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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1068756
審判番号 不服2000-18681  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-09-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-11-24 
確定日 2002-12-05 
事件の表示 平成 4年特許願第 79367号「プリント基板受取装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 9月21日出願公開、特開平 5-243793]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、平成4年2月28日に特許出願されたものであり、その請求項1に係る発明は、平成12年12月25日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「 チャッキング機構を開いてプリント基板を搬送装置から受取り、前記チャッキング機構が閉じた状態で回転し、前記プリント基板を支持枠の溝に立て掛けて積載するプリント基板受取装置において、
前記チャッキング機構が前記プリント基板を受取る際に前記プリント基板の板厚に応じて挟持間隔を可変し、前記プリント基板を密接状態で挟持するように成し、
前記チャッキング機構を前記搬送装置側と前記支持枠側との間において回転移動させる回動アームに、プリント基板の搬送方向に所要長さ延長される支持アームが固定され、
前記支持アームの先端部側に、前記搬送装置側のガイドローラの上周縁とほぼ同一位置となるように支持ローラが軸着されて成り、
前記搬送装置側において前記チャッキング機構により挟持されるプリント基板の挟持部を、ラック及びピニオンによる前記チャッキング機構及び前記支持アームの回転移動に伴い、前記プリント基板の挟持部より前記搬送装置側において前記支持アームにより前記支持ローラを介して押し上げ支持し、前記支持枠側へ回転移動させるようにしたことを特徴とするプリント基板受取装置。」
【2】引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-300015号公報(以下「引用例」という。)には、「印刷回路基板の取扱装置」に関して、以下の事項が記載されているものと認める。
イ)「この発明は、複数枚のプリント回路基板を互いに接触しないように、該回路基板相互に所定の間隔をあけて立てた状態で保持するパレットにプリント回路基板を装入または該パレットから取り出す機構を備えたプリント回路基板のハンドリング装置に関するものである。」(第3頁下右欄第3〜8行)
ロ)「複数枚のプリント回路基板それぞれを水平方向に支持しながら該基板を1枚づつ受け入れるグリッパへ移送するローラーコンベヤと;該ローラーコンベヤにより移送されてくるプリント回路基板を1枚づつ受け入れて、前記基板の水平移送方向に対し、この移送方向を垂直方向に変えるための回転作動の前記グリッパと; 該グリッパの下手に位置して、前記回路基板をほぼ垂直方向または斜めに立てた状態で支持するパレットとを備え、このパレットには、所定の間隔をおいて設けられた複数の溝が形成され、前記パレットは、前記基板の移送方向にそって前記溝の間隔に合うピッチで間欠的に駒送りされる構成を有している。」(第4頁上右欄第11行〜同頁下左欄第6行)
ハ)「前記グリッパに前記回路基板の一端(移送方向に向けての先端エッジ、この部分は、損傷しても問題がない)を挟持する掴み手段が設けられており、この掴み手段で、例えば、保護フィルムを剥離した前記回路基板を挟持しながら掴み、前記パレットの溝へ前記回路基板を一枚づつ装入して、前記回路基板が互に接触することなく前記パレットに装入し、……プリント回路基板の損傷を完全に防ぐことが期待される。」(第4頁下左欄第7〜17行)
ニ)「第1図の平面図で示した全体の装置は、水平コンベヤ1を備え、このコンベヤは、ワンセットの同期駆動されるローラーを有している。これらローラーは、水平回転軸を有する。……前記コンベヤは、矢印2の方向へ動作し、前記コンベヤの上流側に位置する機械からプリント回路基板を取出してパレット3へ搬送する。」(第5頁上右欄第4〜11行)
ホ)「基板の保持体またはグリッパ4は、コンベヤの下流側に位置し、コンベヤで送られてくるプリント回路基板5を保持してパレット3のバー6に形成されたトラック18に該基板を装入する。」(第5頁上右欄第11〜15行)
ヘ)「グリッパ4は、コンベヤ1の移送方向2を横断する回転軸(ピボット)7に枢支されている。」(第5頁上右欄第16〜18行)
ト)「グリッパ4の一部を示す第3図に示すように、グリッパの可動の掴みジョウ11は、コンベヤ1により送られてくるプリント回路基板5を受け入れるためにオープン状態となっている。」(第5頁下左欄第7〜10行)
チ)「この掴みジョウ11は、シリンダ14により駆動されるピストンロッド13により枢支軸12まわりを回転する。固定の掴みジョウ15グリッパ4の回転アーム16に直結されている。」(第5頁下左欄第10〜14行)
リ)「第4図は、前記した可動の掴みジョウ11と固定の掴みジョウ15の両者によりプリント回路基板5を掴む態様を示すもので、この態様においては、ピストンロッド13がシリンダ14により駆動され、掴みジョウ11が枢支軸12を回転中心として時計方向へ回転してジョウ15側へ降下し、ジョウ11とジョウ15との間にプリント回路基板5の先端を挟持し、プリント回路基板5は、ジョウ11、ジョウ15の両者とバー17により支持される。」(第5頁下左欄第14行〜同頁下右欄第4行)
ヌ)「グリッパ4のアーム16が枢支軸7を回転中心として時計方向へ約80°の角度分回転すると、前記した掴みジョウ11,15は、プリント回路基板5を支持した状態でバー6側へ回転し、プリント回路基板5の先端をバー6の溝18に挿入、着座させる。その後、アーム16をさらに一段回転させると、溝18に着座したプリント回路基板を溝18に残した状態でアーム16の前記掴みジョウ11,15も溝18の底部下方へ下がり前記溝に着座したプリント回路基板5は、前記一対の掴みジョウから抜け、プリント回路基板5は、バー6の溝18に支承され、ほぼ斜めの状態でバー6の溝18に立設される。」(第5頁下右欄第8〜20行)
【3】対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明と上記引用例に記載された「印刷回路基板の取扱装置」の発明とを対比すると、引用例に記載された発明の「プリント回路基板5」、ローラーを有する「水平コンベヤ1」、「パレット3」が、それぞれ本件請求項1に係る発明の「プリント基板」、「搬送装置」、「支持枠」に相当する。
また、引用例に記載された発明の「グリッパ4」の掴みジョウ11,15からなる「掴み手段」は、上記摘示事項ハ)に示すように、回路基板を挟持しながら掴むものであるから、回路基板を密接状態で挟持するように成したもので、機能上、本件請求項1に係る発明の「チャッキング機構」に対応し、引用例に記載された発明の「グリッパ4」の「回転アーム16」は、前記「掴み手段」を、「水平コンベヤ1」側と「パレット3」側との間において回転移動させるものであるから、機能上、本件請求項1に係る発明の「回動アーム」に対応するものと認められる。
そして、引用例に記載された発明の「グリッパ4」は、「掴み手段」を開いて「プリント回路基板5」を「水平コンベヤ1」から受取り、前記「掴み手段」が閉じた状態で回転し、前記「プリント回路基板5」を「パレット3」の「溝18」に立て掛けて積載するものであるから、プリント基板受取装置ということができる。
さらに、引用例に記載された発明の「掴みジョウ15」は、上記摘示事項チ)に示すように「回転アーム16」に固定されており、また、摘示事項ロ)、FIG.3及び4に示されるように、「水平コンベヤ1」による「プリント回路基板5」の搬送方向に所要長さ延長されている構成を備えるものであるから、この点で本件請求項1に係る発明の「支持アーム」に対応するものと認められ、一方、「掴みジョウ15」の「水平コンベヤ1」側端部に備えられた「バー17」は、本件請求項1に係る発明の「支持ローラ」と同様に、「プリント基板」を「チャッキング機構」の挟持部に受取る際に「プリント基板」を「搬送装置」と共に支持し、前記「チャッキング機構」及び前記「回動アーム」の回転移動に伴い、前記「プリント基板」の挟持部より前記「搬送装置」側において押し上げ支持しているから、引用例の「バー17」及び本件請求項1に係る発明の「支持ローラ」は、共に「支持体」と称することができるものである。
したがって、本件請求項1に係る発明と上記引用例に記載された発明とは、
「チャッキング機構を開いてプリント基板を搬送装置から受取り、前記チャッキング機構が閉じた状態で回転し、前記プリント基板を支持枠の溝に立て掛けて積載するプリント基板受取装置において、
前記チャッキング機構が、前記プリント基板を密接状態で挟持するように成し、
前記チャッキング機構を前記搬送装置側と前記支持枠側との間において回転移動させる回動アームに、プリント基板の搬送方向に所要長さ延長される支持アームが固定され、
前記支持アームに、前記搬送装置側のガイドローラの上周縁とほぼ同一位置となるように支持体が備えられて成り、
前記搬送装置側において前記チャッキング機構により挟持されるプリント基板の挟持部を、前記チャッキング機構及び前記支持アームの回転移動に伴い、前記プリント基板の挟持部より前記搬送装置側において前記支持アームにより前記支持体を介して押し上げ支持し、前記支持枠側へ回転移動させるようにしたプリント基板受取装置」
で一致し、次の3点(相違点A〜C)で相違する。
[相違点A]
本件請求項1に係る発明は「前記チャッキング機構が前記プリント基板を受取る際に前記プリント基板の板厚に応じて挟持間隔を可変」とするものであるのに対して、上記引用例に記載された発明では、前記チャッキング機構が、前記プリント基板を密接状態で挟持するものの「前記チャッキング機構が前記プリント基板を受取る際に前記プリント基板の板厚に応じて挟持間隔を可変」とするものであるかどうか明記されたものでない点
[相違点B]
本件請求項1に係る発明では、「前記支持体」が、「前記支持アームの先端部側に、前記搬送装置側のガイドローラの上周縁とほぼ同一位置となるように」「軸着されて成る」「支持ローラ」であって、「前記支持アームにより前記支持ローラを介して」、前記チャッキング機構及び前記支持アームの回転移動に伴い、前記プリント基板の挟持部より前記搬送装置側において押し上げ支持するようにしたのに対して、上記引用例に記載された発明では、「前記支持体」が、前記支持アームの前記搬送装置(水平コンベヤ1)側端部に、前記搬送装置側のガイドローラの上周縁とほぼ同一位置となるように備えて成る「バー17」であって、「前記バー17を介して」前記チャッキング機構及び前記支持アームの回転移動に伴い、前記プリント基板の挟持部より前記搬送装置側において押し上げ支持するようにした点
[相違点C]
本件請求項1に係る発明は「ラック及びピニオン」により前記チャッキング機構及び前記支持アームを回転移動するのに対して、上記引用例に記載された発明では、回転移動する手段がどのようなものか明記されたものでない点
(2)次に上記各相違点について検討する。
(2-1)相違点Aについて
上記引用例に記載された発明でも、チャッキング機構はプリント基板を密接状態で挟持するものであり、プリント基板には種々の板厚のものが存在することは周知のことであるから、チャッキング機構を、プリント基板を受取る際に前記プリント基板の板厚に応じて挟持間隔を可変とする構成のものとすることは、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得ることである。
(2-2)相違点Bについて
引用例に記載された発明では、支持体が「バー17」として構成されることによって、支持体とプリント基板とが相対的に摺動移動するのに対して、本件請求項1に係る発明では、支持体(支持ローラ)の回転を伴って支持体とプリント基板とが相対的に移動するものであるが、相対移動する場合支持体を回転する構成の「支持ローラ」とすることは、搬送手段における慣用技術であるから、支持体を「支持ローラ」とし、搬送装置側のガイドローラの上周縁とほぼ同一位置となるように軸着することは、設計上の単なる選択事項にすぎない。
また、引用例に記載された発明における支持体(バー17)も「掴み手段」の挟持部より所要長さ隔てて支持アーム(掴みジョウ15)の前記搬送装置(水平コンベヤ1)側端部に配置されており、支持体と挟持部との距離はプリント基板の大きさに応じて適宜選択し得る程度のものであるから、支持アーム(掴みジョウ15)を前記搬送装置(水平コンベヤ1)側に延長してその先端に支持体を備える構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであり、このような支持アームの先端に支持体を備える構成によって、前記支持アームにより前記支持体を介して、チャッキング機構及び前記支持アームの回転移動に伴い、プリント基板の挟持部より搬送装置側において押し上げ支持する構成が得られるものである。
したがって、相違点Bにおける本件請求項1に係る発明の構成は、上記引用例に記載された発明及び慣用技術に基づいて、当業者が容易に相当し得たとするのが相当である。
(2-2)相違点Cについて
揺動機構を構成するために「ラック及びピニオン」を用いることは、本件出願前周知の事項である(実願昭63-11030号(実開平1-115087号)のマイクロフィルム、特開昭57-195906号公報、特開昭60-197450号公報)から、「ラック及びピニオン」により前記チャッキング機構及び前記支持アームを回転移動するようにした点は、上記周知事項に基づき当業者が容易に想到し得たものである。
(3)そして、本件請求項1に係る発明による作用効果は、上記引用例に記載されたもの及び上記周知乃至慣用の技術から予測し得る程度のものであり、格別のものとは認められない。
【4】むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-01 
結審通知日 2002-10-08 
審決日 2002-10-23 
出願番号 特願平4-79367
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 蓑輪 安夫
特許庁審判官 鈴木 法明
藤井 昇
発明の名称 プリント基板受取装置  
代理人 松隈 秀盛  

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