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審決分類 審判 査定不服 判示事項別分類コード:なし 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01F
管理番号 1069620
審判番号 不服2001-1998  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-07-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-14 
確定日 2002-12-11 
事件の表示 平成10年特許願第295839号「合成樹脂磁石用組成物」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月21日出願公開、特開平11-195518]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年1月11日の出願に係る特願平2-2591号の特許出願の一部を分割して新たな特許出願(特願平10-295839号)としたものであって、請求項1〜7に係る発明は、平成12年4月28日付け及び平成14年1月21日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜7に記載されたとおりのものと認められ、請求項1には、次のとおり記載されている。
「【請求項1】表面処理された磁性体粉末及びポリアミド樹脂からなる樹脂磁石組成物において、ポリアミド樹脂として数平均分子量が8,000〜10,500である1種類のポリアミド-6樹脂3〜40重量%と磁性体粉末97〜60重量%からなる合成樹脂磁石用組成物。」(以下、本願発明という。)
2.当審の拒絶の理由
当審において平成14年5月13日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願の請求項1〜7に係る発明は、本願出願前に頒布された刊行物1〜5に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3.刊行物に記載された事項
当審が拒絶の理由に引用した刊行物である特開平1-278560号公報(以下、引用刊行物1という。)には、以下の記載がされている。
「ナイロン及び磁性粉末に一般式
R1CONH(CH2)3Si(OR2)3 (I)
(式中、R1はアルキル基、アルコキシ基及びアミノ基から選ばれる基であり、R2はアルキル基である)で示されるアミン系シランカップリング剤を加えたことを特徴とするプラスチック磁石用組成物。」(特許請求の範囲)
「チタン系カップリング剤で磁性粉末を表面処理することが行われており」(2頁左上欄10〜11行)
「本発明で用いられるナイロンとしては、6-ナイロン・・・が挙げられるが、本発明においては6-ナイロン・・・が特に好ましい。」(2頁左下欄13〜18行)
「ナイロンの溶融粘度は、必要とされる機械的強度が得られる範囲で低いものが好ましく、形状はパウダー・・・良いが、磁性粉末と均一に混合しやすいという点でパウダーが好ましい。また磁性粉末としては、プラスチック磁石に通常用いられている磁性粉末がいずれも使用でき、例えば、永久磁石粉末としてはバリウムフェライト、ストロンチュウムフェライト、希土類コバルト、アルニコ等の粉末が挙げられる、磁性粉末の充填量としては85〜95重量%の範囲が好ましく」(2頁右下欄2〜14行)
「実施例1
式 NH2CONH(CH2)3Si(OC2H5)3で示されるアミン系シランカップリング剤(以下、化合物(A)という)をアルコールで希釈した後、これをストロンチウムフェライト(日本弁柄(株)製OP-71)に添加し、ヘンシェルミキサーで混合してフェライトを表面処理した。
110℃で90分乾燥して得た表面処理フェライトに12-ナイロン粉末(宇部興産(株)製P-3014U)を加えてヘンシェルミキサーで混合した。混合物は、フェライト88.5%、アミン系シランカップリング剤0.7%(フェライトに対して)、12-ナイロン残量からなる。」(3頁右下欄16行〜4頁左上欄9行)
「実施例7
12-ナイロンの代りに6-ナイロン(宇部興産(株)製P-1011F)を用いた以外は実施例1と同様にしてプラスチック磁石を得た。」(9頁左上欄1〜4行)
同じく引用した刊行物である高分子機械材料「ナイロン樹脂ガイドブック」第78〜80頁 編者、高分子学会高分子機械材料委員会(昭和39年7月5日初版1刷)共立出版株式会社発行(以下、引用刊行物2という。)には、
「ナイロンの品質は、通常、相対粘度で表現される・・・・・図4.2および4.3には、ηr、Mn、および溶融粘度μとK-値の関係を示した。」(第79頁第14行〜下から第4行)と記載され、ナイロン-6のηr(相対粘度)とMn(末端基定量)との関係(図4.2、第79頁)、及び、溶融粘度μ(poise)とηrの関係(図4.3、第80頁)が示されている。
同じく引用した刊行物である特開昭62-61303号公報(以下、引用刊行物3という。)には、以下の記載がされている。
「ポリアミド5〜30重量%と磁性体粉末70〜95重量%とリン酸メラニン0.1〜10重量%とからなる磁性体組成物。」(特許請求の範囲)
「本発明の組成物に使用されるポリアミドとしては、C6〜12のラクタム・・・がある。具体的には、ナイロン6・・・があげられる。
これらポリアミドの好ましい数平均分子量としては、8,000〜30,000のものがあげられる。数平均分子量が8,000より低いポリアミドでは衝撃に対する抵抗力がなく、流動性は良いものの機械的特性の保持がはかれない。又、数平均分子量が30,000をこえるポリアミドでは機械的な特性は充分に保持するものの磁性体粉末を配合した場合の流動性が悪くなり、成形性が困難となる。」(2頁左下欄2〜19行)
4.対比・判断
引用刊行物1に記載の発明において、ナイロン(ポリアミド樹脂に該当)として6-ナイロンを使用し、又、磁性体として表面処理した磁性体粉末を使用したプラスチック磁石用組成物が示され、磁性粉末の充填率としては85〜95重量%の範囲が好ましいことが示されているから、
本願発明と引用刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、「表面処理された磁性体粉末及びポリアミド樹脂からなる樹脂磁石用組成物において、ポリアミド樹脂として1種類のポリアミド-6樹脂と磁性体粉末からなる合成樹脂磁石用組成物」の点で同一であり、また、ポリアミド-6樹脂に含まれる磁性体粉末の含有量の値も重複しており、結局、次の点で相違している。
本願発明が、ポリアミド-6樹脂の数平均分子量を8,000〜10,500と限定しているのに対し、引用刊行物1に記載の発明においては、ポリアミド-6樹脂の数平均分子量について記載していない点。
この相違点について検討する。
引用刊行物3には、磁性体組成物において、ナイロン6を用い、その好ましい数平均分子量として8,000〜30,000のものが示され、数平均分子量について、数平均分子量が8,000より低いポリアミドでは衝撃に対する抵抗力がなく、流動性は良いものの機械的特性の保持がはかれないこと、又、数平均分子量が30,000をこえるポリアミドでは機械的な特性は充分に保持するものの磁性体粉末を配合した場合の流動性が悪くなり、成形性が困難となることが示されている。
また、引用刊行物1には、ナイロンの溶融粘度は、必要とされる機械的強度が得られる範囲で低いものが好ましいことも記載されている。
さらに、引用刊行物2には、ナイロンの品質は、通常、相対粘度で表現されること、図4.2および4.3には、ηr、Mn、および溶融粘度μとK-値の関係が示され、ナイロン-6のηr(相対粘度)とMn(末端基定量)との関係及び、溶融粘度μ(poise)とηrの関係が示され、この2つの図は、ナイロン-6の250℃における溶融粘度(poise)を測定することにより、ηr(相対粘度)の値を決定でき、その値ηrからMn(数平均分子量)を決定できること、すなわち、この2つの図は、溶融粘度μ(poise)が小さくなるに伴い、ηr(相対粘度)及びMn(数平均分子量)も小さくなることが示されている。そして、この引用刊行物2の記載を参照すると、引用刊行物1の前記「ナイロンの溶融粘度は、必要とされる機械的強度が得られる範囲で低いものが好ましく」との記載は『ナイロンの数平均分子量は、必要とされる機械的強度が得られる範囲で小さいものが好ましい』と理解できるのである。
そうすると、引用刊行物3に記載の「数平均分子量が8,000より低いポリアミドでは衝撃に対する抵抗力がなく、流動性は良いものの機械的特性の保持がはかれないこと、又、数平均分子量が30,000をこえるポリアミドでは機械的な特性は充分に保持するものの磁性体粉末を配合した場合の流動性が悪くなり、成形性が困難となる」との記載とともに、引用刊行物1に記載の「ナイロンの溶融粘度は、必要とされる機械的強度が得られる範囲で低いものが好ましい」との記載を併せ検討することにより、合成樹脂磁石用組成物のポリアミドとして数平均分子量が8,000〜10,500の範囲のポリアミドを採用することに格別の技術的困難性があったということはできない。
また、本願発明によって得られる効果も本願明細書の記載によっては、格別予想外のものであるとはいえない。
結局、本願発明は、上記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-20 
結審通知日 2002-10-01 
審決日 2002-10-15 
出願番号 特願平10-295839
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01F)
P 1 8・ - WZ (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 義三  
特許庁審判長 谷口 浩行
特許庁審判官 村上 騎見高
中島 次一
発明の名称 合成樹脂磁石用組成物  
代理人 青麻 昌二  
代理人 江藤 聡明  

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