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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1070166 |
審判番号 | 不服2001-2222 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-05-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-02-15 |
確定日 | 2003-01-09 |
事件の表示 | 平成10年特許願第299634号「半導体記憶装置の消費電力低減方法」拒絶査定に対する審判事件[平成12年 5月12日出願公開、特開2000-132283]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】本発明 本願は、平成10年10月21日に特許出願されたものであって、その請求項1乃至4に係る発明は、平成12年12月6日付け、平成13年3月16日付け、平成13年7月26日付け及び平成14年1月10日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された「半導体記憶装置の消費電力低減方法」であって、当該請求項1に記載された発明(以下、「本発明」という)は、次のとおりである。 「補助記憶装置としての半導体記憶装置に対してファイル管理システムに基づいてファイル単位でデータの書き込み及び読み出しを行う際の半導体記憶装置の消費電力低減方法であって、オペレーティングシステム等の上位システムは、アプリケーションプログラム毎に、半導体記憶装置の消費電力を低減させる節電モードと、半導体記憶装置へのアクセススピードを高速にするアクセス優先モードのいずれか一方のモードを設定し、前記節電モードが設定されたアプリケーションが動作している間は、前記半導体記憶装置に前記アクセス性能優先モードのときの電源電圧よりも低い電源電圧が供給されることを特徴とする半導体記憶装置の消費電力低減方法。」 なお、『消費電力の低減させる』という記載は『消費電力を低減させる』の誤記と認め、上記の通り認定した。 【2】引用刊行物 前置審査の平成13年11月9日付け拒絶理由通知書において引用された特表平8-503566号公報(以下、「引用例」という。)には、電力監視システムが付加されたパーソナルコンピュータを示す図1と共に次のような記載事項がある。 ア.「アプリケーションプログラムの動作中に機能する可能性のある複数の電力消費機器を含み、複数のアプリケーションプログラムを作動させるバッテリー源化されたコンビュ-夕の電力消費を減少させる方法であって、 a.上記アプリケーションプログラムの各々の動作中に上記電力消費機器の上記電力消費を監視する段階と; b.上記各アプリケーションプログラムに対し上監視された各電力消費機器の上記電力消費を上記コンピュータのルックアップテーブルに記録する段階と; c.アプリケーションプログラムに対し上記記録された電力消費を上記ルックアップテーブルから呼び出す段階と; d.上記コンピュータの電力消費が減少され得るよう、上記アプリケーションプログラムが動作しているときに、上記呼び出された電力消費に応じて上記電力消費機器に利用される電力を自動的に減少させる段階とよりなる方法。」(特許請求の範囲1) イ.「図1を参照するに、本発明の電力管理システムは通常のパーソナルコンピュータ10で実現することが可能である。コンピュータ10は、キーボード20と、 変調器/復調器(「モデム」)22と、フロッピーディスク24と、ハードディスク26と、メモリ装置28,30,32とを含む通常の機器を有する。周知の如く、上記機器は、通常のデータバス36を介して中央処理装置(「CPU」)34と通信する。」(第7頁13〜18行目)) ウ.「アプリケーションプログラムの実行中に、電力管理システムは、機器の使用とアプリケーションプログラムの機能的及び時間的関係を判定するため種々の機器の使用状況を監視する。」(第8頁18〜20行目) エ.「コンピュータ10が特定のアプリケーションの機器の使用状況のある測定量を得た後、電力管理システムは、装置の一部又は全部の機器に対する電力を制御するため使用することができる。」(第9頁11〜13行目) オ.「本発明によれば、電力消費の監視には、コンピュータ装置の電力消費機器の少なくとも一つの性能測定規準の監視が含まれる。例えば、性能測定規準には、アプリケーションプログラムの平均消費時間と、アプリケーションプログラムの実行に必要とされる処理機器と、アプリケーションプログラムを実行するため必要とされるソフトウェアの命令の密度と、アプリケーションプログラムで使用される周辺装置と、メモリ必要量と、命令の演算速度(MIP)等が含まれる。」(第10頁1〜6行目) 【3】対比・判断 本発明と引用例に記載された発明とを対比すると、上記記載事項ウ及び図1からみて引用例における「電力管理システム46」は本発明における「上位システム」に対応する。また、引用例における「メモリ装置(28,30,32)」はデータの書き込み及び読み出しを行う旨の明示はないものの、上記記載事項イ及び図1からみて、通常、メモリ装置はデータの書き込み及び読み出しを行うことが一般的であるから、引用例における「メモリ装置(28,30,32)」は本発明における「補助記憶装置としての半導体記憶装置」に対応していると認められるので、両者は、次の一致点及び相違点を有している。 (一致点) 補助記憶装置としての半導体記憶装置に対してデータの書き込み及び読み出しを行う際の半導体記憶装置の消費電力低減方法であって、オペレーティングシステム等の上位システムは、アプリケーションプログラム毎に、半導体記憶装置の消費電力の低減させる節電モードが動作している間は、前記半導体記憶装置に低電力が供給される半導体記憶装置の消費電力低減方法。 (相違点1) 補助記憶装置としての半導体記憶装置に対してデータの書き込み及び読み出しの際、本発明は、ファイル管理システムに基づいてファイル単位で行うのに対し、引用例に記載された発明はその点について明らかでない点。 (相違点2) 本発明は、オペレーティングシステム等の上位システムにおいて、アプリケーション毎に予め補助記憶装置としての半導体記憶装置の消費電力を低減する節電モードと、該半導体記憶装置へのアクセススピードを高速にするアクセス優先モードのいずれか一方のモードを設定しておくことにより、補助記憶装置としての半導体記憶装置の消費電力を低減するものであるのに対し、引用例に記載された発明は、起動中のアプリケーションが使用する補助記憶装置としての半導体記憶装置を含む周辺機器の使用状況を監視してその時の使用状況に応じて当該周辺機器の消費電力の低減を自動的に行うものである点。 (相違点3) 補助記憶装置としての半導体記憶装置の消費電力を低減させる具体的なやり方について、本発明は、アクセス性能優先モードのときの電源電圧よりも低い電源電圧を供給するようにしているのに対し、引用例には、「利用される電力を減少させる」という趣旨の開示はあるが、電源電圧を低くすることについては明記されていない点。 (相違点1の判断) アプリケーションプログラム実行中における補助記憶装置としての半導体記憶装置に対して、データの書き込み及び読み出しをファイル管理システムに基づいてファイル単位で行うことは、RAMディスクに見られるようにコンピュータ装置において普通に採用されている周知慣用技術に過ぎない。 (相違点2の判断) 起動中のアプリケーションが使用する補助記憶装置など周辺機器に対し、適宜、消費電力の低減を図る際、アプリケーション毎の情報処理内容や使い勝手等をそれ程考慮しなくても構わないのであれば、引用例に記載された発明のような、補助記憶装置等の実際の使用状況を監視しながら適切な節電を図るという合理的、高度な方法ではなく、単に予め節電モードにするものとアクセス優先モードにするものとをアプリケーション毎に決めておくという単純な方法でもそれなりに節電ができるであろうことは当業者に自明である。そして、どのアプリケーションを節電モードに設定するかは、そのアプリケーションの起動中における情報処理内容や使い勝手等をある程度考慮して適宜ユーザが決めればよいことであるから、このような予め節電モードにするものとアクセス優先モードにするものとをアプリケーション毎に予め決めておく方法を採用した点に困難性は認められない。また、半導体記憶装置へのアクセススピードを高速にするアクセス優先モードが、消費電力を低減する節電モード時における電源電圧よりも高い電源電圧が供給されることにより行われることは、従来より周知慣用技術(必要で有れば、前置審査で引用された特開平10-188567号公報参照)であり、本発明のように構成することは当業者が適宜になし得ることと認められる。 (相違点3について) コンピュータ装置において、半導体記憶装置などへの供給電圧を低下させることにより消費電力を低減する技術は、例えば、原審の拒絶理由でも引用した特開平5-11897号公報にも見られるように当該技術分野において周知慣用技術に過ぎず、本発明において当該技術を採用した点に格別な技術的意義も見あたらないから、当該相違点に困難性は認められない。 また、本願発明により奏する作用効果も、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものとは認められない。 【4】むすび 以上のとおりであって、本願の特許請求の範囲第1項に係る発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-11-07 |
結審通知日 | 2002-11-12 |
審決日 | 2002-11-25 |
出願番号 | 特願平10-299634 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田中 貞嗣、竹井 文雄、安島 智也 |
特許庁審判長 |
吉村 宅衛 |
特許庁審判官 |
千葉 輝久 治田 義孝 |
発明の名称 | 半導体記憶装置の消費電力低減方法 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 河合 信明 |
代理人 | 京本 直樹 |