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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
管理番号 1068985
異議申立番号 異議2002-71495  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-06-11 
確定日 2002-11-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3239989号「二軸延伸ブロー成形容器」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3239989号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由
1.手続きの経緯
本件特許第3239989号の請求項1に係る発明は、平成7年12月28日に特許出願した特願平7-343737号(以下、「原出願」という)の一部を平成9年2月28日に新たな特許出願として出願され、平成13年10月12日にその発明についての特許権の設定登録がなされた後、その特許について、申立人尾之上光宏より特許異議の申立てがなされたものである。

2.特許異議申立てについて、

2-1.本件発明
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 内容積が350ないし500ミリリットルであり、周壁を角筒形状とした二軸延伸ブロー成形容器において、胴部周壁には上部周壁と下部周壁に分断するように環状溝部が設けられており、各対向する周壁の環状溝部の中央には、上部周壁と下部周壁に連接し、前記環状溝部よりも低い外方に突出する少なくとも1つの突部が設けられており、該突部の周方向の長さが、互いに対向する側壁の環状溝部の一辺の長さの1/3以上1/2以下であり、かつ、突部の突出寸法は前記環状溝の深さの30%ないし50%であることを特徴とする二軸延伸ブロー成形容器。」

2-2.申立ての理由の概要
申立人尾之上光宏は、(1)証拠として、甲第1号証(実願平4-22593号(実開平5-75113号)のCD-ROM、甲第2号証(実願平3-63590号(実開平5-58614号)のCD-ROM、甲第3号証(U.S.P Des.315678)を提出して、本件発明は、甲第1〜3号証に記載の発明から当業者が容易になし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張し、また、(2)証拠として、甲第6号証(特開平9-183151号公報)を提出して、本件発明は、甲第6号証から明らかなように、不可欠要件を欠落しているので、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず、その特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるとの要件を充足するものとはなっていないから、本件出願は特許法第36条第4項、第6項第2号の規定に該当し、拒絶されるべきものである旨主張する。

2-3.申立てについての判断
〔申立人の主張(1)について〕
(ア)甲号各証の記載事項
甲第1号証には、合成樹脂製壜体について、図面と共に、次の事項が記載されている。
(1a) 「【0008】
【課題を解決するための手段】
上記した技術的課題を解決する本考案の手段は、有底筒形状をした胴部に、少なくとも一対の平行に対向した平坦壁部を設けること、この平坦壁部を設けた胴部に複数の周溝を平行に周設すること、この周溝の平坦壁部に位置する部分を、両側端部から中央部に近づくに従って徐々に深さを浅くする構造としたこと、にある。
【0009】
胴部を有底長方形筒形状とし、この胴部の長手辺面部分に該当する壁部分を平坦壁部とするのが良く、同様に胴部を有底正方形筒形状とし、この胴部の四つの平板状壁部分を平坦壁部とするのが良い。
【0010】
周溝を、外方にテーパ状に拡がって上下に対向した一対の溝側壁と、この一対の溝側壁の内端間を連結する底壁とから構成するのが有効である。
【0011】
【作用】
壜体の胴部には、補強周溝としての複数の周溝が平行に周設されているので、この周溝が発揮する補強機能により、壜体全体、特に胴部は、通常の補強周溝を付形した通常の壜体と同程度の高い座屈強度を発揮するものとなる。
【0012】
この胴部の座屈強度を高めている周溝の平坦壁部に位置している部分は、平坦壁部の両側端部から中央部に近づくに従って、徐々にその深さを浅くする溝構造となっているので、胴部の壁に対して周溝が発揮する機能、すなわち径方向に作用する外力に対する胴部の壁の自己形状保持能力を高めると云う機能が、平坦壁部においては、両側端部から中央部に近づくに従って弱くなっている。
【0013】
このため、壜体内に減圧が発生して、胴部の壁を内方に押し込む力が作用すると、周溝による補強機能の弱い平坦壁部の中央部が、この減圧の作用により比較的容易に陥没変形し始め、減圧吸収作用を発揮する。
【0014】
この減圧吸収のための平坦壁部の陥没変形は、平坦壁部の中央部だけに集中して生じるのではなく、平坦壁部の周溝が、両側端部から中央部に近づくに従って徐々に深さを浅くする構造となっていることから、この中央部に減圧吸収のための陥没変形が発生すると、この陥没変形が呼び水となって、平坦壁部全体が大きな曲率で湾曲変形した状態で陥没変形することになる。」(【0008】〜【0014】の項)
(1b) 「【0017】
胴部2は、高さ方向の略中央に周設された中央周溝により上部と下部とに区画されており、この胴部2の上部には四つの周溝6が、そして胴部2の下部には五つの周溝6がそれぞれ周設されており、胴部2を構成する四つの平板状の壁部分の内、長手辺に該当する壁部分が平坦壁部5を構成している。
【0018】
それゆえ、各周溝6は、図3に示すように、平坦壁部5の中央部に位置する部分を最浅部6cとした周溝構造をしており、平坦壁部5における周溝6の平均深さは胴部2の他の壁部分、すなわち短手辺に該当する壁部分における周溝6の平均深さよりも小さい値となっており、このため平坦壁部5は、その平坦面面積が大きいことも加味されて、減圧発生時における湾曲陥没変形が発生し易いものとなっている。」(【0017】〜【0018】の項)
甲第2号証には、プラスチックボトルについて図面と共に次の事項が記載されている。
(2a) 「【請求項6】本質的に円筒状の形状を有するプラスチックボトルにおいて、それがその外方表面に、規則的なパターンで同じ高さに配置された複数個の同様な凹部(1)を有することを特徴とするプラスチックボトル。」(実用新案登録請求の範囲の請求項6)
(2b) 「【請求項8】前記凹部(1)は、ボトルの外方表面に沿って水平方向に成形され且つ垂直方向展開を有する複数個の別の弓形表面(15,16)によって規則的なパターンに従って中断された規則的な、好ましくは対称的な溝(12)によって生じた弓形表面によって形成されることを特徴とする請求項6に記載されたプラスチックボトル。」(実用新案登録請求の範囲の請求項8)
(2c) 「【考案が解決しようとする課題】
それ故、非常に大量のものを産業ベースで大量生産されることができ、炭酸飲料、即ち圧力下の飲料と非炭酸飲料の両方を収容するために有利に使用することができ、同じ幾何学的形状及び内容積を得るために用いられる材料の量の増加を含まず、重量された負荷及び内圧によって生じた複合応力下において実際に変形しない充分な機械的特性を保存することができ、掴むため及び取扱うためこ非常に便利であることが分かっており、且つ最後に向上された安定性を保証するという単一種類のプラスチックボトルを提供することは望ましく、実際にそれが本考案の目的である。」(【0018】の項)
甲第3号証には、周壁が円筒形状を有するボトルの周溝に凹部が設けられているものが図示されている。
(イ)対比・判断
そこで、本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証には、周壁を角筒形状とし、胴部周壁には上部周壁と下部周壁に分断するように環状溝部が設けられている二軸延伸ブロー成形容器において、上部周壁と下部周壁の対向する周壁の環状溝部は、上部周壁と下部周壁に連接し、両側端部から中央部に近づくに従って徐々に深さを浅くする構造としたものが記載されている。この環状溝部の構造は、本件発明における、環状溝部よりも低い外方に突出する突部に対応するものであるが、大型容器の上部周壁と下部周壁の対向する周壁の周溝に設けられているものであり、本件発明のように上部周壁と下部周壁に分断する環状溝部に設けられているものではなく、また、本件発明におけるような、内容積が350ないし500ミリリットルの比較的小型の容器に設けられたものでもなく、突部の周方向の長さが、互いに対向する側壁の環状溝部の一辺の長さの1/3以上1/2以下であり、かつ、突部の突出寸法が環状溝の深さの30%ないし50%であるものでもない。
また、甲第2号証あるいは第3号証に記載されているものは、仮に周溝に突部が形成されているものであるとしても、周壁が円筒形状を有するボトルの周溝に設けられているものであるから、対向する周壁の周溝に突部を設けることを示唆するようなものではない。
したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証あるいは第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
〔申立人の主張(2)について〕
甲第6号証は本件発明の分割の原出願の公開公報であるが、この甲第6号証には、「【0013】請求項2の発明に係る二軸延伸ブロー成形容器の技術的特徴は、第2図に示される様に周壁を角筒形状とし、各対向する側壁の環状溝部の中央部に、前記溝部よりも低く外方に突出する突部を設けて、前記突部の対向する外径寸法を.前記容器のフランジ下方近傍の外形寸法の2.3ないし4.5倍、好ましくは2.4ないし3.0となるように製造されている点にある。」と記載されている。
申立人は、甲第6号証のこの記載から、本件発明においては、「突部の対向する外径寸法を容器のフランジ下方近傍の外形寸法の2.3ないし4.5倍、好ましくは2.4ないし3.0となるようにする」ことが絶対に不可欠な要件となることは明らかであり、実は、このことは、出願人がわざわざ設けた「比較例1」で裏付けされていることでもあるから、本件発明は、最も重要な基礎的要件を欠落させてしまっており、単に分割出願としての資格の認否のみではなく、技術思想としての正確性、正当性が問われるものであり、原出願との同一性が絶対的要件とされる分割出願の利益を享受せんとする出願人の責任は重大であると主張している。
しかしながら、分割出願が的確になされているか否かと、明細書に記載不備があるか否かとは、別個の問題である。突部の対向する外径寸法を容器のフランジ下方近傍の外形寸法の何倍にすると厚肉部が形成されないと本件明細書に記載されているわけではないから、かかる要件が特許請求の範囲に記載されていないからといって、特許を受けようとする発明が明確でないとはいえない。
そして、本件明細書には実施例と比較例1が記載されており、比較例1には、突部の対向する外径寸法を容器のフランジ下方近傍の外形寸法の2.24倍とすること以外は、実施例と同一の条件下で製造されたものは、環状溝部に肉厚分布不良が発生し、厚肉部が形成されることが示されているとはいえ、実施例には計算すると2.30倍のものが開示されているのであるから、発明の詳細な説明には、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は理由がない。

2-4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-10-29 
出願番号 特願平9-45407
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 祖山 忠彦
杉原 進
登録日 2001-10-12 
登録番号 特許第3239989号(P3239989)
権利者 東洋製罐株式会社
発明の名称 二軸延伸ブロー成形容器  

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