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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1068663
審判番号 不服2000-15252  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-25 
確定日 2002-11-28 
事件の表示 平成10年特許願第287918号「映像信号の圧縮符号化方法及びその符号化器」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月30日出願公開、特開平11-205795]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続きの経緯・本願発明
本願は、平成10年10月9日(パリ条約による優先権主張1997年12月29日、大韓民国)の出願であって、その発明は、平成11年9月14日付け、平成12年9月25日付及び平成13年6月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲(請求項の数4)に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりのものである。
「【請求項1】 映像信号を圧縮符号化する方法において、
(a) フレームよりなる入力映像信号のいずれか一つのフィールドをフィールド単位で遅延して遅延されたフィールドデータを符号化することなく供給する段階と、
(b) 前記入力映像信号の他のフィールドの符号化前のフィールドデータと前記遅延されたフィールドデータとの差成分データを検出する段階と、
(c) 前記いずれか一つのフィールドデータと前記差成分データとをフィールド区分信号によって交替しながら選択して選択されたデータを供給する段階と、
(d) 前記選択されたデータを所定の圧縮符号化アルゴリズムにより符号化する段階とを含み、
前記いずれか一つのフィールドデータは自分のフィールドだけのデータを圧縮符号化し、前記他のフィールドデータは前記差成分データを圧縮符号化すること
を特徴とする映像信号の圧縮符号化方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平1-251973号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が示されている。
(1)「本発明によれば、飛び越し走査されたフレーム映像信号は、その表す第1および第2フィールドの画像の間の相関が強いという特徴に最適な符号化を行う。より詳細には、一方のフィールド、たとえば第2フィールドの画像データの符号化に際しては、他方のフィールド、すなわち第1フィールドとの差分をとることによって、データ圧縮を行っている。」(公報第3頁左上欄第10乃至17行)
(2)「同様にして第2フィールドのデータ30bもメモリ18から読み出され、機能部32b にてそのブロックが抽出される。この読み出しとブロック抽出32bは、第1フィールドのそれらと同期して行うのがよい。同期して行えば第1および第2フィールドのデータ圧縮が同時に行える。同期させない場合は、第1フィールドのデータ圧縮処理とは別に、第2フィールドのデータ圧縮の際にも第1フィールドのデータの読み出しとブロック抽出を行う。」(公報4頁左下欄第14行乃至右下欄第3行)
(3)他の実施例として示された第3図に関する説明では、「第3図を参照すると、本発明の他の実施例では、ブロック抽出32a および32b の後、直交変換34a および34b を行う前に第1フィールドと第2フィールドの差分44をとるように構成されている。」(公報第5頁右下欄第13乃至17行)

3.対比
本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、
両者共に映像信号を圧縮符号化するものであり、
引用例の「第1フィールドのデータ」は、自分のフィールドだけのデータで圧縮符号化していることから、本願発明の「いずれか一つのフィールドデータ」に相当し、同じく引用例の「第2フィールドのデータ」は、第1フィールドのデータとの差分を取っていることから、本願発明の「他のフィールドデータ」に相当する。
そして、フィールドデータや差分データを圧縮符号化するアルゴリズムは、本願発明の属する画像処理分野の当業者に自明の事項であり、また、カテゴリーの相違は、単なる表現上の問題にすぎないことから、本願発明は引用例のものと、次の一致点及び相違点を有する。

【一致点】
映像信号を圧縮符号化する方法において、
(a) フレームよりなる入力映像信号のいずれか一つのフィールドをフィールド単位で符号化することなく供給する段階と、
(b) 入力映像信号の他のフィールドの符号化前のフィールドデータといずれか一つのフィールドデータとの差成分データを検出する段階と、
(c) 前記いずれか一つのフィールドデータと前記差成分データとを供給する段階と、
(d) 前記供給されたデータを所定の圧縮符号化アルゴリズムにより符号化する段階とを含み、
前記いずれか一つのフィールドデータは自分のフィールドだけのデータを圧縮符号化し、前記他のフィールドデータは前記差成分データを圧縮符号化することを特徴とする映像信号の圧縮符号化方法

【相違点】
(1) 引用例では、各フィールドデータを一旦メモリに格納した後、供給しているのに対し、本願発明では、いずれか一つのフィールドデータを遅延して供給している点
(2) 本願発明では、いずれか一つのフィールドデータと、二つのフィールドデータの差分データとを、フィールド区分信号によって交替しながら選択しているのに対し、引用例では、第1フィールドデータと第2フィールドデータを同期して、あるいは同期させないで抽出している点

4.当審の判断
上記各相違点について以下検討する。
(1)上記2(2)で摘記したように、第1フィールドのデータと第2フィールドのデータとの間で、読み出しと抽出を同期させない場合には、第1フィールドのデータ処理の後、第2フィールドのデータ処理では、第2フィールドのデータと再度読み出した第1フィールドのデータとを比較して差分を取っており、再度読み出していることは、ある一定時間の後に読み出していることであり、本願発明の遅延していることに相当する。
すなわち、第1フィールドのデータは、第2フィールドのデータに対して遅延して供給していることになり、本願発明の一方のフィールドデータを遅延して供給している点と、格別な相違は認められない。
(2)上記2で摘記したように引用例には、フレーム映像信号の第1フィールドと第2フィールドの画像データを各々別のメモリーに格納した後、処理を行っており、メモリに格納するか否かは、種々の観点から当業者が適宜決定しうる事項であり、引用例において、差分データを得る観点からは、第2のフィールドデータをメモリに格納するのに換えて、メモリに蓄積された第1フィールドのデータの読み出しに合わせて第2フィールドのデータを供給することは、当業者であれば容易に推考できる程度の事項にすぎない。
そして、その具体的構成として、第1フィールドだけでのデータ処理が済んだ後に切り替え手段により差分データの処理に切り替えることは、当業者が機器設計上適宜実施しうる程度の事項にすぎない。
また、上記相違点全体としても、引用例と比して当業者が格別困難性を有した点は認められず、本願発明の効果にしても、引用例が備えている効果と比して格段考慮すべきものは認められない。

5.むすび
したがって、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-06-20 
結審通知日 2002-06-25 
審決日 2002-07-10 
出願番号 特願平10-287918
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 隆志  
特許庁審判長 杉山 務
特許庁審判官 山本章裕
小松 正
発明の名称 映像信号の圧縮符号化方法及びその符号化器  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 片山 修平  

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