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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10L
管理番号 1070174
審判番号 不服2002-1267  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-09-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-24 
確定日 2003-01-09 
事件の表示 平成 3年特許願第 31913号「音声再生装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 9月 2日出願公開、特開平 4-246700]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成3年1月31日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年7月31日、平成14年2月25日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】 ランダム・アクセス・メモリと、
着脱自在なメモリカードが接続されるとともに前記ランダム・アクセス・メモリと接続されたディジタル・シグナル・プロセッサと、
前記ディジタル・シグナル・プロセッサと接続されたD/A変換部と、
前記D/A変換部と接続された出力端子と、
前記メモリカード及び前記ランダム・アクセス・メモリとは接続されず、前記ディジタル・シグナル・プロセッサと接続されたシステムコントローラと、
前記システムコントローラと接続された入出力部と
を備える音声再生装置であって、
前記ディジタル・シグナル・プロセッサは、前記メモリカードに格納されたディジタル音声データを読出すとともに前記ランダム・アクセス・メモリを介して前記ディジタル音声データを処理し、
前記D/A変換部は、前記処理されたディジタル音声データをアナログ音声データに変換し、
前記出力端子は、前記アナログ音声データを出力し、
前記入出力部は、ユーザからの指令が入力されるとともに前記音声再生装置の動作状態を示す信号を出力し、
前記システムコントローラは、前記指令に従って前記ディジタル・シグナル・プロセッサが行う処理を制御することを特徴とする音声再生装置。」

2 刊行物発明
(1)これに対して、当審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である昭和63年9月22日に頒布された「特開昭63-228200号公報」(以下「刊行物1」という。)は、「IC音源装置」に関するものであって、その公報には次の事項が記載されている。
ア 「外部記憶媒体として、フロツピーデイスクやROMカートリツジ等がよく用いられるが、前者は、デイスクドライブ等を必要とし、その小型化に限界があるという問題点を有し、後者は、その取扱いがむずかしい等の問題点を有する。本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、使い勝手のよい、小型の低価額のIC音源装置を提供することにある。」(2頁左下欄6行ないし2頁左下欄14行)
イ 「第1図は本発明の一実施例の構成を示すブロツク図である。第1図において、1はIC音源装置本体、2はICメモリカード、3はコネクタ、4は中央処理装置、5はICメモリカードインターフエイス、6はプログラム読出し装置、7はプログラム用RAM、8は再生装置、9はD/A変換装置、10は分析装置、11はA/D変換装置、12は外部インターフエイス、13はアプリケーシヨンプログラムメモリ、14は音声データメモリ、15はスピーカ、16はマイク、17は再生操作釦、18は録音操作釦、19はプログラム用ROMである。本発明によるIC音源装置は、IC音源装置本体(以下単に本体という)1と、該本体1とコネクタ3により本体1と着脱可能なカード状の不揮発性記憶媒体であるICメモリカード2とにより構成される。本体1は、IC音源装置全体の各種制御をプログラムにより行う中央処理装置4と、ICメモリカード2との間でデータの転送制御を行うICメモリカードインターフエイス5と、プログラム読出し装置6と、該プログラム読出し装置6によりICメモリカード2から読出されたアプリケーションプログラムを格納するプログラム用RAM7と、共通、基本プログラムを予め格納しているプログラム用ROM19と、音声の再生装置8と、D/A変換装置9と、音声の分析装置10と、A/D変換装置11と、音声の録音、再生の指示を中央処理装置4に伝える外部インターフエイス12とにより図示のように構成される。ICメモリカード2は、アプリケーションプログラムメモリ13と音声データメモリ14とを有して構成される。」(3頁左上欄9行ないし3頁右上欄20行、第1図)
ウ 「ICメモリカード2が本体1にコネクタ3を介して装着され、本体1に電源が投入されると、中央処理装置1は、電源投入を検知した後、プログラム読出し装置6を起動する。プログラム読出し装置6は、これにより、ICメモリカード2内のアプリケーシヨンプログラムメモリ13内のプログラムを読出し、プログラム用RAM7に格納する。中央処理装置4は、プログラム用RAM7に格納されたアプリケーションプログラムと、プログラム用ROM19内に予め格納されている共通、基本プログラムとを結合し、結合されたプログラムに基づき、ICメモリカード2内の音声データメモリ14内の音声データを用いて次のような処理を実行する。・・・中央処理装置4は、再生操作釦17が操作されたことを外部インターフエイス12を介して検知すると、それに対応した音声データがICメモリカード2の音声データメモリ14内のどこにあるかをプログラム用RAM7に格納されたアプリケーシヨンプログラムにより判別し、再生装置8を起動する。再生装置8は、ICメモリカードインターフエイス5を介してICメモリカード2の音声データメモり14を直接アクセスし、読出した音声データを編集した後、D/A変換装置9に出力する。D/A変換装置は、再生装置8より与えられた編集済みの音声データをアナログ信号に変換して、スピーカ15から音声として出力する。」(3頁左下欄13行ないし3頁右下欄20行)
エ これらの記載事項からして、刊行物1には、「使い勝手のよい、小型の低価額のIC音源装置であって、
ICメモリカード、コネクタ、中央処理装置、ICメモリカードインターフエイス、プログラム読出し装置、プログラム用RAM、再生装置、D/A変換装置、分析装置、A/D変換装置、外部インターフエイス、アプリケーシヨンプログラムメモリ、音声データメモリ、スピーカ、マイク、再生操作釦、録音操作釦、プログラム用ROMを備え、
IC音源装置本体(以下単に本体という)1と、該本体1とコネクタ3により本体1と着脱可能なカード状の不揮発性記憶媒体であるICメモリカード2とにより構成され、
本体1は、IC音源装置全体の各種制御をプログラムにより行う中央処理装置4と、ICメモリカード2との間でデータの転送制御を行うICメモリカードインターフエイス5と、プログラム読出し装置6と、該プログラム読出し装置6によりICメモリカード2から読出されたアプリケーションプログラムを格納するプログラム用RAM7と、共通、基本プログラムを予め格納しているプログラム用ROM19と、音声の再生装置8と、D/A変換装置9と、音声の分析装置10と、A/D変換装置11と、音声の録音、再生の指示を中央処理装置4に伝える外部インターフエイス12とにより構成され、
ICメモリカード2は、アプリケーションプログラムメモリ13と音声データメモリ14とを有して構成され、
ICメモリカード2が本体1にコネクタ3を介して装着され、本体1に電源が投入されると、中央処理装置4は、電源投入を検知した後、プログラム読出し装置6を起動し、
プログラム読出し装置6は、これにより、ICメモリカード2内のアプリケーシヨンプログラムメモリ13内のプログラムを読出し、プログラム用RAM7に格納し、中央処理装置4は、プログラム用RAM7に格納されたアプリケーションプログラムと、プログラム用ROM19内に予め格納されている共通、基本プログラムとを結合し、結合されたプログラムに基づき、ICメモリカード2内の音声データメモリ14内の音声データを用いて、中央処理装置4が、再生操作釦17が操作されたことを外部インターフエイス12を介して検知すると、それに対応した音声データがICメモリカード2の音声データメモリ14内のどこにあるかをプログラム用RAM7に格納されたアプリケーシヨンプログラムにより判別し、再生装置8を起動し、
再生装置8は、ICメモリカードインターフエイス5を介してICメモリカード2の音声データメモり14を直接アクセスし、読出した音声データを編集した後、D/A変換装置9に出力し、D/A変換装置は、再生装置8より与えられた編集済みの音声データをアナログ信号に変換して、スピーカ15から音声として出力する
IC音源装置。」(以下「刊行物発明」という)が記載されていると認められる。
(2)また、当審拒絶理由に引用された、本願の出願日前である平成2年11月21日に頒布された「特開平2―284536号公報」(以下「刊行物2」という。)は、「音響再生装置」に関するものであって、その公報には、次の事項が記載されている。
ア 「第1図に示した・・・音響再生装置においては、・・・A/D変換器6から出力されるディジタルオーディオ信号はディジタル信号処理手段としてのDSP7に供給される。DSP7は、加算器、乗算器、アキュームレータ、RAM及びROM等を含む1チップの集積回路にて構成されており、入力ディジタルオーディオ信号にマイクロコンピュータ8からの指令に応じた音場制御を施して出力する。また、DSP7には所望の各種の遅延時間を得て反射音を作成するために外部メモリ9が接続されている。DSP7から出力されるディジタルオーディオ信号はディジタルフィルタ10を介してD/A変換器11に供給される。D/A変換器11の出力が左右2チャンネルのオーディオ信号出力となる。・・・クロックパルス発生器12はDSP7の演算動作のためのクロックパルスを発生し、クロックパルスの周波数を変更できるように2つの異なる周波数の発振子13,14が切換スイッチ15を介して外付けされている。また、クロックパルス発生器12はクロックパルスの発生停止制御端子を有し、この制御端子が例えば、高レベルにされるときクロックパルスの発生を停止するようになっている。切換スイッチ15の切換及びクロックパルスの発生停止はマイクロコンピュータ8により制御される。マイクロコンピュータ8はマイクロプロセッサ21,RAM22,ROM23,入出力インターフェース24ないし26及びクロックパルス発生器(図示せず)を備えており、マイクロプロセッサ21,RAM22,ROM23及びインターフェース24,25はバスによって互いに接続されている。インターフェース24にはDSP7,上記のクロックパルス発生停止制御端子及び切換スイッチ15が接続されている。・・・更にインターフェース26には操作に応じて各種の指令を発生するためのキーボード17と共に表示器18の駆動回路19が接続されている。」(2頁右上欄3行〜右下欄15行、第1図)

3 本願発明と刊行物発明との対比
本願発明と刊行物発明を対比すると、
(1)刊行物発明の「再生装置」は、「ICメモリカードインターフエイス5を介して着脱可能なICメモリカード2の音声データメモり14を直接アクセスし、読出した音声データを編集した後、D/A変換装置9に出力する」ものであるところ、本願発明の「ディジタル・シグナル・プロセッサ」も「着脱自在なメモリカードが接続されるとともに前記ランダム・アクセス・メモリと接続され、メモリカードに格納されたディジタル音声データを読出すとともに前記ランダム・アクセス・メモリを介して前記ディジタル音声データを処理し、接続されたD/A変換部」に出力するものであるから再生装置といえるので、両者は「再生装置」という点で一致している。
そして、刊行物発明の「再生装置」は、「ICメモリカード2の音声データメモり14を直接アクセスし」ているのであるから、再生装置とメモリカードは(CPUを介してでなく直接アクセスできるようにICメモリカードインターフエイス5を介して)接続されているものといえるので、両者は、「着脱自在なメモリカードが接続される再生装置」を有する点および「再生装置は、メモリカードに格納されたディジタル音声データを読出すとともにディジタル音声データを処理」する点で一致している。
(2)刊行物発明の「再生装置」は、「読出した音声データを編集した後、D/A変換装置9に出力する」ものであるので、ディジタル・シグナル・プロセッサではないものの刊行物発明は、「再生装置と接続されたD/A変換部」を有し、上記(1)での検討と同様に、両者は、「再生装置と接続されたD/A変換部」を有する点で一致している。
(3)刊行物発明の「D/A変換装置」は、「再生装置8より与えられた編集済みの音声データをアナログ信号に変換して、スピーカ15から音声として出力する」ものであり、スピーカを接続するための出力端子を有することは技術常識であるから、刊行物発明は、本願発明の「出力端子はアナログ音声データを出力し」、「D/A変換部と接続された出力端子」および「D/A変換部は、処理されたディジタル音声データをアナログ音声データに変換し」ている点に相当する構成を実質的に有している。
(4)刊行物発明の「中央処理装置4」は「再生操作釦17が操作されたことを外部インターフエイス12を介して検知すると、再生装置8を起動」するものであり、ディジタル・シグナル・プロセッサと接続しているものではないものの、再生装置と接続して再生装置をコントロールしているのであるから、上記(1)での検討と同様に、本願発明の「システムコントローラ」に対応し、両者は「再生装置と接続されたシステムコントローラ」を有する点で一致し、再生操作釦の操作も「指令」といえるので、「システムコントローラは、指令に従って再生装置が行う処理を制御する」点で一致している。
また、刊行物発明の「再生操作釦」「外部インターフエイス」は本願発明の「入出力部」のうち「入力部」に相当するので、刊行物発明は、本願発明の「システムコントローラと接続された入力部」および「入力部は、ユーザからの指令が入力される」点に相当する構成を有している。
(5)刊行物発明の「IC音源装置」は、「再生装置8より与えられた編集済みの音声データをアナログ信号に変換して、スピーカ15から音声として出力する」ものであるから、本願発明の「音声再生装置」に相当する。
(6)したがって、両者は「着脱自在なメモリカードが接続される再生装置と、前記再生装置と接続されたD/A変換部と、前記D/A変換部と接続された出力端子と、前記再生装置と接続されたシステムコントローラと、前記システムコントローラと接続された入力部とを備える音声再生装置であって、前記再生装置は、前記メモリカードに格納されたディジタル音声データを読出すとともにディジタル音声データを処理し、前記D/A変換部は、前記処理されたディジタル音声データをアナログ音声データに変換し、前記出力端子は、前記アナログ音声データを出力し、前記入力部は、ユーザからの指令が入力され、前記システムコントローラは、前記指令に従って前記再生装置が行う処理を制御することを特徴とする音声再生装置。」である点で一致し、次の点で一応相違しているものと認められる。
ア 再生装置について、本願発明が「ランダム・アクセス・メモリと、前記ランダム・アクセス・メモリと接続されたディジタル・シグナル・プロセッサ」であり、「ランダム・アクセス・メモリを介してディジタル音声データを処理するディジタル・シグナル・プロセッサ」であるのに対し、刊行物発明は、ランダム・アクセス・メモリを介して処理するディジタル・シグナル・プロセッサかは明らかでないものの、ディジタル音声データを処理する再生装置である点(なお、刊行物発明のRAM7は、本願発明の「ランダム・アクセス・メモリ」に相当するものではない。)
イ システムコントローラについて、本願発明が「前記メモリカード及び前記ランダム・アクセス・メモリとは接続され」ないものであるのに対し、刊行物発明のCPUはメモリカードおよびランダム・アクセス・メモリ(RAM)と接続されている点
ウ 入出力部について、本願発明が「音声再生装置の動作状態を示す信号を出力」するものであるのに対し、刊行物発明の外部インターフェイスからは前記信号は出力されない点

4 相違点についての検討
(1)相違点アについて
刊行物2には「音の処理のためのディジタル・シグナル・プロセッサおよびそれに接続するランダム・アクセス・メモリ」が記載されており、また一般にディジタル・シグナル・プロセッサで音の処理をすることは周知技術(必要ならば、刊行物2の他に、特開昭58-94033号公報、特開昭62-43928号公報参照)であるから、ディジタル・シグナル・プロセッサにランダム・アクセス・メモリを接続して、ランダム・アクセス・メモリを介してディジタル音声データを処理することは当業者にとって容易に推考できたものである。
(2)相違点イについて
刊行物発明のRAM7は、本願発明の「前記ランダム・アクセス・メモリ」に相当するものではない。本願発明の「前記ランダム・アクセス・メモリ」は上記(1)で検討したように、ディジタル・シグナル・プロセッサ(再生装置)に接続したランダム・アクセス・メモリであるが、それに相当するものは、刊行物発明にはないものである。したがって、刊行物発明のCPUは(ディジタル・シグナル・プロセッサ(再生装置)に接続した)「前記ランダム・アクセス・メモリ」には接続されていない。
また、メモリカードがシステム・コントローラに接続されているかどうかは、個々の実施態様において、システム・コントローラからメモリカードを制御する必要に応じて適宜なされるものであり設計的事項というべきものである。
(3)相違点ウについて
刊行物2には「音の処理のためのディジタル・シグナル・プロセッサおよびそれに接続して指令するマイクロコンピュータおよびそのインターフェースおよびそれに接続する表示器」が記載されており、マイクロコンピュータからの出力を表示器で表示しているものであるところ、一般にオーディオ装置において、その動作表示を適宜行うことは普通におこなわれているものであって慣用技術にすぎず必要に応じて適宜採用できる程度のものであり、マイクロコンピュータが本願発明の「システムコントローラ」に相当し、インターフェースが本願発明の「入出力部」に相当するから、システム・コントローラの出力により動作表示を行うことは、当業者が容易に推考しえたものである。
そして、これらを総合的に考慮しても、上記相違点は、当業者が容易に推考できたものであり、また、上記相違点に基づく本願発明の効果に格別顕著なものは認められない。

5 むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-10-29 
結審通知日 2002-11-05 
審決日 2002-11-29 
出願番号 特願平3-31913
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 剛史  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 小松 正
山本 章裕
発明の名称 音声再生装置  
代理人 京本 直樹  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  

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