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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E04H
管理番号 1069547
審判番号 無効2001-35134  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-04-02 
確定日 2002-08-16 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2528563号発明「制震構造物用高減衰装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2528563号の請求項1〜3に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 【1】手続の経緯
(1)本件特許第2528563号は、平成3年6月20日に特許出願され、平成8年6月14日に特許の設定登録がなされた。
(2)請求人は、平成13年3月30日付けで本件無効審判の請求をし、本件特許の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである旨の主張をし、証拠として以下の甲号各証及び「甲第2号証の参考図」を提出した。
甲第1号証:特開昭49-100832号公報
甲第2号証:実願昭57-57203号(実開昭58-158837号)のマイクロフィルム
甲第3号証の1:特開昭51-148168号公報
甲第3号証の2:米国特許第4084668号明細書
甲第4号証:「機械図集 防振・緩衝装置(上巻)」(昭和52年7月10日初版、社団法人日本機械学会発行)
甲第5号証:特開昭49-12283号公報
甲第6号証:本件特許公報
(3)被請求人は、平成13年7月23日付けで訂正請求書を提出すると共に、同日付けの答弁書において、訂正後の請求項1〜3に係る発明は上記甲第1〜5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない旨の主張をし、証拠として以下の乙号証を提出した。
乙第1号証:「建築大辞典」(P.493、1990年4月10日第1版第12刷、株式会社彰国社発行)
(4)請求人は、平成13年10月29日付けで弁駁書を提出し、上記訂正請求は認められるものではなく、仮に、認められるものであったとしても、依然として訂正後の請求項1〜3に係る発明は、甲第1〜5号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである旨の主張をし、補充の証拠として、以下の甲号各証を提出した。
甲第4号証の2:「機械図集 防振・緩衝装置(下巻)」(目次部分、昭和52年7月10日初版、社団法人日本機械学会発行)
甲第7号証:「配管技術 '76-9」(P.95-104、昭和51年9月1日、日本工業出版発行)
甲第8号証:特開平2-209568号公報

【2】訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容は、以下(ア)(イ)のとおりである。
(ア)特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正。
「構造物の架構または耐震要素に連結されるシリンダー本体と、前記シリンダー本体内を移動するピストンと、前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に連結されるピストンロッドと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路と、前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁と、前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーターと、前記バイパスの前記油圧室のそれぞれと前記アキュムレーターとの間に設けられ、前記油圧室からの油の流出を阻止するための一対のチェック弁と、前記バイパスに前記各チェック弁と並列に設けたオリフィスとからなる高減衰装置であって、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、
c3≦c≦c1となるように設定したことを特徴とする制震構造物用高減衰装置。」
(イ)明細書の段落【0011】(特許公報4欄9〜28行)を次のとおり訂正。
「また、本発明の高減衰装置はコンパクトな装置で、例えば保持力200t、減衰係数25〜50t/kineといった高い減衰係数を目指したもので、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、c3≦c≦c1となるように設定し、このような条件を実現するため下記の構成要素を備えている。
1 構造物の架構または耐震要素に固定されるシリンダー本体
2 前記シリンダー本体内を移動するピストン
3 前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に固定されるピストンロッド
4 前記ピストンの両側に形成された油圧室
5 前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路
6 前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁
7 前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーター
8 アキュムレーターからそれぞれの油圧室へ向かう油のみ流すための一対のチェック弁
9 前記各チェック弁と並列に設けられ、油圧室の圧ごもりを解消するためのオ
リフィス。」(なお、本審決書では、丸囲み数字を表記できないので、下線付き数字に置き換えて表記した。)
(2)上記訂正事項(ア)は、特許請求の範囲に、特許明細書の「図9において各次の減衰定数h1、h2、h3が10〜40%を示す範囲aに、高減衰装置の減衰係数cを設定すれば、十分な応答低減効果が得られる。この範囲aとしては、3次減衰定数h3のピークと1次減衰定数h1のピークの間が適当である。すなわち、3次のモードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次のモードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1とを求め、前記高減衰装置の減衰係数cが
c3≦c≦c1となるように設定すればよい。」(段落【0030】(特許公報6欄27〜37行))という記載に基づく限定を加えたものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正に該当する。
また、上記訂正事項(イ)は、明細書の発明の詳細な説明の記載を、上記特許請求の範囲の訂正に対応させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
そして、いずれの訂正も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)したがって、当該訂正は、特許法第134条第2項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同第126条第2,3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件発明
(1)本件特許の請求項1〜3に係る発明は、訂正後の特許明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】構造物の架構または耐震要素に連結されるシリンダー本体と、前記シリンダー本体内を移動するピストンと、前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に連結されるピストンロッドと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路と、前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁と、前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーターと、前記バイパスの前記油圧室のそれぞれと前記アキュムレーターとの間に設けられ、前記油圧室からの油の流出を阻止するための一対のチェック弁と、前記バイパスに前記各チェック弁と並列に設けたオリフィスとからなる高減衰装置であって、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、
c3≦c≦c1となるように設定したことを特徴とする制震構造物用高減衰装置。(以下、「本件第1発明」という。)
【請求項2】前記オリフィスは前記チェック弁を構成する弁体を貫通して設けられている請求項1記載の制震構造物用高減衰装置。(以下、「本件第2発明」という。)
【請求項3】前記アキュムレーターをピストン型として、前記アキュムレーターに油量監視装置を設けてある請求項1記載の制震構造物用高減衰装置。(以下、「本件第3発明」という。)」

【4】甲号各証
(1)甲第1号証には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(A)「第1図〜第3図において、(1)及び(2)は高層建築物を構成する柱体及び梁体である。(3)(3)は梁体(2)の床相当部(2a)から適当間隔おいて頂部(3a)(3a)が梁体(2)間の層間(11)の適宜の位置で互いに交わる状態に立設されたブレースであり、該頂部(3a)(3a)はブレース受台(4)で互いに固定連結されている。(5)は梁体(2)の天井相当部(2b)から突設されたブラケットである。(6)は前記ブラケット(5)と前記ブレース受台(4)との間に……介装された緩衝減速装置としての例えばオイルダンパーであり、地震などの横揺れ時に水平力を受けるように構成されている。」(1頁右欄6〜18行)
(B)「すなわち層間変位に対してオイルダンパー(6)のピストン(図示せず)は速やかに変位して衝撃による水平力は有効に吸収されて建築物の構造部分にかかる負担は軽減せしめられるとともに、第4図に示されるように層間変位速度(ア)に対してオイルダンパー(6)の反力(F)は速やかに増大し、変位速度は急速に減衰せしめられて高層建築物の振動は効果的に抑制される。」(2頁右欄12〜20行)

(2)甲第2号証には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(C)「本考案は油圧緩衝器に関する。」(2頁4行)
(D)「図において、1は円筒状のシリンダで、該シリンダ1の一方の端部には底板2が固着され、該底板2には取付環3が設けられている。また、前記シリンダ1の他方の端部には、後述するピストンロツド4を摺動自在に貫挿させる蓋部材としてのロツドガイド5が固着されている。
またシリンダ1内にはその内部を空気室Aと後述する圧力室Bとに区画し、前記ロツドガイド5と同様ピストンロツド4を摺動自在に貫挿する蓋部材としての隔壁6が固着されている。前記ピストンロツド4のシリンダ1外の一側には取付環7が設けられ、ロツドガイド5と隔壁6との間の圧力室B内のピストンロツド4の他側にはピストンロツド4に保持されたピストン8がシリンダ1内に摺動自在に設けられている。そして該ピストン8により圧力室Bは圧力室B1と圧力室B2とに区画される。
9は圧力室B1外周のシリンダ1側壁に形成された通路で、該通路9の一端側は圧力室B1に開口している。
シリンダ1側壁外周に設けられた開口10と通路9との間には後述する可変絞りより小径の温度補償用のオリフイス11(絞り)を有する通路12と、油タンクから圧力室B1のみに油液が流れる向きに逆止弁13を有する通路14が並列に設けられている。
一方、圧力室B2の外周シリンダ1側壁には通路15が形成されており、該通路15の一端側は圧力室B2に開口している。
シリンダ1側壁外周に設けられた開口16と通路15との間に油タンクから圧力室B2のみに油液が流れる向きに逆止弁17を有する通路18が設けられている。なお、前記逆止弁17に並列にオリフイス11を……設けてもよい。前記通路9と通路15の各他端側面には配管19が設けられており、該配管19の途中には可変絞り20(抵抗力発生機構)が設けられている。なお、可変絞り20はピストン8に設けてもよく、また固定絞りであってもよい。」(4頁5行〜6頁13行)
(E)「上記のような構成の油圧緩衝器においては、取付環7を上に、取付環3を下にして圧力室Bを油液で充満して配管プラント等の各種構築物に取付けられる。」(7頁13〜末行)
(F)「本実施例では油圧緩衝器をピストンロツド4が地面に垂直になるように取付けたが、ピストンロツド4が地面に平行になるように取付けてもよく、この場合油タンク21と逆止弁13,逆止弁17との水頭差が等しくできるのでピストン8が上下{注:左記「上下」は「左右」の明白な誤記と認める。}いずれに動いても特性が同じとなる。」(10頁6〜11行)
そして、上記(D)の「なお、可変絞り20はピストン8に設けてもよく、また固定絞りであってもよい。」という記載から、これらの「絞り」を「ピストン8」に設ける場合には、ピストン8に圧力室B1と圧力室B2とを結ぶ通路が形成されていることが当業者に明らかな事項であるから、甲第2号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「配管プラント等の各種構築物に使用する油圧緩衝器であって、シリンダ1の一端に取付環3付き底板2が固着され、シリンダ1の他端に取付環7付きピストンロツド4を摺動自在に貫挿させた蓋部材としてのロツドガイド5が固着され、シリンダ1内には隔壁6が固着され、ロツドガイド5と隔壁6とにより圧力室Bが構成され、ピストンロツド4に保持されたピストン8により圧力室Bが圧力室B1と圧力室B2とに区画され、圧力室B1と油タンク21とを結ぶ通路の途中に逆止弁13とオリフイス11とが並列に設けられ、圧力室B2と油タンク21とを結ぶ通路の途中に逆止弁17とオリフイス11とが並列に設けられ、ピストン8に形成した圧力室B1と圧力室B2とを結ぶ通路に可変絞り20を設けた、油圧緩衝器。」(以下、「引用発明」という。)

(3)甲第3号証の2には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(G)「ダンパーピストン12は、該ピストンが水力ダンパーケーシング10内に関して往復する際に、ダンパー室22,24の間の限定した流体流を許す制限弁20を有する。過剰圧力条件下におけるピストンの互いに反対方向の運動時に夫々開く、対向方向に開口する圧力開放弁26,28が設けられている。
ダンパーケーシングの端壁16,18各々はピストンロツド14を包囲する小さな環状空洞部34を備えたピストンロツド14の所で隔設した第1,第2シール30,32を備えている。環状空洞部34はダンパーの作動中に第1シール30を経て漏出する流体を集めるために設けてある。環状空洞部34は、制限弁37を有する通路36、通路66、シャトル弁52、通路38を経由してダンパー表示器41の閉鎖貯蔵部40に接続されている。閉鎖貯蔵部40はダンパー表示器41の一部であり、流体レベル表示器44を支持するダイヤフラム42により閉鎖されている。」(2欄24〜42行)
(H)「ダンパーピストン12が左に動くと、高圧下の流体は通路50を通って弁54をその座部60に契合させるシャトル弁52へ流れる。ダンパーピストンはダンパー室22内の流体を圧縮するので、ダンパー室24内の圧力は減圧される。閉鎖貯蔵部40が供給する流体は通路38から入り口64に流入し、開いた状態の弁56、縦溝70を経て通路72に流入し、軸方向の通路74を経て導管53に入り、ダンパー室24内に流入する。……ダンパーシステムの第2シールからかなりの流体が漏出したとき、ダンパー表示器41は、システム内に流体の供給とシール交換が必要なことを示す。」(3欄40行〜4欄2行)

(4)甲第4号証には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(I)「5・1・1 オイルダンパと油圧緩衝器
オイルダンパおよび油圧緩衝器は、いずれも油の粘性……を利用して運動体に抵抗を与え……オイルダンパ……は自由振動をすみやかに減衰させたり……する.」(92頁3〜10行)
(J)「b.オリフィス形状と特性線図
……減衰力はピストン速度とオリフィス面積の関数であって、逆に言うならばオリフィスを適当に細工することにより種々の減衰力特性を与えることができる.……図5・1に代表的なオリフィス形状と特性を示す.これらの弁を装備したオイルダンパにおけるピストン力(減衰力)とピストン速度の関係は……比例弁の場合は直線的である」(93頁4〜9行)

(5)甲第5号証には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(K)「油圧シリンダ1は両端をふた2,3で密閉され,片側ロツドのピストン4を内蔵している。ふた2には引手金具2aが固着され,ふた3はピストンロツド5が摺動自在に貫通している。シリンダの両端部は側管6によつて連通可能に結ばれている。側管の中央部には給油孔が開口し,側管上方に位置する油容器7と給油管7aで接続されている。側管は前記給油孔をはさんで左右に1対の大径部を具え,これへ1対のオリフイス弁装置が対向して設けてある。このオリフイス弁装置は弁体8とばね9とから成る。弁体8は大径部8aと小径部8bと小径部端の弁部8cとから成り,大径部8aによつて側管の大径部内を摺動自在である。1対の弁体8,8は夫々弁部8cを対向させ,その背面へばね9を挿入して弁部を弁座へ圧着させている。また弁体8には軸心方向の細孔8d,および背面と小径部外周との連通孔8eが穿つてある。」(1頁右欄2〜19行)

【5】対比・判断
(1)本件第1発明
(1-1)本件第1発明と引用発明とを対比すると、引用発明記載の「油圧緩衝器」、「圧力室」、「可変絞り」、「油タンク」、及び「逆止弁」は、本件第1発明の「高減衰装置」、「油圧室」、「調圧弁」、「アキュムレーター」、及び「チェック弁」にそれぞれ相当し、引用発明の「配管プラント等の各種構築物」も、本件第1発明の「(架構と耐震要素を有する)構造物」あるいは「制震構造物」も、ともに「構築物」といえるから、両者は、
「シリンダー本体と、シリンダー本体内を移動するピストンと、前記シリンダー本体の一端から出入するピストンロッドと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる流路と、前記流路に設けられた調圧弁と、前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーターと、前記バイパスの前記油圧室のそれぞれと前記アキュムレーターとの間に設けられ、前記油圧室からの油の流出を阻止するための一対のチェック弁と、前記バイパスに前記各チェック弁と並列に設けたオリフィスと、からなる構築物用高減衰装置。」である点で一致し、以下の点で相違している。
相違点1:「構築物」が、本件第1発明では「(架構と耐震要素を有する)構造物」あるいは「制震構造物」であり、高減衰装置のシリンダー本体とピストンロッドがその構造物の架構と耐震要素とに連結されるものであるのに対し、引用発明では「配管プラント等の各種構築物」であり、高減衰装置のシリンダー本体とピストンロッドがどのように取付けられるのか明らかでない点
相違点2:本件第1発明では「両油圧室を連通する流路」を「複数」設け、該「流路」の「調圧弁」に「ポペット弁」を採用したのに対し、引用発明では上記「流路」が「複数」設けられるものかどうか不明であり、「流路」の「調圧弁」に「可変絞り」を採用した点
相違点3:「高減衰装置」が、本件第1発明では「減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、c3≦c≦c1となるように設定」されているのに対し、引用発明では不明な点
(1-2)上記相違点について検討する。
<相違点1について>
高減衰装置のシリンダー本体とピストンロッドとを構造物の架構と耐震要素とに連結して制震構造物とすることは、甲第1号証などにみられるとおり古くから行われている周知慣用技術にすぎず、本件第1発明が、引用発明のような高減衰装置を制震構造物に用いた点には何等の困難性も認められない。被請求人は、答弁書において、配管プラント等の各種構築物を対象とする引用発明の油圧緩衝器は配管そのものの振動(流体等の流れによる配管の振動)抑制を対象としているのであり、本件第1(〜3)発明のように地震時の構造物の制震を目的としたものではなく、構造物における制震のために使用することの示唆もなく、あり得ないことである旨の主張をする。しかし、油圧を利用した防振・緩衝装置が様々な機械要素や建築構造物を含む構築物等、各種産業分野に応用されていることは、例えば、甲第4号証の2などにみられるように、当業者に広く知られた事項であり、また、引用発明のような高減衰装置を制震構造物に利用することを阻害する特段の理由も認められないから、被請求人の上記主張には首肯できない。
<相違点2について>
両油圧室を連通する流路を複数設けることは甲第3号証の2などにみられるとおり周知慣用技術にすぎず、また、調圧弁としてポペット弁は甲第4号証などにみられるとおり周知慣用技術にすぎず、本件第1発明が、上記相違点2に摘記した構成を採用した点に格別の技術的意義は認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計的事項にすぎない。また、本件第1発明が、ピストンがシリンダー内を往復動するものであり、調圧弁としていわゆる一方向弁であるポペット弁を採用した以上、ピストンに少なくとも一対(すなわち「複数」)の流路を設けることは必然の構成でもある。
<相違点3について>
一般に、制震構造物を設計する際に、地震や風の力による構造物の振動についてコンピュータシミュレーション等により解析し、本件第1発明のような高減衰装置を採用する場合には最適な振動抑制効果が発現されるように、その減衰係数cを設定することは、構造設計者(当業者)が当然行うことにすぎないから、上記相違点3に摘記した本件第1発明の減衰係数cの設定範囲は、当業者が適宜構造解析などにより容易に得ることができるものにすぎない。また、甲第1号証に記載されたオイルダンパーの減衰係数も最適な振動抑制効果が発現されるよう設定させていることが当業者に明らかであり、その減衰係数についての明確な記載はないが、本件第1発明における減衰係数の設定範囲と実質的な差異がほとんどないことも当業者に明らかな事項である。
そして、本件第1発明が、上記相違点1〜3に摘記した構成を採用したことによる作用効果にも格別のものがあるとはいえず、当業者が予期し得る程度のものである。
したがって、本件第1発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証、甲第3号証の2、甲第4号証などにみられる周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件第2発明
(2-1)本件第1発明を引用する本件第2発明と引用発明とを対比すると、その一致点は、上記本件第1発明と引用発明との対比において記載した一致点と同じであり、上記相違点1〜3,及び次の点で相違している。
相違点4:「オリフィス」を、本件第2発明では「チェック弁を構成する弁体を貫通して設け」てあるのに対して、引用発明では不明な点
(2-2)上記相違点について検討する。
<相違点1〜3について>
上記【5】(1-2)で検討したとおりである。
<相違点4について>
オリフィスをチェック弁を構成する弁体を貫通して設けることは甲第5号証などにみられるとおり周知慣用技術にすぎず、本件第2発明が、上記相違点4に摘記した構成を採用した点に格別の技術的意義は認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計的事項にすぎない。
そして、本件第2発明が、上記相違点1〜4に摘記した構成を採用したことによる作用効果にも格別のものがあるとはいえず、当業者が予期し得る程度のものである。
したがって、本件第2発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証、甲第3号証の2、甲第4号証、甲第5号証などにみられる周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件第3発明
(3-1)本件第1発明を引用する本件第3発明と引用発明とを対比すると、その一致点は、上記本件第1発明と引用発明との対比において記載した一致点と同じであり、上記相違点1〜3,及び次の点で相違している。
相違点5:本件第3発明では「アキュムレータ」を「ピストン型」とし、その「アキュムレータに油量監視装置を設け」てあるのに対し、引用発明では「アキュムレータ」が「油タンク」であり、「油量監視装置」を有していない点
(3-2)上記相違点について検討する。
<相違点1〜3について>
上記【5】(1-2)で検討したとおりである。
<相違点5について>
アキュムレータをピストン型とし、そのアキュムレータに油量監視装置を設けることは、甲第3号証の2(「流体レベル表示器44」が「油量監視装置」相当する。)などにみられるとおり周知慣用技術にすぎず、本件第3発明が、上記相違点5に摘記した構成を採用した点に格別の技術的意義は認められず、当業者が必要に応じ適宜なし得る設計的事項にすぎない。
そして、本件第3発明が、上記相違点1〜3,5に摘記した構成を採用したことによる作用効果にも格別のものがあるとはいえず、当業者が予期し得る程度のものである。
したがって、本件第3発明は、甲第2号証に記載された発明、及び甲第1号証、甲第3号証の2、甲第4号証などにみられる周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【6】まとめ
以上のとおりであるから、本件の請求項1〜3に係る発明の特許は、いずれも特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
制震構造物用高減衰装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 構造物の架構または耐震要素に連結されるシリンダー本体と、前記シリンダー本体内を移動するピストンと、前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に連結されるピストンロッドと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路と、前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁と、前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーターと、前記バイパスの前記油圧室のそれぞれと前記アキュムレーターとの間に設けられ、前記油圧室からの油の流出を阻止するための一対のチェック弁と、前記バイパスに前記各チェック弁と並列に設けたオリフィスとからなる高減衰装置であって、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、
c3≦c≦c1
となるように設定したことを特徴とする制震構造物用高減衰装置。
【請求項2】 前記オリフィスは前記チェック弁を構成する弁体を貫通して設けられている請求項1記載の制震構造物用高減衰装置。
【請求項3】 前記アキュムレーターをピストン型として、前記アキュムレーターに油量監視装置を設けてある請求項1記載の制震構造物用高減衰装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は地震等の振動外力に対する構造物の応答について、高い減衰性を与え、その振動を低減するための高減衰装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
出願人は構造物の柱梁架構内に、ブレースや壁等の形で可変剛性要素(耐震要素)を組み込み、可変剛性要素自体の剛性、あるいは架構本体と可変剛性要素との連結状態を可変とし、地震や風等の振動外力に対し、その特性をコンピューターにより解析して、非共振となるよう構造物の剛性を変化させて構造物の安全を図る能動型制震システム、可変剛性構造等を種々開発している(例えば特開昭62-268479号、特開昭63-114770号、特開昭63-114771号等)。
【0003】
また、装置の減衰係数を可変とした油圧式の制震装置を用い、構造物の非共振性や減衰性を考慮した種々の能動型制震システムを提案している(例えば特開平2-209568〜71号等)。
【0004】
さらに、これらの能動型制震システムに利用可能な制震装置として、例えば特願平2-37992号のシリンダーロック装置や、特願平2-42078号の制震構造物用可変減衰装置等がある。シリンダーロック装置の基本原理は、シリンダー本体内の両ロッド形ピストンの両側に油圧室を設け、両油圧室内の圧油を切換弁により閉止し、または流動させることにより、前記ピストンを固定し、または移動自在とするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の能動型制震システムは、主として地震動等の卓越周期と、構造物の固有周期(通常、1次の固有周期が問題となる場合が多い)との関係に着目し、卓越周期に対し、構造物の固有周期を能動的にずらすことにより、共振現象を避け、応答量の低減を図っている。
【0006】
しかし、特に地震動等の場合、非定常振動であることから、例えば卓越周期がはっきりしない場合や卓越周期が複数ある場合等、必ずしも最適な制御とならない場合も考えられる。
【0007】
また、能動型制震システムの場合、制御用のコンピューターの他、各種センサーを用いるため、何らかの異常があった場合に対し、種々の安全維持機構を必要とする等、制御機構が複雑となり、コスト面での問題も考えられる。その他、制御の遅れにより十分な効果を発揮するまで時間を要するような場合も考えられる。
【0008】
本発明の高減衰装置は構造物に用いることにより、コンピュータープログラム等による制御システムを必要としない受動型の制震を可能とするものであり、柱梁架構内に設置可能なコンパクトな構造で、適切に設置することにより、構造物に高い減衰機能を持たせ、地震や風等の外乱による構造物の揺れを低減するとともに、快適な居住空間を実現することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の高減衰装置は上述したシリンダーロック装置と同様、構造物の柱梁架構内に設置されるシリンダー形式のダンパー装置であり、例えばシリンダー本体を架構の梁に連結し、シリンダー本体より出入するピストンロッドをブレースまたは耐震壁等の耐震要素側に連結する。構造物に地震等の振動外力が作用した場合、架構と耐震要素間の相対変位に対し、高減衰装置がその減衰係数に応じた抵抗力を与え、構造物の振動を減衰させる。
【0010】
架構または耐震要素に対するシリンダー本体およびロッドの連結関係は上述した場合の逆であってもよく、また架構内の耐震要素間に設置し、耐震要素どうしを連結する形でもよい。
【0011】
また、本発明の高減衰装置はコンパクトな装置で、例えば保持力200t、減衰係数25〜50t/kineといった高い減衰係数を目指したもので、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、c3≦c≦c1となるように設定し、このような条件を実現するため下記の構成要素を備えている。
▲1▼ 構造物の架構または耐震要素に固定されるシリンダー本体
▲2▼ 前記シリンダー本体内を移動するピストン
▲3▼ 前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に固定されるピストンロッド
▲4▼ 前記ピストンの両側に形成された油圧室
▲5▼ 前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路
▲6▼ 前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁
▲7▼ 前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーター
▲8▼ アキュムレーターからそれぞれの油圧室へ向かう油のみ流すための一対のチェック弁
▲9▼ 前記各チェック弁と並列に設けられ、油圧室の圧ごもりを解消するためのオリフィス。
【0012】
調圧弁をピストン内に形成した流路に設けることで、シリンダー外部への油漏れが防止され、高減衰性を得るためのシール性が確保される。
【0013】
また、調圧弁としてポペット弁を使用したことで、流体抵抗を乱流状態として温度に依存しない減衰特性が実現される。
【0014】
アキュムレーターは主として負圧時に発生する気泡によるガタの防止および温度変化(火災時を含む)による油の伸縮に対応するためのものであり、これにより安定性、安全性が確保される。
【0015】
また、チェック弁と並列に設けたオリフィスは、地震時等にシリンダー本体とロッドが繰り返し相対変位(振動)している際の油圧室における圧ごもりを解消するとともに、装置の減衰特性を線形化する目的で設けられている。
【0016】
【実施例】
図1は本発明の高減衰装置10の概要を示したもので、シリンダー11内に両ロッド形式のピストン12が組み込まれている。ただし、ピストンロッドは一方向のみシリンダー11から突出し、その突出する側のロッド12aおよびシリンダー11の反対側に、耐震要素または柱梁架構と連結するための取付部15、16を設けている。
【0017】
高減衰、高剛性を確保するための条件としては、まずピストン12移動方向と反対側の油圧室14を負圧としないことが必要で、そのためピストン12に調圧弁17a、17bを設け、移動油量が直接的に反対側の油圧室14へ流れる構造としている。
【0018】
また、作動中の油の圧縮を考慮して不足油量を補償する必要があるので、補給用のアキュムレーター18が必要となり、バイパス19にはチェック弁20a、20bを設けている。さらに停止すると、油が元の状態に戻る(膨張)ので、補償された油をアキュムレーター18に戻す必要があり、チェック弁20a、20bと並列にオリフィス(絞り)21a、21bを設けている。
【0019】
図2は本発明の高減衰装置10の具体的な実施例を示したもので、図3はその調圧弁17部分の詳細を示したものである。なお、図2ではアキュムレーター18部分を省略して示している。
【0020】
基本的な構造は前述した通りであり、外部への油漏れ防止および高減衰を得るためのシール性を確保する目的で、調圧弁17a、17bがピストン12内に設置されている。
【0021】
また、調圧弁17a、17bとしては、円錐形のポペット弁等を使用し、流体抵抗を乱流状態として、温度に依存しない減衰特性を実現している。調圧弁17a、17bに用いるポペット弁としては、図3のような円錐弁の他、図4(a),(b)に示すような所定のスリット25を形成した比例弁を用いることもできる。
【0022】
この他、耐久性および信頼性の向上のため、ピストンシール23を多段金属シールとし、固定シール22を2段シールとしている。また、メンテナンスに関してはロッドシール24を2段シールとするとともに、外側のシール24aをカートリッジ式として取り換え可能としている。このように、各部のシール性、精度を増すことにより、高い減衰係数が可能となる。
【0023】
また、取付部15については3方向回転自由なクレビスを用いている。
【0024】
図5は高減衰装置10の本体側面に取り付けられたバイパス19およびアキュムレーター18の一例を示したもので、油圧室14aとアキュムレーター18との間に油圧室14a側へ向かう油の流れを阻止するためのチェック弁20aを設け、油圧室14bとアキュムレーター18との間に油圧室14b側へ向かう油の流れを阻止するためのチェック弁20bを設けている。また、各チェック弁20a、20b部分にはこれらを貫通する(回路図的には並列となる)オリフィス21a、21bが設けられ、高減衰装置10の減衰特性を線形化するとともに、油圧室14a、14b内での圧ごもりを解消する。
【0025】
また、アキュムレーター18をピストン型とすることで、窒素ガスの使用を避けることができ、また図5のような油量監視装置を付けることで容易に内部油量が監視できる。すなわち、油量監視棒26の突出量L=L0±ΔLについて、ΔLが温度、漏れ等による許容変動値以下であることを監視する。
【0026】
次に、本発明の高減衰装置10の適用例として、鉄骨ラーメン構造の建家を対象とした高減衰構造物の設計方法について説明する。
【0027】
図6は本発明の高減衰装置を用いた高減衰構造物1を概念的に示したもので、図7の一般構造物1’に対して、柱梁架構を約半分とし、局所的に耐震要素としてのブレース4と高減衰装置10を設置して、その部分で建家の振動エネルギーを吸収する。
【0028】
図8は一層分を振動モデルとして表したもので、図中cは装置の減衰係数、kFは柱梁架構の剛性、kVはブレースの剛性である。
【0029】
上記モデルによる多層建物の複素固有値を求め、下式(1)により構造体の各次モードごとの減衰定数を算定する。
hi=-Re(λi)/|λi| … (1)
ただし、
λi :i次複素固有値
hi :i次減衰定数
Re(λi):i次複素固有値の実数部。
【0030】
図9は複素固有値より求めた架構の減衰定数と、各層の高減衰装置の減衰係数c(t/kine)の関係を1〜3次のモードについて示したもので、図9において各次の減衰定数h1、h2、h3が10〜40%を示す範囲aに、高減衰装置の減衰係数cを設定すれば、十分な応答低減効果が得られる。この範囲aとしては、3次減衰定数h3のピークと1次減衰定数h1のピークの間が適当である。すなわち、3次のモードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次のモードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1とを求め、前記高減衰装置の減衰係数cがc3≦c≦c1となるように設定すればよい。
【0031】
減衰係数cがc3より小さいと、架構の変形が急激に大きくなり、またc1より大きいと、振動抑制効果としてはあまり差がないものの、高減衰装置の必要耐力が大きくなる。
【0032】
図10は地震応答スペクトルでみた応答低減効果を示したものである。一般構造物の固有周期T1に対して、柱梁架構を約半分とすることで、固有周期が伸び(T2)、スペクトルそのものが低下する。それとともに、減衰効果が2%程度から10〜40%に増加することで、さらに応答スペクトルが低下し、固有周期がわずかに短くなる(T3)。このとき、通常問題となる変形の増加は減衰効果が増加することで抑制できる。
【0033】
一例として24階建て、建物の高さが98.1m、基準階高さ3.90m、基準階床面積1269m2程度の鉄骨ラーメン構造の高層建物で、入力地震動の最大速度振幅を50kineレベルに想定した場合、必要な高減衰装置は1層に4台として、保持力200t、減衰係数25〜50t/kine程度となる。なお、高減衰装置は各階に設けてもよいが、各次の振動モードの節にあたる階のみとして、効率化を図ることも可能である。
【0034】
【発明の効果】
▲1▼ 油圧シリンダー形式の簡単な機構で、かつコンパクトな装置で高減衰性能を実現しており、構造物内への適用が容易である。
【0035】
▲2▼ 調圧弁をピストン内部に設けた構造であり、シール性を確保することで、性能安定性および信頼性の高い装置が作れる。
【0036】
▲3▼ 調圧弁としてポペット弁を用いることにより、温度変化による性能変動の少ない装置が作れる。
【0037】
▲4▼ 本発明の装置を構造物に適用することにより、受動型の高減衰構造物が実現でき、高い制震効果が得られる。これにより地震、風等の外乱による揺れを大幅に低減でき、建物の構造安全性を高めるとともに、快適な居住空間を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高減衰装置の構造の概要を示すモデル図である。
【図2】 本発明の高減衰装置の一実施例を示す断面図である。
【図3】 調圧弁部分の詳細を示す断面図である。
【図4】 調圧弁の他の例を示したもので、(a)は正面図、(b)は側面図(一部断面)である。
【図5】 バイパスおよびアキュムレーター部分の構造の一例を示す断面図である。
【図6】 高減衰構造物を概念的に示した立面図である。
【図7】 比較例としての一般構造物を概念的に示した立面図である。
【図8】 高減衰構造物の一層分の振動モデル図である。
【図9】 複素固有値より求めた架構の減衰定数と、高減衰装置の減衰係数関係を1〜3次のモードについて示したグラフである。
【図10】 地震応答スペクトルでみた応答低減効果を示すグラフである。
【符号の説明】
1…高減衰構造物、2…柱、3…梁、4…ブレース、10…高減衰装置、11…シリンダー、12…ピストン、14…油圧室、15、16…取付部、17…調圧弁、18…アキュムレーター、19…バイパス、20…チェック弁、21…オリフィス、22…固定シール、23…ピストンシール、24…ロッドシール、25…スリット、26…内部油量監視棒
 
訂正の要旨 訂正事項
▲1▼ 特許第2528563号明細書における特許請求の範囲を下記のとおり訂正する。
「 【請求項1】 構造物の架構または耐震要素に連結されるシリンダー本体と、前記シリンダー本体内を移動するピストンと、前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に連結されるピストンロッドと、前記ピストンの両側に形成された油圧室と、前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路と、前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁と、前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーターと、前記バイパスの前記油圧室のそれぞれと前記アキュムレーターとの間に設けられ、前記油圧室からの油の流出を阻止するための一対のチェック弁と、前記バイパスに前記各チェック弁と並列に設けたオリフィスとからなる高減衰装置であって、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、
c3≦c≦c1
となるように設定したことを特徴とする制震構造物用高減衰装置。
【請求項2】 前記オリフィスは前記チェック弁を構成する弁体を貫通して設けられている請求項1記載の制震構造物用高減衰装置。
【請求項3】 前記アキュムレーターをピストン型として、前記アキュムレーターに油量監視装置を設けてある請求項1記載の制震構造物用高減衰装置。」
▲2▼ 明細書の段落【0011】(特許掲載公報第2頁第4欄第9〜28行)の記載を下記のとおり訂正する。
「また、本発明の高減衰装置はコンパクトな装置で、例えば保持力200t、減衰係数25〜50t/kineといった高い減衰係数を目指したもので、減衰係数cを、架構の3次の振動モードに対する減衰定数h3の最大値を与える減衰係数c3と、1次の振動モードに対する減衰定数h1の最大値を与える減衰係数c1に対し、c3≦c≦c1となるように設定し、このような条件を実現するため下記の構成要素を備えている。
▲1▼ 構造物の架構または耐震要素に固定されるシリンダー本体
▲2▼ 前記シリンダー本体内を移動するピストン
▲3▼ 前記シリンダー本体の一端から出入し、前記シリンダー本体が固定された架構または耐震要素と対向する架構または耐震要素に固定されるピストンロッド
▲4▼ 前記ピストンの両側に形成された油圧室
▲5▼ 前記ピストンを貫通して前記両油圧室を連通させる複数の流路
▲6▼ 前記流路に設けられた調圧弁としてのポペット弁
▲7▼ 前記両油圧室を連結するバイパスに設けたアキュムレーター
▲8▼ アキュムレーターからそれぞれの油圧室へ向かう油のみ流すための一対のチェック弁
▲9▼ 前記各チェック弁と並列に設けられ、油圧室の圧ごもりを解消するためのオリフィス。」
審理終結日 2002-06-19 
結審通知日 2002-06-24 
審決日 2002-07-05 
出願番号 特願平3-148371
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (E04H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡戸 正義  
特許庁審判長 山田 忠夫
特許庁審判官 鈴木 憲子
中田 誠
登録日 1996-06-14 
登録番号 特許第2528563号(P2528563)
発明の名称 制震構造物用高減衰装置  
代理人 久門 享  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 久門 知  
代理人 久門 知  
代理人 久門 享  
代理人 久門 知  
代理人 佐々木 定雄  
代理人 久門 享  

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