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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F25D
管理番号 1068882
異議申立番号 異議2002-70159  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-11-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-21 
確定日 2002-09-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3190638号「冷蔵庫」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3190638号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許3190638号の請求項1〜3に係る発明についての出願は、平成11年4月16日になされたものであって、平成13年4月10日に、特許の設定登録がなされ、その後、株式会社東芝より全請求項に係る発明の特許について特許異議の申立がなされ、そして、取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年6月24日に訂正請求がなされ、同訂正請求に対して、手続補正指令がなされ、平成14年8月8日付けで平成14年6月24日付け訂正請求書の補正がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1 特許権者の求めている訂正
特許権者が求めている訂正は、平成14年8月8日付手続補正書(方式)により補正された平成14年6月24日付け訂正請求書に記載された、以下のとおりのものである。

2-1-1 特許請求の範囲の記載に関して
訂正事項1
特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】 外箱と、内箱と、前記外箱と内箱の間に断熱材を封入して構成した断熱箱体と、扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した引き出し式の断熱扉と、前記断熱箱体の開口部に前記断熱扉を取り付けて内部に構成した貯蔵室とからなり、前記断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、前記平面部に連続して前記内箱に形成した凹部と、前記凹部の奥端に設けた段差部と、前記断熱扉の前記貯蔵室側周縁に設けた平面部と、前記平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて前記内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、前記断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び前記内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートと、前記断熱扉の閉扉時に前記断熱扉周縁の平面部に前記断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに前記扉内板の凸部の折返部に固定される基部と前記基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を前記断熱扉側に設けて、前記ヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を前記内箱凹部の段差部に当接して前記スロートと前記貯蔵室内の間をシールし、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたことを特徴とする冷蔵庫。」
と訂正する。
2-1-2 発明の詳細な説明の記載に関して、
訂正事項2
段落番号【0016】、【0020】及び【0055】に記載の「凸部」を「断熱材が封入された凸部」と訂正する。
訂正事項3
段落番号【0016】、【0020】及び【0055】に記載の「スロート」を「クランク形状のスロート」と訂正する。
訂正事項4
段落番号【0018】、【0021】及び【0056】に記載の「室内側壁面」を「室内側断熱壁面」と訂正する。
訂正事項5
段落番号【0021】及び【0056】に記載の「請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において」を「また」と訂正する。
訂正事項6
段落番号【0022】及び【0057】に記載の「請求項3に記載の発明は」を「また」と訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項1に関連して、特許明細書の段落番号【0020】に、「【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の発明は、・・扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した引き出し式の断熱扉と、・・前記断熱扉の前記貯蔵室側周縁に設けた平面部と、前記平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて前記内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた凸部と、・・」と凸部を記載し、さらに、断熱扉への断熱材を封入は、凸部を含めて封入するもののみが図面に記載されていることから、「断熱材が封入された凸部」は、特許明細書に記載される事項であり、次いで、特許明細書の段落番号【0034】に、「また、シール部材33は引き出し式の断熱扉22の前後方向の移動動作に合わせて、段差部31に対して前後方向にシールする構成となり、閉扉動作時に自然な形でスムーズにシールが行われる。また、シール部材33が前後方向のシール構成となるため、スロート32を通じて貯蔵室34内に貫流しようとする熱流はスロート32を含めてクランク形状の通路を通過する必要があり、形状的な通路抵抗も相俟って熱貫流量がさらに低減する。」とスローとの形状としてクランクである旨の記載がなされていると共に、特許明細書の請求項2には、「【請求項2】 断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたことを特徴とする・・」と記載されている。
したがって、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「凸部」、「スロート」、「断熱扉」との構成に、これらの特許明細書に記載された技術的事項で限定を加えることは、特許明細書の請求項1に記載された事項をその目的の範囲で、特許明細書に記載された技術的事項により限定するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、特許請求の範囲を何等変更又は拡張するものではなく、しかも、新規事項を追加するものではない。
また、請求項2,3を削除することは、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、特許請求の範囲を何等変更又は拡張するものではなく、しかも、新規事項を追加するものではない。
訂正事項2、3、5、6は、上記の訂正事項1に合わせ、不明瞭となる記載を釈明するものであり、訂正事項4も、明細書の前記差異及び図面の記載からは、「室内側壁面」が「室内側断熱壁面」であることが明らかではあるものの、同記載のみからは不明瞭であるところ、それを明瞭にするものであって、何れも新規事項を追加せず、しかも、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2-3 むすび
上記訂正は、特許異議の申立がなされていない請求項に係るものではなく、以上のとおり、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


3 特許異議申立に対する判断
3-1 申立て理由の概要
特許異議申立人株式会社東芝は、
甲第1号証として、刊行物「実願昭56-146825号(実開昭58-51178号)のマイクロフィルム」
甲第2号証として、刊行物「実願昭56-46714号(実開昭57-160086号)のマイクロフィルム」
甲第3号証として、刊行物「特開平10-122730号公報」
提出して、本件請求項1に係る発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとし、さらに、請求項2,3に記載される構成は、甲第2,3号証にそれぞれ記載されており、本件請求項2,3に係る発明は、甲各号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それら発明に対する特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件請求項1〜3に係る発明に係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである旨主張している。

3-2 本件の発明
上述のとおり、特許権者の請求した訂正は認められるので、本件の請求項1、2に係る発明は、訂正された特許請求の範囲に記載された以下の事項により特定されるものである。
【請求項1】 外箱と、内箱と、前記外箱と内箱の間に断熱材を封入して構成した断熱箱体と、扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した引き出し式の断熱扉と、前記断熱箱体の開口部に前記断熱扉を取り付けて内部に構成した貯蔵室とからなり、前記断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、前記平面部に連続して前記内箱に形成した凹部と、前記凹部の奥端に設けた段差部と、前記断熱扉の前記貯蔵室側周縁に設けた平面部と、前記平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて前記内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、前記断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び前記内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートと、前記断熱扉の閉扉時に前記断熱扉周縁の平面部に前記断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに前記扉内板の凸部の折返部に固定される基部と前記基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を前記断熱扉側に設けて、前記ヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を前記内箱凹部の段差部に当接して前記スロートと前記貯蔵室内の間をシールし、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたことを特徴とする冷蔵庫。
したがって、本件請求項1に係る発明は、
扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートと、
を構成の一部として有するものである。

3-3 甲各号証の刊行物に記載された発明
3-1 甲第1号証について、
甲第1号証には、明細書第2頁第15行〜第4頁第4行に、「本考案の冷蔵庫は外箱1の溝2に段部3を有する内箱4の突部5をはめ込み該外箱1と内箱4にて形成される空間6にウレタンフォーム7等を充填発泡して冷蔵庫本体8を形成し、該冷蔵庫本体8の前面開口部9を開閉成する扉11を取着溝12を有する扉枠13に扉板14をはめ込み該扉枠13と扉板14にて形成される空間部15にウレタンフォーム16等を充填発泡して形成し、該扉11に取着溝23を有する扉内板17をビス18により取着し、該扉11を上記冷蔵庫本体8に閉成した際に該扉11と上記冷蔵庫本体8との間に生じる隙間aを密閉する弾力性を有する主パッキング19を該主パッキング19の取付脚20を該扉11の取着溝12に圧入して該扉11に取着するとともに上記扉内板17と上記冷蔵庫本体8との間に生じる隙間bを密閉する弾力性を有する補助パッキング21を該補助パッキング21の取付脚22を上記扉内板17の取着孔23に圧入して該扉内板17に取着し、・・補助パッキング21は扉11の回転に対して冷蔵庫本体8の内箱4の段部3に垂直に密接する・・」
と記載されており、同記載及び図面の記載を総合すると、甲第1号証には、
外箱1と、内箱4と、前記外箱と内箱の間に断熱材であるウレタンフォーム7等を封入して構成した冷蔵庫本体8と、扉板14と、扉内板17と、前記扉板と扉内板の間に断熱材であるウレタンフォーム16等を封入して構成した断熱された扉11と、前記冷蔵庫本体の開口部9に前記扉を取り付けて内部に構成した庫内の空間とからなり、前記冷蔵庫本体の開口周縁に設けた平面部を形成する突部5と、前記突部に連続して前記内箱に形成した凹状の部分と、前記凹状の部分の奥端に設けた段部3と、前記扉の前記庫内周縁に設けた取付溝12を有する扉枠13と、前記扉枠より立ち上げられた先端に折返す部分を設けて前記内箱の凹状の部分の段部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた凸状の部分と、前記冷蔵庫本体の突部5と扉の扉枠及び前記内箱の凹状の部分と扉内板の凸状の部分をそれぞれ対向させて形成したクランク状の隙間と、前記扉の閉扉時に前記冷蔵庫本体の周縁の突部と密着するように前記扉の扉枠に主パッキング19を設け、さらに前記扉内板の凸状の部分の折返される部の取着孔23に固定される取付脚22と前記取付脚に連続して形成された平面上の部分からさらに連続したヒレ状の補助パッキング19を前記扉に設けて、前記ヒレ状の補助パッキングは、閉扉時にヒレ状の部分を前記内箱の凹部の段部に当接して前記隙間と前記庫内の間をシールし、冷蔵庫本体の周縁の突部の壁厚を、他の部分の壁厚より薄くした冷蔵庫
の発明が記載されるものと認めるものの、凸状の部分の内部には、断熱材を封入するものではない。

3-2 甲第2号証について、
甲第2号証には、明細書第1頁末行〜第2頁14行に、
「・・(1)は冷蔵庫本体で、・・冷凍室(3)と冷蔵室(4)に区画されている。(5)は外箱で内箱(6)とは・・接続され内部に断熱材(7)が充填されている。(8)は内箱に設けられた段部で該段部(8)の手前には補助パッキン(9)がネジ(15)等で固定されている。そしてこの補助パッキン(9)は軟質部(9a)と硬質部(9b)とから構成され左右方向にクッション性を有している。・・(10)は扉本体で、扉外板(11)、扉棚(12)、断熱材(7)等から構成されている。(13)は扉棚土手部でその先端部(13a)は補助パッキン(9)の軟質部(9a)に接触している。(14)はドアパッキンである。」
と記載されており、同記載及び図面の記載を総合すれば、甲第2号証には、
外箱(5)と、内箱(6)と、前記外箱と内箱の間に断熱材(7)を封入して構成した断熱された箱状の本体と、扉外板(11)と、扉の内側の板である扉棚(12)と、前記扉外板と扉棚の間に断熱材(7)を封入して構成した扉本体(10)と、前記本体の開口する部分に前記扉本体(10)を取り付けて内部に構成した冷凍室(3)、冷蔵室(4)とからなり、前記本体の開口する部分の周縁に設けた平面状の部分と、前記平面状の部分に連続して前記内箱に形成した凹状の部分と、前記凹状の部分の奥端に設けた段部(8)と、前記扉本体(10)の前記冷凍室(3)、冷蔵室(4)側周縁に設けた平面状の部分と、前記平面状の部分より立ち上げられた先端に折返す先端部(13a)を設けて前記内箱の凹状の部分の段部より手前側に配置されるよう前記扉棚に設けた扉棚土手部(13)と、前記本体の平面状の部分と扉本体(10)の平面状の部分及び前記内箱の凹状の部分と扉棚の扉棚土手部をそれぞれ対向させて形成した空間と、前記扉本体(10)の閉扉時に前記扉本体(10)周縁の平面状の部分に前記本体の平面状の部分と密着するドアパッキン(14)を設け、さらに前記扉棚の凸部の扉棚土手部の先端部附近に対向する内箱の段部の手前に固定される硬質部(9b)と前記硬質部(9b)に連続して形成された軟質部(9a)とよりなるヒレ状の補助パッキン(9)を前記内箱側に設けて、前記ヒレ状の補助パッキン(9)は、閉扉時に軟質部を前記扉棚の凸部の扉棚土手部の先端部附近に当接して前記空間と前記冷凍室(3)、冷蔵室(4)内の間をシールし、扉本体の冷凍室、冷蔵室に臨む部分の内側壁面を本体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、扉本体周縁の平面状の部分の壁厚を、前記扉本体の冷凍室、冷蔵室に臨む部分の壁厚より薄くした冷蔵庫
の発明が記載されるものと認められるのの、凸部である扉棚土手部をの内部には、断熱材を封入するものではない。

3-3 甲第3号証(特開平10-122730号公報)
甲第3号証には、段落番号【0013】に「【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を図1および図2を参照して説明する。
〔実施の形態 1〕図1は、本発明の第一の実施形態を示す冷蔵庫の扉および仕切板周辺部の拡大断面図である。図1に示す冷蔵庫において、扉1は、前面を鋼板の化粧板1aとし、庫内7側に上部壁面3a、下部壁面3bを有する樹脂製の内壁3を形成し、扉1の庫内側四周を区画する周囲先端にはマグネットパッキン4が扉1先端の溝に嵌め合わされ圧着されている。扉1内部には断熱材5が充填されていて、扉1は食品収納容器11とともに前後に移動する引出式構造になつている。」と、
段落番号【0015】に、「図1において、9は、硬質プラスチックと軟質プラスチックで一体成形された遮蔽板であり、この遮蔽板9は、その硬質部を支持板10とし、先端9aを軟質プラスチックで形成されている。扉1の庫内7側内壁3の上部壁面3aおよび下部壁面3bの段差部に、遮蔽板9の支持板10をブッシュ13で圧着固定している。そして、軟質プラスチックの先端9aは仕切板2の内表面である下面2a,上面2bと接触している。その接触位置は、仕切板2に埋設されているホットガスパイプ8の埋設位置を避けた先(奥側)の位置となっている。したがって、扉1の庫内7側上下部では、内壁3、遮蔽板9、仕切板2、およびマグネットパッキン4の各々の一部が互いに接触して封止された空間領域(以下単に空間という)14を形成している。」と、
段落番号【0016】に、「このように構成されている扉1および仕切板2の庫内7側周辺部では、庫内7奥から吐出される冷気は仕切板2の下面2aに沿って扉1側に流れてくるが、ホツトガスパイプ8の奥側の位置に仕切板2の内表面と接触して設けられた遮蔽板9で封止される。その冷気は、扉1およびマグネツトパッキン4側への冷気の侵入が防止され、パッキン9表面に添って冷気は流下し、食品収納容器11手前側上部のスリツト15から下方に流入する。下方にも扉1の下部壁面3bに固定され垂下して設けた遮蔽板9が仕切板2の上面2bのホットガスパイプ8の埋設位置を避けた先(奥側)と接触して設けてあり、マグネツトパッキン4側への冷気の侵入を防止している。」と、
段落番号【0021】に、「遮蔽板9Aのヒレ状先端9aの下端は、扉1を閉じたときには、食品収納容器11上端部のスリット状開口部15前方に形成されている前記遮蔽用突起部17と接触している。このようにすることで、庫内7の奥から扉1内壁3側へ仕切板2の下面2aに沿って吐出されてくる冷気をホツトガスパイプ8の埋設位置の奥側で封止すると共に、冷気を箱体16に通過させることができ、箱体16と扉1の内壁3との間の冷気が滞留して、断熱層19となり、先の第一の実施形態の効果に加えて、扉1からの熱漏洩も低減される。」と
記載されているから、同記載及び図面の記載を総合すると、甲第3号証には、
化粧板1aと内壁3の間に断熱材5を封入して構成した引き出し式の扉1と、庫内側四周を区画する開口する部分に前記扉を取り付けて内部に構成した食品収納容器11を有する貯蔵室とからなり、前記扉の閉扉時に扉の内壁の平面状の部分に前記庫内側四周の平面状の部分と密着するマグネットパッキン4を設け、扉の内壁3の段差部に軟質の先端9aを有する遮蔽板9の硬質の支持部10を設け、又は、遮蔽板9Aを仕切板2の下面2aに設け、仕切板又は食品収納容器11の突起17と接触させてシールし、扉と一体に前記庫内より引き出される食品収納容器とからなる冷蔵庫
の発明が記載されるものと認める。

3-4 対比判断
訂正された本件請求項1に記載された発明と甲第1号証に記載された発明とを比較すると、本件請求項1に係る発明が
扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートとを有するものであるのに対して、甲第1号証のものでは、冷蔵庫本体の突部5と扉の扉枠及び前記内箱の凹状の部分と扉内板の凸状の部分をそれぞれ対向させて形成したクランク状の隙間を有するものの、凸部に断熱材を封入するものではない点
で少なくとも相違している。そして本件請求項1に係る発明は、この構成を有することにより、外部からの空気がスロート内に侵入してもスロートが両面から断熱されることにより、スロートの断熱性が強化されるという、本件請求項1に係る発明特有の効果を奏するものであって、この構成を設計上の事項とすることはできない。
また、甲第2号証の記載は上記のとおりであり、扉棚土手部の内部には、断熱材を封入するものではないので、上記相違点の構成を開示又は示唆するものではない。
さらに、甲第3号証の記載は、上記のとおりであり、上記相違点の構成を何等開示又は示唆するものではない。

よって、上記相違点の構成をその構成の一部とする本件請求項1に係る発明を、上記相違点の構成を開示するものではなく、それを示唆するものでもない甲各号証の刊行物に記載された発明とすることはできないばかりではなく、甲各号証の刊行物に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができた発明とすることはできないので、特許異議申立人の主張は採用しない。

3-5 取消理由通知について
当審において通知した取消理由は、前記甲第1〜3号証の刊行物を引用するものであり、3-4に述べた理由により、当審において通知した取消の理由によっては、本件請求項1に係る発明ついての特許を取り消すことはできない。

3-6 むすび
以上説示の通り、各特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、上記相違点の構成を慣用される技術であるとする客観的証拠は何等なく、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
冷蔵庫
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 外箱と、内箱と、前記外箱と内箱の間に断熱材を封入して構成した断熱箱体と、扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した引き出し式の断熱扉と、前記断熱箱体の開口部に前記断熱扉を取り付けて内部に構成した貯蔵室とからなり、前記断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、前記平面部に連続して前記内箱に形成した凹部と、前記凹部の奥端に設けた段差部と、前記断熱扉の前記貯蔵室側周縁に設けた平面部と、前記平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて前記内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、前記断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び前記内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートと、前記断熱扉の閉扉時に前記断熱扉周縁の平面部に前記断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに前記扉内板の凸部の折返部に固定される基部と前記基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を前記断熱扉側に設けて、前記ヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を前記内箱凹部の段差部に当接して前記スロートと前記貯蔵室内の間をシールし、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側断熱壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたことを特徴とする冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷蔵庫断熱箱体および断熱扉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、地球環境保護の観点から、発電に伴う二酸化炭素の発生を抑えて地球温暖化に歯止めをかけようとする動きが活発である。一般消費者が日常的に直接使用する家電機器についても消費電力の低減による省エネルギー化が急務であり、家電機器の中でも特に電力消費比率の高い冷蔵庫は、省エネルギー技術の開発が最も需要な課題の一つとなっている。
【0003】
冷蔵庫の省エネルギー化の主要テーマは冷凍サイクルの高効率化と冷蔵庫本体の断熱性の強化であり、このうち冷凍サイクルについては近年、インバーター圧縮機の採用や高効率熱交換器の開発などにより、飛躍的に成果が上げられつつある。
【0004】
一方、断熱性の強化については、主として断熱材の高性能化を中心に進められ、近年においては一部真空断熱材との併用によるものも商品化されるなど、断熱壁を通じての外部熱の侵入に対しては大きな効果が上げられている。しかしながら、冷蔵庫本体内への外部熱の侵入は、断熱構造のとぎれる本体開口部周縁において最も顕著であり、この部分の侵入熱の低減が今後の省エネルギー化において一つの焦点になる。
【0005】
本体開口部周縁の構造について、以下、図面を参照しながら上記従来の冷蔵庫を説明する。
【0006】
図4は従来の冷蔵庫の断面図である。図5は図4のA-A線における要部断面図である。
【0007】
図4、図5において、1は冷蔵庫本体の断熱箱体、2は断熱扉、3は前記断熱箱体1と断熱扉2によって形成された貯蔵室である。4は前記断熱箱体1の鋼板製の外箱であり、本体開口部においてその前端部を内側に折り返して、前面にフランジ5を形成している。6は前記フランジ5の裏面で前端面を接合した樹脂製の内箱である。7は前記断熱扉2の開口部周縁に取り付けたシール部材であり、主に塩化ビニル製の異形押し出し成形で内面に柔軟性のあるマグネット8を内蔵している。9は前記断熱扉2の外観表面を構成する鋼板製の扉外板、10は前記扉外板9と接合されて前記貯蔵室3側に臨ませた扉内板である。
【0008】
また、11は前記断熱扉2に固定された枠状のフレームであり、物品を収納する収納容器12を支持している。13は内箱6の両側面に前後に取り付けたレールであり、14は前記フレーム11を受けて回動する固定ローラー、15は前記フレーム11の先端に設けられて前記レール13内を摺動する移動ローラーである。
【0009】
以上のように構成された冷蔵庫について、以下その動作を説明する。
【0010】
断熱扉2を引き出すとフレーム11が固定ローラー14を回転させながら上面を前方に摺動し、移動ローラー15がレール13内を前方に摺動して収納容器12が貯蔵室3外に一体に引き出されて物品の出し入れが行われる。一方、断熱扉2の閉扉時には、シール部材7のマグネット8が外箱4のフランジ5に吸着することによって、断熱箱体1と断熱扉2の間の空間をシールし、庫内への外気の侵入を防止する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、引き出し式の断熱扉2は収納容器13を取り付けるため扉内板10と内箱6の側壁との間隙は貯蔵室3側に開放されており、シール部材7に貯蔵室3側からの冷気対流が作用しやすく、シール部材7に対する熱伝達係数が大きくなって外部からの熱貫流量が増加するという欠点があった。
【0012】
また、外箱4は熱伝導性の高い鋼板製であるため外部の熱がフランジ5を伝導してシール部材7の吸着面を通過して貯蔵室3内に侵入するという欠点もあった。
【0013】
本発明は従来の課題を解決するもので、本体開口部周縁の外部からの侵入熱を低減して、省エネルギー化を図ることを目的とする。
【0014】
また、シール部材9が本体開口部の前面に位置し、断熱扉2の厚みが厚いため、側面からの外観的な見栄えが悪いという欠点があった。
【0015】
本発明の第2の目的は、側面の美観を向上し、外観的に見栄えの良い冷蔵庫を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明の冷蔵庫は、外箱と内箱とよりなる断熱箱体と、扉外板と扉内板とよりなる引き出し式の断熱扉と、断熱箱体と断熱扉で構成される貯蔵室とからなり、断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、平面部に連続して内箱に形成した凹部と、凹部の先端に設けた段差部と、断熱扉の周縁に設けた平面部と、平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び内箱の凹部と扉内板の凸部を対向させて形成したクランク形状のスロートと、断熱扉の閉扉時に断熱扉周縁の平面部に断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに扉内板の折返部に固定される基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を断熱扉側に設けて、このヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を内箱凹部の段差部に当接してスロートと前記貯蔵室内の間をシールするものである。
【0017】
これにより、スロート内への熱貫流が抑制され、開口周縁部からの熱伝導による侵入熱を低減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
また、本発明はさらに、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側断熱壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたものである。
【0019】
これにより、スロート長が長くとれ熱貫流が抑制されて省エネルギー化を図ることができる。また、側面の美観を向上でき、見栄えの良い冷蔵庫を提供することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、外箱と、内箱と、前記外箱と内箱の間に断熱材を封入して構成した断熱箱体と、扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した引き出し式の断熱扉と、前記断熱箱体の開口部に前記断熱扉を取り付けて内部に構成した貯蔵室とからなり、前記断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、前記平面部に連続して前記内箱に形成した凹部と、前記凹部の奥端に設けた段差部と、前記断熱扉の前記貯蔵室側周縁に設けた平面部と、前記平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて前記内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、前記断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び前記内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートと、前記断熱扉の閉扉時に前記断熱扉周縁の平面部に前記断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに前記扉内板の凸部の折返部に固定される基部と前記基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を前記断熱扉側に設けて、前記ヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を前記内箱凹部の段差部に当接して前記スロートと前記貯蔵室内の間をシールするものであり、断熱箱体の開口部がシール部材によって密着シールされるとともに、ヒレ状のシール材の柔軟性によって段差部に圧接シールされて二重シールが施され、狭小空間となるスロートへの外気熱の貫流量も減少する。
【0021】
また、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側断熱壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたものであり、基本壁厚を厚くせずにスロートが長くなり、外気熱の侵入が減少する。また、周縁部の壁厚が薄いため側面からの外観がすっきりする。
【0022】
また、外箱と、内箱と、前記外箱と内箱の間に断熱材を封入して構成した断熱箱体と、扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した断熱扉と、前記断熱箱体の開口部前面に前記断熱扉を開閉自在に取り付けて内部に構成した貯蔵室と、前記断熱扉と一体に前記貯蔵室より引き出される収納容器とからなり、前記内箱には開口部近傍の貯蔵室内側面に凹部を形成し、前記収納容器には両側前面に前記内箱の凹部と対峙する凸部を設けて、前記収納容器の凸部に前記内箱の凹部をシールするシール部材を設けたものであり、扉内板に特別な凸部を構成せず内箱との間にスロートが形成され、収納容器のシール部材でスロートがシールされて外気熱の庫内への貫流が抑止される。
【0023】
また、狭小空間となるスロート部はシール部材前後の空気の対流熱伝達係数が小さく、且つ、シール部材とヒレ部材間ではさらに対流熱伝達が減衰して外気熱の貫流量も一層減少する。
【0024】
【実施例】
以下、本発明による冷蔵庫の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0025】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1による冷蔵庫の要部断面図である。
【0026】
図1において、16は冷蔵庫本体の断熱箱体である。17は鋼板製の外箱であり、前端面を内側に折曲加工することによって、前記断熱箱体16の前面の平面部18にフランジ19を形成している。20は前記フランジ19の裏面に前端面を接合された真空成形などによる樹脂製の内箱である。そして、前記断熱箱体16は前記外箱17と内箱20の間の空間に発泡ウレタンなどの断熱材21を封入して構成されている。
【0027】
22は断熱扉である。23は前記断熱扉22の外表面を形成する鋼板製などの扉外板であり、その端部を略コの字状に内側に折り曲げられている。24は前記断熱扉22の内表面を形成する真空成形などによる樹脂製の扉内板であり、周縁に設けた平面部25で前記扉外板23と接合固定されている。そして、26は前記扉外板23と扉内板24の間の空間に封入された断熱材である。また、27は前記扉内板24にフレーム(図示せず)を介して支持固定され、前記断熱扉22と一体に引き出される収納容器である。
【0028】
28は前記扉内板24の両側部に形成された凸部であり、29は前記凸部28に対向して前記断熱箱体16の前面開口部に形成された凹部である。30は前記凸部28の折返部、31は前記凹部29の奥端の段差部であり、前記折返部30と前記段差部31は間隙をおいて対向するよう配置されている。また、32は前記断熱箱体の平面部18と前記断熱扉の平面部25との間および扉内板の凸部27と断熱箱体の凹部28との間に形成されたスロート(狭小空間)である。
【0029】
そして、33は前記扉内板の凸部の折返部30に取り付けたシール部材であり、その先端が前記断熱箱体の凹部の段差部31に閉扉時において弾性的に圧接されるよう構成されている。また、34は断熱箱体16と断熱扉22とで形成される空間に設けた貯蔵室である。
【0030】
また、断熱扉22の周縁に設けた平面部25の壁厚は断熱扉22の貯蔵室34に臨む基準壁厚よりも薄く構成され、断熱箱体16の開口先端の平面部18が断熱扉22の基準壁厚内に食い込んだ形で平面部25と対峙している。
【0031】
以上のような構成において、断熱扉22の閉扉時、扉内板24の凸部28の折返部30に設けたシール部材33が、断熱箱体16の凹部29の奥端の段差部31に弾性的に当接し、スロート32と貯蔵室34との間をシールする。
【0032】
このとき、スロート32は断熱扉22の平面部25から凸部28に連続する面と、断熱箱体16の平面部18から凹部29に連続する面が対峙する狭小空間であり、断熱箱体16の折返部が断熱扉22の基準壁厚内に食い込んだ形で形成されているため、スロート全長が長く形成できる。このため、外部からの空気がスロート32内に侵入しても通路抵抗が大きく空気対流が減衰し、熱伝達係数が低下して内箱20や扉内板24およびシール部材33に伝達される熱量は小さく抑えられる。
【0033】
そして、これにより内箱20や扉内板24から貯蔵室34内への熱伝導、シール部材33から貯蔵室34内への熱貫流が低減される。
【0034】
また、シール部材33は引き出し式の断熱扉22の前後方向の移動動作に合わせて、段差部31に対して前後方向にシールする構成となり、閉扉動作時に自然な形でスムーズにシールが行われる。また、シール部材33が前後方向のシール構成となるため、スロート32を通じて貯蔵室34内に貫流しようとする熱流はスロート32を含めてクランク形状の通路を通過する必要があり、形状的な通路抵抗も相俟って熱貫流量がさらに低減する。
【0035】
また、シール部材33を圧接するための付勢機構(たとえば、吸引機構、ラッチ機構、弾性機構、自閉機構など)を併用すればさらにシール性が高まりより安定した効果が得られる。
【0036】
また、外箱17のフランジ19に従来のようにシール部材が密着しておらず、フランジ19の一部が貯蔵室34側に露出することもないので、シール面を通じてフランジ19を伝導してくる外部の熱が直接貯蔵室34側に侵入せず侵入熱量を低減できる。
【0037】
これらのことにより、貯蔵室34内への侵入熱量が総合的に減り、冷却負荷が軽減されて圧縮機の運転時間が短縮されたり、小型の圧縮機を適用出来たりして冷蔵庫の消費電力量が低減し、省エネルギー化を図ることが出来る。
【0038】
一方、従来のようにシール部材を開口部周縁に設けず、スロート32の奥端に設けているため、外側面からはシール部材33が見えない。これにより側面からの美観が向上し、見栄えのよい冷蔵庫を提供することが出来る。併せて断熱扉22の周縁部壁厚が薄いため側面からの外観がすっきりし、一層意匠効果が高まる。
【0039】
なお、本実施例1では、断熱扉22の扉外板23と扉内板24を直接接合したが、意匠効果を上げるために、扉外板と扉内板の間を接合する樹脂製のサッシュを介在させてもよい。
【0040】
また、シール部材33は断熱扉22側に取り付けたが、断熱箱体16の段差部31側に取り付けても同様の効果が得られる。引き出し式の貯蔵室であるのでシール部材を断熱箱体側に取り付けても目立ちにくく、外観意匠的な不都合は生じない。
【0041】
(実施例2)
図2は、本発明の実施例2による冷蔵庫の要部断面図である。
【0042】
なお、以後の実施例については、基本構造を実施例1と同じくしており、基本構造部分については実施例1の説明をもってこれを省略し、異なる構成についてのみ新しい符号を付して説明する。
【0043】
図2において、35は断熱扉であり、扉外板36と扉内板37を平面部38で接合して構成されている。39は前記扉内板37の両側部に形成された凸部であり、40は前記凸部39の折返部である。そして前記凸部39は凹部29とスロート41を介して相対し、前記折返部40と段差部31は間隙をおいて対向するよう配置されている。
【0044】
そして、42は断熱扉の平面部38に取り付けたシール部材であり、その先端が断熱箱体の平面部18に閉扉時において弾性的に圧接されるよう構成されている。また、43は扉内板の凸部39の折返部40に取り付けたシール部材であり、基部44とヒレ状の柔軟部45より構成され、塩化ビニル、シリコンその他のエラストマー材料で押し出し成形などで形成されている。そして、前記折返部40に前記基部44がたとえば溶着や圧入などの手段で固定され、柔軟部45が閉扉時に前記段差部31に当接シールするよう構成されている。
【0045】
以上のような構成において、断熱扉35の閉扉時、シール部材42が断熱箱体16の平面部18に圧接され開口部を気密シールする。そして同時にシール部材43のヒレ状の柔軟部45が内箱の段差部31に沿う形で当接シールし、結果的に貯蔵室34に対して二重にシールすることになる。
【0046】
このため、シール部材42とシール部材43との間に形成されたスロート41は空気対流がほとんどない熱伝達係数の微少な空間となり、外部からの熱貫流量が大きく抑えられる。この結果、貯蔵室内への侵入熱量が一層低減でき省エネルギー効果がより高まる。
【0047】
なお、本実施例では、シール部材43はヒレ状の柔軟部45を採用しているため反発力が小さく、開口部のシール部材42の密着作用を阻害することはない。
【0048】
また、開口部のシール部材42のシールをより確実にするためにマグネットなどの吸着手段を設けてフランジ19に吸着させてもよく、この場合フランジ19を介してスロート41内に外部熱が伝導侵入しようとするが、スロート41内の空気熱伝達がほとんど抑えられるため最終的に貯蔵室34内には大きな熱影響を及ぼさない。
【0049】
また、開口部のシール部材42のシールが強化されれば、段差部31のシール部材43を弾性力の高い、よりシール性の高い形状のものを選択することも可能である。
【0050】
(実施例3)
図3は、本発明の実施例3による冷蔵庫の要部断面図である。
【0051】
図3において、46は断熱扉であり、扉外板47と扉内板48を平面部49で接合して形成している。また、50は前記扉内板48にフレーム(図示せず)で支持固定され、前記断熱扉46と一体に引き出される収納容器である。前記収納容器50はその前部両側面に凸部51を形成し、前記凸部51の後端には凹溝52が設けられており、53は前記凹溝52内に圧入固定されたシール部材である。そして、前記凸部51は閉扉時に断熱箱体16の凹部29とスロート54を挟んで相対し、前記シール部材53は内箱の凹部の段差部31に当接シールするよう構成されている。
【0052】
以上のような構成において、断熱扉46の閉扉時、収納容器50の凸部51に設けたシール部材53が、内箱の凹部の段差部31に圧接され、スロート54と貯蔵室34の間をシールする。
【0053】
このため、外部からの空気がスロート54内に侵入しても通路抵抗が大きく空気対流が減衰し、熱伝達係数が低下して内箱20や収納容器50およびシール部材53に伝達される熱量は小さく抑えられ貯蔵室34内への侵入熱量が低減する。このため冷却効率が高まり省エネルギー効果が得られる。
【0054】
そして、内箱の凹部31と相対しスロート54を形成する凸形状を扉内板48で形成せず収納容器50で一体に形成しているため収納容器50の両側面を内箱20の側面に近づけることができ、収納容器50の幅を広げて収納量を大きくできる。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に記載の発明は、断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、平面部に連続して内箱に形成した凹部と、凹部の先端に設けた段差部と、断熱扉の周縁に設けた平面部と、平面部から立ち上げられて内箱凹部の段差部より手前側に配置され先端に折返部を設けた扉内板の断熱材が封入された凸部を備え、断熱扉の閉扉時に断熱扉周縁の平面部に断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに扉内板の凸部の折返部に固定される基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を断熱扉側に設けて、このヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を内箱凹部の段差部に当接してクランク形状のスロートと前記貯蔵室内の間をシールするので、スロート内の空気対流による熱伝達がほとんどなく開口周縁部からの侵入熱を確実に低減でき、省エネルギー化を図ることができる。
【0056】
また、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側断熱壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたのでスロート長が長くなり、侵入熱量が低減でき省エネルギー化が図れる。また、断熱扉の周縁部壁厚が薄いため側面からの外観がすっきりし、意匠効果が高まる。
【0057】
また、断熱箱体の開口部前面に収納容器を一体に引き出す断熱扉を開閉自在に取り付けて内部に貯蔵室を構成し、内箱の開口部近傍の貯蔵室内側面に凹部を形成し、収納容器には両側前面に内箱の凹部と対峙する凸部を設けて、この凸部に内箱の凹部をシールするシール部材を設けたので、収納容器の幅を広げて収納量を大きくしながら省エネルギー化を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による冷蔵庫の実施例1の要部断面図
【図2】
本発明による冷蔵庫の実施例2の要部断面図
【図3】
本発明による冷蔵庫の実施例3の要部断面図
【図4】
従来の冷蔵庫の断面図
【図5】
図4のA-A線断面図
【符号の説明】
16 断熱箱体
17 外箱
18 断熱箱体の平面部
19 フランジ
20 内箱
21 断熱材
17 断熱扉
23 扉外板
24 扉内板
25 断熱扉の平面部
26 断熱材
27 スロート
28 凸部
29 凹部
31 段差部
32 スロート
33 シール部材
34 貯蔵室
35 断熱扉
36 扉外板
37 扉内板
38 断熱扉の平面部
39 凸部
40 折返部
41 スロート
42 シール部材
43 シール部材
44 基部
45 柔軟部
46 断熱扉
47 扉外板
48 扉内板
49 断熱扉の平面部
50 収納容器
51 凸部
53 シール部材
54 スロート
 
訂正の要旨 1 特許請求の範囲の記載に関して
訂正事項1
特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】外箱と、内箱と、前記外箱と内箱の間に断熱材を封入して構成した断熱箱体と、扉外板と、扉内板と、前記扉外板と扉内板の間に断熱材を封入して構成した引き出し式の断熱扉と、前記断熱箱体の開口部に前記断熱扉を取り付けて内部に構成した貯蔵室とからなり、前記断熱箱体の開口周縁に設けた平面部と、前記平面部に連続して前記内箱に形成した凹部と、前記凹部の奥端に設けた段差部と、前記断熱扉の前記貯蔵室側周縁に設けた平面部と、前記平面部より立ち上げられた先端に折返部を設けて前記内箱凹部の段差部より手前側に配置されるよう前記扉内板に設けた断熱材が封入された凸部と、前記断熱箱体の平面部と断熱扉の平面部及び前記内箱の凹部と扉内板の凸部をそれぞれ対向させて形成したクランク形状のスロートと、前記断熱扉の閉扉時に前記断熱扉周縁の平面部に前記断熱箱体の平面部と密着するシール部材を設け、さらに前記扉内板の凸部の折返部に固定される基部と前記基部に連続して形成された柔軟部とよりなるヒレ状のシール部材を前記断熱扉側に設けて、前記ヒレ状のシール部材は、閉扉時に柔軟部を前記内箱凹部の段差部に当接して前記スロートと前記貯蔵室内の間をシールし、断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の室内側壁面を断熱箱体の開口面より室内側に食い込んで配置するとともに、断熱扉周縁の平面部の壁厚を、前記断熱扉の貯蔵室内に臨む部分の基準壁厚より薄くしたことを特徴とする冷蔵庫。」
と訂正する。
2 発明の詳細な説明の記載に関して、
訂正事項2
段落番号【0016】、【0020】及び【0055】に記載の「凸部」を「断熱材が封入された凸部」と訂正する。
訂正事項3
段落番号【0016】、【0020】及び【0055】に記載の「スロート」を「クランク形状のスロート」と訂正する。
訂正事項4
段落番号【0018】、【0021】及び【0056】に記載の「室内側壁面」を「室内側断熱壁面」と訂正する。
訂正事項5
段落番号【0021】及び【0056】に記載の「請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において」を「また」と訂正する。
訂正事項6
段落番号【0022】及び【0057】に記載の「請求項3に記載の発明は」を「また」と訂正する。
異議決定日 2002-09-05 
出願番号 特願平11-109374
審決分類 P 1 651・ 121- YA (F25D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長崎 洋一千壽 哲郎  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 井上 茂夫
櫻井 康平
登録日 2001-05-18 
登録番号 特許第3190638号(P3190638)
権利者 松下冷機株式会社
発明の名称 冷蔵庫  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 富田 克幸  
代理人 中村 哲士  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 坂口 智康  
代理人 蔦田 正人  
代理人 岩橋 文雄  

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