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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
審判 全部申し立て 1項2号公然実施  B01D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
管理番号 1068871
異議申立番号 異議2000-73638  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-01-21 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-09-25 
確定日 2002-09-21 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3025629号「高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3025629号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第3025629号は、平成7年7月5日の出願であって、平成12年1月21日(公報発行平成12年3月27日)に設定登録され、平成12年9月25日に東洋紡績株式会社から特許異議の申立を受けたものであって、その後平成13年1月22日(発送日平成13年2月2日)付で取消理由通知がなされ、その指定期間内に訂正請求がなされ、その後平成14年5月31日(発送平成14年6月14日)再度の取消理由通知がなされ、先の訂正請求を取下げる共に、その指定期間内である平成14年7月3日に新たな訂正請求がなされたものである。
2.訂正の要旨
(1)訂正事項a
特許請求の範囲請求項1の「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、 m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、芳香族多官能酸ハロゲン化物、脂肪族多官能酸ハロゲン化物、または脂環式多官能酸ハロゲン化物であって、芳香族多官能酸ハロゲン化物にあってはトリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる化合物であり、上記ポリアミド系スキン層の比表面積が3以上1000以下であることを特徴とする高透過性複合逆浸透膜。」とあるのを、「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、 m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であり、上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であり、かつ塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」と訂正する。
(2)訂正事項b
発明の名称「高透過性複合逆浸透膜」を、「高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜」と訂正する。
(3)訂正事項c
発明の詳細な説明中、段落【0007】【0008】【0010】【0037】の「高透過性」とあるのを、「高脱塩性高水透過性」と訂正する。
(4)訂正事項d
発明の詳細な説明中段落【0023】の「、脂肪族多官能酸ハロゲン化物、または脂環式多官能酸ハロゲン化物であって、」とあるのを、「が挙げられる。」と訂正する。
(5)訂正事項e
発明の詳細な説明中、段落【0024】【0025】を削除する。
(6)訂正事項f
発明の詳細な説明中、段落【0009】の「上記表面積及び比表面積を求める方法は・・・・透過型電子顕微鏡(TEM)等が挙げられる。」とあるのを、「上記表面積及び比表面積は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM,FE-SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等により、膜の断面を分析して表面積や比表面積を求める手法に従い求めることができる。」と訂正する。
(7)訂正事項g
発明の詳細な説明、中段落【0007】の末行「あること」とあるのを、「あり、かつ塩化ナトリウム阻止率99.5%以上であること」と訂正する。

3.訂正の適否についての検討
(1)上記訂正事項aは、
a-1.2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化合物が「トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物」であることに限定する訂正
a-2.ポリアミドスキン層の比表面積が「断面分析により求めた」ものであることを限定する訂正
a-3.ポリアミドスキン層が、「塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上である」ことを限定する訂正
a-4.高透過性複合逆浸透膜が、「高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜」であるものに限定する訂正
に細分することができる。
訂正事項a-1,a-2,a-3およびa-4は、いずれも特許請求の範囲の技術的事項を限定するものであるから、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、訂正事項a-2,a-3,a-4は本件特許明細書段落【0036】に記載された事項であるから、新規事項の追加に該当しない。
(2)上記訂正事項b〜d、gは、本件特許明細書の発明名称及び発明の詳細な説明を、訂正された特許請求の範囲請求項1の記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
(3)訂正事項eは、訂正事項a-1により本件特許発明の技術的範囲でなくなった化合物についての記載を削除するものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明を、訂正された特許請求の範囲請求項1の記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
(4)訂正事項fは、訂正事項a-2によりポリアミドスキン層の比表面積が「断面分析により求めた」ものであることに限定された結果、それ以外の分析方法を削除するものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明を、訂正された特許請求の範囲請求項1の記載に整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。

そして、上記訂正事項aないし訂正事項gは、実質的に特許請求の範囲を変更し、又は拡張するものでもない。
してみると、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定にそれぞれ適合するものであるから、上記訂正は認める。
4.特許異議申立人の主張の概要
(1)特許異議申立人東洋紡績株式会社は、下記甲第1〜6号証、及び参考資料1〜2を提出し、
本件請求項1に係る発明は、本件特許出願前公然実施された発明であるから、特許法第29条第1項第2号の発明に該当し、甲第1ないし3号証に記載された発明であるから、同法第29条第1項第3号の発明に該当し、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜3号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件請求項1に係る発明は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。
甲第1号証:特開平7-8770号公報
甲第2号証:特開平6-47260号公報
甲第3号証:特表平4-507216号公報
甲第4号証:「Proc.Eur.-Jpn.Congr.Membr.Membr.Processes」,pp327-386(1984)
甲第5号証:複合逆浸透膜の比表面積算出方法について
甲第6号証:実験成績報告書
参考資料1:「Jour.of Membrane Science」83(1993)81頁、144頁
参考資料2:「Handbook of Industrial Membrane Technology」pp327-331、Noyes Publ.,NJ.USA(1990)

5.取消理由の検討
5-1.本件発明の認定
本件発明は、平成14年7月3日付け訂正請求により訂正された明細書の請求項1に記載された事項により特定された次のとおりのものである(以下「本件発明」という)。
「【請求項1】 2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、 m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であり、上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であり、かつ塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」

5-2.本件発明が公知公用であるとの主張について
異議申立人は、甲第4号証のFig.3に「FT-30」の断面TEM写真が開示され、甲第4号証が「Proc.Eur.-Jpn.Congr.Membr.Processes,pp327-386(1984)」に該当することは、参考資料1の144頁の文献103の記載から明らかであり、参考資料2の記載によれば、「FT-30」複合膜は、1984年時点で販売されており、多孔質の支持層(UF膜)上にメタフェニレンジアミンとトリメシン酸クロライドからなるポリアミドスキン層を積層した複合逆浸透膜であり、甲第5号証によれば、「FT-30」複合膜の比表面積は3.13であり、「FT-30」複合膜は本件発明の請求項1で規定された数値を満たすから、本件発明は特許法第29条第1項第2号に該当し、特許を受けることができないと主張する。
しかしながら、甲第5号証によれば、比表面積は円柱近似して計算されているが(第1頁「(2)比表面積の算出」の項参照)、参考資料の記載によれば、甲第4号証に開示される「FT-30」複合膜の表面は「うね及び谷」状の凹凸であり、その比表面積を計算するのに円柱近似した計算値が適切でなく、本件特許権者が甲第5号証第2頁第2図から、本件発明で定義される「断面分析」により求めた数値(2.33:平成13年4月3日付特許異議意見書第10頁23〜29行)とも異なるものである。
したがって、甲第5号証の計算値を以て「FT-30」複合膜の比表面積と値とすることはできず、上記申立人の主張は採用できない。
よって、本件発明は、項第4号証記載の「FT-30」複合膜によって、公知公用となった発明ということはできない。

5-3.刊行物記載の発明若しくは該発明から容易に発明をすることができたとする主張について
(1)刊行物記載の発明
ア.甲第1号証(特開平7-8770号公報)
ア-1.「【請求項1】多孔性支持体上に、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含む溶液Aを被覆する工程、及び多官能性酸ハロゲン化物を含む溶液Bを上記溶液A相と接触させる工程を含む手段により、ポリアミド系スキン層を形成して複合逆浸透膜を製造する方法において、前記溶液Aと溶液Bの溶解度パラメーターの差が7〜15(cal/cm3)1/2 であることを特徴とする高透過性複合逆浸透膜の製造方法。」(特許請求の範囲)
ア-2.「本発明において用いる溶液Aおよび溶液Bは、上記特定の溶解度パラメーターの差を満たす溶液であれば、その溶媒は特に限定されないが、例えば、本発明で好ましく用いられる溶液Aとしては、水とエタノール、プロパノール、・・・混合溶液、その他単独で溶解度パラメーターが10(cal/cm3)1/2 以上ある溶媒と水との混合溶液が挙げられる。」(第2頁2欄25〜39行)
ア-3.「かかる芳香族多官能アミンとしては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸・・・等が挙げられる。」(第3頁3欄8〜13行)
ア-4.「また本発明で溶液Bに含まれる多官能性酸ハロゲン化物は、特に限定されず、芳香族、脂肪族、脂環式等の多官能性酸ハロゲン化物が挙げられる。かかる芳香族多官能性酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ビフェニルジカルボン酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸ジクロライド等が挙げられる。」(第3頁3欄22〜29行)
ア-5.「より詳細には、多孔性支持体上に、前記アミン成分を含有する溶液Aからなる第1の層を形成し、次いで前記酸ハライド成分を含有する溶液Bからなる層を上記第1の層上に形成し、界面重縮合を行って、架橋ポリアミドからなる薄膜を多孔性支持体上に形成させることによって得ることができる。」(第3頁4欄8〜13行)
ア-6.第5頁【表1】には、実施例1〜3について、1500ppmNaCl水溶液の塩阻止率99.4〜99.6[%]及び透過流束0.7〜1.0[m3/m2・d]が表示されている。
イ.甲第2号証(特開平6-47260号公報)
イ-1.「一般に本発明の膜は、多孔性基質上における第1の反応物と第2の反応物の界面重合により製造する。第1の反応物は水溶液の形態で与えられる。第2の反応物は、脂肪族炭化水素、及び溶媒の極性を増す、及び/又は溶媒と水の界面張力を減少させるが反応物の重合を妨げない、あるいは基質を損なわない可溶性有機添加剤を含む溶媒系に第2の反応物を溶解した溶液の形態で与えられる。本発明は一般的に半透膜の製造に有用であるが、特にポリアミド半透膜の製造に適している。ポリアミド半透膜は、多孔性ポリマー基質をジアミンの水溶液を含む第1の反応物で処理し、その後ジアミン処理基質を、脂肪族炭化水素溶媒と適した添加剤から成る溶媒系中のポリアシルハライド反応物を含む第2の反応物の溶液で処理することにより製造する。本発明で使用するのに適したジアミンの水溶液は、m-フェニレンジアミン及びp-フェニレンジアミンが最も好ましい。他の有用なジアミンにはキシレンジアミン、ピペラジンなどが含まれる。」(第2頁右欄40行〜第3頁左欄7行)
イ-2.「ポリアシルハライドの例には、・・・トリメソイルクロリド、インフタロイルクロリド、・・・1,3,5-シクロヘキサントリカルボニルクロリド、テトラヒドロフラン-1,2,3,4-テトラカルボニルクロリドなどが含まれる」(第3頁左欄9〜18行)
イ-3.「脂肪族炭化水素には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ナフサ、オクタンなどが含まれる」(第3頁左欄28〜30行)
イ-4.「添加剤には、・・・ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン・・・アセトン、メチルイソブチルケトン、2-ブタノン・・・酢酸メチル、蟻酸エチル、酢酸エチル・・・ニトロエタン、ニトロメタン・・・1,1,1-トリクロロ工夕ン、ジクロロメタン・・・トリクロロエチレン、ジクロロエチレン・・・クロロベンゼン、フルオロベンゼン・・・ベンゼン、トルエン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン・・・シクロヘキセン、へプテン・・・フランなどが含まれる」(第3頁右欄1〜20行)
イ-5.第4頁の「表1」には、実施例に係る逆浸透膜の塩類排除率(NaCl除去率)96.06〜98.46%が開示されている。
ウ.甲第3号証(特表平4-507216号公報)
ウ-1.「多孔質支持体にアミンと反応性でない極性-非プロトン溶剤を含有するポリアミンまたはビスフェノールの水溶液を塗布し、過剰の溶液を除去し、塗布された多孔質支持体をハロゲン化ポリアシル、ハロゲン化ポリスルホニルまたはポリイソシアネートの有機溶剤溶液と接触させて、多孔質支持体の内部および/または表面に反応生成物を形成し、得られた複合材料を硬化条件で硬化させて高フラックス半透膜を形成することにより製造される高フラックス半透膜。」(特許請求の範囲)
ウ-2.「(i)モノマーポリアミンとしてピペラジン、メチルピペラジン、ジメチルピペラジン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ビフェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’ジメチルベンジジン、3,3’ジクロロベンジジンが例示される;(ii)ポリアミンのキャリヤーとして用いられる溶液が、ポリアミンが約0.1-約20重量%の量で溶液中に存在する水からなる;(iii)極性-非プロトン溶剤がジオキサン、テトラヒドロフランを含む;(iv)芳香族ポリカルボン酸ハロゲン化物が、トリメソイルクロリド(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸クロリド)、トリメリトイルクロリド(1,2,4-ベンゼントリカルボン酸クロリド)、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリドを含む;(v)芳香族ポリカルボン酸ハロゲン化物を溶解する有機溶剤は水と非混和性のものからなり、たとえばn-ペンタン、n-へキサン、n-へプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、ナフサなど、またはハロゲン化炭化水素からなること。」(第3頁右上欄19行〜右下欄22行)
ウ-3.第4頁右下欄の「表」には、実施例に係る逆浸透膜の塩排除率(NaCl除去率)82.4〜97.7%が開示されている。
エ.甲第6号証(実験成績報告書)
エ-1.「実験の結果、特表平4-507,216号 例Iに準じて調製した複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層は、第1表に示した通りの比表面積を有している。すなわち、これは特許第3,025,629号請求項1に記載された下記のすべての特徴を有する膜である。a)m-フェニレンジアミンとトリメシン酸クロライドからなるポリアミド系スキン層を有する複合逆浸透膜 b)ポリアミド系スキン層の比表面積が3以上1000以下」(第3頁下から6〜1行)

(2)対比・判断
ア.甲第1号証との対比
記載ア-1、記載ア-3、記載ア-4及び記載ア-6によれば、甲第1号証に記載される半透膜も、多孔性支持体上に、m-フェニレンジアミン等のポリアミンとトリメシン酸クロライド等の芳香族多官能性酸ハロゲン化物からなるスキン層薄膜を形成した複合半透膜であり、塩阻止率は99.5%以上であるから、甲第1号証には、「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化合物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、 m-フェニレンジアミン等から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド等から選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であり、かつ塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」が記載されていることになる。
したがって、本件発明と甲第1号証記載の逆浸透膜とを対比すると、上記の点で一致するものの、甲第1号証には、「上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であること」は記載がない点で異なる。
異議申立人は、記載ア-2、ア-5及び平成13年6月21日付上申書によれば、甲第1号証記載の半透膜の製造方法においても、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化合物との反応時に、溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2 のアルコール類を存在させており、本件発明と同一の製造方法により製造されたものであるから、同一の高水透過性複合逆浸透膜が得られたものである旨主張する。
しかしながら、甲第1号証記載の方法では、記載ア-2で例示されるアルコール類は水との混合液(溶液A)として使用され、該混合液の溶解度パラメータは17〜23(cal/cm3)1/2 (第2頁2欄44〜45行)であり、しかも記載ア-1によれば、溶液Aが混合されるのはアミノ基を有する化合物であるのに対し、本件発明の実施例では多官能性酸ハロゲン化合物である(本件特許公報第2頁4欄16〜24行)点でも相違する。
したがって、両者の方法は同一とは云えず、しかも、甲第1号証記載の半透膜の透過流束(Flux)を、本件発明と同じ条件で換算すると本件発明の実施例1で製造された膜の塩阻止率は99.5%、透過流束は1.0m3/m2・日であるのに対し、甲第1号証記載の方法で製造された膜の塩阻止率は99.5%であるものの、透過流束は0.51m3/m2・日にすぎず、透過流束の点で本件発明の膜は優れており、この点からも甲第1号証記載の膜が本件発明の膜と同一とはいえず、異議申立人の主張は採用できない。
イ.刊行物2との対比
記載イ-1、記載イ-2によれば、甲第2号証に記載される半透膜も、多孔性支持体上に、m-フェニレンジアミン等のポリアミンとトリメソクロリド(トリメシン酸クロライド)等の芳香族多官能性酸ハロゲン化物からなるスキン層薄膜を形成した複合半透膜であるから、甲第2号証には、「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する芳香族多官能性酸ハロゲン化合物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、 m-フェニレンジアミン等から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド等から選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」が記載されていることになり、記載イ-5によれば、甲第2号証に記載される逆浸透膜の塩阻止率は最大の実施例3でも98.46%である。
したがって、本件発明と甲第2号証記載の発明とを対比すると、上記の点で一致するものの、甲第2号証には、「塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であり、上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であること」は記載がない点で異なる。
ウ.甲第3号証との対比
記載ウ-1、記載ウ-2によれば、甲第3号証に記載される半透膜も、多孔性支持体上に、m-フェニレンジアミン等のポリアミンとトリメソいるクロリド(1,3,5-ベンゼントリカルボン酸クロライド)等の芳香族多官能性酸ハロゲン化物からなるスキン層薄膜を形成した複合半透膜であるから、甲第3号証には、「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する芳香族多官能性酸ハロゲン化合物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、 m-フェニレンジアミン等から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド等から選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」が記載されていることになり、記載ウ-5によれば、甲第3号証に記載される逆浸透膜の塩阻止率は最大の実施例3でも97.7%である。
したがって、本件発明と甲第3号証記載の発明とを対比すると、上記の点で一致するものの、甲第3号証には、「塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であり、上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であること」は記載がない点で異なる。
さらに、申立人Aが提出した甲第6号証には、甲第3号証を追試して製造した複合半透膜の比表面積を本件特許明細書第2頁右欄3から15行に記載された方法で測定した結果、3.0以上であったことが記載されているが、たとえこの測定結果が正しいとしても、上述のように、両者は塩阻止率の点で物性が異なる以上、本件発明が甲第3号証に記載された発明とすることはできない。
(3)まとめ
以上のとおり、甲第1〜3号証には「塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上である高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜」が記載されていないのであるから、本件発明は、甲第1〜3号証に記載された発明とすることはできず、また、例え甲第3号証に記載された逆浸透膜の比表面積が本件発明の数値範囲を充足するからといって、甲第1号証記載の逆浸透膜の比表面積を本件発明の数値範囲とし、高塩阻止率を保ったままで、高透過流束を有する逆浸透膜を得ることを、当業者が容易に想到することができたとはいえないから、本件発明は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。

6.結び
以上のとおりであるから、本件発明に係る特許は、特許異議申立の理由および証拠によっては取り消すことができない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、
上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸から選ばれる化合物であり、
上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であり、
上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であり、かつ塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、液状混合物中の成分を選択的に分離するための複合逆浸透膜に関し、詳しくは、微多孔性支持体上にポリアミドを主成分とする活性層あるいは薄膜とも呼ばれるスキン層を備えた高塩阻止率と高透過性を併せ有する複合逆浸透膜に関する。かかる複合逆浸透膜は、超純水の製造、海水またはかん水の脱塩等に好適に用いられ、また染色排水や電着塗料排水等の公害発生原因である汚れ等から、その中に含まれる汚染源あるいは有効物質を除去回収し、ひいては排水のクローズ化に寄与することができる。また、食品用途等で有効成分の濃縮等にも用いることができる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、非対称逆浸透膜とは構造の異なる逆浸透膜として、微多孔性支持体上に実質的に選択分離性を有する活性なスキン層を形成してなる複合逆浸透膜が知られている。
【0003】
現在、かかる複合逆浸透膜として、多官能芳香族アミンと多官能芳香族酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなるスキン層が、支持体上に形成されたものが多く知られている(例えば、特開昭55-147106号、特開昭62-121603号、特開昭63-218208号、特開平2-187135号等)。
【0004】
また、多官能芳香族アミンと多官能脂環式酸ハロゲン化物との界面重合によって得られるポリアミドからなるスキン層が、支持体上に形成されたものも知られている(例えば、特開昭61-42308号)。
【0005】
上記複合逆浸透膜は、高い脱塩性能及び水透過性能を有するが、さらに高い脱塩性能を維持したまま水透過性を向上させることが、運転コストや設備コストの低減や効率面等の点から望まれている。これらの要求に対し、各種添加物などが提案されているが(例えば、特開昭63-12310号)、性能は改善されているものの未だ不十分であり、さらに高い性能を有する複合逆浸透膜が求められている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高い塩阻止率を維持し、高い水透過性能を併せ有する複合逆浸透膜を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜は、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記ポリアミド系スキン層の比表面積が3以上1000以下であり、かつ塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であることを特徴とする構成である。
【0008】
本発明において、上記ポリアミド系スキン層の比表面積が3以上1000以下であることが好ましく、3.1以上500以下であることがさらに好ましい。該比表面積が3未満であれば、充分に高い水透過性能を得られなくなり、また1000を超えれば、スキン層の強度が小さくなるため、使用時に損傷を受けやすくなり、実用性が伴わない複合逆浸透膜となる。また3.1以上500以下であれば、得られる複合逆浸透膜の性能は、操作圧力7.5kg/cm2、温度25℃にて塩化ナトリウム500ppmを含有するpH6.5の水溶液を1時間透過させた後の透過流束は0.65m3/m2・日以上となり、またスキン層の強度が充分に大きい極めて性能の高い高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜が実現できる。
【0009】
本発明において用いるスキン層の比表面積とは、次の式で定義される。
スキン層の比表面積=(スキン層の表面積)/(微多孔性支持体の表面積)
上記スキン層の表面積は、微多孔性支持体と接触している面と反対側の面、即ち供給液と接触する側の面の表面積を表している。一方、微多孔性支持体の表面積は、スキン層と接触している面の表面積を表している。上記表面積及び比表面積は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM,FE-SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等により、膜の断面を分析して表面積や比表面積を求める手法に従い求めることができる。
【0010】
本発明の高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜は、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハライド化合物との界面重縮合反応時に、溶解度パラメーターが8〜14(cal/cm3)1/2の化合物、例えばアルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、ハロゲン化炭化水素類、含窒素化合物類、及び含硫黄化合物類等から選ばれる少なくとも一つの化合物を存在させることにより製造することができる。かかるアルコール類としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、t-アミルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、ウンデカノール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ネオペンチルグリコール、t-ブタノール、ベンジルアルコール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0011】
また、エーテル類としては、例えば、アニソール、エチルイソアミルエーテル、エチル-t-ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、クラウンエーテル、クレジルメチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジエチルエーテル、ジオキサン、ジグリシジルエーテル、シネオール、ジフェニルエーテル、ジブチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジベンジルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、トリオキサン、ジクロロエチルエーテル、ブチルフェニルエーテル、フラン、メチル-t-ブチルエーテル、モノジクロロジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレンクロロヒドリン等が挙げられる。
【0012】
また、ケトン類としては、例えば、エチルブチイルケトン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0013】
また、エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソアミル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等が挙げられる。
【0014】
また、ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、アリルクロライド、塩化アミル、ジクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられる。
【0015】
また、含窒素化合物類としては、例えば、ニトロメタン、ホルムアミド等が挙げられる。
【0016】
また、含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオラン等が挙げられる。以上のなかでもアルコール類、エーテル類が特に好ましく用いられる。これらの化合物は単独であるいは複数で存在させることができる。
【0017】
【作用】
前記した本発明の構成によれば、2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記ポリアミド系スキン層の比表面積が3以上1000以下であることにより、高い塩阻止率を維持し、高い水透過性能を併せ有する複合逆浸透膜が実現できる。すなわち、本発明者らは、複合逆浸透膜の性能とポリアミド系スキン層の比表面積について密接な関係があることを見出し、ポリアミド系スキン層の比表面積を規制することにより、高い塩阻止率を維持し、高い水透過性能を併せ有する複合逆浸透膜が得られることが判り、本発明をするに至った。
【0018】
【0019】
本発明で用いられる2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物としては、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸が挙げられる。これらのアミンは単独で用いてもよく、混合物として用いてもよい。
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
本発明において用いられる2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物としては、芳香族多官能酸ハロゲン化物が挙げられる。芳香族多官能酸ハロゲン化物にあってはトリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる化合物が挙げられる。
【0024】
【0025】
【0026】
本発明においては、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とを、界面重合させることにより、微多孔性支持体上に架橋ポリアミドを主成分とするスキン層が形成された複合逆浸透膜が得られる。
【0027】
本発明において上記スキン層を支持する微多孔性支持体は、スキン層を支持し得る物であれば特に限定されず、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンようなポリアリールエーテルスルホン、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデンなど種々のものを挙げることができるが、特に、化学的、機械的、熱的に安定である点から、ポリスルホン、ポリアリールエーテルスルホンからなる微多孔性支持体が好ましく用いられる。かかる微多孔性支持体は、通常、約25〜125μm、好ましくは約40〜75μmの厚みを有するが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0028】
より詳細には、微多孔性支持体上に、前記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含有する水溶液からなる第1の層を形成し、次いで、前記酸ハロゲン化物を含有する溶液からなる層を上記第1の層上に形成し、界面重縮合を行って、架橋ポリアミドからなるスキン層を微多孔性支持体上に形成することによって得ることができる。
【0029】
2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含有する水溶液は、製膜を容易にし、あるいは得られる複合逆浸透膜の性能を向上させるために、さらに、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸等の水溶性重合体や、ソルビトール、グリセリン等のような多価アルコールを含有させることもできる。
【0030】
また、特開平2-187135号公報に記載のアミン塩、例えばテトラアルキルアンモニウムハライドやトリアルキルアミンと有機酸とによる塩等も、製膜を容易にする、アミン溶液の支持膜への吸収性を良くする、縮合反応を促進する等の点で、好適に用いられる。
【0031】
また、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を含有させることもできる。これらの界面活性剤は、多官能アミンを含有する水溶液の微多孔性支持体への濡れ性を改善するのに効果がある。さらに、上記界面での重縮合反応を促進するために、界面反応にて生成するハロゲン化水素を除去し得る水酸化ナトリウムやリン酸三ナトリウムを用い、あるいは触媒として、アシル化触媒等を用いることも有益である。
【0032】
前記酸ハロゲン化物を含有する溶液及び前記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含有する水溶液は、酸ハライド及び多官能アミンの濃度は、特に限定されるものではないが、酸ハライドは、通常0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜1重量%であり、多官能アミンは、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%である。
【0033】
このようにして、微多孔性支持体上に2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物を含有する溶液を被覆し、次いで、その上に酸ハロゲン化物を含有する溶液を被覆した後、それぞれ余分の溶液を除去し、次いで、約20〜150℃、好ましくは約70〜130℃で、約1〜10分間、好ましくは約2〜8分間乾燥して、架橋ポリアミドからなる水透過性のスキン層を形成させる。このスキン層は、その厚さが、通常約0.05〜1μm、好ましくは約0.15〜0.5μmの範囲にある。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、高い塩阻止率を維持し、高い水透過性能を併せ有する高透過性複合逆浸透膜を実現できる。例えば、かん水、海水等の脱塩による淡水化や、半導体の製造に必要とされる超純水の製造等を省電力、省エネルギー、省スペース、低コストにて実施できるので、好適に用いることができる。
【0035】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、微多孔性支持体としては、ポリスルホン系限外濾過膜を用いた。得られた複合逆浸透膜の性能は、複合逆浸透膜に、操作圧力7.5kg/cm2、温度25℃にて塩化ナトリウム500ppmを含有するpH6.5の水溶液を1時間透過させた後、塩化ナトリウム阻止率、透過流束を測定した。塩化ナトリウム阻止率は、通常の電導度測定によった。
【0036】
実施例1
m-フェニレンジアミンを3.0重量%、ラウリル硫酸ナトリウムを0.15重量%含む水溶液にトリエチルアミンを3.0重量%、カンファースルホン酸を6.0重量%、イソプロピルアルコールを5.0重量%を含有した水溶液を微多孔性ポリスルホン支持膜に数秒接触させた後、余分の水溶液を除去して上記支持膜上に上記水溶液の層を形成した。次に、かかる支持膜の表面に、トリメシン酸クロライドを0.20重量%、イソプロピルアルコールを0.05重量%を含むIP1016(出光化学(株)製イソパラフィン系炭化水素油)溶液と接触させる。その後、120℃の熱風乾燥器の中で3分保持して、支持体上にスキン層を形成させ、複合逆浸透膜を得た。得られた複合逆浸透膜を水洗し、乾燥後、TEMにて該複合逆浸透膜の断面を分析し、そのポリアミド系スキン層の比表面積を測定したところ、比表面積は4.3であった。得られた複合逆浸透膜の性能を評価したところ、塩の阻止率は99.5%、透過流束は1.0m3/m2・日であった。
【0037】
比較例1
イソプロピルアルコールを上記水溶液及びIP1016(出光化学(株)製イソパラフィン系炭化水素油)溶液に添加しない以外は、実施例1と同様にして複合逆浸透膜を得た。得られた複合逆浸透膜のポリアミド系スキン層の比表面積を測定したところ、比表面積は2.2であった。該複合逆浸透膜の性能を評価したところ、塩の阻止率は99.5%、透過流束は0.5m3/m2・日であった。比較例からも明らかなようにポリアミド系スキン層の比表面積の値は、透過流束と大きく関わり、該比表面積を規制することで高脱塩性高水透過性を実現できる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.特許第3025629号の明細書中特許請求の範囲請求項1の「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、芳香族多官能酸ハロゲン化物、脂肪族多官能酸ハロゲン化物、または脂環式多官能酸ハロゲン化物であって、芳香族多官能酸ハロゲン化物にあってはトリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる化合物であり、上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として「2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物と、2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物とからなるポリアミド系スキン層と、これを支持する微多孔性支持体とからなる複合逆浸透膜において、上記2つ以上の反応性のアミノ基を有する化合物が、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸から選ばれる化合物であり、上記2つ以上の反応性の酸ハライド基を有する多官能性酸ハロゲン化物が、トリメシン酸クロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ベンゼントリスルホン酸クロライド、ベンゼンジスルホン酸クロライド、クロロスルホニルベンゼンジカルボン酸クロライドから選ばれる芳香族多官能酸ハロゲン化物であり、上記ポリアミド系スキン層の断面分析により求めた比表面積が3以上1000以下であり、かつ塩化ナトリウム阻止率が99.5%以上であることを特徴とする高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜。」と訂正する。
2.特許第3025629号の明細書中発明の名称「高透過性複合逆浸透膜」を、明りょうでない記載の釈明を目的として「高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜」と訂正する。
3.特許第3025629号の明細書中発明の詳細な説明の段落【0007】【0008】【0010】【0037】の「高透過性」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として「高脱塩性高水透過性」と訂正する。
4.特許第3025629号の明細書中発明の詳細な説明の段落【0023】「、脂肪族多官能酸ハロゲン化物、または脂環式多官能酸ハロゲン化物であって、」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として「が挙げられる」と訂正する。
5.特許第3025629号の明細書中発明の詳細な説明の段落【0024】【0025】を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。
6.特許第3025629号の明細書中発明の詳細な説明の段落【0009】「上記表面積及び比表面積を求める方法は・・・・透過型電子顕微鏡(TEM)等が挙げられる。」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として「上記表面積及び比表面積を求める方法は、例えば、走査電子顕微鏡(SEM,FE-SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)等により、膜の断面を分析して表面積や比表面積を求める手法に従い求めることができる。」と訂正する。
7.特許第3025629号の明細書中発明の詳細な説明の段落【0007】末行「ある」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として「あり、かつ塩化ナトリウム阻止率99.5%以上である」と訂正する。
異議決定日 2002-09-02 
出願番号 特願平7-169707
審決分類 P 1 651・ 113- YA (B01D)
P 1 651・ 112- YA (B01D)
P 1 651・ 121- YA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 岡田 和加子
唐戸 光雄
登録日 2000-01-21 
登録番号 特許第3025629号(P3025629)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 高脱塩性高水透過性複合逆浸透膜  
代理人 三枝 英二  
代理人 池内 寛幸  
代理人 池内 寛幸  
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