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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B28B
管理番号 1068863
異議申立番号 異議2001-73372  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-10-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-18 
確定日 2002-09-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3177181号「セラミックハニカム構造体押出用押出装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3177181号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3177181号発明は、平成9年3月27日に特許出願され、平成13年4月6日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、日立金属株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成14年7月16日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正事項
平成14年7月16日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮、この減縮に伴う明りょうでない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添附した全文訂正明細書及び図面のとおり、すなわち次の訂正事項a乃至訂正事項cのとおり訂正するものである。
(1)訂正事項a:請求項1及び請求項2を削除し、請求項3を請求項1に繰り上げて、特許請求の範囲の記載を次のとおりとする。
「【請求項1】セラミックハニカム成形体を押し出すための押出装置であって、内部に成形材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置において、口金と押え板とが包含できかつ押出装置本体の先端に着脱自在とした第一の治具を使用して、第一の治具の孔部にボルトを通し、そのボルトを押出装置本体のネジ部に固定することで、口金を押出装置本体に装着するとともに、第一の治具に着脱自在とした第二の治具を使用して、第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで、押え板を口金に装着することを特徴とするセラミックハニカム構造体押出用押出装置。」
(2)訂正事項b:特許請求の範囲の減縮に伴い、特許明細書を明りょうでない記載の釈明を目的として、(a)乃至(n)のとおり訂正する。
(a)特許明細書【0001】の、第2行(特許公報第3行)「押出装置」を「セラミックハニカム構造体押出用押出装置」に訂正する。
(b)特許明細書【0003】の、第1行(2箇所)及び第6行(特許公報第1行、第2行及び第8行)の「図5」を「図3」に訂正する。
(c)特許明細書【0005】の、第2行(特許公報第3行)「押出装置」を「セラミックハニカム構造体用押出装置」に訂正する。
(d)特許明細書【0006】を削除する。
(e)特許明細書【0007】を、訂正した請求項1に合わせるために次のとおり訂正する。
「【0006】【課題を解決するための手段】本発明のセラミックハニカム構造体押出用押出装置は、セラミックハニカム成形体を押し出すための押出装置であって、内部に成形材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置において、口金と押え板とが包含できかつ押出装置本体に着脱自在とした第一の治具を使用して、第一の治具の孔部にボルトを通し、そのボルトを押出装置本体のネジ部に固定することで、口金を押出装置本体に装着するとともに、第一の治具に着脱自在とした第二の治具を使用して、第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで、押え板を口金に装着することを特徴とするものである。」
(f)特許明細書【0008】の、第1行〜第7行(特許公報第1行〜第10行)の「口金と押え板とを・・・統一することができる。さらに、」を削除し、第8行((特許公報第11行)「装着した第二発明では、」を「装着することで、」に訂正し、末行「可能となる。」の後に「その結果、押え板を簡単形状で同一厚さに統一して利用することができる。」を加入して次のとおり訂正する。「【0007】本発明では、押え板を第一の治具に着脱自在とした第二の治具により口金に装着することで、口金を押出装置本体に装着したまま押え板のみを交換することが可能となる。その結果、押え板を簡単形状で同一厚さに統一して利用することができる。」
(g)特許明細書【0009】第1行〜第4行(特許公報第1行〜第6行)の「図1は・・・構成されている。」のうち、第1行〜第2行(特許公報第1行〜第3行)の「図1は・・・示す図である。」を「図1は本発明のセラミックハニカム構造体押出用装置における円柱形状のセラミックハニカム構造体を押し出す装置の一例の構成を示す図である。」に訂正し、また第4行(特許公報第5行〜第6行)の「口金4及び押え板5を・・・装着して」を「口金4を押出本体2に装着するとともに第二の治具31を使用して、押え板5を口金4上に装着して」に訂正して、「【0008】【発明の実施の形態】図1は本発明のセラミックハニカム構造体押出用押出装置における円柱形状のセラミックハニカム構造体を押し出す装置の一例の構成を示す図である。図1に示す例において、押出装置1は、押出装置本体2に着脱自在とした第一の治具3を使用して、口金4を押出装置本体2に装着するとともに、第二の治具31を使用して、押え板5を口金4上に装着して構成されている。」とすると共に、特許明細書【0009】第4行〜第14行(特許公報第6行〜第20行)の「押出装置本体2は、・・・外形を有している。」のうち、第7行〜第8行(特許公報第10行〜第11行)の「内部に・・・円筒体からなり、」を「内部に口金4を固定し押え板5を挿通するための円筒体からなり、」に訂正し、第8行〜第10行(特許公報第11行〜第14行)の「中心に円形の開口14を・・・とを備えている。」を「ボルト12を挿通する孔部16を備えている。」に訂正し、第13行〜第14行(特許公報第18〜第20行)の「部材からなり、その外形は口金5とほぼ同一の外形を有している。」を「部材からなる。第二の治具31は、ボルト32で第一の治具3に固定することで、押え板5を口金4上に装着している。尚、図1に示す例では、第二の治具31は第一治具3より突出しているが、第二の治具31は第一の治具3の中に一部または全部がはまり込むようにしてもよい。」に訂正する。
(h)特許明細書【0010】の、第1行〜第5行(特許公報第1行〜第8行)の「図1に示す例では、・・・行うことができる。また、」を「図1に示す例では.第二の治具31をボルト32を解放するだけで第一の治具3から取り外すことができる。そのため、押え板5のみを口金4を押出装置本体2から取り除く必要無しで取り替えることができ、押え板5の交換が容易になる。これは、成形体17の大きさが大きくなると必然的に口金4も大きくかつ重くなり、口金4の取り替えが困難になる大形状、例えば直径200mm以上のものを押し出す場合には特に有効である。また、そのため押え板5の交換の際の口金4の損傷も無くなる。さらに、」に訂正し、末行の「・・・減少することができる。」の後に「さらに、口金4も、第二の治具31を取り除いた後、第一の治具3をボルト12を解放することで押出装置本体2から取り外すことで、簡単に交換することができる。」を加入する。
(i)特許明細書【0011】を削除する。
(j)特許明細書【0012】の、第1行〜第15行(特許公報第1行〜第22行)の「図3及び図4は・・・例を示している。」を「図2は本発明の押出装置における他の例の構成を示す図である。図2に示す例において、図1に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す例は、図1に示す例と異なる形状の口金4を使用して押出装置1を構成している。本例においても図1に示す例と同様の効果を得ることができる。」に訂正する。
(k)特許明細書【0013】の、第1行〜第2行(特許公報第1行〜第3行)「第一の治具・・・してもよい。」を削除し、次のとおりとする。
「【0012】なお、図1では第一の治具や口金の外形を円筒形状で説明したが、円筒形状である必要はなく、必要に応じて形状例えば楕円形状でも差し支えないことはいうまでもないことである。更に、上述した例では、口金4の直径は押出装置本体2の開ロ11より大きい径を有するとしたが、必ずしもこの相対関係を有する必要はなく、反対の関係にあっても本発明には何等差し支えないことはいうまでもないことである。但しこの場合は押出装置本体内に口金が吸い込まれない構造にしておくことはいうまでもないことである。また、押出装置本体2の開□11部の形状も円形状に限定する必要はなく、楕円形状でも四角形状でもよく押出成形体に合った形状を選択することもいうまでもないことである。さらにまた、押え板5の開口18を円筒形状としたが、テーパの付いた円錐形状とすることもできる。」
(l)特許明細書【0014】の、第1行〜第9行(特許公報第2行〜第12行)の「口金と押え板とを・・・第二発明では、」を「押え板を第一の治具に着脱自在の第二の治具により口金に装着しているため、」に訂正し、末行の「・・防止できる。」の後に「さらに、第二の治具で押え板を固定するよう構成しているため、押出力に耐えるように押え板の厚さを厚くする必要が無く、押え板を同一厚さに統一することができる。」を加入して次のとおりとする。
「【0013】【発明の効果】以上の説明から明かなように、本発明によれば、押え板を第一の治具に着脱自在の第二の治具により口金に装着しているため、口金を押出装置本体に装着したまま押え板のみを交換可能となり、また押え板の交換の際の口金の損傷を防止できる。さらに、第二の治具で押え板を固定するよう構成しているため、押出力に耐えるように押え板の厚さを厚くする必要が無く、押え板を同一厚さに統一することができる。」
(m)【図面の簡単な説明】中、【図4】及び【図5】の欄を削除し、【図1】〜【図3】の欄を次のとおり訂正する。
「【図1】本発明の押出装置の一例の構成を示す図である。
【図2】本発明の押出装置の他の例の構成を示す図である。
【図3】従来の押出装置の一例の構成を示す図である。」
(n)【符号の説明】中、「21 アダプタ」を削除する。
(3)訂正事項c:図1及び図2を削除し、その図番を、図3を図1に、図4を図2に、図5を図3にそれぞれ訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1及び2を削除し、請求項3を請求項1に繰り上げるものであるから特許請求の範囲の減縮に該当する。また訂正事項bの(a)乃至(n)は、請求項1及び請求項2の削除に伴って明細書の記載を整理するものであり、訂正事項cも、請求項1及び請求項2の削除に伴って図1及び図2を削除すると共にその図番を繰り上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮に伴う明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、これら訂正事項a乃至cは、いずれも特許明細書に記載した事項の範囲内でなされたものであるから新規事項の追加に該当せず、また当該訂正によって実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
2-3.むすび
以上のとおり、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項において準用する特許法第126条第2項乃至第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.本件訂正発明
特許権者が請求した上記訂正は、上述したとおり、これを認容することができるから、本件訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明1」という)は、請求項1に記載された事項により特定される上記「2-1.(1)訂正事項a」に示すとおりのものである。
4.特許異議申立てについて
(1)特許異議申立ての理由
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出して、訂正前の本件請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、訂正前の本件請求項1乃至3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至3に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に違反してなされたものであると主張している。
(2)証拠の記載内容
甲第1号証及び甲第2号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
(2-1)甲第1号証:特公昭54-37884号公報
(a)「したがつて、本発明の目的は所望厚さの均質皮膜またはケーシングを有する押出モノシックハニカム構造体を提供することである。」(第3欄第26行乃至第28行)
(b)「第1および2図を参照するに、押出ダイス装置10が示され、この装置10は押出胴体14のための支持構造体12を含み、胴体14は押出バツチを受ける押出室16を形成する。所望形状の押出ダイス18が押出室16の出口端に隣接して押出胴体14を横断して延在している。ダイス本体18は押出室16と連通する供給通路22のための複数の開□を具備した入口面20を有する。また、ダイス本体18は相互連結した放出スロツト26を具備する出口面24を有する。供給通路22は放出スロット26の選ばれた領域と連通しており、押出室16からのバツチ物質は放出スロツト26に送られる。」(第5欄第9行乃至第21行)
(c)「マスクまたは面板リングアセンブリー30が押出ダイス18の下の位置に示される。面板リングアセンブリー30は面板またはマスク32、保持リング34および面板32を保持リンク34によりダイス18の外面24に隣接した位置に容易に取外し可能に固定させるための複数のボルトまたは押えねじ36を包含する。面板32はダイス18の出口面24に隣接して置かれかつ面板を貫通して延在する所望寸法および形状の中央開口部またはオリフイス40を取り巻く閉塞面38を有する。」(第5欄第28行乃至第38行)
(d)図1及び2には、ハニカム構造体の押出ダイス装置の概要が図示。
(2-2)甲第2号証:特開昭57-6721号公報
(a)「特に本発明は押出ダイの改良、乃至既存の押出ダイに使用してその押出ダイの汎用性を高めるフェースプレートリングアセンブリあるいは押出マスクアセンブリの改良に関するものである。」(第2頁右下欄第7行乃至第12行)
(b)「第1、2図において本発明の一実施例の押出マスク12は、押出ダイ10の前面に取り付けられている。その押出ダイ10は入口面14と押出面16を備えている。またその押出ダイ10はその押出ダイ10とシリンダー20を保持する支持構造18内に位置せしめられている。シリンダー20の内部は押出用のバッチ材料を収容する押出室22になっている。」(第4頁左上欄第3行乃至第10行)
(c)「押出マスク12は押出ダイ10に当接した固定位置に保持される固定部分13を備えている。この固定部分13は押出ダイ10の押出面15の選択された部分に当接してその部分の押出スロット26(および供給路24)を通って材料か押し出されるのを阻止するブロック面36を備えている。」(第4頁右上欄第4行乃至第10行)
(d)「押出マスク12の前記固定部分13内にカラー48か配されている。前記調節手段46はそのカラー48の貫通孔内にリテーナリング49によって保持され、その貫通孔内で自由に回転することかできるようになっている。」(第4頁右下欄第8行乃至第13行)
(e)「さらに、押出マスク12Aが押えボルト34およびリテーナリング30によって押出ダイ10に当接するように支持構造18上に保時されている。第1、2図の実施例と同様に押出マスク12Aは固定部分13と中央オリフィス38を備えている。さらに、本実施例の押出マスク12Aは中央オリフィス38とほぼ同様な形状の凹部形成手段42Aを備えている。本実施例においては両者は卵形をしている。また調節手段46Aは環状をしており、円形をなしているが点53、55において凹部形成手段42Aと当接している。その調節手段46Aは押出マスク12Aの固定部分13に螺合しており、その調節手段46Aを回転させると固定部分13上を押出ダイ10に対して前後動するようになっている。その調節手段46Aが凹部形成手段42Aに当接しているため、それによって凹部形成手段42Aが押出ダイ10の押出面16に対して前後動し、前記間隙44の大きさが変えられる。」(第5頁左下欄第1行乃至右下欄第1行)
(f)図4には、ハニカム構造体の押出装置の概要が図示。
(3)当審の判断
甲第1号証には、「ハニカム構造体の押出ダイス装置」に関し、その図2には、ダイス本体18が面板32、保持リング34及び押えねじ36からなる面板リングアセンブリー30によって、支持構造体12に取り外し可能に取り付けられた「ハニカム構造体の押出ダイス装置」が図示されているが、この「ハニカム構造体の押出ダイス装置」では、ダイス本体18を押える面板32は、保持リング34によって固定されているだけであるから、甲第1号証には、本件訂正発明1の如く「第一の治具」と「第二の治具」との組み合わせによって押え板(面板32に相当)が固定される構造については何ら記載されていないと云える。
また、甲第2号証には、「ハニカム構造体の押出装置」に関し、その図4には、押出ダイ10が固定部分13、リテーナリング30及び押えボルト34等で支持構造18に取り外し可能に取り付けられた「ハニカム構造体の押出装置」が図示されているが、この「ハニカム構造体の押出装置」でも、押出ダイス10を押える固定部分13は、リテーナリング30によって固定されているから、甲第2号証にも、本件訂正発明1の如く「第一の治具」と「第二の治具」との組み合わせによって押え板(固定部分13に相当)が固定される構造については何ら記載されていないと云える。
してみると、甲第1号証及び甲第2号証には、本件訂正発明1の「押出装置本体の先端に着脱自在とした第一の治具」や「第一の治具に着脱自在とした第二の治具」を使用して、「第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで押え板を口金に装着する」ような構造については、何ら記載又は示唆されていないと云えるから、本件訂正発明1は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。
5.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正発明1についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件訂正発明1についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
セラミックハニカム構造体押出用押出装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】セラミックハニカム成形体を押し出すための押出装置であって、内部に成形材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置において、口金と押え板とが包含できかつ押出装置本体の先端に着脱自在とした第一の治具を使用して、第一の治具の孔部にボルトを通し、そのボルトを押出装置本体のネジ部に固定することで、口金を押出装置本体に装着するとともに、第一の治具に着脱自在とした第二の治具を使用して、第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで、押え板を口金に装着することを特徴とするセラミックハニカム構造体押出用押出装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形体である隔壁で囲まれた多数の貫通路を有するセラミックハニカム構造体を押し出すために使用されるセラミックハニカム構造体押出用押出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、成形体である隔壁で囲まれた多数の貫通路を有するセラミックハニカム構造体を押し出すために使用される押出装置であって、内部にセラミック坏土等の成形用材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置は、種々の構成のものが知られている。
【0003】図3は従来の押出装置の一例の構成を示す図である。図3に示す例において、押出装置51は、内部に成形材料を保持する押出装置本体52と、押出装置本体52の先端部に装着した口金53と、口金53を押出装置本体52に装着するための、及び押し出すべき成形体の大きさを規定するための押え板であって、押出装置本体52にボルト54により着脱自在装着された押え板55とから構成されている。図3に示す装置では、押出装置本体52内にセラミック坏土等の成形用材料を充填し、下から図示しないプランジャー等により押すことにより、成形材料が口金53及び押え板55を通過することで、所定の形状の成形体を得ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した構成の従来の押出装置51では、押え板55を保持する部材が無く、押え板55自身に直接押し出された成形体が接触し、大きな押出力を受けるため、押え板55を厚くする必要があった。また、押し出し成形すべき成形体の大きさを変える必要がある場合、多数の押え板5が口金53の大きさに合わせて必要であり、効率が悪くなる問題があった。
【0005】本発明の目的は上述した課題を解消して、押え板を簡単形状で同一厚さに統一して利用することができ、しかも押え板の取り替えが容易なセラミックハニカム構造体用押出装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明のセラミックハニカム構造体押出用押出装置は、セラミックハニカム成形体を押し出すための押出装置であって、内部に成形材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置において、口金と押え板とが包含できかつ押出装置本体に着脱自在とした第一の治具を使用して、第一の治具の孔部にボルトを通し、そのボルトを押出装置本体のネジ部に固定することで、口金を押出装置本体に装着するとともに、第一の治具に着脱自在とした第二の治具を使用して、第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで、押え板を口金に装着することを特徴とするものである。
【0007】本発明では、押え板を第一の治具に着脱自在とした第二の治具により口金に装着することで、口金を押出装置本体に装着したまま押え板のみを交換することが可能となる。その結果、押え板を簡単形状で同一厚さに統一して利用することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は本発明のセラミックハニカム構造体押出用押出装置における円柱形状のセラミックハニカム構造体を押し出す装置の一例の構成を示す図である。図1に示す例において、押出装置1は、押出装置本体2に着脱自在とした第一の治具3を使用して、口金4を押出装置本体2に装着するとともに、第二の治具31を使用して、押え板5を口金4上に装着して構成されている。
【0009】押出装置本体2は、セラミック坏土等の成形材料を保持するための円筒体からなり、その先端部に口金4を取り付ける円形の開口11と、ボルト12を固定するためのネジ部13とを備えている。第一の治具3は、内部に口金4を固定し押え板5を挿通するための円筒体からなり、ボルト12を挿通する孔部16を備えている。口金4は、内部に所定の成形溝と供給孔とを有する円柱形状の部材からなり、その直径は押出装置本体2の開口11よりも大きい径を有している。口金4の下流側に設けた押え板5は、中心部に押し出すべき成形体17の大きさを規定する開口18を有する円柱形状の部材からなる。第二の治具31は、ボルト32で第一の治具3に固定することで、押え板5を口金4上に装着している。尚、図1に示す例では、第二の治具31は第一治具3より突出しているが、第二の治具31は第一の治具3の中に一部または全部がはまり込むようにしてもよい。
【0010】図1に示す例では、第二の治具31をボルト32を解放するだけで第一の治具3から取り外すことができる。そのため、押え板5のみを口金4を押出装置本体2から取り除く必要無しで取り替えることができ、押え板5の交換が容易になる。これは、成形体17の大きさが大きくなると必然的に口金4も大きくかつ重くなり、口金4の取り替えが困難になる大形状、例えば直径200mm以上のものを押し出す場合には特に有効である。また、そのため押え板5の交換の際の口金4の損傷も無くなる。さらに、従来方法では使用する口金の厚さ及び外形に合わせて押え板を準備する必要があったが、本発明では、押え板5は成形体17の大きさを規定する開口18の大きさと口金4の外形とから基準化することが簡単で、準備すべき押え板5の在庫を減少することができる。さらに、口金4も、第二の治具31を取り除いた後、第一の治具3をボルト12を解放することで押出装置本体2から取り外すことで、簡単に交換することができる。
【0011】図2は本発明の押出装置における他の例の構成を示す図である。図2に示す例において、図1に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す例は、図1に示す例と異なる形状の口金4を使用して押出装置1を構成している。本例においても図1に示す例と同様の効果を得ることができる。
【0012】なお、図1では第一の治具や口金の外形を円筒形状で説明したが、円筒形状である必要はなく、必要に応じて形状例えば楕円形状でも差し支えないことはいうまでもないことである。更に、上述した例では、口金4の直径は押出装置本体2の開口11より大きい径を有するとしたが、必ずしもこの相対関係を有する必要はなく、反対の関係にあっても本発明には何等差し支えないことはいうまでもないことである。但しこの場合は押出装置本体内に口金が吸い込まれない構造にしておくことはいうまでもないことである。また、押出装置本体2の開口11部の形状も円形状に限定する必要はなく、楕円形状でも四角形状でもよく押出成形体に合った形状を選択することもいうまでもないことである。さらにまた、押え板5の開口18を円筒形状としたが、テーパの付いた円錐形状とすることもできる。
【0013】
【発明の効果】以上の説明から明かなように、本発明によれば、押え板を第一の治具に着脱自在の第二の治具により口金に装着しているため、口金を押出装置本体に装着したまま押え板のみを交換可能となり、また押え板の交換の際の口金の損傷を防止できる。さらに、第二の治具で押え板を固定するよう構成しているため、押出力に耐えるように押え板の厚さを厚くする必要が無く、押え板を同一厚さに統一することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の押出装置の一例の構成を示す図である。
【図2】本発明の押出装置の他の例の構成を示す図である。
【図3】従来の押出装置の一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 押出装置、2 押出装置本体、3 第一の治具、4 口金、5 押え板、31 第二の治具
【図面】



 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件訂正の要旨は、本件特許第3177181号発明の特許明細書を平成14年7月16日付け訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおりに訂正するものである。
(1)訂正事項a:請求項1及び請求項2を削除し、請求項3を請求項1に繰り上げて、特許請求の範囲の記載を次のとおりとする。
「【請求項1】セラミックハニカム成形体を押し出すための押出装置であって、内部に成形材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置において、口金と押え板とが包含できかつ押出装置本体の先端に着脱自在とした第一の治具を使用して、第一の治具の孔部にボルトを通し、そのボルトを押出装置本体のネジ部に固定することで、口金を押出装置本体に装着するとともに、第一の治具に着脱自在とした第二の治具を使用して、第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで、押え板を口金に装着することを特徴とするセラミックハニカム構造体押出用押出装置。」
(2)訂正事項b:特許請求の範囲の減縮に伴い、特許明細書を明りょうでない記載の釈明を目的として、(a)乃至(n)のとおり訂正する。
(a)特許明細書【0001】の、第2行(特許公報第3行)「押出装置」を「セラミックハニカム構造体押出用押出装置」に訂正する。
(b)特許明細書【0003】の、第1行(2箇所)及び第6行(特許公報第1行、第2行及び第8行)の「図5」を「図3」に訂正する。
(c)特許明細書【0005】の、第2行(特許公報第3行)「押出装置」を「セラミックハニカム構造体用押出装置」に訂正する。
(d)特許明細書【0006】を削除する。
(e)特許明細書【0007】を、訂正した請求項1に合わせるために次のとおり訂正する。
「【0006】【課題を解決するための手段】本発明のセラミックハニカム構造体押出用押出装置は、セラミックハニカム成形体を押し出すための押出装置であって、内部に成形材料を保持する押出装置本体と、押出装置本体の先端部に装着する口金と、口金を押さえるとともに押出すべき成形体の大きさを規定する押え板とからなる押出装置において、口金と押え板とが包含できかつ押出装置本体に着脱自在とした第一の治具を使用して、第一の治具の孔部にボルトを通し、そのボルトを押出装置本体のネジ部に固定することで、口金を押出装置本体に装着するとともに、第一の治具に着脱自在とした第二の治具を使用して、第二の治具をボルトで第一の治具に固定することで、押え板を口金に装着することを特徴とするものである。」
(f)特許明細書【0008】の、第1行〜第7行(特許公報第1行〜第10行)の「口金と押え板とを・・・統一することができる。さらに、」を削除し、第8行((特許公報第11行)「装着した第二発明では、」を「装着することで、」に訂正し、末行「可能となる。」の後に「その結果、押え板を簡単形状で同一厚さに統一して利用することができる。」を加入して次のとおり訂正する。「【0007】本発明では、押え板を第一の治具に着脱自在とした第二の治具により口金に装着することで、口金を押出装置本体に装着したまま押え板のみを交換することが可能となる。その結果、押え板を簡単形状で同一厚さに統一して利用することができる。」
(g)特許明細書【0009】第1行〜第4行(特許公報第1行〜第6行)の「図1は・・・構成されている。」のうち、第1行〜第2行(特許公報第1行〜第3行)の「図1は・・・示す図である。」を「図1は本発明のセラミックハニカム構造体押出用装置における円柱形状のセラミックハニカム構造体を押し出す装置の一例の構成を示す図である。」に訂正し、また第4行(特許公報第5行〜第6行)の「口金4及び押え板5を・・・装着して」を「口金4を押出本体2に装着するとともに第二の治具31を使用して、押え板5を口金4上に装着して」に訂正して、「【0008】【発明の実施の形態】図1は本発明のセラミックハニカム構造体押出用押出装置における円柱形状のセラミックハニカム構造体を押し出す装置の一例の構成を示す図である。図1に示す例において、押出装置1は、押出装置本体2に着脱自在とした第一の治具3を使用して、口金4を押出装置本体2に装着するとともに、第二の治具31を使用して、押え板5を口金4上に装着して構成されている。」とすると共に、特許明細書【0009】第4行〜第14行(特許公報第6行〜第20行)の「押出装置本体2は、・・・外形を有している。」のうち、第7行〜第8行(特許公報第10行〜第11行)の「内部に・・・円筒体からなり、」を「内部に口金4を固定し押え板5を挿通するための円筒体からなり、」に訂正し、第8行〜第10行(特許公報第11行〜第14行)の「中心に円形の開口14を・・・とを備えている。」を「ボルト12を挿通する孔部16を備えている。」に訂正し、第13行〜第14行(特許公報第18〜第20行)の「部材からなり、その外形は口金5とほぼ同一の外形を有している。」を「部材からなる。第二の治具31は、ボルト32で第一の治具3に固定することで、押え板5を口金4上に装着している。尚、図1に示す例では、第二の治具31は第一治具3より突出しているが、第二の治具31は第一の治具3の中に一部または全部がはまり込むようにしてもよい。」に訂正する。
(h)特許明細書【0010】の、第1行〜第5行(特許公報第1行〜第8行)の「図1に示す例では、・・・行うことができる。また、」を「図1に示す例では.第二の治具31をボルト32を解放するだけで第一の治具3から取り外すことができる。そのため、押え板5のみを口金4を押出装置本体2から取り除く必要無しで取り替えることができ、押え板5の交換が容易になる。これは、成形体17の大きさが大きくなると必然的に口金4も大きくかつ重くなり、口金4の取り替えが困難になる大形状、例えば直径200mm以上のものを押し出す場合には特に有効である。また、そのため押え板5の交換の際の口金4の損傷も無くなる。さらに、」に訂正し、末行の「・・・減少することができる。」の後に「さらに、口金4も、第二の治具31を取り除いた後、第一の治具3をボルト12を解放することで押出装置本体2から取り外すことで、簡単に交換することができる。」を加入する。
(i)特許明細書【0011】を削除する。
(j)特許明細書【0012】の、第1行〜第15行(特許公報第1行〜第22行)の「図3及び図4は・・・例を示している。」を「図2は本発明の押出装置における他の例の構成を示す図である。図2に示す例において、図1に示す部材と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す例は、図1に示す例と異なる形状の口金4を使用して押出装置1を構成している。本例においても図1に示す例と同様の効果を得ることができる。」に訂正する。
(k)特許明細書【0013】の、第1行〜第2行(特許公報第1行〜第3行)「第一の治具・・・してもよい。」を削除し、次のとおりとする。
「【0012】なお、図1では第一の治具や口金の外形を円筒形状で説明したが、円筒形状である必要はなく、必要に応じて形状例えば楕円形状でも差し支えないことはいうまでもないことである。更に、上述した例では、口金4の直径は押出装置本体2の開口11より大きい径を有するとしたが、必ずしもこの相対関係を有する必要はなく、反対の関係にあっても本発明には何等差し支えないことはいうまでもないことである。但しこの場合は押出装置本体内に口金が吸い込まれない構造にしておくことはいうまでもないことである。また、押出装置本体2の開□11部の形状も円形状に限定する必要はなく、楕円形状でも四角形状でもよく押出成形体に合った形状を選択することもいうまでもないことである。さらにまた、押え板5の開口18を円筒形状としたが、テーパの付いた円錐形状とすることもできる。」
(l)特許明細書【0014】の、第1行〜第9行(特許公報第2行〜第12行)の「口金と押え板とを・・・第二発明では、」を「押え板を第一の治具に着脱自在の第二の治具により口金に装着しているため、」に訂正し、末行の「・・防止できる。」の後に「さらに、第二の治具で押え板を固定するよう構成しているため、押出力に耐えるように押え板の厚さを厚くする必要が無く、押え板を同一厚さに統一することができる。」を加入して次のとおりとする。
「【0013】【発明の効果】以上の説明から明かなように、本発明によれば、押え板を第一の治具に着脱自在の第二の治具により口金に装着しているため、口金を押出装置本体に装着したまま押え板のみを交換可能となり、また押え板の交換の際の口金の損傷を防止できる。さらに、第二の治具で押え板を固定するよう構成しているため、押出力に耐えるように押え板の厚さを厚くする必要が無く、押え板を同一厚さに統一することができる。」
(m)【図面の簡単な説明】中、【図4】及び【図5】の欄を削除し、【図1】〜【図3】の欄を次のとおり訂正する。
「【図1】本発明の押出装置の一例の構成を示す図である。
【図2】本発明の押出装置の他の例の構成を示す図である。
【図3】従来の押出装置の一例の構成を示す図である。」
(n)【符号の説明】中、「21 アダプタ」を削除する。
(3)訂正事項c:図1及び図2を削除し、その図番を、図3を図1に、図4を図2に、図5を図3にそれぞれ訂正する。
異議決定日 2002-08-30 
出願番号 特願平9-75329
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B28B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
登録日 2001-04-06 
登録番号 特許第3177181号(P3177181)
権利者 日本碍子株式会社
発明の名称 セラミックハニカム構造体押出用押出装置  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 冨田 典  
代理人 徳永 博  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 青木 純雄  
代理人 冨田 典  
代理人 梅本 政夫  
代理人 高見 和明  
代理人 杉村 純子  
代理人 杉村 興作  
代理人 杉村 興作  
代理人 徳永 博  
代理人 杉村 純子  
代理人 梅本 政夫  
代理人 中谷 光夫  
代理人 中谷 光夫  
代理人 杉村 暁秀  
代理人 青木 純雄  
代理人 高見 和明  

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