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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B22D
管理番号 1068681
審判番号 不服2001-6685  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-26 
確定日 2002-12-24 
事件の表示 平成7年特許願第256038号「溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法およびその装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成8年12月10日出願公開、特開平8-323464、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成7年10月3日(優先日:平成7年3月28日)の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成13年5月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】溶鋼を取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋の注入口を通してタンディッシュ内に注入する工程における取鍋出鋼口に取鍋砂を充填した状態からの溶鋼注入開始初期において、
取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路に対して側方から気体を吹き付け可能とし、タンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態で、前記取鍋出鋼口を開閉する装置を開として溶鋼注入を開始する前に、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係から求められ、流下する取鍋砂を側方へ飛散可能に、かつ、溶鋼が離脱して飛散しないように設定された流量で前記気体の吹き付けを開始し、溶鋼の注入開始時に流下する取鍋砂を前記吹き付け気体により溶鋼注入流路外へ排除し、取鍋砂通過後に前記気体の吹き付けを停止させることを特徴とする溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項2】溶鋼を取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋の注入口を通してタンディッシュ内に注入する工程における取鍋出鋼口に取鍋砂を充填した状態からの溶鋼注入開始初期において、
取鍋出鋼口とタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路に対して側方から気体を吹き付け可能とし、タンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態で、前記取鍋出鋼口を開閉する装置を開として溶鋼注入を開始する前に、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係から求められ、流下する取鍋砂を側方へ飛散可能に、かつ、溶鋼が離脱して飛散しないように設定された流量で前記気体の吹き付けを開始し、溶鋼の注入開始時に流下する取鍋砂を前記吹き付け気体により溶鋼注入流路外へ吹き飛ばすと共に、吸い込み流により吸引捕集し、取鍋砂通過後に前記気体の吹き付けおよび吸い込みを停止させることを特徴とする溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法。」(以下、「本願発明2」という。)
「【請求項3】溶鋼を取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋の注入口を通してタンディッシュ内に注入する工程の溶鋼注入開始初期に取鍋出鋼口に充填される取鍋砂をタンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態から除去する取鍋砂除去装置であり、取鍋出鋼口とタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路の側方に配設され、前記溶鋼注入流路に対して気体を吹き付けるノズルを有するノズルヘッダーが溶鋼注入流路方向に一段または複数段配設された気体吹き付け装置と、溶鋼注入流路を挟んで前記気体吹き付け装置に対向配置され、吹き飛ばされた取鍋砂を捕集する取鍋砂捕集容器を備え、前記ノズルからの気体噴流の流量が、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係から求められ、流下する取鍋砂を側方へ飛散可能に、かつ、溶鋼が離脱して飛散しないように設定されていることを特徴とする溶鋼注入開始時の取鍋砂除去装置。」(以下、「本願発明3」という。)
「【請求項4】溶鋼を取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋の注入口を通してタンディッシュ内に注入する工程の溶鋼注入開始初期に取鍋出鋼口に充填される取鍋砂をタンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態から除去する取鍋砂除去装置であり、取鍋出鋼口とタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路の側方に配置され、前記溶鋼注入流路に対して気体を吹き付けるノズルを有するノズルヘッダーが溶鋼注入流路方向に一段または複数段配設された気体吹き付け装置と、溶鋼注入流路を挟んで前記気体吹き付け装置に対向配置され、吹き飛ばされた取鍋砂を吸い込みダクトを介して強制的に吸い込む取鍋砂吸い込み装置を備え、前記ノズルからの気体噴流の流量が、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係から求められ、流下する取鍋砂を側方へ飛散可能に、かつ、溶鋼が離脱して飛散しないように設定されていることを特徴とする溶鋼注入開始時の取鍋砂除去装置。」(以下、「本願発明4」という。)

2.原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は、本願請求項1ないし4に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である特開平1-118349号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平5-309456号公報(以下、「引用例2」という。)及び特開昭51-134332号公報(以下、「引用例3」という。)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用例記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された引用例1には次の事項が記載されている。
(1-a)「製鋼用取鍋からタンディッシュに出湯開始時、タンディッシュ内に設けた噴出ノズルから不活性ガスを噴出させ、その噴流によって取鍋注出ノズルから落下するケイ砂を溶鋼の落下点から離れた箇所に吹き飛ばすようにしたことを特徴とする注出ノズル充填ケイ砂の溶鋼混入防止方法。」(特許請求の範囲)
(1-b)「本発明の実施例を以下に図面に基ずいて説明する。第1図において1は取鍋、2は注出ノズルの開閉装置、3はエアシールパイプ、4はケイ砂、5はタンディッシュ、6はタンディッシュの蓋、7は不活性ガスの噴出ノズル、8は溶鋼表面である。このような構成において、取鍋から出湯するには、注出ノズルの開閉装置を開いて注出ノズルに充填してあるケイ砂をエアシールパイプを通してタンディッシュに落として開口し出湯するのであるが、・・・。本発明はタンディッシュ内に不活性ガスの噴出ノズル7を設け、該噴出ノズルから落下するケイ砂4に向かって不活性ガス(例えばArガス等)を吹き付けて溶鋼の落下点から離れた溶鋼表面または、タンディッシュの外に落下するから、溶鋼中にケイ砂が混入することが無くなる。」
(1-c)本発明の方法を説明する断面正面図である第1図。(第2頁下欄)
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された引用例2には次の事項が記載されている。
(2-a)「タンディッシュ底の浸漬ノズル取付け部に、同取付け部のノズル孔に合致するタンディッシュ内残留物を吸引する吸引孔と、同吸引孔とそれぞれ連通する高圧ガス吹込み孔と、吸引孔から吸引されたタンディッシュ内残留物を導くダクトとを有するエジェクターに、前記高圧ガス吹込み孔から高圧ガスを吹込み、前記吸引孔から吸引されるタンディッシュ内残留物を前記ダクト内で吹き飛ばして細粒にして処理するタンディッシュ内残留物の処理方法。」(特許請求の範囲)
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された引用例3には次の事項が記載されている。
(3-a)「吊持された取鍋の開口面に向かって斜め方向より一方向に吹出す空気流によって、前記取鍋の開口面上方を遮断すると共に同空気流によって粉塵を補集することを特徴とする取鍋受銑作業時の粉塵捕集方法。」(特許請求の範囲第1項)

4.当審の判断
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1における「ケイ砂」は、本願発明1における「取鍋砂」に他ならない。引用例1の第1図を参照するに、引用例1記載の発明においてもタンディッシュに蓋がされており、また、摘記事項(1-b)で示したとおり、引用例1記載の発明では「注出ノズルの開閉装置を開いて注出ノズルに充填してあるケイ砂をエアシールパイプを通してタンディッシュに落として開口し出湯する」ものであるから、引用例1記載の発明における「タンディッシュ内に設けた噴出ノズルから不活性ガスを噴出させ、その噴流によって取鍋注出ノズルから落下するケイ砂を溶鋼の落下点から離れた箇所に吹き飛ばす」ことが、本願発明1における「タンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態で、取鍋出鋼口を開閉する装置を開として溶鋼注入を開始する前に」と同じ状態で開始されているといえる。また、引用例1では、ケイ砂通過後、気体の吹き付けを停止させることが明示されていないが、ケイ砂が通過後は気体を吹き付ける必要がないことは明らかであるから、本願発明1における「取鍋砂通過後に前記気体の吹き付けを停止させる」ことも自明のことである。
してみれば、本願発明1と引用例1記載の発明とは「溶鋼を取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋の注入口を通してタンディッシュ内に注入する工程における取鍋出鋼口に取鍋砂を充填した状態からの溶鋼注入開始初期において、タンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態で、前記取鍋出鋼口を開閉する装置を開として溶鋼注入を開始する前に、気体の吹き付けを開始し、溶鋼の注入開始時に流下する取鍋砂を前記吹き付け気体により溶鋼注入流路外へ排除し、取鍋砂通過後に前記気体の吹き付けを停止させる溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法」の点で一致するが、(1)引用例1記載の発明においては気体の吹きつけをタンデュッシュ内に設けた噴出ノズルから行っているのに対し、本願発明1では取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路に対して側方から気体を吹き付け可能としている点、及び(2)引用例1には、気体吹きつけの流量について、本願発明1の「気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係から求められ、流下する取鍋砂を側方へ飛散可能に、かつ、溶鋼が離脱して飛散しないように設定された流量」であるとの規定がない点で相違している。
上記相違点(1)及び(2)について検討する。
(1)引用例1記載の発明においては、第1図に示されているとおり、エアシールパイプ(第1図における3)がタンディッシュの蓋の位置近辺まで延びており、かつ吹き飛ばされたケイ砂が溶鋼表面に落ちてもよいことが明示されているため、引用例1記載の発明において、気体を吹き出す噴出ノズルをタンディッシュ内から、取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路に対して側方から気体を吹き付け可能な位置とする動機付けはない。
(2)引用例1においては、気体吹きつけの流量として「取鍋注出ノズルから落下するケイ砂を溶鋼の落下点から離れた箇所に吹き飛ばすようにした」と規定されるのみで、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係には着目していないため、流下する取鍋砂は側方へ飛散可能であるが、溶鋼は離脱して飛散しないように気体吹きつけの流量を設定することは導き出せない。
本願発明1においては、上記相違点(1)及び(2)の構成によって、取鍋砂のみをタンディッシュ外に確実に安定して排除することができるため、取鍋砂によるタンディッシュ内の溶鋼汚染を確実に抑制できると同時に溶鋼の歩留まり低下も抑制できるという顕著な効果を奏するものである。
また、引用例2記載の発明は、摘記事項(2-a)のとおり、タンディッシュ内残留物の処理方法についての発明であり、引用例3記載の発明は、摘記事項(3-a)のとおり、取鍋の開口面上方を遮断すると共に同空気流によって粉塵を補集する取鍋受銑作業時の粉塵捕集方法についての発明である。両者とも、本願発明1の「溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法」に関する発明ではなく、引用例2及び3には、上記相違点を示唆する事項は記載されていない。
したがって、本願発明1は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

本願発明2は、本願発明1の構成に、更に吹き付け気体により溶鋼注入流路外へ吹き飛ばすと共に「吸い込み流により吸引捕集し」との構成を追加し、取鍋砂の除去効率を一層向上させた発明であるため、本願発明1と同様、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

本願発明3の「溶鋼注入開始時の取鍋砂除去装置」は、本願発明1の「溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法」の実施に直接使用する装置の発明であり、本願発明3と引用例1記載の発明とを対比すると、両者は「溶鋼を取鍋出鋼口からタンディッシュ蓋の注入口を通してタンディッシュ内に注入する工程の溶鋼注入開始初期に取鍋出鋼口に充填される取鍋砂をタンディッシュに蓋をした正規の鋳造開始状態から除去する取鍋砂除去装置であり、溶鋼注入流路に対して気体を吹き付けるノズルを有するノズルヘッダーが溶鋼注入流路方向に一段または複数段配設された気体吹き付け装置」がある点で一致しているが、(3)引用例1記載の発明では気体吹き付け装置がタンディッシュ内に配設されているのに対し、本願発明3では取鍋出鋼口とタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路の側方に配設されている点、(4)引用例1には「溶鋼注入流路を挟んで前記気体吹き付け装置に対向配置され、吹き飛ばされた取鍋砂を捕集する取鍋砂捕集容器」を備えることが記載されていない点、(5)引用例1には「ノズルからの気体噴流の流量が、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係から求められ、流下する取鍋砂を側方へ飛散可能に、かつ、溶鋼が離脱して飛散しないように設定されている」ことが示されていない点で相違している。
上記相違点(3)及び(5)について検討する。
(3)引用例1記載の発明においては、第1図に示されているとおり、エアシールパイプ(第1図における3)がタンディッシュの蓋の位置近辺まで延びており、かつ吹き飛ばされたケイ砂が溶鋼表面に落ちてもよいことが明示されているため、引用例1記載の発明において、気体吹き付け装置をタンディッシュ内から、取鍋出鋼口とタンディッシュ蓋との間の溶鋼注入流路の側方に配設する動機付けはない。
(5)引用例1においては、ノズルからの気体噴流の流量として「取鍋注出ノズルから落下するケイ砂を溶鋼の落下点から離れた箇所に吹き飛ばすようにした」と規定されるのみで、気体噴流の平均流速と取鍋砂及び溶鋼の飛散距離との関係には着目していないため、流下する取鍋砂は側方へ飛散可能であるが、溶鋼は離脱して飛散しないように気体噴量の流量を設定することは導き出せない。
本願発明3においては、上記相違点(3)及び(5)の構成によって、取鍋砂のみをタンディッシュ外に確実に安定して排除することができるため、取鍋砂によるタンディッシュ内の溶鋼汚染を確実に抑制できると同時に溶鋼の歩留まり低下も抑制できるという顕著な効果を奏するものである。
また、引用例2及び3には、上記相違点(1)及び(2)と同様、相違点(3)及び(5)を示唆する事項は記載されていない。
したがって、本願発明3は、上記相違点(4)を検討するまでもなく、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

本願発明4は、本願発明3の「溶鋼注入流路を挟んで前記気体吹き付け装置に対向配置され、吹き飛ばされた取鍋砂を捕集する取鍋砂捕集容器」に替えて「溶鋼注入流路を挟んで前記気体吹き付け装置に対向配置され、吹き飛ばされた取鍋砂を吸い込みダクトを介して強制的に吸い込む取鍋砂吸い込み装置」を備え、取鍋砂の除去効率を一層向上させた発明であり、上記相違点(3)及び(5)については本願発明3と同様であるため、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

5.むすび
したがって、請求項1ないし4に係る発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものではなく、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-12-10 
出願番号 特願平7-256038
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B22D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 北村 明弘  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 三崎 仁
伊藤 明
発明の名称 溶鋼注入開始時の取鍋砂除去方法およびその装置  
代理人 久門 知  

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