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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1068758 |
審判番号 | 不服2000-16008 |
総通号数 | 37 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-06-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-10-05 |
確定日 | 2002-12-05 |
事件の表示 | 平成10年特許願第347972号「フレキシブルボード並びに携帯電話機」[平成12年 6月16日出願公開、特開2000-165085]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯と本願の発明 本願は、平成10年11月24日の特許出願であって、その出願に係る発明は、平成11年9月30日付、平成12年10月16日付で手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至2に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 複数のラインを配線する内層の上下が、複数のスルーホールを有した第1及び第2のグランド層で覆われているフレキシブルボードであって、 前記内層には、 複数のスルーホールを有するとともに、前記複数のラインの両側に配線されたGNDラインと、 前記複数のラインの間及び前記複数のラインと前記GNDラインとの間に付設された絶縁層とが設けられ、 前記内層は、前記第1及び第2のグランド層で挟持されるとともに、前記第1及び第2のグランド層及び前記GNDラインが前記複数のスルーホールを介して接続されるとともに、 前記複数のスルーホールによって、前記第1及び第2のグランド層及び前記GNDラインによる共通GNDの確保を増大させるよう構成されている ことを特徴とするフレキシブルボード。 【請求項2】 請求項1のフレキシブルボードを組込んでなることを特徴とする携帯電話機。」 (審判請求時の手続補正(平成12年10月16日付)は、新規事項を追加するものではなく、かつ、その特許請求の範囲についての補正は、平成11年10月19日付拒絶理由における記載不備を解消しようとするもので、明りょうでない記載の釈明及び請求項の削除を目的とするものであるから、適法な補正といえるので、本願の各請求項の発明を上記のように認定した。) 2.引用例とその記載事項 これに対して、本願審査の過程において、平成11年7月27日付拒絶理由通知で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-111371号公報(以下、「引用例1」という。)には、「フレキシブルプリント基板」に関し、以下の事項(ア)(イ)が記載又は図示されている。 (ア)「【0003】 以下、図2(図3の誤記と認める。)及び図3(図4の誤記と認める。)を用いて、従来の導体層を積層プレスする方法及び導体ペースト層を被覆する方法によって製造されたFPCについて説明する。尚、図2(図3の誤記と認める。)は、従来の導体層を積層プレスする方法により製造されたFPCの断面図であり、図3(図4の誤記と認める。)は従来の導体ペースト層を被覆する方法により製造されたFPCの断面図である。 【0004】 まず、導体層を積層プレスする方法においては、図2(図3の誤記と認める。)に示す様に信号層21及びベースフィルム22をシールド層23a及び23bではさみ、積層し、スルーホール24にて、電気的に接続している。その後、カバーコート25a及び25bではさみ、積層している。 (【0003】〜【0004】) (イ)図3には、ベースフィルム22上の信号層21には複数の信号線が形成されているとともに、前記信号線の左右両側には、スルーホール24でベースフィルム22の上下に設けられたシールド層23a、23bと電気的に接続されている導体部分が形成されていること、並びに、前記複数の信号線間及び信号線と前記導体部分との間には、絶縁層が介在していることが示されていると認められる。 また、同日付拒絶理由通知で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-3395号公報(以下、「引用例2」という。)には、「フレキシブルプリント配線板」に関し、以下の事項(ウ)(エ)が記載されている。 (ウ)「シールド層5は、図1に示すように、導体回路3と同様に第1絶縁層1上に接着されたアース線8と導通していることが、シールド性能を高める上から好ましい。」(【0012】) (エ)「図2に示されるフレキシブルプリント配線板A1のように、第1絶縁層1の一方の面上に、導体回路3、第2絶縁層4、シールド層5および固定絶縁層6を前述の場合と同様にして積層する。また、第1絶縁層1の他方の面上に、厚さ5μm以下の金属からなる第2シールド層50を形成し、さらに第2シールド層50および第1絶縁層1上に、接着剤層2dを介して第2シールド層50と接着していると共に、その周縁部601が第1絶縁層1に固定されている固定絶縁層60を積層してもよい。第2シールド層50は、周縁部601が接着剤層2dを介して第1絶縁層1に固定されている固定絶縁層60により、第1絶縁層に密接されているので、第2シールド層50と第1絶縁層1との間の接着剤層を省くことができる。また、このフレキシブルプリント配線板A1は、導体回路3の上下両側にシールド層5,50が設けられているので、特に良好なシールド性能を有する。」(【0014】) 3.発明の対比 請求項1に係る発明(以下「前者」という。)と上記引用例1に記載された発明(以下「後者」という。)を対比すると、後者の「信号層21」は、前者の「内層」に相当し、後者の「フレキシブルプリント基板」は、「フレキシブルボード」に相当する。 また、前者の「第1及び第2のグランド層」と後者の「シールド層23a,23b」は、いずれも不要輻射に対するシールド性能を有する点で共通すると認められることから、これらを「第1及び第2のシールド層」と称することにする。 更に、後者の信号層21に形成された「複数の信号線」(上記(イ)参照)は、前者の「複数のライン」に相当するし、前者の「GNDライン」も「導体部分」といえることは明らかである。 そうすると、両者は、 「複数のラインを配線する内層の上下が、スルーホールを有した第1及び第2のシールド層で覆われているフレキシブルボードであって、 前記内層には、 スルーホールを有するとともに、前記複数のラインの両側に形成された導体部分と、 前記複数のラインの間及び前記複数のラインと前記導体部分との間に付設された絶縁層とが設けられ、 前記内層は、前記第1及び第2のシールド層で挟持されるとともに、前記第1及び第2のシールド層及び前記導体部分が前記スルーホールを介して接続されるフレキシブルボード。」 で一致し、以下の3点で相違する。 <相違点1> ラインの両側に形成された導体部分が、前者は、「GNDライン」であるのに対して、後者には、それ以上の言及がなく、シールド層が、前者は、「グランド層」であるのに対して、後者には、それ以上の言及がない点、 <相違点2> 前者が、「複数」のスルーホールによって、前記第1及び第2のグランド層及びGNDラインによる共通のGNDの確保を増大させるのに対して、後者には、そのような言及がない点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 <相違点1>について 引用例2の上記(ウ)及び(エ)の摘示から明らかなように、シールド層をアース層(グランド層)で形成したり、シールド層に接続される導体部分をアース線(GNDライン)とすることは、通常採用されている慣用手段であり、上記引用例1記載のシールド層や当該シールド層に接続される導体部分についても、そのような慣用手段を採用することは、格別困難なことではない。 <相違点2>について 上記引用例1に明示されていないが、シールド層等、面積の広い部分同士を接続するためには、通常複数のスルーホールが設けられるものであるし、また、不要輻射のシールド作用を企図して、多数のスルーホールを設けることは、周知の技術事項(特開平7-240595号公報参照)であるから、上記引用例1記載のスルーホールを複数設けて、請求項1に係る発明と同様のものとすることは、当業者が容易に想到しうる設計的事項である。 さらに、請求項1に係る発明の効果は、上記引用例1乃至2に記載されたものから、当業者が予測できる程度のものであって、格別のものではない。 請求項2に係る発明については、上記引用例1乃至引用例2に記載されたものから構成されるフレキシブルボードを携帯電話に適用する点に、困難性があるものとは認められず、当業者が容易に想到しえたものである。 5.むすび したがって、本願の請求項1乃至2に係る発明は、その出願前日本国内において頒布された上記引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-09-25 |
結審通知日 | 2002-10-01 |
審決日 | 2002-10-21 |
出願番号 | 特願平10-347972 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H05K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 博之 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
藤井 昇 鈴木 法明 |
発明の名称 | フレキシブルボード並びに携帯電話機 |
代理人 | 京本 直樹 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 河合 信明 |