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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1068235
審判番号 不服2000-2244  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-02-23 
確定日 2002-11-11 
事件の表示 平成 9年特許願第193803号「R-Fe-B系希土類焼結磁石」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 3月 6日出願公開、特開平10- 64712]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,手続きの経緯と発明の要旨
本願は、平成5年7月15日に出願された特願平5-175088号の特許出願の一部を特許法第44条第1項の規定により分割して新たな特許出願として平成9年7月18日に出願されたものであって、その発明の要旨は、審判請求後に提出された平成12年3月23日付手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1〜2に記載されたとおりのものであり、その中で、請求項1には次のとおり記載されている。
「【請求項1】主成分がR(RはYを含む希土類元素のうちの一種または二種以上である)25〜31.5重量%、B0.8〜1.2重量%、残部FeまたはFeとCoからなり、 酸素含有量が2600ppm未満であり、7.58g/cm3以上の焼結体密度を有し、最大エネルギー積(BH)maxが40.0MGOe以上であり、保磁力iHcが11.0kOe以上であることを特徴とするR-Fe-B系希土類焼結磁石。」

2,引用例
一方、原査定において引用した特開昭62-47455号公報(以下「第1引用例」という。)には、以下のとおりの事項が記載されている。
「この発明は、Fe-B-R系永久磁石材料の改良に係り、最大エネルギー積が
(BH)max≧45MGOeの高性能Fe-B-R系永久磁石材料に関する。」(第1頁右欄第13〜16行)、
「すなわち、この発明は、
R12.0原子%〜15.0原子%(RはNdまたはPrの1種または2種、あるいはさらにその1部を1原子%以下のDy、Tb、Gd、Ho、Er、Tm、Ybの重希土類元素のうち少なくとも1種で置換できる)、
B5.5原子%〜8.0原子%、
O22000ppm以下、C800ppm以下、
必要に応じて、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、W、Alのうち少なくとも1種を2原子%以下、
残部Fe及び不可避的不純物よりなり、
表面部に5Å〜500Åの均一厚みの体心立方晶相を有する粒径10.0μm以下の正方晶からなる主相と、主相間のRリッチ金属相、Bリッチ金属相及び酸化物相からなる非磁性層を有し、
最大エネルギー積が(BH)max≧45MGOeであることを特徴とする高性能永久磁石である。」(第2頁右下欄下から第3行〜第3頁左上欄第13行)、
「実施例1
出発原料として、純度99.9%の電解鉄、フェロボロン合金、純度99.7%以上のNd金属を使用し、これらを配合後、Ar雰囲気中で、高周波溶解し、その後水冷銅鋳型に鋳造し、13.0Nd 6.5B80.5Feなる組成の10kg鋳塊を得た。
その後この鋳塊を、Ar雰囲気中にて、スタンプミルにより粗粉砕し、次にボールミルにより微粉砕し、平均粒度1.6μmの微粉末を得た。
得られたNd-B-Fe合金粉末を酸化しないように保管し、その後Ar雰囲気中で、各微粉末を金型に挿入し、20.0kOeの磁界中で配向し、磁界に垂直方向に、1.5t/cm2の圧力で成形した。
得られた10mm×15mm×20mm寸法の成形体を、1100℃、1時間、Ar雰囲気中、の条件で焼結し、さらにAr中で、800℃、1.5時間と600℃、1.5時間の2段階時効処理を施して磁石化した。
得られた焼結磁石体の組成、磁石特性及び耐食性を測定し、その結果を第1表に示す。」(第4頁右下欄第3行〜第5頁左上欄第1行)。
これらの記載と第1表からすると、同引用例には、R12.0原子%〜15.0原子%(RはNdまたはPrの1種または2種、あるいはさらにその1部を1原子%以下のDy、Tb、Gd、Ho、Er、Tm、Ybの重希土類元素のうち少なくとも1種で置換できる)、B5.5原子%〜8.0原子%、酸素2000ppm以下、その他と残部Feとよりなり、最大エネルギー積が(BH)max≧45MGOeであり、実施例1においては(BH)maxが46.8MGOeであり保持力Hcが11.5KOeである、Fe-B-R系焼結型永久磁石が示されている。
同じく引用した特開昭59-219452号公報(以下「第2引用例」という。)には、以下のとおりの事項が記載されている。
「本発明はFeBR系をベースとする永久磁石材料及びその製造方法に関する。」(第2頁左上欄第7〜8行)、
「軽希土類をRの主成分(即ち全R中、軽希土類50原子%以上)とし、11〜24%R、3〜27%B、残部(Fe+M)の組成は最大エネルギー積(BH)max7MGOe以上とするために好ましい範囲である。
最も好ましくは、軽希土類をRの主成分とし、12〜20%R、4〜24%B、残部(Fe+M)の組成であり、最大エネルギー積(BH)max10MGOe以上を可能とし、(BH)maxは最高33MGOe以上に達する。」(第3頁右上欄下から第2行〜同頁左下欄第8行)、
「なお、粉砕は湿式で行うことが好ましく、アルコール系溶媒、ヘキサン、トリクロルエタン、トリクロルエチレン、キシレン、トルエン、フッ素系溶媒、パラフィン系溶媒などを用いることができる。」(第4頁右下欄第4〜8行)、
「得られた成形体は900〜1200℃の温度、好ましくは1000〜1180℃で焼結する。」(第5頁左上欄下から第2行〜同末行)、
「実施例 4
組成74Fe・8B・17Nd・1Taなる合金を粉砕して平均粒度3μmの粉末とし、10Koeの磁界中で1.5Ton/cm2の圧力をかけ成形体をつくりAr大気圧雰囲気中で各温度3時間焼結を行った時の焼結密度と特性は下表のようになった。」(第6頁右上欄〜同頁左下欄第2行)、
「実施例 16
組成73Fe・9B・15Nd・2Dy・1Vなる合金を粉砕して平均粒度3.1μmの粉末とし、10Koeの磁界中で2.0Ton/cm2の圧力をかけ成形体をつくりAr100Torr中で各温度1時間焼結を行った時の焼結密度と特性は下表のようになった。」(第8頁左上欄第7行〜同頁右上欄第2行)。
これらの記載と実施例4の表及び実施例16の表からすると、同引用例には、焼結密度が7.6g/cm3であり、(BH)maxが25.0〜29.5MGOeである、原子比で11〜24%R、3〜27%B、残部(Fe+M)の組成を有するFeBR系焼結型永久磁石が示されている。

3,対比・判断
第1引用例において希土類元素RとしてNdの場合を想定し、第1引用例記載のR12.0原子%〜15.0原子%、B5.5原子%〜8.0原子%という原子%で表現された範囲を、残りの元素をFeとして重量%に変換すると、R27.0〜33.0重量%、B0.89〜1.38重量%と概算される(ただし、Nd,B,Feの原子量として、それぞれ、144.24、10.81、55.85の値を採用している)ことから、第1引用例記載の発明における、R-Fe-B系希土類焼結磁石(Fe-B-R系焼型結永久磁石)のR12.0原子%〜15.0原子%、B5.5原子%〜8.0原子%という原子%による組成範囲は、本願請求項1に係る発明のR-Fe-B系希土類焼結磁石におけるR25〜31.5重量%、B0.8〜1.2重量%という重量%による組成範囲と重なる。また、同じく第1引用例の実施例1の第1表に記載されている保持力の記号である「Hc」は、永久磁石材料の特性として通常用いられており、逆磁界をかけた時に磁化を零にする保持力を表す記号である「iHc」と同じであると認められる。
これらのことを考慮して、本願請求項1に係る発明と第1引用例記載の発明とを対比すると、両者は「主成分がR(RはYを含む希土類元素のうちの一種または二種以上である)27〜31.5重量%、B0.89〜1.2重量%、残部Feからなり、 酸素含有量が2000ppm以下であり、最大エネルギー積(BH)maxが40.0MGOe以上であり、保磁力iHcが11.0kOe以上であることを特徴とするR-Fe-B系希土類焼結磁石。」の点で一致し、本件請求項1に係る発明においては、7.58g/cm3以上の焼結体密度を有するものであるのに対し、第1引用例記載の発明においては、焼結体密度が示されていないという点で相違する。
上記各相違点について、以下検討する。
(1)出願人が提出した参考文献1(Rev. Mod. Phys., Vol.63, No.4, October 1991, p.827)を参照すると、なるほどRとしてNdを選択したNd2Fe14Bの場合には、密度の上限値(理論値)としては、請求人が主張するように、7.60g/cm3という値が示されているけれども、他のR-Fe-B系の場合ではNdの場合と比較してかなり高密度のものも示されており(例えばDy2Fe14B、Ho2Fe14Bでは、それぞれ、8.05g/cm3 、8.12g/cm3という数値が記載されている)、したがって、Rとしてこれらの元素(Dy、Ho等)のようにNdよりも原子量の大きな希土類元素を採用した場合にはさほど高密度にしなくても、「7.58g/cm3以上」という焼結体密度の値は難なく達成されてしまうため、「7.58g/cm3以上の焼結体密度」という数値限定は格別有意義なものではない、
(2)熱間静水圧プレス処理によってR-Fe-B系永久磁石材料の焼結体密度を理論密度のほぼ100%近いものにできることは普通に知られているところであり(この点について必要ならば、平成12年3月23日付け手続補足書において請求人が提出した参考文献3の公開特許公報である特開昭62-17149号公報を参照)、上記第2引用例においても、圧力をかけて成形体をつくり焼結をした場合の焼結密度として「7.60g/cm3」という値が得られた例も示されている(実施例4,実施例16を参照)、
という二点を参酌すると、
「7.58g/cm3以上の焼結体密度を有する」という構成に格別の進歩性は存在しない。

4,むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は第1引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうである以上、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-17 
結審通知日 2002-09-20 
審決日 2002-10-01 
出願番号 特願平9-193803
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 義三  
特許庁審判長 朽名 一夫
特許庁審判官 左村 義弘
小田 裕
発明の名称 R-Fe-B系希土類焼結磁石  

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