以下、長手終端部と呼ぶ)か否かを判断する。図5(A)の場合、2枚の羽根状検定子DAp、EAp内の検定ビットは全て論理「1」(パターン)であるので、着目点Apxのエッジ部は長手終端部近傍とは判断しない。従って、着目点Apxのエッジ部に対する線幅の補正量(太らせ量)はΔLとなる。
【0025】
次に、図5(B)のように、着目点ApxがパターンPAの長手終端部近傍のY方向に伸びたエッジ部に位置したものとする。この場合も、楕円状検定子Bpx内の検定ビットは全て「0」(下地)であるので、着目点Apxのエッジ部は孤立的であると判断し、そのエッジ部の線幅がΔLだけ太るように修正する。
さらにここでは、羽根状検定子DAp内に論理「0」(下地)と論理「1」(パターン)とが混在している。このときは、着目点Apxのエッジ部が長手終端部近傍である可能性があるので、同時に検定子DBp、DCp内のビットデータを検査する。ここでは検定子DBp、DCp共に全て論理「0」(下地)であるので、着目点Apxのエッジ部が長手終端部である可能性がまだある。そこで、さらに直線状検定子Cpx内のビットデータを検査する。ここでは検定子Cpx内の少なくとも一部(又は全部)に論理「0」(下地)のビットを含むので、最終判断として着目点Apxでのエッジ部は長手終端部近傍と判断し、着目点Apxのエッジ部の線幅をさらにΔL(合計2・ΔL)だけ太らせる。
【0026】
図5(C)、(D)はラインパターンPAの2本を間隔Lで平行に並べた場合である。2本のラインパターンPAの長さはともに6Lである。図5(C)のように2本のラインパターンPAのうち右側のパターンの左エッジに着目点Apxが位置すると、検定子Bpxは全て論理「1」であるので、着目点Apxのエッジ部は孤立的ではないと判断される。同時に、羽根状検定子DAp、EAp内も全て論理「1」であるので、着目点Apxのエッジ部は長手終端部でもないと判断される。従って、図5(C)中の着目点Apxの位置では、パターンの線幅は変更されない。
【0027】
さらに、図5(D)のように着目点Apxが位置すると、検定子Bpx内には論理「0」と「1」とが混在するので、着目点Apxのエッジ部は孤立的ではないと判断する。このとき、羽根状検定子DApは論理「0」を含み、かつ検定子DBp、DCpは全て論理「0」、かつ直線状検定子Cpxは論理「0」を含むので、着目点Apxのエッジ部は長手終端部と判断され、線幅をΔLだけ太らせる補正を行う。
【0028】
図6(A)、(B)は幅L、間隔Lのラインパターンが90°のコーナーを形成する2つのパターンPM、PNの例である。図6(A)の場合、検定子Bpx内は全て論理「0」であるので、着目点Apxのエッジ部は孤立的であると判断され、そのエッジ部をΔLだけ拡張する。このとき、羽根状検定子DAp内には「0」が含まれるので、検定子DBp、DCpについても検査するが、検定子DBpが「1」を含むので、結局着目点Apxのエッジ部はパターンPNの長手終端部とは判断されない。従って、合計の補正量(線幅の太らせ量)は、ΔL(孤立的と判断された分)となる。
【0029】
また、図6(B)の場合、検定子Bpx内には「1」が含まれるので、着目点Apxのエッジ部は孤立的ではないと判断される。この図6(B)のときも、図6(A)と同様に、羽根状検定子DApは「0」を含み、かつ検定子DBp、DCpには「1」が含まれない(全て「0」)が、直線状検定子Cpx内は全て「1」であるので、着目点Apxのエッジ部はパターンPMの長手終端部とは判断されない。従って、図6(B)の場合、着目点Apxのエッジ部は孤立でも長手終端部でもないので、線幅の補正は行わない。
【0030】
さて、図6(C)、(D)は以上と異なり、検定子テンプレートを今までの状態から時計回りに90°回転させたものであり、かつスキャン方向も-Y方向となっている。図6(C)の場合、孤立した1本のラインパターンPAの長手端部のエッジに着目点Apxが位置するが、このとき検定子Bpx内は全て「0」(「1」を含まない)ので、着目点Apxのエッジ部はとりあえず孤立と判断され、ΔLだけ補正される。同時に、検定子DAp、EAp内には共に「0」が含まれるが、検定子DApに対してスキャン方向の前後に位置する検定子DBp、DCpを検査すると、これらの検定子DBp、DCpはいずれも「1」を含まず、さらに検定子EApに対してスキャン方向の前後に位置する検定子EBp、ECpを検査すると、これらの検定子EBp、ECpはいずれも「1」を含まない。さらに検定子Cpxを検査すると、検定子Cpxは「0」を含まない(全て「1」)なので、結局、着目点ApxのエッジはラインパターンPAの長手方向を規定するエッジと判断される。ただしこの場合、ライン幅を規定するエッジの長手終端部ではないので、そのことによる線幅の補正は行わない。
【0031】
従って、着目点Apxのエッジ部における線幅(ここでは長さ)はそのエッジ部が孤立した部分であることから、+Y方向(スキャン方向の-Y方向の逆方向)に+ΔL(孤立的と判断された分)だけ拡張される。
次に、図6(D)のように、幅L、長さ6Lの2本のラインパターンPA、PBが、Tの字状に間隔Lだけ離れて位置している場合を考える。このとき、図6(C)のように検定子テンプレートを-Y方向にスキャンし、着目点がパターンPAの長手端部のエッジにきたものとする。このとき、検定子Bpxは「1」を含むので、着目点のエッジは孤立でないと判断される。また、検定子Cpx、DAp、DBp、DCp、EAp、EBp、ECpの各状態は図6(C)と同じであり、従ってパターンPA、PBの全体からみて、着目点Apxのエッジは長手終端でもないと判断する。従って、図6(D)の着目点ではパターンは補正されない。
【0032】
以上のアルゴリズムを整理すると以下のようになる。
(A)孤立判断
楕円状検定子Bpx内に「1」を含まないとき。
(B)長手終端判断
▲1▼第1判断
検定子DApxが「0」を含み、かつ検定子DBp、DCpが「1」を含まず、かつ検定子Cpxが「0」を含むとき。
【0033】
▲2▼第2判断
検定子EApが「0」を含み、かつ検定子EBp、ECpが「1」を含まず、かつ検定子Cpxが「0」を含むとき。
以上の長手終端判断は▲1▼か▲2▼の少なくとも一方が成立すれば、着目点のエッジ部は長手終端近傍と判断される。ただし▲1▼、▲2▼の両方が同時に成立しても修正量(拡張量)を倍にする必要はない。
【0034】
以上のような修正を、図4に示した検定子テンプレートを+X、-X、+Y、-Yの4方向にスキャンして実行した結果を図7に示す。この際各方向のスキャン時には、検定子テンプレートは回転した位置関係となり、直線検定子Cpxがスキャンの前方を向くように設定される。
図7(A)は図5(A)、(B)及び図6(C)に示す孤立ラインパターンPAの修正後の形状を示す。図7(A)においてパターンPAの長手方向の中央部分は線幅がLからL+2ΔLに拡張され、長手終端部から長さ3L/2の部分は線幅がLからL+4ΔLに拡張される。さらに長手方向の終端エッジも、長手方向にΔLだけ修正される。この結果、修正後のパターンは全長が6L+2ΔLに拡張される。
【0035】
図7(B)は図5(C)、(D)に示した2本の平行なラインパターンPAの修正後の形状を示す。図7(B)に示すように、2本のラインパターンの間隔(スペース部)の値Lは修正後も保存され、2本のラインパターンはともに孤立性の高いエッジ側が特に強く拡張される。ここでも2本のラインパターンの全長は6L+2ΔLに伸びる。この2本のラインパターンは、その1本についてみると、X方向に関して非対称に拡張されるが、2本のラインパターンを一体のパターンとしてみると、X方向の対称性は保たれている。従って、2本のラインパターンのうち例えば左側のラインパターンは左側のエッジが全体にΔLだけ拡張され、長手終端部近傍ではさらにΔLだけ(計2ΔL)拡張される。従って、図7(B)の場合、長手終端部での線幅はL+3ΔLに修正される。
【0036】
図7(C)は、図6(A)、(B)に示した2つのL字状のパターンPN、PMの修正後の形状を示す。まず2つのパターンPN、PMの間のスペース部(設計間隔L)を規定するエッジのうち、長手終端部近傍以外は修正されない。そしてパターンPN、PMの長手終端近傍では、互いに対向する内側のエッジ部がΔLだけ拡張される。またパターンPN、PMの長手終端を規定する各エッジ部も、その長手方向にΔLだけ拡張される。さらにパターンPNの左側と上側の各エッジは全長に渡ってΔLだけ拡張され、その各エッジの長手終端部側の3L/2の部分はさらにΔLだけ太らせられる。同様にパターンPMの右側と下側のエッジに関しては、その長手終端部近傍で2ΔLで一様に、又はΔLと2ΔLの段階状に修正される。段階状にパターンエッジが拡張される場合、図4の検定子テンプレートの条件ではΔLの拡張はエッジ方向にL/2に渡って行われ、2ΔLの拡張はエッジ方向にLに渡って行われる。
【0037】
図7(D)は図6(D)のパターンPA、PBの修正後の形状を示す。ここでもパターンPAは幅方向(X方向)に関して図7(A)のように修正されるが、長手方向に関してはパターンPBに隣接した側のエッジ部は何も修正しない。パターンPBについては、長手方向について2ΔLだけ修正され、パターンPBのパターンPAと反対側のエッジ(同図中で上側のエッジ)については全長に渡ってΔLだけ修正され、さらに長手終端近傍ではΔLだけ修正される。またパターンPBの下側のエッジでは隣接してパターンPAが存在するので、そのエッジの全長の中央部分は何も修正されない。
【0038】
以上のように、本発明によるアルゴリズムに従うと、図1のような特殊な照明方を採用した投影露光装置を用いたとしても、ウェハW上に転写される解像限界程度の線幅の微細パターンは先細りもなく、設計値通りになる。そこで、上述の原理に従った具体的な装置の一例を以下の実施例で説明する。
【0039】
【実施例】
図8は本発明の実施例によるマスク(レチクル)製造システムを模式的に表したブロック図である。一般に縮小投影露光装置(ステッパー等)で使われるマスクはレチクルと呼ばれ、レチクルにはその縮小率の逆数倍だけ拡大されたパターンが形成される。レチクルの製造にあたっては、磁気テープに記録された形成すべきパターンのCAD情報(設計データ)がテープリーダ(MTR)1で読み出され、その情報はビットイメージ展開用のハードウエアロジック(展開手段)2によって2値化されたイメージ(画像)に変換される。そのビットイメージ情報はフレームメモリ3に蓄積されるが、レチクル上の全面のイメージが一度に変換されるのではなく、ある一部分の局所領域(例えば5mm角)毎に変換される。この局所領域は電子ビーム(EB)露光装置4のビーム走査によって一度に露光できる基板M上の大きさに対応している。そして、1つの局所領域の露光が終わったら、隣りの局所領域が露光エリア内に入るように、感応性の基板Mを保持するステージ7をステージ制御系6によって精密に一定量だけ送るのである。同時にフレームメモリ3には、隣りの局所領域内のパターンに対応したビットイメージが変換されて蓄積されている。ビーム制御系5はフレームメモリ3からのビットイメージのデータに応じて、電子ビームのスポットを基板M上の定められた点(画素)に照射するか否かを、ビーム走査中に高速に切り替えていく。電子ビームによる基板Mへのパターン描画には、ラスタースキャン、ベクタースキャン、可変矩形ビーム等、いくつかの方式が実用化されているが、いずれの場合も、パターンのCAD情報はフレームメモリ3上にビットイメージとして展開されている。そこで本実施例では、フレームメモリ3に展開された設計上のビットイメージに対して所望の修正を行うための修正装置(ハードウエアとソフトウエア)10を付加した。
【0040】
フレームメモリ3内には、1画面分の画素として例えば5万×5万個分用意されている。従って、EB露光装置4の1回の露光エリアを5mm角とすると、フレームメモリ3内の1画素(ビット)は基板M上で0.2μm角に相当し、さらにこの基板Mがレチクルとして1/5縮小ステッパーに搭載されると、その1画素はウエハ上で0.04μm角に相当する。今、ウエハ上で要求されている最小線幅が0.4μmとすると、これはレチクル上では2μmになり、ビットイメージ上では10画素分に相当する。
【0041】
通常、レチクル上のパターン要素の多くは、ビットイメージ内の画素の配列方向(XY方向)と平行なエッジで構成され、45°(135°)等の傾いたエッジは少ない。また、以下の説明では、パターン要素はレチクル上でクロム等の遮光層として形成されるものとし、遮光層となる画素内には論理値「1」が記憶され、それ以外の透明部となる画素内には論理値「0」が記憶されるものとする。従って、基板Mの表面にクロム層が蒸着され、さらにその上に電子ビーム用のポジタイプのレジストが塗布されている場合、ビーム制御系5はフレームメモリ3からの画素の値が「1」のときはビームスポットのその位置での照射をオフにし、「0」のときはスポット照射をオンにする。
【0042】
さて、図9は本発明のパターン作成システムに対応し、図8中の修正装置10の概略的な構成を示すブロック図である。フレームメモリ3上に展開された1画面分のビットイメージのデータは、「0」、「1」のシリアルデータに変換されて端子TPに印加される。フレームメモリ3から読み出されたビットシリアルなデータは端子TPとスイッチSW1を介して切り出し窓用のシフトレジスタ群SR1の初段のシフトレジスタWR1に入力する。このシフトレジスタWR1からの出力デ一夕は、次のシフトレジスタ群SR2の初段のシフトレジスタDR1に入力する。そして、シフトレジスタDR1の出力データは再びシフトレジスタ群SR2の2段目のシフトレジスタWR2に入力する。こうして、フレームメモリ3からのビットシリアルなデータは、各シフトレジスタWR1、DR1、WR2、DR2、・・・WRm、DRmの順に次々に1ビットずつシフトされていく。
【0043】
ここで、シフトレジスタ群SR1の各シフトレジスタWR1〜WRmのビット数bwは、40ビット〜60ビット程度に定められ、シフトレジスタ群SR2の各シフトレジスタDR1〜DRmのビット数はいずれもn-bwに定められる。すなわち、シフトレジスタWR1とDR1とのビット数の合計が1画面内の1ライン分のビット数n(例えば50,000)に等しくなるように設定される。また、各シフトレジスタ群SR1、SR2を構成するシフトレジスタWRm、DRmの段数mは、シフトレジスタWR1〜WRmのビット数bwと等しく定められ、ビット数bwが40のときはm=40である。これは、シフトレジスタ群SR1による切り出し窓(bw×bwビット)をビットイメージ上で正方形にするためであるが、必ずしも正方形である必要はない。
【0044】
さて、切り出し窓内の着目点Apxに相当する中心ビットのシリアルデータDCoは、所定ビット数分だけ遅延させるシフトレジスタ100によって遅延されたシリアルデータDCo’となってオア回路104に入力する。一方、切り出し窓内の複数の検定用ビットからのシリアルデータの群DCsとデータDCoは、図4のようなテンプレートを有する検定ロジック回路102に入力し、ここで着目する中心ビットに位置するパターンエッジに修正を加えるかどうかが判断され、修正が必要なときはビット単位で修正データ(論理値「1」か「0」のいずれか一方)DPをオア回路104に出力する。オア回路104は、設計上のオリジナルのビットイメージデータ(DCo’)と修正部分のみのデータ(DP)との論理和を取り、その修正結果のシリアルデータを、少なくとも2画面分のフレームメモリ110Aと書き込み、読み出し制御部110Bとで構成される一時記憶部110に出力する。
【0045】
先にも述べたように検定子テンプレートとビットイメージとは、+X,-X,+Y,-Yの計4方向について相対スキャンを行う必要がある。そこで本実施例では、例えば+X方向のスキャンによる修正については、フレームメモリ3からスイッチSW1を介してビットイメージデータを読み込む際に行い、その修正結果を一時記憶部110のフレームメモリ110Aの1画面目に一時的に格納する。そして、次に-X方向のスキャンによって修正を行うときは、スイッチSW1を図示の状態から切り換えて、その一時記憶部110からのビットイメージデータの読み出し方が-X方向となるように制御し、再び切り出し窓を通して修正されたデータをメモリ110Aの2画面目に記憶する。+Y方向、-Y方向のスキャン時も同様である。
【0046】
4つのスキャンモードは同時にはできないので、結局、一時記憶部110からの1画面分のビットシリアルデータの読み出しは2画面分のメモリを順次切り替えて合計3回行われる。このように1画面当たり4回のスキャンが必要なのは、本実施例における検定ロジック回路102の特性によるものである。従って、検定ロジックのアルゴリズムを工夫すれば、1回のスキャンのみで2次元に修正された修正データを得ることは可能である。
【0047】
こうして、1回のスキャン方向について一時記憶部110に格納された修正ビットイメージデータは、スイッチSW2とスイッチSW1と介してビットシリアルなデータとなって再びシフトレジスタ群SR1に送られ、別のスキャン方向について同様の修正が行われる。こうして4方向のスキャンが終了すると、一時記憶部110内の最終的な修正ビットイメージデータ(シリアル)はスイッチSW2を介してフレームメモリ3へ戻される。以上によりフレームメモリ3内の設計データに基づいたビットイメージは、所定のパターン修正が行われた後のビットイメージに変換される。
【0048】
尚、実際のレチクル製造時には、以上のような修正作業(MTR1→展開手段2→フレームメモリ3→修正装置10→フレームメモリ3)を各画面毎に繰り返して行い、各画面毎に得られた修正ビットイメージデータを、フレームメモリ3内から別のMTRへ順次転送しておき、EB露光装置4による基板Mへの描画時に、その別のMTRから画面毎に修正ビットイメージデータをフレームメモリ3へ読み出すようにする。
【0049】
以上、図9のブロック図は概略的なものであり、実際はシフトレジスタ群SR1、SR2のシフト動作、検定ロジック回路102の検定タイミング、あるいはフレームメモリ3、一時記憶部110の各アドレス指定タイミング等を統括的にコントロールするためのプロセッサーやクロックジェネレータが用意されている。
【0050】
図10は、図9のシフトレジスタ群SR1による切り出し窓を表し、図10中の1つの枡目がシフトレジスタ上の1ビットに相当し、ここでは左上隅のビットがシフトレジスタWR1の1ビット目に対応する。この切り出し窓はX方向に41ビット、Y方向に41ビットで構成されるため、図9のシフトレジスタWR1、WR2―WRmはいずれも41ビットであり、その段数mも41である。■印で示した着目点(ビット)Apxは、切り出し窓の画素配列を左上隅の画素を原点(1、1)としたXY座標系で規定したとき、座標(21、21)に設定される。また、図10は、図4で示した検定子用テンプレートを着目ビットApxを中心に180°回転させたものである。従って直線状検定子Cpxは着目点Apxの左側に位置する。これは、切り出し窓内に現れるビットイメージが、図10中で常に左から右へ(+X方向へ)1ビットずつシフトしていくからである。
【0051】
さて本実施例では、解像限界の寸法値Lがビットイメージ上で10画素に対応するものとし、エッジの修正量(太らせ量)ΔLは線幅Lの10〜15%程度ということから、1画素分ということにする。そこで、切り出し窓内で着目ビットApxから-X方向に10ビットの間隔をあけたビット(10、21)から窓内の左側のビット(1、21)までの10ビットの直線状領域を検定子Cpxとする。この検定子Cpx内にはX方向に10ビットが並ぶが、そのうち4つのビット(1、21)、(4、21)、(7、21)、(10、21)を検定ビットとする。
【0052】
楕円状検定子Bpxは、着目ビットApxから+X方向に10ビットの間隔をあけた検定ビット(32、21)と、このビット(32、21)から+X方向の9番目に位置する検定ビット(41、21)とによって、スキャン方向の幅(ほぼL)が規定される。さらに楕円状検定子BpxのY方向の寸法(ほぼ2L)は4つの検定ビット(34、11)、(39、11)、(34、31)、(39、31)によって規定される。その他、検定子Bpxの輪郭を規定するために4つの検定ビット(32、16)、(41、16)、(32、26)、(41、26)が規定される。
【0053】
羽根状検定子DApは、図4の寸法に従ってX方向にL/2の幅でY方向に3L/2の長さをしめるように、9つの検定ビット(15、21)、(14、19)、(16,19)、(13,16)、(17,16)、(13,11)、(17、11)(14、6)、(17、6)で輪郭が規定される。羽根状検定子EApを規定する検定ビットは、Y座標値=21の中心ラインに関して検定子DApと対称に配置され、ビット(15、21)、(14、23)、(16、23)、(13、26)、(17、26)、(13、31)、(17、31)、(14、36)、(17、36)の9つで構成される。これらの検定ビットのうちビット(15、21)が2つの羽根状検定子DAp、EApの重複部である。
【0054】
さらに4つの円形状検定子DBp、DCp、EBp、ECpについては、本実施例ではいずれも1ビットで構成するものとし、その座標値はそれぞれ(6、31)、(26、31)(6、11)、(26、11)とする。尚、本実施例では着目ビットApx(21、21)にパターンのY方向に伸びたエッジが位置したか否かを検知するために、着目ビットApxの右隣りに検定ビット(21、22)を設定する。従って、着目ビットApxが論理「1」(パターン側)で、隣のビット(21、22)が論理「0」(下地側)であるとき、着目ビットにパターンエッジが位置したと判断できる。
【0055】
以上の各検定ビットからのシリアルビットデータの群は、図9のようにデータDCSとして検定ロジック回路102へ出力される。検定ロジック回路102内には各検定子の働きに対応したロジック演算器が設けられている。
図11(A)は楕円状検定子Bpxを構成する10ビットの各データの論理和を算出するノア(NOR)回路200を示し、図11(B)は直線状検定子Cpxを構成する4ビットの各データの論理積を算出するナンド(NAND)回路202を示す。ノア回路200は、入力する10ビットのデータの全てが「0」(透明部)になっていれば、出力LGBを「1」にして、着目ビットApxに位置するパターンエッジ部が図10中の右側からみて孤立的であると判定する。同様にナンド回路202は入力する4ビットのうちいずれか1ビットでも「0」になっていれば、出力LGCを「1」にして、着目ビットApxに位置するパターンエッジ部が図10中の左側からみて孤立的であると判定する。
【0056】
図11(C)は着目ビットでのエッジの有無を検知する回路を示し、着目ビット(21、21)からのデータDC0はアンド回路203とエクスクルーシブオア(EXオア)回路204との一方の入力に印加される。着目ビットの隣のビット(22、21)からのデータはEXオア回路204の他方の入力に印加され、EXオア回路204の出力はアンド回路203の他方の入力に印加される。この図11(C)の回路において、着目ビットAPXが「1」で隣りのビット(22、21)が「0」のとき、EXオア回路204は論理「1」を出力するから、アンド回路203の出力EDは「1」になる。それ以外の入力条件のとき出力EDは「0」のままである。
【0057】
図12は2つの羽根状検定子DAp、EApの働きをロジックとして表したものである。羽根状検定子DAp、EApはいずれもその領域内に何らかのパターンエッジが存在するか否かを検知すればよいので、それぞれ9ビット入力のナンド(NAND)回路205、206で構成し、ナンド回路205は検定子DAp内が全てパターン(論理「1」)のときのみ出力LGDaを「0」にし、何らかの透明部(論理「0」)が混在するときは出力LGDaを「1」にする。ナンド回路206も同様に、検定子EAP内が全てパターンのときのみ出力LGEaを「0」にし、それ以外のときは「1」にする。
【0058】
図13は、図10にした各検定子からの情報を総合的に判定するロジック回路を示す。まずエッジ判定用のアンド回路203からの出力信号EDは、2つのアンド回路207、208の夫々の一方の入力に印加される。アンド回路207の他方の入力には、ノア回路200からの出力信号LGBが印加される。従ってアンド回路207は,着目ビットがエッジ位置と一致して信号EDが「1」になった時点で、楕円状検定子Bpx内に何もパターンがないとして信号LGBが「1」になっているとき、出力KAを「1」にして、そのエッジが孤立的であることを表す。
【0059】
一方、アンド回路208の他方の入力には、オア回路211を介して、2つのアンド回路209、210の出力信号が印加される。4入力のアンド回路209は、インバータ(NOT)を介して切り出し窓内の検定子DBp(6、31)のデータと、検定子DCp(26、31)のデータとを入力するとともに、ナンド回路205の出力信号LGDaとナンド回路202の出力信号LGCとを入力し、それら4つの信号の論理積をオア回路211の一方の入力に印加する。同様に、4入力のアンド回路210は、インバータ(NOT)を介して切り出し窓内の検定子EBp(6、11)のデータと検定子ECp(26、11)のデータとを入力するとともに、ナンド回路206の出力信号LGEaとナンド回路202の出力信号LGCとを入力し、それら4つの信号の論理積をオア回路211の他方の入力に印加する。この2つのアンド回路209、210は先に原理説明した長手終端部判断(B)の▲1▼、▲2▼の各条件式を演算するものである。
【0060】
従って、信号EDが「1」のときにオア回路211が「1」を出力していれば、着目ビットApxに位置するエッジ部が長手終端部近傍であるとして、アンド回路208の出力KBは「1」になる。
図14は、孤立的なエッジの判定結果を表す信号KAと長手終端部近傍のエッジの判定結果を表す信号KBとに基づいて、切り出し窓を介して得られるビットイメージ上の着目ビットのエッジに対して修正ビットデータを印加する回路の一例を示す。この回路も図9中の検定ロジック回路102内に設けられる。
【0061】
まず図14において、信号KAと信号KBは、2入力のオア回路220を介してダイミング制御回路221へ印加される。オア回路220の出力は、さらにプリセット可能な4ビットのシフトレジスタ222のLSB(最下位ビット)にプリセットデータとして印加されるとともに、スイッチSWaを介してシフトレジスタ222の2ビット目にもプリセットデータとして入力可能となっている。
【0062】
先にも述べたように、パターンエッジの太らせ量ΔLがビットイメー上で1ビット(1画素)であるものとすると、シフトレジスタ222のプリセット用の3つのスイッチSWa、SWb、SWcはいずれも図14に示した位置に設定される。このため、長手終端部の判定結果である信号KBは、通常、アンド回路223によって信号KAとの論理積がとられた後、スイッチSWaを介してシフトレジスタ222の2ビット目にプリセットデータとして印加される。3つのスイッチSWa、SWb、SWcは太らせ量を意識的に変えたいときに、それぞれ図14の位置から切り替えられる。詳しくは後で述べることにする。
【0063】
さて、図9に示したように、着目ビットApxからのシリアルビットデータDC0は各シフトレジスタのシフト動作用のクロックパルスCKに応答して、1ビットずつ4ビットのシフトレジスタ100へ導かれる。シフトレジスタ100を4ビットにしたのは、修正データ付加用のシフトレジスタ222を4ビットにしたからである。そのシフトレジスタ222もクロックパルスCKに応答してプリセットされたデータを1ビットずつMSB(最上位ビット)側へシフトしていき、MSBからデータが修正データDPとしてオア回路104へ出力される。
【0064】
クロックパルスCKは装置内の全てのシフトレジスタのシフト動作を行うために、常時シフトレジスタ222にも印加されるので、プリセットされたデータはクロックパルスCKの4パルス分で全てはき出されてしまう。プリセットされたデータがはき出された後、次のプリセット動作が生じるまでシフトレジスタ222内には論理「0」が全ビットに現れるように設定される。
【0065】
そのプリセット動作は制御回路221からのストローブパルスSTBに応答して行われる。制御回路221はオア回路220の出力が「0」から「1」に反転した後で、かつ次のクロックパルスCKが発生する直前に、ストローブパルスSTBを出力する。シフトレジスタ222はストローブパルスSTBを受けたときだけ、プリセット動作を行う。
【0066】
今、2つの信号KA、KBのうちいずれか一方が「0」から「1」に反転した状態を考える。その場合、制御回路221は次のクロックパルスCKが発生する前に、ストローブパルスSTBを出力する。これに応答して、図14の3つのスイッチの状態ではシフトレジスタ222にLSB側から「1000」のデータ列がプリセットされる。一方、この状態のとき着目ビットApxにはパターンエッジの最外のビット(論理「1」)が位置し、シフトレジスタ100の4ビット内は全て「0」のはずである。
【0067】
そして、次のクロックパルスCKが発生すると、シフトレジスタ100のLSBには着目ビットApxのデータ(論理「1」)がシフトされるので、シフトレジスタ100内のデータはLSB側からみて「1000」となる。このとき同時にシフトレジスタ222もLSB側からMSB側へ1ビットだけシフトされているから、シフトレジスタ222内のデータはLSB側からみて、「0100」となる。
【0068】
こうして順次クロックパルスCKが発生すると、シフトレジスタ100がパターンエッジ外周の1ビット目(論理「1」)をMSBから出力する1シフト前の段階で、シフトレジスタ222は信号KAに対応した1ビット分のデータ「1」をMSB側から出力することになり、オア回路104からはパターンエッジが1画素分だけ太ったシリアルビットデータが出力される。
【0069】
また、信号KA、KBがともに「0」から「1」になったときは、同様にストローブパルスSTBが発生するとともに、アンド回路223は「1」を出力するのでシフトレジスタ222にはLSB側からみて、「1100」のデータ列がプリセットされる。このため着目ビットApxからのシリアルビットデータDC0’には、オア回路104を介してパターンエッジに対し2画素分だけ太るような修正データが付加される。
【0070】
ところで、3つのスイッチSWa、SWb、SWcを図示の状態から切り替えると、太らせ量を意識的に変えられる。例えば、スイッチSWaだけを図示の状態から切り替えると、シフトレジスタ222にプリセットされるデータは信号KA又は信号KBに対応して、LSB側から常に「1100」となる。従ってこの場合、アンド回路223の出力が全く使われないので、パターンの長手終端部で線幅を太らせるといった操作が禁止される。
【0071】
また、スイッチSWbのみを図示の状態から切り替えると、信号KAとKBのいずれか一方に応答して1画素分(ΔL)だけパターンが太るとともに、信号KAとKBの同時性に応答してシフトレジスタ222の2ビット目、3ビット目に「1」がセットされ、2画素分(2×ΔL)だけ太ることになり、長手終端部の孤立的なパターンエッジ部を、スキャン方向と逆方向に合計3画素分だけ太らせることができる。
【0072】
さらに、3つのスイッチSWa、SWb、SWcを全て切り替えると、孤立的、あるいは長手終端近傍のいずれかの判断結果によって、パターンエッジ部は2画素分拡張され、さらにそのパターンエッジ部が孤立的で、かつ長手終端近傍という判断結果によって2画素分拡張され、最大4画素分まで太らせることができる。
【0073】
このように信号KA,KB及びスイッチ群によって、シフトレジスタ222へプリセットすべきデータ列の内容を変えることにより、修正後のパターン線幅や長さをある程度自由に調整することができる。
ところで本実施例では、切り出し窓内に現れるビットイメージは窓内の左から右(+X方向)へ流れており、これに対して検定子テンプレートは窓内で着目ビットの左側に直線状検定子Cpxが位置するように設定した。これは、切り出し窓内に現れる論理「1」の集合体であるパターンエッジのうち、Y方向に伸びた右側のエッジを修正するからである。
【0074】
しかしながら、検定子テンプレートを着目ビットを中心として切り出し窓内で図10の状態から180°回転させた状態に設定した場合は、図9、図14に示したディレー用のシフトレジスタ100を省略することができる。この場合、着目ビットに隣接するエッジ検知用のビットは、切り出し窓内で着目ビットの左側のビット(20、21)に設定されるので、修正されるパターンエッジは、図15に斜線で示すように切り出し窓内でY方向に伸びた左側のエッジになる。
【0075】
このとき図15に示したビットイメージパターンは、やはりシフトレジスタの働きで+X方向に矢印のようにシフトしていく。従って、図15のように着目ビット(21、21)がパターンの左側エッジに位置し、そのエッジが修正すべきものであると判断されたときは、図15の状態から次にシフト動作が行われた時点で着目ビットからのシリアルビットデータDC0に論理「1」を修正データとして加算していけば良い。このためには原理的に、図14の回路において、着目ビットからのデータDC0を直接、オア回路104の一方の入力に印加し、シフトレジスタ222のシフト動作はMSB側からLSB側へ行うようにし、さらにLSBの出力をオア回路104の他方の入力に印加するようにすればよい。
次に、図9〜図14に示した装置構成の具体的な動作の一例を説明するが、ここでは先にも述べたように、修正する単位太らせ量ΔLは1画素分とするので、図14中の3つのスイッチSWa、SWb、SWcは図示の状態に設定される。また検定子テンプレートは図10に示したものとする。さらに、以下においては説明を簡単にするため、図16に斜線で示すようなコの字状のパターンPQ(論理「1」の集合)を使う。
【0076】
まず始めに、設計上のパターンデータが図9のフレームメモリ3上にビット展開された後、フレームメモリ3から設計上のビットシリアルデータが切り出し窓内に順次シフトされてくるときに切り出し窓内に現れるパターンPQのビットイメージが図16のようにコの字状であるものとする。パターンPQは線幅が解像限界程度であり、ビットイメージ上では10画素分とする。また、パターンPQは3つのライン部PQ1、PQ2、PQ3で構成され、互いに平行なライン部PQ1、PQ3の間隔(スペース部)も10画素とする。
【0077】
ここで、X方向に伸びたライン部PQ1は、終端となる10画素分のエッジEg1と、X方向に29画素分のエッジEg2と、X方向に19画素分のエッジEg8とで区画され、Y方向に伸びたライン部PQ2はY方向に30画素分のエッジEg3とY方向に10画素分のエッジEg6とで区画され、さらにX方向に伸びたライン部PQ3は終端となる10画素分のエッジEg5と、X方向に21画素分のエッジEg4と、X方向に11画素分のエッジEg7とで区画される。
【0078】
このようなパターンPQは、切り出し窓内を+X方向に1ビットずつnビット(例えば50,000ビット)だけシフトしたら、全体に1ビットだけ-Y方向にシフトして再び+X方向にシフトしていく。そのため、図10に示した検定子テンプレートを使うと、まず始めにエッジEg3が修正されることになる。
図17はビットイメージのスキャン中に最初にエッジEg3が着目ビットApxに位置した状態を示す。このとき、図11(C)のエッジ検知回路の出力EDは「1」になるため、図13中の2つのアンド回路207、208の夫々は開いた状態に設定される。さらに、図10は検定ビット配置から、楕円状検定子Bpx内は全て透明部(「0」)であるため、図11(A)のノア回路200の出力LGBは「1」となり、アンド回路207の出力KAも「1」になる。
【0079】
一方、切り出し窓内で上側の羽根状検定子EApは全てパターンにかかっているため、図12のナンド回路206の出力LGEaは「0」であり、図13中のアンド回路210は他の入力条件に関わらず「0」を出力する。また、切り出し窓内の下側の羽根状検定子DApについては、検定子EApと重複しているビット(15、21)のみがパターン(「1」)にかかり、他の8つの検定ビットは全て透明部(「0」)にある。このため、図12のナンド回路205の出力LGDaは「1」となり、同時に2つの円形検定子DBp、DCpも「0」である。このため、図13のアンド回路209の4入力のうち3つの入力は「1」になる。
【0080】
ところが、直線状検定子Cpxは全てパターン(「1」)上に位置するので、図11(B)のナンド回路202の出力LGCは「0」となり、結局、図13のアンド回路209の出力は「0」である。以上により、図13のオア回路211の出力は「0」となり、アンド回路208の出力KBも「0」のままである。
従って、図14の回路によって出力KAが「1」、出力KBが「0」のもとで、図17の着目ビットに位置するエッジ部は1画素分だけ太ることになる。こうして順次ビットイメージのスキャンが行われ、修正されたビットイメージデータは、図9中の一時記憶部110内の1ページ目のフレームメモリ部110Aへ格納される。
【0081】
図18は図17の状態からさらにスキャンが進み、エッジEg3が着目ビットに位置した状態を示す。この場合も楕円状検定子Bpxは全て透明部であるので、出力KAは「1」になる。また、上側の羽根状検定子EApは全てパターン上にあるので出力LGEaは「0」であり、アンド回路210の出力も「0」である。
【0082】
一方、下側の羽根状検定子DApxには一部パターンがかかっているので出力LGEaは「1」であり、直線状検定子Cpxは全て透明部上にあるので出力LGCも「1」である。ところが、円形検定子DPpはパターン上に位置するので、アンド回路209の出力は「0」である。この結果、出力KBは「0」のままである。従って、図18の状態においてもエッジEg3は1画素分だけ拡張されることになる。
【0083】
尚、図18において、エッジEg3に隣接したビットのうち×印をつけたビットは、修正後のビットイメージ上で拡張されることを表す。以上のようにして、ビットイメージの+X方向スキャンモードにより、パターンPQのエッジEg3は全て1画素分だけ拡張される。
次に、図9のスイッチSW2を図示の状態にし、スイッチSW1を図示の状態から切り替える。一時記憶部110内の制御部110Bは、1ページ目のフレームメモリ110Aからのシリアルビットデータの読み出し順序を変更して、切り出し窓内に現れるビットイメージを図16の状態から180°回転させる。従って、次の-X方向スキャンモードにおいては、パターンPQのエッジEg1、Eg5、Eg6が修正される。
【0084】
図19は-X方向スキャンモードによって最初にエッジEg1が着目ビットに位置した状態を示す。この場合も、楕円状検定子Bpx内は全て透明部であるので出力KAは「1」になる。また直線状検定子Cpxは全てパターン部であるので、出力LGCは「0」となり、図13の2つのアンド回路209、210はともに「0」を出力する。従って図19の場合、出力KAは「1」、出力KBは「0」となり、エッジEg1は1画素分だけ拡張される。
【0085】
さらに-X方向スキャンモードによってパターンPQが切り出し窓をシフトしていくと、エッジEg6が図20のように着目ビットに位置する。尚、図20中でエッジEg3に隣接した×印のビットは修正によって拡張された部分を表す。この修正されたビットは切り出し窓内のビットイメージとして現れている。またエッジEg1に隣接した×印のビットは、この段階では切り出し窓内に現れていない。
【0086】
さて、図20の場合、楕円状検定子Bpx内にはパターン部と透明部とが混在するため、出力KAは「0」になる。同時に直線状検定子Cpx内は全て透明部であるため、出力LGCは「1」になる。さらに上側の羽根状検定子EAp内は全てパターン部であるから、出力LGEaは「0」になる。一方、下側の羽根状検定子DAp内にはパターン部と透明部とが混在し、出力LGDaは「1」になる。ところが検定子DCpはパターン上にあるため、結局2つのアンド回路209、210はいずれも「0」を出力し、出力KBも「0」になる。従って、図20の状態ではエッジEg6の修正は行われない。
【0087】
以上のようにして、さらにエッジEg5についても1画素分の拡張が行われ、修正されたビットイメージのシリアルデータは一時記憶部110内の2ページ目のフレームメモリ110Aへ順次書き込まれる。その後、2ページ目のメモリ110Aからは制御部110Bによって見かけ上ビットイメージの-Y方向スキャンが行われるように、シリアルビットデータの読み出しが行われ、順次切り出し窓に通される。これによって切り出し窓内に現れるパターンPQは、図16の状態から時計回りに90°回転したものになり、修正され得るエッジはエッジEg2とEg7になる。
【0088】
図21は-Y方向スキャンモード中にエッジEg2が着目ビットの1つ手前に位置した状態を示す。この場合、実際にはエッジEg3の修正部分のビット(×印)が着目ビットの1つ手前に位置する。この状態は先の図17と全く同じなので、結局、エッジEg2は修正によって伸びた部分を含めて全体に1画素分だけ拡張される。ところが、図22に示すようにエッジEg2が着目ビットに位置すると、上側の羽根状検定子EApの先端(上端)の2つの検定ビットがエッジEg1に対する修正部(×印のビット)からはみ出すことになり、出力LGEaは「1」になる。このとき同時に、2つの円形検定子EBp、ECpは「0」になり、直線状検定子Cpx内には「0」と「1」が混在することになるから、図13のアンド回路210は「1」を出力し、その結果出力KBも「1」になる。従って、図22の状態からエッジEg2には先端に渡って2画素分の拡張が行われる。
【0089】
尚、図22においてエッジEg1、Eg3、Eg5に隣接した×印ビットは修正部分であり、この段階で切り出し窓内に現れている。しかしながらエッジEg2に隣接した×印のビットはこの段階では現れてこない。
また、エッジEg7については、スキャンの過程で図23に示すように着目ビットに位置する。この図23の場合、楕円状検定子Bpxは全てパターン部にかかっているため、出力KAは「0」のままである。このとき、直線状検定子Cpxは全て透明部上に位置するから出力LGCは「1」になり、上側の羽根状検定子EAp内にはパターン部と透明部とが混在するので出力LGEaも「1」になる。さらに2つの検定子EBp、ECpはともに「0」であるから、図13のアンド回路210は「1」を出力し、この結果出力KBが「1」になる。従って、出力KAが「0」、出力KBが「1」の条件のもとで、図14の回路によってエッジEg7はエッジEg5の修正ビット分を含めて全長に渡って1画素分だけ拡張される。
【0090】
以上のようにして修正されたシリアルビットデータは一時記憶部110の1ページ目のメモリ110Aへ記憶される。このとき1ページ目にはすでに+X方向スキャンモード時に生成された修正ビットイメージが格納されているが、最早不要であるので消去してしまって構わない。
次に、その1ページ目のビットイメージデータを切り出し窓を+Y方向スキャンモードで通し、修正してデータを2ページ目のメモリ110Aへ記憶する。このとき切り出し窓内を通るビットイメージは図16の状態から反時計方向に90°回転しているように、メモリ110Aからのシリアルビットデータの読み出しが制御される。このため修正され得るエッジはEg4とEg8になる。
【0091】
図24は、+Y方向スキャンモード中にエッジEg8が着目ビットに位置した場合であり、このとき楕円状検定子Bpx内にはパターン部と透明部とが混在するので出力KAは「0」である。さらに、下側の羽根状検定子DApx内と直線状検定子Cpx内には「0」と「1」が混在し、2つの円形検定子DBp、DCpはいずれも「0」である。このため出力LGCは「1」、出力LGDaは「1」となり、図13のアンド回路209は「1」を出力し、出力KBも「1」になる。従って、エッジEg8に対して図24の状態では1画素分だけ拡張される。
【0092】
さらにスキャンが進み、着目ビットが図25のようにエッジEg8上に位置したものとする。このとき楕円状検定子Bpx内には「0」と「1」が混在するので出力KAは「0」である。また上側の羽根状検定子EApと下側の羽根状検定子DApとはいずれもパターン内に含まれてしまうため、出力KBも「0」となる。従って、図25の位置からパターンPQが下方ヘスキャンされていく間は、何ら修正が行われない。尚、図25においてエッジEg8に隣接する修正ビットのうち×印のものは、この段階では切り出し窓内に現れていない。他のエッジについての修正ビットはこの段階で現れている。
【0093】
図26はエッジEg4が着目ビットに位置した場合を示す。この場合、楕円状検定子Bpx内には何もパターンがないので、出力KAは「1」となる。さらに下側の羽根状検定子DApには「0」と「1」が混在するので出力LGDaも「1」となる。同時に直線状検定子Cpx内にも「0」と「1」が混在するので、出力LGCも「1」になる。そして2つの検定子DBp、DCpの位置には何もパターンがないので、図13のアンド回路209は「1」を出力し、出力KBは「1」になる。従って、図26の状態ではエッジEg4は2画素分だけ拡張される。尚、図26においてエッジEg8とEg4に隣接した×印の修正ビットは、この段階では切り出し窓内に現れていない。
【0094】
さらにパターンPQが下方へスキャンされて、図27のようにエッジEg8が着目ビットに位置したとする。このとき、直線状検出子Cpx内は全てパターンになるため、出力LGCは「0」となり、その結果出力KBは「0」になる。ただし出力KAは「1」であるため、ここからは1画素分だけの拡張が行われる。
以上で全ての方向についての修正が終了し、2ページ目のメモリ110Aには、その修正ビットイメージが生成される。後は先に述べたようにスイッチSW2を切り替えて、EB露光用のフレームメモリ3へ修正ビットイメージデータを転送すればよい。こうして生成された修正ビットイメージを図28に示す。図28において、■で示したビットが修正によって付加された部分である。
【0095】
以上、本発明の実施例を説明したが、それ以外にいくつかの変形例が考えられる。まず第1にビットイメージのスキャンは+X、-X、+Y、-Y方向の4回から1回にすることができる。そのためには図10に示した検定子テンプレートを着目ビットを中心に90°ずつ回転させたものを同一切り出し窓内に設定し、着目ビットに何らかのエッジが位置したら、そのエッジの方向性を検知し、その方向性に合った検定子テンプレートを使ってエッジの修正を行うようにすればよい。
【0096】
第2に、図10のテンプレートではパターンの長手終端を規定するエッジについても、ライン長手方向をのばすために、1画素分だけ拡張するようにした。しかしながら、パターンの長手方向の寸法は変えずに、線幅のみを修正したい場合もある。その際は楕円状検定子Bpxが何らかのパターン内に包含されていないこと、すなわち出力LGBが「1」であり、直線状検定子Cpxが何らかのパターン内に全て包含されていること、すなわち出力LGCが「0」であり、かつ2つの羽根状検定子DAp、EApの両方に何らかのパターンのエッジがかかっているとき、すなわち出力LGDa、LGEaがともに「1」のとき、出力KA等を強制的に「0」にするようなロジック回路を設ければよい。具体的には、出力LGB、出力LGCを反転したもの、及び出力LGDa、LGEaの4つを入力するアンド回路を設ける。そしてこのアンド回路の出力が「1」のとき、ストローブパルスSTBが発生しないように、オア回路220の出力の制御回路221への伝達を阻止するゲートを設ければよい。
【0097】
第3に、実施例ではパターンを遮光部として考えたが、逆に透明部として扱うこともできる。その場合、透明部によるラインパターン等の長手終端近傍の線幅を太らせることになる。このときは、フレームメモリ3から切り出し窓へ設計上のビットイメージデータが流れてくる部分、すなわち図9中の端子TPの位置にインバータ(NOT)を設け、同時にスイッチSW2とフレームメモリ3との間にもインバータを設ければ良い。
【0098】
第4に、実施例では図14に示すように、修正データ付加用のシフトレジスタ222のLSBには、常にオア回路220の出力が印加され、着目エッジが孤立的であること(出力KA=「1」)、又は長手終端近傍であること(出力KB=「1」)のいずれか一方で、1画素分の修正を行ったが、単に長手方向終端近傍という条件のみを使って所定画素数分の修正を行っても良い。この場合は、孤立的であるという判定結果を使わなくてもよいので、図14中アンド回路223を省略し、オア回路220の出力とシフトレジスタ222のLSBとの接続をはずし、さらに出力KBを直接LSBとスイッチ群SWa、SWb、SWcとへ接続すれば良い。但し、互いに隣接するパターン間で対向した平行なエッジ部分では、それが長手終端近傍のときに修正量を少なくするか、あるいは修正しなくてもよいこともある。そこで、出力KBが「1」となったときに出力KAが「0」であれば、修正量を1画素分(又は、0画素)とし、出力KAが「1」であれば、修正量を2画素(又は、1画素)とするようにアルゴリズムを変更すれば良い。この場合、出力KBが「0」のときは出力KAの状態にかかわらず修正は行われないようにする。このようなアルゴリズムの変更は、図14中のオア回路220、アンド回路223、スイッチ群SWa、SWb、SWc等の各接続、及びシフトレジスタ222の各ビットへのプリセットデータの与え方を変更するだけで容易に実現できる。
【0099】
第5に、本実施例では対象となるパターン要素は切り出し窓内でX方向(ビットシフト方向)とY方向(ラインシフト方向)との夫々に伸びたエッジのみを有するとしたが、X方向、Y方向の夫々に対して交差する方向、例えば45°方向に伸びたエッジに対して図10の検定子を±X方向、±Y方向の夫々に相対走査させて修正を行っても良い。あるいは図10中の検定子の方向性を45°だけ回転させるように各検定ビットを配置しても良い。尚、図1に示した空間フィルターSF2を使って照明光学系中のフーリエ変換面内の4ヶ所に光源からの照明光束を集中させる際、その4ヶ所の中心点を結んでできる矩形の各辺がX、Y方向と特定の関係(例えば平行)になっていると、斜め45°のエッジを持つライン状パターン(あるいはシェブロンパターン等)は先端での先細りがほとんどない状態で転写され得る。このため、斜め45°(あるいは30°〜60°程度)のエッジを持つパターンに対しては修正動作を禁止するようにしても良い。この場合は、着目ビットApxを通るエッジのうちY方向(又はX方向)に伸びたエッジを検出するためのいくつかの検定ビットを新たに切り出し窓内に設定し、これらの検定ビットによって検出されたエッジ(Y、又はX方向に所定画素数以上に渡って伸びる)に対してのみ上述の修正を行うようにする。その一例としては、例えば図10において、着目ビット(21、21)から上に2〜3画素の位置(21、19)又は(21、18)と、着目ビットから下に2〜3画素の位置(21、23)又は(21、24)とに検定ビットを設定し、着目ビット(21、21)によってエッジが検出されるとき(論理「1」のとき)、さらにその上と下との検定ビットが共に論理「1」になっているか否かを判定すれば良い。ロジック回路としては、その上下の2つの検定ビットの夫々からのデータと図11(c)に示した信号EDとを共に入力する3入力のアンド回路を設け、このアンド回路の出力を図13中の信号EDとして印加すれば良い。
【0100】
また、以上の実施例ではパターンの孤立的な部分で幅を太らせるとしたが、逆に孤立的な部分以外の幅を設計値から所定量だけ細らせるような修正にしても同様の結果が得られる。この場合の検定も、図10の各検定子がそのまま利用でき、着目画素があるパターンのエッジ部に位置したとき、そのエッジ部が孤立的でないこと、及び/又は長手終端近傍でないことを判定し、着目画素のエッジ位置から所定個の画素分だけエッジを内側に細らせるように、すなわち設計上で論理値「1」の部分を強制的に「0」に置き換えるようなアルゴリズムにすれば良い。
【0101】
また、以上の修正は1枚のレチクル中の全パターンデータに対して行なわずに、特定の部分のパターンのデータに対してのみ行なってもよい。
また、本装置で一度に持つパターンデータは、補正を行なう部分の全データである必要はなく、部分的なデータブロックのみを持ち、上記部分を処理(修正後)に、修正後データを補助装置にストアし、次のブロックのデータをリードして処理(修正)を行なうようにしてもよい。この場合、本装置が一度に読み出すデータは修正を行うエリア分よりも、判断テンプレート(検定子、又はそのための切り出し窓)分だけ大きいことが望ましい。
【0102】
また、同一形状のパターン群を含むレチクルパターンの場合、例えばメモリ用のレチクルパターンの場合、1つのパターン群を上述の方法で修正し、他の同一形状のものはこの修正結果をそのまま利用(コピー)すればよく、処理時間の大幅な短縮が図れる。
以上の実施例では、図11〜図14に示したハードウエアによりパターン修正を行ったが、同様の機能を達成するソフトウエアにより修正を行うようにしても構わない。
【0103】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、マスクの遮光パターン部、透過パターン部の形状補正を自動的に行なうことができる。従って、特殊な照明方法を用いた投影露光で問題となる孤立パターンや、周期パターン部での線幅の部分的な細りを解決し、設計値通りの大きさのレジストパターン、及び回路パターン等を得ることができる。
【0104】
また、本発明により得られるレチクルパターンを持つレチクルは、基本的には従来と同様に透過部と遮光部とからのみ成るレチクル(すなわち位相シフトレチクルではない)であり、従来の確立された描画、エッチング、検査、欠陥修正、及び洗浄技術等をそのまま利用することができる。
さらに、上述の特殊な照明方法を用いた露光装置を使用すれば、製造、検査、欠陥修正等が共に困難な位相シフトレチクルを使用するのと同様の解像度及び焦点深度の向上が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
特殊な照明方法を採用した投影露光装置の原理的な構成を示す図。
【図2】
図1の装置で従来のレチクルパターンを露光したときの不都合を説明する図。
【図3】
図2の不都合を解消するためのパターン修正例を説明する図。
【図4】
パターン修正のための検定子(判断テンプレート)の形状を説明する図。
【図5】
図4の検定子を用いた各種パターンの修正の原理的な説明に供する図。
【図6】
図4の検定子を用いた各種パターンの修正の原理的な説明に供する図。
【図7】
図5、図6中の各種パターンの修正後の形状を示す図。
【図8】
本実施例におけるパターン作成システムを含むレチクル製造装置の全体構成を示す図。
【図9】
パターン修正装置の概略的な構成を示す図。
【図10】
切り出し窓内に設定される検定子のビット配置を示す図。
【図11】
各検定ビットに対応した判断ロジック回路を示す図。
【図12】
各検定ビットに対応した判断ロジック回路を示す図。
【図13】
孤立的エッジの判定と長手終端部近傍エッジの判定とを実行する回路を示す図。
【図14】
判定結果に応じて設計上のビットイメージデータに修正ビットデータを付加する回路を示す図。
【図15】
図10の検定子配置を180°回転させた場合のビット配置を示す図。
【図16】
修正すべき設計上のビットイメージパターンの一例を示す図。
【図17】
図16のパターンのエッジEg3に対する修正の様子を示す図。
【図18】
図16のパターンのエッジEg3に対する修正の様子を示す図。
【図19】
図16のパターンのエッジEg1に対する修正の様子を示す図。
【図20】
図16のパターンのエッジEg6に対する修正の様子を示す図。
【図21】
図16のパターンのエッジEg2に対する修正の様子を示す図。
【図22】
図16のパターンのエッジEg2に対する修正の様子を示す図。
【図23】
図16のパターンのエッジEg7に対する修正の様子を示す図。
【図24】
図16のパターンのエッジEg8に対する修正の様子を示す図。
【図25】
図16のパターンのエッジEg8に対する修正の様子を示す図。
【図26】
図16のパターンのエッジEg4に対する修正の様子を示す図。
【図27】
図16のパターンのエッジEg4に対する修正の様子を示す図。
【図28】
図16のパターンの修正後のパターン形状を示す図。
【符号の説明】
1 MTR
2 ビット展開装置
3 フレームメモリ
4 EB露光機
10 修正装置
102 検定ロジック回路
110 一時記憶部
200 ノア回路
202、205、206 ナンド回路
222 シフトレジスタ
SR1 切り出し窓用のシフトレジスタ群
Apx 着目画素
Bpx 楕円状検定子
Cpx 直線状検定子
DAp、EAp 羽根状検定子
 
訂正の要旨 (1)[訂正の内容]
訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。
訂正事項a:
特許明細書の請求項13、28を削除するとともに、特許明細書の請求項14ないし27を請求項13ないし26に繰り上げ、同じく特許明細書の請求項29ないし35を請求項27ないし33に繰り上げて、特許請求の範囲の請求項1、3ないし5、13ないし33を以下のとおり訂正した。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、
前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項3】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項1に記載のパターン作成方法。
【請求項4】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開し、該展開された2値化画像の情報に基づいて、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素に存在するか否かを判定することを特徴とする請求項1又は2に記載のパターン作成方法。
【請求項5】
前記対象となるパターン要素の少なくとも一部のエッジが他のパターン要素から一定画素数以上離れているとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項4に記載のパターン作成方法。
【請求項13】
前記長手終端近傍であるエッジが更に他のパターン要素から一定間隔以上離れているとき、前記長手終端近傍であるエッジを拡張するための修正量と、前記一定間隔以上離れるエッジを拡張するための修正量との合成で決まる量だけ前記長手終端近傍のエッジが拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項14】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定し、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが前記終端近傍であるときは、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定することを特徴とするパターン作成方法。
【請求項15】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記直線部の短手方向の線幅が中心部よりも終端近傍で相対的に太くなるように、前記作成データが決定されることを特徴とする請求項1又は14に記載のパターン作成方法。
【請求項16】
前記複数のパターン要素は孤立部と密集部との少なくとも一方を含み、前記直線部は、前記孤立部又は前記密集部の少なくとも一部を構成する線状パターンであることを特徴とする請求項15に記載のパターン作成方法。
【請求項17】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記直線部の長さを規定するエッジが前記設計データに比べて前記長手方向に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項18】
前記マスクは、前記感光基板に照射される露光用照明光が透過する透過型であることを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項19】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光工程を含むことを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載のパターン作成方法。
【請求項20】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、
前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、
前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項21】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素に該当する前記設計データの一部を修正する修正手段を有することを特徴とする請求項20に記載のパターン作成システム。
【請求項22】
前記作成データは、前記一定間隔以上離れているエッジを拡張するための修正量、又は前記対象となるパターン要素の前記拡張後の線幅に関連する情報を含むことを特徴とする請求項20又は21に記載のパターン作成システム。
【請求項23】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開する2値化展開手段を更に備え、前記第1検定手段は、前記展開された2値化画像の情報に基づいて、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素に存在するか否かを検定することを特徴とする請求項20〜22のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項24】
前記パターンデータ作成手段は、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部のエッジが他のパターン要素から一定画素数以上離れているとき、前記少なくとも一部のエッジが前記設計データに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項23に記載のパターン作成システム。
【請求項25】
前記パターンデータ作成手段は、前記少なくとも一部のエッジの拡張量が前記対象となるパターン要素の線幅の10〜15%程度となるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜24のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項26】
前記パターンを前記感光基板上に転写する露光装置の解像限界の線幅値に対応して前記一定間隔が定められることを特徴とする請求項20〜25のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項27】
前記長手終端近傍であるエッジが更に他のパターン要素から一定間隔以上離れているとき、前記パターンデータ作成手段は、前記長手終端近傍であるエッジを拡張するための修正量と、前記一定間隔以上離れるエッジを拡張するための修正量との合成で決まる量だけ前記長手終端近傍のエッジが拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜26に記載のパターン作成システム。
【請求項28】
感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、
前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定する検定手段と、
前記対象となるパターン要素の着目するエッジが終端近傍であるとき、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備えたことを特徴とするパターン作成システム。
【請求項29】
前記設計データに基づいて、前記対象となるパターン要素の少なくとも一部を含む設計上のパターン要素の画像を微小な画素の集合から成る2値化画像に展開する2値化展開手段を更に備え、前記検定手段は、前記展開された2値化画像の情報に基づいて、前記着目するエッジが終端近傍であるか否かを検定することを特徴とする請求項28に記載のパターン作成システム。
【請求項30】
前記パターンデータ作成手段は、前記着目するエッジが終端近傍であるとき、前記着目するエッジが他のエッジに対して前記画素単位で外側に拡張されるように、前記2値化画像を修正することを特徴とする請求項29に記載のパターン作成システム。
【請求項31】
前記対象となるパターン要素は、所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含み、前記パターンデータ作成手段は、前記直線部の短手方向の線幅が中心部よりも終端近傍で相対的に太くなるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項26又は28に記載のパターン作成システム。
【請求項32】
前記対象となるパターン要素が所定方向に長手方向を有する直線部を少なくとも一部に含むとき、前記パターンデータ作成手段は、前記直線部の長さを規定するエッジが前記設計データに比べて前記長手方向に拡張されるように、前記作成データを決定することを特徴とする請求項20〜31のいずれか一項に記載のパターン作成システム。
【請求項33】
前記決定された作成データに基づいて、前記原版上に前記対象となるパターン要素を形成する露光装置を更に備えることを特徴とする請求項20〜32のいずれか一項に記載のパターン作成システム。」
訂正事項b:
本件特許明細書の段落番号【0011】を、以下のように訂正する。
「【課題を解決する為の手段】
上記目的のために請求項1に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否か、及び該対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定し、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在するときは、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であるときは、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定することとした。
また、請求項14に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成方法において、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定し、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが前記終端近傍であるときは、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定することとした。
また、請求項20に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素のエッジが他のパターン要素から一定間隔以上離れているか否かを検定する第1検定手段と、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが該パターン要素の長手終端近傍であるか否かを検定する第2検定手段と、前記第1検定手段によって、前記一定間隔以上離れているエッジが前記対象となるパターン要素の少なくとも一部に存在すると検定されたとき、前記一定間隔以上離れているエッジが前記設計データに比べて外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定すると共に、前記第2検定手段によって、前記対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが前記長手終端近傍であると検定されたとき、該長手終端近傍のエッジが前記パターン要素の線幅を規定する他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記作成データを決定するパターンデータ作成手段ととした。
また、請求項28に係る本発明では、感光基板上に転写すべきパターンの少なくとも一部に含まれる複数のパターン要素を、マスクとなる原版上に形成するために、前記複数のパターン要素の設計データに基づいて前記各パターン要素の作成データを決定するパターン作成システムにおいて、前記複数のパターン要素のうち対象となるパターン要素の線幅を規定するエッジが終端近傍であるか否かを検定する検定手段と、前記対象となるパターン要素の着目するエッジが終端近傍であるとき、該着目するエッジが他のエッジに対して外側に拡張されるように、前記対象となるパターン要素の作成データを決定するパターンデータ作成手段とを備える構成とした。」
異議決定日 2002-08-21 
出願番号 特願平3-210892
審決分類 P 1 652・ 121- YA (G03F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 信田 昌男  
特許庁審判長 高橋 美実
特許庁審判官 青木 和夫
森 正幸
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3128876号(P3128876)
権利者 株式会社ニコン
発明の名称 パターン作成方法、及びパターン作成システム  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 渡辺 隆男  

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