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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F |
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管理番号 | 1068266 |
審判番号 | 不服2001-4976 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-03-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-04-02 |
確定日 | 2002-12-02 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第254444号「固液分離装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 9年 3月25日出願公開、特開平 9- 75937、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成7年9月7日に特許出願(特願平7-254444号)したものであって、その請求項1ないし3に係る発明(以下「本願発明1」ないし「本件発明3」という)は、平成12年12月18日付手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 浸漬槽と、浸漬槽内に配置され複数のプレート状分離膜エレメントを対峙させて配列して構成した分離装置と、分離装置に連通する分離処理液の吸引機構と、分離装置の下方に配置された散気器とからなる固液分離装置において、分離装置の分離膜エレメントの配列方向の幅をLとしたとき、分離装置上部と浸漬槽液面との距離がL/2以上、浸漬槽横壁と分離装置側部との距離がL/4以上、分離装置下部と散気器上部との距離がL/4以上、散気器下部と浸漬槽底部との距離がL/2以上であるように浸漬槽内に分離装置及び散気器を配置した固液分離装置。 【請求項2】 分離膜が中空糸膜である請求項1記載の固液分離装置。 【請求項3】 浸漬槽が生物処理槽である請求項1記載の固液分離装置。」 2.原査定の理由 本願を拒絶すべきものとした原査定の拒絶の理由の概要は、この出願の請求項に係る発明は、その出願前日本国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない というものである。 3.引用刊行物記載の発明 (1)引用刊行物1(特開平6-238273号公報)には以下の記載がある。 ア-1.「中空糸膜モジュールによる濾過方法は、沈澱槽2と処理水槽8とのヘッド差による吸引濾過とする。」(第2頁2欄45〜47行) ア-2.「機能回復処理は、処理水槽8内に溜められた浄化水の1部を逆洗ポンプ9により沈澱槽2へ連続的又は間欠的に逆流させ、中空糸膜モジュール4の表面又は細孔に付着又は堆積した濁質を剥離沈降させるものである。このとき、エアコンプレッサー6により、中空糸膜モジュール4へ下方から気泡を当てることにより洗浄効果は向上する。」(第3頁4欄10〜16行) ア-3.第4頁「図1」には、沈澱槽2内に中空糸モジュールと該モジュールの下方から気泡を当てる手段を有する浄水処理のための装置が図示されている。 (2)引用刊行物2(特開平7-227526号公報)には以下の記載がある。 イ-1.「本発明に係る懸濁水の分離処理方法は、平型膜分離ユニットを備えた処理槽内に懸濁水を供給し、そのユニットの透過水流路側を減圧して懸濁水を分離処理する方法において、ユニットの透過水流路側の減圧を間歇的に行い、非減圧期間に、ユニットの膜面を液面上に曝するようにユニットを昇降させることを特徴とする構成であり、散気装置の噴出空気により懸濁水を旋回させることが好ましい。」(第2頁2欄9〜16行) イ-2.「41はこの配管4に挿入した真空ポンプであり、間歇駆動させるためのタイマー42を備えている。」(第2頁2欄34〜36行) イ-3.第5頁「図1」には、処理槽1内に平型膜分離ユニット2と散気装置を配置した懸濁水分離装置が図示されている。 (3)引用刊行物3(特開平6-198144号公報)には以下の記載がある。 ウ-1.「膜分離装置11により原液を処理する場合には、曝気管14から気泡を発生させながら吸引ポンプ24を作動する。この様にすると、図4に示すように、本実施例では平膜モジュール13の下方に曝気管14を配置してあるので、上昇する気泡により平膜モジュール13の下方から上方に流れる循環流が発生し、原液が隣り合う単位モジュール15a,15b・・・の間隔d内、即ち原液通路29内を流れる。したがって、隣り合う単位モジュール15a,15bの下端部分が原液通路29の流入口となる。」(第3頁3欄23〜32行) ウ-2.第4頁「図1」には、容器12内に平膜モジュール13と曝気管14を配置した膜分離装置が図示されている。 (4)引用刊行物4(特開平6-218237号公報)には以下の記載がある。 エ-1.「膜分離ユニットには設定水位からの水深に相応して水頭圧が作用するので、水頭圧を膜分離ユニットの駆動圧力として膜分離槽内の被処理水を固液分離し、膜分離ユニットの濾過膜を透過した透過液は取出管を通して膜分離槽の外部に取り出す。」(第2頁2欄13〜17行) エ-2.「膜分離槽21の底部には開閉弁27を介装した汚泥引抜管28が開口するとともに、膜分離ユニット23の下方に位置して散気管29を配置しており、散気管29には送気管30を介してブロアー31を接続している。」(第2頁2欄49行〜3頁3欄3行) エ-3.第4頁「図1」には、膜分離槽21内に膜分離ユニット23と散気管29を配置した膜分離装置が図示されている。 4.本願発明と引用刊行物に記載される発明との対比・判断 4-1.本願発明1について 引用刊行物1における「中空糸膜モジュール4」、引用刊行物2における「平型膜分離ユニット2」、引用刊行物3における「平膜モジュール13」、引用刊行物4における「膜分離ユニット23」が、それぞれ本願発明1における「分離装置」に相当し、引用刊行物1における「沈澱槽2と処理水槽8とのヘッド差」、引用刊行物2における「配管4に挿入した真空ポンプ」、引用刊行物3における「吸引ポンプ24」、引用刊行物4における「設定水位からの水深に相応する水頭圧」が、その機能に照らし本願発明1における「分離装置に連通する分離処理液の吸引機構」に相当し、引用刊行物1における「中空糸膜モジュール4へ下方から気泡を当てる」手段、引用刊行物2における「散気装置」、引用刊行物3における「曝気管14」、引用刊行物4における「散気管29」が、それぞれ本願発明1における「散気器」の相当し、引用刊行物1における「沈澱槽2」、引用刊行物2における「処理槽1」、引用刊行物3における「容器12」、引用刊行物4における「膜分離槽21」が、その内部に上記分離装置と散気器を配置しているのであるから本願発明1における「浸漬槽」に相当する。 したがって、各員引用刊行物に記載される発明を、本願発明1の記載に沿って表現すると「浸漬槽と、浸漬槽内に配置され複数のプレート状分離膜エレメントを対峙させて配列して構成した分離装置と、分離装置に連通する分離処理液の吸引機構と、分離装置の下方に配置された散気器とからなる固液分離装置」ということになる。 本願発明1と各引用刊行物に記載された発明とを対比すると、上記の構成で一致し、本願発明が「分離装置の分離膜エレメントの配列方向の幅をLとしたとき、分離装置上部と浸漬槽液面との距離がL/2以上、浸漬槽横壁と分離装置側部との距離がL/4以上、分離装置下部と散気器上部との距離がL/4以上、散気器下部と浸漬槽底部との距離がL/2以上であるように浸漬槽内に分離装置及び散気器を配置」しているのに対し、各引用刊行物には、浸漬槽内における分離装置及び散気器の配置関係についての具体的な記載がない点で相違する。 本願明細書によれば、本願発明1において、上記の構成を採用した目的は「散気器からのエアーでつくられる上昇流に随伴して散気器の下方で下降流を上昇流へ転ずる。したがい、上昇流のブロックに配置される分離装置の分離膜エレメントの膜面には常に停滞なく気液混合の上昇流が接触し、膜面を効果的にスクラビング洗浄」するためと認められる。 一方、記載イ-1及び記載ウ-1によれば引用刊行物2ないし3には、散気器からの上昇気泡により浸漬槽内の被処理水に旋回流ないし循環流を生じさせることは記載されているものの、上記各引用刊行物の装置では、上昇気泡に同伴させる被処理液の大部分を散気器の側方から吸引することを意図していることはその図面から明らかであり、上記各引用刊行物には、被処理液を散気器の下方で下降流を上昇流へ転ずるよう、散気器の下方から吸引することを示唆する記載はない。 したがって、上記各刊行物に記載される固液分離装置において、上記相違点で指摘したような配置とすることを、本願出願前当業者が容易に想到することができたということはできない。 4-2.本願発明2ないし3について 本願発明2ないし3は、本願発明1を引用する発明であるから、本願発明1について検討したのと同じ理由で、各引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたということはできない。 5.むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由によって本願発明を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-11-06 |
出願番号 | 特願平7-254444 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(C02F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 奥井 正樹、種村 慈樹、杉江 渉 |
特許庁審判長 |
石井 良夫 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 西村 和美 |
発明の名称 | 固液分離装置 |
代理人 | 田村 武敏 |