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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B09B
管理番号 1068860
異議申立番号 異議2001-72530  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-09-10 
確定日 2002-10-07 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3145957号「廃棄物処理方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3145957号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許3145957号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成9年7月14日に特許出願され、平成13年1月5日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人菊間靖郎より特許異議の申立てがなされた。そして、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年2月6日に訂正請求(第一回)がなされた。その後、当審において再度の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年8月21日に、先の訂正請求(第一回)が取り下げられ、新たに訂正請求(第二回)がなされたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
請求項1の「嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理持の前記破砕物中の全蒸発残留物が5%以上となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」とある記載を、「嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」と訂正する。
イ.訂正事項b
請求項2の「嫌気性生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が5%以上となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」とある記載を、「嫌気性生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」と訂正する。
ウ.訂正事項c
明細書段落【0009】を次のとおり訂正する。
「【0009】【課題を解決するための手段】請求項1記載の廃棄物処理方法は、嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するものである。」
エ.訂正事項d
明細書段落【0010】を次のとおり訂正する。
「【0010】そして、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕して得られた破砕物を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合に、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することにより、メタンガスの生成量を増大するために全蒸発残留物の濃度を高い条件で処理することによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分を補給して、栄養塩バランスを確保してメタン発酵の処理効率を向上する。」
オ.訂正事項e
明細書段落【0011】を次のとおり訂正する。
「【0011】請求項2記載の廃棄物処理方法は、嫌気性微生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するものである。」
カ.訂正事項f
明細書段落【0012】を次のとおり訂正する。
「【0012】そして、有機性汚水を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することにより、メタンガスの生成量を増大するために全蒸発残留物の濃度が高い条件となることによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分を補給して、栄養塩バランスを確保してメタン発酵の処理効率を向上する。」
キ.訂正事項g
明細書段落【0057】を次のとおり訂正する。
「【0057】【発明の効果】請求項1記載の廃棄物処理方法によれば、有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合に、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するため、メタンガスの生成量を増大して有効利用を図るために破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分が補給されて、栄養塩バランスを確保でき、メタン発酵の処理効率を向上できる。」
ク.訂正事項h
明細書段落【0058】を次のとおり訂正する。
「【0058】請求項2記載の廃棄物処理方法によれば、有機性汚水を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するため、メタンガスの生成量を増大して有効利用を図るために全蒸発残留物の濃度が高い条件となることによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分が補給されて、栄養塩バランスを確保でき、メタン発酵の処理効率を向上できる。」
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項a、bの実質的な内容は、全蒸発残留物の数値を限定して「5%以上」との記載を「7.5%以上で18%以下」と訂正しようとするものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、上記訂正事項c〜hは、上記訂正事項a、bと整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当する。そして、上記訂正は特許明細書の段落【0023】、【0024】、【0032】、【0037】、【0046】及び【0047】の記載に基づくものであるから、いずれの訂正事項も願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであり、また、実質的に特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記訂正は、上述したとおり認容することができるから、本件訂正後の請求項1〜3に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明3」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。
【請求項2】嫌気性生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。
【請求項3】廃棄物を固液分離した屎尿系汚水の固形分とともにメタン発酵処理することを特徴とした請求項1または2記載の廃棄物処理方法。
(2)申立ての理由の概要
特許異議申立人は、本件請求項1〜3に係る発明についての特許に対して、証拠として甲第1号証(特開昭56-152794号公報)、甲第2号証(特開平6-246288号公報)、甲第3号証(「用水と廃水」第37巻第9号9月号(株)産業用水調査会、1995年9月1日発行、第14〜18頁)を提出し、本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当する。
したがって、本件請求項1〜3に係る発明の特許は特許法29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すべき旨主張している。
(3)証拠の記載内容
特許異議申立人が提示した甲第1号証乃至甲第3号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
甲第1号証(特開昭56-152794号公報)
(a)「メタン発酵の際の液化過程に鉄を、ガス化過程には含窒素化合物を存在させることを特徴とするメタン発酵法。」(特許請求の範囲)
(b)「この発明はメタン発酵方法に関する。さらに詳しくは、家庭等から排出される厨芥、し尿あるいは畜産廃棄物等の有機性廃棄物を嫌気的に発酵させ、メタンガスを発生させる方法に関する。しかして本発明は、発酵効率を向上させ、液化、ガス化を促進させ、以ってメタンガスの発生量を増加させることを目的としてなされた。」(第1頁左欄9〜15行)
(c)「本発明において、前記添加物が液化ガス化を促進する理由については、鉄の場合は液化過程における溶存酸素を除去し、菌の補助的な栄養源となることによるものと思われ、またガス化過程において、含窒素化合物は補助的な栄養源となるためと思われる。」(第2頁右上欄13〜18行)
(d)「発酵実験の材料として、キャベツを調理用のスピードカッタで6〜20メッシュに粉砕し同様にアジ(魚)を粉砕し、両者を固形分比で1:1に混合し、これを試料とした。発酵用種菌は、すでに嫌気性発酵を行っている槽の汚泥(固形分量、5重量%)を使用した。・・・試料の濃度は、水道水で固形分濃度が3重量%となるように調製し、それを500gずつ投入し、温度35℃で発酵させる条件を基本条件とした。」(第2頁左下欄4〜18行)
(e)第2頁右下欄の表には、「第1槽への添加剤」の欄に「鉄粉、旋盤くず」が記載される。
甲第2号証(特開平6-246288号公報)
(f)「【請求項1】有機性廃水を高温上向流式嫌気性汚泥床装置によりメタン発酵処理する方法において、植種汚泥として中温嫌気性処理装置から得られる中温グラニュール汚泥を用い、高温メタン発酵処理における温度域からスタートアップし、栄養塩としてFe、Ni及びCoの塩類を所定量に制御しながら運転することを特徴とするとする高温上向流式嫌気性汚泥床装置の運転方法。」(特許請求の範囲)
(g)「【産業上の利用分野】本発明は、食品廃水等の有機性廃水を高温域で生物的にメタン発酵処理する上向流式嫌気性汚泥床装置(以下、UASB装置という)の運転方法に関する。」(段落【0001】)
(h)「前記高温域においてのスタートアップ及び継続運転では、Fe、Ni及びCo等の栄養塩の濃度を一定量以上に制御することによって、高温メタン菌の増殖及びメタン生成活性の向上がより図られ、高負荷運転が可能となる。」(段落【0017】)
(i)「原水に栄養塩を添加しておのおのの成分を以下の濃度に制御した。」(第3頁左欄40〜41行)
甲第3号証(「用水と廃水」第14〜18頁)
(j)「有機質資材を嫌気的に維持すればメタンが発生する。メタン発生量は有機質資材の種類によって異なる。下水余剰汚泥(固形物濃度、2〜3%)からは10m3/m3・d、生ゴミとふん尿混合物(固形物濃度約4%)からは14.6m3/kg・d程度のメタンが生成する。生成したメタンは一般には燃料として用いられている。中国の農村部では古くから庭先で生ゴミとふん尿の混合物からメタンを生成し、それを炊飯や風呂の湯わかしに使ってきた。」(第16頁右欄17〜24行)
(4)対比・判断
(本件発明1について)
上記(a)乃至(e)の記載を参酌すると、甲第1号証には、「厨芥、し尿あるいは畜産廃棄物等の粉砕された有機性廃棄物を嫌気的に発酵させ、メタンガスを発生させる方法において、水道水で固形分濃度が3重量%になるように調製され、メタン発酵の際の液化過程に鉄を、ガス化過程には含窒素化合物を存在させる処理方法」(以下、「甲第1発明」という。)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と甲第1発明とを対比すると、甲第1発明の「有機性廃棄物」は、嫌気的に発酵されることから、嫌気性生物にて分解可能なものといえ、それが実施例の試料から固形状のものであることは明らかである。また、甲第1発明の「鉄」として実施例に「鉄粉」や「旋盤くず」が記載されることから、該「鉄」には「鉄化合物」が含まれるものとみれる。これらのことからみて、両者は、
「嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、鉄化合物を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」で一致するものの、次の点で相違していると云える。なお、甲第1発明の「固形分」は、権利者が平成14年8月21日付け特許異議意見書で述べているように本件発明1の「全蒸発残留物」を意味するものである。
相違点:本件発明1は「メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくとも一方を添加する」のに対し、甲第1発明は「水道水で固形分濃度が3重量%になるように調製され、メタン発酵の際の液化過程に鉄化合物を存在させる」ものである点。
次に、この相違点について検討する。
甲第2号証には、上記(f)〜(i)の記載から、メタン菌の栄養源としてFe、Ni及びCoの塩類を添加することが記載されていると云えるが、本件発明1の全蒸発残留物の濃度との関係についての記載はなく、上記相違点ついては何ら記載も示唆もないと云える。また、甲第3号証にも、上記(j)の記載から、生ゴミとふん尿混合物からメタン生成を行うとの記載はあるが、上記相違点について何ら記載も示唆もないと云える。したがって、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
なお、この相違点について、特許異議申立人は、申立書(第8頁第3〜6行)の甲第1号証との対比において「TS濃度が3%のときには添加しても、TS濃度が5%或いはそれ以上の高濃度となったときに添加しないということはあり得ず、むしろ5%以上の場合には、TS濃度が3%の場合よりも多くの栄養源を添加しようと考えるのが一般的である。」旨主張している。しかしながら、本件発明1は「TS濃度が5%以上、特に7.5%以上となると、沈殿やスケール形成により、鉄、ニッケル、コバルトの不活性効果が増大し、嫌気性微生物が必要とする鉄、ニッケル、コバルトが不足して活性が低下し、上述した処理可能なTOC負荷やCOD負荷、BOD負荷が同等または低くなる処理負荷の条件でもメタン発酵効率が大きく低減あるいは停止してしまう」(段落【0032】)という課題の解決を図ろうとするものであり、そのために全蒸発残留物(TS)濃度に基づいて鉄、ニッケル、コバルトの添加を行おうとするものである。一方、甲第1発明は、TS濃度との関連において鉄、ニッケル、コバルトの添加を操作しようと意図するものでなく、そこには、本件発明1の上記技術的思想が何ら見出せないのであるから、この特許異議申立人の主張を認めることはできない。
(本件発明2について)
本件発明2と前記甲第1発明とを比較すると、本件発明1と同様の点で相違するものであるから、上記本件発明1について検討したとおりの理由により、本件発明2は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(本件発明3について)
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2を更に限定したものであるから、上記本件発明1及び本件発明2について述べた理由により、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件訂正後の請求項1〜3に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件訂正後の請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
廃棄物処理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、
メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加する
ことを特徴とした廃棄物処理方法。
【請求項2】 嫌気性微生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、
前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、
この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加する
ことを特徴とした廃棄物処理方法。
【請求項3】 廃棄物を固液分離した屎尿系汚水の固形分とともにメタン発酵処理する
ことを特徴とした請求項1または2記載の廃棄物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生物分解可能な固形状の有機性廃棄物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば有機性汚水をメタン生成菌にてメタン発酵処理し、得られるメタンガスを利用して効率よく処理する廃棄物処理方法として、特開平3-154692号公報および特開平3-165895号公報に記載の汚水処理方法が知られている。
【0003】
そして、特開平3-154692号公報に記載の汚水処理方法では、上述したメタン生成菌にて有機性汚水をメタン発酵処理する場合、TOC(Total Organic Carbon:全有機性炭素)負荷が4kg/m3・日から5kg/m3・日に上げることにより、過負荷となってTOC除去率が急激に低下するため、過負荷となって処理効率が低下した際に、メタン生成菌の代謝に必要なニッケル、コバルト、窒素、リンを適宜添加して処理効率の回復を図っている。
【0004】
また、特開平3-165895号公報に記載の汚水処理方法では、メタン生成菌にて有機性廃棄物をメタン発酵処理する際に、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)負荷が3kg/m3・日より高くなるとBOD除去率が低下するため、メタン生成菌の栄養素となるニッケル、鉄、コバルトを有機性廃棄物のBOD濃度に対して所定量以上となるように適宜添加して、メタン生成菌の増殖活性を向上させて、BOD負荷が高くなってもBOD除去率の低下を防止している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平3-154692号公報および特開平3-165895号公報に記載の汚水処理方法では、処理効率を向上させるためにTOC負荷やBOD負荷を増大させて処理しているが、メタン生成菌にてメタン発酵処理する際に生じるメタンガスの生成量は多くない。そして、TOC負荷やBOD負荷をさらに増大させてメタンガスの生成量を増大させると、メタン発酵処理するメタン発酵消化槽を加温する熱エネルギも比例して増大することとなる。このため、TOC負荷やBOD負荷を増大させても、得られるメタンガスを他のエネルギ源として有効利用するエネルギ回収ができない。
【0006】
そこで、メタンガスの生成量を増大させる方法として、例えば早急な処理対策が望まれている各家庭や事業所から収集される生ゴミや厨芥などの嫌気性微生物にて分解処理可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を、生物分解性を向上すべく破砕して水を混合したり有機性汚水を混合して破砕物を調製し、この破砕物をメタン発酵処理することが考えられる。また、この固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物中には、メタン生成菌の栄養素となるニッケル、鉄、コバルトが含まれていることが知られている。
【0007】
しかしながら、メタンガスの生成量を増大させてエネルギ回収を図るべく、破砕物の濃度を高くすると、TOC負荷やCOD負荷、BOD負荷が同等または低くなるメタン生成菌の活性を低下させない処理負荷の条件でも、有機酸の蓄積が生じてメタン発酵処理が低下もしくは停止する場合がある。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みて、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を効率よく簡単に処理でき、生成するメタンガスの有効利用が図れる廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の廃棄物処理方法は、嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するものである。
【0010】
そして、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕して得られた破砕物を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合に、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することにより、メタンガスの生成量を増大するために全蒸発残留物の濃度を高い条件で処理することによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分を補給して、栄養塩バランスを確保してメタン発酵の処理効率を向上する。
【0011】
請求項2記載の廃棄物処理方法は、嫌気性微生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するものである。
【0012】
そして、有機性汚水を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することにより、メタンガスの生成量を増大するために全蒸発残留物の濃度が高い条件となることによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分を補給して、栄養塩バランスを確保してメタン発酵の処理効率を向上する。
【0013】
請求項3記載の廃棄物処理方法は、請求項1または2記載の廃棄物処理方法において、廃棄物を固液分離した屎尿系汚水の固形分とともにメタン発酵処理するものである。
【0014】
そして、廃棄物をメタン発酵処理するに際して固液分離した屎尿系汚水の固形分を混合するため、屎尿系汚水の固形分から窒素分およびリン分が補給され、嫌気性微生物の活性が向上し、メタン発酵の効率が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の廃棄物処理方法の実施の一形態の構成を図1を参照して説明する。
【0016】
図1において、1は前処理手段で、この前処理手段1は、生ゴミや厨芥、農水産廃棄物などの事業系ゴミなどの主に固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破袋および破砕して合成樹脂製の袋やプラスチックなどを除去する図示しない解破砕装置と、この解破砕装置にて解破砕された破砕物を洗浄しつつ磁気選別して金属を除去する図示しない金属除去手段とを備えている。
【0017】
また、前処理手段1には、調整手段2が接続されている。この調整手段2には、解破砕された有機性廃棄物に塩化第一鉄などの鉄化合物、塩化ニッケルなどのニッケル化合物、塩化コバルトなどのコバルト化合物の少なくともいずれか一方を添加する栄養塩素類添加手段3が接続されている。そして、調整手段2は、解破砕された有機性廃棄物に鉄化合物、ニッケル化合物およびコバルト化合物の少なくともいずれか一方と水分とを適宜添加し、例えば約55℃〜60℃に加温して攪拌混合し塊状物も混在するようなスラリ状、すなわち塊状物や液体が混在する破砕物である混合物としての調質物を調製する。なお、水分の添加および加温に際してはスチームを用いるとよい。スチームを用いることにより、水を添加して別途加熱手段にて加熱する必要がなく、効率よく加温・攪拌混合が行える。
【0018】
さらに、調整手段2には、調質物をメタン発酵処理するメタン発酵手段を構成するメタン発酵消化槽4が接続されている。このメタン発酵消化槽4は、固形状や塊状の有機性廃棄物などを含有する濃度が濃いスラリ状の調質物でも処理可能な生物浮遊型で、加温、例えば55℃〜60℃で適宜攪拌してメタン生成菌などの嫌気性微生物にて有機性廃棄物中の有機性物質をメタン発酵処理する。
【0019】
そして、このメタン発酵消化槽4には、発生するメタンガスを回収する図示しないメタンガス回収手段が設けられ、このメタンガス回収手段には、回収したメタンガスを貯溜するガスタンク5が接続されている。なお、この回収したメタンガスの一部は、発電などに利用し、有機性廃棄物を処理する際の運転エネルギとして利用する。
【0020】
また、メタン発酵消化槽4には、メタン発酵処理にて得られた発酵処理物を、スクリーンや膜などによる濾過分離や沈降分離処理、遠心分離処理などにて脱水ケーキと分離液とに固液分離する固液分離手段6が接続されている。さらに、固液分離手段6には、固液分離された分離液を調整手段2に返送する返送管7を備えた返送手段が接続されている。なお、固液分離された脱水ケーキは、固形燃料や肥料、建材などに利用される。
【0021】
次に、上記実施の一形態の動作について説明する。
【0022】
まず、生ゴミや農水産廃棄物などの嫌気性微生物にて生物分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を前処理手段1の解破砕装置に投入して、破袋および破砕して合成樹脂製の袋や合成樹脂フィルム、プラスチック、ガラスなどの微生物にて分解処理できない夾雑物を除去する。そして、この解破砕された破砕物を金属除去装置にて洗浄しつつ磁気選別などにより夾雑物である金属を除去する。
【0023】
この後、磁気選別後の破砕された破砕物を調整手段2に投入する。そして、調整手段2にて、例えばスチームを用いて約55℃に加温しつつ攪拌混合し、攪拌混合が可能な全蒸発残留物(Total Solids:TS)濃度が20%以下となる塊状物も混入するようなスラリ状の調質物を調製する。なお、TS濃度が20%より高くなると、メタン発酵処理の際の攪拌混合が不十分となり効率よくメタン発酵処理できなくなるため、TS濃度を20%以下、好ましくは18%以下にする。また、塊状物などが少ないもしくはほとんどないような状態のスラリ状とすることにより、微生物によるメタン発酵処理がより効率よく進行する。
【0024】
ここで、調質物のTS濃度を測定し、TS濃度が5%以上、好ましくは7.5%以上となる場合には、栄養塩類添加手段3にて、栄養塩類である鉄化合物、ニッケル化合物およびコバルト化合物の少なくともいずれか一方を添加する。これら栄養塩類は、調質物中に鉄として10mg/リットル以上、好ましくは10〜300mg/リットル、ニッケルとして1mg/リットル以上、好ましくは1〜30mg/リットル、コバルトとして1mg/リットル以上、好ましくは1〜30mg/リットルを添加する。
【0025】
そして、TS濃度が5%より低い場合には、有機性廃棄物中に微量に含まれる鉄、ニッケル、コバルトは凝集や沈殿、スケールの生成などにより不活性効果が低くなり、嫌気性微生物の活性に必要な十分な栄養塩類量が得られるので、栄養塩類を別途添加する必要がない。
【0026】
また、鉄添加量が10mg/リットルより少なくなると、後段でのメタン発酵処理の改善が認められず、300mg/リットルより多くなっても鉄添加による効果の差異が認められずコストが増大するため、鉄添加量が10mg/リットル以上、好ましくは10〜300mg/リットルとなるように鉄化合物を添加する。また、同様に、ニッケル添加量が1mg/リットルより少なくなると、後段でのメタン発酵処理の改善が認められず、30mg/リットルより多くなってもニッケル添加による効果の差異が認められずコストが増大するため、ニッケル添加量が1mg/リットル以上、好ましくは1〜30mg/リットルとなるようにニッケル化合物を添加する。さらに、同様に、コバルト添加量が1mg/リットルより少なくなると、後段でのメタン発酵処理の改善が認められず、30mg/リットルより多くなってもコバルト添加による効果の差異が認められずコストが増大するため、コバルト添加量が1mg/リットル以上、好ましくは1〜30mg/リットルとなるようにコバルト化合物を添加する。
【0027】
そして、栄養塩類が適宜添加された調質物をメタン発酵消化槽4に流入させ、例えば55℃で適宜攪拌しつつ8日滞留させて、メタン生成菌などにて有機性物質をメタン発酵処理する。なお、メタン発酵処理により発生するメタンガスは、図示しないメタンガス回収手段にて回収してガスタンクに貯溜し、発電などにて有機性廃棄物の処理の際の運転エネルギやその他の汚水処理、冷暖房などに利用する。
【0028】
次に、メタン発酵処理した発酵処理物を固液分離手段にて脱水ケーキと分離水とに固液分離する。そして、分離液は、返送手段の返送管7を介して調整手段2に返送し、脱水ケーキは固形燃料や建材、肥料などに利用したり、焼却処分する。
【0029】
ここで、鉄、ニッケル、コバルトは、メタン生成菌などの微生物の補酵素成分を構成する物質で、微生物の活性向上に欠かせない栄養元素である。なお、鉄は約1000mg/リットル、ニッケルは約80〜240mg/リットル、および、コバルトは約50〜150mg/リットル以上となると、逆に微生物の活性阻害を生じ始める。
【0030】
また、メタン発酵消化槽4内では、有機性汚水とは異なり、固形状の有機性廃棄物を含有する濃度が濃いスラリ状の混合物を処理するので、凝集・沈殿、スケール微粒子の形成や共沈吸着効果などの物理化学的反応が生じている。
【0031】
このため、投入TS濃度であるメタン発酵消化槽4へ投入される調質物のTS濃度が5%より低い場合には、メタン発酵消化槽4における凝集・沈殿、スケール形成物質の濃度が比較的低く、凝集・沈殿、スケール形成などの物理化学的反応による微量栄養塩類である鉄、ニッケル、コバルトの不活性効果も相対的に低くなり、メタン生成菌などの嫌気性微生物は、調質物中の活性のある鉄、ニッケル、コバルトを栄養源として吸収して活性が増大し、効率よく有機性物質を分解処理する。なお、固形状の有機性廃棄物を処理可能な生物浮遊型のメタン発酵処理方法では、BOD濃度が3〜5万ppmで滞留時間が8日程度が処理のほぼ上限の負荷(BOD負荷で3〜5kg/m3・日)、すなわち嫌気性微生物が調質物中の活性のある鉄、ニッケル、コバルトを栄養源として吸収して有機性物質を分解処理できる上限の処理条件である。
【0032】
一方、TS濃度が5%以上、特に7.5%以上となると、沈殿やスケール形成により、鉄、ニッケル、コバルトの不活性効果が増大し、嫌気性微生物が必要とする鉄、ニッケル、コバルトが不足して活性が低下し、上述した処理可能なTOC負荷やCOD負荷、BOD負荷が同等または低くなる処理負荷の条件でもメタン発酵効率が大きく低減あるいは停止してしまう。
【0033】
したがって、上述したように、上記実施の形態では、生ゴミや厨芥、農水産廃棄物などの固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物をメタン発酵処理する際に、メタン発酵消化槽4に投入する際のTS濃度が5%以上となる場合に、鉄化合物、ニッケル化合物およびコバルト化合物の少なくともいずれか一方を鉄濃度が10〜300mg/リットル、ニッケル濃度が1〜30mg/リットル、コバルト濃度が1〜30mg/リットルとなるように添加する。
【0034】
このため、単にTOC負荷やCOD負荷、BOD負荷が所定値以上となる場合に栄養塩類を添加する場合では、濃度が高いスラリ状の混合物を処理する際に滞留時間を長くするなどして処理負荷を低く設定して処理したとしても、栄養塩類のバランスが壊れてメタン発酵処理が低減する場合も生じるので、処理の際に、負荷を計測するとともに処理効率を観測し、処理負荷が低くてもメタン発酵処理が低減するなどの処理状況に応じてニッケルやコバルトなどを適宜添加しなければならず、処理作業も煩雑で、装置が複雑大型化する問題があるが、上記実施の形態では濃度に対応して栄養塩類を添加して栄養塩類のバランスが確保することから、メタン生成菌などの嫌気微生物の活性に必要な栄養源が補われ、高効率でメタン発酵処理を進行できる。
【0035】
また、あらかじめ嫌気性微生物にて処理できないプラスチックやガラス、その他の夾雑物を除去するので、メタン発酵処理の際の攪拌阻害や液体の流動阻害などを防止でき攪拌混合が低負荷ででき、また、カドミウムや水銀などの重金属類の混入も低減でき、略均一な混合が容易で効率よく処理できるとともに、夾雑物による栄養塩類の不活性効果の増大も抑制でき、メタン発酵処理効率を向上できる。
【0036】
そして、メタン発酵処理する際に、CODやBODの測定より容易なTS濃度を測定するのみで、メタン発酵処理中は確認程度に処理状況を観察するのみでよく、また、TS濃度はCODやBODの測定方法では測定が困難な固形状の有機性廃棄物を含有する濃度が濃いスラリ状の混合物でも容易に測定でき、メタン発酵処理が容易にできる。
【0037】
なお、上記実施の形態において、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物をスチームにてスラリ状の調質物に調製してメタン発酵させたが、調整手段2にて調製する際に、例えば図2に示すように、屎尿系汚水の処理の際に生じる除渣した屎尿や余剰汚泥などの固形分の汚泥を混合したり、水分の代わりに農水産物加工工場からの排液や飲料工場排液などの有機性汚水を混合して調製してもよい。
【0038】
そして、生ゴミや厨芥、農水産廃棄物などの有機性廃棄物は、メタン発酵にて容易に分解される炭水化物が主成分であるが、炭素/窒素比が30とメタン発酵処理の最適比である20に比して窒素分が少ない。一方、屎尿系汚水から分離された汚泥は、炭素/窒素比が5と窒素が多く、リン化合物も多い。このため、有機性廃棄物に汚泥を混合することにより、良好な炭素/窒素比が得られ、栄養源となるリンも補給でき、後段でのメタン発酵処理の効率をさらに向上できるとともに、屎尿系汚水の処理の際に生じる汚泥をも合わせて処理でき、処理効率の向上および処理施設の小型化が図れ、処理コストも低減できる。また、有機性廃水を用いる場合には、有機性廃棄物と合わせて処理でき、別途有機性廃水を処理する工程が不要となり、処理効率の向上および処理施設の小型化が図れ、処理コストも低減できる。
【0039】
なお、屎尿系汚水の処理の際に生じる固形分や有機性汚水の混合は、例えばメタン発酵消化槽4に調質物とは別途添加してメタン発酵消化槽4内で混合するようにしてもよい。
【0040】
また、調整手段2に栄養塩類添加手段3を設け、鉄、ニッケル、コバルトをメタン発酵処理前にあらかじめ添加して説明したが、メタン発酵消化槽4に直接鉄、ニッケル、コバルトを添加したり、調整手段2からメタン発酵消化槽4に調質物を搬送する搬送管の途中で添加するなどしてもよい。なお、メタン発酵消化槽4が、常時攪拌しない構成や攪拌動力が少ない構成などの攪拌混合を十分に行えない構成の場合には、調整手段2にてあらかじめ添加したり、調整手段2からメタン発酵消化槽4へ調質物を搬送する搬送管に添加するなどにより、略均一混合させておくことが好ましい。また、調整手段2は、一般にメタン発酵消化槽4にて処理する際の温度程度まで加温され、有機性廃棄物の加水分解や酸発酵を促進し、pH酸性条件となって微量元素が安定な状態で存在するとともに、硫化水素などの発生もなく、硫化物として沈殿して微生物にて利用できなくなることも防止でき、メタン発酵消化槽と異なり密閉性を維持する必要もないので、栄養塩類の添加が容易で、構造も簡単であるため好ましい。
【0041】
さらに、後段でのメタン発酵処理の際の温度変化を抑制するため、調整手段2にて加温しつつ調製して説明したが、加温せずに単に混合するなどしてもよい。
【0042】
【実施例】
まず、野菜、果物、肉、魚、米飯などを混合粉砕し、含水率が約80%(TS濃度で約20%)の合成ゴミを作製する。そして、水を適宜添加してTS濃度の異なる各種調質物を調製する。なお、水を添加して略2倍に希釈すると、TS濃度が約10%の調質物となり、水で1.3倍に希釈するとTS濃度が約15%の調質物となる。そして、これら調質物をTS濃度およびメタン発酵消化槽4の滞留時間を可変して、メタン発酵処理における中温域である36℃におけるメタン発酵処理状況を観察した。その結果を図3ないし図7に示す。なお、鉄、コバルト、ニッケルの栄養塩類は、メタン発酵処理が低減した運転開始から150日経過後から、塩化第一鉄を約200mg/リットル(鉄として88mg/リットル)、塩化コバルトを約40mg/リットル(コバルトとして18mg/リットル)連続的に添加した。
【0043】
ここで、図3(a)はメタン発酵処理する際のTS濃度を可変させた状況を示すグラフで、図3(b)はTS濃度の可変および滞留時間の可変による化学的酸素要求量(CODCr)の変化の状況を示すグラフである。
【0044】
なお、ここで、生ゴミの主な組成はC46H73O31Nであることが知られているが、合成ゴミは以下に示す性状となった。
【0045】
CODCr/TS=1.55
BOD/TS=0.83
VS(Volatile Solid:揮発性物質)/TS=0.908
TOC/TS=0.45
そして、図3(a)に示すTS濃度で、滞留時間を可変すなわち滞留時間を徐々に短くなるように処理すると、図3(a)に示すようにCODCr負荷が増大する状態となる。なお、上記性状のTSに対する比率から、BOD負荷やVS負荷、TOC負荷も同様に増大することとなる。
【0046】
これら図3(a)および(b)に示す条件で上記合成ゴミをメタン発酵処理すると、TS濃度が7.5%から、図3(c)に示すようにメタンガス発生量があきらかに低下し始めるとともに、図3(d)に示すようにメタン発酵消化槽4内のpHの酸性が強くなり、図3(e)に示すようにCOD換算による揮発性脂肪酸(Volatile Fatty Acid:VFA)が増大し始め、TS濃度が10%となると、これら図3(c)に示すメタンガス発生量、図3(d)に示すpH、および、図3(e)に示す揮発性脂肪酸量が急激に変化し、メタン発酵処理が停止した。そこで、150日を経過した時点で、上記の条件で栄養塩類を添加した。
【0047】
この栄養塩類の添加により、メタン発酵処理が回復し、TS濃度が10%より高い15%やメタン発酵消化槽4にて攪拌混合可能限界である18%まで増大させても十分にメタン発酵処理できることが分かる。
【0048】
次に、CODCr負荷が一定で容積負荷を9.5g/リットル・日(TOC負荷換算で2.8g/リットル・日)となるように上記合成ゴミのTS濃度を可変させて、栄養塩類を上記の条件で添加する実施例1と添加しない比較例とで、36℃の中温域でメタン発酵処理した。その結果を図4に示す。
【0049】
そして、TS濃度が5%以上となると、栄養塩類を添加しない比較例では、図4(a)に示すようにメタン発酵消化槽4内のpHの酸性が強くなり始めるとともに、図4(b)に示すように残存するVFA濃度も増大し始め、図4(c)に示すように、メタンガスの生成速度も低下し、TS濃度が10%となると、メタン発酵が不能となった。一方、栄養塩類を添加する実施例1の場合には、図4に示すように、TS濃度を増大させてもメタン発酵処理効率はほとんど低下せず、高効率でメタン発酵処理できることが分かる。
【0050】
さらに、図4に示す実施例1と同様の方法で、容積負荷を7.5g/リットル・日(TOC負荷換算で2.4g/リットル・日)となるようにTS濃度を可変させ、メタン発酵処理における高温域である約55℃でメタン発酵処理した。その結果を図5に示す。
【0051】
この図5に示す実施例2も、図4に示す実施例1と同様に、栄養塩類を添加すると、TS濃度が5%以上での嫌気性微生物の活性の低下を防止でき、高効率でメタン処理できることが分かる。
【0052】
次に、図5に示す実施例2の合成ごみに屎尿系汚水の処理にて得られた脱水汚泥を合成ゴミ9に対して脱水汚泥が1となる比率で混合した混合物を同様に高温域でメタン発酵処理した。その結果を図6に示す。
【0053】
この図6に示す実施例3も、図4に示す実施例1および図5に示す実施例2と同様に、栄養塩類を添加すると、TS濃度が5%以上での嫌気性微生物の活性の低下を防止でき、高効率でメタン処理できることが分かる。
【0054】
次に、添加する栄養塩類の種類によるメタン発酵処理効率を比較した。実験方法としては、比較例1および比較例2において、TS濃度が10%でメタン発酵が停止した際の汚泥を取り出してバイアル瓶に移し、各種栄養塩類を添加し、この栄養塩類の添加時点からのメタン発酵処理状態を観察した。また、処理温度としては、中温域である約36℃および高温域である約55℃の条件で行った。なお、栄養塩類は、塩化第一鉄を100mg/リットル(鉄濃度として44mg/リットル)、塩化ニッケルを10mg/リットル(ニッケル濃度として4.5mg/リットル)、塩化コバルトを10mg/リットル(コバルト濃度として4.5mg/リットル)の条件で添加した。その結果を図7よび図8に示す。
【0055】
この図7に示す結果から、栄養塩類を添加しない比較例では、運転日数が20日ぐらいからメタン発酵処理がほとんど進行しなくなるが、コバルトのみでもメタン発酵処理が進行しなくなることはなく、特に、処理温度が高い条件では、図8に示すように、鉄のみやニッケルのみでも添加しない場合よりメタン発酵処理の効率が高くなることがわかる。また、鉄、ニッケル、コバルトを組み合わせにより、メタン発酵処理効率がさらに増大することがわかる。
【0056】
上述したように、各種実験から、CODやBOD、TOC負荷などの処理負荷が低い場合でもTS濃度が5%以上になると、有機酸の蓄積が多くなり、酸敗によりメタン発酵処理が低下することが認められた。これは、単に処理負荷が増大することにより、負荷に対応したメタン生成菌の活性が低減してメタン発酵処理が低下するのではなく、TS濃度の増大により、凝集・沈殿やスケールの形成などにより、メタン生成菌に必要な栄養塩類の不活性効果が増大して摂取できなくなり、メタン生成菌の活性が低下するためと考えられる。このため、TS濃度が5%以上となる場合に、鉄、コバルト、ニッケルを適量添加することにより、投入固形物濃度の高いメタン発酵に適した栄養塩バランスが確保されて安定したメタン発酵が着実に行われることがわかった。特に、処理温度が高い条件では栄養塩類の添加による処理効率の向上が顕著に認められた。
【0057】
【発明の効果】
請求項1記載の廃棄物処理方法によれば、有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合に、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するため、メタンガスの生成量を増大して有効利用を図るために破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分が補給されて、栄養塩バランスを確保でき、メタン発酵の処理効率を向上できる。
【0058】
請求項2記載の廃棄物処理方法によれば、有機性汚水を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するため、メタンガスの生成量を増大して有効利用を図るために全蒸発残留物の濃度が高い条件となることによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分が補給されて、栄養塩バランスを確保でき、メタン発酵の処理効率を向上できる。
【0059】
請求項3記載の廃棄物処理方法によれば、請求項1または2記載の廃棄物処理方法の効果に加え、廃棄物をメタン発酵処理するに際して固液分離した屎尿系汚水の固形分を混合するため、屎尿系汚水の固形分から窒素分およびリン分を補給でき、嫌気性微生物の活性が向上して、メタン発酵の効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の廃棄物処理方法の実施の一形態の構成を示すブロック図である。
【図2】
本発明の廃棄物処理方法の他の実施の形態の構成を示すブロック図である。
【図3】
同上図1に示す処理工程において合成ゴミを用いてメタン発酵処理した実験の結果を示すタイミングチャートである。
【図4】
同上図1に示す処理工程において合成ゴミを用いて投入TS濃度を可変してCODCr負荷を一定にし中温域の条件でメタン発酵処理した実験の結果を示すタイミングチャートである。
【図5】
同上図1に示す処理工程において合成ゴミを用いて投入TS濃度を可変してCODCr負荷を一定にし高温域の条件でメタン発酵処理した実験の結果を示すタイミングチャートである。
【図6】
同上図2に示す処理工程において合成ゴミを用いて投入TS濃度を可変してCODCr負荷を一定にし高温域の条件でメタン発酵処理した実験の結果を示すタイミングチャートである。
【図7】
同上図1に示す処理工程において添加する栄養塩類の種類によるメタン発酵処理状況を示すグラフである。
【図8】
同上図1に示す処理工程において添加する栄養塩類の種類による異なる温度でのメタン発酵処理状況を示すグラフである。
【符号の説明】
1 前処理手段
3 栄養塩類添加手段
4 メタン発酵手段としてのメタン発酵消化槽
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第3145957号発明の明細書を平成14年8月21日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明を目的として、次の訂正事項a〜hのとおり訂正するものである。
訂正事項a:請求項1の「嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理持の前記破砕物中の全蒸発残留物が5%以上となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」とある記載を、「嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」と訂正する。
訂正事項b:請求項2の「嫌気性生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が5%以上となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」とある記載を、「嫌気性生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することを特徴とした廃棄物処理方法。」と訂正する。
訂正事項c:明細書段落【0009】を「【0009】【課題を解決するための手段】請求項1記載の廃棄物処理方法は、嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、メタン発酵処理時の前記破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するものである。」と訂正する。
訂正事項d:明細書段落【0010】を「【0010】そして、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕して得られた破砕物を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合に、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することにより、メタンガスの生成量を増大するために全蒸発残留物の濃度を高い条件で処理することによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分を補給して、栄養塩バランスを確保してメタン発酵の処理効率を向上する。」と訂正する。
訂正事項e:明細書段落【0011】を「【0011】請求項2記載の廃棄物処理方法は、嫌気性微生物にて分解可能な有機性汚水をメタン発酵処理する廃棄物処理方法において、前記有機性汚水に嫌気性生物にて分解可能な固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物をメタン発酵処理する際にこの混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するものである。」と訂正する。
訂正事項f:明細書段落【0012】を「【0012】そして、有機性汚水を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加することにより、メタンガスの生成量を増大するために全蒸発残留物の濃度が高い条件となることによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分を補給して、栄養塩バランスを確保してメタン発酵の処理効率を向上する。」と訂正する。
訂正事項g:明細書段落【0057】を「【0057】【発明の効果】請求項1記載の廃棄物処理方法によれば、有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕した破砕物を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、破砕物中の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合に、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するため、メタンガスの生成量を増大して有効利用を図るために破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分が補給されて、栄養塩バランスを確保でき、メタン発酵の処理効率を向上できる。」と訂正する。
訂正事項h:明細書段落【0058】を「【0058】請求項2記載の廃棄物処理方法によれば、有機性汚水を嫌気性生物にてメタン発酵処理する際に、固形状の有機性廃棄物を含有する廃棄物を破砕攪拌混合して混合物を調製し、この混合物の全蒸発残留物が7.5%以上で18%以下となる場合、鉄化合物、コバルト化合物およびニッケル化合物の少なくともいずれか一方を添加するため、メタンガスの生成量を増大して有効利用を図るために全蒸発残留物の濃度が高い条件となることによる破砕物中に含有される嫌気性微生物の栄養塩類の鉄分、コバルト分およびニッケル分の不活性効果の増大分が補給されて、栄養塩バランスを確保でき、メタン発酵の処理効率を向上できる。」と訂正する。
異議決定日 2002-09-13 
出願番号 特願平9-188709
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B09B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 2001-01-05 
登録番号 特許第3145957号(P3145957)
権利者 アタカ工業株式会社
発明の名称 廃棄物処理方法  
代理人 山田 哲也  
代理人 山田 哲也  
代理人 島宗 正見  
代理人 樺沢 襄  
代理人 樺沢 襄  
代理人 樺沢 聡  
代理人 樺沢 聡  
代理人 島宗 正見  

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