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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B27G |
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管理番号 | 1070155 |
審判番号 | 不服2001-3199 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-01-25 |
確定日 | 2003-01-06 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第362109号「原木処理用チッピングヘッド装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年 6月29日出願公開、特開平11-170213]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成9年12月10日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成12年11月6日付け手続補正書、平成13年1月25日付け手続補正書により補正された明細書及び願書に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものと認められる。 「【請求項1】 チッピングロータの支持駆動軸を中空管軸となし、該中空管軸内へ先端に丸鋸を備えた別の支持駆動軸を別個な回動状態に挿入させ、丸鋸の支持駆動軸をチッピングロータのそれよりも延出させた長さとなし、該軸及び中空管軸の端縁側へ夫々れ別個にプーリ及びモータを設け、各プーリによる伝動駆動で丸鋸をチッピングロータの3〜6倍の速度で回転させる構成となしたことを特徴とする原木処理用チッピングヘッド装置。」 (なお、特許請求の範囲の請求項1末尾の「チャッピングヘッド装置」は「チッピングヘッド装置」の誤記であることは明らかであるので、上記のとおり認定した。) 第2 引用例記載の発明乃至技術的事項 原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭64-75201号公報(以下「引用例」という。)には、以下のとおり記載されている。 (1)特許請求の範囲第1項 「1.鋸加工品用ブランク材及びチップを生産するため木材の幹やブロックの側部を機械切断する方法であって、木材の幹やブロックの側部を削り(チッピングし)、・・・」 (2)第2頁左上欄第4〜7行 「本発明は、鋸加工品用ブランク材(半製品)やチップ(小片)を作るために、木の幹やブロックの側部を機械切断する方法及びこの方法を実施する新型カッタヘッドに関する。」 (3)第2頁右上欄第1〜4行 「カッタヘッドは通常、切頭円錐形の本体を有し、複数のチッピング刃が上記円錐の側面に固定され、鋸加工品の表面を切削する刃が上記円錐の正面に固定されている。」 (4)第3頁左下欄第15行〜右下欄第10行 「このように、円形刃の回転速度を低速とし、かつ木材の送り速度を高速とした条件で表面品質を良好に保つためには、円形刃の歯ピッチを小さく、即ち密にしなければならない。・・・例えば幹を割る際に生じる鋸屑の全量を保つ為には、歯みぞは、上述の値の約3倍の面積にすべきである。鋸屑のすべてが歯みぞに適正に入るのではなくその歯みぞにきつく詰め込まれる場合には、直ちに刃の破損が生じる。この問題はカッタヘッドを高速で回転させるか、またはチッピング刃の枚数を少なくすることによって回避できるが、しかしながら、これにより削り速度が高速になり過ぎ、チップが破損する恐れがある。」 (5)第3頁右下欄第10〜15行 「また理論的には、円形刃の回転をチッピング刃よりも高速にすることによっても上述の問題点を解決できるが、しかし実際にはこのような解決策は、二つの別個の駆動系か、又は回転速度変更用の歯車を必要とするので高価となり、かつ騒音を発生しがちである。」 (6)第4頁左上欄第13〜17行 「第1図及び第2図に示したように、本発明による鋸盤のカッタヘッドは、本体1を有し、この本体1は、形状が切頭円錐状であり側面にはチッピング刃2を複数枚有する。円形刃3はカッタヘッド、即ち本体1の正面に取付られている。」 上記記載及び図面の記載からすると、引用例には以下の発明が記載されていると認める。 切頭円錐形のカッタヘッドの本体1の側面にチッピング刃2を固定し、切頭面に円形刃3を取り付けた木の幹の側部をチッピングするカッタヘッドにおいて、円形刃3の歯みぞに鋸屑がきつく詰め込まれ刃が破損するのを回避するために、二つの別個の駆動系により円形刃3の回転をチッピング刃2よりも高速にしたカッタヘッド。 第3 対比 本件発明と引用例記載の発明を対比するに、引用例1記載の発明における「切頭円錐形のカッタヘッドの本体1」、「円形刃3」は本件発明における「チッピングロータ」、「丸鋸」に相当する。また、引用例記載の発明も、木の幹の側部をチッピングするカッタヘッドであるから、原木処理用チッピングヘッド装置ということができる。 したがって、両者は以下の点で一致する。 チッピングロータに丸鋸を取り付けたチッピングヘッド装置において、丸鋸をチッピングロータよりも高速で回転させる構成とした原木処理用チッピングヘッド装置。 そして、以下の点で相違する。 相違点:本件発明は、丸鋸をチッピングロータよりも高速で回転させる構成として、チッピングロータの支持駆動軸を中空管軸となし、該中空管軸内へ先端に丸鋸を備えた別の支持駆動軸を別個な回動状態に挿入させ、丸鋸の支持駆動軸をチッピングロータのそれよりも延出させた長さとなし、該軸及び中空管軸の端縁側へ夫々れ別個にプーリ及びモータを設けると共に、各プーリによる伝動駆動で丸鋸をチッピングロータの3〜6倍の速度で回転させる構成を採用したものであるのに対し、引用例記載の発明では、丸鋸をチッピングロータよりも高速で回転させるという課題を提示するものの、構成については二つの別個の駆動系によるとするだけで、具体的な構成は明らかでない点。 第4 当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 同軸上にある2つの部材を別々に回動させるに際し、中空管軸内に別の軸を中空管軸よりも延出した長さで回動状態に挿入させて該中空管軸と該別の軸により2つの部材を回転駆動させるようにすることは、例えば、特開平2-229734号公報(第2頁右下欄第4行〜第3頁右上欄第4行及び図面)、特開平4-67928号公報(特許請求の範囲及び図面)、特開昭49-44379号公報(第1頁右下欄末行〜第3頁右下欄第8行及び第3図)、「新編 機械の素」(理工学社版、1980.01.20 第12版発行、第64頁「9.50 時計仕掛け」)(以下、それぞれ「周知例1〜4」という。)に記載されているように、本件出願前周知のものである。そして、その際に、それぞれの軸の駆動源を別個のモータとし、プーリによって駆動力を伝えるようにすることも、上記周知例1、2に記載されているように本件出願前に周知のものである。 また、丸鋸の回転速度は丸鋸の歯数、径の大きさに応じて適宜決めるべきものであり、チッピングロータの回転速度も適宜決めるべきものであるから、両者の回転速度を最適にするよう、丸鋸の回転速度をチッピングロータの3〜6倍程度の速度とすることは単なる設計的事項にすぎない。 したがって、本件発明は、引用例記載の発明において、丸鋸をチッピングロータよりも高速で回転させる構成として、単に上記周知の技術を採用し、各軸の回転速度を適宜設計したものにすぎないから、引用例記載の発明及び上記周知例1〜4にみられる周知技術から当業者であれば容易に想到することができたものである。 そして、本件発明の効果は、引用例記載の発明及び上記周知例1〜4にみられる周知技術から当業者が予測することができる程度のものであって格別なものではない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本件発明は、引用例記載の発明及び上記周知例1〜4にみられる周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、上記結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-10-10 |
結審通知日 | 2002-10-22 |
審決日 | 2002-11-05 |
出願番号 | 特願平9-362109 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B27G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小椋 正幸、丸山 英行 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
鈴木 孝幸 加藤 友也 |
発明の名称 | 原木処理用チッピングヘッド装置 |
代理人 | 忰熊 弘稔 |