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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1068981
異議申立番号 異議2002-71758  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-02-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-22 
確定日 2002-11-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3248207号「少容量多目的バッチプラント」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3248207号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯・本件発明
本件特許第3248207号に係る出願は、平成3年12月10日に特許出願(国内優先権主張、平成3年3月26日)され、平成13年11月9日にその発明についての特許権の設定の登録がなされ、その後、平成14年7月22日付けで有限会社テキコより特許異議の申立がなされたものである。
本件の請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】加熱または冷却により化学反応をコントロールし、かつ(または)物理学的な変化を起させる工程を実施するためのバッチプラントにおいて、プラントが複数のステージをもつストラクチャーと複数の加熱または冷却の手段をそなえた容器とを有し、各ステージには、容器をステージ内で水平方向に、および(または)上下のステージ間で垂直方向に移送することのできる輸送手段を設けるとともに、容器の加熱または冷却の手段として、二以上に分割可能であって開閉することにより容器を着脱することのできるジャケットを設けたことを特徴とする少容量多目的バッチプラント。
【請求項2】同一ステージ内で水平方向に、および(または)上下のステージ間で垂直方向に、容器を移送することのできるスタッカークレーンを設けた請求項1のバッチプラント。
【請求項3】同一ステージ内で水平方向に容器を移送することのできる搬送台車を設けた請求項1のバッチプラント。
【請求項4】ジャケットの容器との接触面に、緩衝機能をもった良熱伝導体を内挿した請求項1のバッチプラント。
2.特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証〜甲第3号証及び参考資料1〜2を提出し、本件発明1〜4は、甲第1号証に記載された発明と同一か、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明についての特許は、取り消されるべきものであると主張している。
3.証拠の記載内容
特許異議申立人が提出した甲第1号証〜甲第3号証及び参考資料1〜2には、それぞれ次の事項が記載されている。
甲第1号証(特開平3ー178755号公報)
(1-a)「搬送路に沿って並設した多層階のそれぞれの階にステーションを設け、前記した搬送路を走行する搬送車に移載装置を備えた移動槽保持台を積載し、昇降装置により前記移動槽保持台を多層階に設けられた所望のステーションにまで上昇せしめ、移動槽保持台に載置された移動槽を移載装置によりステーションに移載するようにしたことを特徴とする多層階移動槽式回分生産方式。」(特許請求の範囲)
(1-b)「本発明は、多品種少量生産方式において・・・特に小容量の移動槽に好適な移動槽式回分生産方式であって」(第2頁左上欄2〜6行)
(1-c)「複数の原料が投入されていて加熱しながら攪拌して更に副原料を投入してもよいし、副原料投入後攪拌してもよい場合は、加熱装置付攪拌ステーションで別の移動槽が作業中であれば、そのステーションをスキップして副原料投入ステーションで副原料を投入して後、加熱装置付攪拌ステーションへ移動させる等して、移動槽の移載使用に何らの停滞も生じないようにされている。 引き続いて反応が必要な場合には、前記した移動槽1を反応ステーション15bへ移動させてもよいし」(第4頁右下欄7〜17行)
(1-d)「また、前記した実施例では昇降装置を自動搬送車に設置しているが搬送路に沿って天井クレーン敷設して移動槽を昇降せしめることも可能であり、また、スタッカ方式を採用することも可能である。・・・本発明に係る多層階移動槽式回分生産方式は、各工程のステーションを多層階に設けて移動槽を自動搬送車並びに昇降装置で所望のステーションに順治搬送、移載するものであり、ステーションを立体的としたことにより工場用地の有効利用を計ることができ、また、移動槽内の内容物を自然状態で落下させることで容易に移し替えることができ、更にはステーションをスキップすることにより移動槽の移載・積載に何らの停滞も生じることなく自動搬送車、移動槽の移動を高め、生産効率の高い生産方式を得ることができるものである。」(第5頁右上欄7行〜同頁左下欄5行)
甲第2号証(実願平1-40984号(実開平2-134448号)のマイクロフィルム)
(2-a)「ドラムには・・・接着剤、塗料、グリース・・・等の高粘性液や固形物が収容されることもあり、それらの内容物の取り出しを容易にするため、ドラムの直胴部を加熱する・・・前記ドラム直胴部加熱装置及びドラム底部加熱装置には例えば第2図に示されるような電熱式のものがある。・・・又ドラム直胴部加熱装置には第3図(A)(B)(C)に示されるようなプレートコイル式のものもある。第3図(A)において、・・・プレートコイル9、ホースニップル10及び接続配管11からなっており、ドラムの直胴部に密着させて巻き付けて用いられる。」(第2頁7行〜第3頁11行)
(2-b)第3図(A)には、分割されたプレートコイル式ドラム直胴部加熱装置が記載される。
甲第3号証(実願昭59-134612号(実開昭61-50424号)のマイクロフィルム)
(3-a)「(1)溶融された合成樹脂を射出するために前記合成樹脂を加熱する加熱筒を有する射出成形機において、加熱筒の外周面に沿って設けた加熱用媒体を通すための溝と、前記加熱筒の外周に着脱自在に嵌挿された複数のジャケットと、前記加熱筒上に前記ジャケットを貫通して前記加熱筒にねじ込まれた締着ピンと、からなる射出成形機の加熱装置。」(実用新案登録請求の範囲)
参考資料1(赤羽利昭著「ファインケミカルプラントと経済性」株式会社シーエムシー、1987年11月5日発行、第27〜29頁)
(a)「原料槽は2階、リアクターは1階におき、クレーンまたは軌道上を移動させて、原料をリアクターに供給する。引続いて副原料を供給されたリアクターは、ユーティリティゾーンにて加熱されて昇温を初め、反応が終了次第冷却される。」(第27頁右欄17〜21行)
(b)「図1・16は中間タンク移動方式パイプレスプラントの側面図であり、・・・反応器は2階に固定されていて、多量使用の流体原料とユーティリティのみが配管されている。反応終了後は、反応器直下の1階に設置した移動式中間タンクへ中間生成物を排出し、受渡しをうけた中間タンクは製品用自動立体倉庫内へ移されて、エレベーターで2階にあげられて次工程へと送られる。」(第27頁右欄32〜41行)
参考資料2(「工場自動化技術便覧」産業技術調査会、昭和63年8月11日初版発行、第866〜871頁)
(a)「22.3 自動倉庫設備 22.3.1スタッカクレーン もっとも一般的なスタッカークレーンとそのフォーク装置を各々図3.1、3.2に示す。」(第866頁16〜19行)
(b)図3.1にスタッカクレーンの概要が記載される。
4.当審の判断
(1)本件特許に係る出願の国内優先権主張について検討すると、本件発明1〜4のうち輸送手段がスタッカークレーンである本件発明2は当該優先権の主張の基礎とされた先の出願の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明であると認められるので、本件発明2については、特許法第41条に基づく遡及が適用される。
しかるに、本件発明2については、特許異議申立人が証拠として提出した甲第1号証の特開平3-178755号公報は公開日は平成3年8月2日であり、本件特許に係る出願の遡及日が平成3年3月26日であることから、甲第1号証は特許法第29条第1項で規定される本件特許に係る出願前に頒布された刊行物と云うことはできないので、甲第1号証に基づく特許法第29条第1項第3号及び第2項の違反を主張する本件発明2についての前記特許異議申立は理由があるものとすることはできない。
(2)そこで、本件発明1、3及び4についての前記特許異議申立の理由について検討する。
(2-1)本件発明1について
上記(1-a)乃至(1-d)の記載を参酌すると、甲第1号証には、「搬送路に沿って並設した立体的な多層階のそれぞれの階にステーションを設け、該ステーションには反応ステーションや加熱装置付攪拌ステーションを有し、前記した搬送路を走行する搬送車に移載装置を備えた移動槽保持台を積載し、昇降装置により前記移動槽保持台を多層階に設けられた所望のステーションにまで上昇せしめ、移動槽保持台に載置された移動槽を移載装置によりステーションに移載するようにした多品種小量生産の小容量多層階移動槽式回分生産方式を採用したバッチプラント」の発明(以下、「甲第1発明」という)が実質的に記載されている。
そこで、本件発明1と甲第1発明を対比すると、甲第1発明の「移動槽」、「ステーション」が、その機能構成からみて本件発明1の「容器」、「ステージ」に相当し、甲第1発明の「立体的なステーション」は、その構造からみて本件発明1のストラクチャーに相当することも明らかである。そして、甲第1号証の「反応ステーション」、「加熱装置付攪拌ステーション」並びに「加熱しながら攪拌」の記載(前記(1-c))からみて、甲第1発明には加熱により化学反応をコントロールし、かつ(または)物理的な変化を起こさせる工程が実施されると云える。これらのことから、両者は、
「加熱により化学反応をコントロールし、かつ(または)物理学的な変化を起させる工程を実施するためのバッチプラントにおいて、プラントが複数のステージをもつストラクチャーと容器とを有し、各ステージには、容器をステージ内で水平方向に、および(または)上下のステージ間で垂直方向に移送することのできる輸送手段を設けた少容量多目的バッチプラント」の点で一致するものの、
本件発明1が「複数の加熱または冷却の手段をそなえた容器を有し、容器の加熱または冷却の手段として、二以上の分割可能であって開閉することにより容器を着脱することのできるジャケットを設けた」ものであるのに対し、甲第1発明にはそれらの構成について記載されていない点で相違していると云える。
上記相違点については、上記(2-a)、(2-b)及び(3-a)の記載から、甲第2号証には、分割された加熱体が開示され、甲第3号証には、射出成形機の加熱ジャケットを着脱自在とすることが開示されているといえるが、甲第2号証のものは、高粘性液等の内容物の取り出しを容易にするものであり、甲第3号証のものは射出成形機に関するものであるので、いずれも本件発明1のように「加熱または冷却により化学反応をコントロールし、かつ(または)物理学的な変化を起させる工程を実施するためのバッチプラント」における容器に関するものと云えない。そして、第2,3号証のものは、本件発明1のように移送式の容器に加熱または冷却手段がそなえられたものでない。これらのことからみて、甲第2,3号証に上記相違点の技術的事項が記載されているとはいえない。
また、参考資料1については、パイプレスプラントにおいて、リアクター(反応容器)がユーティリティゾーンにて加熱・冷却されることの記載、また、参考資料2についてもスタッカクレーンの記載があるといえるものの、上記相違点については何ら記載されていない。
なお、特許異議申立人は、加熱または冷却手段に関し、「甲第2号証、甲第3号証からも二以上に分割可能であって開閉するジャケットとすることは周知慣用手段である」と主張(申立書第12頁22〜25行)しているが、甲第2号証のものは内容物の入ったドラムの加熱のために取り外し自在にしたものであり、甲第3号証のものは保守の容易性のために着脱自在にするためのものであって、本件発明1が移送式(搬送式)容器において配管の着脱を必要としない構成にしようとするものであるから、甲第2,3号証のものと本件発明1とは、その加熱または冷却手段の分割・着脱自在の技術内容を異にすることは明らかであることから、甲第2,3号証を以て本願発明1の技術分野において周知慣用のものといえないので、上記した特許異議申立人の主張を認めることはできない。
そして、本件発明1は、上記相違点の構成を採ることにより、加熱・冷却のたびにユーティリティ配管の着脱を行う必要がないなど本件明細書に記載の特有の効果を奏するものといえる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明と同一とも、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
 
異議決定日 2002-10-29 
出願番号 特願平3-325663
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 新居田 知生  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 唐戸 光雄
西村 和美
登録日 2001-11-09 
登録番号 特許第3248207号(P3248207)
権利者 日揮株式会社
発明の名称 少容量多目的バッチプラント  

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