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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1069924
審判番号 不服2001-1759  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-12 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-04 
確定日 2002-12-27 
事件の表示 平成 4年特許願第290641号「セメント添加組成物」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 4月12日出願公開、特開平 6-100343]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成4年9月18日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、適宜、「本願発明」という)は、平成11年2月1日提出の手続補正書により補正された明細書からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】還元剤として硫酸第一鉄と、コンクリート混和材料とを含有するセメント添加組成物。」
2.原査定の概要
本願発明は、本出願前に頒布された刊行物である特開平3-205331号公報(以下、「引用例」という)に記載の発明、及び、コンクリートには各種の混和材料を配合するとの周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.引用刊行物
引用例には、次の事項が記載されている。
(a)「還元剤を含有することを特徴とするセメント添加剤。」(請求項1)
(b)「すなわち、本発明はセメント中に還元剤を含有するセメント添加剤を混入させてセメントと水との混練時にセメント中に含まれる六価クロムと反応させて六価クロムを不溶性物質となし、コンクリート内に固定または水中から除去するものである。」(第1頁右下欄第4〜7行)
(c)「本発明のセメント添加剤として使用される還元剤としては第1鉄、第1錫、第1バナジウム、第1銅等のイオンから構成される塩類が挙げられ、これらの塩類としては硫酸塩、硝酸塩、塩化物、種々の複塩が挙げられるが、特に硫酸塩が好ましい。」(第2頁左上欄第1〜4行)
(d)「ポルトランドセメント(六価クロム8.2PPm含有)に硫酸第1鉄(FeSO4、H2o)粉末を添加して、これにポルトランドセメント100重量部に対して水50重量部を加えて混練した後遠心分離器で水を回収し、その中の六価クロムの濃度を測定した。次にその試験結果を示せば第1図のとおりである。第1図から明らかなようにポルトランドセメントには六価クロム8.2PPmを含有していることから、その量から考察するとFeSO4、H2oは44mg/Kg(セメント)が理論当量である。従って第1図からセメント中に含有される六価クロムの理論量の約1.5〜1.6倍量の還元剤を添加すれば充分であることがわかる。」(第2頁左上欄第16行〜右上欄第1行)
4.対比・判断
引用例には、上記(a)から、「還元剤を含有することを特徴とするセメント添加剤。」が記載されている。
ここで、上記還元剤は、上記(c)(d)から、硫酸第1鉄と云えるから、これら記載事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、「還元剤として硫酸第1鉄を含有するセメント添加剤。」という発明(以下、「引用例発明」という)が記載されていると云える。
本願発明と引用例発明とを対比すると、引用例発明の「セメント添加剤」は、「セメント添加物」と云えるから、両者は「還元剤として硫酸第一鉄を含有するセメント添加物。」で一致し、次の点が相違している。
相違点:本願発明では、セメント添加物が、コンクリート混和材料を含有するセメント添加組成物であるのに対して、引用例発明では、コンクリート混和材料を含有することが記載されていないセメント添加剤である点
そこでこの相違点について検討する。
本願明細書の「本発明の組成物は、セメントと水との混練時に添加されていることによって六価クロムを不要性物質としてコンクリート中に固定することができると共に、各コンクリート混和材料の効果が期待でき、作業の省力化も可能となる。」〔平成11年2月1日提出の手続補正書(以下、「補正書」という)の段落【0015】〕との記載、及び、「すなわち本発明者は、セメント中に還元剤を含有するセメント添加組成物を混入させてセメントと水との混練時にセメント中に含まれる六価クロムと反応させて六価クロムを不溶性物質となし、コンクリート内に固定または水中から除去するものである。」(補正書の段落【0006】)と、六価クロムを不溶性物質としてコンクリート中に固定することは還元剤としての硫酸第一鉄の働きにより実施されるものであるとの記載からみると、
本願発明において、コンクリート混和材料は、コンクリートに各コンクリート混和材料の効果を発現し、作業の省力化を図るために用いられるものであるということができる。
しかし、本願発明でいうコンクリート混和材料とは、本願明細書において「AE剤、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、急結剤、硬化促進剤、防凍・防寒剤、粉じん低減剤、起泡剤、防水剤、防錆剤、耐酸剤、可塑剤、注入グラウト用混和剤、フルパックド用混和剤、水中不分離性混和剤、エフロレッセンス防止剤、膨張材、無収縮材等」(補正書の段落【0009】)と例示されるものであるが、これらのコンクリート混和材料は、コンクリートに所要の特性ないしは性質を付与するためにコンクリートに配合される周知・慣用成分に過ぎないもの(例えば、日本コンクリート工学協会編「コンクリート便覧」技報堂出版株式会社、第227〜263頁、昭和53年7月20日、等を参照)である。
そして、還元剤としての硫酸第一鉄を含有するセメント添加物は、セメントを媒介にして、最終的には、コンクリートに配合されるものである。
してみれば、コンクリート製造時における作業の簡略化を図り、また、コンクリートに所要の特性ないしは性質を付与するために、当該セメント添加物に対して、予め、コンクリート混和材料を配合して、本願発明のようにすることは、当業者が容易に想到できるものである。
また、本願明細書の記載からみて、当該セメント添加物にコンクリート混和材料を含有させることによって、格別顕著な効果を奏したものであるということもできない。 (請求人の主張について)
請求人は、その審判請求書及び拒絶理由通知に対する意見書において、
(1)還元剤としての硫酸第一鉄とコンクリート混和材料とを併用することにつき困難性がある、
(2)コンクリート混和材料は、還元剤の浸透効果を高めるために用いる、旨主張するので、以下に検討する。
上記(1)について
本願発明におては、還元剤の使用量は六価クロムの1.5倍以上程度と僅かなものであり、還元剤の還元作用の発現時に、他の成分に対して強く作用するとは解することができず、また、当該分野において、還元剤とコンクリート混和材料とを併用することは特別なことでもない(必要ならば、特開昭59-57939号公報、特開昭55-51743号公報等を参照)。したがって、還元剤としての硫酸第一鉄とコンクリート混和材料とを併用することに、請求人が主張するように困難を伴うものではない。
上記(2)について
本願明細書には、コンクリート混和材料が還元剤の浸透効果を高めるということを示す記載はなく、更には、多種多様なものを含むコンクリート混和剤が、一様に、浸透効果を高めることができると解することもできない。したがって、コンクリート混和材料は還元剤の浸透効果を高めるとの請求人の主張は、明細書の記載に基づくものでなく、また、その根拠にも欠けるものであり、採用することができない。
したがって、本願発明は、引用例に記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
5.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-10 
結審通知日 2002-10-22 
審決日 2002-11-05 
出願番号 特願平4-290641
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 紀子  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
発明の名称 セメント添加組成物  

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