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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B26F |
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管理番号 | 1068610 |
審判番号 | 不服2000-344 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-08-19 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-01-13 |
確定日 | 2002-11-29 |
事件の表示 | 平成8年特許願第46740号「罫線アダプター及び打抜面板の位置決め方法」拒絶査定に対する審判事件[平成9年8月19日出願公開、特開平9-216197]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成8年2月7日の特許出願であって、その請求項1乃至請求項3に係る発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、次のとおりである 「【請求項1】 正面から見て門型のアダプター本体部1と、該アダプター本体部1の左右中央に介在状に連設されて正面から見てU字型のスリット溝部形成弯曲壁7と、上記アダプター本体部1の左右脚部3,3の下面3a,3aに設けられた突起部4,4とを、一体に有し、さらに、上記弯曲壁7が、そのスリット溝部2の上方開口部9近傍にて、上記アダプター本体部1に連設され、打抜機の上型10の罫線用ブレード12の下端縁13をスリット溝部2に嵌込み、かつ、打抜面板14の罫線用凹溝16を中心として左右対称に予め設けられた一対の貫孔15,15に上記突起部4,4が嵌合するように上記突起部4,4を、上記スリット溝部2を中心として左右対称に突設したことを特徴とする罫線アダプター。」 第2 引用例 1 引用例の記載事項 これに対して、当審において平成14年7月25日付で通知した拒絶の理由に引用した本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実公平5-46907号公報(以下「引用例」という。)には、「紙器用打抜型への雌型プレート位置合わせ構造」に関して以下の事項が記載されている。 (1) 第1欄第16〜20行 「〈産業上の利用分野〉 本考案は、紙器組み立て用シートたるブランクの打ち抜き加工に当たって、打抜型の押罫に雌型プレートを位置合わせする位置合わせ構造に関する。」 (2) 第4欄第34行〜第5欄第29行 「本考案の一実施例に係る位置合わせ構造は、第1図に示す治具1と、第2図および第3図に示す雌型プレート10とから構成されている。 第1図に示すように、治具1は、合成ゴム、天然ゴムなどのゴム質または合成樹脂質等の弾性材料で一体成形された本体を備えている。この本体は、断面がほぼ逆T字形状で、上部の中央部位置に一対の突条3,3が設けられ、両突条3,3間に上開きのY字形溝条2が形成されている。この溝条2は、後に説明する第4図及び第5図に示されるように、打抜型20の押罫21が密に嵌合する溝幅を有し、かつ押罫21の突出高さより深い溝深さを有している。 また、治具1の本体下部には方形の基部が形成がされており、この基部の下面の中央には断面が逆台形の突条4が、またこの突条4の両側にはそれぞれ複数(この例では2個)の円形突起5,5が突設されている。前記逆台形の突条4は、溝条2の下側に対応する位置にあって、後述する雌形プレート10の折り曲げ罫線形成用の凹溝条11上に臨むようになっている。一方、円形突起5は、雌型プレート10を位置決めするとともに雌型プレート10を治具1に結合するためのもので、雌型プレート10の凹溝条11の両側に形成された円形孔12に密に嵌合するようになっている。 雌型プレート10は、第2図および第3図に示すように、打ち抜くべきブランクとほぼ同一の外形を有し、裏面には接着剤13が塗布されて接着面が形成されており、その接着面は剥離紙14で覆われている。この雌型プレート10の表面部には、ブランクに折り曲げ用罫線を設けるために、凹溝条11が形成されており、この凹溝条11の各所に、該凹溝条11を挟む形で円形孔12,12が形成されている。円形孔12は、前記したように、治具1側の円形突起5が嵌入するものであり、従って、円形孔12の径、凹溝条11からの離間間隔、個数および円形孔12,12どうしの間隔は、治具1側の円形突起5に対応してそれぞれ一定に設定されている。」 (3) 第6欄第16〜31行 「〈考案の効果〉 以上のように、本考案は、弾性材料で一体に形成した治具で雌型プレートを打抜型の押罫に仮取付けしうるもので、治具は一体物であるから、押罫との結合力が強く、また比較的小さな円形突起が数多く雌型プレート側の円形孔に嵌入するので、結合箇所が多くなるとともに、互いの接触面積が大きくなり、そのため、治具と雌型プレートとの結合力も強力となる。したがって、雌型プレートが打抜型から不測に脱落することがない。 また、打抜型の押し付け力は、治具の基部の両側にある円形突起から面盤側に伝わるから、治具の基部の変形により余分な押し付け力を吸収することができ、そのため、治具が押罫により押しつぶされるようなことがなく、再使用が可能で、経済的に有利である。」 (4) 第1図 円形突起5,5は、溝条2を中心として左右対称に突設されていること。 (5) 第2図 一対の円形孔12は、凹溝条11を中心として左右対称に設けられていること。 2 引用例記載の発明 引用例に記載された上記事項を本件発明1に照らして整理すると、結局、引用例には次の発明が記載されていると認める。 治具1の本体下部に形成された方形の基部と、該治具1の本体上部の中央部位置に設けられ、上開きのY字形溝条2を形成する一対の突条3,3と、上記治具1の基部の下面の両側に設けられた円形突起5,5とを、一体に有し、打抜型20の押罫21の下端縁を溝条2に嵌込み、かつ、雌型プレート10の折り曲げ罫線形成用の凹溝条11を中心として左右対称に予め設けられた一対の円形孔12に上記円形突起5,5が嵌合するように上記円形突起5,5を、上記溝条2を中心として左右対称に突設した罫線治具。 第3 対比 本件発明1と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「上開きのY字形溝条2」は、本件発明1の「スリット溝部2」に相当し、以下同様に「円形突起5,5」は、「突起部4,4」に、「打抜型20」は、「打抜機の上型10」に、「押罫21」は、「罫線用ブレード12」に、「雌型プレート10」は、「打抜面板14」に、「折り曲げ罫線形成用の凹溝条11」は、「罫線用凹溝16」に、「円形孔12」は、「貫孔15,15」に、それぞれ相当することが明らかである。 また、引用例記載の発明の「治具1」は、本件発明1と同様に「アダプター」と称し得ることが明らかである。 また、引用例記載の発明では、治具1、すなわち、アダプターの「方形の基部」と「一対の突条3,3」とを総称して「本体」と表現しているが、「方形の基部」のみを本件発明1と同様に「本体部」と称すことも可能であり、「一対の突条3,3」は、アダプター本体部の左右中央に連設されてスリット溝部を形成する壁であるという限りで、本件発明1の「弯曲壁7」に対応している。 したがって、本件発明1と引用例記載の発明とは、以下の点で一致している。 一致点: アダプター本体部と、該アダプター本体部の左右中央に連設されてスリット溝部を形成する壁と、上記アダプター本体部の下面に設けられた突起部とを、一体に有し、打抜機の上型の罫線用ブレードの下端縁をスリット溝部に嵌込み、かつ、打抜面板の罫線用凹溝を中心として左右対称に予め設けられた一対の貫孔に上記突起部が嵌合するように上記突起部を、上記スリット溝部を中心として左右対称に突設した罫線アダプター。 そして、本件発明1と引用例記載の発明とは、以下の点で相違している。 相違点: 本件発明1では、アダプター本体部が、正面から見て門型であり、スリット溝部を形成する壁が、正面から見てU字型の弯曲壁であって、この弯曲壁が、そのスリット溝部の上方開口部近傍にて、アダプター本体部に介在状に連設されており、突起部が、アダプター本体部の左右脚部の下面に設けられているのに対して、引用例記載の発明では、アダプター本体部が方形であり、スリット溝部を形成する壁が、一対の突条であって、この突条が、アダプター本体部の上面に設けられており、突起部が、アダプター本体部の下面に設けられている点。 第4 判断 そこで、上記相違点について検討すると、請求人は、平成14年8月28日付意見書において、本件発明1は、上記相違点の構成を備えることにより引用例記載の発明に較べて、以下に示す顕著な効果を奏す旨主張している。 (1) スリット溝部2に罫線用ブレード12を嵌め込んでいくときに、弯曲壁 7は左右方向に傾くことがなく、罫線用ブレード12を(正規の深さまで )確実に嵌め込むことができ、かつ、罫線アダプターは破損し難いものと なる。 (2) 全ての罫線アダプター(スリット溝部2)を上型10(罫線用ブレード 12)にしっかりと(正規の深さまで差し込んで)取り付けることができ 、平面的に見て罫線用ブレード12と罫線用凹溝16とのセンターを確実 に一致させることができる。 (3) 上型10に罫線アダプターを介して取り付けられた打抜面板14を基台 23表面23aに対して平行にすることができ、打抜面板14を基台23 表面23aの正確な位置に固着し位置決めすることができる。 しかしながら、請求人は、この主張を裏づけるための証拠(例えば、本件発明1と引用例記載の発明とを比較した実験成績証明書等)を何等提出しておらず、請求人の主張だけからでは、本件発明1と引用例記載の発明との間に効果上格別顕著な差異があるということはできないだけでなく、引用例記載の発明において、罫線アダプターをごく普通に考えられる仕方で上型の罫線用ブレードに取り付ける場合、例えば、先ず、罫線アダプターの突起部を打抜面板の貫孔に押し込んだ後、打抜面板が取り付けられた罫線アダプターのスリット溝部を上型の罫線用ブレードに押し込んで取り付ける場合に、スリット溝部を形成する一対の突条が、格別左右方向に傾くとは考えられず、また、第2の1(3)に摘記した引用例の記載事項を参照すると、引用例記載の発明も本件発明1と同様の効果を奏するものと解するのが相当である。 そうしてみると、上記相違点における本件発明1の構成は、当業者が必要に応じて容易になし得る設計的な事項であるということができる。 第5 むすび したがって、本件発明1は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。 よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-09-17 |
結審通知日 | 2002-09-24 |
審決日 | 2002-10-07 |
出願番号 | 特願平8-46740 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B26F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大河原 裕、野村 亨 |
特許庁審判長 |
小池 正利 |
特許庁審判官 |
宮崎 侑久 高山 芳之 |
発明の名称 | 罫線アダプター及び打抜面板の位置決め方法 |
代理人 | 中谷 武嗣 |