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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01F |
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管理番号 | 1069843 |
審判番号 | 不服2001-9233 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-07-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-04 |
確定日 | 2002-12-25 |
事件の表示 | 平成10年特許願第293914号「飯米貯蔵庫」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 7月21日出願公開、特開平11-192017]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯、本願発明 本願は、平成3年2月6日に出願された特願平3-15104号の一部を、平成9年10月17日に特許法第44条第1項の規定により分割して新たな特許出願としたものである特願平9-285223号の一部を、平成10年10月15日に同じく分割して新たな特許出願としたものであって、その請求項1〜2に係る発明は、平成12年6月22日付けの手続補正書、および、平成13年7月3日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜2に記載された以下のとおりのものであるところ、当該請求項1に係る発明は以下のとおりのものである。(以下、「本願発明1」という。) 「【請求項1】約30kg重量の玄米を収容する玄米袋9を、小間隔おきに並べることのできる庫内幅と、各玄米袋9毎に外側から一袋毎積み降しできる庫内1の高さとに形成される庫内1容量を有する飯米貯蔵庫であって、該貯蔵庫の正面側長手方向を全面に亘って開口して扉口11を形成すると共に、この扉口11を閉鎖すべく縦軸回りに回動する扉2を設け、天井12部には庫内温度を5℃から15℃の領域内に維持する冷却機3を設け、この冷却機3は、数10時間に亘って連続作動し上記庫内温度範囲における所望の玄米品温に到達すべく設けてなる農家における飯米の貯蔵庫。」 2.引用文献記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由に引用された実公昭60-38859号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の記載が認められる。 (イ)「本考案は、ある程度低温を保ちながら米穀を収容し、且つ米穀を搬出する場合等に、米穀に露が付着しないようにすることができる米穀低温貯蔵庫に関するものである。米、麦等の米穀を貯蔵しておく場合、品質の劣化を防ぐ為に、ある程度低温を保っておくことが必要であるが、米穀を搬出する場合、或はドアの開閉により外気が米穀低温貯蔵庫内に侵入した場合等に、米穀に露が付着する結露現象が発生することがある。これは、米穀が外気の露点温度以下に冷却されている場合に生じるものであり、このような結露現象が生じると、米穀の品質が劣化する為、その改善が要望されている。本考案は、前述の如き要望を満足させたものであり、その目的は、米穀低温貯蔵庫に収容されている米穀を搬出する場合等に結露が発生しないようにすると共に、米穀低温貯蔵庫内の温度をできる限り低くすることにより、米穀の品質劣化を防止することにある。以下実施例について詳細に説明する。第1図は本考案の実施例の斜視図であり、1は米穀3をある程度の低温で収容する米穀低温貯蔵庫、2は開閉可能なドア、4は外気の絶対温度を検出し、外気の露点温度を示す露点温度信号を出力する湿度検出部、5は米穀低温貯蔵庫1内の温度を検出して温度信号を出力する温度検出部、6は湿度検出部4からの露点温度信号と温度検出部5からの温度信号とに基づいて、冷却器7の動作を制御する制御部である。」(1頁1欄17行〜2欄22行)。 ここで、玄米も白米も貯蔵する米の状態として従来周知のものであるため、一般的な貯蔵用の米には、玄米も白米も含んでいるということができる。 さらに、引用文献の米穀低温貯蔵庫1は、第1図の記載からみて、米穀3を小間隔おきに並べることができる幅を有し、米穀3毎に外側から一袋毎積み降しできる高さとに形成される容量を有しているということができ、また、米穀低温貯蔵庫1の正面側長手方向を全面に亘って開口して扉口を形成しているということもできるから、上記(イ)の記載及び図面の記載からみて、引用文献には、次の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用文献の発明」という。) 「玄米を収容する米穀3を、小間隔おきに並べることのできる幅と、米穀3毎に外側から一袋毎積み降しできる高さとに形成される容量を有する米穀低温貯蔵庫1であって、該米穀低温貯蔵庫1の正面側長手方向を開口して扉口を形成すると共に、この扉口を閉鎖すべくドア2を設け、庫内温度を領域内に維持する冷却器7を設け、この冷却器7は、上記庫内温度範囲に到達すべく設けてなる米穀低温貯蔵庫1。」 3.本願発明1と引用文献の発明との対比 本願発明1と引用文献の発明とを対比すると、 引用文献の発明における、 「米穀3」、「米穀低温貯蔵庫1」、「ドア2」、および、「冷却器7」は、 本願発明1における、 「玄米袋9」、「飯米貯蔵庫」、「扉2」、および、「冷却機3」にそれぞれ対応している。 したがって、両者は、 「玄米を収容する玄米袋を、小間隔おきに並べることのできる庫内幅と、各玄米袋毎に外側から一袋毎積み降しできる庫内の高さとに形成される庫内容量を有する飯米貯蔵庫であって、該貯蔵庫の正面側長手方向を開口して扉口を形成すると共に、この扉口を閉鎖すべく扉を設け、庫内温度を領域内に維持する冷却機を設け、この冷却機は、上記庫内温度範囲に到達すべく設けてなる飯米の貯蔵庫。」 で一致するが、下記点で相違する。 (イ)本願発明1の飯米貯蔵庫は農家用で、玄米袋は約30kg重量の玄米を収容しているが、引用文献の発明は、この点について記載がない点。 (ロ)本願発明1の飯米貯蔵庫は、縦軸回りに回動する扉を設けているのに対して、引用文献のドア2は開閉状態が不明であり、また、全面に亘って開口しているのか記載されていない点。 (ハ)本願発明1の飯米貯蔵庫は数10時間に亘って連続作動し所望の玄米品温に到達すべく庫内温度を5℃から15℃の領域内に維持する冷却機を天井12部に設けてなるのに対して、引用文献の発明はこのようになっていない点で相違する。 4.当審の判断 (i)上記相違点(イ)について検討する。 引用文献の発明では、飯米貯蔵庫の用途も玄米袋の重量も記載されていないが、飯米貯蔵庫の用途を農家用に限定する点に発明の構成上、格別の技術的意味は認められず、また、約30Kgの玄米袋を用いることは従来周知のことにすぎない。(特開昭53-149529号公報、特開昭60-147251号公報参照)。 (ii)上記相違点(ロ)について検討する。 縦軸回りに回動する扉は例示するまでもなく周知であり、引用文献に記載のドア2を周知な回動する扉に換えることは当業者が適宜なし得ることにすぎない。また、引用文献の発明も玄米袋を出し入れする以上、十分な開口を有しているものであるといえ、さらに、縦軸回りに回動する扉を設ける構造を採用すれば周知の冷蔵庫のように全面に亘って開口する構造となるものであるから、引用文献に記載のドア2を周知な回動する扉に換えるに際して全面に亘って開口する構造を採用することも当業者が適宜なし得ることにすぎない。 (iii)上記相違点(ハ)について検討する。 冷蔵庫等において、天井部に冷却機を設ける点は従来周知の構成であって、冷却機をどこに設けるかは単なる設計変更にすぎず、また、米の貯蔵温度を5℃から15℃の最適な領域内に維持し、米の品質低下を防止する技術も従来周知にすぎない(特公昭50-38574号公報参照)。 ここで、本願発明1には数10時間かけて所望の玄米品温に到達するための装置発明としての格別の構成はなく、単に動作としてのみ記載されている構成にすぎない。 しかも、米を冷却する際に急冷するのではなく、約三昼夜(数10時間)をかけて冷却すると品質の低下をまねくことがないことは、従来周知の事実にすぎない(実願昭55-30123号(実開昭56-131855号)のマイクロフィルム参照)。 したがって、本願発明1の構成は、当業者が、引用文献の発明および従来周知の技術から容易に想到し得たものにすぎず、また、本願発明1の効果は、引用文献に記載された発明および従来周知の技術から、当業者が予測し得た程度のものにすぎない。 よって、本願発明1は、引用文献の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.結論 以上のとおり、本願発明1は引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-09-09 |
結審通知日 | 2002-10-01 |
審決日 | 2002-10-17 |
出願番号 | 特願平10-293914 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A01F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山田 昭次 |
特許庁審判長 |
中村 和夫 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 渡部 葉子 |
発明の名称 | 飯米貯蔵庫 |