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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J
管理番号 1068485
審判番号 不服2001-717  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-18 
確定日 2002-11-21 
事件の表示 平成4年特許願第52570号「給湯装置」拒絶査定に対する審判事件[平成5年10月5日出願公開、特開平5-253056]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は、平成4年3月11日の出願であって、その発明は、補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1および2に記載された以下のものにあると認める。
「請求項1
貯湯用容器と、この容器内の水を加熱するヒータと、前記水を外部に給水する注水口と、前記容器の底部に設けられた吸い込み口と、前記容器の上部側面に容器に臨んで開口する循環口と、前記吸い込み口から前記水を揚水するポンプと、前記ポンプにより揚水された水が前記循環口を経て前記貯湯用容器に循環される経路となる循環経路と、前記ポンプにより揚水された水が前記注水口を経て外部に注水される注水口への経路と、前記循環口の下方に設けられ活性炭とミネラル溶出物質とを有する層とを有し、前記容器内に循環される水は前記循環口から前記層に注ぎ込まれ、残りの水は前記層の表面を伝って容器内に循環する構成とした給湯装置。
請求項2
ミネラル溶出物質は活性炭層の下部に配設された請求項1に記載の給湯装置。」

2.これに対して、原審の平成12年6月13日付け拒絶理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-22310号公報(以下「引用文献1」という。)には、「電気湯沸かし器」に関して第1〜10図とともに、以下の事項が記載されている。
ア)液体を加熱する発熱体と前記液体の温度を検知する感温素子とを装着した容器と、前記容器内の液体を導出するポンプと、前記ポンプと本体の出湯口とを接続する出湯路と、前記出湯路と前記容器内を短絡するバイパス路と、常時は前記バイパス路側を開き、出湯時には前記バイパス路側を閉じて前記出湯口側を開く弁手段とを備え、前記液体が所定の温度に到達した時、所定の時間前記ポンプにより前記バイパス路を介して前記液体を循環させる電気湯沸かし器(特許請求の範囲(1))」
イ)活性炭ないし活性炭以外の水質調整剤を内蔵したフィルターをバイパス路の容器内側に装着すること(特許請求の範囲(2)(3)、第4頁左上欄第3〜4行ほか参照)
ハ)フィルターに溢流口(44)を形設し、湯が溢流口から容器15中に排出することができるようにしたこと(第4頁左上欄第16行〜同右上欄第11行、第8図ほか参照)
ニ)収容液体を加熱・保温するとともに水質調整機能を有する電気湯沸かし器(湯沸かし保温ポット)であること(第1頁右上欄第6〜7行、第1図ほか参照)
また、同じく引用された実願昭59-44562号(実開昭60-155442号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、筒内に各種金属元素の塊粒状とヤシガラ活性炭、銀添着炭、亜硫酸カルシウム等を装着した濾剤を内蔵する卓上用ポットが記載され、これによってミネラル水が得られる旨記載されている(明細書第3頁第5〜13行)。

3.引用文献1記載の電気湯沸かし器を本願請求項1に係る発明と対比する。
まず、本願請求項1に係る発明の「貯湯用容器と、この容器内の水を加熱するヒータと、前記水を外部に給水する注水口と、前記容器の底部に設けられた吸い込み口と、前記容器の上部側面に容器に臨んで開口する循環口と、前記吸い込み口から前記水を揚水するポンプと、前記ポンプにより揚水された水が前記循環口を経て前記貯湯用容器に循環される経路となる循環経路と、前記ポンプにより揚水された水が前記注水口を経て外部に注水される注水口への経路からなる給湯装置」は、通常の循環式給湯装置(湯沸かし保温ポット)が有する基本構成であり、引用文献1の電気湯沸かし器(湯沸かし保温ポット)もかかる基本構成を具備するものであると認められる。また、本願請求項1に係る発明の「活性炭とミネラル溶出物質とを有する層」は水質を調整する手段であるから、引用文献1の水質調整剤(42)とは、水質調整層である点で共通する。
したがって、両者は、「貯湯用容器と、この容器内の水を加熱するヒータと、前記水を外部に給水する注水口と、前記容器の底部に設けられた吸い込み口と、前記容器の上部側面に容器に臨んで開口する循環口と、前記吸い込み口から前記水を揚水するポンプと、前記ポンプにより揚水された水が前記循環口を経て前記貯湯用容器に循環される経路となる循環経路と、前記ポンプにより揚水された水が前記注水口を経て外部に注水される注水口への経路と、前記循環口の下方に設けられた水質調整層とを有し、前記容器内に循環される水が前記循環口から前記層に注ぎ込まれ、容器内に循環する構成とした給湯装置(湯沸かし保温ポット)」である点で実質的に一致するものと認められる。
一方、両者は、以下の構成において相違する。
(相違点)
ア)本願請求項1に係る発明が、水質調整層として、「活性炭とミネラル溶出物質とを有する層」としているのに対して、引用文献1には、水質調整剤として活性炭を使用する点の記載はあるも、ミネラル溶出物質(層)を併用する点についての明示がない点。
イ)本願請求項1に係る発明が、容器内に循環される水が循環口から水質調整層に注ぎ込まれ、残りの水が前記層の表面を伝って容器内に循環する構成としたのに対して、引用文献1には、かかる構成が記載されていない点。

4.そこで、相違点について検討する。
保温ポットの飲用水を活性炭とミネラル溶出物質(各種金属元素の塊粒状)で処理することによって、カルキ臭を低減(遊離塩素を除去)するとともに、ミネラルが豊富な飲用水とすることが、引用文献2にもみられるように本願出願前公知であるから、水質調整層を「活性炭とミネラル溶出物質とを有する層」とすることは、当業者が必要に応じて容易になし得る程度のことと認められる。
また、本願請求項1に係る発明が、残りの水が活性炭とミネラル溶出物質の層の表面を伝って容器内に循環させるようにした意味は、本願の明細書中に明らかではないが、層に注がれた水の一部が層を浸透しないで表面を伝って流れ落ちることは通常生起し易いことであり、とりわけ、層の目詰まりなどが生じた場合や一時に多量の水が注がれた際にはそのような現象を生起することになる。そのため、引用文献1にみられるように、フィルターに溢流口を形設して、一部を層を浸透させずに排出するようにすることも行われているので、本願請求項1に係る発明のように、残りの水を水質調整層の表面を伝って容器内に循環させることも当業者が容易になし得る程度のことというべきである。
その他、本願発明を全体としてみても、本願請求項1に係る発明の効果も当業者が容易に予測できる程度のものにすぎない。
したがって、本願請求項1に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとするのが相当であり、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができない。

5.以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-18 
結審通知日 2002-09-24 
審決日 2002-10-07 
出願番号 特願平4-52570
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A47J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新海 岳  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 櫻井 康平
井上 茂夫
発明の名称 給湯装置  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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