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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1067421
異議申立番号 異議2001-70595  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-12-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-21 
確定日 2002-08-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3080106号「ICモジュールの接続方法」の請求項1、4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3080106号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯

本件特許第3080106号は、平成3年6月6日に特許出願され、平成12年6月23日にその請求項1〜4に係る発明について特許の設定登録がなされ、その後、請求項1,4に係る発明についての特許に対し、太田恵三より特許異議の申立てがなされ、当審より取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年6月4日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否

1.訂正の内容
訂正1:
特許請求の範囲の請求項1に、
「【請求項1】 フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に絶縁性樹脂を一定の膜厚で被覆すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。」とある記載を、
「【請求項1】 フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。」に訂正する。
訂正2:
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
訂正3:
段落【0004】の【課題を解決するための手段】、段落【0005】の【作用】、及び段落【0017】の【発明の効果】の各記載中、「前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に絶縁性樹脂を一定の膜厚で被覆」とあるを、いずれも、「前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無および拡張・変更の存否
訂正1は、訂正前の請求項1における、配線リードの開口部架橋部分への絶縁性樹脂の被覆に関し、a.絶縁性樹脂は、フィルム基板の配線リードが設けられる表面側から付着されて、配線リードを均一な膜厚で被覆すること、b.絶縁樹脂は、フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く充填されること、を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。
又、訂正2は、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮に当たる。
又、訂正3は、上記訂正1による訂正事項と、特許明細書の【0004】,【0005】,【0017】の記載を整合させたものであるから、明りょうでない記載の釈明に当たる。
そして又、訂正1は、特許明細書の【0011】の記載に基づいているから、いわゆる新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。又、訂正2,3が、新規事項の追加に当たらず、実質上特許請求の範囲を拡張、変更するものでもないことは、それぞれの上記の如き訂正内容からみて明らかである。

3.むすび
よって、上記訂正は、特許法第120条の4第3項により準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについて

1.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記甲第1号証を提示して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか若しくは該発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、又、本件請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1,4に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項又は同条第2項の規定により特許を受けることができない旨主張する。

甲第1号証:特開平2-132418号公報

2.本件発明
訂正後の本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。」

3.甲第1号証に記載の事項
ア.「(実施例1)
この実施例は、液晶表示装置に本発明を適用したもので、フレキシブル配綿基板として駆動用集積回路素子を実装したテープキャリアを利用し、このテープキャリアを介して液晶表示パネルと、コントロール回路を形成した回路基板とを接続したものである。
第1図は本発明の折り曲げ部を有するフレキシブル配線基板の製造エ程を示す図である。
第1図aに示すように、フレキシブル配線基板(テープキャリア)は、フレキシブル絶縁基板1例えばポリイミド・フィルムからなり、中央部には、閉口laが、また図の右方には、切り欠き部1b,1cが形成されている。フレキシブル絶縁基板1の表面には多数の導体パターンリード2が形成され、リード2は開口1aでは一端が突出し、また切り欠き部1b、1cではこれを跨いでいる。なお、開口1aは駆動用集積回路素子(ICチップ)との接続のために、また切り欠き部1b、1cはフレキシブル配線基板の折り曲げのために設けられる。
開口1aから突出する多数のリード2の先端はICチップ3に設けられたバンプ 4と接続される。そして、リード2とICチップ3との接続部は、保護のために、エボキシ樹脂5で封止されろ。なお、このフレキシブル配線基板1は、長尺フィルムの状態でICチップ3が接続され、この後所望の大きさにカッティングされる。図では、カッティングされた状態のものを示している。
次に、第1図bに示すように、折り曲げ予定部である切り欠き部1b,1cを設けた部分から露出するリード2の両面に、刷毛などを用いてシリコーンレジン等の保護用樹脂7を塗布して、一昼夜常温放置して硬化させる。なお、保護用樹脂7はリード2上のみならず、リード2間にも形成する。この実施例では、保護用樹脂7として信越化学製のシリコーンレジンであるXJR-4010(室温硬化型)を使用した。なお、塗布する保護用樹脂としてはシリコーンレジンに限らず、塩化ビニール系の樹脂(例えば住友化学製:SUMIXAPLEX)、ゴム系の樹脂を溶剤に溶かした回路保護用樹脂や、フィルム状の保護シートなども用いることができる。また、硬化後においてフレキシブル絶縁基板1よりも曲げ強さが低いことが望ましい。更に、保護用樹脂の塗布は刷毛による塗布以外に、ロボットを応用して動かすディスぺンサを用いた自動塗布法などが考えられる。
この後、第1図cに示すように、図の右方のリード2を異方性導電フィルム8を用いて、液晶セル9と電極端子と接続する。
次に、第1図dに示すように、ICチップ側を上方に持上げフレキシブル配線基板を切り欠き部1b,1cを形成した部分で逆コ字状に折り曲げろ。そして、更に液最セル9の上方に配置されたチップ部品、ICチップ等を搭載したコントロール回路を形成した回路基板10の電極端子と、他方のリード2を半田11により接続する。」(2頁右下欄9行〜3頁左下欄5行)
イ.第1図(上記アに対応する説明図)

4.対比・判断
特許異議申立てに係る本件請求項1,4に係る発明のうち、請求項4に係る発明は、訂正の結果、削除された。そこで、以下、訂正後の本件請求項1に係る発明である本件発明1につき、検討する。
本件発明1と甲第1号証に記載のものを対比すると、(a)後者における例えばポリイミド・フィルムからなる(実施例1参照)「フレキシブル絶縁基板1」の「折り曲げ予定部」に形成される「切り欠き部1b,1c」は、前者における「フィルム基板」の「折曲される部分」に形成される「開口部」に相当し、又、(b)後者における上記切り欠き部1b,1cを「跨い」で上記フレキシブル絶縁基板1に「導体パターンリード2」を設け、且つ、該「導体パターンリード2」の一端を「駆動用集積回路素子(ICチップ)」に「接続」したものは、前者における上記開口部を「架橋」して上記フィルム基板に「配線リード」を設け、且つ、該配線リードの一端を「半導体装置」に「接合」した「ICモジュール」に相当し、又、(c)後者における例えばシリコーンレジン等の(実施例1参照)「保護用樹脂7」は、前者における「絶縁性樹脂」に相当するとともに、該保護用樹脂7として「フィルム状の保護シート」が使われた場合(実施例1参照)には、該保護用樹脂7は、前者における絶縁性樹脂同様、「一定の膜厚」を有するもので、且つ、フレキシブル絶縁基板1の少なくとも一方の「表面側」から用いられ、又、該保護用樹脂7は、導体パターンリード2(「配線リード」)の切り欠き部(「開口部」)を跨ぐ(「架橋」する)部分に「付着」して、該導体パターンリード2の少なくとも一表面を「均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆」することが明らかであり、又、(d)後者における上記導体パターンリード2の他端部を「回路基板10の電極端子」に接続することは、前者における上記配線リードの「外端部」を「電子部品の接続端子」に接続することに相当する。
従って、結局、両者は、
‘フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。’
である点で共通し、少なくとも次の点で相違すると認められる。
相違点(i):本件発明1では、フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填するのに対し、甲第1号証に記載のものは、かかる厚みでの開口部内への充填を行うものではない点。

なお、上記(c)の点に関して、甲第1号証には、「保護用樹脂7」として、上記「フィルム状の保護シート」を使う場合のほかに、「刷毛」で導体パターンリード2の両面から塗布する、或いは、ロボットを応用して動かす「ディスペンサ」を用いて「自動塗布」する、という例も記載されているが、これら他の例の場合も、甲第1号証には、開口部内にフィルム基板の厚みより薄く充填する旨の記載はないから、やはり、上記相違点(i)で挙げた相違を認めることが出来る。

そして、上記相違点(i)により、本件発明1と甲第1号証に記載のものは、構成上明確に相違するといわざるを得ないから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は甲第1号証に記載された発明であるということはできない。

次いで、上記相違点(i)に係る本件発明1の構成について、その推考容易性の如何について考察する。
この点については、甲第1号証に、「(保護用樹脂は、)硬化後においてフレキシブル絶縁基板1よりも曲げ強さが低いことが望ましい」との記載があり、特許異議申立人は、該記載を根拠に、保護用樹脂をフレキシブル絶縁基板より薄くすることは容易に推考できたことである旨主張する。しかし、保護用樹脂の曲げ強さは該樹脂の材質にも依存して変動するものであるから、フレキシブル絶縁基板1よりも曲げ強さを低くすることが、開口部内への充填厚みをフレキシブル絶縁基板より薄くすることを示唆している、とは言い切れないし、甲第1号証に唯一詳しく記載された「刷毛」塗りの場合の例(第1図b,第1図c参照)を参酌してみても、甲第1号証の記載に、開口部内の保護用樹脂の膜厚をフレキシブル絶縁基板のそれよりも薄くすることへの示唆があるということは実際上困難である。即ち、上記「刷毛」塗りの場合は、その作業の性格上、膜厚制御は困難であるし、現に、甲第1号証の第1図b,第1図cには、凸状又は凹状の如く変形的な膜厚の、フレキシブル絶縁基板よりも薄いことを示唆するとは到底言えないようなものが示されているに過ぎない。
従って、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

そして、本件発明1は、上記相違点(i)に係る構成を備えることにより、開口部でのほぼ中央部での無理のない折り曲げを可能にするという効果を奏することが明らかである。
よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1,2に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとすることはできない。
また、他に本件発明1,2に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ICモジュールの接続方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。
【請求項2】 請求項1に記載の発明において、前記絶縁性樹脂の被覆は、剥離紙に設けられた絶縁性樹脂を熱圧着により行うことを特徴とするICモジュールの接続方法。
【請求項3】 請求項2に記載の発明において、前記絶縁性樹脂の被覆は、前記フィルム基板の配線リードが形成された表面側から行うことを特徴とするICモジュールの接続方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明はICモジュールおよびICモジュールの接続方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体装置をフィルム基板に搭載したICモジュールとして、TAB(Tape Automated Bonding)方式のテープキャリアパッケージが知られている。この種のICモジュールは、図6に示すように、合成樹脂製のフィルム基板1の所定箇所、つまりフィルム基板1が折曲される箇所にスリット状の開口部2を形成した上、フィルム基板の一面に銅等の金属箔をラミネートし、この金属箔をエッチングして開口部2に架橋された配線リード3を形成し、この配線リード3にICチップ4を接合した構造となっている。この場合、ICチップ4はフィルム基板に設けられたデバイスホール(図示せず)内に配置され、このデバイスホール内に突出した配線リード3の内端部に接合されている。このICモジュールを例えば液晶表示パネル5に接続する際に、実装上の制約を受ける場合には、フィルム基板1を開口部2の箇所で折り曲げて、配線リード3の外端部を液晶表示パネル5の接続端子に接続している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したICモジュールにおいては、フィルム基板1を開口部2の箇所、すなわち開口部2に架橋された各配線リード3の箇所で折曲するため、配線リード3が直接引張りや曲げ等の外力を受けるので、その部分の配線リード3が断線しやすいという問題がある。特に、配線リード3の配列間隔が狭い場合には、折曲するときに配線リード3が変形して左右の配線リード3に接触して短絡するという問題がある。
この発明の目的は、フィルム基板を折曲する際に、配線リードが断線しにくく、かつ隣接する配線リードと短絡するのを確実に防ぐことができ、導通信頼性の高いICモジュールおよびICモジュールの接続方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記絶縁性樹脂の被覆は、剥離紙に設けられた絶縁性樹脂を熱圧着により行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記絶縁性樹脂の被覆は、前記フィルム基板の配線リードが形成された表面側から行うことを特徴とする。
【0005】
【作用】
この発明の作用は次の通りである。
フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面則から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填するようにしたので、この絶縁性樹脂により開口部に架橋された部分の配線リードに機械的強度を高めることができる。また、このように構成されたICモジュールを液晶表示パネルなどの電子部品に接続する際には、例えば実装構造上の制約を受けて、開口部もしくはスリット部に架橋された配線リードの箇所でフィルム基板を折曲するときに、配線リードが絶縁性樹脂で被覆されているので、断線しにくく、しかも折曲するときに配線リードが相互に直接接触することがないので、隣接する配線リードが相互に短絡することはない。特に、スリット部は配線リードを横切ってフィルム基板の両端に到達しているので、フィルム基板が分離し、フィルム基板の一部が折曲する箇所に存在しないため、フィルム基板を折曲するときに折曲しやすく、しかも折曲した後に元の位置に戻ろうとする復元力が小さく、精度よく良好に折曲することが可能となる。
【0006】
【実施例】
以下、図1〜図3を参照して、この発明の第実施例を説明する。
図1はICモジュールの接続構造を示し、図2はICモジュールを示す。このICモジュール10はTAB方式により形成されたテープキャリアパッケージである。すなわち、ICモジュール10は図2に示すように、フィルム基板11上に銅箔などからなる配線リード12が設けられ、この配線リード12の内端部12aにICチップ13が接合されている。この場合、フィルム基板11はポリイミドやポリエステルなどの樹脂よりなり、配線リード12が設けられる前に、予めデバイスホール14および開口部15が形成されている。デバイスホール14はICチップ13が挿入する四角形状の孔であり、このデバイスホール14内にはその縁から配線リード12の内端部12aが突出して設けられている。開口部15はフィルム基板11が折曲される部分であり、配線リード12を横切って帯状に形成されている。これにより、開口部15には配線リード12が架橋されている。この開口部15内には絶縁性樹脂16が設けられ、この絶縁性樹脂16で開口部15に架橋された配線リード12が被覆されている。この絶縁性樹脂16はエポキシ系などの適度な柔軟性を有する合成樹脂よりなり、開口部15に架橋された配線リード12を被覆することにより、その部分の配線リード12の機械的強度を高めるとともに、絶縁性を確保する。なお、ICチップ13はその下面にパンプ17が多数突出して設けられており、このバンプ17が配線リード12の内端部12aに接合された上、封止樹脂18より封止されている。
【0007】
また、ICモジュール10は図1に示すように、配線リード12の外端部12bが液晶表示パネル19の接続端子20に導通用結合剤21などにより接続された上、開口部15の箇所でほぼ直角に折り曲げられている。液晶表示パネル19は上下一対の透明基板22、22の対向面に透明電極23、23が設けられ、この一対の透明基板22、22間に枠状のシール材24により液晶材25が封入されている。この場合、下側の透明基板22の端部が上側の透明基板22の端部よりも突出しており、この突出した部分の上面に接続端子20が設けられ、この接続端子20に各透明電極23が接続されている。また、ここで用いる導通用結合剤21とは、絶縁性接着剤26中に導通用微粒子27を混合したものであり、熱圧着などにより接合された状態において、厚み方向に導通性を有するが、面方向には絶縁性を呈する接着剤のことである。この場合、導通用微粒子27としては、金属やカーボンなどの導電微粒子、または絶縁性微粒子の外表面に導電膜を形成した微粒子、あるいはそれらの外表面に熱圧着時に厚さ方向の部分のみが破壊される絶縁層を形成した微粒子などである。なお、必ずしも導通用結合剤21を用いて接合する必要はなく、半田などで接合するようにしてもよい。
【0008】
次に、図3(A)〜(E)を参照して、上述したICモジュール10を製作して液晶表示パネル19に接続する場合について説明する。
【0009】
まず、図3(A)に示すように、ポリイミドやポリエステルなどのフィルム基板11を用意し、このフィルム基板11の所定箇所にデバイスホール14、開口部15、およびカット溝28を形成する。すなわち、フィルム基板11の中央にはデバイスホール14が四角形状に形成され、このデバイスホール14右側には折曲用の開口部15がフィルム基板11の幅方向に沿って帯状に形成され、デバイスホール14の左側にはスリット状のカット溝28が形成されている。なお、カット溝28は最終的にフィルム基板11および後述する配線リード12を切断するためのものであり、その左側には次の折曲用の開口部15が形成されている。
【0010】
次いで、図3(B)に示すように、フィルム基板11の上面に銅などの金属箔をラミネートし、この金属箔をエッチングして金属箔の不要な部分を除去する。これにより、配線リード12がパターン形成される。この配線リード12は内端部12aがデバイスホール14内に突出し、外端側が開口部15およびカット溝28に架橋され、かつ外端部12bがフィルム基板11の端部に配列されている。なお、配線リード12の全表面には半田メッキを施す。
【0011】
この後、図3(C)に示すように、開口部15に架橋された配線リード12をエポキシ系の絶縁性樹脂16で被覆する。この場合には、予めロール状に巻かれたテープ状の剥離紙29の所定箇所、つまりフィルム基板11の開口部15と対応する箇所に絶縁性樹脂16を一定の膜厚で設ける。そして、剥離紙29を同図に示すように、フィルム基板11の上方に引き出し、剥離紙29に設けられた絶縁性樹脂16を各開口部15に対面させる。この状態で、剥離紙29の上方より熱圧着治具30で絶縁性樹脂16を開口部15架橋された配線リード12に熱圧着により転写する。これにより、開口部15に架橋された配線リード12に絶縁性樹脂16が付着して被覆され、かつ開口部15内に絶縁性樹脂16が充填される。このとき、絶縁性樹脂16は予め剥離紙29に一定の膜厚で設けられているので、配線リード12の表面を均一な膜厚で被覆することができる。
【0012】
次いで、図3(D)に示すように、フィルム基板11の下方よりICチップ13をデバイスホール14に挿入し、ICチップ13のバンプ17をデバイスホール14内に突出した配線リード12の内端部12aに熱圧着により接合する。このとき、配線リード12の表面には半田メッキが施されているので、ICチップ13と配線リード12の接合部分を封止樹脂18で封止した後、カット溝28の箇所でフィルム基板11および配線リード12を切断する。これにより、開口部15に架橋された配線リード12が絶縁性樹脂16で被覆され、かつ配線リード12の内端部12aにICチップ13が接合されたICモジュール10が図2に示すように形成される。
【0013】
この後、図3(E)に示すように、ICモジュール10を上下および左右に反転させて、配線リード12の外端部12bを液晶表示パネル19の接続端子20に接続する。このときには、液晶表示パネル19の接続端子20上に導通用結合剤21をその全域に亘って塗布し、この導通用結合剤21を介在させて配線リード12の外端部12bを各接続端子20に接合する。これにより、配線リード2の外端部12bと液晶表示パネル19の接続端子20は導通用結合剤21により、隣接する端子が導通することなく、対向する端子のみが相互に導通して接続される。
【0014】
この状態で、ICモジュール10が液晶表示パネル19の実装構造上の制約を受ける場合には、図1に示すように、フィルム基板11を開口部15で折曲する。このときには、開口部15に架橋された配線リード12が折曲されるのであるが、この部分の配線リード12は絶縁性樹脂16により被覆されているので、機械的強度が高く、この部分の配線リード12を折曲しても、配線リード12が断線することがない。また、配線リード12はその配線間隔が極めて狭く、しかも折曲する際に左右に変形しても、絶縁性樹脂16により隣接する配線リード12が相互に短絡することはない。
【0015】
なお、この発明は上述した実施例に限定されるものではない。例えば、図4に示す第2実施例のように、ICモジュール10はTAB方式によるテープキャリアパッケージである必要はなく、フィルム基板11にデバイスホール14を設けずに、フィルム基板11上に形成された配線リード12の内端部12aにICチップ13バンプ17をフリップチップ方式などのフェイスダウン方式により接合したICモジュールにも適用することができる。また、フィルム基板11は1箇所のみが折曲されるものである必要はなく、複数箇所が折曲できるように、フィルム基板11に配線リード12が架橋される開口部15を複数個(図4では2個示すが、3個以上)形成してもよい。さらに、配線リード12の外端部12bは単に配線リード12がフィルム基板11上に設けられたものである必要はなく、この部分のフィルム基板11にも予め開口部31を形成し、この開口部31に配線リード12の外端部12bを架橋させてもよい。この場合には、配線リード12の外端部12bと液晶表示パネル19の接続端子20との位置合わせが簡単にでき、かつ前述した導通用結合剤21を用いずに、半田などで容易に接合することができる。
【0016】
また、図5に示す第3実施例のように、ICモジュール10はフィルム基板11の折曲される部分に開口部15を設けることに限定される必要はなく、フィルム基板11が折曲される部分に、配線リード12を横切ってフィルム基板11の両端に到達するスリット部40を設けた構造でもよい。このようなICモジュール10では、スリット部40がフィルム基板11の両端に到達しているので、フィルム基板11が完全に分離し、開口部15のようにフィルム基板1の一部が折曲される部分に存在することがないため、フィルム基板11を折曲するときに容易に折曲することができ、しかも折曲した後に元の位置に戻ろうとする復元力が小さいため、精度よく良好に折曲することができる。なお、スリット部40をフィルム基板11に形成する場合には、図3(A)および(B)に示すように、予めフィルム基板11にデバイスホール14、開口部15、およびカット溝28を形成した上、フィルム基板11の表面に銅などの金属箔よりなる配線リード12を形成して開口部15に架橋し、この後、開口部15の両端を切断すればよい。この場合、開口部15に架橋された配線リード12に絶縁性樹脂16を熱圧着により転写する前に開口部15の両端部を切断してもよいが、図3(D)に示すように絶縁性樹脂16を転写して配線リード12の機械的強度を高めた後に、カット溝28を切断するときに開口部15の両端を同時に切断することが望ましい。また、スリット部40を設ける他の方法としては、予めフィルム基板11を2つに分割し、この分割された2つのフィルム基板11を一定の間隔離して配置することによりスリット部40を形成した上、これらの表面に配線リード12を設けてスリット部40に配線リード12を架橋させるようしてもよい。
【0017】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填するようにしたので、この絶縁性樹脂により開口部に架橋された部分の配線リードに機械的強度を高めることができる。また、このように構成されたICモジュールを液晶表示パネルなどの電子部品に接続する際には、例えば実装構造上の制約を受けて、開口部もしくはスリット部に架橋された配線リードの箇所でフィルム基板を折曲するときに、配線リードが絶縁性樹脂で被覆されているので、断線しにくく、しかも折曲するときに配線リードが相互に直接接触することがないので、隣接する配線リードが相互に短絡することはない。特に、スリット部は配線リードを横切ってフィルム基板の両端に到達しているので、フィルム基板が分離し、フィルム基板の一部が折曲する箇所に存在しないため、フィルム基板を折曲するときに折曲しやすく、しかも折曲した後に元の位置に戻ろうとする復元力が小さく、精度よく良好に折曲することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ICモジュールを折曲して液晶表示パネルに接続した状態を示す断面図。
【図2】
液晶表示パネルに接続する前のICモジュールの平面図。
【図3】
(A)〜(E)はICモジュールを製作して接続する過程を示す各断面図。
【図4】
第2実施例のICモジュールを示す平面図。
【図5】
第3実施例のICモジュールを示す平面図。
【図6】
従来のICモジュールを液晶表示パネルに接続した状態を示す側面図。
【符号の説明】
10 ICモジュール
11 フィルム基板
12 配線リード
13 ICチップ
15 開口部
16 絶縁性樹脂
19 液晶表示パネル
20 接続端子
40 スリット部
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3080106号発明の明細書を、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正する。
すなわち、
訂正1:
特許請求の範囲の請求項1に、「【請求項1】 フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に絶縁性樹脂を一定の膜厚で被覆すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。」とある記載を、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「【請求項1】 フィルム基板が折曲される部分に開口部を形成すると共に前記フィルム基板の表面に、前記開口部を架橋し且つ半導体装置が接続される配線リードを設けた後、前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填すると共に前記配線リードに前記半導体装置を接合してICモジュールを構成し、このICモジュールのフィルム基板を前記開口部のほぼ中央部で前記配線リードと共に折曲し、前記配線リードの外端部を電子部品の接続端子に接続することを特徴とするICモジュールの接続方法。」に訂正する。
訂正2:
特許請求の範囲の請求項4を、特許請求の範囲の減縮を目的として削除する。
訂正3:
段落【0004】の【課題を解決するための手段】、段落【0005】の【作用】、及び段落【0017】の【発明の効果】の各記載中、「前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に絶縁性樹脂を一定の膜厚で被覆」とあるを、いずれも、明りょうでない記載の釈明を目的として、「前記フィルム基板の表面側から一定の膜厚の絶縁性樹脂を、前記配線リードの前記開口部を架橋する部分に付着し、前記配線リードの表面を均一な膜厚の絶縁性樹脂で被覆しかつ前記フィルム基板の開口部内に該フィルム基板の膜厚より薄く絶縁性樹脂を充填」と訂正する。
異議決定日 2002-08-01 
出願番号 特願平3-160776
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 池渕 立  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
伊藤 明
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3080106号(P3080106)
権利者 カシオ計算機株式会社
発明の名称 ICモジュールの接続方法  

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