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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02P 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02P |
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管理番号 | 1068399 |
審判番号 | 不服2000-13563 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-03-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-08-28 |
確定日 | 2002-11-05 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第518665号「内燃機関の点火制御回路」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 5月22日国際公開、WO97/18391、平成10年 3月10日国内公表、特表平10-502721号]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】本願発明 本願は、1996年(平成8年)11月11日[パリ条約による優先権主張外国庁受理、1995年11月15日、英国]を国際出願日とする出願であって、その請求項1〜12に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 ほぼ一定速度及びほぼ一定空燃比で運転される往復動型内燃機関であって、ギャップを有する少なくとも2つの電極を有するスパークプラグを備えた少なくとも1つのシリンダと、点火スパーク持続時間制御手段とを備え、前記電極間の点火スパークの持続時間が、所定の最小持続時間にわたって前記電極にシリンダの失火を実質的に回避するような電気的点火エネルギーの最小レベルが供給される所定の最小持続時間に前記スパーク持続時間が近づくように自動的に変更されるようになっており、前記最小レベルが前記ギャップの大きさに応じて変更されるようになったことを特徴とする内燃機関。」 (なお、平成12年9月25日付け手続補正書は、補正の却下の決定により却下された。) 【2】引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した特開昭59-128975号公報(以下、「引用例1」という。)、及び、実願昭54-164698号(実開昭56-81165号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、次の技術的事項が記載されている。 ・引用例1; (a)「(1) 内燃機関の点火コイルの2次側の通電期間を光電的に検出し、機関運転条件に対応して予め記憶された通電期間設定値を機関運転条件に従って読み出して検出値と比較し、読み出し設定値≧検出値に際しては点火コイル閉角度を拡大し、読み出し設定値<検出値に関しては点火コイル閉角度を縮小する内燃機関用点火エネルギ制御装置。」(特許請求の範囲)、 (b)「従来この種の点火装置の点火コイル1次側通電時間は点火コイル及びイグナイタの熱負荷を検出することにより制御していた。これは運転条件に応じて本来機関が欲求している燃焼に必要な点火入力エネルギを供給しているとは限らないので、高負荷時に未燃焼を生じたり、軽負荷時に必要以上に点火入力エネルギを供給したりして不経済である等の問題がある。 本発明はこの問題点を解決しようとするもので、機関回転速度や負圧等の運転条件に応じた最適点火入力エネルギを供給するための点火エネルギ制御装置を提供する。本発明の好ましい実施態様によれば、内燃機関の点火コイル2次側回路に順方向に直列に発光素子を接続した発光素子の光信号を受光素子に受け再び電気信号に変換して点火コイル2次側通電期間を検出する検出手段を有し、内燃機関回転速度に同期して発生される点火基準信号を入力し、機関回転速度、負圧等の運転条件に応じて予め設定記憶された通電期間設定値をその都度読み出して前記通電期間検出値とを比較演算する演算部を具備し、この演算結果に応じて定電流駆動される前記点火コイルの閉角度を制御することにより点火コイル入力エネルギを制御する内燃機関用点火入力エネルギ制御装置が提供される。 本発明によれば点火コイル2次側の通電期間を表わす通電信号を光電的に検出しているので、検出通電信号に混入される点火ノイズを減少することが出来る。また、点火コイル2次側通電時間がソフトウェアーで容易に設定できるため機関毎に燃焼に必要な最適点火入力エネルギーを提供できる。」(第1頁右下欄第4行〜第2頁左上欄第15行)、 (c)「3は電磁ピックアップ2の信号を入力し、検出器5の信号により補正を行ない、点火コイル4を駆動するイグナイタである。」(第2頁右上欄第4〜7行)、 (d)「点火コイル4の1次側に流れていた電流をしゃ断すると2次側に電圧が誘起され、点火機構7が火花放電している間は点火コイル2次側に電流が流れ、当然発光素子51にも通電しており、発光素子51は発光を開始する。点火機構7の火花放電が停止すると発光素子51も発光を停止する。発光素子51よりの光信号は光ファイバ54を介して受光素子55に導かれて電気信号に変換され、該電気信号はバッファ57で波形整形されて第2図のf[当審註;原文は丸囲いのf]記号となり、点火コイル4の2次側電流の通電期間を示す通電信号を出力する。つまり検出部5は点火コイル4の2次側電流の通電期間である点火機構7の火花放電期間を検出する働きを有す。」(第2頁右下欄第20行〜第3頁左上欄第13行) そして、第1図に示される点火栓71〜74がギャップを有する少なくとも2つの電極を有するものであり、また、該点火栓がシリンダに備えられることは、当業者にとって技術常識であるから、 以上の記載、及び、第1、2図等の記載からみて、引用例1には、 「内燃機関であって、ギャップを有する少なくとも2つの電極を有する点火栓71〜74を備えた少なくとも1つのシリンダと、火花放電の放電期間を制御するイグナイタ3とを備え、前記電極間の火花放電の放電期間が、機関の運転条件に応じた所定の放電期間にわたって前記電極に電気的点火エネルギーが供給される所定の放電期間に前記火花放電の放電期間が近づくように自動的に変更されるようになっている内燃機関」、 という発明が記載されているに等しいものと認められる。 ・引用例2; (e)「(1)点火時期を決定する点火信号を発生する点火信号発生装置と、この点火信号発生装置よりの点火信号に応動してオン,オフするパワートランジスタと、このパワートランジスタのオン,オフによって一次電流が断続される点火コイルと、この点火コイルの二次側に接続され、この二次側に発生する高電圧によって点火火花を発生する点火プラグと、前記点火コイルの二次側に接続した二次電流検出抵抗と、この二次電流検出抵抗により検出した二次電流と前記点火コイルの一次電圧とから火花エネルギーを計算する火花エネルギー計算回路と、この火花エネルギー計算回路により計算した火花エネルギーに応じて予め設定した火花エネルギーとなるべく前記点火コイルの一次電流を制御する一次電流制御回路とを備えることを特徴とする内燃機関用点火装置。」(実用新案登録請求の範囲)、 (f)「以上述べたように本考案においては、二次電流検出抵抗により検出した二次電流と点火コイルの一次電圧とから火花エネルギー計算回路により火花エネルギーを計算し、この火花エネルギー計算回路により計算した火花エネルギーに応じて予め設定した火花エネルギーとなるべく一次電流制御回路によって点火コイルの一次電流を制御するから、点火プラグの電極のギャップ、機関の機種、個体差、二次電圧の変動等によらず、所望の機関における着火性を維持しながら過度のエネルギー浪費をさけることができるという優れた効果がある。」(第16頁第19行〜第17頁第9行) 【3】対比・判断 (対比) そこで、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、 引用例1に記載された「点火栓71〜74」、「イグナイタ3」、「火花放電の放電期間」、「所定の放電期間」は、それぞれ、本願発明1の「スパークプラグ」、「点火スパーク持続時間制御手段」、「点火スパークの持続時間」、「所定の持続時間」に相当するものであるから、両者は、 「内燃機関であって、ギャップを有する少なくとも2つの電極を有するスパークプラグを備えた少なくとも1つのシリンダと、点火スパーク持続時間制御手段とを備え、前記電極間の点火スパークの持続時間が、所定の持続時間にわたって前記電極に電気的点火エネルギーのレベルが供給される所定の持続時間に前記スパーク持続時間が近づくように自動的に変更されるようになっている内燃機関」、 で一致し、以下の各相違点(イ)〜(ハ)で相違している。 (相違点) (イ)本願発明1は、ほぼ一定速度及びほぼ一定空燃比で運転される往復動型内燃機関であるのに対し、引用例1に記載された発明は、機関回転速度等の運転条件が変化する内燃機関であって、その型式は往復動型であるのか不明である点。 (ロ)本願発明1は、所定の持続時間が、所定の最小持続時間にわたって電極にシリンダの失火を実質的に回避するような電気的点火エネルギーの最小レベルが供給されるような最小持続時間であるのに対し、引用例1に記載された発明は、機関の運転条件に応じて、燃焼に必要な最適の電気的点火エネルギーが供給されるような持続時間である点。 (ハ)本願発明1は、電気的点火エネルギーの最小レベルがギャップの大きさに応じて変更されるようになったのに対し、引用例1に記載された発明は、この点が明らかでない点。 (相違点の検討) 以下、前記各相違点(イ)〜(ハ)について検討する。 ・相違点(イ)について; 引用例1に記載された発明は、機関回転速度等の運転条件がさまざまに変化するものであるが、その機関運転条件をある特定の条件(例えば、定負荷運転や定速運転)に固定し、その特定の運転条件で内燃機関を運転することは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項にすぎず、しかも、その固定した特定の機関運転条件を、ほぼ一定速度及びほぼ一定空燃比とすることは、内燃機関をほぼ一定負荷のまま定速運転させるような、当業者にとって周知の運転時に、当業者が必然的に選択しなければならない事項であるものと認められる。 また、往復動型内燃機関は当業者にとってごく普通の内燃機関であるから、引用例1に記載された発明の内燃機関を往復動型とすることは、当業者が必要に応じて適宜選択し得る事項にすぎない。 したがって、引用例1に記載された発明を、この相違点(イ)における本願発明1のように構成することは、当業者が容易になし得るものというべきである。 ・相違点(ロ)について; 引用例1の摘記(b)に記載されることは、いかなる運転条件においても、本来機関が欲求している燃焼に必要な電気的点火エネルギを供給することで、未燃焼(即ち、失火)を生じさせることもなく、しかも、必要以上の電気的点火エネルギを不経済に供給させないことを意味している。 そして、このことは、引用例1に記載された発明の「所定の持続時間」が、「所定の最小持続時間にわたって電極にシリンダの失火を実質的に回避するような電気的点火エネルギーの最小レベルが供給されるような最小持続時間」であればよいことを示唆している。 してみると、引用例1に記載された発明の「所定の持続時間」を、この相違点(ロ)における本願発明1のように構成することは、当業者が容易になし得るものというべきである。 ・相違点(ハ)について; 引用例1に記載された発明は、所定の持続時間(目標値)にスパーク持続時間(制御量)が近づくように自動的に変更(フィードバック制御)されるようになっているものであるから、フィードバック制御それ自体が有している機能に照らせば、引用例1に記載された発明は、電極に供給される電気的点火エネルギーはギャップの大きさに応じて自動的に変更されるようになったことは、明らかである。 また、ギャップの大きさが変わっても、着火性を維持(即ち、シリンダの失火を実質的に回避)し、過度のエネルギー浪費を避けるような電気的点火エネルギーを電極に供給することが、引用例2に記載されている。 そして、その際、電極には、所定の最小持続時間にわたってシリンダの失火を実質的に回避するような電気的点火エネルギーの最小レベルを供給すべきことは、当業者が設計等にあたり当然考慮しなければならない事項(以下、「考慮事項」という。)であるものと認められる。 してみれば、引用例2に記載された事項及び上記「考慮事項」を勘案するならば、引用例1に記載された発明を、「電極に供給される電気的点火エネルギーの最小レベルがギャップの大きさに応じて変更されるようになった」ものとすることは、引用例1及び2に記載された発明が、共に「内燃機関の点火制御装置」という同一の技術分野に属するものであるから、当業者が容易になし得るものというべきである。 (効果について) そして、本願発明1の構成によってもたらされる効果も、引用例1及び2に記載された発明から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 【4】むすび 以上のとおりであって、本願発明1は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、請求項2〜12に係る発明に対する検討を行うまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-06-04 |
結審通知日 | 2002-06-10 |
審決日 | 2002-06-21 |
出願番号 | 特願平9-518665 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02P)
P 1 8・ 575- Z (F02P) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 穂積、田澤 英昭、中野 宏和、亀田 貴志 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 飯塚 直樹 |
発明の名称 | 内燃機関の点火制御回路 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 箱田 篤 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 竹内 英人 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 小川 信夫 |