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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01C
管理番号 1067619
異議申立番号 異議2002-70551  
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-07-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-01 
確定日 2002-10-24 
異議申立件数
事件の表示 特許第3205988号「アンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3205988号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 第1.手続の経緯
特許第3205988号の請求項1〜6に係る発明は、平成11年12月27日に特許出願され、平成13年 7月 6日にその特許権の設定登録がなされ、その後、済藤隆義(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成14年 5月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内には、特許権者から何らの応答もなされなかったものである。

第2.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
本件の請求項1〜6に係る発明は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明6」という。)

「 【請求項1】 GPS受信機による車両位置情報から設定位置を検知する位置データ検知装置において、
受信アンテナを有するGPS受信機と、予め設定された複数個所の緯度及び経度の危険地帯設定位置情報が記憶された危険地帯設定位置記憶手段と、GPS受信機からの位置・速度・時刻情報に基づき車両の現在位置を検出する現在位置演算手段と、車両の現在位置と直近の前記危険地帯設定位置との距離を計測する方位・距離演算手段と、警報手段及び上記GPS受信機と上記各手段を制御する主制御手段とから構成され、
前記危険地帯設定位置記憶手段が、危険地帯設定位置情報として一方の端側と他の端側を結ぶ線からなる連続地帯の複数箇所を危険地帯設定位置情報とする記憶手段であり、
また、前記主制御手段が、現在位置演算手段と、方位・距離演算手段を制御し、危険地帯設定位置記憶手段に予め設定された複数箇所の緯度・経度の危険地帯設定位置情報から直近の危険地帯設定位置情報を検索し、直近の危険地帯設定位置情報と現在の車両の位置情報からその距離を演算して、危険地帯設定位置までの複数の所定距離及び危険地帯設定位置に到達したとき警報手段により警報を発することができるものであることを特徴とするアンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置。
【請求項2】 GPS受信機による車両位置情報から設定位置を検知する位置データ検知装置において、
受信アンテナを有するGPS受信機と、予め設定された複数個所の緯度及び経度の危険地帯設定位置情報が記憶された危険地帯設定位置記憶手段と、GPS受信機からの位置・速度・時刻情報に基づき車両の現在位置を検出する現在位置演算手段と、車両の現在位置と直近の前記危険地帯設定位置との距離を計測する方位・距離演算手段と、警報手段及び上記GPS受信機と上記各手段を制御する主制御手段とから構成され、
前記危険地帯設定位置記憶手段が、危険地帯設定位置情報として一方の端縁と他の複数の端縁を結ぶエリアからなる連続地帯の複数箇所を危険地帯設定位置情報とする記憶手段であり、
また、前記主制御手段が、現在位置演算手段と、方位・距離演算手段を制御し、危険地帯設定位置記憶手段に予め設定された複数箇所の緯度・経度の危険地帯設定位置情報から直近の危険地帯設定位置情報を検索し、直近の危険地帯設定位置情報と現在の車両の位置情報からその距離を演算して、危険地帯設定位置までの複数の所定距離及び危険地帯設定位置に到達したとき警報手段により警報を発することができるものであることを特徴とするアンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置。
【請求項3】 前記主制御手段が、車両の現在位置と危険地帯設定位置との距離の遠近に応じて、警報手段の警報音を変えることができるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置。
【請求項4】 前記主制御手段が、前記危険地帯設定位置の種別に応じて、警報手段の警報音を変えることができるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置。
【請求項5】 前記GPS受信機と前記各手段が、樹脂製又は金属製の一体構造のハウジングに収容されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置。
【請求項6】 前記一体構造のハウジングが、該ハウジングの底部面に着脱自在な定着手段を有してなることを特徴とする請求項5に記載のアンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置。」
2.刊行物等
(1)申立人が提出した甲第1号証(特開平7-55913号公報、以下「引用例1」という。)には、以下の事項の記載がある。
(a)「【請求項1】 予め設定された複数の位置(以下、通過地点と称する)の緯度,経度を登録する情報登録部と、前記通過地点に対応して発音パターンを登録する音声登録部と、GPS信号により現在位置を判定するGPS部と、現在位置が前記通過地点の一定範囲内にあるかを判定する通過判定部と、発音パターンに基づき音声を再生する音声再生部と、登録されている順番に基づいて通過地点情報を更新する情報更新部とからなり、現在位置が前記通過地点の一定範囲内にあると判定した場合には、登録されている情報に基づき音声を再生するとともに、次通過地点の情報を設定することを特徴とするバス用GPS装置。」(特許請求の範囲)
(b)「【産業上の利用分野】本発明は、衛星からの信号を基に現在位置を判定する Global PositioningSystem(以下、GPSと称する)機能を有し、現在位置に応じてバスに備え付けられた様々な機器を制御することを特徴とするバス用GPS装置に関するものである。」(段落【0001】)
(c)「【課題を解決するための手段】通過地点の緯度,経度を登録する情報登録部と、通過地点に対応して発音パターンを登録する音声登録部と、GPS信号により現在位置を判定するGPS部と、現在位置が通過地点の一定範囲内にあるかを判定する通過判定部と、発音パターンに基づき音声を再生する音声再生部と、登録されている順番に基づいて通過地点情報を更新する情報更新部とから構成したものである。」(段落【0007】)
(d)「【作用】上記構成によれば、予め情報登録部を用いて音声を出力したい通過地点をシステムに登録し、その登録した各々の通過地点について、音声登録部により、音声パターンを登録する。バスの運行中はGPS部によって判定された現在位置が、登録されている通過地点の一定範囲内かを通過判定部により判定し、範囲内の時には通過地点に対応して登録されている音声パターンを音声再生部により再生する。」(段落【0008】)
(e)「次に、実際に用いる段階に関して説明する。運転手がシステムの電源をオンにすると、GPS制御部102に対して初期化信号が通知され、GPS制御部102はGPS部(図示せず)に対して起動をかける。GPS部は人工衛星の検出を開始する。人工衛星を4つ以上検出した場合には、人工衛星からの信号を基に、現在位置の緯度,経度,高度の計算を行う。人工衛星を3つ検出した場合には、現在位置の緯度,経度の計算を行う。また、人工衛星を2しか検出できなかった場合には、その旨をGPS制御部102を介して、主制御部101に通知する。」(段落【0019】)
(f)「ここでは、3つ以上の衛星を検出できたものとして説明を行う。GPS部は定期的に緯度,経度の計算を行い、GPS制御部102にその結果を通知する。GPS部からGPS制御部102への緯度,経度情報の通知は立ち上げ後、電源オフまで継続する。GPS制御部102は、電源オンの後に、最初にGPS部から、緯度,経度の情報を得ると、その情報を解釈処理部104に通知する。」(段落【0020】)
(g)「解釈処理部104はシステムが立ち上がると通過地点管理部107を初期化する。通過地点管理部107は解釈処理部104により初期化されると、不揮発性メモリ中の所定の位置に登録されている通過地点の情報中で先頭の通過地点(緯度,経度)に関する情報を読み出すとともに、現在有効な通過地点を記憶する内部変数に、先頭の通過地点が有効であることを記憶し、通過地点の緯度,経度に関する情報を解釈処理部104に通知する。」(段落【0021】)
(h)「GPS制御部102は、定期的にGPS部から緯度,経度に関する情報を受けるにあたって、前回の緯度,経度の情報に対し、新しい緯度,経度の情報が変化したかを判定し、変化がある場合には、解釈処理部104に新しい緯度,経度の情報を通知する。また、変化がない場合には何もしない。」(段落【0022】)
(i)「解釈処理部104は、現在位置の緯度,経度を通過判定部108に通知する。通過判定部108は通過地点管理部107から通過地点の緯度,経度の情報を得て、現在位置とこの通過地点との間の距離を計算し、一定の範囲内にあるかを判定する。範囲外であると判定した場合には何もしない。範囲内であると判定した場合には、その旨を通過地点管理部107に通知する。通過地点管理部107は通過判定部108から現在位置が範囲内であるとの通知を受けると、現在の通過地点に対応する番号を音声パターン管理部109に通知すると、同時に不揮発性メモリに登録されている一連の通過地点に関する情報のなかで、有効な次の通過地点を検出し、前記内部変数の内容を更新し、新しい通過地点の緯度,経度の情報を解釈処理部104に通知する。」(段落【0023】)
(j)「音声パターン管理部109は通過地点管理部107から通過地点の番号の情報を受けると、その番号に対応した音声パターン情報(文字列とイントネーション)を検索し、音声出力制御部103に通知する。音声出力制御部103では、通知された文字列とイントネーションの情報から音声信号をスピーカから出力することで案内を行う。」(段落【0024】)
(k)「さらに、解釈処理部104は新たな緯度,経度の情報が通知されると、上記一連の動作を再度繰り返す。このようにして、バスが移動して予め登録された通過地点に近づくと音声によるアナウンスがなされる。」(段落【0025】)
(l)「続いて、第2の実施例についての説明を行う。図3は本発明のバス用GPS装置の第2の実施例の構成を示している。図3(a)において、201は主制御部、202はGPS部を制御するGPS制御部、203はスピーカにより音声出力を行う音声出力制御部、204は運賃表示装置を制御する表示装置制御部、205は整理券配布装置を制御する配布装置制御部である(以下、音声出力制御部203,表示装置制御部204及び配布装置制御部205の、これら3つをまとめて外部制御部と称する。)」(段落【0026】)

ところで、上記(e),(f)の記載によれば、図示されていないGPS部が、受信アンテナを有するGPS受信機を備えていることは技術常識上明らかなことであるから、甲第1号証には、
「GPS受信機による車両位置情報から設定位置を検知するバス用GPS装置において、
受信アンテナを有するGPS受信機と、予め設定された複数個所の緯度及び経度の通過地点登録部105と、GPS受信機からの位置・速度・時刻情報に基づき車両の現在位置を検出するGPS部と、車両の現在位置と直近の前記通過地点の位置との距離を計測する通過判定部108と、音声出力制御部103及び上記GPS受信機と上記各手段を制御する制御部(GPS制御部102,解釈処理部104等)とから構成され、
前記通過地点登録部105が、通過地点情報として走行経路上の複数の各停留所を通過地点情報とする記憶手段であり、
また、前記制御部(GPS制御部102,解釈処理部104等)が、GPS部と、通過判定部108を制御し、通過地点登録部105に予め設定された複数箇所の緯度・経度の通過地点情報から次の通過地点情報を検索し、直近の通過地点情報と現在の車両の位置情報からその距離を演算して、通過地点までの所定距離及び通過地点に到達したとき音声出力制御部103により音声出力を発することができるものであることを特徴とするバス用GPS装置。」
が記載されていることと認められる。

(2)同じく、甲第2号証(特開平9-27096号公報、以下「引用例2」という。)には、以下の事項の記載がある。
(a)「【請求項1】利用者の現在位置を測位するGPS装置と、利用者の現在位置を地図情報と同時に表示するナビゲーション部と、車の速度違反を取り締まる無線電波を受信する速度取締レーダー探知手段と、この速度取締レーダー探知手段において取締無線電波を受信すると、その旨警告するとともに、無線電波を受信したことを示す信号を前記GPS装置に入力し、速度取締を実施している箇所の位置として記憶するメモリ部とを備え、再度利用者が前記メモリ部に記憶した取締箇所またはその近傍を通りかかった場合、前記ナビゲーション部の地図情報とかさねてその取締箇所または地域として表示するとともに、警告装置で利用者にその旨注意を促すことを特徴とする速度超過警告装置。
【請求項2】前記ナビゲーション部に表示している地図情報に対して各道路の制限速度を記憶させておき、取締箇所付近を速度超過して走行した場合、警告音または音声によって利用者に注意を促すことを特徴とする請求項1記載の速度超過警告装置。」(特許請求の範囲)
(b)「利用者が任意の道路を走行中に、その道路の制限速度が何km/hであるか否かを検索する(ステップ1)。現在の走行速度をGPS装置1において計測し(ステップ2)、制限速度内の走行であるか判定する(ステップ3)。制限速度を超過して走行している場合、利用者に対して警告音等(警告A)で注意を促す(ステプ4)。次に、利用者が現在走行している位置がメモリ部5に記憶されている速度超過取締の地域に所属しているか否かを調べ(ステップ5)、その地域に所属していると警告音等(警告B)で警告する(ステップ6)。それと同時に、速度取締レーダー探知機4において取締電波を受信した場合に警告音等(警告C)で警告する(ステップ7、8)。ここで、警告A〜Cはそれぞれ異なる警告方法(例えば、警告音を変化させる)である。以上の方法で利用者に対して警告し、速度超過違反を未然に防止する。」(段落【0013】)

(3)同じく、甲第3号証(特開平4-75200号公報、以下「引用例3」という。)には、以下の事項の記載がある。
(a)「(産業上の利用分野) この発明は、GPS(Global Positioning Sytem)受信機で受信した複数の人工衛星の航法データに基づいて算出した車両(自動車)の走行速度が警告速度以上のとき、報知器を作動させて走行速度が警告速度以上(危険速度)であることを報知する車両用ナビゲーション装置に関するものである。」(公報第1頁右下欄10〜17行)
(b)「AA1,AA2,AA3およびASは、警告エリアを示し、警告エリアAA1,AA2,およびAA3は変化点PC1,PC2,PC3に対応し、警告エリアASは警告点PSに対応するものである。」(公報第3頁左上欄14〜17行,第3図)

(4)同じく、甲第4号証(特開平9-329448号公報、以下「引用例4」という。)には、以下の事項の記載がある。
(a)「【発明の属する技術分野】 本発明は、現在位置を検出してその位置を地図上に表示することができる小型軽量の簡易なナビゲーション装置に関するものである。」(段落【0001】)
(b)「ナビゲーション装置本体1aの中の最上部には、図2に示すように、GPSアンテナ部2が組み込まれている。
このGPSアンテナ部2は、平面型のGPSアンテナで、ナビゲーション装置本体1aをダッシュボードに据え置いた状態で、衛星を見る視野がナビゲーション装置本体1aの樹脂製の上面板を通して上方を向くよう設定されている。」(段落【0014】,図2)

(5)同じく、甲第5号証(特開平7-120270号公報、以下「引用例5」という。)には、以下の事項の記載がある。
(a)「【産業上の利用分野】 本発明は、衛星からの信号を基に現在位置を判定するGlobal Positioning System(以下、GPSと称する)機能を有し、データ記憶用の光ディスク(以下、CDーROMと称する)中の地図情報を検索・表示する機能を有するポータブルナビゲーション装置に関する。」(段落【0001】)
(b)「図2は、本発明の一実施例のポータブルナビゲーション装置を車内で使用するときの形態を示し、ポータブルナビゲーション装置を車内に固定するためのスタンド(部分)9を備え、車内ではハンドル8に付設されたGPSアンテナ1ではGPS信号を受信できないため、外部アンテナ10を用い、この外部アンテナ10とポータブルナビゲーション装置とをケーブル11でつないでいる。図中の12は外部アンテナ10をマグネットなど(図示せず)で固定するための車両の外装板(部分)である。そして外部アンテナ10の使用時には、GPSアンテナ1は不要であるので、ハンドル8を倒している。」(段落【0012】,図2)

(6)同じく、甲第6号証(特開平4-289415号公報、以下「引用例6」という。)には、以下の事項の記載がある。)
(a)「【請求項1】 自車位置情報を生成する自車位置情報生成手段と、目的地の位置情報を設定する目的地設定手段と、前記自車位置情報と前記目的地の位置情報とに基づいて現在地から目的地までの予測走行距離を算出する予測走行距離算出手段とを有する車載ナビゲーション装置であって、前記予測走行距離に応じて告知音を変化させる告知音発生手段を有することを特徴とする車載ナビゲーション装置。
【請求項2】 前記告知音発生手段は、告知音として断続音を生成し、前記予測走行距離に応じて断続音の断続間隔を変化させることを特徴とする請求項1記載の車載ナビゲーション装置」(特許請求の範囲)
(b)「【技術分野】 本発明は、車載ナビゲーション装置に関し、特に自車の目的地への接近の度合を使用者に告知する車載ナビゲーション装置に関する。」(段落【0001】)

3.対比・判断
(1)本件発明1について
<引用例1との対比>
本件発明1と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、後者の「バス用GPS装置」,「GPS部」,「通過判定部108」,「音声出力制御部103」,「制御部(GPS制御部102,解釈処理部104等)」は、それぞれ、前者の「位置データ検知装置」,「現在位置演算手段」,「方位・距離演算手段」,「警報手段」,「主制御手段」に相当するとともに、後者の「通過地点」も前者の「危険地帯設定位置」も、ともにこれらの位置に対して車両が所定距離以内に到達したとき、警報乃至案内を発するもの(警報対象)である点で共通するものであるから、両者は、
「GPS受信機による車両位置情報から設定位置を検知する位置データ検知装置において、
受信アンテナを有するGPS受信機と、予め設定された複数個所の緯度及び経度の警報対象設定位置記憶手段と、GPS受信機からの位置・速度・時刻情報に基づき車両の現在位置を検出する現在位置演算手段と、車両の現在位置と直近の前記警報対象設定位置との距離を計測する方位・距離演算手段と、警報手段及び上記GPS受信機と上記各手段を制御する主制御手段とから構成され、
前記警報対象設定位置記憶手段が、警報対象設定位置情報として走行経路上の複数箇所を警報対象設定位置情報とする記憶手段であり、
また、前記主制御手段が、現在位置演算手段と、方位・距離演算手段を制御し、警報対象設定位置記憶手段に予め設定された複数箇所の緯度・経度の警報対象設定位置情報から直近の警報対象設定位置情報を検索し、直近の警報対象設定位置情報と現在の車両の位置情報からその距離を演算して、警報対象設定位置までの所定距離以内に到達したとき警報手段により警報を発することができるものであることを特徴とするGPS利用位置データ検知装置。」
である点で一致し、
(イ)警報対象設定位置記憶手段に関し、本件発明1は、危険地帯設定位置情報として一方の端側と他の端側を結ぶ線からなる連続地帯の複数箇所を危険地帯設定位置情報とする記憶手段であるのに対して、引用発明では、通過地点の位置記憶手段である通過地点登録部105が、通過地点の位置情報として走行経路上の複数の各停留所を位置情報とする記憶手段である点。
(ロ)方位・距離演算手段に関し、本件発明1は、直近の危険地帯設定位置情報と現在の車両の位置情報からその距離を演算して、危険地帯設定位置までの複数の所定距離及び危険地帯設定位置を検出しているのに対して、引用発明では、現在位置と次の通過位置との距離を計算して、一定の範囲内にあるかを判定している点。
(ハ)GPS利用位置データ検知装置に関し、本件発明1は、アンテナ一体型であるのに対して、引用発明では、かかる構成が明らかでない点。

(a)相違点(イ)について、
まず、引用例3(特開平4-75200号公報)には、走行例路上に連続地帯である「警告エリア」が複数箇所に設定されていることが記載されている。
そして、記憶手段に記憶させる位置情報として、「連続地帯」を対象とするか、「通過地点」を対象とするかは、位置情報の単なる入力単位の設定に係わることであって、連続地帯である本件発明1の「危険地帯設定位置」も、引用発明の「通過地点」も、ともにこれらの位置に対して車両が所定距離範囲内に到達したとき、警報乃至案内を発するものである点で共通するものである。
また、本件特許明細書の段落【0010】に、「危険地帯設定位置記憶部6は、・・・さらに高速道路の仮眠所・給油所のあるSA、道の駅等の緯度・経度データが書き込まれてもよい。」とあることから、前者の「危険地帯設定位置記憶手段」に記憶される位置情報として、「一方の端側と他の端側を結ぶ線からなる連続地帯」以外に、上記「SA、道の駅等」の「通過地点」も含まれることが前提とされていることが明らかである。
したがって、記憶手段を位置情報として一方の端側と他の端側を結ぶ線からなる連続地帯の複数箇所を位置情報とする記憶手段とすることにより、上記相違点(イ)に係る構成とすることは、当業者ならば容易に想到できたことである。
(b)相違点(ロ)について、
引用発明において、現在位置と次の通過位置との距離を計算して、一定の範囲内にあるかを判定しているということは、登録されている一連の通過地点に関する情報のなかで、有効な次の通過地点を検出した直後から、現在位置と次の通過位置との距離計算を繰り返し実行して、該距離が一定の範囲内になるまで、これを複数回実行することに他ならない。
すなわち、本件発明1においても引用発明においても、現在の車両位置からの複数の所定距離を演算している点において実質的な相違はない。
(c)相違点(ハ)について、
アンテナ一体型GPSを利用した位置データ検知装置自体は、例えば、引用例4(特開平9-329448号公報)あるいは引用例5(特開平7-120270号公報)に記載されているとおり、本件特許の出願前において周知のものである。
したがって、引用発明におけるGPS利用位置データ検知装置に上記周知構成を適用することにより、上記相違点(ハ)に係る構成とすることは、当業者ならば容易に想到できたことである。
以上より、本件発明1は、引用例1及び3に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

<引用例2との対比>
引用例2(特開平9-27096号公報)には、「位置データ検知装置」,「現在位置演算手段」,「方位・距離演算手段」,「警報手段」,「主制御手段」等引用例1に記載乃至示唆された事項に加えて、「速度取締を実施している箇所の位置として記憶するメモリ部とを備え、再度利用者が前記メモリ部に記憶した取締箇所またはその近傍を通りかかった場合、前記ナビゲーション部の地図情報とかさねてその取締箇所または地域として表示する」(請求項1)との記載があることから、上記引用例2に記載の発明においては、記憶手段に記憶させる位置情報として、「エリアからなる連続地帯」を対象としていることは明らかであり、これより、本件発明1のように、危険地帯設定位置情報として一方の端側と他の端側を結ぶ線からなる連続地帯の複数箇所を設定することは、当業者が容易に想到できたことである。
以上より、本件発明1は、引用例2及び3に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(2)本件発明2について
記憶手段に記憶させる位置情報として、「一方の端縁と他の複数の端縁を結ぶエリアからなる連続地帯」を対象とすることも、位置情報の単なる入力単位の設定に係わることであるから、当業者ならば容易に想到できたことである。
したがって、本件発明2は、前記(1)の理由及び上記理由により、引用例1(又は2)及び3記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(3)本件発明3について
引用例6(特開平4-289415号公報)に、「予測走行距離に応じて告知音を変化させる告知音発生手段を有することを特徴とする車載ナビゲ―ション装置。」が開示されていることに鑑みれば、車両の現在位置と危険地帯設定位置との距離の遠近に応じて、警報手段の警報音を変えることができる構成とすることは、当業者ならば容易に想到できたことである。
したがって、本件発明3は、前記(1)の理由及び上記理由により、引用例1(又は2)及び3,6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(4)本件発明4について
引用例2(特開平9-27096号公報)に、取締地域なのか、あるいは取締電波を受信した場合なのかにより、警告音を変えることが開示されていることに鑑みれば、危険地帯設定位置の種別に応じて、警報手段の警報音を変えることができる構成とすることは、当業者ならば容易に想到できたことである。
したがって、本件発明4は、前記(1)の理由および上記理由により、引用例1(又は2)及び3,6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(5)本件発明5について
引用例4(特開平9-329448号公報)あるいは引用例5(特開平7-120270号公報)に、GPS受信機とその他の手段がハウジング内に収容されている構成が開示されていることに鑑みれば、GPS受信機と各手段が、樹脂製又は金属製の一体構造のハウジングに収容されてなる構成とすることは、当業者ならば容易に想到できたことである。
したがって、本件発明5は、前記(1)の理由及び上記理由により、引用例1(又は2)及び3,4,5,6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

(6)本件発明6について
引用例5(特開平7-120270号公報)に、ポータブルナビゲーション装置を車内で使用する場合に、スタンド9を備えていることが記載されていることに鑑みれば、一体構造のハウジングが、該ハウジングの底部面に着脱自在な定着手段を有してなる構成とすることは、当業者ならば容易に想到できたことである。
したがって、本件発明6は、前記(1)の理由及び上記理由により、引用例1(又は2)及び3,4,5,6記載の発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件各発明は、上記各引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件各発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件各発明についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-09-02 
出願番号 特願平11-371542
審決分類 P 1 651・ 121- Z (G01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 紀本 孝
大森 蔵人
登録日 2001-07-06 
登録番号 特許第3205988号(P3205988)
権利者 有限会社環境サービス
発明の名称 アンテナ一体型GPS利用位置データ検知装置  

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