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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H02M
管理番号 1068999
異議申立番号 異議2001-70583  
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-07-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-21 
確定日 2002-10-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第3079563号「インバータ駆動装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3079563号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件発明
特許第3079563号(平成2年11月20日出願、平成12年6月23日設定登録)の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、
「アーム接続された複数個の半導体スイッチング素子と、モータを駆動する信号を発生する駆動信号発生手段と、前記駆動信号発生手段の出力により前記半導体スイッチング素子を駆動する駆動手段と、前記半導体スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段より構成され、前記半導体スイッチング素子に過大電流が流れた場合に、該当する半導体スイッチング素子を一定時間停止状態にすると共に、該当する半導体スイッチング素子が下側アーム群に属する場合は、前記駆動信号発生手段に異常状態を送信しモータ駆動信号の発生を停止し、該当する半導体スイッチング素子が上側アーム群に属する場合は、外部に異常状態を送信しないインバータ駆動装置。」にある。
2.申立ての理由の概要
異議申立人吉田春男は、甲第1号証(ISPSD’90 4.2.2 144〜149頁)、甲第2号証(PCIM’88 PC V-7 253〜261頁)、および、甲第3号証(日経エレクトロニクス 1987.1.26号第154頁図B)を提出し、本件発明は各号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができず、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものであると主張している。
3.申立人が提出した甲第1号証記載の発明
甲第1号証には図面と共に以下のように記載されている。
「モータを駆動するインバ‐タシステムにおいて、スイッチング素子としてIGBTが記載されており、このIGBTは、主エミッタ端子の他にセンスエミッタ端子を備えており、このセンスエミッタ端子には抵抗がそれぞれ接続されて、個々のIGBTで電流検出ができるようになっている。そして、IGBTはゲートアンプICによって、駆動され、ゲートアンプICはフォトカプラを介してマイクロプロセッサより信号が与えられている。over-current(過大電流)とover-temperatureとunder-voltageのfault-signalは下側アームのゲートアンプICからマイクロプロセッサに与えられ、上側アームのゲートアンプICからfault-signalは出力されていない。」(第2図)
「上側アームのIC1〜IC3からはfaultが出力されず、下側アームのIC4のF0端子からfaultが出力されている。」(第3図)
以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明が記載されていることになる。(以下、「引用発明1」という。)
「アーム接続された複数個のIGBTと、モータを駆動する信号を発生するマイクロプロセッサと、前記駆動信号発生手段の出力により前記IGBTを駆動するゲートアンプICと、前記IGBTを流れる電流を検出するセンスエミッタ端子と抵抗からなる電流検出手段より構成され、前記IGBTに過大電流が流れた場合に、該当するIGBTが下側アーム群に属する場合は、前記駆動信号発生手段にfault-signalを送信し、該当するIGBTが上側アーム群に属する場合は、外部にfault-signalを送信しないインバータ駆動装置。」
甲第3号証には図面と共に以下の記載がある。
「パワ‐ICを使って交流モーダを駆動する回路(インバータ)として、ハーフブリッジ回路が示されており、過電流保護回路を有する制御用ICであることが記載されている。そして、IGBTはセンスエミッタ端子を有するものであり、このセンスェミッタ端子が電流検出回路に接続され、電流検出回路はOR回路を介してRSフリップフロップのリセット端子に接続されている。
つまり、IGBTのセンスエミッタ端子を流れる電流を電流検出回路で検出し、所定電流以上であるとOR回路を介してRSフリップフロップをリセットして、該IGBTをオフさせる。該オフとなったIGBTは次にセット信号(Ion)が入るまでオフ,となる。即ち、IGBTに過大電流が流れた場合に、該当するIGBTを一定時間停止状態(RSフリッブフロッブにリセット信号が入ってからセット信号が入るまでの期間)としている。」(図B)
以上の記載によれば、甲第3号証には以下の発明が記載されていることになる。(以下、「引用発明3」という。)
「アーム接続された複数個のIGBTと、駆動信号発生手段の出力により前記IGBTを駆動する駆動手段と、前記IGBTを流れる電流を検出する電流検出手段より構成され、前記IGBTに過大電流が流れた場合に、該当するIGBTを次のセット信号(Ion)が入るまで停止状態にするインバータ駆動装置。」
4.対比・判断
本件発明を引用発明1と比較すると、本件発明の「半導体スイッチング素子」が引用発明1の「IGBT」に、同様に「駆動信号発生手段」が「マイクロプロセッサ」に、「駆動手段」が「ゲートアンプIC」に、「電流検出手段」が「センスエミッタ端子と抵抗からなる電流検出手段」に、「異常状態」が「fault-signal」に、それぞれ相当することが明らかであるので、両者は、
「アーム接続された複数個の半導体スイッチング素子と、モータを駆動する信号を発生する駆動信号発生手段と、前記駆動信号発生手段の出力により前記半導体スイッチング素子を駆動する駆動手段と、前記半導体スイッチング素子を流れる電流を検出する電流検出手段より構成され、前記半導体スイッチング素子に過大電流が流れた場合に、該当する半導体スイッチング素子が下側アーム群に属する場合は、前記駆動信号発生手段に異常状態を送信し、該当する半導体スイッチング素子が上側アーム群に属する場合は、外部に異常状態を送信しないインバータ駆動装置。」
において一致し、以下の点で相違している。
・相違点1
本件発明は、「半導体スイッチング素子に過大電流が流れた場合に、該当する半導体スイッチング素子を一定時間停止状態にする」のに対し、引用発明1では「IGBT」を停止状態にする点の記載がない。
・相違点2
本件発明は、「前記半導体スイッチング素子に過大電流が流れた場合に、該当する半導体スイッチング素子が下側アーム群に属する場合は、前記駆動信号発生手段に異常状態を送信しモータ駆動信号の発生を停止」するのに対し、引用発明1では「モータ駆動信号の発生を停止」する点に関しての記載がない。
相違点1について検討すると、本件発明はスイッチング素子を停止状態にしている期間を「一定時間」としているのみであり、インバータの出力の周期との関連において、停止の期間を限定しているわけではない。してみれば、本件発明の「半導体スイッチング素子を一定時間停止状態にする」点は、引用発明3における「前記IGBTに過大電流が流れた場合に、該当するIGBTを次のセット信号(Ion)が入るまで停止状態にする」ものとの比較おいては、単に停止の期間が終了する時刻を停止から一定時間と規定しているか否かの違いしかなく、半導体スイッチング素子を過大電流による破壊から防止することができるという効果の点では、引用発明3のものと異なるところがない。そうすると、本件発明の「半導体スイッチング素子に過大電流が流れた場合に、該当する半導体スイッチング素子を一定時間停止状態にする」のは、引用発明3に単なる設計的事項の変更を加えたにすぎないものである。また、引用発明1、引用発明3は、共にモータ駆動用のインバータ装置にかかるものであるから、相違点1は、引用発明3の上記構成を引用発明1に組み合わせることにより容易に発明できた事項である。
相違点2について検討すると、モータ駆動装置において過大電流が流れた場合にモータ駆動を停止するのは技術常識であって、インバータ装置にあって「モータ駆動信号の発生を停止」すれば、モータ駆動が停止するのは自明な事項であるから、上記相違点2は周知の事項というべきものである。
5.むすび
したがって、本件発明は、その出願前日本国内において頒布された甲第1,2号証および甲第3号証に記載された発明及び上記周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
異議決定日 2002-09-06 
出願番号 特願平2-317337
審決分類 P 1 652・ 121- Z (H02M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐々木 一浩  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 紀本 孝
菅澤 洋二
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3079563号(P3079563)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 インバータ駆動装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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