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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B27G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27G
管理番号 1069922
審判番号 不服2000-20623  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-27 
確定日 2002-12-27 
事件の表示 平成10年特許願第236410号「回転刃」拒絶査定に対する審判事件[平成12年2月22日出願公開、特開2000-52312]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成10年8月8日の特許出願であって、同12年11月17日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同12年12月27日に本件審判の請求がされると共に同日付で特許法第17条の2第1項の規定により願書に添付した明細書について補正がされたものである。
第2 平成12年12月27日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成12年12月27日付の手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
本件補正は、平成12年12月27日付の手続補正書によると【特許請求の範囲】を下記のように補正すると共に【発明の詳細な説明】中の所要箇所を【特許請求の範囲】の記載と整合させるように適宜補正するものである。

【請求項1】 回転軸を通す中心孔を形成した支持部材の周囲からほぼ等間隔に複数個の腕部材を突出形成し、該腕部材のそれぞれ回転方向の先端部に前記中心孔の中心を通る軸の直交面に対して所定のすくい角で前記支持部材側に傾斜させ、かつ前記腕部材の先端部において、一方の側部から他方の側部に斜めに傾斜させた段違い切欠部を形成し、かつ該段違い切欠部は前記直交面に対して所定のリード角で形成するとともに、前記1つの腕部材に隣合った他の腕部材の段違い切欠部は前記1つの腕の前記段違い切欠部と反対の傾斜になるリード角で構成した回転刃本体と、先端部をほぼ平らに形成し、該平らな先端部からほぼ直角方向にほぼ平行に形成した側部からなる切削刃と該切削刃の対向面に形成した背面部とを形成した硬質刃とからなり、前記回転刃本体の前記切欠部に前記硬質刃の背面部を固着して、該硬質刃の切削刃の先端部及び側部が前記回転刃本体の切欠部の先端及び側部より幅広く突出するように構成するとともに、前記硬質刃が前記腕部材の回転方向に対して所定の角度で交互に反対方向に傾斜して突出されるように構成することにより、前記回転軸を通す中心孔の方向に移動して板材の表面を切削できるように構成することを特徴とする回転切削刃。
2 補正の適否
本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項及び第5項において準用する同法第126条第4項の各規定に適合するものでなければならないところ、先ず、第3項の規定について検討する。
上記したように、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1には「先端部をほぼ平らに形成し、該平らな先端部からほぼ直角方向にほぼ平行に形成した側部からなる切削刃と該切削刃の対向面に形成した背面部とを形成した硬質刃」という記載がある。
しかしながら、この硬質刃に関連する事項として本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「原明細書等」という。)に記載されている事項は以下のとおりである。
(1) 原明細書等の段落【0007】
「さらに、図3に示すように、硬質刃5は切欠部4a、4b、4c、4d、4e、4fにそれぞれ接着される背面5aが狭く形成され、背面5aの周囲から斜めに切削刃5bが突出して形成され、この硬質刃5は、図4及び図5に示すように、硬質刃5の背面5aを腕部材3a、3b、3c、3d、3e、3fのそれぞれの切欠部4a、4b、4c、4d、4e、4fにそれぞれ鑞付け等により固着することにより回転刃6が形成されるが、この回転刃6の硬質刃5の真上から見ると、硬質刃5が腕部材3a、3b、3c、3d、3e、3fの一端から他端にそれぞれ所定のリード角で交互に傾斜して突出するように構成される。」
(2) 同【図3】
硬質刃5の先端部が弧状であり側部が直線状であること。
このように、本件補正の内容の一部をなしている、硬質刃を構成する切削刃が「先端部をほぼ平らに形成し、該平らな先端部からほぼ直角方向にほぼ平行に形成した側部からなる」ということは、原明細書等に何等記載されておらず示唆もされていない。
したがって、本件補正は、原明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。
なお、上記の点に関して原審における平成11年10月22日付の最後の拒絶理由通知書で実質的に同じ趣旨の指摘がなされ、この拒絶理由通知書に対する補正では、「ほぼ平ら」、「ほぼ平行」等の語句は削除されていた。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、その余の規定について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本件発明について
1 本件発明
平成12年12月27日の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成12年4月10日付手続補正書により全文補正された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。
「【請求項1】 回転軸を通す中心孔を形成した支持部材の周囲からほぼ等間隔に複数個の腕部材を突出形成し、該腕部材のそれぞれ回転方向の先端部に前記中心孔の中心を通る軸の直交面に対して所定のすくい角で前記支持部材側に傾斜させ、かつ回転方向の一方の角から他方の角を後退させるように前記直交面に対して所定のリード角で形成した段違いの切欠部を形成するとともに、前記1つの腕部材に隣合った他の腕部材の切欠部は前記1つの腕の前記切欠部と反対の傾斜になるリード角で構成した回転刃本体と、該回転刃本体の前記切欠部に接着される背面部と該背面部より両側面及び先端に突出する切削刃とを形成した硬質刃とからなり、前記回転刃本体の複数個の腕部材の切欠部にそれぞれ前記硬質刃を固着することにより、前記硬質刃が前記腕部材の回転方向に対して所定の角度で交互に反対方向に傾斜して突出固着されることを特徴とする回転刃。」
2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平10-86102号公報(以下「引用例」という。)には「木工用フライス盤及び側フライスカッタ」に関連して以下の事項が記載されている。
(1) 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】この発明は、主として斗組(桝組)用ますの加工に用いる木工用フライス盤と、そのフライス盤に採用する曲面加工用の側フライスカッタに関する。」
(2) 段落【0032】〜段落【0036】
「【発明の実施の形態】
図1に、この発明の側フライスカッタの実施形態を示す。この側フライスカッタ1は、中心に軸穴2を有する本体3の外周に偶数本の爪4を設けてその爪に切刃5及び6を付けている。
爪4は、切刃5、6のラジアルレーキを正となすために、前向きに倒れる方向に傾けてある。この爪4は、カッタの周方向に整列させて一定ピッチで配置してある。
また、図1(b)に示すように、切刃5のすくい面7は、本体3の一端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾け、一方、切刃6のすくい面8は、本体3の他端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾けてある。
切刃5は、カッタの回転方向前方から直視した刃形が半円になる円弧刃Qの一端に直線刃Sを連ねた形状にしてある。
切刃6は、直線刃Sを円弧刃Qの他端に連ねた点を除いて切刃5と同じ構成になっている。直線刃Sはすくい面とそれに鋭角に交わる面との交差稜で形成されており、この直線刃が付加されたことによって溝入れ加工も可能になっている。」
(3) 段落【0040】
「また、切刃5、6は、本体3に超硬合金のブレードを鑞付けしてそのブレードに付したが、本体に一体に加工される切刃にしてもよい。」
(4) 【図1】
切刃5、6が爪4の回転方向に対して所定の角度で交互に反対方向に傾斜して突出固着されていること。
これらの記載事項を本件発明に照らして整理すると、引用例には以下の発明が記載されていると認める。
中心に軸穴2を有する本体3の外周に周方向に整列させて一定ピッチで配置した偶数本の爪4を設け、該爪4のそれぞれ回転方向の先端部における切刃5、6を固着する部分は、切刃5、6のラジアルレーキを正となすために、前向きに倒れる方向に傾け、また、切刃5のすくい面7は、本体3の一端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾け、一方、切刃6のすくい面8は、本体3の他端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾けて構成した本体3と、該本体3の前記切刃5、6を固着する部分に接着される背面部と側面の直線刃S及び先端の円弧刃Qとを形成した超硬合金のブレードの切刃5、6とからなり、前記本体3の複数個の爪4の切刃5、6を固着する部分にそれぞれ前記超硬合金のブレードの切刃5、6を固着することにより、前記超硬合金のブレードの切刃5、6が前記爪4の回転方向に対して所定の角度で交互に反対方向に傾斜して突出固着される側フライスカッタ。
3 対比
本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「軸穴2」及び「爪4」は、それぞれ本件発明の「回転軸を通す中心孔」及び「腕部材」に相当することが明らかであって、引用例記載の発明において「中心に軸穴2を有する本体3の外周に周方向に整列させて一定ピッチで配置した偶数本の爪4を設け」ていることは、本件発明において「回転軸を通す中心孔を形成した支持部材の周囲からほぼ等間隔に複数個の腕部材を突出形成し」ていることに他ならない。
また、引用例記載の発明の「超硬合金のブレードの切刃5、6」は、背面部と側面及び先端に切削刃とを形成した硬質刃であるという限りで、本件発明の「硬質刃」に対応しており、本件発明の「段違いの切欠部」は、腕部材のそれぞれ回転方向の先端部における硬質刃を固着する部分であるという限りで、引用例記載の発明の「切刃5、6を固着する部分」に対応している。
そして、引用例記載の発明において、切刃5、6を固着する部分を、切刃5、6のラジアルレーキを正となすために、前向きに倒れる方向に傾けることは、硬質刃を固着する部分を、中心孔の中心を通る軸の直交面に対して所定のすくい角で支持部材側に傾斜させるという限りで、本件発明と共通し、また、引用例記載の発明において、切刃5のすくい面7は、本体3の一端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾け、一方、切刃6のすくい面8は、本体3の他端面に対して鋭角に交わる方向に角度α傾けることは、硬質刃を固着する部分を、回転方向の一方の角から他方の角を後退させるように前記直交面に対して所定のリード角で形成するとともに、1つの腕部材に隣合った他の腕部材の硬質刃を固着する部分を前記1つの腕の前記硬質刃を固着する部分と反対の傾斜になるリード角で構成するという限りで、本件発明と共通している。
また、引用例記載の発明の「本体3」及び「側フライスカッタ」は、それぞれ本件発明と同様に「回転刃本体」及び「回転刃」ということができるものである。
したがって、本件発明と引用例記載の発明とは以下の点で一致しているということができる。
回転軸を通す中心孔を形成した支持部材の周囲からほぼ等間隔に複数個の腕部材を突出形成し、該腕部材のそれぞれ回転方向の先端部に前記中心孔の中心を通る軸の直交面に対して所定のすくい角で前記支持部材側に傾斜させ、かつ回転方向の一方の角から他方の角を後退させるように前記直交面に対して所定のリード角で形成した硬質刃を固着する部分を形成するとともに、前記1つの腕部材に隣合った他の腕部材の硬質刃を固着する部分は前記1つの腕の前記硬質刃を固着する部分と反対の傾斜になるリード角で構成した回転刃本体と、該回転刃本体の前記硬質刃を固着する部分に接着される背面部と側面及び先端に切削刃とを形成した硬質刃とからなり、前記回転刃本体の複数個の腕部材の硬質刃を固着する部分にそれぞれ前記硬質刃を固着することにより、前記硬質刃が前記腕部材の回転方向に対して所定の角度で交互に反対方向に傾斜して突出固着される回転刃。
そして、本件発明と引用例記載の発明とは以下の2点で相違している。
相違点1:
腕部材の硬質刃を固着する部分が、本件発明では、段違いの切欠部であるのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。
相違点2:
硬質刃が、本件発明では、背面部と該背面部より両側面及び先端に突出する切削刃とを形成しているのに対して、引用例記載の発明では、背面部と側面の直線刃S及び先端の円弧刃Qとを形成している点。
4 当審の判断
(1) 相違点1について
腕部材に硬質刃を固着するタイプの回転刃において、腕部材の硬質刃を固着する部分を段違いの切欠部とすることは、例えば、実開昭53-134195号公報(第5図)、実開昭59-97003号公報(第1図)、実開昭60-91408号公報に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して本件発明のように構成することは当業者が容易に想到するところである。
(2) 相違点2について
本件発明において、硬質刃の側面及び先端の切削刃をその背面部より突出するように構成したことによる格別の効果が見当たらず、このように構成することは、単なる設計的事項にすぎないといわざるをえない。また、硬質刃の一側面だけでなく両側面に切削刃を設けることも必要に応じて適宜なしうる設計的事項にすぎない。
5 むすび
したがって、本件発明は、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-10 
結審通知日 2002-10-22 
審決日 2002-11-05 
出願番号 特願平10-236410
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B27G)
P 1 8・ 121- Z (B27G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小椋 正幸丸山 英行藤井 新也  
特許庁審判長 小池 正利
特許庁審判官 宮崎 侑久
加藤 友也
発明の名称 回転刃  
代理人 鈴木 和夫  
代理人 鈴木 和夫  

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