• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C07C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C07C
管理番号 1068874
異議申立番号 異議2000-72729  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-17 
確定日 2002-10-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2999168号「ペルフルオロ化合物ガスの分離および回収のための改良された方法および装置」の請求項1〜64に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2999168号の請求項1〜64に係る発明の特許を維持する。 
理由 1.本件の手続の経緯
本件特許第2999168号は、1997年1月16日に米国に出願した特許出願に基づいて優先権を主張して、平成10年1月16日に出願し、平成11年11月5日に設定登録されたものである。
これに対し、平成12年7月17日に中野宗昭およびエア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテッドからそれぞれ特許異議の申立がなされ、その後、平成13年2月15日付で取消理由通知(平成13年2月27日に発送)がなされ、その指定期間(期間延長を含む)内である平成13年8月27日に特許異議意見書と訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正事項
本件明細書につき、平成13年8月27日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される次の(a)〜(l)のとおりの訂正を求めるものである。
(a)特許請求の範囲の請求項1及び38中の「a)少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス」を、「a)SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス」と訂正する。
(b)特許請求の範囲の請求項40及び50中の「反応室流出ガス導管を備えた、ペルフルオロ化合物」を、「反応室流出ガス導管を備えた、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物」と訂正する。
(c)特許請求の範囲の請求項51中の[ガス混合物からペルフルオロ化合物]を、「ガス混合物からSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物」と訂正する。
(d)特許請求の範囲の請求項61中の「少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して」を、「SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して」と訂正する。
(e)特許請求の範囲の請求項63中の「キャリヤーガスおよびペルフルオロ化合物ガス」を、「キャリヤーガスおよびSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス」と訂正する。
(f)特許請求の範囲の請求項24中の「SF6、C2F6、CHF3、CF4およびNF3からなる」を、「C2F6、CHF3、CF4およびNF3からなる」と訂正する。
(g)特許請求の範囲の請求項42中の「請求項40記載の方法」を、「請求項40記載の装置」と訂正する。
(h)特許請求の範囲の請求項56中の「請求項70」を、「請求項55」と訂正する。
(i)特許請求の範囲の請求項57中の「請求項55記載の方法」を、「請求項55記載の装置」と訂正する。
(j)特許請求の範囲の請求項60中の「請求項70」を、「請求項55」と訂正する。
(k)本件明細書の【0030】段落の記載全体を、「本発明の目的のために、ペルフルオロ化合物は、全てが、または1個の水素を除く全てがフッ素により置換されたC、Sおよび/またはN原子を有する化合物として定義され、かつSF6は除かれる。最も一般的なPFCは、限定されないが、次の化合物のいずれかを含む:CF4、C2F6、C3F8、C4F10のごとき完全にフッ素化された炭化水素、およびCHF3、NF3のごときフッ素化された他の化合物。本発明の定義において、それらがサイズ選択性膜に対して有害でない限り、PFCはまたBF3、COF2、F2、SiF4、WF6、WOF4も含む。ペルフルオロ化合物はクロロフルオロカーボン、または2個以上の水素置換基を含有する化合物を含まず、かかる化合物は半導体製造プロセスでは使用されない。」と訂正する。
(l)本件明細書の【0055】段落における、「SF6 六フッ化硫黄 無害」を削除する。

2-2.訂正の目的、新規事項、拡張・変更
2-2-1.訂正の目的
上記(a)〜(f)の訂正は、特許請求の範囲の請求項1、38、40、50、51、61、63及び24におけるペルフルオロ化合物からSF6を除いたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
上記(g)の訂正は、特許請求の範囲の請求項42に記載の発明が、請求項40の装置の発明を引用するなど、明らかに装置の発明であったところ、同請求項42の末尾の記載を、方法から装置に是正したものであり、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
上記(h)の訂正は、特許請求の範囲の請求項56では、もともと存在しない請求項70を引用しており、また、当該請求項56では、「該第2の膜分離ユニットからの透過流の少なくとも一部を該第1の膜分離ユニットの供給へ再循環させるために適合する」と、第2の膜分離ユニットからの透過流に関し規定するものであって、この規定は、第2の膜分離ユニットの設置に関して言及している請求項55を受けるべきものであることは明らかである。したがって、当該請求項56で引用する請求項を、70から55に訂正することは、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
上記(i)の訂正は、特許請求の範囲の請求項57に記載の発明が、請求項55の装置の発明を引用するなど、明らかに装置の発明であったところ、同請求項57の末尾の記載を、方法から装置に是正したものであり、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
上記(j)の訂正は、特許請求の範囲の請求項60では、もともと存在しない請求項70を引用しており、また、当該請求項60では、「掃引ガスを該第2の膜の透過側に流すための手段をさらに備え、該掃引ガスは、該第2の膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を包含する」と、第2の膜分離ユニットに対する掃引ガスの関係を規定するものであって、この規定は、第2の膜分離ユニットの設置に関して言及している請求項55を受けるべきものであることは明らかである。したがって、当該請求項60で引用する請求項を、70から55に訂正することは、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
上記(k)及び(l)の訂正は、本件明細書の【0030】及び【0055】段落の記載中のSF6に関する記述を削除し、また、SF6は除かれる旨を明記したものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記(a)〜(f)の訂正に伴って、発明の詳細な説明中のそれに対応する記載を整合させたものであるから、特許請求の範囲の減縮に伴って生じた明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

2-2-2.新規事項
上記(a)〜(f)、(k)及び(l)の訂正は、特許請求の範囲の請求項24、本件明細書の【0030】、【0051】及び【0055】段落のペルフルオロ化合物の記載に基づくものであって、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。
上記(g)〜(j)の訂正は、請求項42、56、57及び60における請求項の引用方法につき、その誤記を是正しただけのものであるから、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものである。

2-2-3.拡張・変更
上記(a)〜(l)の訂正は、その内容からみて、実質上特許請求の範囲を拡張したり、変更したりするものでないことは明らかである。

2-3.まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4の第2項、及び、同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するものであるから、当該訂正は認める。

3.訂正後の本件発明
訂正後の本件発明は、平成13年8月27日付け訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のものである。
【請求項1】ガス混合物から少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを回収するための方法であって、
a)SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスおよび少なくとも1種のキャリヤーガスを含むガス混合物を提供する工程、
b)供給側および透過側を有し、キャリヤーガスに対し優先的透過性を示す第1の分子篩膜を提供する工程、
c)該膜の供給側を該ガス混合物と接触させる工程、
d)該膜の供給側から、第1の非透過流として、該少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを実質的に含む濃縮ガス混合物を取り出す工程、
e)該膜の透過側から、第1の透過流として、該少なくとも1種のキャリヤーガスから実質的になる欠乏ガス混合物を取り出す工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】該ガス混合物を、該第1の膜の供給側に供給する前に、当該膜に有害な種のほとんどを実質的に除去するように処理する請求項1記載の方法。
【請求項3】該ガス混合物を、該膜の供給側と接触させる前に、コンプレサーで圧縮する請求項1記載の方法。
【請求項4】該ガス混合物を、圧縮前に、当該コンプレッサーに有害な化合物を除去するように処理する請求項3記載の方法。
【請求項5】該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項6】該ガス混合物が、エッチング、化学気相堆積、および室内洗浄からなる群の中から選ばれたプロセスからの流出流を包含する請求項1記載の方法。
【請求項7】該ペルフルオロ化合物ガスが、フルオロカーボン、NF3、SF6、ハロゲン化カーボンおよびそれらの混合物である請求項1記載の方法。
【請求項8】該キャリヤーガスが、Ar、N2,Kr、Xe、Ne、O2,He、H2,CO、CO2,H2O、および空気でもあり得るそれらの混合物からなる群の中から選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項9】該ガス混合物が、当該膜に有害なガス成分のそれぞれを1体積%未満の割合で含有する請求項1記載の方法。
【請求項10】該ガス混合物が、当該膜に有害なガス成分のそれぞれを10ppm未満の割合で含有する請求項1記載の方法。
【請求項11】該ガス混合物が、当該膜に有害なガス成分のそれぞれを1ppmの割合で含有する請求項1記載の方法。
【請求項12】供給側の絶対圧と透過側の絶対圧との比が、約2ないし約10である請求項1記載の方法。
【請求項13】該膜への供給時におけるガス混合物の圧力が、約105ないし約2.0×107パスカルである請求項1記載の方法。
【請求項14】欠乏ガス混合物が、真空手段の低圧側と流体連通している請求項1記載の方法。
【請求項15】該第1の非透過流の少なくとも一部を第2の膜の供給側に送り、該第2の膜は、該第1の非透過流よりもペルフルオロ化合物が濃縮された第2の非透過流を生成し、当該方法がNの段階を通じて続行される請求項1記載の方法。
【請求項16】段階Nの数が、少なくとも2であり、Nよりも少ない段階の透過物の少なくとも一部を除去し、さらに、段階Nの透過物の少なくとも一部を上流段階の供給側に再循環させる請求項15記載の方法。
【請求項17】上流段階との接触前に、再循環された部分の圧力を上昇させることをさらに含む請求項16記載の方法。
【請求項18】Nが、3ないし10である請求項15記載の方法。
【請求項19】該第2の膜が、キャリヤーガスに対し該第1の膜よりも大きい選択性比を有する請求項15記載の方法。
【請求項20】該第2の膜が、キャリヤーガスに対し該第1の膜よりも小さい選択性比を有する請求項15記載の方法。
【請求項21】該段階Nの非透過流中の1またはそれ以上のペルフルオロ化合物ガスについて一定の濃度設定点で実施される請求項15記載の方法。
【請求項22】該非透過流を圧縮および/または冷却し、さらなる処理のために貯蔵手段に貯蔵する請求項1記載の方法。
【請求項23】該ガス混合物が製造プロセスから由来し、第1の非透過流の少なくとも一部を該製造プロセスに再循環させる請求項1記載の方法。
【請求項24】該非透過流が、C2F6,CHF3、CF4およびNF3からなる群の中から選ばれるペルフルオロ化合物ガスの混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項25】該非透過流のペルフルオロ化合物ガスの少なくとも1種を該非透過流中の他のペルフルオロ化合物からさらに分離する請求項24記載の方法。
【請求項26】より高い揮発性のペルフルオロ化合物ガスからの少なくとも1種のより低い揮発性のペルフルオロ化合物ガスの分離を、効果的な温度および流量の冷却流体を用いた熱交換器中での蒸留により行う請求項25記載の方法。
【請求項27】NF3およびCF4から実質的になる該非透過流の少なくとも一部を、NF3が吸着され、CF4が吸着されない吸着装置に送る請求項25記載の方法。
【請求項28】CHF3およびC2F6から実質的になる非透過流の少なくとも一部を吸着剤と接触させ、それによりCHF3を優先的に吸着させる請求項25記載の方法。
【請求項29】少なくとも1種のペルフルオロ化合物を1またはそれ以上の膜分離段階を有する膜装置において非透過流から分離する請求項25記載の方法。
【請求項30】該ガス混合物が、約-40℃ないし約120℃の温度で該膜の供給側に入る請求項1記載の方法。
【請求項31】該第1の非透過流の少なくとも一部を該膜の透過側での掃引ガスとして使用する請求項1記載の方法。
【請求項32】段階Nからの非透過流の少なくとも一部を前段階の膜の透過側および/または膜段階Nの透過側における掃引ガスとして使用する請求項15記載の方法。
【請求項33】再循環される非透過流の部分を、当該方法に再度入れる前に、または貯蔵へ送る前に、サージタンクに送る請求項23記載の方法。
【請求項34】透過流の少なくとも一部を当該方法へまたは貯蔵へ再循環させる請求項23記載の方法。
【請求項35】該処理が、プラズマ分解、熱分解、触媒的分解、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる請求項2記載の方法。
【請求項36】該処理からの排流をペルフルオロ化合物を生成させるために使用する請求項35記載の方法。
【請求項37】該第2の膜が、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、アルキル置換芳香族ポリエステル、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホンとフッ素化芳香族ポリイミドとポリアミドとポリアミド-イミドとのブレンド、ポリフェニレンオキサイド、スルホン化ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、それらの共重合体、およびそれらの置換ポリマーからなる群の中から選ばれる少なくとも1種のポリマーから作られたものである請求項15記載の方法。
【請求項38】半導体製造プロセスから流出するガス混合物から少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスまたはガス混合物を回収するための方法であって、
a)SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、少なくとも1種の有害種および少なくとも1種のキャリヤーガスを含有するガス混合物を提供する工程、
b)供給側および透過側を有しキャリヤーガスに対して優先的透過性を示す分子篩膜を提供する工程、
c)該膜に有害な該種の濃度を減少させるために該ガス混合物を前処理し、処理されたガス混合物を得る工程、
d)該膜の供給側を該処理されたガス混合物と接触させる工程、
e)非透過流として、該処理されたガス混合物におけるよりも高い濃度で該少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを含有する濃縮ガス混合物を該膜の供給側から取り出す工程、および
f)該少なくとも1種のキャリヤーガスに富むガスまたはガス混合物を、透過流として、該膜の透過側から取り出す工程を備える方法。
【請求項39】該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項38記載の方法。
【請求項40】a)反応室流出ガス導管を備えた、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、キャリヤーガス等を受けるための少なくとも1つの反応室、
b)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに比較して少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性である分子篩膜を備え、該反応室流出ガス導管を介して該反応室に接続され、透過物排出導管および非透過物導管を備える少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、および、
c)該膜分離ユニットから該非透過流の少なくとも一部を該少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段を具備する半導体製造装置。
【請求項41】該反応室流出ガス導管および該膜分離ユニットと流体連通する処理手段をさらに備え、該処理手段は、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる請求項40記載の装置。
【請求項42】該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項40記載の装置。
【請求項43】複数の膜分離ユニットが直列に配置されている請求項40記載の装置。
【請求項44】第1の膜分離ユニットからの第1の透過流の少なくとも一部を該排出導管に排出し、下流側膜分離ユニットからの下流側透過流の少なくとも一部を該再循環手段における上流側膜の供給側に再循環させる請求項40記載の装置。
【請求項45】複数の膜分離ユニットが並列に配置されている請求項40記載の装置。
【請求項46】膜分離ユニットが、掃引ガス導管を備える請求項40記載の装置。
【請求項47】非透過物導管に配置されたダンパーもしくはサージタンクをさらに備える請求項40記載の装置。
【請求項48】非透過PFC富化流の少なくとも一部を該PFC富化流を将来の使用のために凝縮された形態で貯蔵させるコンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプに流すための手段をさらに備える請求項40記載の装置。
【請求項49】該非透過物導管と流体連通する後処理手段をさらに備え、該後処理手段は、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる請求項40記載の装置。
【請求項50】a)反応室流出ガス導管を備えた、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、キャリヤーガス等を受けるための少なくとも1つの反応室、
b)該反応室からの流出ガスを圧縮するための、該反応室流出ガス導管に配置された圧縮手段、
c)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに比較して少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過的である分子篩膜を備え、該圧縮手段の下流側で該反応室流出ガス導管を介して該反応室に接続された少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、
d)該膜分離ユニットからの該非透過流の少なくとも一部を該少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段、
e)該膜分離ユニットに入る反応室流出流と流体連通し、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる前処理手段、
f)該非透過物導管および該膜の透過側と流体連通し、該膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管、
g)該非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンク、および
h)該サージタンクの下流側で該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために液状で貯蔵させるコンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプを具備する半導体製造装置。
【請求項51】ガス混合物からSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを回収するための装置であって、
a)圧縮に適した処理されたガス混合物を製するための処理手段、
b)該処理されたガス混合物を圧縮して圧縮ガス混合物を生成させるためのコンプレッサー、および
c)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性である分子篩膜を備え、導管を介して該コンプレッサーに接続され、透過物排出導管と非透過物導管を有する少なくとも1つの分子篩膜分離ユニットを具備する装置。
【請求項52】該非透過流と流体連通する真空ポンプをさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項53】該非透過流の少なくとも一部を回収するための回収ユニットをさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項54】該非透過流の少なくとも一部を再循環させるための再循環導管をさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項55】供給物として該非透過流の少なくとも一部を取る第2の膜分離ユニットをさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項56】該第2の膜分離ユニットからの透過流の少なくとも一部を該第1の膜分離ユニットの供給へ再循環させるために適合する請求項55記載の装置。
【請求項57】該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項55記載の装置。
【請求項58】供給物として該第2の膜分離ユニットからの透過流の少なくとも一部を取る第3の膜分離ユニットをさらに備える請求項55記載の装置。
【請求項59】該第3の膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部が該第1の膜分離ユニットの供給へ再循環させるために適合される請求項58記載の装置。
【請求項60】掃引ガスを該第2の膜の透過側に流すための手段をさらに備え、該掃引ガスは、該第2の膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を包含する請求項55記載の装置。
【請求項61】少なくとも1つの分子篩膜分離ユニットを備え、該膜がキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性であることを特徴とする、ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスを回収するための装置。
【請求項62】該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項61記載の装置。
【請求項63】a)キャリヤーガスおよびSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを含有するガス混合物を圧縮するための圧縮手段、
b)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性である分子篩膜を備え、該圧縮手段、透過物排出導管および非透過物導管と流体連通する少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、
c)該膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を該ガス混合物の供給源に再循環させるための手段、
d)該ガス混合物が該膜分離ユニットに入る前に配置され、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビング、および吸着からなる群の中から選ばれるガス処理手段、
e)該非透過物導管および該膜の透過側と流体連通し、該膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管、
f)該非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンク、g)コンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプおよび真空ポンプからなる群の中から選ばれ、該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために凝縮形態で貯蔵させる液化手段を具備するペルフルオロ化合物ガスの回収装置。
【請求項64】該分子篩膜が、カーボン篩膜、ゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項63記載の回収装置。

4.特許異議申立人の主張
4-1.中野宗昭の主張
特許異議申立人中野宗昭は、甲第1〜5号証を提出して次のような主旨の主張をしている。
(1)本件請求項1〜64に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
4-2.エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテツドの主張
特許異議申立人エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテツドは、甲第1〜5号証を提出して次のような主旨の主張をしている。
(2)本件請求項1〜64に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
(3)本件明細書の記載は次の点で不備であるから、本件請求項56,57および60に係る特許は、その明細書が特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない出願に対してされたものである。
(3-1)本件請求項56には、「請求項70記載の装置」と記載されているが、本件特許請求の範囲には請求項70はないから、請求項56には、特許を受けようとする発明が明確に記載されていない。
(3-2)本件請求項57には、「請求項55記載の方法」と記載されているが、本件特許請求の範囲には「請求項55記載の方法」はないから、請求項57には、特許を受けようとする発明が明確に記載されていない。
(3-3)本件請求項60には、「請求項70記載の装置」と記載されているが、本件特許請求の範囲には請求項70はないから、請求項60には、特許を受けようとする発明が明確に記載されていない。

5.主要な証拠の記載
5-1.中野宗昭の提出した甲第1号証
特許異議申立人中野宗昭の提出した甲第1号証(Ind.Eng.Chem.Process Des.Dev.,Vol.25,No.4,1986,p.971-973)には、以下の記載があり、また、その図3には、フレオンガスの透過性における塩素や水素の置換の影響のグラフが示されており、更に、その図4には、プラズマエッチングガスからのCF4の回収のための可能なフロー設計図が示されている。
(イ-1)「種々のフレオンガス(CF4、CClF3、CCl2F2、C2ClF5)に対してシリコンゴム膜を通過する透過性を測定した。これらのガスは種々の工業で普通に使用される溶剤であり、適切な選択性膜を通す透過によってこれらの溶剤を回収する可能性が存在する。我々は、フレオンの透過が(酸素と比較した)選択性に対して透過性をプロットするとかなり単純な関係になり得ることを見出した。CF4の透過性は酸素の透過性の15倍小さいことが見出された。この観察から、半導体の製造において良く使われるプラズマ・エッチング反応の排気からCF4を回収する可能性が示される。」(第971頁上欄第1〜6行)
(イ-2)「透過の測定が5つのフレオンガスと酸素と窒素に対して行われた。フレオンガスはCF4,CClF3、CCl2F2、CHClF2、およびC2ClF5(フレオン14,13,12,22,および115)であった。フレオンガスのこの選択は、フッ素原子を塩素原子で置換する影響(フレオン12-14)、塩素原子を水素原子で置換する影響(フレオン12と22)、および化学的に似たガスの分子の大きさの増大の影響(フレオン13と115)を示している。各ガスに対して分圧ドライビング・フォースで規格化された膜透過フラックスを、表1に示す。これらのテストにおいて供給ガスと掃引ガスの圧力は76cmHgで、温度は23℃であった。Robb(1968)によって与えられたシリコンゴムを透過する酸素の透過性を用いて、膜厚は約0.69μmであると我々は推論した。この厚みを用いて、膜の透過性を計算した(表2)。レファレンスガスとして酸素を用いた膜の選択性も表2に載せてある。定義によれば、選択性に対する透過性のプロットは-1の傾き(Qiαi一定)を持たねばならない。図3に、我々のデータと、以前の研究者によるメタンの結果を含めて、この関係を示した。この関係は、まだ測定されていないフレオンガスの透過挙動を予測する方法を提供することができる。例えば、C2F6はより大きな選択性でCF4よりも僅かにゆっくりと透過すると期待できる。」(第971頁右欄下から第6行〜第972頁右欄下から第25行)
(イ-3)「しかしながら、今日までの我々のデータから、半導体の製造において最高の適用は、酸素と混合したCF4ガスを用いる反応槽であるプラズマ・エッチング・反応槽からの排気ガスからのCF4の回収と思われる。フレオン回収の見地から、プラズマ・エッチング反応槽は、供給ガス(典型的には96%CF4と4%O2)が低圧で導入される容器である[プラズマ反応槽の議論のためのSze(1983)参照]。供給ガスはエッチングされるデバイスの上を流れ、ある部分はイオン化される。反応槽で供給ガスは極めて少量が消費される。それゆえ、排気は、反応槽からポンプで排出され、供給ガスとほぼ同一の組成を持つ、しかし、プラズマ反応からの幅広い種々の不純物(e.g.、COF2とCOCl2、F2)を含んでいる。これらの不純物の全てがシリコンゴムの透過装置でどのような挙動をするかは確かではないが、これらの不純物はCF4に関してはそれらの極性と反応性のために、酸素と共に透過すると期待される。現時点で、我々は少なくとも、CF4から酸素を除いて高純度化されたCF4を製造できることを確信している。CF4の膜回収フロー図は図4のように表すことができる。第一の真空ポンプは膜ユニットがなくてもプラズマ反応槽に必要なものである。結果としてCF4を回収するために追加される装置は膜ユニットと第二の真空ポンプである。」(第972頁右欄下から第11行〜第973頁左欄下から第29行)

5-2.エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテッドの提出した甲第1号証
特許異議申立人エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテッドの提出した甲第1号証(Mat.Res.Soc.Symp.Proc.,Vol.344,1994,Materials Research Society,p.267-272)には、次の記載がある。
(ロ-1)「半導体産業では、プラズマ工程の間にエッチングおよびクリーニングガスとしてCF4およびC2F6のごときPFCガスが使用される。これらのガスは、反応室内で完全には反応しない。未使用のガスは、プロセス排気流を介して大気中に至る。これらのガスは、大気中で長期の耐久性を有し、赤外線を吸収する。PFCガスは、それ故、潜在的地球温暖化ガスである。PFCガス類を回収し、再利用する方法について記載する。」(第267頁第2〜7行)
(ロ-2)「われわれがPFCガス類の捕捉および濃縮に採用した方法は、二床式吸着塔を基礎とする。その吸着剤は活性炭(Colgen BPL 活性炭)である。その吸着剤は、ガスの可逆性吸着剤として知られている。このシステムは、濃縮回収ユニット(CRU)と称される。その装置の最も簡単な概要図を第1図に示す。複数の処理手段が単一のCRUに接続されるだろうと、われわれは予測している。」(第267頁下から第4行〜第268頁第2行)
(ロ-3)「複数のベットのうち一つが吸着に利用されていると、第2のベットは再生されている。第1図において複数の導入ガスはまず圧縮される。その複数のガスは吸着塔Iに導入され、PFCガスが除去される。炭素に強く吸着しない不活性ガス(N2,H2,など)は背圧調節器を通って廃棄システムに排気される。吸着塔IIは真空ポンプにより真空にされる。真空ポンプからの排気ガスは、再圧縮されて、PFCガスが回収される。この再圧縮行程は、移送システムとして概略的に示されている。」(第268頁下から第18行〜下から第12行)

6.当審の判断
6-1.上記(1)の主張について
上記(イ-1)〜(イ-3)の記載によれば、特許異議申立人中野宗昭の提出した甲第1号証 には、いわゆる選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いて、半導体製造のためのプラズマ・エッチング・反応槽からのCF4および酸素等を含む排気ガスから高純度化されたCF4を回収することが記載されており、また、その図4には、エッチャントガス(96%CF4,4%O2)がプラズマ反応槽に供給され、プラズマ反応槽→第1の真空ポンプ→膜分離装置→第2の真空ポンプを順に並べた装置で、膜分離装置の非透過側からリサイクルのための高純度化されたCF4を回収し、膜分離装置の透過側から第2の真空ポンプを経て酸素に富んだ廃棄流を取り出すことが示されている。
そして、甲第1号証でいうCF4は、ペルフルオロ化合物ガスであり、酸素ガスは、CF4を随伴していることからして、キャリヤーガスといえる。
そこで、訂正後の本件請求項1に係る発明と、上記甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、「ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4を回収するための方法であって、a)ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4およびキャリヤーガスである酸素を含むガス混合物を提供する工程、b)供給側および透過側を有し、キャリヤーガスに対し優先的透過性を示す膜を提供する工程、c)膜の供給側をガス混合物と接触させる工程、d)膜の供給側から、非透過流として、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4を実質的に含む濃縮ガス混合物を取り出す工程、e)膜の透過側から、透過流として、キャリヤーガスである酸素から実質的になる欠乏ガス混合物を取り出す工程を備える方法」である点で一致しており、両者は、次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
訂正後の本件請求項38に係る発明と、甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、「半導体製造プロセスの一つであるプラズマ・エッチング・反応槽から流出するガス混合物からペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4を回収するための方法であって、a)ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4、キャリヤーガスである酸素を含有するガス混合物を提供する工程、b)供給側および透過側を有しキャリヤーガスである酸素に対して優先的透過性を示す膜を提供する工程、d)該膜の供給側をガス混合物と接触させる工程、e)非透過流として、ガス混合物におけるよりも高い濃度でペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4を含有する濃縮ガス混合物を膜の供給側から取り出す工程、および、f)キャリヤーガスである酸素に富むガスを、透過流として、膜の透過側から取り出す工程を備える方法」である点で一致し、両者は、次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
(II)前者は、半導体製造プロセスから流出するガス混合物中に少なくとも1種の有害種を含み、膜に有害な該種の濃度を減少させるためにガス混合物を前処理し、処理されたガス混合物を得て、膜の供給側を処理されたガス混合物と接触させるのに対し、後者では、有害種についての認識がなく、膜に有害な種類のガスの濃度を減少させるための前処理は行われない点。
訂正後の本件請求項40に係る発明と、甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、「a)反応室流出ガス導管を備えた、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4、キャリヤーガスである酸素を受けるための反応室であるプラズマ・エッチング・反応槽、b)供給側および透過側を有し、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4に比較してキャリヤーガスである酸素に対して優先的に透過性である膜を備え、反応室流出ガス導管を介して反応室に接続され、透過物排出導管および非透過物導管を備える膜分離ユニットを具備する半導体製造装置」である点で一致し、両者は、次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
(III)前者は、膜分離ユニットから非透過流の少なくとも一部を少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段を具備しているのに対し、後者では、膜分離ユニットからの非透過流を反応室へ再循環させるための手段については特に言及されておらず、そのような手段は特に備えていない点。
訂正後の本件請求項50に係る発明と、上記甲第1号証に記載した発明を対比すると、両者は、「a)反応室流出ガス導管を備えた、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4、キャリヤーガスである酸素を受けるための反応室、c)供給側および透過側を有し、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4に比較してキャリヤーガスである酸素に対して優先的に透過的である膜を備え、反応室流出ガス導管を介して反応室に接続された膜分離ユニットを具備する半導体製造装置」である点で一致しており、両者は次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
(IV)前者では、反応室からの流出ガスを圧縮するための、反応室流出ガス導管に配置された圧縮手段を備えているのに対し、後者では、そのような圧縮手段は備えていない点。
(III)前者は、膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段を具備しているのに対し、後者ではそのような手段は特に備えていない点。
(II’)前者は、膜分離ユニットに入る反応室流出流と流体連通し、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる前処理手段を設けているのに対し、後者はそのような前処理手段を備えていない点。
(V)前者は、非透過物導管および膜の透過側と流体連通し、膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管を備えているのに対し、後者はそのような掃引ガス導管を備えていない点。
(VI)前者は、非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンクを設けているのに対し、後者はそのようなものを備えていない点。
(VII)前者は、サージタンクの下流側で非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために液状で貯蔵させるコンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプを具備しているに対し、後者はそのようなものを備えていない点。
訂正後の本件請求項51に係る発明と、甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、「ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4を回収するための装置であって、c)供給側および透過側を有し、キャリヤーガスである酸素に対して優先的に透過性であり、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4に対して実質的に非透過性である膜を備え、透過物排出導管と非透過物導管を有する膜分離ユニットを具備する装置」である点で一致しており、両者は次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
(VIII)前者は、圧縮に適した処理されたガス混合物を製するための処理手段を備えているのに対し、後者はそのようなものを備えていない点。
(IV’)前者は、処理されたガス混合物を圧縮して圧縮ガス混合物を生成させるためのコンプレッサーを備えているのに対し、後者はそのようなものを備えていない点。
訂正後の本件請求項61に係る発明と、甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、「膜分離ユニットを備え、膜がキャリヤーガスである酸素に対して優先的に透過性であり、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4に対して実質的に非透過性である、ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4を回収する装置」である点で一致しており、両者は、次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
訂正後の本件請求項63に係る発明と、甲第1号証に記載された発明を対比すると、両者は、「b)供給側および透過側を有し、キャリヤーガスである酸素ガスに対して優先的に透過性であり、ペルフルオロ化合物ガスの1種であるCF4に対して実質的に非透過性である膜を備えた膜分離ユニット」である点で一致しており、両者は、次の点で相違している。
(I)前者は、膜として分子篩膜を用いるのに対し、後者は、膜として選択透過性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を用いている点。
(IV’’)前者は、キャリヤーガスおよびSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを含有するガス混合物を圧縮するための圧縮手段を備えているのに対し、後者はそのような圧縮手段を備えていない点。
(III’)前者は、膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部をガス混合物の供給源に再循環させるための手段を備えているのに対し、後者はそのような手段を備えていない点。
(II’’)前者は、ガス混合物が膜分離ユニットに入る前に配置され、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビング、および吸着からなる群の中から選ばれるガス処理手段を具備しているのに対し、後者はそのようなガス処理手段を備えていない点。
(V)前者は、非透過物導管および膜の透過側と流体連通し、膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管を備えているのに対し、後者はそのような掃引ガス導管を備えていない点。
(VI)前者は、非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンクを設けているのに対し、後者はそのようなものを備えていない点。
(VII’)前者は、コンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプおよび真空ポンプからなる群の中から選ばれ、該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために凝縮形態で貯蔵させる液化手段を備えているのに対し、後者はそのようなものを備えていない点。

そこで、前記の共通の相違点(I)に関する特定事項が当業者の容易に想到できるか否かについて検討する。
以下、当該相違点(I)に関し、特許異議申立人中野宗昭の提出した甲第2〜5号証の記載を、順次みる。
甲第2号証(米国特許明細書第4,685,940号明細書)には、炭素分子篩膜である炭化膜に関する発明が記載(第2欄第6〜14行を参照)されているものの、それには、ガス混合物からSF6以外のペルフルオロ化合物を回収することに関しての記載はない。
また、甲第3号証(”Proceedings of the Tenth Annual Conference On Fossil Energy Materials、May14-18,1996,Knoxville,Tennessee、p.107-116)には、「高温での水素分離のためのセラミック膜」と題したD.E.FainとG.E.Roettgerの研究報告が掲載されており、その図1や図2には、He/CF4に対するモデル計算された分離係数のグラフが示されているものの、Conference On Fossil Energy Materialsという会の名称や第107頁下から第4〜下から第2行の「このプロジェクトの目的は、1000°Fあるいはそれ以上の高温でガス化した石炭から水素を効率的に分離するセラミック膜を製作する方法を開発することである。」の記載から分かるように、その研究は、化石エネルギー材料である石炭から水素を製造し、それを分離する技術の研究であって、He/CF4の分離係数は膜の欠陥を想定してモデル計算した値にすぎないから、甲第3号証に記載のセラミック膜では、実際にペルフルオロ化合物を回収することは意図していない。
更に、甲第4号証(米国特許第3,735,558号明細書)には、「流体混合物から除去される重要な成分に対する選択的透過性のある内部通路を限定する壁を有する透過性のあるペルフルオロスルホン酸重合体の中空部材等を含む、多成分流体混合物から一つ又はそれ以上の重要な成分を分離する装置」(claim1を参照)が記載されているが、その「重要な成分に対する選択的透過性のある内部通路を限定する壁を有する透過性のあるペルフルオロスルホン酸重合体の中空部材」は、いわゆる選択透過性のポリマー膜であって、分子篩膜ではないし、また、甲第5号証(「化学機械技術41、高度分離技術の新しい展開」、さんえい出版、1989年5月20日、p.276-281)の図12.5には、アンモニアパージガスからの水素回収システム、図12.7には、プリズムセパレータを組み込んだハイドロクラッカーシステムが示されているが、それらの図をみれば分かるようにそれらはいずれもプリズムセパレータという膜分離装置を用いるものであって、分子篩を用いるものではない。
そして、例えば、特許異議申立人エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテッドの提出した甲第3号証(J.Chem.Soc.Faraday Trans.1,1986,82,p.2057-2063)に、「狭隘孔の分子篩炭素膜(MSCM)中の透過は、吸着と活性化移動によって支配されていて、もっぱら超微細孔を通って進行する。溶解-溶出メカニズムの寄与はありそうにない。」(第2057頁上段第1〜4行)、「炭素膜をポリマー膜と比較すると、炭素膜は、耐熱性の多孔性固体と考えられ、そこでは、透過物が非溶解性で、単に孔系を透過する。この意味において、MSCMを通る透過メカニズムは、低ポリマー密度の領域を通る透過に加えて、溶解-拡散-溶出メカニズムが発生するガラス状ポリマー膜の透過メカニズムに比べてより単純である。」(第2057頁下から第3行目〜第2058頁第3行)という記載から分かるように、分子篩膜と上記甲第1号証の透過選択性のポリマー膜であるシリコンゴム膜は、膜分離といっても、透過のメカニズムが著しく異なるのであるから、上記甲第1号証に記載された発明の透過選択性のポリマー膜であるシリコンゴム膜を分子篩膜に替えて、はたして、キャリヤーガス及びペルフルオロ化合物ガス混合物から現実にペルフルオロ化合物ガスが分離又は回収できるかどうかは当業者といえども単純に予測できるものではない。
一方、本件明細書の【0040】段落には、本発明においては分子篩膜が使用されること、および、分子篩膜としては、炭素分子篩膜やゼオライト膜があることが記載されていて、本件発明において分子篩膜を使用することを明言しているところであり、更に、特許権者は、平成13年8月27日付け特許異議意見書で、分子篩炭素膜及びゼオライト分子篩膜を使用した場合の実験例を示し、ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスが現実に回収できることを釈明しているところである。
してみると、キャリヤーガス及びペルフルオロ化合物ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスを分離又は回収する場合において、上記相違点(I)の特定事項である「分子篩膜」を用いることが当業者が容易に想到できるものではない。
したがって、その他の相違点について検討するまでもなく、膜として分子篩膜を用いる訂正後の本件請求項1,38,40、50,51,61および63に係る発明は、甲第1〜5号証の記載を総合したところで、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また、当該請求項1を直接または間接的に引用している訂正後の本件請求項2〜37に係る発明、当該請求項38を引用している訂正後の本件請求項39に係る発明、当該請求項40を引用している訂正後の本件請求項41〜49に係る発明、当該請求項51を直接または間接的に引用している訂正後の本件請求項52〜60に係る発明、当該請求項61を引用している訂正後の本件請求項62に係る発明、及び、当該請求項63を引用している訂正後の本件請求項64に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、上記(1)の主張は理由がない。

6-2.上記(2)の主張について
上記(ロ-1)の記載から、特許異議申立人エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテツドの提出した甲第1号証には、半導体産業におけるプラズマ・エッチング工程やクリーニング工程から排出されるCF4およびC2F6のようなPFCガスを回収し、再利用する方法が記載され、また、PFCガスの回収・再利用という目的・課題が本件発明と共通する技術が記載されているものの、上記(ロ-2)および(ロ-3)の記載から分かるように、その技術は、分子篩膜を用いるものではなく、その大要は、吸着剤として活性炭を用いた二床式吸着塔により、圧力を変動させるいわゆるPSA法(プレッシャースウィング法)によって高圧状態でPFCを吸着させ、低圧状態で脱着させてPFCを回収する技術である。
したがって、PFCガスを分離する分離膜として分子篩膜を用いる訂正後の本件請求項1,38,40、50,51,61および63に係る発明と、甲第1号証に記載のものとでは、分子篩膜の有無だけでなく、PFC回収の原理および操業方法が根本的に相違するものである。
次に、特許異議申立人エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ・インコーポレイテツドの提出した甲第2〜5号証を順次検討する。
甲第2号証(Journal of Membrane Science 105(1995)、p.177-185)には、「ポリイミド中空繊維膜モジュールによる空気からのCFC-12の分離」と題したIk-Jae Chung外2名の研究報告が掲載されているものの、そのポリイミド中空繊維膜モジュールは、いわゆる選択透過性のポリマー膜であって、分子篩膜ではないし、また、CFC-12は、当該本件発明でいうペルフルオロ化合物ではない(本件明細書の【0030】段落を参照)。
甲第3号証(J.Chem.Soc.Faraday Trans.1,1986,82,p.2057-2063)には、「分子篩炭素膜を通して透過のメカニズム」と題したJacob.E.Koresh外1名の研究報告が掲載されており、その実験の欄には、「研究したガスはH2,He、N2、Ar、Xe、O2、CO2、N2O、SF6およびCH4であった。」(第2058頁中段第7行)と記載されているが、それに続けて、「全ての透過率測定は純粋ガスで行われた。」(第2058頁中段第7〜8行)と記載されていることから分かるように、その分子篩炭素膜を通して透過実験は、純粋ガスで行われたものであって、ガス混合物からのペルフルオロ化合物の分離を意図していないし、また、SF6は、上記訂正により本件発明のペルフルオロ化合物から除かれているものである。
甲第4号証(特開昭63-126522号公報)には、「気体流体の成分の分離方法」に関する発明が記載されており、多数の膜分離ユニットと吸着ユニットを用いる回収方法が記載(特許請求の範囲第1項、第1図等を参照)されているが、その第5頁左下欄第3〜7行に、「この方法に使用できる最近入手可能な半浸透膜材料はポリスルホン、酢酸セルロース、ポリイミド、ポリアミド、シリコーンゴム、ポリフェニレンオキシド等である。」と記載されていることから分かるように、その膜分離ユニットはいわゆる選択透過性のポリマー膜を使用するものであって、その第5頁右下欄第6〜10行でいう分子ふるいは、吸着ユニットの吸着剤として使用される(第5頁左下欄第8行〜右下欄第10行を参照)もので、分子篩膜ではない。
甲第5号証(SEPARATION SCIENCE AND TECHNOLOGY,18(8),pp.723-734,1983)には、「分子篩炭素透過選択性膜、PartI.ガス混合物の分離のための新しい装置の紹介」と題したJACOB E KORESH外一名の研究報告が掲載されており、それは、甲第3号証と同じ研究者によるものであり、その第733頁の表3には、MSC membrane(分子篩炭素膜)の場合のN2とSF6の透過率、選択率及び選択力が示されていて、N2とSF6の混合物からSF6を分離・回収することが示唆されてはいるものの、SF6は、上記訂正により本件発明のペルフルオロ化合物から除かれているものである。
そうすると、甲第1号証に記載された技術は、吸着剤として活性炭を用いた二床式吸着塔により、圧力を変動させるいわゆるPSA法(プレッシャースウィング法)によって高圧状態でPFCを吸着させ、低圧状態で脱着させてPFCを回収する技術であって、SF6以外のPFCガスを分離する分離膜として分子篩膜を用いる訂正後の本件請求項1,38,40、50,51,61および63に係る発明と、PFC回収の原理および操業方法が根本的に相違するものであり、また、甲第2〜5号証にも、分子篩膜を用いて、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスおよび少なくとも1種のキャリヤーガスを含むガス混合物から、ペルフルオロ化合物を回収することは記載されていないから、結局、甲第1〜5号証の記載を総合したところで、SF6以外の少なくとも1種のPFCガスを分離する分離膜として分子篩膜を用いる訂正後の本件請求項1,38,40、50,51,61および63に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
また、該請求項1を直接または間接的に引用している訂正後の本件請求項2〜37に係る発明、該請求項38を引用している訂正後の本件請求項39に係る発明、該請求項40を引用している訂正後の本件請求項41〜49に係る発明、該請求項51を直接または間接的に引用している訂正後の本件請求項52〜60に係る発明、該請求項61を引用している訂正後の本件請求項62に係る発明、及び、該請求項63を引用している訂正後の本件請求項64に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。
したがって、上記(2)の主張は理由がない。

6-3.上記(3)の主張について
特許請求の範囲の請求項56、57および60における請求項の引用方法の誤りは、上記(h)〜(j)の訂正により訂正されたから、上記(3)の主張における(3-1)〜(3-3)の理由は、既に解消している。

7.結び
以上のとおりであるから、上記訂正は認める。
そして、訂正後の本件請求項1〜64に係る発明の特許は、特許異議の申立の理由および証拠によっては取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜64に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ペルフルオロ化合物ガスの分離および回収のための改良された方法および装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガス混合物から少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを回収するための方法であって、
a)SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスおよび少なくとも1種のキャリヤーガスを含むガス混合物を提供する工程、
b)供給側および透過側を有し、キャリヤーガスに対し優先的透過性を示す第1の分子篩膜を提供する工程、
c)該膜の供給側を該ガス混合物と接触させる工程、
d)該膜の供給側から、第1の非透過流として、該少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを実質的に含む濃縮ガス混合物を取り出す工程、
e)該膜の透過側から、第1の透過流として、該少なくとも1種のキャリヤーガスから実質的になる欠乏ガス混合物を取り出す工程を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】 該ガス混合物を、該第1の膜の供給側に供給する前に、当該膜に有害な種のほとんどを実質的に除去するように処理する請求項1記載の方法。
【請求項3】 該ガス混合物を、該膜の供給側と接触させる前に、コンプレッサーで圧縮する請求項1記載の方法。
【請求項4】 該ガス混合物を、圧縮前に、当該コンプレッサーに有害な化合物を除去するように処理する請求項3記載の方法。
【請求項5】 該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項6】 該ガス混合物が、エッチング、化学気相堆積、および室内洗浄からなる群の中から選ばれたプロセスからの流出流を包含する請求項1記載の方法。
【請求項7】 該ペルフルオロ化合物ガスが、フルオロカーボン、NF3、SF6、ハロゲン化カーボンおよびそれらの混合物である請求項1記載の方法。
【請求項8】 該キャリヤーガスが、Ar、N2、Kr、Xe、Ne、O2、He、H2、CO、CO2、H2O、および空気でもあり得るそれらの混合物からなる群の中から選ばれる請求項1記載の方法。
【請求項9】 該ガス混合物が、当該膜に有害なガス成分のそれぞれを1体積%未満の割合で含有する請求項1記載の方法。
【請求項10】 該ガス混合物が、当該膜に有害なガス成分のそれぞれを10ppm未満の割合で含有する請求項1記載の方法。
【請求項11】 該ガス混合物が、当該膜に有害なガス成分のそれぞれを1ppmの割合で含有する請求項1記載の方法。
【請求項12】 供給側の絶対圧と透過側の絶対圧との比が、約2ないし約10である請求項1記載の方法。
【請求項13】 該膜への供給時におけるガス混合物の圧力が、約105ないし約2.0×107パスカルである請求項1記載の方法。
【請求項14】 欠乏ガス混合物が、真空手段の低圧側と流体連通している請求項1記載の方法。
【請求項15】 該第1の非透過流の少なくとも一部を第2の膜の供給側に送り、該第2の膜は、該第1の非透過流よりもペルフルオロ化合物が濃縮された第2の非透過流を生成し、当該方法がNの段階を通じて続行される請求項1記載の方法。
【請求項16】 段階Nの数が、少なくとも2であり、Nよりも少ない段階の透過物の少なくとも一部を除去し、さらに、段階Nの透過物の少なくとも一部を上流段階の供給側に再循環させる請求項15記載の方法。
【請求項17】 上流段階との接触前に、再循環された部分の圧力を上昇させることをさらに含む請求項16記載の方法。
【請求項18】 Nが、3ないし10である請求項15記載の方法。
【請求項19】 該第2の膜が、キャリヤーガスに対し該第1の膜よりも大きい選択性比を有する請求項15記載の方法。
【請求項20】 該第2の膜が、キャリヤーガスに対し該第1の膜よりも小さい選択性比を有する請求項15記載の方法。
【請求項21】 該段階Nの非透過流中の1またはそれ以上のペルフルオロ化合物ガスについて一定の濃度設定点で実施される請求項15記載の方法。
【請求項22】 該非透過流を圧縮および/または冷却し、さらなる処理のために貯蔵手段に貯蔵する請求項1記載の方法。
【請求項23】 該ガス混合物が製造プロセスから由来し、第1の非透過流の少なくとも一部を該製造プロセスに再循環させる請求項1記載の方法。
【請求項24】 該非透過流が、C2F6、CHF3、CF4およびNF3からなる群の中から選ばれるペルフルオロ化合物ガスの混合物を含む請求項1記載の方法。
【請求項25】 該非透過流のペルフルオロ化合物ガスの少なくとも1種を該非透過流中の他のペルフルオロ化合物からさらに分離する請求項24記載の方法。
【請求項26】 より高い揮発性のペルフルオロ化合物ガスからの少なくとも1種のより低い揮発性のペルフルオロ化合物ガスの分離を、効果的な温度および流量の冷却流体を用いた熱交換器中での蒸留により行う請求項25記載の方法。
【請求項27】 NF3およびCF4から実質的になる該非透過流の少なくとも一部を、NF3が吸着され、CF4が吸着されない吸着装置に送る請求項25記載の方法。
【請求項28】 CHF3およびC2F6から実質的になる非透過流の少なくとも一部を吸着剤と接触させ、それによりCHF3を優先的に吸着させる請求項25記載の方法。
【請求項29】 少なくとも1種のペルフルオロ化合物を1またはそれ以上の膜分離段階を有する膜装置において非透過流から分離する請求項25記載の方法。
【請求項30】 該ガス混合物が、約-40℃ないし約120℃の温度で該膜の供給側に入る請求項1記載の方法。
【請求項31】 該第1の非透過流の少なくとも一部を該膜の透過側での掃引ガスとして使用する請求項1記載の方法。
【請求項32】 段階Nからの非透過流の少なくとも一部を前段階の膜の透過側および/または膜段階Nの透過側における掃引ガスとして使用する請求項15記載の方法。
【請求項33】 再循環される非透過流の部分を、当該方法に再度入れる前に、または貯蔵へ送る前に、サージタンクに送る請求項23記載の方法。
【請求項34】 透過流の少なくとも一部を当該方法へまたは貯蔵へ再循環させる請求項23記載の方法。
【請求項35】 該処理が、プラズマ分解、熱分解、触媒的分解、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる請求項2記載の方法。
【請求項36】 該処理からの排流をペルフルオロ化合物を生成させるために使用する請求項35記載の方法。
【請求項37】 該第2の膜が、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、アルキル置換芳香族ポリエステル、セルロースアセテート、ポリエーテルスルホンとフッ素化芳香族ポリイミドとポリアミドとポリアミド-イミドとのブレンド、ポリフェニレンオキサイド、スルホン化ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、それらの共重合体、およびそれらの置換ポリマーからなる群の中から選ばれる少なくとも1種のポリマーから作られたものである請求項15記載の方法。
【請求項38】 半導体製造プロセスから流出するガス混合物から少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスまたはガス混合物を回収するための方法であって、
a)SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、少なくとも1種の有害種および少なくとも1種のキャリヤーガスを含有するガス混合物を提供する工程、
b)供給側および透過側を有しキャリヤーガスに対して優先的透過性を示す分子篩膜を提供する工程、
c)該膜に有害な該種の濃度を減少させるために該ガス混合物を前処理し、処理されたガス混合物を得る工程、
d)該膜の供給側を該処理されたガス混合物と接触させる工程、
e)非透過流として、該処理されたガス混合物におけるよりも高い濃度で該少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを含有する濃縮ガス混合物を該膜の供給側から取り出す工程、および
f)該少なくとも1種のキャリヤーガスに富むガスまたはガス混合物を、透過流として、該膜の透過側から取り出す工程を備える方法。
【請求項39】 該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項38記載の方法。
【請求項40】 a)反応室流出ガス導管を備えた、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、キャリヤーガス等を受けるための少なくとも1つの反応室、
b)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに比較して少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性である分子篩膜を備え、該反応室流出ガス導管を介して該反応室に接続され、透過物排出導管および非透過物導管を備える少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、および
c)該膜分離ユニットから該非透過流の少なくとも一部を該少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段を具備する半導体製造装置。
【請求項41】 該反応室流出ガス導管および該膜分離ユニットと流体連通する処理手段をさらに備え、該処理手段は、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる請求項40記載の装置。
【請求項42】 該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項40記載の装置。
【請求項43】 複数の膜分離ユニットが直列に配置されている請求項40記載の装置。
【請求項44】 第1の膜分離ユニットからの第1の透過流の少なくとも一部を該排出導管に排出し、下流側膜分離ユニットからの下流側透過流の少なくとも一部を該再循環手段における上流側膜の供給側に再循環させる請求項40記載の装置。
【請求項45】 複数の膜分離ユニットが並列に配置されている請求項40記載の装置。
【請求項46】 膜分離ユニットが、掃引ガス導管を備える請求項40記載の装置。
【請求項47】 非透過物導管に配置されたダンパーもしくはサージタンクをさらに備える請求項40記載の装置。
【請求項48】 非透過PFC富化流の少なくとも一部を該PFC富化流を将来の使用のために凝縮された形態で貯蔵させるコンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプに流すための手段をさらに備える請求項40記載の装置。
【請求項49】 該非透過物導管と流体連通する後処理手段をさらに備え、該後処理手段は、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる請求項40記載の装置。
【請求項50】 a)反応室流出ガス導管を備えた、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、キャリヤーガス等を受けるための少なくとも1つの反応室、
b)該反応室からの流出ガスを圧縮するための、該反応室流出ガス導管に配置された圧縮手段、
c)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに比較して少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過的である分子篩膜を備え、該圧縮手段の下流側で該反応室流出ガス導管を介して該反応室に接続された少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、
d)該膜分離ユニットからの該非透過流の少なくとも一部を該少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段、
e)該膜分離ユニットに入る反応室流出流と流体連通し、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる前処理手段、
f)該非透過物導管および該膜の透過側と流体連通し、該膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管、
g)該非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンク、および
h)該サージタンクの下流側で該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために液状で貯蔵させるコンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプを具備する半導体製造装置。
【請求項51】 ガス混合物からSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを回収するための装置であって、
a)圧縮に適した処理されたガス混合物を製するための処理手段、
b)該処理されたガス混合物を圧縮して圧縮ガス混合物を生成させるためのコンプレッサー、および
c)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性である分子篩膜を備え、導管を介して該コンプレッサーに接続され、透過物排出導管と非透過物導管を有する少なくとも1つ分子篩膜分離ユニットを具備する装置。
【請求項52】 該非透過流と流体連通する真空ポンプをさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項53】 該非透過流の少なくとも一部を回収するための回収ユニットをさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項54】 該非透過流の少なくとも一部を再循環させるための再循環導管をさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項55】 供給物として該非透過流の少なくとも一部を取る第2の膜分離ユニットをさらに備える請求項51記載の装置。
【請求項56】 該第2の膜分離ユニットからの透過流の少なくとも一部を該第1の膜分離ユニットの供給へ再循環させるために適合する請求項55記載の装置。
【請求項57】 該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項55記載の装置。
【請求項58】 供給物として該第2の膜分離ユニットからの透過流の少なくとも一部を取る第3の膜分離ユニットをさらに備える請求項55記載の装置。
【請求項59】 該第3の膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部が該第1の膜分離ユニットの供給へ再循環させるために適合される請求項58記載の装置。
【請求項60】 掃引ガスを該第2の膜の透過側に流すための手段をさらに備え、該掃引ガスは、該第2の膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を包含する請求項55記載の装置。
【請求項61】 少なくとも1つの分子篩膜分離ユニットを備え、該膜がキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性であることを特徴とする、ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスを回収するための装置。
【請求項62】 該分子篩膜が、炭素篩膜およびゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項61記載の装置。
【請求項63】 a)キャリヤーガスおよびSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを含有するガス混合物を圧縮するための圧縮手段、
b)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性である分子篩膜を備え、該圧縮手段、透過物排出導管および非透過物導管と流体連通する少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、
c)該膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を該ガス混合物の供給源に再循環させるための手段、
d)該ガス混合物が該膜分離ユニットに入る前に配置され、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビング、および吸着からなる群の中から選ばれるガス処理手段、
e)該非透過物導管および該膜の透過側と流体連通し、該膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管、
f)該非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンク、
g)コンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプおよび真空ポンプからなる群の中から選ばれ、該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために凝縮形態で貯蔵させる液化手段を具備するペルフルオロ化合物ガスの回収装置。
【請求項64】 該分子篩膜が、カーボン篩膜、ゼオライト被覆もしくはゼオライト充填膜からなる群の中から選ばれる請求項63記載の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス分離方法に係り、さらに詳しくは、ガス混合物からのペルフルオロ化合物ガスの分離および回収(または処理)に関する。特に、本発明は、半導体製造プロセス、特に、エッチングおよび洗浄工程の流出ガスに存在するもののごとき、ペルフルオロ化合物ガスを含む低濃度ガス混合物の濃縮に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体産業は、ガスを含む半導体製造プロセスで、特に、半導体製造プロセスの種々のエッチング工程ならびに該製造工程のチャンバー洗浄工程で、CF4、C2F6、C3F8、C4F10、CHF3、SF6、NF3などのごときペルフルオロ化合物を使用する。かかるペルフルオロ化合物ガスは純粋なまま、もしくは例えば、窒素または他の不活性ガスで希釈するか、もしくは他のペルフルオロ化合物ガスまたは他のキャリヤーガス(例えば不活性ガス)との混和物として使用される。該ペルフルオロ化合物ガスは全て、製造プロセス中に他種と必ずしも反応しない。さらに、該製造プロセスの別の工程を実行するために反応器を洗浄または排気する場合、たとえそれらを空気または不活性ガスのごとき他のいずれかのガスで十分に希釈しても、流出ガスまたはガス混合物は、好ましくは、ガス抜きされない。(「PFCPF」とも呼ばれる)該ペルフルオロ化合物のほとんどは、大気中で何千年もの間測定された寿命を有し、また、強い赤外線吸収体でもある。1994年6月7-8日に米国テキサス州ダラスにて開催された「地球温暖化シンポジウム」において、四塩化炭素(CF4)、ヘキサフルオロエチレン(C2F6)、三塩化窒素(NF3)および六塩化硫黄(SF6)が半導体産業に関する「温室ガス」と同定された。
【0003】
上記シンポジウムにて「半導体加工用具からのペルフルオロ化合物放出削減:選択および戦略のオーバービュー(Perfluorocompound Emission Reduction From Semiconductor Processing Tools:An Overview Of Options And Strategiews)」と題されたMichael T.Mocellaによって作成された提案では、大気中におけるこれらのガスの放出の制御のための種々の可能な戦略が提出された。
【0004】
非PFCによる代替プロセスは別として、いくつかの方法がすでに公知であるかまたは開発中である:-その使用済みベッド材が処理されなければならない、種々の活性物質による化学的熱分解。この方法は今のところ、商業的に将来有望であると考えられてはいるが、まだ証明されていない技術である。
【0005】
-火炎を用いて熱エネルギーおよび分解用反応体を共に供給する、燃焼に基づく分解プロセス(または化学的熱プロセス)。ここでは、使用される水素または天然ガス燃料に関連したいくつかの安全論争があり、全てのPFCが(温度が十分高ければ)燃焼生成物としてのフッ化水素酸(HF)を生じ、その放出もまた減じなければならない。そのことは、分解熱がまた抵抗加熱器を使用しても発生することを示唆した。
【0006】
-90%を越えるC2F6分解率で部分的にC2F6を分解する結合高周波装置等、プラズマの使用を含むプラズマに基づく分解プロセス。しかしながら、かかる装置はまだ商業的には証明されていない。通常、非PFC生成物への分解を誘導するためには酸素が必要であり、問題のHFの発生が存在するであろう。
【0007】
-再循環されるためにPFCが破壊される代わりに回収される、回収プロセス。この種のプロセスは、環境的に責任の重いアプローチであると考えられるので、非常に興味深い。異なる方法が可能性のある「PFCの吸収または極低温トラッピングの組み合わせに基づいて」示唆された。しかしながら、ポンプの運転、CF4およびNF3の接近した沸点、種々のプロセス流の混合および/または可能性のある吸着剤との反応に関連した大量の窒素を処理するごときいくつかの試みがある。一方で再循環は、かかる混合物の再循環について明白な問題があることを示唆した。
【0008】
PFCを含む高窒素含有流出ガス流の破壊のためのもう1つの燃焼装置は、1994年6月7-8日の同シンポジウムにても提出された、Larry Anderesonにより「ベクトル技術のフェニックス燃焼器(”Vector Technology’s Phoemix Combustor”)」と題された論文で開示されている。この削減装置もガス火炎(天然ガスまたは空気とともに水素)を使用し、このことは次いでさらなる分解の必要を伴うHF発生(加えていずれの燃焼プロセスに対しても固有のNOx、CO2発生)という同様の問題につながる。
【0009】
「PFC濃縮および再循環(PFC Concentration and Recycle)」と題されたAT&Tマイクロエレクトロニクス・アンド・ノバピュアー社(AT&T Microelectronics and Novapure Corporation)により1994年6月7〜8日の同シンポジウムにて提出された論文において、著者は(燃焼プロセスに比して)二酸化炭素、NOxおよびHFの生成を回避する回収プロセスの優位性を認めている。該プロセスは2ベッド吸収剤(活性炭)の使用を開示し、ここにベッドの1つが吸着モードにあり、一方第2のベッドが再生され、窒素、水素のごとき「キャリヤー」ガスは吸着されず排気系へ排出されるが、PFCは炭素(カーボン)篩に吸着される。該装置が第2の吸着剤に切り換えた場合、第1の吸着剤は真空ポンプを用いて排気され、流出ガスは再圧縮され、PFCガス混合物が回収される。かかる装置に伴う依然として解決されない問題の1つは、非極性であるCF4が炭素篩によっては容易には吸着されないが、次いで排出ガスとともに廃棄されるということである。また、いずれの吸着系でも湿度に対して非常に影響されやすく、供給流から水分のいかなる痕跡をも除去しなければならない。
【0010】
-50℃より高い沸点を有する凝縮性有機化合物、特に炭化水素(CH4、C2H6など)を回収するためのポリジメチルシロキサンのようなゴム状ポリマーまたは置換ポリアセチレンのようなある種の特定のポリマーから製造された膜の使用が、出典明示して本明細書の一部とみなされる米国特許第5,281,255号から公知であり、該炭化水素は、該膜空気よりずっと速く該膜を透過し、次いで膜の透過側で該炭化水素を回収する特性を有する。次いで、非透過物(例えばN2)は供給流に残留して排気されるが、透過物(炭化水素)は実質的に大気圧かまたはより低い圧力のいずれかにて回収される。しかしながら、このアプローチにより、供給流の圧力エネルギーの全てが喪失する。
【0011】
また、1990年11月27日に公開されたWO90/15662号で、選択透過性膜が、例えば空気からの炭化水素またはクロロフルオロカーボンの分離に有用なペルフルオロ2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールの非晶質ポリマーから形成されたことが開示されている。かかる特殊な膜は、米国特許第4,553,983号および同第5,281,355号に開示されたものを含む、あらゆる膜に比して、該膜の非透過側で予期せずして回収され得る、炭化水素およびクロロフルオロカーボンよりも明らかに速く酸素および窒素を透過する。このPCT出願では、また、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキシドおよびポリテトラフルオロエチレンの混合物の非晶質ポリマーも開示されている。これら全てのペルフルオロポリマーは、有害なクロロフルオロカーボンおよび炭化水素のほとんどに対して抵抗性を持つことが知られており、かかる分離のための商業的適合性を示す。しかしながら、かかるポリマーはPFC回収には十分適しておらず、低濃度での制限された実用性を持つに過ぎない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、水分を含むまたは水分で飽和した供給流について使用でき、顕著なまたは極端な流れおよび/または濃度の変動を伴ってもPFCの回収および/または濃縮を安全に取扱うことができ、かつ、副産物としてフッ化水素酸(HF)を生成しない、濃縮および/またはガス流からのPFCの回収のための環境的におだやかな方法および装置を提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
例えば半導体製造プロセスからの、ペルフルオロ化合物を含有する流出ガスを、特に、次いで膜の非透過側で回収されるガス混合物のPFCよりもずっと速く、空気、窒素、酸素、アルゴンおよび/またはヘリウムのごとき流出ガス混合物の「キャリヤーガス」を透過するある種の膜を使用することにより処理することができることが、今や、予期せずして判明した。
【0014】
本発明の1つの態様によれば、ガス混合物から少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを回収するための方法であって、
a)少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスおよび少なくとも1種のキャリヤーガスを含むガス混合物を提供する工程、
b)供給側および透過側を有し、キャリヤーガスに対し優先的透過性を示す第1の分子篩膜を提供する工程、
c)該膜の供給側を該ガス混合物と接触させる工程、
d)該膜の供給側から、第1の非透過流として、該少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを実質的に含む濃縮ガス混合物を取り出す工程、
e)該膜の透過側から、第1の透過流として、該少なくとも1種のキャリヤーガスから実質的になる欠乏ガス混合物を取り出す工程を備えることを特徴とする方法が提供される。
【0015】
本発明において、第2の膜として、ガラス状ポリマー膜、より好ましくは不斉膜(asymmetric)すなわち非対称膜、または複合膜を用いることができる。しかしながら、本発明に用いるガラス状膜は、出典明示して本明細書の一部とみなす、1993年10月21日に出願されたUSSN第08/138,309号で開示されたごとき、ポリテトラフルオロエチレン、非晶質ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキシド等のフッ素化ポリマーから製造された後処理層を含む層を有することができる。
【0016】
もう1つの態様によれば、本発明は、また、半導体製造プロセスから流出するガス混合物から少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスまたはガス混合物を回収するための方法であって、
a)少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス、少なくとも1種の有害種(酸ガス、シラン類、粒子物質等)および少なくとも1種のキャリヤーガスを含有するガス混合物を提供する工程、
b)供給側および透過側を有しキャリヤーガスに対して優先的透過性を示す分子篩膜を提供する工程、
c)該膜に有害な該種の濃度を減少させるために該ガス混合物を前処理し、処理されたガス混合物を得る工程、
d)該膜の供給側を該処理されたガス混合物と接触させる工程、
e)非透過流として、該処理されたガス混合物におけるよりも高い濃度で該少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスを含有する濃縮ガス混合物を該膜の供給側から取り出す工程、および
f)該少なくとも1種のキャリヤーガスに富むガスまたはガス混合物を、透過流として、該膜の透過側から取り出す工程を備える方法を提供する。
【0017】
本発明に用いる膜や第2の膜として使用され得るサイズ選択性膜のいくつかはある種の有害な副産物に敏感であり、かつ、それによって損傷を受けることがあり、すなわち、有害化合物は被覆を介してもしくは化学的または形態的な変性を改質させるかも知れない。従って、膜の導入に先立ってこれらの化合物を除去または処理するために該ガス混合物を処理することが好ましい。好ましくは、有害ガスHF、NH3、WF6、O3、BCl3;腐食種;SiH4のごとき水素化シリコンを含むいずれかの発火種;20マイクロメートルより大きい平均直径を有する微粒子およびいずれかの油霧を含む該膜に有害であり得る該供給流中の全ての種が、スクラビング、吸着または化学的反応捕捉手段によって除去される。加えて、本発明の方法および装置(装置)で用いるコンプレッサー(圧縮機)は密封され、かつオイルフリーであることが好ましい。
【0018】
さらに本発明によれば、
a)反応室流出ガス導管を備えた、ペルフルオロ化合物ガス、キャリヤーガス等を受けるための少なくとも1つの反応室、
b)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに比較して少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性である分子篩膜を備え、該反応室流出ガス導管を介して該反応室に接続され、透過物排出導管および非透過物導管を備える少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、および
c)該膜分離ユニットから該非透過流の少なくとも一部を該少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段を具備する半導体製造装置が提供される。
【0019】
本発明の好ましい態様によると、膜でPFCを濃縮した後、接近した沸点を有する分離したPFCまたはPFC混合物のいずれかを回収するために、選択的凝縮または吸着のごときプロセスによって他の各々から種々のPFCが分離される。本発明のもう1つの態様によると、PFCガス混合物は、例えば、第2の圧力を用いて再濃縮されるか、または(付加的処理を用いまたは用いずに)PFCガス混合物は該プロセスに貯蔵されるかもしくは再循環される。
【0020】
本発明の他の好ましいプロセスおよび装置の態様は、PFCガス混合物が圧縮され得、少なくとも部分的に液化され、将来の使用のために貯蔵されるために、真空ポンプ、熱交換器、圧縮機または極低温(cryogenic)ポンプを設けることである。本発明のもう1つの特徴は、該直列の膜ユニットのいずれか1つまたは全ての透過側の掃引流として使用できる各々の膜ユニットから濃縮されるPFCガス混合物の可能性とともに、該直列に配置された複数の膜を使用するPFCガス混合物の濃縮を含む。本発明のさらなる態様は、半導体製造プロセスに対してPFCを再循環するに先立って、あるいは極低温吸着または他の手段によって分画精製されるもしくは貯蔵されるに先立って、PFCガス混合物サージタンクを設けることである。
【0021】
さらにまた、本発明によれば、
a)反応室流出ガス導管を備えた、ペルフルオロ化合物ガス、キャリヤーガス等を受けるための少なくとも1つの反応室、
b)該反応室からの流出ガスを圧縮するための、該反応室流出ガス導管に配置された圧縮手段、
c)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに比較して少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過的である分子篩膜を備え、該圧縮手段の下流側で該反応室流出ガス導管を介して該反応室に接続された少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、
d)該膜分離ユニットからの該非透過流の少なくとも一部を該少なくとも1つの反応室へ再循環させるための手段、
e)該膜分離ユニットに入る反応室流出流と流体連通し、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビングおよび吸着からなる群の中から選ばれる前処理手段、
f)該非透過物導管および該膜の透過側と流体連通し、該膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管、
g)該非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンク、および
h)該サージタンクの下流側で該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために液状で貯蔵させるコンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプを具備する半導体製造装置が提供される。また、本発明によれば、ガス混合物からペルフルオロ化合物ガスを回収するための装置であって、
a)圧縮に適した処理されたガス混合物を製するための処理手段、
b)該処理されたガス混合物を圧縮して圧縮ガス混合物を生成させるためのコンプレッサー、および
c)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性である分子篩膜を備え、導管を介して該コンプレッサーに接続され、透過物排出導管と非透過物導管を有する少なくとも1つ分子篩膜分離ユニットを具備する装置が提供される。さらにまた、本発明によれば、
a)キャリヤーガスおよびペルフルオロ化合物ガスを含有するガス混合物を圧縮するための圧縮手段、
b)供給側および透過側を有し、少なくとも1種のキャリヤーガスに対して優先的に透過性であり、少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して実質的に非透過性である分子篩膜を備え、該圧縮手段、透過物排出導管および非透過物導管と流体連通する少なくとも1つの分子篩膜分離ユニット、
c)該膜分離ユニットからの非透過流の少なくとも一部を該ガス混合物の供給源に再循環させるための手段、
d)該ガス混合物が該膜分離ユニットに入る前に配置され、プラズマ分解、熱分解、触媒的除去、スクラビング、および吸着からなる群の中から選ばれるガス処理手段、
e)該非透過物導管および該膜の透過側と流体連通し、該膜分離ユニットに設けられた掃引ガス導管、
f)該非透過物導管と流体連通するダンパーもしくはサージタンク、
g)コンプレッサー、熱交換器、極低温ポンプおよび真空ポンプからなる群の中から選ばれ、該非透過物導管と流体連通し、ペルフルオロ化合物富化流を将来の使用のために凝縮形態で貯蔵させる液化手段を具備するペルフルオロ化合物ガスの回収装置が提供される。
【0022】
本発明の装置のさらに好ましい態様は、非透過物導管中に(好ましくは、第1のまたは複数の膜ユニットと精製ユニットまたは貯蔵チャンバー、もしくは反応チャンバーへの再循環の間に)ダンパーまたはサージタンク、および1以上のまたは非透過において圧縮機、熱交換器、極低温ポンプまたは真空ポンプを有し、PFCに富む流れは、好ましくは、該PFCに富む流れを将来使用するために液体形態で貯蔵させる。また好ましくは、液体PFC混合物を製造するためのダンパーまたはサージタンクおよび圧縮機をバイパスさせる弁がある。
【0023】
本発明の好ましいプロセスおよび装置は、各々の膜分離ユニットからの非透過流におけるPFC濃度について一定の濃度設定点における1以上の膜分離ユニットの操作を含む。この好ましい装置およびプロセスにおいて、次の各々のPFC膜分離ユニットから非透過流におけるPFCの設定点濃度は直前のものより高いであろう。この態様において、PFC濃度について連続的にまたは非連続的に分析するために、センサーは各々の膜ユニットから非透過物流出導管へ挿入させることができ、またはサンプルは各々の膜ユニットからの非透過流出物から定期的にもしくは連続的に採取され得、それは現場または工場のいずれかに納められた専用の分析器へ送られ得る。好ましくは、この情報は次いで、例えば各々の膜ユニットに対する供給の圧力、温度、流量などを制御し得るプロセス制御器へ送られる。また、掃引ガス装置が使用される場合、該掃引ガスは開放ループまたは閉鎖ループ装置のいずれかを介して制御されてよい。
【0024】
本発明のもう1つの好ましい装置およびプロセスの態様は、膜ユニットの第1のまたはそれに次ぐ段階のいずれかの透過流の再循環を含む(この場合、キャリヤーガスおよび他のプロセスガスは再循環される)。キャリヤーガスは反応チャンバーへ直接再循環されてもよく、もしくは貯蔵または将来の使用のために液化されてもよい。プロセスガスからキャリヤーガスを分離する作用を有する、さらなる再循環膜を設けてもよい。
【0025】
本発明の他の好ましい方法および装置は、半導体プロセスから由来するガス混合物のための前処理工程からの廃棄流が1つ以上のペルフルオロ化合物または他の化学物質を生成するために使用されるものであり、次いでそれは、出典明示して本明細書の一部とみなす1996年6月14日出願の本譲受人の同時係属出願第08/666,694号にさらに詳しく記載されているごとき、半導体プロセスまたは他の化学プロセスで使用するために精製されてよい。
【0026】
本発明のさらに他の好ましい方法および装置は、非ペルフルオロ化合物を除去するために1つ以上の非透過流が後処理されるものである。後処理法は膜に対する供給ガスの前処理に適したものとして前に記載した、吸着、極低温蒸留、抽出またはスクラビングを含んでよい。
【0027】
本発明のもう1つの態様は、1つ以上のガスキャビネット、チューブトレーラー、クリーンルームまたは本明細書に記載したごとき膜ユニットの使用などからの排出流から比較的純粋なPFC流の回収法である。
【0028】
本発明のプロセスおよび装置のさらなる理解は、本明細書添付の図面および以下の詳細な記述を参照して理解されるであろう。
【0029】
【発明の実施の形態】
今や、例えば半導体製造プロセスからのPFCの回収は、分子篩を使用し、この膜の非透過側における非透過流を回収することによってPFCを含むガス混合物を濃縮する本発明により可能となり、一方、膜を透過する環境に対して無害なガスは、次いで、直接排出されるかまたは再循環され得る。この方法は現存する多くの方法より簡便で環境的にもフレンドリーである。非透過流は半導体製造反応チャンバーへ再送されるか、将来の使用にために貯蔵設備に送られるか、または現場または工場のいずれかのPFCの分離のためのPFC回収装置に送られるかのいずれかであってよい。
【0030】
本発明の目的のために、ペルフルオロ化合物は、全てが、または1個の水素を除く全てがフッ素により置換されたC、Sおよび/またはN原子を有する化合物として定義され、かつSF6は除かれる。最も一般的なPFCは、限定されないが、次の化合物のいずれかを含む:CF4、C2F6、C3F8、C4F10のごとき完全にフッ素化された炭化水素、およびCHF3、NF3のごときフッ素化された他の化合物。本発明の定義において、それらがサイズ選択性膜に対して有害でない限り、PFCはまたBF3、COF2、F2、SiF4、WF6、WOF4も含む。ペルフルオロ化合物はクロロフルオロカーボン、または2個以上の水素置換基を含有する化合物を含まず、かかる化合物は半導体製造プロセスでは使用されない。
【0031】
本発明に従って、半導体ガスからのPFCの高圧濃度に適した膜材は、以下詳述する分子篩膜であるが、第2の膜等としてサイズ選択性挙動を示し、それによりN2またはHeのごときより小さな種がより大きなPFCに対して優先的に透過されるというサイズ選択膜(size selective membrane)を用いることができる。ガラス状ポリマーは、主としてこの特性を示すポリマー膜材のクラスの1つであるが、適当な膜はガラス状ポリマーのみに限定されない。以下、サイズ選択膜について説明する。
【0032】
鎖の剛性および自由容積(free volume)のごとき重要な因子は、適当なポリマーを同定するための一次スクリーニング法として用いることができる常法である。しかしながら、これらの複雑な相互作用および他の膜因子、ならびにPFCガスの特異的な物理的特性は、適当なサイズ選択能を有する膜材の選択を複雑にしている。混合ガスにおいて、または純粋なガス、フラックス測定でさえも多くの場合において、適当な材質が決定され得る。本発明に従う適当な材質の重要な基準は、主要なサイズ選択性または移動度選択性輸送機構である。本発明の実施において適当なポリマーは、
【数1】

を示す。
【0033】
成分移動度(D)および溶解度因子は、チャーンR.T.(Chern、R.T.)、W.J.コロス(W.J.Koros)、H.B.ホップスバーグ(H.B.Hopfthburg)およびV.T.スタンネット(V.T.Stannett)により、D.R.ロイド(D.R.Lloyd)(編)、ACS Sym.Ser.269の「合成膜の材料科学側面(Materials Science Aspects of Synthetic Membranes)」ACS,ワシントンD.C.(1984)において、またはコロスW.J.、M.R.コールマン(M.R.Coleman)およびD.R.ウォーカー(D.R.B.Walker)により、「制御されたポリマー膜の透過性(Controlled Permeability Polymer Membranes)」,Annu.Rev.Mater.Sci,22,47-89(1992)において教示されるように決定され得る。
【0034】
好適なポリマーの溶解度選択性は典型的には小範囲で変動するに過ぎない。PFCに対して特定の物理化学的親和性を示さない低自由体積物質について、溶解度比に対する理に適った近似は成分の臨界温度比である。N2対C2H6に対しては、
Tc N2/Tc c2F6=125/293=0.43
である。
【0035】
ポリマーの自由体積が増加するか、またはより大きなポリマー/C2H6親和性を持つとき、C2H6へのより強い影響のため、N2/C2H6溶解度比は低下する。
【0036】
本発明によれば、[Dc][Sc]/[Dp][Sp]と定義される、キャリヤーガス(c)およびペルフルオロ化合物(p)の間の全ての選択性は、少なくとも1.0である。好ましい場合において、最小の経済的に許容される全体的選択性N2/C2F6≧5であることが必要であり、その場合、最小の移動度選択性は、
【数2】

と評価される。
【0037】
本発明で有用ないくつかのポリマーに対する全体的選択性は非常に大きく、最小値を越えるかかる実際の移動度が示された(例えば、ほぼ12)。例えば、200のオーダーにおけるテストケースの選択性が観察され、そこで、いくつかの材質について、Di/Dj=450である。
【0038】
前述に従って、本発明において最も有用な膜は、好ましくは、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミド-イミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホネート、ポロエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、アルキル置換芳香族ポリアミド、ポリエーテルスルホンの混合物、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、フッ素化芳香族ポリアミド、ポリアミドおよびポリアミドイミドから製造されたポリマー膜のごとき、好ましくはガラス状膜、1994年5月20日に出願されたUSSN第08/247,125号で開示され、かつ出典明示して本明細書の一部とみなすごとき、ガラス状ポリマー膜、セルロースアセテート、およびその混合物、そのコポリマー、その置換(例えば、アルキル、アリル)ポリマーなどである。また、米国特許第5,364,454号に開示されているスルホン化ポリマーも本発明を実施する上で有用である。
【0039】
不斉膜は、溶剤混和性の非溶剤中でのポリマー溶液の沈殿によって調製される。かかる膜は等級付けられた多孔性の異方性支持体に支えられた密度の高い分離層により代表され、一般的に一工程で調製される。かかる膜の例およびそれらの製造方法は、全て出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第4,113,628号;同第4,378,324号;同第4,460,526号;同第4,474,662号;同第4,485,056号;同第4,512,893号;同第5,085,676号;および同第4,717,394号で開示されている。特に好ましい膜は、米国特許第5,085,676号に記載されたごとき、ポリイミド不斉ガス分離膜である。
【0040】
さて、本発明において、上述のように、分子篩膜が、使用される。かかる膜材料は、炭素篩膜(carbon sieve membrane)およびゼオライト膜である。これらの両材は分子ふるいのメカニズムによって種を分離する。このプロセスの特質を高度に識別できるため、非常に類似したサイズの分子間でさえ、非常に高い選択性が達成され得る。例えば、炭素篩膜は12〜14のオーダーで選択性を示したが、ポリマー材に対するO2/N2選択性に関する典型的な上限は8〜10である。
【0041】
炭素篩膜を最も首尾よく製造する手段はポリマー膜前駆物質の熱分解によって行われている。かかる膜を製造する手段およびガス物質の分離特性は、A.ソファー(A.soffer)、J.コレシュ(J.Koresh)およびS.サギー(S.Saggy)の米国特許第4,685,940号(1987);H.ヨネヤマおよびY.ニシハラの米国特許第5,089,135号(1992);C.W.ジョーンズ(C.W.Jones)およびW.J.コロスの「カーボン」32巻、p.1419(1994)に記載されている。
【0042】
また、ゼオライオトの被覆膜または充填膜も、ガスおよび蒸気成分のための利点を提供するために示され、K.クサカベ、S.ヨネシゲ、A.ムラタおよびS.モロオカのJ.MembraneScience,Vol.116,P.39(1996);S.モロオカ、S.ヤン、K.クサカベおよびY.アキヤマのJ.Membrane Sci.,Vol.101,p.89(1995);E.R.ゲウス(E.R.Geus)、H.バン・ベックム(H.van Vekkum)、W.J.W.ベッカー(W.J.W.Bakker)およびJ.A.ムリジュン(J.A.Moulijn)のMicroporous Mater.,Vol.1,p.131(1993);およびM.G.スエル(M.G.Suer)、N.バック(N.Bac)およびL.イルマズ(L.Yilmaz)のJ.Membrane Sci.,Vol.9,p.77(1994)に記載されている。
【0043】
かかるゼオライト被覆膜または充填膜は、本発明の実施において有用である。
【0044】
圧力駆動ガス膜分離プロセスにおいて、ガス分離膜の片側に複雑な複数成分のガス混合物を接触させ、混合物の特定のガスが他のガスよりも速く膜を透過する。それによってガス分離膜は、相対的意味において他のガスに対する遮断層として機能する間に、いくつかのガスをそれらを通して透過させる。膜を通る相対的ガス透過速度は、膜材組成物およびその形態の特性である。ポリマー膜の固有透過性は、幾らかはその材料の充填率および分子の自由体積によって制御される、膜を通るガスの拡散と該材料内のガス溶解度の組み合わせであると考えられている。選択性は材料によって分離される2種のガスの相対的透過性の比である。また、高いガス選択性を保有するために欠点のない高濃度分離層を形成することも非常に望ましい。
【0045】
典型的には、複合ガス分離膜は予備成形された微多孔質支持体上に高密度分離層を有する。通常、該分離層および該支持体は組成において異なる。複合ガス分離膜は、異方性、微多孔質支持体に支えられる超薄、高密度分離層の構造へと発展した。複合膜構造は、予備形成された異方性支持膜の上に予備形成された超薄高密度分離層を積層することによって調製され得る。かかる膜の例およびそれらの製法は、全て出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第4,664,669号;同第4,689,267号;同第4,741,829号;同第2,947,687号;同第2,953,502号;同第3,616,607号;同第4,714,481号;同4,602,922号;同第2,970,106号;同第2,960,462号;同第4,713,292号;同第4,086,310号;同第4,132,824号;同第4,192,824号;同第4,155,793号;および同第4,156,597号に開示されている。
【0046】
別法として、複合ガス分離膜は、まず異方性多孔質支持体を形成し、次いで該支持体に膜形成溶液を接触させる、多段階製造プロセスによって調製されてもよい。かかる方法の例は、全て出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第4,826,599号;同第3,645,645号;および同第3,508,994号に開示されている。
【0047】
また、米国特許第4,756,932号は、いかにして複合中空繊維膜が多重ポリマー溶液層の同時押出およびその後の溶剤混和性の非溶剤中への沈殿によって製造されるかを記載している。
【0048】
本発明の1つの態様によれば、PFCを分離すべきガス混合物中の低レベルの有害成分に耐える能力あるいは該成分と一時的に接触したときに有害成分に耐える能力を増強するために、該膜をフッ素化または過フッ素化ポリマー層を用いて後処理するか、または被覆するか、またはそれとともに同時押出しすることができる。
【0049】
中空繊維の紡糸プロセスは、中空繊維の形態および特性に影響し得る多くの変数に依存する。これらの変数は、該繊維を形成するために使用されたポリマー溶液の組成、紡糸中の中空繊維押出物の内腔へ注入された液体の組成、紡糸の温度、凝固剤の温度、ポリマーの凝固速度、繊維の押出速度、巻取ロール上での繊維の巻取速度などを含む。分離効率を増強するために膜の形態を改良することが好ましいであろう。かかる1つの方法は米国特許第5,468,430号によって教示されている。
【0050】
本発明の方法によれば、分離されるべきPFCを含有するガス混合物は、通常、少なくとも1種のPFCおよび空気、窒素、アルゴン、ヘリウムなどおよびその混合物のごとき、少なくとも1種のキャリヤーガスを含む。
【0051】
表1は、最も一般的な半導体製造プロセスからのPFCおよび他のガスを列挙している(必ずしもこれらのガスの全てが存在するとは限らず、それらのうちのいくつかのみが存在し得る)。
【0052】
半導体プロセスについての典型的なPFCは下記のものである:チャンバー洗浄に関して:四フッ化炭素(CF4)、ヘキサフルオロエチレン(C2F6)、三フッ化窒素(NF3)、ペルフルオロプロパン(C3F8)、六フッ化硫黄(SF6)、トリフルオロメタン(CHF3)。
【0053】
エッチングに関して、通常、アルゴン、三塩化ホウ素、塩素、臭化水素、塩化水素、フッ化水素、シラン、四塩化シリコンなどのごとき他のいくつかのガスを伴う以外は、同じPFCが使用される。
【0054】
(表1に示したごときに)これらのガスのいくつかは時折、膜に有害であり、導入または該膜に接触する可能性の前にそれらを除去または破壊することが好ましい。当該流れを膜へ送るに先だって、次の化合物を実質的に除去することが好ましい:WF4、HF、F2、NH3、Cl2、WF6、HCl、O3および水素化シリコン、水素化ゲルマニウムなど。これを成すために、好ましくは、膜に対する全供給パーセンテージとして該有害物質の約1体積%より低いレベルに達するために、スクラバー装置(乾式または湿式スクラバー)、熱分解、プラズマ破壊、触媒的除去などを使用する等種々の方法が使用され得る。しかしながら、通常、各々の有害物質が10ppmより低いレベルに達することが好ましく、最も好ましくは1ppmより低い。さらに、1つの具体例において、本明細書で後処理と呼ばれる、これらの方法1種以上を用いて分離されたPFC非透過流を処理することが可能である。
【0055】


SiF4、WF6、WOF4、HF、F2は、過フッ素化化合物であるが、PFCとみなされない。
【0056】
膜に対して潜在的に有害な成分を除去するためのスクラバー装置は、(通常少なくともF2、HF、HCl、HBr、Cl2、NH3、WF6およびSiH4を除去する)乾式スクラバー、湿式スクラバー、または組み合わせを含む。通常、乾式スクラバーは樹脂タイプのスクラバー、またはソーダ石灰であり、一方、いくつかの乾式スクラバーはMoO2のごとき触媒を含み、またオゾンも除去可能である。また、水素化物ガスは、出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第4,743,435号;同第4,784,837号;同第4,910,001号;同第4,996,030号;同第5,182,088号および同第5,378,439号に開示された方法に従って除去され得る。種々の有害な成分を除去するために、異なるスクラバーを設置した場合、ガス混合物をまず乾式スクラバー(または複数のスクラバー)へ、その後湿式スクラバーへ流し込むことが好ましい。通常、流れから粒子を除去するためのフィルターが必要であり(20ミクロンより大きい直径を有する粒子の除去)、膜の上流の系に20マイクロメーターより小さい直径の口径を有するフィルターを設けることが好ましく、それによって粒子および液滴を除去して膜性能の付与を回避する。
【0057】
湿式スクラバーは、例えば、デラテク社(DELATECH Corporation)からの「あなたの特別な用途のためのCDO(商標)の選択(Selecting a CDOTM for your Particular Application)」と題された小冊子に開示されている。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、膜を渡る(膜横断)圧力降下(すなわち、供給と透過の間のΔP)、供給の温度(すなわち、供給流と膜自身の間の温度平衡後の膜の温度)、および供給流速の間にはいくつかの関係が存在する。本発明によれば、膜に対する供給ガスの流速および供給ガスの温度の所与の定数に対して、膜を渡る差圧が増加すると、例えば、膜の非透過側または「残留」側でのC2F6のごときPFCの回収は減少し、一方、膜の透過側でのPFC濃度は増加する。従って、本発明によれば、膜を渡る圧力降下ΔPを維持することが好ましく、それは約13,800kPa(2000psia)より小さく、好ましくは、約140ないし約1380kPaまで(20psiaないし200psiaまで)の範囲であり、最も好ましくは、約345ないし1035kPa(約50ないし約150psia)である。
【0059】
供給ガス混合物はしばしば実質的に大気圧にて得られるので、この供給物を圧縮して所望の膜横断圧力降下を有するように(しかしこれは通常、供給物中に存在する多くの種が圧縮機を劣化させる可能性があるので好ましくない)、または別法として、膜の透過側に供給ガス圧力より低い圧力を作り出すように(真空装置を損傷するかも知れない種のほとんどは膜の非極性側に保持されているので好ましい)することができ、またはその組み合わせも可能である。膜の透過側においてこの低い圧力を作り出すために、真空ポンプまたは他のいずれかの吸引手段が使用される。別法として、もし膜に対する供給流が圧縮されるべきであれば、好ましくは、圧縮は、出典明示して本明細書の一部とみなす、1996年6月14日出願の同時係属出願第08/663,884号に説明されたごとき、供給流が湿式または乾式スクラバー、フィルター、触媒的除去、パルスコロナ破壊、熱分解、および/またはプラズマ分解を用いて前処理された後実施される。好ましい圧縮機は、米国オハイオ州のパワーレックス・ハリソン社(PowerexHarrisonCompany)からパワーレックス(POWEREX)なる商品名の下に入手可能な公知の圧縮機のように、密閉され、かつオイルフリーである。膜ユニット(すなわち一連の膜ユニットの第1の膜ユニット)を供給する圧縮機の(圧縮機の排出口での圧力を圧縮機流入口での圧力で割った比として定義された)圧縮率は、好ましくは、約2:1ないし約10:1までの範囲であり、一連の膜ユニットにおける他の膜の供給配置に補足的圧縮機が必要とされるかも知れないということが認識される。もし特定の膜への供給流の温度および/または圧力が制御されるべきであるか、または非透過流におけるPFC濃度が本明細書で開示したごとき設定点で制御されるならば、圧縮された供給流と、例えば、周囲の液体の水または液体窒素のごとき冷却液の間に熱交換器を設ける必要があるかも知れない。
【0060】
また、供給流量および/または膜の温度も、膜の透過側のPFCの回収に影響を有する。通常、供給および/または膜温度が上昇すると、所与の流速および圧力降下に対して、より大量のガス混合物が膜を通って透過するであろう。
【0061】
好ましくは、C2F6または他の興味深い成分について計算させる、少なくとも1つのNDIRアナライザーを用いて、オンライン性能測定が行われる。分離されるべきガス混合物の流れおよび濃度における、特に周回中のよりよい性能のための遠隔モニタリングおよび制御が組み込まれてよい。
【0062】
好ましくは、供給流および/または膜の温度は約-10℃ないし約100℃まで変動し、好ましくは、約10℃ないし約80℃、特に好ましくは、周囲温度(通常約20℃ないし25℃)ないし60℃の範囲である。
【0063】
本発明のプロセスおよび装置の膜分離ユニットを操作するもう1つの好ましい方法は、1つ以上の膜ユニットが流出する非透過流における1種以上のPFCガスの一定の設定点濃度を有するための各々の膜の操作によるものである。この様式における本発明のプロセスおよび装置を操作する利点には、供給圧力の変動がなめらかであり得ること、膜の寿命が顕著に引き延ばされ得ることがある。非透過流におけるPFCの整定濃度を維持する1つの方法は、非透過流、好ましくは中空繊維膜の外面のそばに向流の一部を通すことである(それは膜ユニットの中空繊維の透過側である)。この実施は、その特許がこれらの技術を用いるPFCの分離を記載していないということを除けば、両方ともレール・リキード社に譲渡された米国特許第5,240,471号および同第5,383,957号にさらに十分に記載されている。かくして、通常、実際には、段階N、段階N+1および段階N+2などの間で小さな圧力降下があることを考慮して、第1の膜の段階Nの非透過流の一部または全てを、段階N+1および/またはN+2などのための供給流として使用されることができる。このことは段階Nの非透過側(供給側)の圧力が段階N+1または段階N+2のごとき引き続くいずれの工程の供給側の圧力より大きいことを意味する。
【0064】
1つのまたは複数の膜を含む態様において、この第1の濃縮工程の後、次いで種々のPFCが他の各々から少なくとも部分的に分離される、またはより多量のPFCを少量の他のPFCから分離する第2の工程を実施することが好ましい。蒸留、吸着、凝縮などのごとき、2種以上のペルフルオロ化合物を分離するための様々な分離技術が使用され得る。好ましくは、それは半導体製造用具(器具、機器)から排出される流れのためにより適当である可能性があるので、1994年「ソルバール(商標)溶剤凝縮および回収系(SolvalTM Solvent Condensation and Recovery System”)」と題された Technical Bulletinに開示され、出典明示して本明細書の一部とみなす、エール・リキード・アメリカ社の商標ソルバール(SOLVAL)の下で公知であるごとき、凝縮プロセスが使用され得る。基本的に、この凝縮プロセスにおいて、1つのまたは複数の膜の非透過側からの流出ガスは熱交換器中に供給される。液体窒素、アルゴンまたは別の冷却剤が該熱交換器へ導入され、冷却コイルを通って流れる。PFCのN2との混合物は熱交換器のシェルへ導入され、それが該シェルを通過する際にコイルを巡って流れる。冷却コイルでの温度に基づいて、当該混合物は冷却され、PFC蒸気の一部が凝集され、液化され、回収される。交換器への液体窒素の流速がより高く、冷却コイルでの温度がより低いと、より多量のPFCが液化されるであろう。
【0065】
いくつかの好ましい態様において、PFC混合物は濃縮後、その沸点の近接した種を含み、それゆえ分画凝縮によるそれらの分離は困難である。例えば、C2F6は-78.2℃の標準(normal)沸点を持ち、CHF3は-82.1℃の標準沸点を持ち、CF4は-127.9℃の標準沸点を持ち、NF3は-129℃の標準沸点を持つ。近接した沸点を持つ少なくとも2種からなる混合物の分離が所望される場合、例えば、実質的に純粋な種または近接した沸点を有する種の混合物を提供するために、互いから近接しすぎない沸点を有する種々の種間での凝縮による第1の分離が行われる。次いで、近接した沸点を有する種の混合物を別のプロセス、例えば混合物の種の1つが他方よりより極性がある場合は吸着によって分離される。NF3およびCF4は(NaX、CaXおよびNaAなどのごとき)分子篩、活性炭などを用いて分離することができ、その場合(NF3およびCHF3のごとき)極性種は、CF4のごとき非極性種に対して優先的に吸着される。
【0066】
図1に、従来のプロセスにおける、バーナーによるPFCの破壊効率と温度(℃)との関係を示す。例えば、空気-燃料バーナーを使用した場合、火炎が到達する温度では、NF3、CCl2F2(これはPFCには該当しないが、塩素及びフッ素の化合物であり、電子工業において使用されている)、CHF3、及びSF6は、ほぼ100%、破壊される(その結果、HF及びその他の好ましくない種類のガスが生成される)。C2F6及びCF4は、一部が破壊されるのみであり、特に、C2F6は、50%しか破壊されない。従って、燃焼ガスを大気中に排出することはできない。しかし、酸素-燃料火炎を使用した場合には、その温度が約1400℃になるので、C2F6の大半を破壊することができる。しかし、やはり、好ましくない種類のガスが生成される。本発明においては、900℃での燃焼によって、C2F6及びCF4を除く全てのPFCを除去し、C2F6及びCF4は分離され、必要に応じて再循環される。
【0067】
図2に、本発明に基づく一実施態様の全体的な構成を示す。これは、半導体製造プロセス1に対して適用されるものである(PFCを使用して排出する全てのタイプの半導体製造プロセスに適用できる)。矢印23及び22は、それぞれ、プロセス1で使用されるPFC及びキャリアガスを表す(典型的には、電子工業において良く知られている従来のバルクシステムあるいはガスキャビネットから、バルク、及び又は、シリンダ供給される)。
【0068】
この実施形態において、PFC、キャリアガス及びその他のガス24(例えば、反応性のガス)が混合した排出ガスは、プロセス1から回収され、排出ライン2に導入される。混合ガスは、好ましくは、フィルタ5aを通った後、コンプレッサCによって圧縮される。次いで、圧縮された混合ガスは、必要に応じて、クーラーあるいはヒーターQに導入され、適当な温度に調整される。次いで、混合ガスは、好ましくは、ドライスクラバー3で洗浄され、シリコン水素化合物、NH3、AsH3、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、ハロゲン、ハロゲン化物、の大半が除去される。次いで、好ましくは、ウエットスクラバー4に導入され、水素化物、ハロゲン化物、ハロゲンガスの大半が除去される(上記の構成は、ライン2に供給される混合ガスの組成に依存する、場合によっては、ドライスクラバー3のみ、あるいはウエットスクラバー4のみでもよい)。次いで、フィルタ5bに導入され、粒径が20マイクロメータ以上のダスト、パーティクル、液滴などが除去される。なお、これに加えて、ドライスクラバー3の上流側にフィルターを設けて、パーティクル及びダストを除去してもよい。ライン25内の混合ガス中には、膜分離装置6の構成部材に有害な成分は実質的にはもはや含まれてはいない。ガスの流れ25は、膜分離装置6を構成する複数の中空繊維の供給側に導入され、混合ガス中のキャリアガスは、中空繊維を透過して回収されるか、あるいは、廃棄ガス7として排出される(もし、例えば、キャリアガスがヘリウムあるいはアルゴンなどを含んでいる場合には、それらを回収し、必要に応じて更に精製して、プロセスに再循環するのが有利である)。非透過側の流れは、大半のPFC(濃縮されたもの)からなり、ライン8側に回収され、ライン9を介して、直接、プロセス1に再循環されるか(または、バルクに一旦貯えられた後、プロセス1で再使用される)、あるいは、例えば、凝縮器10の様な分離装置に送られる。凝縮器10においては、熱交換器にライン15から液体窒素LN2が導入され、温められてライン16を介してLN2/GN2としてユニット10を出、ユニット10は高沸点成分を凝縮し(LN2の流量を変えることによって、凝縮液の組成をコントロールすることができる)、凝縮液はライン12を介して回収される。次いで、例えば、吸着(PSA)プロセスユニット11に送られ、極性を有するフラクション19が、非極性のフラクション20から分離される。これらの各フラクションは、ライン21を介して回収され、オンサイトもしくはオフサイトで更に処理されるか(図中に破線で示してあるが、これは好ましい選択肢ではない)、あるいは、プロセス1に再循環もしくは貯蔵される。
【0069】
凝縮器10から発生するガスフラクションは、ライン14を介して、例えば、第2の圧力スイング式吸着(PSA)装置13(あるいは、他の形式の吸着装置)に送られ、その中で吸着された成分(一種あるいは数種)はライン17を介して回収され、吸着されない成分(一種あるいは数種)はライン18を介して回収される。ライン17及びライン18の双方の成分は、ライン21を介して回収されるか(例えば、オフサイト処理に送るために)、あるいは、プロセス1に再循環される。
【0070】
以上の各種ガスあるいはそれらの混合ガスは、プロセス1に再循環されるか、あるいは、PFC回収ユニット21に回収される。矢印24は、プロセスに供給される他の種類のガス(例えば、PFC及びキャリアガス以外のガスであり、他のガスを希釈するか、反応室内をパージするために使用される)。これら他のガスは、場合によっては、分離膜に対して有害である(例えば、SiH4、WF6など)。これらのガスは、半導体の製造プロセスの中の他の工程で使用される。
【0071】
図3は、図2の部分詳細図であり、膜分離装置及び凝縮器の好ましい態様を表している。供給側の流れ41は(ここでは、既に有害成分は除去されている)、コンプレッサ40によって圧縮され、膜分離装置42の供給側43に導入される。膜分離装置42の透過側44からの透過ガスの流れ45は、通常、大気中に排出される。圧力調整器46は、膜分離装置42の下流の圧力(あるいは、非透過側の流れの圧力)を調整するために、必要に応じて使用される。非透過側の流れ47は、例えば、凝縮器48に供給され、その流れは液体窒素LN2との熱交換によって分離され、その一方は凝縮液の流れ49となり、他方は非凝縮ガスの流れ50となる。熱交換の後、液体窒素LN2は、実質的に全てが気化して窒素ガスGN2になる。
【0072】
図4に、本発明に基づくプロセスあるいはシステムの一態様の、簡略化された概略構成図を示す。
【0073】
半導体製造プロセスから送られる供給側のガス90は、膜分離装置M1の第一段に導入される前に、コンプレッサ92で圧縮される。第一段(N段)の膜分離装置M1は、主としてキャリアガス及びプロセスガスからなる透過側の流れ94、及び一種あるいはそれ以上のPFCが濃縮された非透過側の流れ96を形成する。バックプレッシャ調整用の圧力調整器97は、膜分離装置M1の前後の差圧を調整する。非透過側の流れ96は、次いで、第二段(N+1段)の膜分離装置M2に導入され、PFCが濃縮された第二段の非透過側の流れ、及び主としてキャリアガス及びプロセスガス(膜分離装置M1を透過しないが、膜分離装置M2を透過するガス)からなる第二段の透過側の流れを形成する。第二段のバックプレッシャ調整用の圧力調整器99は、膜分離装置M2の前後の差圧を調整する。必要に応じて、流れ94及び100は合流され、ともに廃棄されるか、あるいは、図中に流れ100によって示される様に、再循環される。
【0074】
好ましくは、図4に例示されたシステムに、生成されたPFCの流れ98の一部を膜分離装置M2の透過側へ送るためのバルブ104及び配管106を追加する。この様に構成することによって、先に説明した‘471号及び‘957号特許中に記載されている様に、プロセスの効率を改善することができる。また、必要に応じて、真空ポンプ102を再循環ガスの流れ100の途中に設ける。真空ポンプ102を設けることによって、再循環ガスの流れ100を、供給ガス90とともに再び装置に供給することが可能になる。なお、真空ポンプ102を設けた場合には、再循環ガスの流れ100は、コンプレッサ92の上流側あるいは下流側で、供給ガス90の流れに合流される。
【0075】
図5は、図4の一変形例であり、ここでは、真空ポンプ(102)及びコンプレッサ(92)は設けられていない。
【0076】
図6に、図4に示したものと実質的には同一のプロセス及びシステムを示す。ここでは、再循環用の膜分離装置MRが、再循環ガスのライン100に設けられている。また、必要に応じて、膜分離装置MRを介してキャリアガスを分離するための配管110及び真空ポンプ112が追加される。配管108の中の再循環ガスは、主として、これまでの過程において精製された以外のプロセスガスからなる。
【0077】
図7及び図8に、本発明の基づく他の実施態様を示す。図7では、幾つかの同一のまたは異なるプロセス60・・・61が存在している(同時に運転される場合も、そうではない場合もある)。これらのプロセスでは、同様なあるいは異なるPFCガス及びプロセスガスと呼ばれる他のガスが使用される。プロセス60・・・61から排出されたガスは、好ましくは、スクラバーS1、SNで洗浄され、次いで、好ましくは、N2によって希釈され、それぞれ、コンプレッサ62・・・63で圧縮され、互い混合され、単一の流れ67となる(事実、様々なプロセス1・・・Nが、連続的にあるいは同時に廃棄ガスを排出する)。次いで、単一の流れ67は、好ましくは、フィルタSmに導入され、最終の清浄化が行われ、次いで、本発明の膜分離装置M1に導入される。膜分離装置M1において、透過側のガス65は大気中に排出され、非透過側のガス66及び66a(濃縮されたPFC)は、一あるいは数個のプロセス1・・・N(それぞれ、60・・・61)に再循環される。これに代って、非透過側のガスの流れ66cを、一またはそれ以上の膜分離装置M2、M3、・・・MNに送って、PFCの純度を高めることもできる。好ましくは、非透過側のガスの一部を掃引ガス(sweep gas)の流れ66bとして、膜分離装置M1の透過側へ送る。膜分離装置M2、M3、・・・MNにも、同様に、掃引ガスの流れを設けても良い。本発明のその他の好ましい実施態様としては、一あるいはそれ以上の真空ポンプ(69a及び69b)、高圧PFC貯蔵容器68、及び/又は、サージタンク64などを、追加するものがある。多種多様なプロセスの例としては、金属酸化物のエッチング、酸化物のエッチング、タングステンCVDプロセスなどを挙げることができる。装置には、再循環膜MRを含めることができ、透過物流65の少なくとも一部を供給してキャリヤーガスからプロセスガスを分離することができる。
【0078】
更に、図7には、膜分離装置M1の非透過側の流れ66の途中に設けられた流量測定装置101が描かれている。この流量測定装置101は、透過側の流量をコントローラ201を介して間接的に制御するために使用される。この場合、コントローラ201が流量測定装置101から信号を受け取って、配管67及び65に設けられている流量調整弁を調整する。好ましくは、配管66にもバックプレシャ調整用の圧力調整器を設けるが、これは、簡潔化のため図中には描かれていない。バックプレシャ調整用の圧力調整器103、105及び107は、図4中に描かれているバックプレシャ調整用の圧力調整器97について先に説明したものと同様の機能を有している。例えば、先に述べた様に、膜分離装置M1を、非透過側の流れ66の中のPFCの濃度を一定の値に維持する様に運転すると効果的である。そのような実施態様の場合、流量測定装置100は、配管66内のPFCの濃度を測定する装置をも備えることになる。同様なプロセス制御方法が、必要に応じて、膜分離装置M1、M2、M3、及びMNに対しても適用される。また、同様な配管構成が、符号108a、108b、108c、104a、104b、104c、106a、106b、及び106cで示される様に、下流側の膜分離装置において使用される。
【0079】
図8は、本発明の基づく並列処理式の実施態様を示し、ここでは、各プロセス1・・・Nは(、それぞれコンプレッサ72及び73において、窒素で希釈するとともに圧縮した後)、それぞれ、膜分離装置M1・・・MNと組み合わされている。各供給側の流れ74・・・75は(、必要ならば、予備処理装置S1・・・SNを介して)、膜分離装置M1・・・MNに導入される。透過側のガス(76、78)は、ライン78で一緒に大気に放出されるか、ライン76a、78aを介して再循環膜MRに再循環され、一方、各非透過側のガス79、80、81は、好ましくはそれぞれに対応しているプロセス79a、80a、81aに、再循環される。この様な実施態様における好ましい構成では、更に冗長(redundant)膜分離装置MSが設けられ、好ましくは、この膜分離装置MSは、それ自身の予備処理装置STを備える。また、好ましくは、再循環用の膜分離装置MRを設け、キャリアガスに含まれている不要な反応性プロセスガスを除去する。バルブ類を適当に配置することによって、この実施態様は、並列方式あるい直列方式(カスケード方式)で運転することができる。図4に関して説明したように、各非透過流の一部は、ライン79b、80b、81bを介して、各膜の透過側の掃引ガスとして使用することができる。
【0080】
本発明の様々な実施態様の全てに対して、膜分離装置前後で差圧を設けることが望ましい。この様な状態は、例えば、供給側を大気圧程度とし、膜分離装置の透過側を減圧することにより実現される。なお、供給側の圧力は、通常、半導体製造プロセスから排出される混合ガスの圧力と同程度である。通常、キャリアガスのみが膜分離装置を透過するので、真空ポンプあるいはその他の減圧装置にダメージを発生させる危険は少ない。これに対して、膜分離装置の上流側で混合ガスの圧縮を行うと、より多くのガスを圧縮することになる他、更に、圧縮手段の故障の危険をも伴う。
【0081】
図9は、ガラス状ポリマー製の中空繊維からなる面積約0.2m2の膜分離装置を使用し、温度20℃において、異なる2水準の供給ガスの流量で(それぞれ、170ml/min及び130ml/min)、中空繊維にガスを供給して中空繊維を透過させた場合の差圧とC2F6の濃度との関係を示す。図9から、明らかに分かる様に、膜分離装置の非透過側と透過側との間の差圧が小さい場合には、C2F6はほとんど濃縮されない(濃度0.2%のC2F6が他のガスとともに非透過側に回収される)。一方、差圧が大きな場合には、供給ガスの流量にも依存するが、供給側の流量が130ml/minの場合、C2F6の濃度は、差圧7×105N/m2付近を起点にして増大する。更に、供給側の流量がこれよりも大きな場合には(170ml/min)、上記の起点の圧力は明らかに増大する(流量とともに増大する)。
【0082】
図10に、図9において使用されたものと同じタイプの膜分離装置を使用した場合における、供給側の流れの温度(または、膜分離装置の温度)の影響を示す。供給側の流れの温度が上昇するに従って、PFCを同程度の濃度まで濃縮するために必要となる膜分離装置の差圧が増大する。
【0083】
図11に、膜分離装置の非透過側におけるC2F6の回収率と、膜分離装置の差圧との関係を、二水準の流量について示す。非常に低い差圧の場合、ほとんど全てのC2F6が回収される。一方、差圧の増大に従って、膜分離装置を透過するC2F6の割合が次第に増加する。その増大の傾向は、供給側の流量が小さいほど大きい(供給側の流量130ml/min及び170ml/minを比較することにより分かる)。
【0084】
図12に、供給側の流量が170ml/minの場合の、温度の影響を示す。膜分離装置を透過するC2F6の量は、温度20℃においては極めて少量に過ぎないが、温度55℃、差圧約7×105N/M2においては、ほぼ半分のC2F6が透過する。
【0085】
C2F6を回収する観点からは、図11及び図12によれば、所定の差圧では、大きな流量で且つ常温で、装置を運転するのが良い。しかし、図9及び図10によれば、ある程度の純度の(従って、ある程度の濃縮度の)C2F6を得るには、かなりの差圧が必要になる。
【0086】
図13から図15に、本発明の他の実施態様を示す。ガスキャビネット(時には、ガスパネルと呼ばれる)は、半導体製造技術において良く知られているので、当業者に対して説明する必要はほとんどない。PFC用のガスキャビネットは、PFCの放出系統を備えている。チューブトレイラー(tube trailer)、クリーンルーム、ガス装填設備などからのPFCの放出についても良く知られており、説明する必要はほとんどない。以下の検討は、ガスキャビネットからの放出に関するものであるか、そのアイデアは、排出されるPFCから比較的純度の高いPFCを回収するいずれの場合にも適用することができる。自動式のガスキャビネットは、シリンダーの交換の前後で、特定のパージ用のルーチンを行う。前パージルーチンは、通常、プロセスガスをパージするために行われ、一方、後パージルーチンは、通常、進入ガスをパージするための行われる。
【0087】
図14は、ガスキャビネット150に入る高純度PFC流れが設けられた態様の概略図である(簡潔化のため途中は省略されている)。高純度PFCは、導管120を介してキャビネット150に入る。ガスキャビネット150は、膜分離装置200に接続される放出用の配管あるいは経路180を備え、この膜分離装置200から、先に説明した、非透過側の流れ220及び透過側の流れ240が生ずる。
【0088】
図15は、複数のガスキャビネット(この場合は3台)150a、150b、及び150c、が設けられた態様の概略図であり、ここでは、すべてのガスキャビネットからの放出ガスが共通の膜回収装置に200に導入される。
【0089】
【実施例】
実施例1
0.95体積%のC2F6、1.03体積%のCHF3、1.10体積%のCF4および96.93体積%の窒素を含有し、544,218パスカルの圧力、293K(20℃)の温度、および193sl/m(分当りの標準リットル)の流量の供給流を米国特許第5,085,676号によるポリイミド膜の供給側に供給する。真空装置により、この膜の反対側に低圧を生じさせる。回収された透過流は、6,579パスカルの圧力、293Kの温度および181sl/mの流量にあり、非透過側では、圧力は544,218パスカルのままであり、温度は293Kであり、流量は12sl/mである。膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 15.66体積%
CHF3 9.54体積%
CF4 18.15体積%
N2 56.65体積%
を含有する。膜からの透過流は、
C2F6 0.02体積%
CHF3 0.48体積%
CF4 0.01体積%
N2 99.49体積%
を含有する。
【0090】
上記非透過流を上記極低温凝縮装置に送り、そこでは、非透過流1ポンド当り0.4942ポンドの液体窒素が熱交換器により接触され、かくして以後述べるようにPFCのほとんどが凝縮される。蒸気および液体流の組成は以下の通りである。
【0091】
蒸気流:
C2F6 1.03体積%
CHF3 0.69体積%
CF4 16.5体積%
N2 81.78体積%
この蒸気流は、窒素中に希釈されたCF4から実質的になる。
【0092】
液体流:
C2F6 47.83体積%
CHF3 29.00体積%
CF4 21.81体積%
N2 1.37体積%
この液体流は、3種の液体種C2F6、CHF3およびCF4に実質的に濃縮されている。ついで、この液体流を、供給流が流出するところのプロセスに再循環させるか、処理(濃縮、分離等)のために貯蔵し搬送する。
【0093】
蒸気流は、好ましくは、極低温凝縮装置の供給に再循環されるか、あるいは処理(例えば、スクラビング)し、廃棄することもできる。
【0094】
実施例2
実施例1と同様の条件下で、0.95体積%のC2F6、1.03体積%のCHF3、1.10体積%のCF4および96.93体積%の窒素を含有し、5.44×105パスカルの圧力、20℃の温度、および193sl/m(分当りの標準リットル)の流量の供給流を実施例1と同様の膜に送る。この膜は、液体窒素を使用する同様の極低温分離装置に接続されている。膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 15.66体積%
CHF3 9.54体積%
CF4 18.15体積%
N2 56.65体積%
を、供給流と同じ温度および圧力であるが、12sl/mの流量で含有する。膜からの透過流は、
C2F6 0.02体積%
CHF3 0.48体積%
CF4 0.01体積%
N2 99.49体積%
を含有する。
【0095】
上記非透過流を実施例1に示した極低温分離装置に送り、以下の蒸気および液体流を得る。
【0096】
蒸気流:
C2F6 1.03体積%
CHF3 0.69体積%
CF4 16.5体積%
N2 81.78体積%
液体流:
C2F6 47.83体積%
CHF3 29.00体積%
CF4 21.81体積%
N2 1.37体積%
この液体流は、3種の液体種C2F6、CHF3およびCF4に実質的に濃縮されている。この液体流は、例えば、実施例1に記載したように処理される。
【0097】
実施例3
実施例1と同様の条件下で、0.20体積%のC2F6、0.01体積%のCHF3、0.06体積%のCF4、0.01体積%のNF3、0.01体積%のSF6および99.71体積%の窒素を含有し、714,286パスカルの圧力、20℃の温度、および199sl/m(分当りの標準リットル)の流量の供給流を実施例1と同様の膜に送る。この膜は、液体窒素を使用する同様の極低温分離装置に接続されている。膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 0.5381体積%
CHF3 0.02体積%
CF4 0.1611体積%
NF3 0.0245体積%
SF6 0.0271体積%
N2 99.2291体積%
を、供給流と同じ温度および圧力であるが、73sl/mの流量で含有する。膜からの透過流は、
C2F6 0.0041体積%
CHF3 0.0047体積%
CF4 0.0014体積%
NF3 0.0016体積%
SF6 0.0004体積%
N2 99.9878体積%
を含有する。透過流の圧力は6579パスカルであり、流量は126sl/mである。上記非透過流を実施例1に示した極低温分離装置に送り(非透過流1ポンド当りLN20.4335ポンド)、以下の蒸気および液体流を得る。
【0098】
蒸気流(圧力:714,286パスカル、温度144K、流量:72.8sl/m):
C2F6 0.3418体積%
CHF3 0.0125体積%
CF4 0.1592体積%
NF3 0.0242体積%
SF6 0.0118体積%
N299.4505体積%
液体流(圧力:714,286パスカル、温度144K、流量:0.2sl/m):
C2F6 85.9100体積%
CHF3 3.2800体積%
CF4 0.9900体積%
NF3 0.1400体積%
SF66.6900体積%
N22.9900体積%。
【0099】
実施例4
実施例1と同様の条件下で、0.20体積%のC2F6、0.01体積%のCHF3、0.06体積%のCF4、0.01体積%のNF3、0.01体積%のSF6および99.71体積%の窒素を含有し、319,728パスカルの圧力、20℃の温度、および170sl/m(分当りの標準リットル)の流量の供給流を実施例1と同様の膜に送る。この膜は、液体窒素を使用する同様の極低温分離装置に接続されている。膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 0.5600体積%
CHF3 0.0200体積%
CF4 0.1700体積%
NF3 0.0300体積%
SF6 0.0300体積%
N2 99.2000体積%
を、供給流と同じ温度および圧力であるが、112sl/mの流量で含有する。膜からの透過流は、
C2F6 0.0154体積%
CHF3 0.0041体積%
CF4 0.0039体積%
NF3 0.0019体積%
SF6 0.0009体積%
N2 99.9738体積%
を含有する。透過流の圧力は6579パスカルであり、流量は112sl/mである。上記非透過流を実施例1に示した極低温分離装置に送り(非透過流1ポンド当りLN20.4335ポンド)、以下の蒸気および液体流を得る。
【0100】
蒸気流(圧力:714,286パスカル、温度144K、流量:72.8sl/m):
C2F6 0.0072体積%
CHF3 0.0003体積%
CF4 0.1145体積%
NF3 0.0197体積%
SF6 0.0003体積%
N2 99.8580体積%
液体流(圧力:714,286パスカル、温度144K、流量:0.2sl/m):
C2F6 80.67体積%
CHF3 2.88体積%
CF4 8.21体積%
NF3 1.52体積%
SF6 4.34体積%
N2 2.38体積%。
【0101】
実施例5
実施例1と同様の条件下で、1.00体積%のC2F6、0.01体積%のCHF3、0.01体積%のCF4、0.01体積%のNF3、0.01体積%のSF6および98.96体積%の窒素を含有し、866,595パスカルの圧力、20℃の温度、および5,000sl/m(分当りの標準リットル)の流量の供給流を実施例1と同様の膜(第1の膜)に送る。この膜は、第2の膜に接続(カスケード接続:第1の膜の非透過側が第2の膜の供給側に接続)されている。第1の膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 33.93体積%
CHF3 0.17体積%
CF4 0.31体積%
NF3 0.17体積%
SF6 0.31体積%
N2 65.11体積%
を、供給流と同じ温度および圧力であるが、150sl/mの流量で含有する。第1の膜からの透過流は、
C2F6 0.0012体積%
CHF3 0.0053体積%
CF4 0.0009体積%
NF3 0.0052体積%
SF6 0.0009体積%
N2 99.9865体積%
を含有する。第2の膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 96.52体積%
CHF3 0.23体積%
CF4 0.81体積%
NF3 0.24体積%
SF6 0.81体積%
N2 0.39体積%
を含有する。第2の膜からの透過流は、
C2F6 0.0636体積%
CHF3 0.1358体積%
CF4 0.0424体積%
NF3 0.1339体積%
SF6 0.0406体積%
N2 99.58739体積%
を含有する。
【0102】
実施例6
実施例2と同様の条件下で、1.00体積%のC2F6、0.2体積%のCF4および98.9体積%の窒素を含有し、213,315パスカルの圧力、20℃の温度、および6,366グラム/分の流量の供給流を実施例1と同様の膜に送る。この膜は、切り替え時間が15分であるVSA装置に接続されている。膜からの非透過(濃縮)流は、
C2F6 74.2重量%
CF4 10.8重量%
N2 15.1重量%
を、供給流と同じ温度および圧力であるが、84グラム/分の流量で含有する。膜からの透過流は、
C2F6 0.001重量%
CF4 0.014重量%
N2 99.985重量%
を含有する。VSA非吸着流は、
C2F6 94.9重量%
CF4 5.1重量%
を含有する。VSA吸着流は、
CF43 0.9重量%
N2 69.1重量%
を含有する。
【0103】
実施例7
半導体製造機器からの流出ガスからPFCを回収するために本発明の装置を使用した。第1の膜分離ユニットは、3つの中空繊維束を含み、第2の膜分離ユニットは、1つだけの中空繊維束を含むものであった。各中空繊維束は、表面積が等しいものであり、従って、物質輸送に関し、第1の膜分離ユニットは第2の膜分離ユニットの3倍の表面積を提供するものであった。各束は、実施例1に記載した中空繊維を使用した。2083ppmのC2F6、595ppmのCHF3、残部の窒素を含有し、約540キロパスカルの圧力、305K(32℃)の温度、および210scfhまたは95sl/m(分当りの標準リットル)の流量の供給流を米国特許第5,085,676号によるポリイミド膜の供給側に供給した。PFC物質収支は、供給中のPFC流量は約0.4590scfhまたは約0.217sl/mであり、生成物(第2の膜分離ユニットからの非透過流)は約64.7%のPFC濃度、約35.3%の窒素濃度を有することを示した。第2の膜分離ユニットからの非透過物中に回収されたPFCは、約99.5%のPFC回収について約0.457scfhまたは0.215sl/mであった。
【0104】
本発明のさらなる修飾は当業者に明らかであろう。本発明の範囲は、上の記述に不当に限定されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
バーナーによるPFCの分解効率をバーナー火炎温度に対して示す先行技術のグラフ図。
【図2】
本発明による1つの方法および装置の概略図。
【図3】
図2の方法および装置の一部の詳細図。
【図4】
本発明の1つの態様による方法および装置を示す概略図。
【図5】
本発明の他の態様による方法および装置を示す概略図。
【図6】
本発明の他の態様による方法および装置を示す概略図。
【図7】
本発明の他の態様による方法および装置を示す概略図。
【図8】
本発明の他の態様による方法および装置を示す概略図。
【図9】
供給流の異なる流速について膜の透過側におけるPFC濃度と膜を横断する差圧の関係を示すグラフ図。
【図10】
供給流の異なる温度について膜の透過側におけるPFC濃度と膜を横断する差圧の関係を示すグラフ図。
【図11】
供給流の異なる流速について膜の回収側(非透過側)におけるPFC濃度と膜を横断する差圧の関係を示す
【図12】
供給流の異なる温度について膜の回収側(非透過側)におけるPFC濃度と膜を横断する差圧の関係を示すグラフ図。
【図13】
先行技術のガスキャビネットおよびその種々のガス流様式を概略的に示す図。
【図14】
膜回収ユニットを含むガスキャビネットを概略的に示す図。
【図15】
共通の膜回収ユニットへ排出する多重ガスキャビネットを示す図。
【符号の説明】
1…半導体製造プロセス
2…排出ライン
3…乾式スクラバー
4…湿式スクラバー
5a,5b…フィルター
6…膜ユニット
7…廃ガス
10…凝縮ユニット
13…吸着装置
19…極性分画(フラクション)
20…非極性分画
21…PFC回収ユニット
22…キャリヤーガス
23…PFC
24…他のガス
25…ガス流
40,92,C…コンプレッサー(圧縮機)
41…供給流
42…膜
43…膜の供給側
44…膜の透過側
45,94…透過流
46,97…圧力調節器
47,96…非透過流
48…凝縮装置
49…液体流
50…ガス流
64…サージタンク
66b…掃引ガス流
68…貯蔵容器
69a,69b…真空ポンプ
90…供給ガス
98…第2の非透過PFC富化流
99…第2の背圧調節器
100…第2段階透過流
102…真空手段
104…弁
106,108,110…導管
150,150a,150b,150c…ガスキャビネット
M1…第1段階膜
M2…第2段階膜
Q…冷却器または加熱器
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第2999168号の明細書につき、平成13年8月27日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される次の(a)〜(l)のとおりの訂正する。
(a)特許請求の範囲の請求項1及び38中の「a)少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「a)SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス」と訂正する。
(b)特許請求の範囲の請求項40及び50中の「反応室流出ガス導管を備えた、ペルフルオロ化合物」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「反応室流出ガス導管を備えた、SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物」と訂正する。
(c)特許請求の範囲の請求項51中の[ガス混合物からペルフルオロ化合物]を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「ガス混合物からSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物」と訂正する。
(d)特許請求の範囲の請求項61中の「少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「SF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガスに対して」と訂正する。
(e)特許請求の範囲の請求項63中の「キャリヤーガスおよびペルフルオロ化合物ガス」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「キャリヤーガスおよびSF6以外の少なくとも1種のペルフルオロ化合物ガス」と訂正する。
(f)特許請求の範囲の請求項24中の「SF6、C2F6、CHF3、CF4およびNF3からなる」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「C2F6、CHF3、CF4およびNF3からなる」と訂正する。
(g)特許請求の範囲の請求項42中の「請求項40記載の方法」を、誤記の訂正を目的として、「請求項40記載の装置」と訂正する。
(h)特許請求の範囲の請求項56中の「請求項70」を、誤記の訂正を目的として、「請求項55」と訂正する。
(i)特許請求の範囲の請求項57中の「請求項55記載の方法」を、誤記の訂正を目的として、「請求項55記載の装置」と訂正する。
(j)特許請求の範囲の請求項60中の「請求項70」を、誤記の訂正を目的として、「請求項55」と訂正する。
(k)本件明細書の【0030】段落の記載全体を、明りょうでない記載の釈明を目的として、「本発明の目的のために、ペルフルオロ化合物は、全てが、または1個の水素を除く全てがフッ素により置換されたC、Sおよび/またはN原子を有する化合物として定義され、かつSF6は除かれる。最も一般的なPFCは、限定されないが、次の化合物のいずれかを含む:CF4、C2F6、C3F8、C4F10のごとき完全にフッ素化された炭化水素、およびCHF3、NF3のごときフッ素化された他の化合物。本発明の定義において、それらがサイズ選択性膜に対して有害でない限り、PFCはまたBF3、COF2、F2、SiF4、WF6、WOF4も含む。ペルフルオロ化合物はクロロフルオロカーボン、または2個以上の水素置換基を含有する化合物を含まず、かかる化合物は半導体製造プロセスでは使用されない。」と訂正する。
(l)明りょうでない記載の釈明を目的として、本件明細書の【0055】段落における、「SF6 六フッ化硫黄 無害」を削除する。
異議決定日 2002-09-19 
出願番号 特願平10-7021
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C07C)
P 1 651・ 537- YA (C07C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 杉江 渉  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
西村 和美
登録日 1999-11-05 
登録番号 特許第2999168号(P2999168)
権利者 レール・リキード・ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
発明の名称 ペルフルオロ化合物ガスの分離および回収のための改良された方法および装置  
代理人 鶴田 準一  
代理人 白根 俊郎  
代理人 坪井 淳  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  
代理人 永坂 友康  
代理人 樋口 外治  
代理人 羽鳥 修  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 西山 雅也  
代理人 橋本 良郎  
代理人 白根 俊郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 石田 敬  
代理人 村松 貞男  
代理人 坪井 淳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ