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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1068522
審判番号 不服2000-7138  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-04-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-12 
確定日 2002-12-17 
事件の表示 平成 7年特許願第 92399号「下水の処理方法及び装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成8年4月2日出願公開、特開平8-84999、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理由
1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年4月18日の出願であって、その発明は、平成12年6月7日付の手続補正書の特許請求の範囲に記載された次の通りである。
「【請求項1】有機分と濃度100mg/1以上のSSとを含む流入下水を最初沈殿池に導き、最初沈殿池の内部に形成された、比重が1.1以下の筒状濾材が空間率80%以上に充填され、1〜3mの厚みに形成された筒状濾材充填部に、水面積負荷を40m3/m2/day以上とした上向流として流す間にSS除去を行い、かつ前記筒状濾材に付着したSSに含まれる有機物を有機炭素源として利用した脱窒を生物膜により行わせ、得られた脱窒液を硝化反応槽に導いて硝化し、硝化水の一部を最初沈殿池に循環させ、残部を処理水として取り出すことを特徴とする下水の処理方法。
【請求項2】比重が1.1以下の筒状濾材が空間率80%以上に充填され、その内部を流入下水が水面積負荷を40m3/m2/day以上とした上向流として流れる、1〜3mの厚みに形成された、SS除去を行い、かつ前記筒状濾材に付着したSSに含まれる有機物を有機炭素源として利用した脱窒を生物膜により行わせる筒状濾材充填部を備えた、有機分と濃度100mg/1以上のSSとを含む流入下水が導入され得る最初沈殿池と、この筒状ろ材充填部の上方から流出した脱窒液を流入させる硝化反応槽とからなることを特徴とする下水の処理装置。」
2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平4-61993号公報(以下、引用例1という。)及び特開昭63-209788号公報(以下、引用例2という。)には、以下の事項が記載されている。
引用例1:
ア.「SSとアンモニアを含む有機性汚水を粒状濾材(平均粒径dl)を充填した嫌気性浸漬生物濾床Aに硝化液と共に上向流で供給し、SS濾過と脱窒素を進行せしめた後、該濾床Aからの流出水を粒状濾材(平均粒径d2)を充填した好気性浸漬生物万濾床Bに上向流で供給し、SS濾過と硝化を進行せしめ、該濾床Bからの流出水の一部を前記濾床Aの下部に供給し、かつdl>d2の条件を満たす粒状濾材を選択することを特徴とする有機性汚水の生物学的硝化脱窒素方法。」(特許請求の範囲)
イ.「汚水1中にSSが高濃度で含まれる場合は、SS沈澱部Dを濾床Aの下部に設けるのが好ましい。」(第4頁左上欄1〜2行)
ウ. 表2には、SS濃度が130mg/lの原水を処理したことが示されている。(第6頁)
引用例2:
エ.「以上のように廃水処理プロセスにおける第1槽には本発明者らの提案になる不織布を塩化ビニ一ル板に接着した担体板を平行配列した担体モジュールによって問題は解決されているが、第2槽に適する担体には問題点も多く未解決である。
したがって本発明の目的は…容易に目詰まりを生ずることなく水中における劣化も殆ど生じない嫌気性固定床に用いる微生物担体を提供することにある。
【問題点を解決するための手段】
本発明は…長さと直径がほぼ等しい円筒状のプラスチックの表面に薄いマット状の立体網状化学繊維を接着するとにより、…その表面が多孔性となっている嫌気性固定床用の微生物担体である。」(第3頁左上欄1〜9行)
3.対比・判断
請求項1に係る本願発明(以下、「請求項1発明」という。)と引用例1に記載の発明(以下、「引用例1発明」という。)とを比較すると、引用例1発明の濾床Aはその下部に沈澱部Dを設けることができるから(引用例1イ.参照)、引用例濾床Aは請求項1発明の「濾材充填部が設けられた最初沈澱池」に相当する。
したがって、両者は、「有機分と濃度100mg/l以上のSSとを含む流入下水を最初沈殿池に導き、最初沈殿池の内部に形成された濾材が充填され、濾材充填部に、上向流として流す間にSS除去を行い、脱窒を生物膜により行わせ、得られた脱窒液を硝化反応槽に導いて硝化し、硝化水の一部を最初沈殿池に循環させ、残部を処理水として取り出すことからなる下水の処理方法」である点で共通し、以下の点で相違する。
相違点1:請求項1発明では、最初沈澱池の充填部に筒状濾材を用いるのに対し、引用例1発明では、粒状濾材を用いる点。
相違点2:請求項1発明では、筒状濾材の比重、充填空間率、充填厚み、水面積負荷について具体的な数値でもって規定しているのに対し、引用例1発明では、これら具体的数値については触れるところがない点。
相違点1につき、引用例2に記載の発明を検討すると、該発明は、引用例2エ.に「・・・第2槽に適する担体には問題点も多く未解決である。」と記載されているように、少なくとも2槽からなる生物処理システムにおいて、第2槽における問題点を解決するために、特定の化学繊維を接着した円筒状のプラスチック担体を第2槽において使用するものであり、最初沈澱池の内部に形成された充填部に特定の比重を有する筒状濾材を用いることは、記載もなければ示唆もない。したがって、相違点2について触れるまでもなく、請求項1発明は、引用例1〜2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものではない。
請求項2に記載の発明も前記した相違点を有するものであるから、前記したものと同じ理由により、容易に発明をすることができたものではない。
また、他に拒絶理由を発見しない。
よって、結論の通り審決する。
 
審決日 2002-12-02 
出願番号 特願平7-92399
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉水 純子目代 博茂  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 山田 充
野田 直人
発明の名称 下水の処理方法及び装置  
代理人 山本 文夫  
代理人 名嶋 明郎  
代理人 綿貫 達雄  

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