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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 B21B
管理番号 1069848
審判番号 不服2000-19340  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-07 
確定日 2003-01-08 
事件の表示 平成7年特許願第18791号「移動鋼板の接合方法および装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成8年7月30日出願公開、特開平8-192207、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年1月12日の出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成12年10月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】移動する鋼板の端面を接合するに際し、走行台車により移動鋼板と同調しつつ移動する固定側クランプ装置により、先行鋼板後端部を上下から挟んで先行鋼板後端部の形状不良部を矯正しつつクランプ状態で待機せしめて置き、次いで前記走行台車上で前後進する移動側クランプ装置により、後行鋼板先端部を上下から挟んで後行鋼板先端部の形状不良部を矯正しつつクランプ状態で前進させて先行鋼板後端部端面に後行鋼板先端部端面を押し付け、この状態を保持しつつレーザ溶接機を鋼板の幅方向に移動させて、先行鋼板の後端と後行鋼板の先端との接合を行うことを特徴とする移動鋼板の接合方法。」(以下、「本願発明1」という。)
「【請求項2】2台のレーザ溶接機でほぼ同時に、鋼板を幅方向の側辺部と中央部から同一方向に溶接を開始することを特徴とする請求項1記載の移動鋼板の接合方法。」(以下、「本願発明2」という。)
「【請求項3】移動する鋼板の端面を接合する装置において、鋼板移動方向に前後進できる機能を有した走行台車上に設けられ、先行鋼板後端部を上下から挟んで先行鋼板後端部の形状不良部を矯正しつつクランプする固定側クランプ装置と、前記走行台車上に設けた前後進機構を介して設けられ、後行鋼板先端部を上下から挟んで後行鋼板先端部の形状不良部を矯正しつつクランプする移動側クランプ装置と、クランプされた鋼板の先・後行鋼板の端面押し付け部に沿って移動して溶接するレーザ溶接装置からなることを特徴とする移動鋼板の接合装置。」(以下、「本願発明3」という。)
「【請求項4】複数台のレーザ溶接機を有したことを特徴とする請求項3記載の移動鋼板の接合装置。」(以下、「本願発明4」という。)

2.原査定の概要
原査定の拒絶理由は、本願請求項1及び3に係る発明は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に出願公開がされた特願平6-258353号(特開平8-117812号公報参照)の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「引用例1」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない、というものである。
その際、特開平3-114686号公報(以下、「引用例2」という。)、国際公開第94/16838号パンフレット(以下、「引用例3」という。)及び特開平5-237670号公報(特開平5-237670号公報は特開平5-23707号公報の誤記と認められるため、以下、特開平5-23707号公報を「引用例4」という。)を示し、移動する鋼板の端面を接合する手段として、クランプされた鋼板の端面押し付け部に沿って移動するレーザ溶接機で溶接すること、及び、移動する鋼板の端面を接合する装置として、一つの走行台車に固定側クランプ装置、移動側クランプ装置を設けた構成のものは本出願前周知であることとしている。

3.引用例記載の発明
原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された引用例1には次の事項が記載されている。
(1-a)「粗圧延を施した先行鋼片の後端部とこの先行鋼片に引き続く後行鋼片の先端部とをそれぞれ切断したのち、各鋼片をクランプによる挟圧支持下に位置決めして両鋼片の圧延方向端部を加熱溶融し、相互に押圧して突き合わせ接合するに当たり、各鋼片をクランプにて挟圧支持するに先立ち、該クランプにて先行鋼片および後行鋼片の各端部の反りを矯正する平坦化処理を施すことを特徴とする熱間圧延における鋼片の接合方法。」(請求項1)
(1-b)「図1は、本発明の実施に用いて好適な熱間圧延設備の一例を模式的に示したものである。図中の番号1は、後述する走間接合装置5を経て先端が仕上げ圧延機にて圧延される段階にある先行鋼片、2は、先行鋼片1に続いて搬送される, 粗圧延機RおよびコイルボックスCを経た後行鋼片、・・・5は、鋼片に同期して移動する仕組みの走間接合装置である。この走間接合装置5は、誘導加熱用コイル5aとクランプ5b,5c を備え鋼片の各端部を挟圧支持した状態で加熱を行うとともに相互に押圧して接合する装置である。」(【0009】;公報における第2欄第46行〜第3欄第9行参照)
(1-c)「本発明においては、図4(a)に示すように、先行鋼片1の後端部がクランプ5bの直下に到達すると同時に該クランプ5bを作動させて鋼片端部の反りを矯正し、次いで、図4(b) に示すように位置決めのためにクランプ5cにより挟圧支持する一方、後行鋼片2についてはその先端部がクランプ5bに到達したならば、図4(c) に示すように、該クランプ5bを作動させて反りを矯正し、次いで所定の位置で挟圧支持する」(【0011】;公報における第3欄第31〜38行参照)
(1-d)本発明を実施するのに適した設備の構成を示す【図1】。本発明に従い鋼片を接合する場合の要領を示した【図4】。
原査定で引用された引用例2には次の事項が記載されている。
(2-a)「先行鋼帯ならびに後行鋼帯の対向端部を切断後、これらの切断面を突き合わせ面として突き合わせて、突き合わせ開先を形成し、その後、この突き合わせ開先に沿ってレーザ溶接する鋼帯のレーザ突き合わせ溶接装置において、前記先行鋼帯の切断部両端の耳部をクランプする先行クランプ装置と、前記後行鋼帯の切断部両端の耳部をクランプする後行クランプ装置とを設け・・・」(請求項3)
原査定で引用された引用例3には次の事項が記載されている。
(3-a)「熱間圧延装置の圧延機の入側で、先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部とを突合わせて・・・該突合わせ部を、レーザないしプラズマを用いて溶融溶接する」(請求項1)
(3-b)「圧延材の突合わせ方法は、・・・先行圧延材の後端部と後行圧延材の先端部をそれぞれ板上下面をクランプするクランパー」(請求項4)
原査定で引用された引用例4には次の事項が記載されている。
(4-a)「接続機台車に設けられて前記鋼材をクランプする2組のクランプ手段と、前記接続機台車に取付けられ且つ該2組のクランプ手段の内の一方を前記鋼材の搬送方向とほぼ平行して移動して先行する鋼材と後続する鋼材とを突合わせる移動手段とを有することを特徴とする鋼材の走間接合用突合わせ装置」(請求項1)

4.当審の対比・判断
本願発明1と引用例1記載の発明とを対比する。
引用例1記載の発明における「鋼片」は熱間圧延における鋼片であるから、本願発明における「移動鋼板」に他ならない。また、引用例1の【図1】における5は、摘記事項(1-b)に「5は、鋼片に同期して移動する仕組みの走間接合装置である。この走間接合装置5は、誘導加熱用コイル5aとクランプ5b,5cを備え鋼片の各端部を挟圧支持した状態で加熱を行うとともに相互に押圧して接合する装置である」と記載されているとおり、移動鋼板と同調しつつ移動する二つのクランプ装置を設けた走行台車である。
してみると、摘記事項(1-a)及び(1-b)より、両者は、「移動する鋼板の端面を接合するに際し、走行台車により移動鋼板と同調しつつ移動するクランプ装置により、先行鋼板後端部を上下から挟んで先行鋼板後端部の形状不良部を矯正すること、当該先行鋼板後端部をクランプ状態で待機せしめて置き、次いで前記走行台車のクランプ装置により、後行鋼板先端部を上下から挟んで後行鋼板先端部の形状不良部を矯正すること、及び先行鋼板の後端と後行鋼板の先端との接合を行う移動鋼板の接合方法」で一致しているが、引用例1には(1)固定側クランプ装置により先行鋼板後端部を上下から挟んで先行鋼板後端部の形状不良部を矯正しつつクランプ状態で待機せしめる点、(2)走行台車上で前後進する移動側クランプ装置により後行鋼板先端部を上下から挟んで後行鋼板先端部の形状不良部を矯正しつつクランプ状態で前進させて先行鋼板後端部端面に後行鋼板先端部端面を押し付ける点、(3)レーザ溶接機を鋼板の幅方向に移動させて先行鋼板の後端と後行鋼板の先端との接合を行う点が記載されていないことで両者は一応相違する。
上記(1)〜(3)の相違点について検討する。
引用例1の【図1】及び【図4】より、引用例1記載の発明においては二つのクランプ装置が走行台車上で固定されていることは明らかであり、また摘記事項(1-c)の記載を参酌するに、引用例1記載の発明では、先行鋼板後端部及び後行鋼板先端部を矯正することと、当該部分をクランプすることとは別行程であることも明らかである。本願発明1においては、上記(1)及び(2)の構成によって鋼板部の形状不良部の矯正がクランプ時に行うことができると同時に、高精度の接合ができるというものである。してみれば、(1)及び(2)については実質的な相違点であり、当該構成は引用例2〜4に記載されている本出願時の技術常識を参酌しても導き出せるものではない。
よって、本願発明1は、上記(3)の相違点について検討するまでもなく、引用例1に記載された発明とは実質的な相違点があるものであるから、引用例1に記載された発明と同一ではない。

本願発明3と引用例1記載の発明とを対比すると、上記本願発明1との対比と同様、両者は、「移動する鋼板の端面を接合する装置において、鋼板移動方向に前後進できる機能を有した走行台車上に設けられ、先行鋼板後端部を上下から挟んで先行鋼板後端部の形状不良部を矯正するクランプ装置と、後行鋼板先端部を上下から挟んで後行鋼板先端部の形状不良部を矯正するクランプ装置と、クランプされた鋼板の先・後行鋼板の端面押し付け部を溶接する移動鋼板の接合装置」である点で一致しているが、引用例1には、(4)先行鋼板後端部を上下から挟んで先行鋼板後端部の形状不良部を矯正しつつクランプする固定側クランプ装置と、(5)前記走行台車上に設けた前後進機構を介して設けられ、後行鋼板先端部を上下から挟んで後行鋼板先端部の形状不良部を矯正しつつクランプする移動側クランプ装置と、(6)クランプされた鋼板の先・後行鋼板の端面押し付け部に沿って移動して溶接するレーザ溶接装置が記載されていない点で両者は一応相違する。
上記(4)〜(6)の相違点について検討する。
相違点(4)及び(5)については、上記(1)及び(2)と同様、引用例1においけるクランプ装置は二つとも走行台車に固定されているものであり、かつ先行鋼板後端部及び後行鋼板先端部を矯正することと、当該部分をクランプすることとを同時に行うものではない。してみれば、(4)及び(5)については実質的な相違点であり、当該構成は本出願時の技術常識を参酌しても導き出せるものではない。
よって、本願発明3は、上記(6)の相違点について検討するまでもなく、引用例1に記載された発明とは実質的な相違点があるものであるから、引用例1に記載された発明と同一ではない。

5.むすび
したがって、請求項1及び3に係る発明は、引用例1に記載された発明と同一ではなく、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることができない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-12-06 
出願番号 特願平7-18791
審決分類 P 1 8・ 161- WY (B21B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 金 公彦  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 池田 正人
三崎 仁
発明の名称 移動鋼板の接合方法および装置  
代理人 萩原 康弘  

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