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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1068586
審判番号 不服2000-17791  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-11-09 
確定日 2002-12-17 
事件の表示 平成4年特許願第73522号「電子内視鏡装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成5年9月7日出願公開、特開平5-228110、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成4年2月24日の出願であって、その請求項1ないし2に係る発明は、平成12年7月27日付、平成12年12月11日付及び平成13年4月6日付手続補正書により補正された内容を含む明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】 固体撮像素子を先端部に配置した各タイプの電子内視鏡と、これらの電子内視鏡を接続可能に構成した外部プロセッサ装置とを有し、上記固体撮像素子で得られるビデオ信号を所定の測光条件で画像処理する電子内視鏡装置において、上記電子内視鏡の操作部に、測光エリア及び測光演算方式を含む各種の測光条件の中から所定の測光条件を選択する選択スイッチを配置し、かつ上記電子内視鏡側に、各タイプ毎に電子内視鏡で設定された測光エリア及び測光演算方式を含む各種の測光条件を記憶する記憶部と、上記選択スイッチにより選択された測光条件によって測光し処理するための測光処理回路とを設けたことを特徴とする電子内視鏡装置。
【請求項2】 上記測光条件の選択スイッチを少なくとも2個配置し、一方の選択スイッチで測光エリアを選択し、他方の選択スイッチで測光演算方式を選択することを特徴とする上記請求項1記載の電子内視鏡装置。」

2.原査定の理由
(1)原審において、請求項1について、概略次の旨の拒絶理由が通知された。
「引用文献1に記載の測光条件を選択する手段を具備した電子内視鏡装置において、引用文献2に記載された技術思想を採用し、その具体的手段として、引用文献3の操作スイッチを採用して請求項1に係る発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到しうることである。」として、引用文献1:特開平1-207032号公報、同2:特開平1-210916号公報、同3:特開平2-152436号公報が示されている。

(2)これに対して明細書の補正がなされたが、「意見書並びに手続補正書の内容を検討したが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせない。」として、拒絶査定がなされた。
その際、備考として以下の事項が付記された。
「備考 出願人は意見書において、『本願発明は、各タイプの電子内視鏡が外部プロセッサ装置に接続可能とされる電子内視鏡装置において、第1に、電子内視鏡操作部に測光条件を選択する選択スイッチを配置したこと、第2に、電子内視鏡側に、各タイプに応じて電子内視鏡で設定される各種の測光条件を記憶する記憶部と、その固有の測光条件によって測光し処理するための測光処理回路とを設け、外部プロセッサ装置において、接続した各タイプの電子内視鏡に合わせて行う煩雑な測光処理等をなくしたことに特徴があり、このような特徴点が引用文献1乃至3に開示されていない。』なる主張を行っている。
当該構成を検討するに、『電子内視鏡操作部に測光条件を選択する選択スイッチを配置する』ことは、一例として特開昭63-287813号公報(第4頁左下欄を特に参照)に記載されているように周知の構成である。
そして、『電子内視鏡側に、各タイプに応じて電子内視鏡で設定される各種の測光条件を記憶する記憶部と、その固有の測光条件によって測光し処理するための測光処理回路とを設け、外部プロセッサ装置において、接続した各タイプの電子内視鏡に合わせて行う煩雑な測光処理等をなくした』構成は、特開昭63-200114号公報、特開平2-106713号公報に記載されているように内視鏡における機種識別手段として周知の技術思想を具体化したものに過ぎない。
したがって、請求項1、2に係る発明は、先の拒絶理由通知書の引用文献1、2、3より構成される電子内視鏡装置に周知の測光条件選択スイッチ配置技術と周知の機種識別技術を付加したものであり、当該周知技術の付加による格別の効果を奏するものとも認められない。」

(3)その後、審判請求がなされ、審判請求時に明細書の補正がなされた。
そして、審判請求時に補正された明細書に対して、前置報告書で概略次の内容の報告がされている。
「内視鏡の技術分野において、利便性等を考慮して各種の操作スイッチを操作部に配置することは、引用文献3、4等周知の技術である。
したがって、引用文献1に記載された測光条件選択手段を具備した電子内視鏡装置において、引用文献2に記載された測光エリアを選択する手段を付加し、各種操作部として、引用文献3、4に開示されたように選択スイッチを内視鏡の操作部に配置する技術を適用し、処理回路の配置として、引用文献5に開示された内視鏡側に処理回路を配置する技術を付加して、請求項1に係る発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到しうることである。
引用文献
1.特開平2-39015号公報(追加した文献)
2.特開平1-210916号公報
3.特開平1-136625号公報(追加した文献)
4.実願昭61-178421号(実開昭63?84116号)のマイクロフィルム(追加した文献)
5.特開平1-207032号公報」

3.当審の判断
(1)原査定の拒絶の理由で引用された刊行物および前置報告で引用された刊行物において、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)に関係する技術的事項の記載内容は以下のとおりである。
拒絶理由の引用文献
1.特開平1-207032号公報
表示画面上の特定領域を指定して、その特定領域が最も見やすくなるように光源の光量を制御すること、CCDで受光した信号を映像信号に変換するカメラコントロールユニット(CCU)を内視鏡側に内蔵したこと、および特定領域の指定キーボード、映像信号の表示処理装置は装置本体側に設けること、が示されている。
2.特開平1-210916号公報
被写体観察部位に相当する画面上の領域(測光エリア)を、スコープを両手で操作しながら音声によって指定することが示されている。
3.特開平2-152436号公報
装置本体側に設けた画像強調回路を選択的に駆動するためのリモートコントロール手段を電子スコープの操作部に設けた電子内視鏡装置が示されている。

拒絶査定の備考欄で追加された周知例
1.特開昭63-287813号公報
照明光量調整スイッチを電子内視鏡の操作部に設けた電子内視鏡装置が示されている。
2.特開昭63-200114号公報および
3.特開平2-106713号公報
ファイバースコープ、面順次式の電子スコープ、カラーモザイク式の電子スコープ等の照明方法が異なる形式のスコープを装置本体に接続して、接続検知回路によって接続を検知してそれぞれに適合する照明光を供給できる内視鏡用光源装置が示されている。

前置報告書で追加された刊行物
1.特開平2-39015号公報
自動光量制御手段(ALC)と自動利得制御手段(AGC)とからなる自動調光装置において、ALCとAGCのどちらもが、ピーク値検波と平均値検波を切換可能として、使用部位や条件に応じて適切な測光方式を選択できるようにしたこと、および測光方式の切換は、装置本体の操作パネルで行なうこと、が示されている。
3.特開平1-136625号公報、および
4.実願昭61-178421号(実開昭63-84116号)のマイクロフィルム
内視鏡の技術分野において、利便性等を考慮して各種の操作スイッチを操作部に配置することことが周知であることを示す文献。

(2)そこで、本願発明1と前記各刊行物の記載内容とを対比検討する。
本願発明1は、請求項1に記載の電子内視鏡装置において、外部プロセッサ装置に接続可能に構成される各タイプの電子内視鏡側に、各タイプ毎に電子内視鏡で設定された測光エリア及び測光演算方式を含む各種の測光条件を記憶する記憶部と、測光処理回路とを設けた構成を有することを特徴とするものである。
そして、前記構成を有することによって、外部プロセッサ装置において接続される各種の電子内視鏡に対応した測光条件及び検出信号の設定を行なう必要がなく、しかも新しいタイプの電子内視鏡も外部プロセッサ装置に容易に接続可能となるものである。
これに対して、拒絶理由の引用文献1において、内視鏡に内蔵されている回路はCCDで受光した信号を単に映像信号に変換するカメラコントロールユニット(CCU)であって、これは測光条件を記憶する記憶部または測光処理回路とは異なるものである。次に、拒絶査定で示された周知例2,3は、いずれも装置本体に接続される電子内視鏡の機種を識別し接続を検知するものであって、前記本願発明1の特徴とする構成に関するものではない。また、前置報告書で追加された刊行物1には、測光演算方式を選択する手段を装置本体側に具備した電子内視鏡装置が記載されているが、測光エリアを選択することについては何ら記載されておらず、電子内視鏡側には記憶部も何らの処理回路も設けられていない。さらに、それ以外の各刊行物は、いずれも前記本願発明の特徴とする構成以外の構成に関係するものである。
よって、前記本願発明1の特徴とする構成については、いずれの刊行物にも記載も示唆もされていない。また、前記各刊行物に記載のものおよび周知技術を組み合わせることによっても、容易に想到できたものとも認められない。
そして、本願発明1は、前記構成を有することによって、他の構成と相俟って前記明細書記載の効果を奏するものと認められる。
したがって、本願発明1が前記各刊行物に記載のものとも、前記各刊行物に記載のものおよび周知技術から容易に発明できたものとも認めることはできない。

なお、請求項2は拒絶理由の対象とはされていない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1ないし2に係る発明は、原査定の理由によっては拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に拒絶をするべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-12-04 
出願番号 特願平4-73522
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 居島 一仁  
特許庁審判長 渡部 利行
特許庁審判官 森 竜介
水垣 親房
発明の名称 電子内視鏡装置  
代理人 緒方 保人  

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