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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B23K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B23K
管理番号 1068847
異議申立番号 異議2001-73463  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-08-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-25 
確定日 2002-09-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3179758号「摩擦接合方法および構造体」の請求項1ないし21に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3179758号の請求項1、3、4、5、6、8に係る特許を取り消す。 同請求項2、7、9に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第3179758号の請求項1〜21に係る発明についての出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成9年2月20日(優先日:平成8年3月19日)の出願である特願平9-35918号の一部を新たな特許出願としたものであって、平成13年4月13日にその特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人三宅康雄より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年6月17日に訂正請求がなされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の旧請求項の1乃至7、9、10及び12乃至14を削除し、残りの旧請求項8、11、15乃至21を新請求項1乃至9に訂正する。
その際、旧請求項11の「一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材および前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から他方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること」、旧請求項16の「前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記突片にまで達していること」を、それぞれ、「一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部を前記第1の部材の外側から支え、また前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から前記一方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること」、「前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記第3の板から前記突き合わせ部の第2の部材に向けて実質的に平行に突出した突片にまで達していること」に訂正する。
また、旧請求項16、17、18の「請求項15において」を、「請求項3において」に訂正する。
(2)訂正事項b
明細書の項目【0008】の第3行目の「突き合わせ、」を「突き合わせており、前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有しており、前記第3の板と前記第1の板との接続部、および前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、それぞれの前記凹部は、前記第1の部材の厚さ方向の外側および前記第1の部材の前記一端側に向けて開放しており、前記凹部の前記第1の板の端部、前記第2の板の端部のそれぞれに前記第2の部材の端部を突き合わせてあり、」に訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落【0008】の第4〜5行目の「前記外側」を「第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側」に訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落【0008】の第5行目の「回転工具」を「前記回転工具」に訂正する。
(5)訂正事項e
明細書の段落【0009】の第2〜4行目の「回転工具の先端には第1の部材の凹部を構成する部分があるので、該部は摩擦接合の際の回転体を挿入する力を支える部材となる。このため、」を「突き合わせた部分を支えて第3の板を支え部材にして摩擦接合しているので、」に訂正する。
(6)訂正事項f
明細書の段落【0048】の第2〜4行目の「接合すべき部分の一方の部材を支えとして接合するようにしているので、」を「突き合わせた部分を支えて第3の板を支え部材にして摩擦接合しているので、」に訂正する。

2 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
訂正事項aの、特許請求の範囲の旧請求項の1乃至7、9、10及び12乃至14を削除する点は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項aの、「一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材および前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から他方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること」を「一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部を前記第1の部材の外側から支え、また前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から前記一方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること」に訂正する点は、旧請求項11にさらに技術的な限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、この技術的な限定は、願書に添付された明細書又は図面の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項aの、「前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記突片にまで達していること」を「前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記第3の板から前記突き合わせ部の第2の部材に向けて実質的に平行に突出した突片にまで達していること」に訂正する点は、旧請求項16にさらに技術的な限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、この技術的な限定は、願書に添付された明細書の項目【0016】〜【0021】に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項aの、「請求項15において」を「請求項3において」と訂正する点は、旧請求項1乃至7、9、10及び12乃至14を削除し、旧請求項15が新請求項3に訂正されたことに伴い、請求項の引用形式を訂正したものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項b〜fについて
訂正事項b〜fは、特許請求の範囲を訂正したことに伴い、発明の詳細な説明の記載と特許請求の範囲の記載との整合をとるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。そして、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する同法第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3 特許異議の申立ての理由及び当審で通知した取消しの理由について
1 異議申立の理由及び当審で通知した取消しの理由の概要
特許異議申立人は、訂正前の請求項1〜21に係る発明は、本件出願の出願日前に日本国内又は外国で頒布された刊行物である甲第1号証(「軽金属車両委員会報告書 昭和53年〜58年」昭和59年7月15日発行、表紙頁、第194-195頁、奥付頁、裏頁)、甲第2号証(「27th ISATA」1994年、表紙頁、第422-431頁)、甲第3号証(「Svetsaren Vol.50 No.3 1995」、表紙頁、目次頁、第5-6頁)、甲第4号証(「Welding&Metal Fabrication」、1995年1月号、表紙頁、目次頁、第61-64頁、奥付頁)、甲第5号証(「VERK STADERNA」1996年2月、表紙頁、第3頁、第5頁、第32-34頁)、甲第6号証(「溶接施工管理 安全衛生」1978年5月10日発行、表紙頁、目次頁、第26-27頁、奥付頁)、甲第7号証(特表平7-505090号公報)、甲第8号証(特開平6-106661号公報)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許をされたものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当するので、取り消されるべきものである旨主張している。
また、特許異議申立人は、訂正前の請求項16の「前記突片」という記載は、旧請求項16が従属する旧請求項15に「突片」という記載がなく、その意味するところが不明なので、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許をされたものであり、その特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
当審で通知した取消しの理由の概要は、特許異議申立人の上記主張と同様のものに加え、訂正前の請求項1〜10、14〜18、20に係る発明は、上記甲第1〜5、7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許をされたものであり、その特許は、同法第113条第2号に該当するので、取り消されるべきものであるというものである。

2 本件発明1〜9
本件の請求項1〜9に係る発明(以下「本件発明1〜9」という。)は、訂正明細書及び願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
第1の部材の一端の2つの角部の凹部に第2の部材の一端をそれぞれ突き合わせており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有しており、
前記第3の板と前記第1の板との接続部、および前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、
それぞれの前記凹部は、前記第1の部材の厚さ方向の外側および前記第1の部材の前記一端側に向けて開放しており、
前記凹部の前記第1の板の端部、前記第2の板の端部のそれぞれに前記第2の部材の端部を突き合わせてあり、
一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材および前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から他方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること、
を特徴とする摩擦接合方法。
【請求項2】
第1の部材の角部の凹部に第2の部材の第1の板の端部を突き合わせると共に、前記第2の部材の角部の凹部に前記第1の部材の第1の板の端部を突き合わせ、
前記第1の部材および前記第2の部材のそれぞれは、前記第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第2の板の端部において該第2の板に実質的に直交して前記第1の板の途中に接続した第3の板と、を有しており、
それぞれの前記部材の前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、
前記第1の部材の前記凹部および前記第2の部材の前記凹部のそれぞれは、それぞれの部材の厚さ方向の外側および前記第2の板の前記端部側に向けて開放しており、
一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部を前記第1の部材の外側から支え、また前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から前記一方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること、
を特徴とする摩擦接合方法。
【請求項3】
第1の部材の端部と第2の部材の端部との突き合わせ部を摩擦接合しており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続する第3の板と、を有しており、
前記第1の板と前記第3の板との接続部に前記第2の部材の端部が前記摩擦接合されており、
前記第3の板は、前記第1の板に実質的に直交しており、
前記摩擦接合のビードの幅の中心は、前記第3の板の厚さの範囲内にあること、
を特徴とする構造体。
【請求項4】
請求項3において、前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記第3の板から前記突き合わせ部の第2の部材に向けて実質的に平行に突出した突片にまで達していること、を特徴とする構造体。
【請求項5】
請求項3において、前記ビードは前記第3の板の厚さの中心の延長線上にあること、を特徴とする構造体。
【請求項6】
請求項3において、前記ビードの幅は前記第3の板の厚さよりも大きいこと、を特徴とする構造体。
【請求項7】
第1の部材および第2の部材のそれぞれは、第1の板とこれに実質的に平行な第2の板と、前記第2の板の端部において該第2の板に実質的に直交して前記第1の板の途中に接続した第3の板と、を有しており、前記第1の板の端部は前記第2の板の端部よりも前記部材の端部側に突出しており、
前記第1の部材の前記第1の板の端部を前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記第2の部材の前記第1の板の端部を前記第1の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記接合ビードのそれぞれは摩擦接合によるものであること、
を特徴とする構造体。
【請求項8】
第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、両者を接続する第3の板と、を有する第1の部材と、
第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有する第2の部材と、を有しており、
前記第2の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部は、前記第1の部材の前記第1の板と摩擦接合によって接合されており、
前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部は、前記第1の部材の前記第2の板と摩擦接合によって接合されており、
それぞれの前記摩擦接合のビードの幅の中心は、前記第3の板の厚さの範囲内にあること、
を特徴とする車両構体。
【請求項9】
第1の部材および第2の部材のそれぞれは、第1の板とこれに実質的に平行な第2の板と、前記第2の板の端部において該第2の板に実質的に直交して前記第1の板の途中に接続した第3の板と、を有しており、前記第1の板の端部は前記第2の板の端部よりも前記部材の端部側に突出しており、
前記第1の部材の前記第1の板の端部を前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記第2の部材の前記第1の板の端部を前記第1の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記接合ビードのそれぞれは摩擦接合によるものであること、
を特徴とする車両構体。」

3 甲第1〜8号証記載の発明乃至技術的事項
(1)甲第1号証記載の発明
甲第1号証の第194頁右欄の「5.7 構体の製作」の欄第1〜5行の「台わくは、床板と称する2種類の大型中空形板材を計4枚ならべ、同じく中空形板材の側はりと車体長手方向に自動溶接機で連続溶接する。まくらはり車端部の中はり、横はりを床板の下面に取りつけ、連結器を取りつける部材であるSS41材も従来と同様にリベットで取りつける。」という記載、第195頁の「写真3 主要形材」の、床板と側はりの取り付け構造に関する記載、及び、表紙の左下の図、タイトルからすると、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認める。
以下の構造からなる床板と側はりを溶接により以下のとおりの接合部となるように製造した車両構体、及び、車両構体の構成部材である以下の構造からなる床板と側はりを溶接により以下のとおりの接合部となるように溶接により接合する方法。
床板:水平な第1の板と、第1の板と実質的に平行な第2の板と、第1の板の端部と第2の板の端部とを接続する板であって、第1、2の板と実質的に直交する第3の板から構成され、かつ、第1の板の端部と第3の板の端部の接続部、第2の板の端部と第3の板の端部の接続部が段部になっており、該段部から側はり方向に平行に突片が突出している床板。
側はり:水平な第1の板と、第1の板と実質的に平行な第2の板と、第1の板の途中と第2の板の途中とを接続する板であって、第1、第2の板と実質的に直交する第3の板から構成されている側はり。
接合部:床板の2つの段部に、側はりの第1の板の端部、第2の板の端部が突き合わされて接合されていること。
(なお、「第1」、「第2」との符号は、本件発明1〜9との対比のために付したものである。)
(2)甲第2号証記載の技術的事項
甲第2号証の第423頁「1.1NTRODUCTION」の欄の第1〜第2行には、摩擦接合は、GMA(MIG)やGTA(TIG)の代用として提供される旨記載されている。
また、第425頁の図2(f)には、2つの接合部材の端部を摩擦接合により突き合わせると共に、突き合わせ部の下方に垂直状に部材を配置したものが記載されていると認められ、さらに、接合範囲が、上側の2つの部材の厚さを超えて下側の部材にまで及んでいること、下側の垂直状部材の厚さよりも、摩擦接合のビードが大きいことが記載されていると認められる。
(3)甲第3号証記載の技術的事項
甲第3号証の第5頁中欄第7〜第9行には、摩擦接合の際に、摩擦接合用のツールは一定の周速度で回転し、大きな力で材料に押し付けられる旨記載されている。
(4)甲第4号証記載の技術的事項
甲第4号証には、以下のとおり記載されている。
ア 第13頁左欄下部の「摩擦撹拌接合の理論」
「突き合わせ部又は重ね合わせ部について摩擦撹拌接合するには、図2aに示すように接合部分をパッキングプレート上に載置し、これらの各部材の接合面が切り離されないように固定する。図2bに示すように、特殊な外形の突出ピンを備え、かつ肩部を有する円筒形の工具を、回転させ、接合線にゆっくりと挿入する。」
イ 第16頁右欄の「主要な潜在的利用分野」
「表1に幾つかのそのような産業及び製品の利用分野が紹介されている。」
また、第13頁のFig2には、「摩擦撹拌接合の工程」の図が記載され、第14頁のFig3には「6.4mm厚さの6000シリーズアルミニウム合金における摩擦撹拌接合部の横断面」の図が記載されている。
さらに、第14頁の表1(摩擦撹拌接合の利用が見受けられる業界)には、業界として「Railway rolling stock(鉄道車両)」、利用例として「Wagon and coach chassis and coachwork for high speed trains(高速列車の貨車、客車の車体)」が記載されている。
(5)甲第5号証記載の技術的事項
甲第5号証の第34頁上部の左側および真中の各図には、2つの部材からなる接合部材をベッドに載せた状態で、上方から回転工具により摩擦接合することが記載されている。
また、第34頁上部の右側の図には、水平方向に置かれた第1の部材の端部と水平方向に置かれた第2の部材の端部との突き合わせ部を摩擦接合した構造体が記載され、該第1、第2の部材は、水平方向の板に実質的に直交している垂直板を有しており、水平方向の板と垂直板との接続部に前記第2の部材の端部が摩擦接合されていることが記載されていると認められる。
(6)甲第6号証記載の技術的事項
甲第6号証の第26頁下から1行〜第27頁第4行には、溶接施工に際しての備品として、「溶接中の変形を防止するための拘束枠の治具、溶接を常に下向きで施工するためのボジショナ(写真2.2)、鋼管を回転しながら溶接を下向きでできるターニングローラ(写真2.3)など溶接物に応じたジグが用いられる。」と記載されている。
(7)甲第7号証記載の技術的事項
甲第7号証の第6頁右上欄第13行〜第18行には、「図14aにはプレート1A、1Bの対向する側部で提供される手段18に類似した非消耗の手段20、21の組で示されている。手段20、21は互いの方向に押しつけられ、プレートが互いに位置に締め付けられるように移動方向に配置され、プレートの外側に面する表面と非消耗手段の間の内側の面で過度の熱はあまり生じない。」と記載されている。
(8)甲第8号証記載の技術的事項
甲第8号証の項目【0023】には、「図10は、突き出し部5を片面にのみ設け、これを相手方の中空部4の表材1に重ねることにより、すみ肉継手を構成したものである。」と記載されている。

4 本件発明と甲第1〜8号証記載の発明との対比及び当審の判断
(1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証記載の発明を対比するに、甲第1号証記載の発明における「床板」、「側はり」は、本件発明1における「第1の部材」、「第2の部材」に相当し、甲第1号証記載の発明における「段部」は、床板の厚さ方向の外側および側はり側に向けて開放していることから、本件発明1における「凹部」に相当する。
したがって、両者は以下の点で一致する。
第1の部材の一端の2つの角部の凹部に第2の部材の一端をそれぞれ突き合わせており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有しており、
前記第3の板と前記第1の板との接続部、および前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、
それぞれの前記凹部は、前記第1の部材の厚さ方向の外側および前記第1の部材の前記一端側に向けて開放しており、
前記凹部の前記第1の板の端部、前記第2の板の端部のそれぞれに前記第2の部材の端部を突き合わせて、第1の部材と第2の部材を接合する方法。
そして、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明では、一方の突き合わせた部分の第1の部材および第2の部材を支えた状態において、第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、外側から他方の前記突き合わせた部分に前記工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合しているのに対し、甲第1号証記載の発明は、溶接されている点。
そこで、上記相違点1について検討する。
甲第4号証に本件発明1〜9の対象と同様の車両構体の製造に回転工具による摩擦接合が適用可能なことが記載されていることから、甲第1号証記載の発明に、接合方法として、回転工具による摩擦接合方法を適用することは、当業者であれば容易に想到したことである。また、その際に、甲第3号証に記載されているように回転工具による摩擦接合では、回転工具が大きな力で材料に押し付けられることから、回転工具からの大きな力を支えられるようにすることは、当然のことであり、付き合わせた部分を支えた状態で、第3の板の延長線上に回転工具を位置させ、付き合わせた部分に挿入させることも、当業者であれば容易に想到したことである。
そして、それによる効果も、甲第1号証記載の発明、甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。
(2)本件発明3について
本件発明3と甲第1号証記載の発明を対比するに、甲第1号証記載の発明における「床板」、「側はり」は、本件発明3における「第1の部材」、「第2の部材」に相当する。
また、甲第1号証記載の発明における「車両構体」は、「構造体」の一種であるということができる。
したがって、両者は以下の点で一致する。
第1の部材の端部と第2の部材の端部との突き合わせ部を接合しており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続する第3の板と、を有しており、前記第1の板と前記第3の板との接続部に前記第2の部材の端部が接合されており、
前記第3の板は、前記第1の板に実質的に直交している構造体。
そして、以下の点で相違する。
相違点2:本件発明3では、部材の接合が摩擦接合で行われ、ビードの幅の中心が第3の板の厚さの範囲内であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、具体的な溶接の態様が明らかでない点。
そこで、上記相違点2について検討する。
甲第4号証に本件発明1〜9の対象と同様の車両構体の製造に回転工具による摩擦接合が適用可能なことが記載されていることから、甲第1号証記載の発明に、接合方法として、回転工具による摩擦接合方法を適用することは、当業者であれば容易に想到したことである。そして、その際に、甲第3号証に記載されているように回転工具による摩擦接合では、回転工具が大きな力で材料に押し付けられることから、回転工具からかかる大きな力を支えられるように、第3の板の厚さの範囲内に接合のビードの幅の中心があるようにすることは、当業者であれば容易に想到したことである。
そして、それによる効果も、甲第1号証記載の発明、甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。
(3)本件発明4について
本件発明4と甲第1号証記載の発明を対比するに、甲第1号証記載の発明における「段部」から突出する「突片」が、本件発明4における「第3の板から前記突き合わせ部の第2の部材に向けて実質的に平行に突出した突片」に相当することから、両者は、上記相違点2に加え、以下の点で相違する。(一致点は、本件発明3と同じ。)
相違点3:本件発明4では、接合のビードが突片にまで達しているのに対し、甲第1号証記載の発明では、具体的な溶接の態様が明らかでない点。
そこで、上記相違点3について検討する。
接合のビードが部材のより深いところまで達すれば、接合強度が高くなることは、当業者に自明の事項であることから、甲第1号証記載の発明において、接合方法として摩擦接合を適用した際に、ビードが突片にまで達するようにすることは、当業者であれば容易に想到したことである。
そして、それによる効果も、甲第1号証記載の発明、甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。
(4)本件発明5について
本件発明5と甲第1号証記載の発明を対比するに、両者は、上記相違点2に加え、以下の点で相違する。(一致点は、本件発明3と同じ。)
相違点4:本件発明5では、接合のビードが第3の板の厚さの中心の延長線上にあるのに対し、甲第1号証記載の発明では、溶接の位置が特定されていない点。
そこで、上記相違点4について検討する。
甲第1号証記載の発明において、接合方法として摩擦接合を適用した際に、摩擦接合による大きな力を支えるために、摩擦接合工具が第3の板の厚さの中心の延長線上にくるようにする、即ち、ビードが第3の板の厚さの中心の延長線上にあるようにすることは、当業者であれば容易に想到したことである。
そして、それによる効果も、甲第1号証記載の発明、甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。
(5)本件発明6について
本件発明6と甲第1号証記載の発明を対比するに、両者は、上記相違点2に加え、以下の点で相違する。(一致点は、本件発明3と同じ。)
相違点5:本件発明6では、接合のビードの幅が第3の板の厚さよりも大きいのに対し、甲第1号証記載の発明では、具体的な溶接の態様が明らかでない点。
そこで、上記相違点5について検討する。
接合ビードの幅は接合強度等に応じて適宜決められるものであるから、甲第1号証記載の発明において、接合方法として摩擦接合を適用した際に、ビードの幅を第3の板の厚さより大きくすることは、当業者であれば容易に想到したことである。
そして、それによる効果も、甲第1号証記載の発明、甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。
(6)本件発明8について
本件発明8と甲第1号証記載の発明を対比するに、甲第1号証記載の発明における「床板」、「側はり」は、本件発明8における「第1の部材」、「第2の部材」に相当する。
したがって、両者は以下の点で一致する。
第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、両者を接続する第3の板と、を有する第1の部材と、
第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有する第2の部材と、を有しており、
前記第2の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部は、前記第1の部材の前記第1の板と接合されており、
前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部は、前記第1の部材の前記第2の板と接合されている車両構体。
そして、以下の点で相違する。
相違点6:本件発明8では、部材の接合が摩擦接合で行われ、接合のビードの幅の中心が第3の板の厚さの範囲内であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、具体的な溶接の態様が明らかでない点。
そこで、上記相違点6について検討する。
甲第4号証に本件発明1〜9の対象と同様の車両構体の製造に回転工具による摩擦接合が適用可能なことが記載されていることから、甲第1号証記載の発明に、接合方法として、回転工具による摩擦接合方法を適用することは、当業者であれば容易に想到したことである。また、その際に、甲第3号証に記載されているように回転工具による摩擦接合では、回転工具が大きな力で材料に押し付けられることから、回転工具からの大きな力を支えられるようにすることは、当然のことであり、ビードの幅の中心を第3の板の厚さの範囲内にすることも、当業者であれば容易に想到したことである。
そして、それによる効果も、甲第1号証記載の発明、甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。
(7)本件発明2について
本件発明2は、一方の板が他方の板よりも中空形材の端部側に突出した2つの中空形材を勝手違いに配置して、摩擦接合を行う方法であって、2つの中空形材を突合せる凹部が、突出していない方の板と接続板との接続部にある部材を摩擦接合する方法に関するものであるが、甲第1〜8号証の何れにも、上記形状の中空形材を2つ勝手違いに配置して摩擦接合を行うことは記載も示唆もされていない。
甲第8号証に記載のものは、本件発明2と類似の形状の部材を勝手違いに配置しているが、隅肉溶接により接合するものであり、また、本件発明2のように2つの中空形材を突合せる凹部が突出していない方の板と接続板との接続部にあるものを接合するものでもない。
したがって、本件発明2が、甲第1〜8号証記載の発明乃至技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(8)本件発明7について
本件発明7は、一方の板が他方の板よりも中空形材の端部側に突出した2つの中空形材を勝手違いに配置して、摩擦接合をにより接合した構造体であって、2つの中空形材を突合せる凹部が、突出していない方の板と接続板との接続部にある構造体に関するものであるが、甲第1〜8号証の何れにも、上記形状の中空形材を2つ勝手違いに配置して摩擦接合を行うことは記載も示唆もされていない。
甲第8号証に記載のものは、本件発明7と類似の形状の部材を勝手違いに配置しているが、隅肉溶接により接合したものであり、また、本件発明7のように2つの中空形材を突合せる凹部が、突出していない方の板と接続板との接続部にあるものを接合したものでもない。
したがって、本件発明7が、甲第1〜8号証記載の発明乃至技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(9)本件発明9について
本件発明9は、一方の板が他方の板よりも中空形材の端部側に突出した2つの中空形材を勝手違いに配置して、摩擦接合により接合した車両構体であって、2つの中空形材を突合せる凹部が、突出していない方の板と接続板との接続部にある車両構体に関するものであるが、甲第1〜8号証の何れにも、上記形状の中空形材を2つ勝手違いに配置して摩擦接合を行うことは記載も示唆もされていない。
甲第8号証に記載のものは、本件発明9と類似の形状の部材を勝手違いに配置しているが、隅肉溶接により接合したものであり、また、本件発明9のように2つの中空形材を突合せる凹部が、突出していない方の板と接続板との接続部にあるものを接合したものでもない。
したがって、本件発明9が、甲第1〜8号証記載の発明乃至技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

5 特許法第36条第6項第2号に規定する要件の違反について
訂正前の請求項16に対応する請求項4において、「突片」について、他の請求項の記載を引用することなく明確に記載しており、本件明細書は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に違反したものではない。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1、3〜6、8は、甲第1号証記載の発明及び甲第3、4号証記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1、3〜6、8についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明2、7、9についての特許については、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、取り消すことができず、また、他に取消しの理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
摩擦接合方法および構造体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の一端の2つの角部の凹部に第2の部材の一端をそれぞれ突き合わせており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有しており、
前記第3の板と前記第1の板との接続部、および前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、
それぞれの前記凹部は、前記第1の部材の厚さ方向の外側および前記第1の部材の前記一端側に向けて開放しており、
前記凹部の前記第1の板の端部、前記第2の板の端部のそれぞれに前記第2の部材の端部を突き合わせてあり、
一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材および前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から他方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること、
を特徴とする摩擦接合方法。
【請求項2】
第1の部材の角部の凹部に第2の部材の第1の板の端部を突き合わせると共に、前記第2の部材の角部の凹部に前記第1の部材の第1の板の端部を突き合わせ、
前記第1の部材および前記第2の部材のそれぞれは、前記第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第2の板の端部において該第2の板に実質的に直交して前記第1の板の途中に接続した第3の板と、を有しており、
それぞれの前記部材の前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、
前記第1の部材の前記凹部および前記第2の部材の前記凹部のそれぞれは、それぞれの部材の厚さ方向の外側および前記第2の板の前記端部側に向けて開放しており、
一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部を前記第1の部材の外側から支え、また前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から前記一方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること、
を特徴とする摩擦接合方法。
【請求項3】
第1の部材の端部と第2の部材の端部との突き合わせ部を摩擦接合しており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続する第3の板と、を有しており、
前記第1の板と前記第3の板との接続部に前記第2の部材の端部が前記摩擦接合されており、
前記第3の板は、前記第1の板に実質的に直交しており、
前記摩擦接合のビードの幅の中心は、前記第3の板の厚さの範囲内にあること、
を特徴とする構造体。
【請求項4】
請求項3において、前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記第3の板から前記突き合わせ部の第2の部材に向けて実質的に平行に突出した突片にまで達していること、を特徴とする構造体。
【請求項5】
請求項3において、前記ビードは前記第3の板の厚さの中心の延長線上にあること、を特徴とする構造体。
【請求項6】
請求項3において、前記ビードの幅は前記第3の板の厚さよりも大きいこと、を特徴とする構造体。
【請求項7】
第1の部材および第2の部材のそれぞれは、第1の板とこれに実質的に平行な第2の板と、前記第2の板の端部において該第2の板に実質的に直交して前記第1の板の途中に接続した第3の板と、を有しており、前記第1の板の端部は前記第2の板の端部よりも前記部材の端部側に突出しており、
前記第1の部材の前記第1の板の端部を前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記第2の部材の前記第1の板の端部を前記第1の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記接合ビードのそれぞれは摩擦接合によるものであること、
を特徴とする構造体。
【請求項8】
第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、両者を接続する第3の板と、を有する第1の部材と、
第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有する第2の部材と、を有しており、
前記第2の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部は、前記第1の部材の前記第1の板と摩擦接合によって接合されており、
前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部は、前記第1の部材の前記第2の板と摩擦接合によって接合されており、
それぞれの前記摩擦接合のビードの幅の中心は、前記第3の板の厚さの範囲内にあること、
を特徴とする車両構体。
【請求項9】
第1の部材および第2の部材のそれぞれは、第1の板とこれに実質的に平行な第2の板と、前記第2の板の端部において該第2の板に実質的に直交して前記第1の板の途中に接続した第3の板と、を有しており、前記第1の板の端部は前記第2の板の端部よりも前記部材の端部側に突出しており、
前記第1の部材の前記第1の板の端部を前記第2の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記第2の部材の前記第1の板の端部を前記第1の部材の前記第2の板と前記第3の板との接続部に接合ビードを介して接合しており、
前記接合ビードのそれぞれは摩擦接合によるものであること、
を特徴とする車両構体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、摩擦接合方法に関し、例えば、アルミニウム合金製の鉄道車両や建築物等に使用される部材の接合に好適である。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の構体の二面構造体(パネル)は、中空状の型材を用いたものは特開平2-246863号公報に示され、ハニカムパネルのような積層パネルを用いたものは特開平6-106661号公報に示されている。
【0003】
摩擦接合方法は、接合部に挿入した丸棒を回転させて発熱、軟化させ、接合するものである。この接合は突合せ部、重ね部に適用される。これはWO 93/10935(EP 0615480B1、特表平7-505090号公報に同一)、Welding & Metal Fabrication,January 1995 13頁から16頁に示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
摩擦接合方法は、接合施工中、回転工具(丸棒)の直下の部材が表面へ排出される反作用のため、接合部に下向きの力が働く。このため、本接合法を二面構造体(パネル)の接合に適用する場合、この下向きの力により接合部の継ぎ手部材が下方向に押し流され、変形を生じ、良好な接合を施工することができなかった。
【0005】
二面構造体(パネル)は、例えば、アルミニウム合金の押し出し型材の中空型材や、ハニカムパネルがある。このパネル同士の接合として、従来MIG溶接やTIG溶接が行われている。この継ぎ手形状に摩擦接合を適用すると、摩擦接合の際の押し下げ力によって、継ぎ手が下方に曲がったり、部材が下方に流されたりする。
【0006】
発明者は種々な実験により上記の現象を発見したものである。
【0007】
本発明の目的は、中空形材等の接合を摩擦接合で行う場合において、継ぎ手部の変形を抑え、良好な接合が得られるようにすることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、
第1の部材の一端の2つの角部の凹部に第2の部材の一端をそれぞれ突き合わせており、
前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有しており、
前記第3の板と前記第1の板との接続部、および前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、
それぞれの前記凹部は、前記第1の部材の厚さ方向の外側および前記第1の部材の前記一端側に向けて開放しており、
前記凹部の前記第1の板の端部、前記第2の板の端部のそれぞれに前記第2の部材の端部を突き合わせてあり、
一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材および前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から他方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること、
によって達成できる。
【0009】
これによれば、突き合わせた部分を支えて第3の板を支え部材にして摩擦接合しているので、突き合わせ部の第1の部材、第2の部材の変形を防止できるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は図3〜図10、図12、図13の実施例を主体とするものである。本発明はその他の図面の例等も用いて説明する。図1は、パネルとしての中空型材31,32の継ぎ手部の形状が突合せタイプの場合である。中空型材31,32の幅方向の端部には垂直の板36,36がある。接合前においては、回転工具50の直下に垂直な板36,36があり、板36,36同士は向い合っており、接触している。離れている場合は両者の隙間は小さい。隙間は1mm程度である。板36,36の間の延長線上に凸部52の中心が位置する。板36,36は前記下向きの力を支えるだけの剛性を有している。板36は2つの板33、34に直交している。中空型材31,32はアルミニウム合金の押出し型材である。中空型材31の上下の面は中空型材32の上下の面に一致している。つまり、中空型材31、32の厚さは同一である。以下の後述の実施例も同様である。摩擦接合時において、回転工具50の大径部51と小径部の凸部52との境53が中空型材31,32の上面に位置している。35は2枚の板36、36を接続するものであって、トラス状に複数配置している。中空型材31、32の端部の形状は左右対称である。中空型材31、32は架台(図示せず)に載せられ、移動しないように固定されている。板36、36の下方にも架台がある。
【0011】
摩擦接合は回転工具50を回転させながら、凸部52を中空型材31、32の接合部に挿入し、接合部に沿って移動させて行う。凸部52の回転中心は2つの板36、36の間にある。
【0012】
図2は摩擦接合後の状態である。45は接合後の接合ビードの形状を示したものである。板36,36の間の延長線上に接合ビード45の幅の中心が位置する。板36、36の厚さの延長線の範囲にビード45がある。接合ビード45の深さは接合部に挿入した回転工具50の下端の凸部52の高さによって定まる。
【0013】
これによれば、板33、34に垂直な板36,36が摩擦接合時の垂直力を支えるので、接合部が曲がったりせず、図2に示すように良好な接続が得られるものである。板36はできるだけ板33、34に直交させる。
【0014】
なお、軽量化のために、板36に穴をあけていても良い。後述の実施例でも同様である。
【0015】
下面側の接合は中空型材の上下面を反転させて行なう。
【0016】
図3の実施例は、一方の中空型材31の端部には板36があり、他方の中空型材32の端部には板36は無い。中空型材31の板36の垂直方向の角部は中空型材32の端部の突片38,38の先端を載せることができるように、凹んでいる。この凹部は中空型材31の厚さ方向およびこれに直交する方向(中空型材32側)に開放している。凹部に突片38を載せた(重ねた)とき、図では両者は接触しているが、実際は隙間がある。また、両者の先端同士(突片38、38と角部33b、34bとの間)にも隙間がある。2つの中空型材31,32の表面側の突合せ部、すなわち、回転工具50の中心の直下に前記突合せ部および板36がある。板36の厚さの中心の延長線上に凸部52の回転中心が位置する。つまり、板36の厚さの中心の延長線上に板33(34)と板33(34)の接合部が位置する。板33、34から凹部に至る角部33b、34bは板36の厚さの中心の延長線上にある。または、角部33b、34bの位置は突片38との間隔を考慮して、図3において、板36の厚さの中心の延長線上よりもごくわずか左にある。板36は前記垂直力を支える剛性を有している。突片38の先端と中空型材31との水平方向の間隔は図1の場合と同様である。回転工具50の凸部52の高さは突片38の厚さ程度である。一般に、凸部38よりも下方まで塑性流動状態になり、摩擦接合される。同様に、凸部52の径よりも大きく塑性流動状態になる。突片38の下面と板36との接触部の下方まで摩擦接合されるようにするのが望ましい。
【0017】
図4は接合後の状態を示す。板36の厚さの中心の延長線上に接合ビード45の幅の中心が位置する。
【0018】
前記垂直力を支えるために、板36の厚さの中心部の延長線上に回転工具50の回転中心があることが望ましい。左右の中空型材31、32の接合量を同一にするために、前記延長線上に角部33b、34bはあることが望ましい。板36の厚さの延長線の範囲内に回転工具50の凸部52があることが望ましいが、板36の厚さは前記垂直力、凸部52の位置、板36の強度によって定まる。このため、凸部52の径よりも板36の厚さの方が小さい場合が考えられる。また、回転工具50の位置の誤差、角部33b、34bの位置の誤差を考えると、板36の厚さの延長線の範囲に角部33b、34bがあり、前記範囲に回転工具50の凸部52の少なくとも一部が位置することが望ましい。これによれば、板36は前記垂直力を少しなりとも受けることができ、継ぎ手の変形を実質的に防止し、良好な接合を得ることができる。ビード45を基準にすれば、ビード45は凸部52よりも若干大きいが、前記とほぼ同様なことがいえる。他の実施例においても同様である。
【0019】
この継ぎ手形状によれば、実験によれば、図1の場合に比べて、一般的に、突片38と中空型材31との水平方向の間隔が大きくても、接合部の凹みを少なくできるものである。このため、見栄えが良く、塗装する場合にもパテの量を少なくできるものである。これは、両者の隙間が突片38の厚さで終了しているためと考えられる。また、一般に軽量にできるものと考えられる。また、一方の中空型材を他方にはめこんでいるので、両者の高さ方向の位置合わせを容易にできるものである。
【0020】
中空型材31の端部の形状は左右対称であり、中空型材32の端部の形状は左右対称である。または、中空型材31の一端は図3のとおりであり、他端は図3の中空型材32の端部の形状である。
【0021】
図5の実施例は、中空型材31の凹部の角部33b、34bの直下には垂直な板36は実質的に無い。角部33b、34bの延長線上に板36の右端がある。この延長線上に回転工具50の回転中心がある。接合部において下方に位置する突片37の厚さを厚く、また、突片37の先端から板36への接続部の円弧を大きくして、中空型材31の端部を前記垂直力を支える剛性にしている。他方の中空型材32の突片38は図3の実施例と同様に、突片37の凹部に重なっている。他方の中空型材32には突片の近くに2つの板33、34を接続する板36を有する。これによって、凹部の角部の直下に垂直な板36が無くても、接合部に不良は発生しない。ただし、ビード45の範囲の垂直方向にはパネル31の板36がある。図6は接合後の状態を示す。
【0022】
図5の実施例において、中空型材32の板36を除くことも可能である。
【0023】
図7の実施例は、図5の実施例において、2つの中空型材31,32の接合部において、表面側に突出する凸部37a,38aを設けたものである。つまり、接合部の肉厚は厚くなっている。凸部37aと凸部38a高さは同一である。他の形状は図5と同様であるが、板36、および突片37の厚さは若干薄くなっている。
【0024】
これによれば、摩擦接合の前に、凸部37aと凸部38aとの間に隙間があっても、摩擦接合によって凸部37a、38aの体積が前記隙間を埋める。このため、見栄えがよく、パテの量を少なくできる。
【0025】
また、従来においては、下向きの力により下方に流失した部材41の体積分、接合ビードに空孔を生じていた。図7の継ぎ手形状によれば、接合時、回転工具50により凸部37a,38aが塑性流動して下方に押し流され、流失した部材41の体積分を補うことになるので、空孔の発生を防止し、良好な接合を行なうことができるものである。図8は接合後のビード45の形状を示したものである。なお、接合後、不要部があれば図のように切削する。
【0026】
前記凸部37a,38aは図1、図3、図5および後述の実施例においても適用できるものである。
【0027】
図9の実施例は一方側のみから上下二面の接合を行えるようにしたものである。中空型材31,32の下面側の端部は下面の板34,34と同一面から突片34aを他方の中空型材側に大きく突出している。突片34a,34aの先端は実質的に接触している。上面の板33,33の先端は下面の板34a,34aの先端よりも後方に位置している。上面の板33,33の先端部と下面の板34,34とは垂直な板36,36によって接続されている。板36、36は板34の途中に接続している。垂直な板36,36の上部に継ぎ手60が重なる凹部39,39がある。継ぎ手60を凹部39,39に載せたとき、継ぎ手60の上面の板33,33の上面と同一面になる。2つの板36,36の間隔は回転工具50を挿入できる程度の大きさであり、できるだけ小さい。板36と凹部39との関係は図3、図5、図7の実施例等で説明したとおりである。
【0028】
接合手順を説明すると、図9の(A)の状態で、回転工具50によって下面の板34a,34aの先端を接合する。この時、中空型材31,32は板34a,34aの接合部を含めてベッドに載っている。接合部のベッド(接合ビードの裏当て)の上面は平である。回転工具50の凸部52の高さは板34a,34aの厚さよりも小さい。これによれば、接合後の下面は平になる。このため、この下面側を鉄道車両の構体の外面や建築物等の構造物の外面(その表面に化粧板を配置しない面を言う。)に容易にすることができる。一般に、摩擦接合部の上面側(境53の部分)に凹凸が生じやすい。
【0029】
次に、(B)のように2つの中空型材31,32の間に継ぎ手60を載せる。
【0030】
継ぎ手60の縦断面はT状である。継ぎ手60の両端を凹部32,32に重ねたとき、垂直片61の下端は下面の板の接合ビードとの間に隙間を有する。垂直辺61はなくてもよい。
【0031】
次に、(C)のように、継ぎ手60と中空型材31との接続部を回転工具50で摩擦接合する。この回転工具50は(A)の接合工具と同一である必要はない。
【0032】
次に、(D)のように、継ぎ手60と中空型材32との接続部を回転工具50で摩擦接合する。
【0033】
これによれば、一方の面側から接合ができ、反転作業を不要にできるものである。反転作業を省略することで、反転および位置決め時間の省略、反転装置の省略、組立精度向上というメリットを得ることができる。
【0034】
図10の実施例は、中空型材56,57の上下の面を同時に摩擦接合するようにしたものである。上部の回転工具50の鉛直方向に下方を接合する回転工具50aがある。回転工具50aの凸部52は上方を向いている。2つの回転工具50,50aを対向させた状態で、同一速度で移動させ、摩擦接合を行なう。70,70はベッド(架台)である。工具50、と50aの回転中心は同一線上にある。この線上に、中空型材31,32の接合部がある。
【0035】
これによれば、一方の回転工具50の回転中心の延長線上に他方の回転工具50aの回転中心があるので、力がつりあい、接合部の変形が少なく、短時間に接合できる。中空型材31、32を反転させる必要が無いので、変形が少なく、作業時間を少なくできる。
【0036】
この実施例は他の実施例にも適用できる。
【0037】
上記各実施例はパネルとして中空型材を使用したものである。以下の例はハニカムパネルに適用した場合を示すものである。図11に示すように、ハニカムパネル80a,80bは、2つの面板81,82と、ハニカム状のセルを有する芯材83と、面板81,82の端面に沿って配置した縁材84とからなり、芯材83、縁材84は面板81,82にろう付けされ、一体になっている。面板81,82、芯材83、および縁材84はアルミニウム合金である。縁材84は押出し型材であり、その断面は4角形である。各片の肉厚は板81,82の厚さよりも厚い。接触する縁材84,84の垂直片の厚さは図1の場合と同様である。2つのハニカムパネル80a,80bの厚さは同一である。
【0038】
図11は図1の例に相当するものである。回転工具50の凸部52の高さは面板81,82の厚さよりも大きい。これによって、面板81、82、および縁材84、84が接合される。主として縁材84がパネル80a、80bに作用する荷重を伝達する。パネル80a、80bを製作後、両者を組み合わせ、摩擦接合を行う。
【0039】
図12の実施例は図3に相当するものである。ハニカムパネル80aの縁材84は断面がほぼ4角形であり、角部に凹部を有する。ハニカムパネル80bの縁材84はハニカムパネル80bの端部側が開放したチャンネル状であり、その先端が縁材80aの凹部に載る。
【0040】
図5に相当するハニカムパネルも同様に製作できるものである。
【0041】
図13は、図7に相当するものである。2つのハニカムパネル80a0,80bを組み合わせた後、面板81,81の上面に板86を載せ、板81,81に溶接で仮止めしたものである。板86は塑性流動によって流出する材料を補うものである。また、図12において、ハニカムパネル80aの縁材84の端部側の垂直片を除いたものである。前記垂直力は水平片の厚さおよびその周囲の形状で受けもつ。
【0042】
図14について説明する。図13までの例は2つの面(板)を有するパネルであったが、図14の例は実質的に1つの面(板94、94)を有するパネル91、92である。但し、パネル91、92の端部において、板94、94のある外側と、板のない内側の2カ所で、摩擦接合を行う。このため、内側の接合部には幅の小さな面(板93、93)がある。板93、93は板96、96で支えられている。このものでも板96は板93、94に実質的に直交しているといえる。板93、94は図7と同様の凸部37a、38aを設けている。板94、94には所定の間隔で複数の強度部材用のリブ(板)95、95を配置している。リブ95の断面はT状である。リブ95の頂面は接合部の板93の頂面と同一面である。両者の頂面には強度部材(例えば、柱)を溶接したり、物品の取り付け座になる。また、板93、93は工具50の高さ位置を管理するための座となる。工具50を備える移動体は板93、93に載って移動する。板93、94によって、このパネル91、92も2面構造体といえる。パネル91、92は押出し型材である。
【0043】
図14のパネル91とパネル92との接合部の形状は図1と同様に板96、96を向き合わせているが、図3、図5、図7、のように、重ねることができる。
【0044】
図15は鉄道車両の構体への適用を示す図である。構体は、側構体101、屋根構体102、床構体103、長手方向の端部の妻構体104から構成される。
【0045】
側構体101、屋根構体102は例えば、パネル31、32、80a、80b、91、92の長手方向を車両の長手方向にしている。側構体101と屋根構体102との接続、側構体101と床構体103との接続等はMIG溶接で行う。屋根構体102や側構体101は円弧状であることが多い。パネル91、92を側構体102に使用する場合、板96、リブ96がある面が車内側であり、前記強度部材は柱となる。
【0046】
なお、図9のパネル31、32を勝手違いに組み合わせることができる。突出した板34a、34aの端部が板32側の凹部39、39に重なっている。継ぎ手60は使用しない。接合部を上下から同時に摩擦接合できる。板33、34aには図7のように凸部を設けることができる。
【0047】
本発明の技術範囲は、特許請求の範囲の各請求項の記載の文言あるいは発明が解決しようとする課題の項の記載の文言に限定されず、当業者がそれから容易に置き換えられる範囲にも及ぶものである。
【0048】
【発明の効果】
本発明によれば、中空形材のような部材を摩擦接合によって突き合わせ接合する場合に、突き合わせた部分を支えて第3の板を支え部材にして摩擦接合しているので、接合すべき部材の変形を抑えることができ、良好な接合ができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 接合部の縦断面図である。
【図2】 図1において摩擦接合後の縦断面図である。
【図3】 本発明の一実施例の縦断面図である。
【図4】 図3において摩擦接合後の縦断面図である。
【図5】 本発明の他の実施例の縦断面図である。
【図6】 図5において摩擦接合後の縦断面図である。
【図7】 本発明の他の実施例の縦断面図である。
【図8】 図7において摩擦接合後の縦断面図である。
【図9】 本発明の他の実施例の摩擦接合の手順を説明する縦断面図である。
【図10】 本発明の他の実施例の縦断面図である。
【図11】 他の接合部の縦断面図である。
【図12】 本発明の他の実施例の縦断面図である。
【図13】 他の接合部の縦断面図である。
【図14】 他の接合部の縦断面図である。
【図15】 鉄道車両の構体の斜視図である。
【符号の説明】
31、32:中空型材、33、34:板、35:リブ、36:板、50:接合用の回転体、33b、34b:角部、37a、38a:凸部、39:凹部、91、92:型材。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3179758号の明細書中の特許請求の範囲、発明の詳細な説明を以下のとおり訂正する。
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の旧請求項の1乃至7、9、10及び12乃至14を削除し、残りの旧請求項8、11、15乃至21を新請求項1乃至9に訂正する。
その際、旧請求項11の「一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材および前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から他方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること」、旧請求項16の「前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記突片にまで達していること」を、それぞれ、「一方の前記突き合わせた部分の前記第1の部材の前記第1の板と前記第3の板との接続部を前記第1の部材の外側から支え、また前記第2の部材を支えた状態において、前記第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側から前記一方の前記突き合わせた部分に前記回転工具を挿入して該突き合わせた部分を摩擦接合すること」、「前記摩擦接合のビードは前記第2の板側の前記第3の板および前記第3の板から前記突き合わせ部の第2の部材に向けて実質的に平行に突出した突片にまで達していること」に訂正する。
また、旧請求項16、17、18の「請求項15において」を、「請求項3において」に訂正する。
(2)訂正事項b
明細書の項目【0008】の第3行目の「突き合わせ、」を「突き合わせており、前記第1の部材は、第1の板と、これに実質的に平行な第2の板と、前記第1の板の端部と前記第2の板とを接続するものであって、前記第1の板に実質的に直交する第3の板と、を有しており、前記第3の板と前記第1の板との接続部、および前記第3の板と前記第2の板との接続部のそれぞれに前記凹部があり、それぞれの前記凹部は、前記第1の部材の厚さ方向の外側および前記第1の部材の前記一端側に向けて開放しており、前記凹部の前記第1の板の端部、前記第2の板の端部のそれぞれに前記第2の部材の端部を突き合わせてあり、」に訂正する。
(3)訂正事項c
明細書の段落【0008】の第4〜5行目の「前記外側」を「第3の板の厚さの延長線上に回転工具を位置させ、前記外側」に訂正する。
(4)訂正事項d
明細書の段落【0008】の第5行目の「回転工具」を「前記回転工具」に訂正する。
(5)訂正事項e
明細書の段落【0009】の第2〜4行目の「回転工具の先端には第1の部材の凹部を構成する部分があるので、該部は摩擦接合の際の回転体を挿入する力を支える部材となる。このため、」を「突き合わせた部分を支えて第3の板を支え部材にして摩擦接合しているので、」に訂正する。
(6)訂正事項f
明細書の段落【0048】の第2〜4行目の「接合すべき部分の一方の部材を支えとして接合するようにしているので、」を「突き合わせた部分を支えて第3の板を支え部材にして摩擦接合しているので、」に訂正する。
異議決定日 2002-08-05 
出願番号 特願平10-299343
審決分類 P 1 651・ 537- ZD (B23K)
P 1 651・ 121- ZD (B23K)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 青木 俊明加藤 昌人  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 宮崎 侑久
加藤 友也
登録日 2001-04-13 
登録番号 特許第3179758号(P3179758)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 摩擦接合方法および構造体  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  
代理人 特許業務法人第一国際特許事務所  

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