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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1070060
審判番号 審判1998-19557  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-08-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1998-12-16 
確定日 2003-01-06 
事件の表示 平成 5年特許願第224763号「交換ネットワーク」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 8月 5日出願公開、特開平 6-214965]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年9月9日の出願(パリ条約による優先権主張1992年9月17日、アメリカ合衆国)であって、その請求項1に係る発明は、平成14年6月14日付の手続補正書により補正された明細書と図面の記載からみて、
「それぞれが複数の交換入力及び複数の交換出力を有する複数の交換装置を多段にカスケード接続し、前記交換装置のそれぞれの前記交換出力の各々を前記交換装置のうちの異なった交換装置の1つの交換入力を介して前記異なった交換装置に接続し、最終段交換装置の交換出力のそれぞれがネットワーク出力ポートを有し、第1段交換装置の交換入力のそれぞれがネットワーク入力ポートを有し、前記ネットワーク出力ポートの各々を複数のノードの1つを介してネットワーク入力ポートに接続して成る多段交換ネットワークであって、
前記ノードのそれぞれは、前記接続されたネットワーク出力ポートからのデータメッセージを受信するための手段と、宛先ネットワーク出力ポートを識別する経路接続要求を含むデータメッセージを前記接続されたネットワーク入力ポートへ送信するためのメッセージ送信手段とを含み、
前記交換装置のそれぞれは、さらに、前記ネットワーク入力ポートのいずれか1つにおいて受信された通信経路接続要求に応答して、ネットワーク入力ポートのいずれか1つとネットワーク出力ポートのいずれか1つとの間で通信経路を確立し、前記入力ポートのいずれか1つで受信されたデータメッセージを前記出力ポートのいずれか1つへ伝送するための接続手段と、複数のネットワーク入力ポートで受信された複数のデータメッセージを複数のネットワーク出力ポートに同時に伝送するために、前記複数のネットワーク入力ポートで受信された複数の通信経路接続要求に応答して、複数の同時に活動化通信経路を非同期に確立するための非同期接続手段とを含み、
前記ノードのそれぞれは、さらに、前記メッセージ送信手段により選択的に活動化されることに応答して、複数のデータフィールドを有するメッセージヘッダを自動的に生成し及び接続されたネットワーク入力ポートへの選択されたデータメッセージの前に置くためのメッセージヘッダ生成論理手段を含み、
ここで、前記複数のデータフィールドは、
接続されたネットワーク入力ポートへのデータメッセージの受信ノードを識別する宛先フィールドと、
接続されたネットワーク入力ポートへのデータメッセージの送信ノードを識別する発信元フィールドと、
接続されたネットワーク入力ポートへのデータメッセージのサイズを識別するデータメッセージ長フィールドとを含み、
前記メッセージヘッダ生成論理手段は、さらに、接続されたネットワーク入力ポートへの各選択されたデータメッセージのための前記複数のデータフィールドの選択されたものを定数値に維持するための手段を含む、ことを特徴とする多段交換ネットワーク。」にあると認める。

なお、請求項1には、上記「宛先ネットワーク出力ポートを識別する」の部分は「宛先ネットワーク入力ポートを識別する」と記載されているが、これは誤記と認め、本願発明を上記のとおり認定した。

2.引用例
これに対して、当審における平成13年12月14日付の拒絶の理由に引用された特開平2-143638号公報(平成2年6月1日出願公開。以下、引用例1という。)には、プロセッサ間を相互に接続する相互接続ネットワークについて、「第3図は、従来の相互結合ネットワークの1例(デルタネットワーク)を示したもので、2入力×2出力のスイッチを3段に組み合わせて8入力×8出力のネットワークを構成している。同図において、(1-1)〜(1-8)はそれぞれプロセッサ、(2-1)〜(2-4)はそれぞれ第1段目を構成するスイッチ、(3-1)〜(3-4)はそれぞれ第2段目を構成するスイッチ、(4-1)〜(4-4)はそれぞれ第3段目を構成するスイッチ、である。このネットワークに第4図に示すヘッダ付きの転送データを流すと、・・・書くスイッチは第4図のヘッダ・・・を参照して・・・ルーテイングする機能を持つ。」(2頁右下欄7行乃至3頁左上欄2行)と記載されており、第3図には、第3段目のスイッチの出力は、複数のプロセッサのうちの1つを介して第1段目のスイッチの入力に接続されていることが記載されている。
第1段目のスイッチの入力と第3段目のスイッチの出力を、それぞれネットワークの入力ポートと出力ポートと見ることができ、そして、各スイッチは、ネットワーク入力ポートのいずれか1つにおいて受信された通信経路接続要求に応答して、ネットワーク入力ポートのいずれか1つとネットワーク出力ポートのいずれか1つとの間で通信経路を確立し、前記入力ポートのいずれか1つで受信された転送データを前記出力ポートのいずれか1つへ伝送するための接続手段を有することは上記引用例1の記載事項から明らかであり、また、この種のネットワークのスイッチが、複数のネットワーク入力ポートで受信された複数の転送データを複数のネットワーク出力ポートに同時に伝送するために、前記複数のネットワーク入力ポートで受信された複数の通信経路接続要求に応答して、複数の同時に活動化通信経路を非同期に確立するための非同期接続手段とを含むことも技術常識である。
さらに、各プロセッサは、ネットワークに接続されて相互に通信を行うのであるから、接続されたネットワーク出力ポートからの転送データを受信するための手段と、宛先ネットワーク出力ポートを識別する経路接続要求を含む転送データを前記接続されたネットワーク入力ポートへ送信するためのメッセージ送信手段とを含むことは当然であり、そのメッセージ送信手段により選択的に活動化されることに応答して、ヘッダを自動的に生成し及び接続されたネットワーク入力ポートへの選択された転送データの前に置くための何らかのヘッダを生成する手段を有することも技術常識であるから、 引用例1には
「2入力及び2出力を有する複数のスイッチを3段に組み合わせ、前記スイッチのそれぞれの前記出力の各々を前記スイッチのうちの異なったスイッチに接続し、第3段目のスイッチの出力のそれぞれがネットワーク出力ポートを有し、第1段目のスイッチの入力のそれぞれがネットワーク入力ポートを有し、前記ネットワーク出力ポートの各々を複数のプロセッサの1つを介してネットワーク入力ポートに接続して成る3段相互結合ネットワークであって、
前記プロセッサのそれぞれは、前記接続されたネットワーク出力ポートからの転送データを受信するための手段と、宛先ネットワーク出力ポートを識別する経路接続要求を含む転送データを前記接続されたネットワーク入力ポートへ送信するためのメッセージ送信手段とを含み、
前記スイッチのそれぞれは、さらに、前記ネットワーク入力ポートのいずれか1つにおいて受信された通信経路接続要求に応答して、ネットワーク入力ポートのいずれか1つとネットワーク出力ポートのいずれか1つとの間で通信経路を確立し、前記入力ポートのいずれか1つで受信された転送データを前記出力ポートのいずれか1つへ伝送するための接続手段と、複数のネットワーク入力ポートで受信された複数の転送データを複数のネットワーク出力ポートに同時に伝送するために、前記複数のネットワーク入力ポートで受信された複数の通信経路接続要求に応答して、複数の同時に活動化通信経路を非同期に確立するための非同期接続手段を含み、
前記プロセッサのそれぞれは、さらに、前記メッセージ送信手段により選択的に活動化されることに応答して、ヘッダを自動的に生成し及び接続されたネットワーク入力ポートへの選択された転送データの前に置くためのヘッダ生成手段とを含むことを特徴とする3段相互結合ネットワーク」(以下、引用例1に記載された発明という。)が記載されていると認められる。
同じく当審において引用された特開平3-54659号公報(平成3年3月8日出願公開。以下、引用例2という。)には、コンピュータ相互接続システムにおいて転送されるパケットのヘッダーに、長さを識別するフィールド、宛先を識別するフィールド及び源を識別するフィールドを設けることが記載されている。
さらに、同じく当審において引用された特開平3-147447号公報(平成3年6月24日出願公開。以下、引用例3という。)には、データパケット送信時に各階層のプロトコル制御情報(ヘッダ)を高速に作成し送信データに付加する通信処理方式において、ヘッダ部のうち固定値のものを予め記憶手段に登録しておき、それを用いてヘッダ部の生成を高速化するものが記載されている。

3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「入力」、「出力」、「スイッチ」、「3段に組み合わせ」、「第3段目のスイッチ」、「プロセッサ」、「3段相互結合ネットワーク」、「転送データ」、「ヘッダ」及び「ヘッダ生成手段」は、本願発明の「交換入力」、「交換出力」、「交換装置」、「多段にカスケード接続し」、「最終段交換装置」、「ノード」、「多段交換ネットワーク」、「データメッセージ」、「メッセージヘッダ」及び「メッセージヘッダ生成論理手段」にそれぞれ対応するから、両者は、
「それぞれが複数の交換入力及び複数の交換出力を有する複数の交換装置を多段にカスケード接続し、前記交換装置のそれぞれの前記交換出力の各々を前記交換装置のうちの異なった交換装置の1つの交換入力を介して前記異なった交換装置に接続し、最終段交換装置の交換出力のそれぞれがネットワーク出力ポートを有し、第1段交換装置の交換入力のそれぞれがネットワーク入力ポートを有する多段交換ネットワークであって、
前記交換装置のそれぞれは、さらに、前記ネットワーク入力ポートのいずれか1つにおいて受信された通信経路接続要求に応答して、ネットワーク入力ポートのいずれか1つとネットワーク出力ポートのいずれか1つとの間で通信経路を確立し、前記入力ポートのいずれか1つで受信されたデータメッセージを前記出力ポートのいずれか1つへ伝送するための接続手段と、複数のネットワーク入力ポートで受信された複数のデータメッセージを複数のネットワーク出力ポートに同時に伝送するために、前記複数のネットワーク入力ポートで受信された複数の通信経路接続要求に応答して、複数の同時に活動化通信経路を非同期に確立するための非同期接続手段を含み、
前記ノードのそれぞれは、さらに、前記メッセージ送信手段により選択的に活動化されることに応答して、複数のデータフィールドを有するメッセージヘッダを自動的に生成し及び接続されたネットワーク入力ポートへの選択されたデータメッセージの前に置くためのメッセージヘッダ生成論理手段とを含む多段交換ネットワーク」であることで一致し、以下の点で相違する。
(1)本願発明のメッセージヘッダは複数のデータフィールドを有するものであり、この複数のデータフィールドは、接続されたネットワーク入力ポートへのデータメッセージの受信ノードを識別する宛先フィールドと、接続されたネットワーク入力ポートへのデータメッセージの送信ノードを識別する発信元フィールドと、 接続されたネットワーク入力ポートへのデータメッセージのサイズを識別するデータメッセージ長フィールドとを含むものであるのに対して、引用例1に記載された発明のヘッダは、宛先フィールドのみから成る点。
(2)本願発明のメッセージヘッダ生成論理手段は、接続されたネットワーク入力ポートへの各選択されたデータメッセージのための前記複数のデータフィールドの選択されたものを定数値に維持するための手段を含むものであるのに対して、引用例1にはこの点に関して何ら記載されていない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1について)
引用例2に記載されているように、コンピュータネットワークで転送されるメッセージのヘッダに、メッセージの長さを示すフィールド、メッセージの宛先及び送信元を示すフィールドを設けることは周知であるから、相違点1を格別のものと認めることはできない。
(相違点2について)
引用例3には、ヘッダ部のうち固定値のものを予め記憶手段に登録しておき、それを用いてヘッダ部の生成を高速化することが記載されており、ヘッダに送信元を示すフィールドを設けることは先に述べたとおり周知であるから、ヘッダに送信元を示すフィールドを設け、メッセージヘッダを生成する手段に送信元を示す値を定数値として保持することは当業者が容易になし得たことと認められるから、相違点2を格別のものと認めることはできない。
なお、請求人は、平成14年6月14日付の意見書において、「「ノード」が本願発明における能動動作であるものとは対照的に受動動作である点を別にすれば、ご説示のような概念が周知であることに異論がないが、然しながら、本願発明は、このような交換装置の一方向通信の概念とは異なり、交換機の入力および出力の各対応ポートを、メッセージ送受手段を備えた能動動作の各対応ノードを介して、相互結線して双方向通信をサポートするためのALLNODE型交換機を含む独特の交換ネットワークの概念を前提にした点で特徴を有する。」旨主張しているが、請求人のいう前提となる概念は、特許請求の範囲に記載されたものでなく、また、発明の詳細な説明にも「能動動作」が如何なるものであるか記載されておらず、どのような技術内容のものか不明であるから、請求人の主張は明細書の記載に基礎をおいたものではなく、かつ、意味不明のものであって失当である。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用例1、引用例2及び引用例3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-07-23 
結審通知日 2002-08-02 
審決日 2002-08-19 
出願番号 特願平5-224763
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 酒井 恭信  
特許庁審判長 斎藤 操
特許庁審判官 徳永 民雄
村上 友幸
発明の名称 交換ネットワーク  
代理人 坂口 博  
代理人 市位 嘉宏  

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