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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) D06F
管理番号 1068261
審判番号 無効2002-35094  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-13 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-03-13 
確定日 2002-11-11 
事件の表示 上記当事者間の特許第3173978号発明「衣服仕上げ装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3173978号の請求項1乃至4に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第3173978号の請求項1乃至4に係る発明(平成7年11月6日出願、平成13年3月30日設定登録。以下、「本件発明1乃至4」という。)は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとおりのものと認める。
【請求項1】衣服が被覆される衣服被覆台を衣服収納室に設け、該衣服被覆台に被覆された衣服にスチーム及び熱風を吹付けて仕上げ処理する衣服仕上げ装置であって、
上記衣服収納室の前面側開口部に回転により該前面開口部を開閉する回転扉を設け、
上記回転扉の前後取付け面に上記衣服被覆台を設け、
上記取付け面に、上記衣服被覆台に被覆された衣服を所定形態に緊張する衣服緊張手段を設け、
前記衣服収納室に、上記回転扉を回転して衣服被覆台を衣服収納室内に収納したとき、該衣服被覆台に被覆される衣服内にスチーム及び熱風を供給する雰囲気供給手段を設けた衣服仕上げ装置。
【請求項2】上記衣服被覆台を、上記回転扉の上部取付け面に上記衣服の腰部を被覆するための腰部被覆台を設けて構成し、
上記衣服緊張手段を、上記衣服の腰部が最大寸法に緊張される形態に上記腰部被覆台を拡張する腰部緊張手段を設けて構成した請求項1記載の衣服仕上げ装置。
【請求項3】上記衣服被覆台を、上記回転扉の下部取付け面に上記衣服の裾部を被覆するための裾部被覆台を設けて構成し、
上記衣服緊張手段を、上記衣服の裾部が最大寸法に緊張される形態に上記裾部被覆台を拡張する裾部緊張手段を設けて構成した請求項1又は2記載の衣服仕上げ装置。
【請求項4】上記衣服緊張手段を、上記衣服被覆台を構成する腰部被覆台及び又は裾部被覆台を上記衣服全体が最長寸法に伸張される方向に相対移動する衣服伸張手段を設けて構成した請求項1,2又は3記載の衣服仕上げ装置。

2.請求人の主張
これに対して、請求人は、本件発明1乃至4の特許を無効とする、との審決を求め、その理由として、概略以下の(イ)乃至(ホ)を挙げ、本件発明1乃至4についての特許は、いずれも、特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とされるべきものである旨主張し、証拠方法として下記の甲第1号証乃至甲第10号証を提出すると共に、検甲第1号証(エレクトロラックス・ジャパン株式会社製衣服仕上げ装置)の検証申出と、検甲第1号証に係る証人尋問の申出をしている。
[無効理由]
(イ)本件発明1乃至4は、本件出願前に公知・公用の検甲第1号証の衣服仕上げ装置と同じ発明であり、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由1」という。)
(ロ)本件発明1乃至4は、本件出願前に公知・公用の検甲第1号証の衣服仕上げ装置に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由2」という。)
(ハ)本件発明1乃至4は、本件出願前に公知・公用の検甲第1号証の衣服仕上げ装置の発明と、本件出願前に頒布された甲第4号証に記載の発明若しくは甲第5号証に記載の発明とを、単に寄せ集めることにより当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由3」という。)
(ニ)本件発明1乃至4は、本件出願前に頒布された甲第4号証若しくは甲第5号証と、甲第6号証・甲第7号証若しくは甲第8号証とを、単に寄せ集めることにより当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由4」という。)
(ホ)本件発明1乃至4は、本件出願前に頒布された甲第1号証乃至甲第5号証を単に寄せ集めることにより当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。(以下、「無効理由5」という。)
[証拠]
甲第1号証:欧州特許出願公開第0101416号明細書
甲第2号証:実願昭62-179532号(実開平1-82900号)の
マイクロフィルム
甲第3号証:「日本クリーニング機械・資材年鑑」株式会社日本クリーニ
ング新聞社、1989年11月1日発行
甲第4号証:特開昭57-153697号公開公報
甲第5号証:欧州特許出願公開第0600126A1号明細書
甲第6号証:エレクトロラックス・ジャパン株式会社作成の「rotor
cabinetローターキャビネット万能立体仕上機」の
カタログ、昭和61年(1986年)7月発行
甲第7号証:エレクトロラックス・ジャパン株式会社作成の「ローター
キャビネット」のパンフレット、1992年2月発行
甲第8号証:エレクトロラックス・ジャパン株式会社作成の「ローター
キャビネットRC-503」の取扱説明書
甲第9号証の1:検甲第1号証(エレクトロラックス・ジャパン株式会社
製衣服仕上げ装置)の写真;直本工業株式会社勤務の新谷
秀樹氏が撮影したもの
甲第9号証の2:検甲第1号証(エレクトロラックス・ジャパン株式会社
製衣服仕上げ装置)の図面;同新谷秀樹氏が作図したもの
甲第10号証:検由第1号証の販売した事実を示す納入機台帳及び保証書
の写し

3.被請求人の主張
被請求人に対しては、平成14年4月9日付けで請求書副本の送達通知をし、期間を指定して答弁書の提出を求めたが、被請求人からは、何等の応答もなされなかった。

4.無効理由について
まず、無効理由5について検討する。
4-1.甲号証
(A)甲第2号証には、ズボン仕上機に関し、図面と共に以下の事項が記載されている。
・「第1図に示すように、基台2上に直立して設けられたフレーム1の上部に、水平方向のスライド軸3が設けられ、そのスライド軸3にズボン保持具4が設けられている。このズボン保持具4は、第4図に示すように、ズボンの上部開口よりズボン内部に挿入される2個の布張り板5、6と、その布張り板5、6に開口部が固着された風船7とから成り、一方の布張り板6がエアシリンダ8の駆動によりスライド軸3上を走行してズボンの腰部を前後に拡張し、ズボンを吊下げ状態で保持するようになっている。また、フレーム1上部には、風船7の開口に臨む蒸気と熱風の吹出し口が設けられている。一方、フレーム1の側面には、上下方向の挟みレール9が取付けられ、その挟みレール9に裾挟み具10が移動可能に取付けられている。」(明細書第3頁第7行〜第4頁第2行)
・「先ず、ズボンAの上部開口より、風船7と共に布張り板5、6を挿入し、シリンダ8の駆動により、一方の布張り板6を移動させてズボンAを吊下げ保持する。」(同書第5頁第15〜18行)
・「次に、吊下げたズボンAの裾長さに応じて裾挟み具10を上下動させて所定の位置に固定し、挟み部材12の固定板13と可動板15との間に、ズボン裾部を折目を合わせながら挿入する。」(同書第5頁第19行〜第6頁第2行)
・「ズボンA内に蒸気及び熱風が吹き込んで・・・蒸気や熱風がロスなくズボン全体の生地に伝わり、最適な生地の仕上りを得ることができる。」(同書第6頁第5〜10行)
(B)甲第3号証の第21頁には、ローターキャビネット・万能立体仕上機に関し、以下の事項が記載されている。
・「回転ドアを採用、キャビネット内で自動仕上げ中、反対側で着せ替えができるため、・・・早く仕上げられる。」
・「蒸気が外にでないので、・・・熱気で能率が落ちたりしない。」
また、同頁に掲載された写真及び図面には、衣服収納室の前面側開ロ部に回転により前面開ロ部を開閉する回転扉を設け、該回転扉の前後取付け面に衣服が被覆された衣服被覆手段を設けたローターキャビネット・万能立体仕上機の構造が示されている。
(C)甲第4号証には、衣類の伸張器具に関し、以下の事項が記載されている。
・「本発明はズボンなどのようなしわ伸しを必要とする衣類の伸張器具に関する。」(公報第2頁右上欄第6〜7行)
・「ズボンを人体の骨盤に接するウエスト廻りの部分で弾性的に引張り保持するように作動する1対の引張り具を有する1個の上部部材と、上下方向に移動可能で、ズボンの両脚の下端部に接する1対の締め具であって、各々が固定挟み板と可動挟み板を具える締め具を保持する下部部材とを具えた1個の下部部材とから成っている。」(同第2頁左下欄第18行〜右下欄第5行)
・「ズボンなどを伸張する器具は、・・・ズボンを支える上部部材1を有している。この上部部材は・・・アイロン加工キャビネットの例えば廻転ドアに対し、リンク結合あるいは接続されるためのブラケット2を有している。」(同第2頁右下欄第11〜17行)
・「ブラケット2は、水平棒4を支持し、水平棒には中央部に於て前記水平棒を左右対称の2部分に分割する中央ブロック5を備えている。これら分割された部分上には伸張具7を支持するブロック6が、後で詳述する弾性部材の作用により滑動可能に設けられていて、この種の伸張具はズボンを伸張するため人体の骨盤に相当するズボンのウエスト部分に係合するのに適切である。・・・ブロック6と伸張具7とは、1対の可撓作動バネ8により押圧される、またこのバネは前記の中央ブロック5によって、前記水平棒4の中心部に対し対称な弾性力を付与することができるように支持されている。」(同第3頁左上欄第1〜13行)
・「本発明の伸張器具は全体を数字20で示した下部部材を有し、この下部部材20は支持脚22と、この脚から延在する案内柱24に並行して延在する直立柱23から成るフレーム上を垂直方向に移動できる。前記下部部材20は、直立柱23に沿って滑動可能であり、・・・前記直立柱23の軸心を横切る方向に、且つそれに対し対称に、1対の締め具(クランプ、プライヤー)30を具え、ズボンの両脚の下端に係合するようになっている。」(同第3頁右上欄第4〜16行)
・「かくして、ズボンは完全に伸張された状態となり、在来の方法によるスチーム、熱空気などのしわ伸し処理にかけることが可能になる。」(同第4頁左下欄第3〜5行)
また、第1〜5図には、ズボンなどの衣類が支持される上部部材1及び下部部材20からなる支持部材をキャビネットに設け、上記キャビネットの前面側開口部に回転により該前面側開口部を開閉する廻転ドアを設け、上記廻転ドアの上部取付け面にズボンのウエスト部分を弾性的に引張り保持する伸張具7を有する上部部材1を、下部取付け面に上下方向に移動可能でズボンの両脚の下端部に接する1対の締め具30を有する下部部材20をそれぞれ設け、上記伸張具7と締め具30とでズボンなどの衣類を所定形態に伸張する伸張手段を構成し、上記伸張手段を、上部部材1に対し下部部材20を上下方向に移動する移動手段を設けて構成した衣類の伸張器具の構造が示されている。
これらの記載事項によれば、甲第4号証には、
「ズボンなどの衣類が支持される支持部材をキャビネットに設け、該支持部材に支持されたズボンなどの衣類にスチーム、熱空気などのしわ伸し処理をかける衣類の伸張器具であって、
上記キャビネットの前面側開口部に回転により該前面側開口部を開閉する廻転ドアを設け、
上記支持部材を、上記廻転ドアの上部取付け面に上記ズボンなどの衣類のウエスト部分に係合するための上部部材1と、上記廻転ドアの下部取付け面に上記ズボンなどの衣類の両脚の下端に係合するための下部部材20を設けて構成し、
上記取付け面に、上記支持部材に支持されたズボンなどの衣類を所定形態に伸張する伸張手段を設け、
上記伸張手段を、上記ズボンなどの衣類のウエスト部分を弾性的に引張り保持するように上部部材1を拡張する伸張具7と、上記ズボンなどの衣類の両脚の下端部に接する下部部材20に設けられた締め具30と、上記支持部材を構成する上部部材1に対して下部部材20を上記ズボンなどの衣類全体が伸張される上下方向に移動する移動手段を設けて構成し、
前記キャビネットに、該支持部材に支持されるズボンなどの衣類にスチーム、熱空気などのしわ伸し処理を行う手段を設けた衣類の伸張器具」(以下、「甲第4号証発明」という。)
が記載されているものと認められる。

4-2.対比・判断
(A)本件発明1について
本件発明1と上記甲第4号証発明とを比較すると、甲第4号証発明における「ズボンなどの衣類」が本件発明1における「衣服」に相当し、以下同様に、「支持」が「被覆」に、「支持部材」が「衣服被覆台」に、「キャビネット」が「衣服収納室」に、「スチーム、熱空気」が「スチーム及び熱風」に、「しわ伸し処理をかける」が「(スチーム及び熱風を)吹付けて仕上げ処理する」に、「衣類の伸張器具」が「衣服仕上げ装置」に、「廻転ドア」が「回転扉」に、「伸張する」が「緊張する」に、「伸張手段」が「衣服緊張手段」に、「(スチーム、熱空気などの)しわ伸し処理を行う手段」が「(スチーム及び熱風を)供給する雰囲気供給手段」にそれぞれ相当している。
また、甲第4号証発明において、スチーム及び熱風を供給する時期は、その機能・構造上の観点から、「回転扉を回転して衣服被覆台を衣服載置部内に収納したとき」であることは自明のことである。
したがって、両者は、
「衣服が被覆される衣服被覆台を衣服収納室に設け、該衣服被覆台に被覆された衣服にスチーム及び熱風を吹付けて仕上げ処理する衣服仕上げ装置であって、
上記衣服収納室の前面側開口部に回転により該前面開口部を開閉する回転扉を設け、
上記回転扉の取付け面に上記衣服被覆台を設け、
上記取付け面に、上記衣服被覆台に被覆された衣服を所定形態に緊張する衣服緊張手段を設け、
前記衣服収納室に、上記回転扉を回転して衣服被覆台を衣服収納室内に収納したとき、該衣服被覆台に被覆される衣服にスチーム及び熱風を供給する雰囲気供給手段を設けた衣服仕上げ装置」
である点で一致し、次の点で相違している。
a)回転扉に衣服被覆台を設ける際に、本件発明1が、回転扉の「前後」取付け面に設けたのに対し、甲第4号証発明は、回転扉の片側の取付け面のみに設けた点(以下、「相違点1」という。)。
b)スチーム及び熱風を供給する箇所に関し、本件発明1が、衣服「内」としているのに対し、甲第4号証発明は、かかる限定がなされていない点(以下、「相違点2」という。)。
以下、上記の相違点について検討する。
・相違点1について
甲第3号証には、ローターキャビネット・万能立体仕上機(本件発明1の「衣服仕上げ装置」に相当)において、キャビネット内で自動仕上げ中、キャビネットの回転扉の反対側で衣服を着せ替えて早く仕上げるために、回転扉の前後取付け面に衣服被覆手段(同じく「衣服被覆台」に相当)を設けた構成、即ち、回転扉の前後両面を利用した構成が記載されている。
甲第3号証及び甲第4号証に記載のものは、いずれも衣服仕上げ装置という同一の技術分野に属し、且つ、作業効率を上げるという共通の課題を有するものであるから、甲第4号証発明において、甲第3号証に記載の回転扉の前後両面を利用する構成を採用して、回転扉の前後取付け面に衣服被覆台を設けるようにすることは、当業者が容易に推考し得るところである。
・相違点2について
甲第2号証には、ズボン内に蒸気及び熱風を吹き込む手段を設けたことにより、蒸気や熱風がロスなくズボン全体の生地に伝わり、最適な生地の仕上りを得ることができるズボン仕上機(本件発明1の「衣服仕上げ装置」に相当)が記載されている。
甲第2号証及び甲第4号証に記載のものは、いずれも衣服仕上げ装置という同一の技術分野に属し、且つ、最適な生地の仕上りを得るという共通の課題を有するものであるから、甲第4号証発明において、甲第2号証に記載の技術に倣い、衣服内にスチーム及び熱風を供給するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本件発明1の奏する効果は、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された内容から、当業者が予測し得る範囲内のものである。
以上のとおりであるので、本件発明1は、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(B)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に、「衣服被覆台を、回転扉の上部取付け面に衣服の腰部を被覆するための腰部被覆台を設けて構成し、衣服緊張手段を、上記衣服の腰部が最大寸法に緊張される形態に上記腰部被覆台を拡張する腰部緊張手段を設けて構成した」点をさらに限定したものであるが、かかる限定した構成は、甲第4号証発明の中に、「支持部材(本件発明2の「衣服被覆台」に相当)を、廻転ドア(同じく「回転扉」に相当)の上部取付け面にズボンなどの衣類のウエスト部分(同じく「衣服の腰部」に相当)に係合(同じく「被覆」に相当)するための上部部材1(同じく「腰部被覆台」に相当)を設けて構成し、伸張手段(同じく「衣服緊張手段」に相当)を、上記ズボンなどの衣類のウエスト部分を弾性的に引張り保持するように上部部材1を拡張する(同じく「最大寸法に緊張される形態に上記腰部被覆台を拡張する」に相当)伸張具7(同じく「腰部緊張手段」に相当)を設けて構成し(た)」として実質的に含まれているものである。
したがって、上記(A)での検討内容を踏まえれば、本件発明2も、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(C)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に、「衣服被覆台を、回転扉の下部取付け面に衣服の裾部を被覆するための裾部被覆台を設けて構成し、衣服緊張手段を、上記衣服の裾部が最大寸法に緊張される形態に上記裾部被覆台を拡張する裾部緊張手段を設けて構成した」点をさらに限定したものであるが、このうち「衣服被覆台を、回転扉の下部取付け面に衣服の裾部を被覆するための裾部被覆台を設けて構成」した点は、甲第4号証発明の中に、「支持部材(本件発明3の「衣服被覆台」に相当)を、廻転ドア(同じく「回転扉」に相当)の下部取付け面にズボンなどの衣類の両脚の下端(同じく「衣服の裾部」に相当)に係合(同じく「被覆」に相当)するための下部部材20(同じく「裾部被覆台」に相当)を設けて構成し(た)」として実質的に含まれているものである。
また、「衣服緊張手段を、衣服の裾部が最大寸法に緊張される形態に裾部被覆台を拡張する裾部緊張手段を設けて構成した」点は、甲第4号証発明の中に、「衣服の腰部が最大寸法に緊張される形態に腰部被覆台を拡張する腰部緊張手段」として「上部部材1」に採用されていた構成を、単に、「ズボンなどの衣類の両脚の下端部(本件発明3の「衣服の裾部」に相当)に接する下部部材20(同じく「裾部被覆台」に相当)」に転用しただけのことであり、当業者にとって容易である。
したがって、上記(A)での検討内容を踏まえれば、本件発明3も、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(D)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1に、「衣服緊張手段を、衣服被覆台を構成する腰部被覆台及び又は裾部被覆台を衣服全体が最長寸法に伸張される方向に相対移動する衣服伸張手段を設けて構成した」点をさらに限定したものであるが、かかる限定した構成は、甲第4号証発明の中に、「伸張手段(本件発明4の「衣服緊張手段」に相当)を、支持部材(同じく「衣服被覆台」に相当)を構成する上部部材1(同じく「腰部被覆台」に相当)に対して下部部材20(同じく「裾部被覆台」に相当)を上記ズボンなどの衣類全体が伸張される上下方向に移動する移動手段(同じく「衣服伸張手段」に相当)」として実質的に含まれているものである。
したがって、上記(A)での検討内容を踏まえれば、本件発明4も、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、他の無効理由1乃至4について検討するまでもなく、本件発明1乃至4は、甲第2号証乃至甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、本件発明1乃至4についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-17 
結審通知日 2002-09-20 
審決日 2002-10-02 
出願番号 特願平7-313658
審決分類 P 1 112・ 121- Z (D06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 平城 俊雅  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 千壽 哲郎
和泉 等
登録日 2001-03-30 
登録番号 特許第3173978号(P3173978)
発明の名称 衣服仕上げ装置  
代理人 中谷 武嗣  

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