• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B25J
管理番号 1068733
審判番号 不服2001-7527  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-08 
確定日 2002-12-18 
事件の表示 平成11年特許願第145100号「作業の異常監視機能を備えたロボット制御装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成12年12月 5日出願公開、特開2000-334690、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本件出願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯・本件発明
本件出願は、平成11年5月25日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明(以下「本件発明1〜4」という。)は、平成13年2月23日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】ロボットの手首先端に取り付けられた作業ツールを対象物に対して相対的に移動させる移動制御手段と、
前記作業ツールを経由して作業物質又はエネルギーを対象物に付与するか、あるいは前記作業ツールを経由して送られる作業物質にエネルギーを与えて溶解させて対象物に付与するために、前記作業物質またはエネルギーを供給する供給手段と、
該供給手段に供給指令を与える供給制御手段とを備えたロボット制御装置において、
前記相対的な移動が停止しているか否かを監視するロボット停止状態監視手段と、
前記供給手段に供給指令が与えられているか否かを監視する供給指令監視手段と、
前記相対的な移動が停止し、且つ、前記供給指令が出力されている時間を計時する計時手段と、
前記計時された時間が所定時間を経過したとき異常が発生したと判断する異常判断手段とを傭えた前記ロボット制御装置。
【請求項2】前記所定時間の設定値が可変である、請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】前記所定時間が、作業開始時と作業実行中とで異なる値となるように設定できる、請求項1または請求項2に記載のロボット制御装置。
【請求項4】前記作業ツールは、溶接トーチ、シーリングガン、レーザ出射ヘッドまたは塗装ガンのうちの1つである、請求項1、請求項2または請求項3に記載のロボット制御装置。」

第2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
引用例:特開平4-127980号公報
引用例記載の発明(特許請求の範囲等参照)は作業の対象物の損傷を防ぐ等のためにレーザの移動速度が所定値以下となると異常と判断するもの、すなわち一部にレーザの出力が集中した場合に異常と判断するものであるから、引用例記載の発明において、所定時間レーザの移動速度が0、すなわち停止した場合に異常であると判断するようにすることは、格別困難性を見いだせない。
また、引用例記載の発明は、異常を検知した場合、警報を出力すると共に、レーザの出力を遮断するものであるから、レーザの出力について考慮しているものであり、レーザ出力の有無を異常の判断の条件に入れることに、格別な困難性は認められない。その際、所定の条件が所定時間継続したことを以て異常とすることは、制御の常套技術に過ぎない。
したがって、本件発明1、2、4は、その出願前日本国内において頒布された刊行物である引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第3 引用例記載の発明乃至技術的事項
引用例には、以下のとおり記載されている。
1 特許請求の範囲
「1.レーザビームを出力するレーザ発信器と、前記レーザビームを縦と横の二次元にスキャンするガルバノメータや圧電素子使用等のスキャナと、前記スキャナによりレーザ光がどの位置にあるかを検知するポジションセンサと、前記ポジションセンサからの位置信号を取り込み、動作指令との偏差に応じてスキャナを駆動する駆動装置と、前記ポジションセンサの信号を微分する方法により、レーザ光がスキャンされる速度を検出する速度センサと、前記レーザビームのスキャン速度の許容される最低値をあらかじめ設定しておき、その値を基準値として出力する信号発生器と、前記スキャン速度センサと前記スキャン速度最低限界値信号発生器からの出力を比較してその結果を出力する比較器と、前記レーザ発信器のレーザ光のON/OFFを制御し、前記ガルバノメータ駆動装置に動作信号を与え、前記比較器からの出力を受取るメインコントローラより構成されるレーザマーキング装置において、
レーザスキャン速度があらかじめ設定された最低許容限界値より下がった時にこれを検出する手段と、レーザビームを遮断する手段とを含むことを特徴とするレーザマーキング装置。
2.請求項1において、前記比較器が異常を検出して前記レーザビームを遮断すると同時に、前記外部装置へ警報を発する手段を設けたレーザマーキング装置。
2 第1頁右下欄第15〜17行
「本発明はスキャン式レーザマーカに係り、特に、ワークにレーザ光による過度の損傷を与えることを未然に防ぐために好適なレーザマーカに関する。」
3 第1頁右下欄第19行〜第2頁左上欄第5行
「従来の装置は・・・レーザビームの位置信号をとりこんでいるが、スキャン速度を検出していないので、スキャン装置の故障によりレーザビームの走査が停止してワークの一点にレーザが照射されワークに損傷を与えても検知することができない。」

第4 当審の判断
1 本件発明1について
本件発明1は、本件の明細書の記載からみて、I/O信号が断線等によりロボットに返答されないために、作業物質又はエネルギーが供給されているにも拘わらず、ロボット動作が停止しているという状態を回避するために、「相対的な移動が停止しているか否かを監視するロボット停止状態監視手段と、供給手段に供給指令が与えられているか否かを監視する供給指令監視手段と、相対的な移動が停止し、且つ、供給指令が出力されている時間を計時する計時手段と、計時された時間が所定時間を経過したとき異常が発生したと判断する異常判断手段」を備えることにより、作動中種々の速度を取り得るロボットの制御において、作業物質又はエネルギーを供給するための供給指令が与えられているという条件と、ロボットの対象物に対する相対的な移動が停止しているという、それだけでは必ずしも異常とはいえない条件の2つが両立する時間が所定時間以上か否かを計るものである。
一方、引用例記載のものは、駆動機構、即ち、スキャン装置の故障により一定速度で移動することを前提とするレーザビームのスキャン速度が低下し、ワークに過度の損傷を与えることを防ぐために、レーザビームのスキャン速度を計るものである。
即ち、本件発明1と引用例記載のものは、故障の原因が異なり、その解決手段も異なる。
また、異常な状態が所定時間続く場合に異常とすることは周知かもしれないが、正常な状態の内の一態様が所定時間続く場合にも異常と判断することがロボット制御装置という技術分野で周知であるとは一概にはいえない。
したがって、引用例記載の発明乃至技術的事項を、ロボットの手首先端に作業ツールを取り付けたロボット制御装置に適用した際に、作業物質又はエネルギーを供給するための供給指令が与えられているという条件とロボットの対象物に対する相対的な移動が停止しているという2つの条件が所定時間続くことを異常とすることに想到し、上記「」内に記載の手段を採用することは、当業者といえども容易になし得たとはいえない。

そして、本件発明1は、上記「」内に記載の手段をその発明特定事項とすることにより、「アーク溶接やシーリング、レーザ加工といったロボットが動作しながら作業を行うことを前提としている作業において、作業を開始したが何らかの不具合によってロボットが動作しなかった場合、作業の種類や状況に応じた時間だけ待って、作業を直ちに強制終了させることが出来る。」、「無用な作業中断によって作業効率の低下を招くことを回避する。」という引用例記載の発明乃至技術的事項にない格別の効果を奏するものである。

したがって、本件発明1が、引用例記載の発明乃至技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

2 本件発明2〜4について
本件発明2〜4は、本件発明1に従属し、本件発明1にさらに技術的限定を加えたものであるから、本件発明1が、引用例記載の発明乃至技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない以上、本件発明2〜4も、引用例記載の発明乃至技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件出願については、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-11-12 
出願番号 特願平11-145100
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B25J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 八木 誠  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 加藤 友也
宮崎 侑久
発明の名称 作業の異常監視機能を備えたロボット制御装置  
代理人 塩野入 章夫  
代理人 湯田 浩一  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 竹本 松司  
代理人 魚住 高博  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ