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審決分類 審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  H05K
審判 全部申し立て 2項進歩性  H05K
管理番号 1067480
異議申立番号 異議2002-70099  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-02-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-11 
確定日 2002-08-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3186018号「高周波用配線基板」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3186018号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由 【1】手続の経緯
本件特許第3186018号は、平成7年7月27日に出願され、平成13年5月11日に設定登録され、その後、京セラ株式会社から請求項1〜6に係る発明について、雨山範子から請求項1〜3に係る発明について、それぞれ特許異議の申立てがなされたものであり、平成14年4月12日付け取消理由通知の指定期間内の平成14年6月24日付けで特許異議意見書及び明細書についての訂正請求書が提出されたものである。
【2】明細書の訂正について
1.訂正の要旨
上記訂正請求は、願書に添付した明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおり訂正することを求めるものと認められるところ、その要旨は、次の訂正事項a〜fのとおりのものと認める。
〈訂正事項a〉
特許請求の範囲の請求項1の、「・・距離Lを、前記信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零に形成し・・」を、「・・距離Lを、零に形成し・・」と訂正する。
〈訂正事項b〉
特許請求の範囲の請求項2を、削除する。
〈訂正事項c〉
特許請求の範囲の請求項3を、請求項2に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項2の、「・・請求項1又は2記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
〈訂正事項d〉
特許請求の範囲の請求項4を、請求項3に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項3の、「・・請求項1又は2記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
〈訂正事項e〉
特許請求の範囲の請求項5を、請求項4に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項4の、「・・請求項1又は2記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
〈訂正事項f〉
特許請求の範囲の請求項6を、請求項5に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項5の、「・・請求項1、2、3、4又は5記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1、2、3又は4記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
2.訂正の適否
(1)訂正の目的
上記訂正事項aは、「距離L」について、「前記信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零」を「零」とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項bは、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項c〜fは、訂正事項bにより削除された請求項の引用を削除し、訂正事項aにより訂正された請求項を引用するように訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項、特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
「距離L」を「零」とする点は、願書に添付した明細書の請求項1の「距離Lを、前記信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零に形成した」との記載の範囲内のものと認められ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
したがって、訂正事項a〜fは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)よって、上記訂正請求による明細書の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
【3】本件特許発明
明細書についての上記訂正が認められるから、本件特許発明は、上記訂正明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
〈請求項1に係る発明〉
「絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させて、前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成したことを特徴する高周波用配線基板。」
〈請求項2に係る発明〉
「グランドパターンが、信号線路をコプレナー線路に形成するためのグランド線路である請求項1記載の高周波用配線基板。」
〈請求項3に係る発明〉
「グランドパターンが、信号線路を擬似矩形同軸線路に形成するためのグランド層である請求項1記載の高周波用配線基板。」
〈請求項4に係る発明〉
「グランドパターンが、信号線路の一部分の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせるための局部グランドパターンである請求項1記載の高周波用配線基板。」
〈請求項5に係る発明〉
「グランドを、信号線路とグランドパターンとに対向させて、絶縁基板に幅広く層状に備えた請求項1、2、3又は4記載の高周波用配線基板。」
【4】特許異議申立てについての当審の判断
1.引用刊行物に記載された事項
平成14年4月12日付け取消理由通知において引用した刊行物特開昭63-108756号公報(以下「刊行物A」という。)、1995年電子情報通信学会総合大会講演論文集「C-446、GC多層配線板の電気特性」1995年3月10日発行(以下、「刊行物B」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されているものと認める。
(1)刊行物A
「3GHz〜50GHzのいわゆる超高周波の動作周波数で作動させる半導体素子等の素子を収容する超高周波素子用パッケージ」(第1頁左欄12行〜14行参照)に関し、
(あ)「入出力用の伝送線路を備えた絶縁層を有する超高周波素子用パッケージにおいて、前記伝送線路の周囲の前記絶縁層内に、伝送線路の特性インピーダンスを調整する調整物体を介在させたことを特徴とする超高周波素子用パッケージ。」(特許請求の範囲参照)
(い)「第3図および第4図は本発明の超高周波素子用パッケージの他の一例を示し、第3図は該パッケージ中の伝送線路の平面図、第4図は該パッケージの縦断面図を示す。図中のパッケージ10は、中間絶縁層6bおよび最上絶縁層6cに誘電率8.0のアルミナセラミックを用い、その中間絶縁層6b上面に沿って備える伝送線路70のパターンピッチを0.65mmとすると共に、該伝送線路70のパターン長さを2mmとした。また、中間絶縁層6bの長さを0.4mmとすると共に、最上絶縁層6cの厚さを0.4mmとした。さらに、伝送線路のインナーリード部70aのパターン幅Aを、該伝送線路70の特性インピーダンスを50オームにマッチングさせながら、アウターリード部70bと同一幅の0.5mmから0.12mmに縮小するために、伝送線路中のインナーリード部70a直下の該インナーリード部から0.11mm下がった中間絶縁層6b中に水平にメタライズ層からなる伝送線路70の特性インピーダンス調整用の調整物体層15を介在させると共に、該調整物体層15からその下方にかけての中間絶縁層6b中に、その内部にメタライズ層を充填した接地層13に導通するヴィアホール14を複数個設けた。また、伝送線路中のインナーリード部70a直下の一部とシール部70c直下の一部にかけての中間絶縁層6b内の中途部と、シール部70cを覆う最上絶縁層6c内の中途部に、それぞれ水平にメタライズ層からなる伝送線路70の特性インピーダンス調整用の調整物体層15をその上下の各調整物体層15間に0.6mmの間隔をあけて設けると共に、該各調整物体層15からその下方とその上方にかけての中間絶縁層6b中と最上絶縁層6c中に、その内部に導体を充填した1個ないし複数個の接地層13に導通するヴィアホール14を設けた。また、伝送線路中のシール部70cおよびアウターリード70b部の一部のパターン幅Bを0.16mmに縮小形成するために、伝送線路中のアウターリード部70b直下の該アウタリード部から0.14mm下がった中間絶縁層6b中に水平にメタライズ層からなる伝送線路70の特性インピーダンス調整用の調整物体層15を介在させると共に、該調整物体層15からその下方にかけての中間絶縁層6b内に、その内部に導体を充填した接地層13に導通するヴィアホール14を複数個設けた。図中のパッケージ10は以上のように構成したものである。」(第3頁左下欄5行〜第4頁左上欄10行参照)
(う)「本発明の超高周波素子用パッケージにおいては、伝送線路周囲のパッケージを構成する絶縁層内に介在させる伝送線路の特性インピーダンスを調整する調整物体の絶縁層内における介在位置、その介在させる量や密度、およびその調整物体の材質等を適宜選択することにより、調整物体を介在させた絶縁層部分の誘電率を、他の絶縁層部分に比べて、局部的に自在に増大またはは減少させることができる。従って、調整物体を介在させた絶縁層部分直上の絶縁層上面等に沿って形成するメタライズ層等からなる伝送線路の一部のインナーリード部やアウターリード部等のパターン幅を、伝送線路の特性インピーダンスのマッチングを図りながら、他の伝送線路のパターン幅に規制されずに、パッケージ内部に収容する高集積度の超高周波用の半導体素子等の素子の接続パターンピッチやリ一ド線等の幅に合わせて自在に小幅または大幅に形成できる。」(第5頁左下欄15行〜右下欄12行参照)
等の記載があり、また、図面第4図を参照すると、
(え)“アウターリード部70b直下の調整物体層15の端部が中間絶縁層6bの端部より内方に位置している”点が示されている。
(2)刊行物B
「GC多層配線板の電気特性」に関し、
(お)「高帯域を必要とする機器の小型化には多層伝送配線基板が必要とされる。伝送線路の配線層を複数層に渡って多層化するには、その層間に複数のグランド層が必要となる。このグランド層間の接続には、通常Viaにより任意に、本グランドから接続されている。
今回、このグランド接続用のViaをグランド層の電気的均一性の為に格子状に設け、その間に信号線を擬似同軸配線したガラスセラミック(GC)基板(図1)を試作し各信号間の電気特性を調査したので報告する。」(「1.はじめに」の欄参照)
(か)「同一層間における電気特性を見るために図2の様な試料を作製した。試料はGC(εr=5.6)を用いて特性インピーダンスを50Ωに設計した。クロストーク特性は、配線が十分長いことと、測定の簡便さから遠端クロストークを、中央ラインを誘導ライン、片方のサイドラインを被誘導ラインとしてそれぞれ終端整合して調べた。ただし、もう一本のサイドラインとスルー特性測定時の両サイドラインの両端は解放とした。又、Viaなしのサンプルは上下のグランドを側面の一部に導通ラインを設けて接続した。」(「2.試料及び評価」の欄参照)
(き)「・線ピッチ0.4mmについては、約10GHz以下においては、クロストーク特性の改善が見られる。(図3)
・線ピッチ0.8mmについては、20GHz以下においてクロストーク特性の改善がみられる。(図4)
・線ピッチ0.4mm、Viaピッチ0.4mmのS21特性は隣接する信号線の影響による劣化が見られる。(図5)
・線ピッチ0.4mm、Viaピッチ0.4mmでは、S21≦-ldB帯域が5GHzであり、その時のクロストークは-20dBである。
・線ピッチ0.8mm、Viaピッチ0.8mmの時は、同様に6GHzを示し、クロストークは-30dBである。」(「3.測定結果」)
等の記載があり、また、「ガラスセラミック(GC)基板(図1)」として前出の図1を参照すると、
(く)“GC基板の上層グランド層、中間グランド層及び下層グランド層の端部をViaで接続する”点が示されている。
2.対比・判断
(1)請求項1に係る発明について
(1-1)請求項1に係る発明と上記刊行物Aに記載された発明とを対比すると、後者の伝送線路70が前者の「信号線路」に相当し、また、同様に後者のアウターリード部70b直下の調整物体層15が前者の「グランドパターン」に、後者のヴィアホール14が前者の「導体ビア」に、後者の接地層13が前者の「グランド」に相当する。さらに、上記刊行物Aに記載された「超高周波素子用パッケージ」も、内部に配線を備え、その上部に電子部品が取り付けられるものであるから、「高周波用配線基板」ということができる。
したがって、両者は、
「絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させた高周波用配線基板」である点で一致し、次の相違点1で相違する。
〈相違点1〉
請求項1に係る発明は、「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」のに対して、刊行物Aに記載されたものでは、前記距離を零に形成したものでない点
(1-2)そこで、上記相違点1について検討する。
高帯域を必要とする機器の多層伝送配線基板の、配線層の層間に複数のグランド層を形成し、グランド接続用のViaを格子状に設けて、信号線を擬似同軸配線したガラスセラミック(GC)基板において、各グランド層の端部をViaで接続する構成が、上記刊行物Bに記載されており、この構成は、グランド層の端部と該端部に最も近いViaに電気的に接続されたグランド層部分との間の距離を零に形成したものであり、刊行物Bに記載されたガラスセラミック(GC)基板も高周波用の基板であるから、上記相違点1の本件請求項1に係る発明の構成「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」点は、上記刊行物Bに記載されたものに基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(1-3)したがって、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物A,Bにそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)請求項2に係る発明について
(2-1)請求項2に係る発明と上記刊行物Aに記載された発明とを対比すると、両者は、
「絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させた高周波用配線基板」である点において一致し、次の相違点1´及び相違点2において相違する。
〈相違点1´〉
請求項2に係る発明は、「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」のに対して、刊行物Aに記載されたものでは、前記距離を零に形成したものでない点
〈相違点2〉
前記グランドパターンが、請求項2に係る発明では、「信号線路をコプレナー線路に形成するためのグランド線路である」のに対して、刊行物Aに記載された発明では、信号線路の下方に所定距離離れて配置されたものである点
(2-2)そこで、上記各相違点について検討する。
(2-2-1)相違点1´について
相違点1´における本件請求項2に係る発明の構成は、上記相違点1について説示の理由と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものである。
(2-2-1)相違点2について
高周波用配線基板において、信号線路をコプレナー線路に形成するようにグランドパターンを形成することは本件特許の出願前に周知の事項と認められる(特開平6-303010号公報、特開平5-37207号公報、特開平2-87701号公報、特開平3-139895号公報、特開平6-224604号公報等参照)から、上記刊行物Aに記載されたものにおいて、グランドパターン(調整物体層15)を、信号線路をコプレナー線路に形成するように変更することは、当業者が容易に想到し得ることである。
(2-3)したがって、本件請求項2に係る発明は、上記刊行物A,Bにそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)請求項3に係る発明について
(3-1)請求項3に係る発明と上記刊行物Aに記載された発明とを対比すると、両者は、
「絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させた高周波用配線基板」である点において一致し、次の相違点3において相違する。
〈相違点3〉
本件請求項3に係る発明では、グランドパターンが、「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」ものであって、また「信号線路を擬似矩形同軸線路に形成するためのグランド層である」のに対して、刊行物Aに記載されたものでは、前記距離を零に形成したものでなく、また、信号線路を擬似矩形同軸線路に形成するための構成でない点
(3-2)そこで上記相違点3について検討する。
多層伝送配線基板の、配線層の層間に複数のグランド層を形成し、グランド接続用のViaを格子状に設けて、信号線を擬似同軸配線したガラスセラミック(GC)基板において、各グランド層の端部をViaで接続する構成が、上記刊行物Bに記載されており、この構成は、前記グランド層が信号線を擬似矩形同軸線路に形成すると共に、グランド層の端部と該端部に最も近いViaに電気的に接続されたグランド層部分との間の距離を零に形成したものであり、刊行物Bに記載されたガラスセラミック(GC)基板も高周波用の基板であるから、上記相違点3の本件請求項3に係る発明の構成、即ち、「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」点、及び「グランドパターンが信号線路を擬似矩形同軸線路に形成するためのグランド層である」点は、上記刊行物Bに記載されたものに基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(3-3)したがって、本件請求項3に係る発明は、上記刊行物A,Bにそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)請求項4に係る発明について
(4-1)上記刊行物Aに記載されたものにおけるアウターリード部70b直下の調整物体層15は、アウターリード部70bの特性インピーダンスを所定値にマッチングさせるものであるから、請求項4に係る発明と上記刊行物Aに記載された発明とを対比すると、
両者は、
「絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させた高周波用配線基板」である点で一致し、次の相違点1´´で相違する。
〈相違点1´´〉
請求項4に係る発明は、「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」のに対して、刊行物Aに記載されたものでは、前記距離を零に形成したものでない点
(4-2)そこで、上記相違点1´´について検討するに、相違点1´´における本件請求項4に係る発明の構成は、上記相違点1について説示の理由と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものである。
(4-3)したがって、本件請求項4に係る発明は、上記刊行物A,Bにそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)請求項5に係る発明について
(5-1)上記刊行物Aに記載されたものにおける「接地層13」は、「伝送線路70」及び「調整物体層15」に対向させて、絶縁層6に幅広く層状に備えられているものと認められるから、請求項1を引用する本件請求項5に係る発明と上記刊行物Aに記載された発明とを対比すると、
両者は、
「絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させた高周波用配線基板」である点で一致し、次の相違点1´´´で相違
する。
〈相違点1´´´〉
請求項1を引用する本件請求項5に係る発明は、「前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成した」のに対して、刊行物Aに記載されたものでは、前記距離を零に形成したものでない点
(5-2)そこで、上記相違点1´´´について検討するに、相違点1´´´
における請求項1を引用する本件請求項5に係る発明の構成は、上記相違点1について説示の理由と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たものである。
(5-3)したがって、請求項1を引用する本件請求項5に係る発明は、上記刊行物A,Bにそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項5に係る発明は、上記刊行物A,Bにそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
【5】むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1〜5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1〜5に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高周波用配線基板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させて、前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、零に形成したことを特徴する高周波用配線基板。
【請求項2】 グランドパターンが、信号線路をコプレナー線路に形成するためのグランド線路である請求項1記載の高周波用配線基板。
【請求項3】 グランドパターンが、信号線路を擬似矩形同軸線路に形成するためのグランド層である請求項1記載の高周波用配線基板。
【請求項4】 グランドパターンが、信号線路の一部分の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせるための局部グランドパターンである請求項1記載の高周波用配線基板。
【請求項5】 グランドを、信号線路とグランドパターンとに対向させて、絶縁基板に幅広く層状に備えた請求項1、2、3又は4記載の高周波用配線基板。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、5〜10GHz以上等の高周波信号を伝える信号線路を持つ高周波用配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
近時の半導体チップの動作速度の高速化、高周波化に伴い、高周波信号を伝送損失少なく効率良く伝える信号線路を持つ半導体チップ実装用の高周波用配線基板が求められている。
【0003】
この高周波用配線基板に用いる信号線路として、グランド付きコプレナー線路構造をした信号線路、擬似矩形同軸線路構造をした信号線路が知られている。
【0004】
グランド付きコプレナー線路構造をした信号線路は、図13に示したように、セラミック又はプラスチック等で形成した絶縁基板10に備えた信号線路20の両側に、帯状のグランドパターン30を信号線路20と所定間隔あけて並べて備えている。
【0005】
グランドパターン30は、信号線路20とグランドパターン30との上方又はその下方の絶縁基板10部分(図では、絶縁基板10の下面としている)に信号線路20やグランドパターン30と平行に幅広く層状に並べて備えたグランド50に複数本の柱状の導体ビア40を介して電気的に接続している。具体的には、グランドパターンの端部30bより内方のグランドパターン30部分をグランド50に、複数本の導体ビア40を介して電気的に接続している。導体ビア40は、グランドパターン30直下の絶縁基板10部分に、絶縁基板10を上下に貫通させて複数本小ピッチで横に並べて備えている。そして、信号線路20をグランド付きコプレナー線路に形成している。
【0006】
擬似矩形同軸線路構造をした信号線路は、図14に示したように、セラミック又はプラスチック等で形成した絶縁基板10に備えた信号線路20の上方とその下方の絶縁基板10部分(図では、絶縁基板10の上面とその下面としている)に、グランドパターン30を信号線路20と平行に幅広く層状に並べて備えている。そして、信号線路20の上下をグランドパターン30で囲んでいる。
【0007】
信号線路20の上方とその下方に備えたグランドパターン30は、信号線路20の下方とその上方に備えたグランドを構成するグランドパターン30に、複数本の導体ビア40を介して、電気的に接続している。言い換えれば、信号線路20の上方とその下方に備えたグランドパターン30を、信号線路20の両側に横に並べて備えた複数本の柱状の導体ビア40を介して互いに電気的に接続している。具体的には、グランドパターンの端部30bより内方の上下のグランドパターン30部分を複数本の導体ビア40を介して互いに電気的に接続している。導体ビア40は、上下のグランドパターン30に挟まれた絶縁基板10部分に、絶縁基板10を上下に貫通させて複数本小ピッチで横に並べて備えている。そして、信号線路20の両側を複数本の導体ビア40で囲んでいる。そして、信号線路20を、擬似矩形同軸線路に形成している。
【0008】
これらのグランド付きコプレナー線路構造又は擬似矩形同軸線路構造をした信号線路20においては、信号線路20の側部の絶縁基板10部分に小ピッチで横に並べて備えたグランドに電気的に接続された複数本の導体ビア40が、信号線路20を伝わる高周波信号が、その信号線路20の側部の隣合う導体ビア40の間を通り抜けて、他の信号線路20に混入するのを防ぐ働きをする。
【0009】
ここで、信号線路20を伝わる高周波信号が信号線路20の側部の隣合う導体ビア40の間を通り抜けて他の信号線路20に混入するのを防ぐためには、特公平5-86859号公報に記載されたように、信号線路20の側部の絶縁基板10部分に横に並べて備える複数本の導体ビア40のピッチを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λよりも短くすれば良いことが知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、グランド付きコプレナー線路構造又は擬似矩形同軸線路構造をした信号線路を持つ配線基板において、上記のようにして、信号線路20の側部の絶縁基板10に横に並べて備える複数本の導体ビア40のピッチを信号線路20に伝える高周波信号の波長λよりも短くした場合においても、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を未だ充分に伝送損失少なく効率良く伝えることができなかった。
【0011】
その原因を追求したところ、上記信号線路20においては、図13又は図14に示したように、グランドパターン30の端部より内方のグランドパターン部分30aをグランドを構成する導体ビア40に電気的に接続していて、導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aの外側に、グランドに直接に電気的に接続されていないスタブ(stub)60と呼ばれるグランドパターンの端部30bが存在し、該スタブ60が信号線路20の最低共振周波数値を低下させるからであることが判明した。そして、該スタブ60が信号線路20に高周波信号を伝送損失少なく伝えるのを妨害するからであることが判明した。
【0012】
その理由は、上記スタブ60がグランドパターンの端部30bに存在すると、信号線路20に伝わる高周波信号が、スタブ60に漏れ出し、該スタブ60を通して信号線路20に再び混入してしまうからであると推測される。
【0013】
これと同様なことは、図15に示したような、セラミック又はプラスチック等で形成した絶縁基板10に備えた信号線路20の一部分の下方又はその上方(図では、下方としている)の絶縁基板10部分に、グランドパターン30を信号線路20に対して局部的に横に並べて備えて、信号線路20の一部の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせた配線基板においても言えることが判明した。
【0014】
この配線基板においては、グランドパターン30を、信号線路20と反対側に位置する絶縁基板10部分(図では、絶縁基板10の下面としている)にグランドパターン30と平行に幅広く層状に並べて備えたグランド50に、複数本の柱状の導体ビア40を介して電気的に接続している。具体的には、グランドパターンの端部30bより内方のグランドパターン30部分をグランド50に複数本の導体ビア40を介して電気的に接続している。導体ビア40は、グランドパターン30直下の絶縁基板10部分に、上下に向けて複数本横に並べて備えている。そして、信号線路20の一部分の特性インピーダンスを所定値の50Ω等にマッチングさせている。
【0015】
即ち、このような配線基板においても、グランドパターンの端部30bより内方のグランドパターン30部分をグランド50に複数本の導体ビア40を介して電気的に接続していて、導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aの外側に、スタブ60と呼ばれるグランドパターンの端部30bが存在し、該スタブ60が信号線路20に高周波信号を伝送損失少なく伝えるのを妨害することが判明した。
【0016】
なお、従来より、グランドパターンの端部30bをグランド50に直接に電気的に接続して、グランドパターンの端部30bからスタブ60を排除した配線基板が知られている。
【0017】
この配線基板においては、図16に示したように、絶縁基板10の端面にメタライズ等からなる線路70を備えて、該線路70を介してグランドパターンの端部30bをグランド50又はグランドを構成するグランドパターン30に電気的に接続している。又は、図17に示したように、絶縁基板10の端部にメタライズ等からなる柱状の導体ビアを縦に分断してなるハーフ導体ビア80を備えて、該ハーフ導体ビア80を介してグランドパターンの端部30bをグランド50又はグランドを構成するグランドパターン30に電気的に接続している。
【0018】
しかしながら、この配線基板においては、絶縁基板10の端面にメタライズ等からなる線路70を側面プリント法等により形成したり、絶縁基板10の端部にメタライズ等からなるハーフ導体ビア80を形成したりする作業に多大な手数と時間を要した。
【0019】
また、近時の半導体装置の小型化、高密度化に伴い、上記線路70を絶縁基板10の端面に極小幅や極小ピッチで横に並べて形成したり、上記ハーフ導体ビア80を絶縁基板10の端部に極小径や極小ピッチで横に並べて形成したりする必要があって、上記線路70やハーフ導体ビア80を形成する作業に多大な手数と熟練を要したり、上記線路70やハーフ導体ビア80がそれに隣合う他の線路70やハーフ導体ビア80に電気的に短絡してしまう虞があったりした。
【0020】
そこで、本発明者らは、種々の試験研究を重ねた結果、上記の各配線基板において、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満に短く形成すれば、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60の悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく効率良く伝えることができることを発見した。
【0021】
そして、該発見に基づき、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に悪影響を与える虞のない配線基板を開発した。
【0022】
それと同時に、信号線路20に伝える高周波信号に悪影響を与える虞のあるスタブ60をグランドパターンの端部30bから排除した配線基板であって、製造容易な配線基板を開発した。
【0023】
即ち、本発明は、グランドパターンの端部に存在するスタブが信号線路に伝える高周波信号に悪影響を与える虞のない高周波用配線基板(以下、配線基板という)を提供することを目的としている。
【0024】
また、信号線路に伝える高周波信号に悪影響を与える虞のあるスタブをグランドパターンの端部から排除した配線基板であって、製造容易な配線基板を提供することをもう一つの目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の配線基板は、絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板において、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部より内方に位置させて、前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、前記信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零に形成したことを特徴としている。
【0026】
そして、グランドパターンの端部と該端部に最も近い導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離L、即ちスタブの長さLを信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4より短く形成して、スタブが信号線路に伝える高周波信号に与える悪影響を排除している。又は、グランドパターンの端部からスタブを排除している。そして、信号線路に高周波信号を伝送損失少なく伝えることができるようにしている。
【0027】
本発明の第2の配線基板は、絶縁基板に信号線路と並べて備えたグランドパターンを、前記絶縁基板に備えた複数本の導体ビアを介して、グランドに電気的に接続した配線基板であって、前記グランドパターンの端部を前記絶縁基板の端部まで延設した配線基板において、前記グランドパターンの端部と該端部に最も近い前記導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離Lを、前記信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満であって、零より大きく形成したことを特徴としている。
【0028】
そして、グランドパターンの端部と該端部に最も近い導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離L、即ちスタブの長さLを信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4より短く形成して、スタブが信号線路に伝える高周波信号に与える悪影響を排除している。そして、信号線路に高周波信号を伝送損失少なく伝えることができるようにしている。
【0029】
本発明の第1又は第2の配線基板においては、グランドパターンが、信号線路をコプレナー線路に形成するためのグランド線路、
又は、グランドパターンが、信号線路を擬似矩形同軸線路に形成するためのグランド層、
又は、グランドパターンが、信号線路の一部分の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせるための局部グランドパターンであることを好適としている。
【0030】
また、グランドを、信号線路とグランドパターンとに対向させて、絶縁基板に幅広く層状に備えた構造とすることを好適としている。
【0031】
そして、信号線路に伝える高周波信号がグランドの外方に漏れ出すのを幅広い層状のグランドで防ぐことができるようにすることを好適としている。また、グランドパターンをそれに対向する幅広い層状のグランドに複数本の導体ビアを介して距離短く接地電位差少なく電気的に接続できるようにすることを好適としている。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を図面に従い説明する。
図1は本発明の第1の配線基板の好適な実施の形態を示し、詳しくはその一部斜視図である。以下に、この第1の配線基板を説明する。
【0033】
図の第1の配線基板では、信号線路20の両側に備えた帯状のグランドパターン30であって、信号線路20をグランド付きコプレナー線路構造に形成するためのグランドパターンの端部30bを、絶縁基板の端部10aより内方に位置させている。そして、グランドパターンの端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零の範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0034】
その他は、前述図13に示したグランド付きコプレナー線路構造をした信号線路を持つ配線基板と同様に構成していて、この第1の配線基板においては、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。又は、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60の長さLを零として、即ちグランドパターンの端部30bからスタブ60を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。
【0035】
図2は本発明の第2の配線基板の好適な実施の形態を示し、詳しくはその一部斜視図である。以下に、この第2の配線基板を説明する。
【0036】
図の配線基板では、信号線路20の両側に備えた帯状のグランドパターン30であって、信号線路20をグランド付きコプレナー線路構造に形成するためのグランドパターンの端部30bを、絶縁基板の端部10aまで延設している。そして、グランドパターンの端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満であって、零より大きい範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0037】
その他は、前述図13に示したコプレナー線路構造をした信号線路を持つ配線基板と同様に構成していて、この第2の配線基板においては、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。
【0038】
図3は本発明の第1の配線基板の他の好適な実施の形態を示し、詳しくはその一部斜視図である。以下に、この第1の配線基板を説明する。
【0039】
図の第1の配線基板では、信号線路20の上方とその下方とに備えたグランドパターン30であって、信号線路20を擬似矩形同軸線路構造に形成するためのグランドパターンの端部30bを、絶縁基板の端部10aより内方に位置させている。そして、グランドパターンの端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零の範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0040】
その他は、前述図14に示した擬似矩形同軸線路構造をした信号線路を持つ配線基板と同様に構成していて、この第1の配線基板においては、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。又は、グランドパターンの端部30bからスタブ60を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。
【0041】
図4は本発明の第2の配線基板の他の好適な実施の形態を示し、詳しくはその一部斜視図である。以下に、この第2の配線基板を説明する。
【0042】
図の配線基板では、信号線路20の上方とその下方とに備えたグランドパターン30であって、信号線路20を擬似矩形同軸線路構造に形成するためのグランドパターンの端部30bを、絶縁基板の端部10aまで延設している。そして、グランドパターンの端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満であって、零より大きい範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0043】
その他は、前述図14に示した擬似矩形同軸線路構造をした信号線路を持つ配線基板と同様に構成していて、この第2の配線基板においては、グランドパターンの端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。
【0044】
図5は本発明の第1の配線基板のもう一つの好適な実施の形態を示し、詳しくはその一部側面断面図である。以下に、この第1の配線基板を説明する。
【0045】
図の第1の配線基板では、信号線路20の一部分の下方又はその上方(図では、下方としている)の絶縁基板10部分に信号線路20に対して局部的に横に並べて備えたグランドパターン30であって、信号線路20の一部分の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせるためのグランドパターンの外側の端部30bを、絶縁基板の端部10aより内方に位置させている。そして、グランドパターンの外側の端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちグランドパターンの外側の端部30bに存在するスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零の範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0046】
また、グランドパターンの内側の端部30bを、グランドパターン30の内方に後退させている。そして、グランドパターンの内側の端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちグランドパターンの内側の端部30bに存在するスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零の範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0047】
その他は、前述図15に示した信号線路20の一部分の下方又はその上方にグランドパターン30を局部的に備えて、信号線路20の一部分の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせた配線基板と同様に構成していて、この第1の配線基板においては、グランドパターンの外側とその内側の端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。又は、グランドパターンの外側又はその内側の端部30bからスタブ60を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。
【0048】
図6は本発明の第2の配線基板のもう一つの好適な実施の形態を示し、詳しくはその一部側面断面図である。以下に、この第2の配線基板を説明する。
【0049】
図の第2の配線基板では、信号線路20の一部分の下方又はその上方(図では、下方としている)の絶縁基板10部分に信号線路20に対して局部的に横に並べて備えたグランドパターン30であって、信号線路20の一部分の特性インピーダンスを所定値にマッチングさせるためのグランドパターンの外側の端部30bを、絶縁基板の端部10aまで延設している。そして、グランドパターンの外側の端部30bと該端部に最も近い導体ビア40に電気的に接続されたグランドパターン部分30aとの間の距離L、即ちグランドパターンの外側の端部30bに存在するスタブ60の長さLを、信号線路20に伝える高周波信号の波長λの1/4未満であって、零より大きな範囲内の例えば1/8λに形成している。
【0050】
その他は、前述図5に示した第1の配線基板と同様に構成していて、この配線基板においては、グランドパターンの外側とその内側の端部30bに存在するスタブ60が信号線路20に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。又は、グランドパターンの内側の端部30bからスタブ60を排除して、信号線路20に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく伝えることができる。
【0051】
なお、本発明は、信号線路の上方又はその下方にグランドパターンを備えて、信号線路をマイクロストリップ線路構造に形成した配線基板であって、マイクロストリップ線路形成用のグランドパターンの端部より内方のグランドパターン部分をグランドに複数本の導体ビアを介して電気的に接続してなる配線基板にも利用可能である。
【0052】
即ち、このような配線基板においては、信号線路の上方又はその下方に備えたマイクロストリップ線路形成用のグランドパターンの端部を絶縁基板の端部より内方に位置させて、グランドパターンの端部と該端部に最も近い導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離L、即ちグランドパターンの端部に存在するスタブの長さLを、信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満ないし零に形成すれば良い。又は、信号線路の上方又はその下方に備えたマイクロストリップ線路形成用のグランドパターンであって、絶縁基板の端部まで延設したグランドパターンの端部と該端部に最も近い導体ビアに電気的に接続されたグランドパターン部分との間の距離L、即ちグランドパターンの端部に存在するスタブの長さLを、信号線路に伝える高周波信号の波長λの1/4未満であって、零より大きく形成すれば良い。そして、グランドパターンの端部に存在するスタブが信号線路に伝える高周波信号に与える悪影響を排除したり、グランドパターンの端部からスタブを排除したりすると良い。
【0053】
また、グランド50は、信号線路20とグランドパターン30とに対向させて、絶縁基板10に幅広く層状に備えるのが良い。そして、信号線路20に伝える高周波信号がグランド50の外方に漏れ出すのを幅広い層状のグランド50で的確に防ぐことができるようにすると良い。また、グランドパターン30をそれに対向する幅広い層状のグランド50に複数本の導体ビア40を介して距離短く接地電位差少なく電気的に接続できるようにすると良い。そして、グランドパターン30を接地電位に的確に近づけることができるようにすると良い。
【0054】
【実験例】
図8ないし図12は、コプレナー線路構造をした信号線路を持つ本発明の第1の配線基板と従来の配線基板とにおける信号線路の高周波信号の伝送特性の実測比較データを示している。
【0055】
これらの比較データを得るために用いた配線基板では、図7に示したように、全長40mmのアルミナからなる絶縁基板(ε eff=6)10の上面に備えた幅が0.2mmのメタライズからなる帯状の信号線路20の両側に、幅が0.2mmのメタライズからなる帯状のグランドパターン30を、該グランドパターン30の内側縁とそれに対向する信号線路20の側縁との間の距離を0.2mmあけて平行に並べて備えた。グランドパターン30は、絶縁基板10の下面にグランドパターン30と平行に幅広く層状に並べて備えたメタライズからなるグランド50に絶縁基板10に上下に向けて横に並べて備えたメタライズからなる複数本の導体ビア40を介して電気的に接続した。そして、信号線路20をマイクロストリップ線路に見做して、そのインピーダンス設計を行った。そして、その信号線路20の特性インピーダンスを50Ωにマッチングさせた。
【0056】
図8に示したものは、グランドパターン30をグランド50に絶縁基板10に5mmピッチで上下に向けて横に並べて備えた複数本の導体ビア40を介して電気的に接続した信号線路20であって、グランドパターン30の両端にスタブ60を持たない、即ちスタブ60の長さLが零の信号線路20の伝送特性の実測データを示している。この信号線路20では、その最低共振周波数値が12GHz付近となることが判る。
【0057】
それに対して、図9に示したものは、グランドパターン30をグランド50に絶縁基板10に5mmピッチで上下に向けて横に並べて備えた複数本の導体ビア40を介して電気的に接続した信号線路20であって、グランドパターン30の両端に5mmのスタブ60を持つ信号線路20の伝送特性の実測データを示している。この信号線路20では、その最低共振周波数値が6GHz付近まで降下してしまうことが判る。
【0058】
図10に示したものは、グランドパターン30をグランド50に絶縁基板10に10mmピッチで上下に向けて横に並べて備えた複数本の導体ビア40を介して電気的に接続した信号線路20であって、グランドパターン30の両端にスタブ60を持たない信号線路20の伝送特性の実測データを示している。この信号線路20では、その最低共振周波数値が6GHz付近となることが判る。
【0059】
それに対して、図11に示したものは、グランドパターン30をグランド50に絶縁基板10に5mmピッチで上下に向けて横に並べて備えた複数本の導体ビア40を介して電気的に接続した信号線路20であって、グランドパターン30の両端に10mmのスタブ60を持つ信号線路20の伝送特性の実測データを示している。この信号線路20では、その最低共振周波数値が3GHz付近まで降下してしまうことが判る。
【0060】
図12は、図7に示した配線基板における、スタブ60の長さ(グランド接続引き下がり)Lに対する信号線路20の最低共振周波数値の関係、セラミック基板10に上下に向けて横に並べて備える複数本の導体ビア40のビアピッチPに対する信号線路20の最低共振周波数値の関係を示している。この図によれば、スタブ60の長さLを短く形成すれば、信号線路20の最低共振周波数値が高まることが判る。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の第1の配線基板によれば、グランドパターンの端部に存在するスタブが信号線路に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく効率良く伝えることができる。又は、グランドパターンの端部からスタブを排除して、信号線路に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく効率良く伝えることができる。
【0062】
本発明の第1の配線基板によれば、グランドパターンの端部を絶縁基板の端部より内方に位置させたため、その製造に際して、絶縁基板形成用のセラミックグリーンシートを裁断する際に、セラミックグリーンシート表面に形成されたグランドパターン形成用のメタライズパターンを同時にカットする必要を無くすことができる。そして、セラミックグリーンシートとグランドパターン形成用のメタライズパターンとを同時にカットしたために、メタライズパターンの一部がセラミックグリーンシートのカット面にだれ込んでしまうのを防止できる。
【0063】
本発明の第2の配線基板によれば、グランドパターンの端部に存在するスタブが信号線路に伝える高周波信号に与える悪影響を排除して、信号線路に5〜10GHz以上等の高周波信号を伝送損失少なく効率良く伝えることができる。
【0064】
本発明の第1又は第2の配線基板によれば、信号線路の高周波特性を向上させるために、グランドパターンの端部をグランドに電気的に接続するための線路やハーフ導体ビアを絶縁基板の端面や絶縁基板の端部に備える必要がなくなって、高周波特性の良い信号線路を持つ配線基板を手数をかけずに容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の配線基板の一部斜視図である。
【図2】
本発明の第2の配線基板の一部斜視図である。
【図3】
本発明の第1の配線基板の一部斜視図である。
【図4】
本発明の第2の配線基板の一部斜視図である。
【図5】
本発明の第1の配線基板の一部側面断面図である。
【図6】
本発明の第2の配線基板の一部側面断面図である。
【図7】
配線基板の平面図である。
【図8】
図7の配線基板の伝送特性データ図である。
【図9】
図7の配線基板の伝送特性データ図である。
【図10】
図7の配線基板の伝送特性データ図である。
【図11】
図7の配線基板の伝送特性データ図である。
【図12】
図7の配線基板の信号線路の最低共振周波数値のデータ図である。
【図13】
従来の配線基板の一部斜視図である。
【図14】
従来の配線基板の一部斜視図である。
【図15】
従来の配線基板の一部側面断面図である。
【図16】
従来の配線基板の一部斜視図である。
【図17】
従来の配線基板の一部斜視図である。
【符号の説明】
10 絶縁基板
20 信号線路
30 グランドパターン
30a グランドパターン部分
30b グランドパターンの端部
40 導体ビア
50 グランド
60 スタブ
70 線路
80 ハーフ導体ビア
 
訂正の要旨 〈訂正事項a〉
特許請求の範囲の請求項1の、「・・距離Lを、前記信号線路に伝える高周波信号の波長入の1/4未満ないし零に形成し・・」を、「・・距離Lを、零に形成し・・」と訂正する。
〈訂正事項b〉
特許請求の範囲の請求項2を、削除する。
〈訂正事項c〉
特許請求の範囲の請求項3を、請求項2に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項2の、「・・請求項L又は2記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
〈訂正事項d〉
特許請求の範囲の請求項4を、請求項3に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項3の、「・・請求項L又は2記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
〈訂正事項e〉
特許請求の範囲の請求項5を、請求項4に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項4の、「・・請求項L又は2記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
〈訂正事項f〉
特許請求の範囲の請求項6を、請求項5に繰り上げると共に、その繰り上げた請求項5の、「・・請求項1、2、3、4又は5記載の高周波用配線基板。」を、「・・請求項1、2、3又は4記載の高周波用配線基板。」と訂正する。
異議決定日 2002-07-09 
出願番号 特願平7-212563
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H05K)
P 1 651・ 832- ZA (H05K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 新川 圭二  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 久雄
鈴木 法明
登録日 2001-05-11 
登録番号 特許第3186018号(P3186018)
権利者 新光電気工業株式会社
発明の名称 高周波用配線基板  
代理人 松田 宗久  
代理人 松田 宗久  

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