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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1070161
審判番号 不服2001-1223  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-25 
確定日 2003-01-09 
事件の表示 平成10年特許願第142154号「ファクシミリ装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年11月30日出願公開、特開平11-331465]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経過・本願発明
本願は、平成10年5月8日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年12月4日付けの手続き補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という)
「受信した複数頁にわたる画像情報を頁単位で記憶する記憶手段と、
該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御するとともに、上記画像情報を記録しているか否かの状態を示す記録状態信号を出力する記録制御手段と、
上記画像情報が記録された記録原稿が受信トレー上に載置されているか否かの状態を示す検出信号を出力する記録原稿検出手段と、
上記記録状態信号が画像記録なしの状態であり、かつ上記検出信号が上記受信トレー上に記録原稿ありの状態の場合に、上記記録原稿が上記受信トレー上に載置されていることを知らせる報知手段と
を備えたファクシミリ装置。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-13056号公報(以下、「引用刊行物」という)には、次の事項が記載されている。
(1)「1回の受信における最終電文の受信完了時から受信済み用紙が除去されるまでの間、任意の遠隔地において警報を発し続ける構成とした。」(2頁上左欄4〜7行)
(2)「第1図において、1は受光する光の量に応じて出力を変化させる用紙検出手段であり、ファクシミリ受信済み用紙によって反射される室内照明光を検出している時には有効出力を、またそうでない時には無効出力を出力する。」(2頁上右欄4行〜8行)
(3)「2は電話回線7の状態によってファクシミリ通信の完了を検出する通信検出手段である。通常、ファクシミリ装置は電話回線網に接続されるので、ファクシミリ装置内部又は外部に電話機又は電話機と同等に機能を揺する装置が接続される。電話機は通話状態、すなわちファクシミリ装置が通信中であるときは自己の内部に直流ループを形成し、そうでないときは直流ループを形成しない。通信検出手段2は、電話機の直流ループを検出しているときは無効出力を、そうでないときは有効出力を出力する。」(2頁上右欄9行〜19行)
(4)「3は用紙検出手段1及び通信検出手段2の出力を入力とし、内部に音響発生手段4及び発光手段5を有する警報手段であり、遠隔地に設置される。警報手段3は、用紙検出手段1の出力が有効出力で、かつ、通信検出手段2の出力が有効出力であるとき、音響又は光によって警報を発する。」(2頁上右欄20行〜下左欄5行)
(5)「今、ファクシミリ装置9の受信済み用紙滞留部10に受信済み用紙11が無い時は、用紙検出手段1の出力は無効出力であるので、警報手段3は警報を発しない。
次にファクシミリ装置9が受信を開始し、受信済み用紙滞留部10に受信済み用紙11の滞留が始まると用紙検出手段1の出力は有効出力となるが、この時電話機8は通話状態であり、自己の内部に直流ループを形成するので通信検出手段2の出力は無効出力となり、警報手段3は未だ警報を発しない。
1枚又は又は複数枚の受信が完了し、ファクシミリ装置9が通信を終了させると電話機8に形成されていた直流ループが解除となり、通信検出手段2の出力は有効出力に転じる。一方、用紙検出手段1は引き続き有効出力であるので警報手段3は警報を発する。
操作者が受信済み用紙滞留部10に滞留している受信済み用紙11を除去すると、用紙検出手段1の出力は無効出力に転ずるので警報手段3は警報を停止する。」(2頁下左欄14行〜同頁下右欄14行)
以上(1)〜(5)の記載事項によると、引用刊行物には、
「ファクシミリ装置9の受信済み用紙滞留部10にファクシミリ受信済み用紙11が無いとき無効出力を、受信済み用紙滞留部10にファクシミリ受信済み用紙11の滞留が始まると有効出力を出力する用紙検出手段1と、
ファクシミリ装置9が通信中であるときは無効出力を、そうでないときは有効出力を出力することにより、電話回線7の状態によってファクシミリ通信の完了を検出する通信検出手段2と、
用紙検出手段1及び通信検出手段2の出力を入力とし、内部に音響発生手段4及び発光手段5を有する警報手段3とを設けたファクシミリ装置において、
警報手段3の警報の発生について、ファクシミリ装置9の受信済み用紙滞留部10に受信済み用紙11が無い時は、用紙検出手段1の出力は無効出力であるので、警報を発せず、次にファクシミリ装置9が受信を開始し、受信済み用紙滞留部10に受信済み用紙11の滞留が始まると用紙検出手段1の出力は有効出力となるが、この時電話機8は通話状態であり、自己の内部に直流ループを形成するので通信検出手段2の出力は無効出力となり、警報手段3は未だ警報を発せず、1枚又は複数枚の受信が完了し、ファクシミリ装置9が通信を終了させると電話機8に形成されていた直流ループが解除となり、通信検出手段2の出力は有効出力に転じる一方、用紙検出手段1は引き続き有効出力であるので警報手段3は警報を発し、操作者が受信済み用紙滞留部10に滞留している受信済み用紙11を除去すると、用紙検出手段1の出力は無効出力に転ずるので警報を停止する
ように制御するようにしたことを特徴とするファクシミリ装置。」
が記載されていると認められる。

3.対比
(1)一致点
引用刊行物記載の発明における「受信済み用紙」「受信済み用紙滞留部」は、本願発明の「画像情報が記録された記録原稿」「受信トレー」に相当することは明らかである。
引用刊行物記載の発明における「用紙検出手段」は、受信によって記録された用紙が出力され、受信済み用紙滞留部に置かれた状態を検出するものであるから、本願発明の「記録原稿検出手段」に相当する。
引用刊行物記載の発明における「警報手段」は、所定の条件を満たし、かつ、受信によって記録された用紙が出力され受信済み用紙滞留部に置かれた状態の場合に、警報を発するものであるから、下記相違点を除いて、本願発明の「報知手段」に相当する。
よって、本願発明と引用刊行物記載の発明とは、次に掲げるもので一致する。
「画像情報が記録された記録原稿が受信トレー上に載置されているか否かの状態を示す検出信号を出力する記録原稿検出手段と、
所定の条件を満たし、かつ上記検出信号が上記受信トレー上に記録原稿ありの状態の場合に、上記記録原稿が上記受信トレー上に載置されていることを知らせる報知手段と
を備えたファクシミリ装置。」

(2)相違点
A.本願発明では、「受信した複数頁にわたる画像情報を頁単位で記憶する記憶手段」を備えているのに対し、引用刊行物には、受信した画像情報を記憶する点について直接触れた記載がなく、引用刊行物記載の発明は、受信した複数頁にわたる画像情報を頁単位で記憶する記憶手段がない点で相違する。
B.本願発明では、「該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御するとともに、上記画像情報を記録しているか否かの状態を示す記録状態信号を出力する記録制御手段」を備えているのに対し、引用刊行物記載の発明では、そのような記録制御手段が無い点で相違する。
C.報知手段が、本願発明では、「上記記録状態信号が画像記録なしの状態であり、かつ上記検出信号が上記受信トレー上に記録原稿ありの状態の場合に、上記記録原稿が上記受信トレー上に載置されていることを知らせる報知手段」であるのに対し、引用刊行物記載の発明では、「ファクシミリ装置が通信を終了し、受信済み用紙滞留部に受信済み用紙がある時に警報を発する警報手段」である点で相違する。

4.当審の判断
まず、特許請求の範囲に記載されている「記録制御手段」の動作である、「該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御する」、と「画像情報を記録しているか否かの状態を示す記録状態信号を出力する」が何を示しているかを検討する。
本願明細書の段落【0010】、段落【0013】〜【0017】の記載より、記録制御手段3は、下記の二つの動作を行うものと認められる。
・記録手段2に記録された画像情報を画像記録手段(図示せず)によって記録紙に記録させ、その記録した記録原稿を排出手段(図示せず)によって受信トレー(図示せず)に排出させる制御を行うとともに、複数頁にわたる画像情報を記録紙に記録しているか否かの状態を示す記録状態信号aを報知手段5に送る。
・記録手段2に画像情報が記憶されているか否かを判断し、また、記録手段2に続きの画像情報があるか否かを判断して、記録制御手段3から報知手段5に記録状態信号aの出力を制御する。
しかし、請求人は「記憶」、「記録」を明確に使い分けており(「記憶手段2に記憶された画像情報」、「画像記録手段によって記録紙に記録させ、その記録した記録原稿を」)、
また、特許請求の範囲には、「該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御するとともに、上記画像情報を記録しているか否かの状態を示す記録状態信号を出力する記録制御手段」と明確に記載されている。
したがって、特許請求の範囲の記載と、段落【0010】の記載とを参照すると、特許請求の範囲に記載されている、「該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御する」とは、「記録制御手段3が、記録手段2に記録された画像情報を画像記録手段(図示せず)によって記録紙に記録させ、その記録した記録原稿を排出手段(図示せず)によって受信トレー(図示せず)に排出させる制御を行う」ことを指しており、「画像情報を記録しているか否かの状態を示す記録状態信号を出力する」とは、「複数頁にわたる画像情報を記録紙に記録しているか否かの状態を示す記録状態信号aを報知手段5に送る」ことであると認められる。

上記相違点A.B.C.について検討する。
(1)相違点A.について
ファクシミリ装置において「受信した複数頁にわたる画像情報を頁単位で記憶する記憶手段」を設けることは、本願出願当時において常套的に行われていることであるから(例えば、特開平9-153992号公報、特開平2-53381号公報参照)、引用刊行物記載の発明のファクシミリ装置に「受信した複数頁にわたる画像情報を頁単位で記憶する記憶手段」を設けることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。

(2)相違点B.C.について
まず、「受信した複数頁にわたる画像情報を頁単位で記憶する記憶手段」を備えたファクシミリ装置は、受信された画像情報を記録出力するために「該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御する」手段も備えていることは、本願出願当時の技術常識である。また、画像情報を記録紙に記録しているか否かの状態を示す信号を得ることは、本願出願当時のプリンタやファクシミリ装置において常套的に行われていることである。さらに、一つの制御手段に複数の機能を設け制御させるようにすることは慣用技術に過ぎない。

従来のファクシミリ装置においては、1頁の画像情報が送られてくる毎に画像記録を行うと共に、画像記録が行われたことを示す信号(MCF)を送信側に返す処理を、繰り返し行っていることは、本願出願当時の技術的常識である(例えば、原査定の拒絶理由の通知で引用された特開平3-250963号公報3頁左上欄8行〜右上欄10行「・・・、正常に画像記録を行えた場合に、MFC信号などの受信確認信号を送信する・・・」等の記載、また、増補改訂版「ファクシミリ」昭和59年4月1日、村上治 監修、発行所 (株)電気通信技術ニュース社 P192,230,231等を参照。)。
このようなファクシミリ装置においては、受信側から受信確認信号を送信側に送信してから、ファクシミリ通信が終了するのであるから、ファクシミリ通信の完了を検出することは、画像の記録が終了した後、直ちに行われることになる。
したがって、引用刊行物記載の発明における「ファクシミリ通信の完了を検出する」とは、送信された画像の記録が終了し、送信側に受信確認信号を送信した後、通信が完了した状態を検出することにすることは明らかである。
すると、引用刊行物記載の発明も、複数頁の画像情報を受信した場合に、複数頁の画像情報を全て記録出力した後、トレー上に記録原稿が載置されている時に報知する点では本願発明のものと相違しない。
すると、引用刊行物にも示されている「受信済みのファクシミリ用紙は受信完了後速やかに受信人に届けられるべきである」という周知の課題を達成するために(必要であれば、引用刊行物1頁右欄1行〜4行など参照)、「受信完了」の状態の検出を、「ファクシミリ通信の完了を検出する」として実現するのか、あるいは、「画像記録なしの状態」を検出するとして実現するのかは、当業者が実施の際に適宜選択すべき事項である。
したがって、引用刊行物記載の発明において、「該記憶手段に記憶された上記画像情報の記録を制御するとともに、上記画像情報を記録しているか否かの状態を示す記録状態信号を出力する記録制御手段」を設け、「上記記録状態信号が画像記録なしの状態であり、かつ上記検出信号が上記受信トレー上に記録原稿ありの状態の場合に、上記記録原稿が上記受信トレー上に載置されていることを知らせる報知手段」を備えたファクシミリ装置とすることは、当業者が容易になし得る事項である。

5.審判請求書における請求人の主張について
審判請求人は審判請求書において、「本願請求項1に係る発明は、『上記記録状態信号が画像記録なしの状態であり、かつ上記検出信号が上記受信トレー上に記録原稿ありの状態の場合に、上記記録原稿が上記受信トレー上に載置されていることを知らせる報知手段』を備える点を特徴とします。かかる特徴を備えることにより、1回に連続した複数頁の画像情報を受信した場合に、全頁の記録出力が完了すると同時に、受信者に対する報知を開始するため、受信者は、タイミングよく、受信トレイから原稿を取ることができるという顕著な作用効果が得られます。」と主張している。
しかし、上記4.(2)でも述べたように、引用刊行物記載の発明においても、複数頁の画像情報を受信した場合に、複数頁の画像情報を全て記録出力した後に警報を発する点では本願発明と同じであり、格別の作用効果とは認められない。
したがって、審判請求人の上記主張は採用できない。

6.むすび
本願発明は、引用刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-11-06 
結審通知日 2002-11-12 
審決日 2002-11-27 
出願番号 特願平10-142154
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀井 啓明  
特許庁審判長 小川 謙
特許庁審判官 佐藤 聡史
江頭 信彦
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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