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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B08B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B08B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B08B
管理番号 1068881
異議申立番号 異議2001-73505  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2003-01-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-12-25 
確定日 2002-10-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3181927号「洗浄方法および洗浄装置」の請求項1ないし17に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3181927号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件特許及び本件特許異議事件の手続の経緯
本件特許第3113167号(以下「本件特許」という。)は、平成11年1月22日に出願されたものであって、平成13年4月20日に設定登録がされ、同年7月3日に特許公報に掲載されたものであり、これに対して、特許異議申立人・旭硝子株式会社より平成13年12月25日付けで特許異議の申立てがされ、その後、当審の取消理由通知に対して、平成14年9月18日付け訂正請求書により訂正請求がされたものである。

〔2〕訂正の適否についての判断
1.本件訂正請求は、以下の事項について訂正するものである。
a.特許請求の範囲の請求項1を、
「炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する、pHが8.5〜12.0、電気伝導度が100mS/m以上である、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解水を含む洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、 前記洗浄液の軟水化を促進する工程を含むことを特徴とする洗浄方法。」
と訂正する。
b.特許請求の範囲の請求項2〜17を削除する。
c.明細書第2頁第10〜15行(特許掲載公報第2頁右欄第26〜32行)の、「また、本発明の洗浄方法は、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルリ金属イオンとを含有する洗浄液を軟水化したのち、この軟水化された洗浄液で被洗浄物を洗浄することを特徴とする。
つまり、上記特定のイオンを含有する洗浄液を軟水化するタイミングは、洗浄前であっても洗浄中であっても良く、軟水化しながら洗浄することがより好ましい。」
を削除する。
d.明細書第4頁第16〜18行(特許掲載公報第3頁右欄第13〜15行)の「〜物理的に撹拌または曝気する工程、軟水化すべき洗浄液を静置(放置)して時間的に水化反応を確保する工程などを例示することができる。」を、「〜物理的に撹拌または曝気する工程などを例示することができる。」と訂正する。
e.明細書第4頁第26〜27行(特許掲載公報第3頁右欄第25〜27行)の「また、こうした強制的な工程以外にも、〜軟水化を促進することができる。」を削除する。
f.明細書第8頁末行〜第9頁第4行(特許掲載公報第5頁左欄第23〜28行)の
「実施例3
実施例1において、〜この結果を表2に示す。」とあるのを、明りょうでない記載の釈を目的として、「実施例3(削除)」と訂正する。
g.明細書第11頁(特許掲載公報第7頁)の表2中の実施例3の行を「実施例3(削除)」と訂正する。
h.明細書第1頁第5行(特許掲載公報第2頁左欄第32行)、および第4頁第25行(特許掲載公報第2頁右欄第12行)の「洗浄方法および洗浄装置」を「洗浄方法」と訂正する。
i.明細書の発明の名称「洗浄方法および洗浄装置」を、「洗浄方法」と訂正する。

2.そこで、訂正事項について検討する。
特許請求の範囲の請求項1は、洗浄液が、pHが8.5〜12.0、電気伝導度が100mS/m以上である点、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解水を含む洗浄液である点、および、洗浄液の軟水化を促進する工程を含む点、をそれぞれ限定するものであるから、この訂正は、特許請求の範囲を実質的に減縮するものであり、また、請求項2〜17を削除する訂正も、特許請求の範囲を減縮する訂正に該当する。
次に、発明の詳細な説明の訂正および発明の名称の訂正は、特許請求の範囲の訂正に伴って、特許請求の範囲の記載と整合させたものと認められるから、これらの訂正は、明りょうでない記載の釈明に該当する。
そして、上記請求項1の訂正事項は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内で訂正したものと認められ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
そうすると、本件訂正は、全体として、特許法第120条の4第2項ただし書第1号および第3号にいう特許請求の範囲の減縮および明りょうでない記載の釈明に該当し、また、同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定にも適合する。
したがって、本件各訂正はこれを認める。

〔3〕特許異議申立てについての判断
1.本件請求項1に係る発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの「洗浄方法」にある(上掲〔2〕1.a.)。

2.これに対して、特許異議申立人の異議申立ての理由は、訂正前の請求項1〜4、6、8〜12、14、16〜17に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証:特開平6-228600号公報ないし甲第3号証:特開平10-338900号公報に記載された発明であるから特許法第29条第1項第3号に該当し、また、訂正前の請求項4、6〜8、12、14〜16に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証:特開平6-228600号公報、甲第2号証:特開平9-250079号公報、甲第3号証:特開平10-338900号公報に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、いずれも特許を受けることができない発明であり、さらに、訂正前の請求項1〜17に係る発明は、特許法第36条第6項第1号および2号に適合しないというにあるものと認める。
そこで、異議申立人の主張する理由について検討する。
異議申立人が提示した、本件特許の出願前に頒布された甲第1号証には、「自動食器洗浄機用洗浄組成物」に関して記載されているが、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明のような、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する、pHが8.5〜12.0、電気伝導度が100mS/m以上である、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解水を含む洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、かつ、洗浄液の軟水化を促進する工程を含む洗浄方法、に関しては記載されていない。とくに、電解水を含む洗浄液を使用する点については記載も示唆もない。
また、甲第2号証には「繊維製品の洗浄方法」に関して記載されており、甲第3号証には「個装された自動皿洗い機用洗浄剤」に関して記載されているが、いずれにも、上記訂正後の請求項1に係る発明のような、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する、pHが8.5〜12.0、電気伝導度が100mS/m以上である、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解水を含む洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、かつ、洗浄液の軟水化を促進する工程を含む洗浄方法、に関しては記載も示唆もない。
そして、本件特許の訂正後の請求項1に係る発明は、請求項1に記載された構成が相俟って、明細書記載の効果を奏するものと認められる。
したがって、その余について検討するまでもなく、本件請求項1に係る発明が、異議申立人の提示した各刊行物に記載された発明、ないしこれらの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、異議申立人が特許法第36条の規定に違反すると指摘した事項についても、本件訂正により解消されたものと認められる。

〔4〕まとめ
以上によれば、特許異議申立人の主張する申立ての理由及び提出した証拠方法によっては、本件特許を取り消すことはできない。また、ほかに本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
洗浄方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する、pHが8.5〜12.0、電気伝導度が100mS/m以上である、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解水を含む洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、
前記洗浄液の軟水化を促進する工程を含むことを特徴とする洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、衣料品、食器類、医療用器具または手洗いなどの洗浄に適した新規な洗浄方法に関する。
背景技術
衣料品、食器類、医療器具または手洗いなどの洗浄は、従来より薬品や石鹸などの界面活性剤を用いて行われているが、洗濯時の手荒れや被洗浄物への残留による人体に対する安全性、廃水処理後の有害物質の残留等が問題となっている。
そこで、本願出願人は、殺菌洗浄液として電解水を用いるいわゆる無洗剤洗浄方法を先に提案した。これは、電解質を含む水を電気分解して得られるアルカリ性電解水の蛋白質除去作用および酸性電解水の殺菌作用を利用したもので、従来の薬品や界面活性剤に代わるものとして注目されている。
ところで、この種の洗浄剤を洗濯や食器洗浄などの用途に適用する場合、少なくとも従来の界面活性剤に匹敵するか、あるいはそれ以上の洗浄力を備えていることが前提となるが、如何なる物性を制御要因として洗浄剤を設計すべきかを洗浄メカニズムの観点から構築する必要がある。
また、ユーザーが誤って口にしても人体に無害で、また手触しても肌荒れのない安全性や取扱容易性も必要とされる。
さらに、洗濯や食器洗いを終えた後の洗浄剤含有廃水についても、何ら特別の処理を施すことなくそのまま生活環境に排水可能な取り扱い性、すなわち廃水処理性に優れている必要がある。
発明の開示
本発明は、従来の洗浄剤を用いた洗浄方法以上の洗浄力を呈し、安価で、安全性、取扱容易性および廃水処理性に優れた洗浄方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、洗浄メカニズムについて鋭意研究したところ、洗浄液の軟水化と、そのとき生じる組成物によるクレンザー効果や吸着効果により、従来の界面活性剤などの洗浄剤に匹敵するかあるいはそれ以上の洗浄力を発揮できることを見出し、そのためには、アルカリ金属イオンと炭酸イオンおよび/または重炭酸イオンとを含有する溶液を軟水化すれば、著しい洗浄力が発揮されることが知見できた。
(1)すなわち、本発明の洗浄方法は、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄することを特徴とする。
洗浄効果に悪影響を与えるのは、主としてカルシウムイオンCa2+やマグネシウムイオンMg2+である。本発明では、洗浄液中に炭酸イオンCO32-および重炭酸イオンHCO3-の少なくとも一方を含むので、カルシウムイオンCa2+やマグネシウムイオンMg2+がこれらと結合し、洗浄液中のCa2+やMg2+の存在比が少なくなり、これにより洗浄性能の低下が防止される。
これに加えて、カルシウムイオンCa2+やマグネシウムイオンMg2+と、炭酸イオンCO32-とが結合して析出された炭酸カルシウムCaCO3または炭酸マグネシウムMgCO3は、それ自体が有するクレンザー効果や吸着効果によって物理的に汚れ成分を落とすので、洗浄力の向上に寄与することになる。
すなわち、本発明は、単に軟水化された液体を用いて洗浄する方法ではなく、また単に洗浄液を軟水化するものでもなく、軟水化すると同時に汚れを物理的に除去できる組成物をも生成させるものである。
したがって、被洗浄物とともに炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する洗浄液を洗濯槽に入れると、洗浄液に含まれたカルシウムイオンやマグネシウムイオンは、炭酸イオンや重炭酸イオンと結合し、炭酸カルシウムや重炭酸カルシウムとなって析出する。これにより、洗濯槽内の洗浄液が軟水化されると同時に、クレンザー効果及び吸着効果を発揮する炭酸カルシウム等が生成される。
(2)本発明に係るアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を水溶液とすることで得られるが、このアルカリ金属塩としては、洗浄力の向上という観点から、カリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩などが例示される。特に、安価かつ入手容易で、しかも安全性および廃水処理性に優れたカリウム塩やナトリウム塩が好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
本発明に係る炭酸イオンは、アルカリ金属炭酸塩を水溶液とすることで、また重炭酸イオンは、アルカリ重炭酸塩を水溶液とすることでそれぞれ得られるが、アルカリ金属炭酸塩としては、たとえば、炭酸ナトリウム(Na2CO2)、炭酸カリウム(K2CO3)、炭酸リチウム(Li2CO3)などが例示され、アルカリ金属重炭酸塩としては、たとえば、炭酸水素カリウム(KHCO3)、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)などが例示される。
上記炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを溶解する溶媒は特に限定されず、各種の水、たとえば、水道水、井戸水、軟水、精製水、純水またはこれらの混合水などを用いることができる。
(3)本発明において、軟水化前の洗浄液は、pHが8.5〜12.0、好ましくは9.5〜11.0、さらに好ましくは10.0〜11.0である。pHを8.5以上(好ましくは9.5以上、より好ましくは10.0以上)とすることで、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと、炭酸イオンや重炭酸イオンとの結合が促進される点で好ましく、pHを12.0以下(好ましくは11.0以下)とすることで、手荒れなどの安全性や廃水処理性に対して好ましいものとなる。
さらに、本発明において、軟水化前の洗浄液のアルカリ金属イオン濃度と炭酸イオン濃度および/または重炭酸イオン濃度は所定範囲にあることが望ましく、こうしたイオン濃度は、間接的に電気伝導度(EC)によって特定することができる。すなわち、軟水化前の洗浄液の電気伝導度ECは、好ましくは50mS/m以上、より好ましくは100mS/m以上、最も好ましくは150mS/m以上である。電気伝導度をこのような高い範囲にすることで、水溶液中のCa2+やMg2+を、CO32-やHCO3-と結合させて無効化するのに十分なイオン濃度が確保できる。
こうした軟水化前の洗浄液は、たとえば炭酸水素ナトリウム溶液を電気分解することにより得られる。このとき、生成能力の高い通水式電解装置を用いる場合には、陰極室で生成される陰極電解液は、そのまま洗浄液として使用することができる濃度に設定する方が、取扱性などの点で好ましい。これに対して、生成能力の低いバッチ式電解装置を用いる場合には、高濃度の電解液を生成し、これを適宜希釈して使用する方が生成コストを低減できるといった点で望ましい。この場合の希釈液としては特に限定されず、入手容易なものとして水道水などを使用することができる。
(4)本発明の洗浄方法において、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する洗浄液を軟水化する工程は、洗浄液の軟水化を促進する工程を含むことがより好ましい。
このような軟水化促進工程として、軟水化すべき洗浄液に熱エネルギーを付加する工程、軟水化すべき洗浄液を物理的に攪拌または曝気する工程などを例示することができる。
洗浄液に熱エネルギーを付加、たとえば洗浄液を加熱したり或いは高温の状態で洗浄液を生成することで、イオンの活性度が高まり、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと炭酸イオンや重炭酸イオンとの反応が促進され、短時間で軟水化される。
また、攪拌や曝気を行うと、機械的にイオン同士の接触機会が増加するのでカルシウムイオンやマグネシウムイオンと炭酸イオンや重炭酸イオンとの反応が促進され、これによっても短時間で軟水化することができる。
(5)この軟水化された洗浄液の全硬度は、35ppm以下、好ましくは15ppm以下、より好ましくは10ppm以下とする。全硬度をこの範囲にすることで洗浄力の一層の向上が期待できる。
(6)本発明において、全硬度を短時間で低下させて洗浄力をさらに向上させるために、上記軟水化されて全硬度が低下した洗浄液に、凝集剤またはキレート剤を添加することがより好ましい。
凝集剤またはキレート剤をこのタイミングで添加することで、全硬度の低下を短時間で達成できるからである。凝集剤としては、たとえば硫酸ナトリウムアルミニウム(ナトリウムミョウバン)などが例示され、キレート剤としてはEDTA、ゼオライトなどが例示される。
また、全硬度を短時間で低下させて洗浄力をさらに向上させるために、上記軟水化されて全硬度が低下した洗浄液に、脂肪酸を添加することが好ましい。脂肪酸をこのタイミングで添加することで、カルシウムイオンやマグネシウムイオンが脂肪酸と結合し、全硬度の低下を短時間で達成できるからである。脂肪酸としてはオレイン酸などが例示される。また石鹸を加えても同様の効果を奏する。
これら凝集剤、キレート剤または脂肪酸を添加するタイミングとしては、特に限定されないが、洗浄液の全硬度が35ppm以下(好ましくは15ppm以下、より好ましくは10ppm以下)となったときがより好ましい。
(7)本発明の別の観点によれば、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄する手段を有することを特徴とする洗浄装置が提供される。
また、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する洗浄液を軟水化したのち、この軟水化された洗浄液で被洗浄物を洗浄する手段を有することを特徴とする洗浄装置が提供される。
この場合、前記洗浄液の軟水化を促進する手段をさらに有することがより好ましい。
また、炭酸水素ナトリウム水溶液を電気分解して前記軟水化前の洗浄液とする手段を含むことがより好ましい。
また、前記軟水化される洗浄液の全硬度が35ppm以下になったのち、凝集剤またはキレート剤を添加する手段を含むことがより好ましい。
前記軟水化される洗浄液の全硬度が35ppm以下になったのち、脂肪酸を添加する手段を含むことがより好ましい。
以上の洗浄装置は、家庭用または業務用洗濯機、食器洗浄機、医療用具洗浄機、加工機械の脱脂洗浄機などに適用することができる。
図面の簡単な説明
図1は本発明の洗浄装置の一実施形態を示す概略構成図である。
発明を実施するための最良の形態
図1の「4」は洗濯槽、「5」は水道蛇口をそれぞれ示し、水道蛇口5から洗濯槽4には、配管41を介して水道水が供給されるが、水道水の供給および停止は、配管41に設けられた電磁弁42を作動させることにより行われる。この電磁弁42の動作は図外の主制御系(メインマイクロコンピュータ)からの指令信号によって実行される。
この洗濯機には、バッチ式電解槽1が内蔵されており、隔膜(たとえば陽イオン交換膜)を挟んで一対の電極板31,32が設けられている。そして、マイクロコンピュータ(副制御系、以下、マイコンと略する。)6から図外のスイッチを介して、電極板31には陽極、電極板32には陰極がそれぞれ印加される。
陰極板32が設けられた陰極室13aで生成された電解液は、電磁弁8aが設けられた配管7aを介して洗濯槽4に供給される。同様に、陽極板31が設けられた陽極室13bで生成された電解液は、電磁弁8bが設けられた配管7bを介して洗濯槽4に供給される。これらの電磁弁8a,8bの開閉制御は、マイコン6からの指令信号により実行される。
上述した水道蛇口7の配管41から分岐された配管43には、電磁弁44が設けられ、この下流側でさらに分岐されて、電解槽1の陰極室13aと陽極室13bとのそれぞれに水道水を供給する。また、陰極室13aおよび陽極室13bへのそれぞれの配管に電解質を添加するための電解質添加装置9が設けられており、ポンプ91を駆動することにより陰極室13aおよび陽極室13bにそれぞれ導入される水道水に炭酸水素ナトリウムなどの電解質が定量供給される。
なお、配管43に設けられた電磁弁44の開閉制御および電解質添加装置9のポンプ91の駆動/停止は、マイコン6からの指令信号により実行される。
さらに、陰極室13aにはpHおよびECを測定するためのセンサ10が設けられており、このセンサ10からの出力信号(pH値およびEC値)はマイコン6に送出される。
こうした洗濯機においては、まず電磁弁44を開いて水道水を陰極室13aおよび陽極室13bに供給し、同時にポンプ91を駆動して陰極室及び陽極室への水道水に電解質を添加する。そして、両電極板31,32に電圧を印加し、センサ10で測定される陰極室13aの電解液のpH値およびEC値のそれぞれが所定値以上になるまで電解を継続する。
上述したセンサ10によるpH値およびEC値が所定値以上となったら電圧の印加を停止し、洗濯機のメインマイコンからの指令を待ったうえで、電磁弁8a,8bを開き、陰極室13aで生成された陰極側電解液を洗濯槽4に供給する。
こうして洗濯槽4に洗浄液が自動添加されるので、洗濯物を入れて通常の洗濯を行う。選択後の廃液を捨てる際には、洗濯槽4の排水バルブ45を開くが、その前に電磁弁8bを開いて陽極側電解液を洗濯槽4内に供給し、洗濯物の殺菌を行うと同時に廃液を中性化するようにしても良い。なお、陽極室13bで生成された陽極側電解液は、洗濯槽4へ供給せずにそのまま貯留しておいても良いし、或いはそのまま廃棄しても良い。
また、これに加えて、洗濯槽4内の全硬度を測定する手段を設け(あるいはこれに代えて一定時間の経過を測定するタイマーを設け)、全硬度が所定値に達したら、添加装置20から凝集剤、キレート剤または脂肪酸を添加しても良い。
次に、本発明の洗浄方法を具体化した実施例に基づいて説明する。
実施例1
図1に示すバッチ式電解装置1を用い、水道水(藤沢市市水道、pH7.6、EC17.5mS/m、カルシウム硬度55ppm、全硬度75ppm、水温23.4°C)を両電解室13a、13bにそれぞれ1リットル給水後、陰極室13aおよび陽極室側13bのそれぞれに炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)を36g添加し、両電極板に15Aの一定電流が流れるように電圧を印加して、30分間電気分解を行った。なお、隔膜として陽イオン交換膜を用い、電極板31,32の距離は、5mmとした。なお、pHはpH計(堀場製作所、D-13)、ECはEC計(TOA、CM-14P)、硬度は、硬度計(共立理化学研究所、WAD-Ca、比色式測定精度は5ppm)をそれぞれ用いて測定した。
この結果、pH=10.55、EC=6000mS/m以上の陰極側電解液が得られた。これを上記水道水により30倍に希釈して、pH=10.7、EC=196.1mS/m、カルシウム硬度40ppm、全硬度60ppm、水温20°Cの軟水化前洗浄液を得た。
この洗浄液を用いて、「墨汁とオリーブオイルとの混合汚れ」、「血液」、「カカオ(動植物性油)」、「赤ワイン」、および「血液とミルクと墨汁との混合汚れ」のそれぞれを付着させた汚染布(EMPA101,111,112,114,115,116)を、家庭用二槽式洗濯機(ES-25E、2.5kgタイプ、シャープ社製)の洗濯槽に入れ、20分間洗濯後、脱水してドライヤーで乾燥した。
洗濯前後の生地の白度および洗浄率それぞれの結果を表1に示す。なお、「白度」は白度計(ミノルタ、CR-14、Whiteness Index Color Reader)により、人工汚染布の表裏10点の測定値を平均した。また「洗浄率」は下記の式により算出した。
洗浄率%=(洗濯後汚染布の白度-洗濯前汚染布の白度)÷(未汚染生地の白度-洗濯前汚染布の白度)×100
また、本実施例の洗浄液を用いて、湿式人工汚染布((財)洗濯科学協会製)を上記同様の洗濯機を用いて20分間洗濯した。洗濯後の生地の洗浄率の結果を表2に示す。なお、「洗浄率」は上記と同様にして算出した。
実施例2
実施例1において、電解により生成された陰極側電解液を30倍に希釈する水道水の温度40°Cとした以外は、実施例1と同様の条件とした。得られた軟水化前洗浄液は、pH=10.5、EC=207.7mS/m、カルシウム硬度40ppm、全硬度60ppm、水温40°Cであった。この結果を表2に示す。
実施例3
(削除)
実施例4
実施例1において、洗濯を開始してから15分後にEDTAを12g添加した以外は、実施例1と同様の条件とした。なお、洗濯を開始してから15分後の槽内液の全硬度は30ppmであった。この結果を表2に示す。
実施例5
実施例1において、洗濯を開始してから15分後にオレイン酸を15cc添加した以外は、実施例1と同様の条件とした。なお、洗濯を開始してから15分後の槽内液の全硬度は30ppmであった。この結果を表2に示す。
比較例1
市販の洗濯用合成洗剤(アタック、花王社製)を用いて、実施例1と同じ汚染布を洗濯し、白度および洗浄率を算出した。この結果を表1に示す。
また、比較例1の合成洗剤を用いて、湿式人工汚染布((財)洗濯科学協会製)を実施例1と同様に洗濯し、洗浄率を算出した。この結果を表2に示す。
比較例2〜3
実施例1において、電解条件を調節して軟水化前洗浄液のpHとECとを代えた以外は、実施例1と同様の条件とした。この結果を表2に示す。


この結果から、本発明の洗浄方法は、市販の合成洗剤と同等もしくはそれ以上の洗浄効果を発揮することが確認された。なお、実施例1乃至5の洗浄液は、安全性および洗浄後の廃水処理性についても全く問題はなかった。
 
訂正の要旨 本件訂正請求は、以下の事項について訂正するものである。
a.特許請求の範囲の請求項1を、
「炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルカリ金属イオンとを含有する、pHが8.5〜12.0、電気伝導度が100mS/m以上である、炭酸水素ナトリウム水溶液の電解水を含む洗浄液を軟水化しながら、被洗浄物を洗浄する洗浄方法であって、
前記洗浄液の軟水化を促進する工程を含むことを特徴とする洗浄方法。」
と訂正する。
b.特許請求の範囲の請求項2〜17を削除する。
c.明細書第2頁第10〜15行(特許掲載公報第2頁右欄第26〜32行)の、
「また、本発明の洗浄方法は、炭酸イオンおよび重炭酸イオンの少なくとも一方とアルリ金属イオンとを含有する洗浄液を軟水化したのち、この軟水化された洗浄液で被洗浄物を洗浄することを特徴とする。
つまり、上記特定のイオンを含有する洗浄液を軟水化するタイミングは、洗浄前であっても洗浄中であっても良く、軟水化しながら洗浄することがより好ましい。」
を削除する。
d.明細書第4頁第16〜18行(特許掲載公報第3頁右欄第13〜15行)の
「〜物理的に撹拌または曝気する工程、軟水化すべき洗浄液を静置(放置)して時間的に水化反応を確保する工程などを例示することができる。」を、「〜物理的に撹拌または曝気する工程などを例示することができる。」と訂正する。
e.明細書第4頁第26〜27行(特許掲載公報第3頁右欄第25〜27行)の
「また、こうした強制的な工程以外にも、〜軟水化を促進することができる。」を削除する。
f.明細書第8頁末行〜第9頁第4行(特許掲載公報第5頁左欄第23〜28行)の
「実施例3
実施例1において、〜この結果を表2に示す。」とあるのを、明りょうでない記載の釈を目的として、「実施例3(削除)」と訂正する。
g.明細書第11頁(特許掲載公報第7頁)の表2中の実施例3の行を「実施例3(削除)」と訂正する。
h.明細書第1頁第5行(特許掲載公報第2頁左欄第32行)、および第4頁第25行(特許掲載公報第2頁右欄第12行)の「洗浄方法および洗浄装置」を「洗浄方法」と訂正する。
i.明細書の発明の名称「洗浄方法および洗浄装置」を、「洗浄方法」と訂正する。
異議決定日 2002-09-19 
出願番号 特願平11-521534
審決分類 P 1 651・ 121- YA (B08B)
P 1 651・ 113- YA (B08B)
P 1 651・ 537- YA (B08B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鏡 宣宏  
特許庁審判長 青山 紘一
特許庁審判官 門前 浩一
千壽 哲郎
登録日 2001-04-20 
登録番号 特許第3181927号(P3181927)
権利者 ミズ株式会社
発明の名称 洗浄方法  
代理人 前田 均  
代理人 加藤 公清  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 前田 均  
代理人 西出 眞吾  
代理人 大倉 宏一郎  
代理人 西出 眞吾  
代理人 萩原 亮一  

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