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審決分類 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C01G
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C01G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C01G
管理番号 1070339
異議申立番号 異議2001-71988  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-03-01 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-18 
確定日 2002-10-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3129451号「固体多成分膜、電気化学リアクター成分、電気化学リアクター、並びに酸化反応に対する膜、リアクター成分、及びリアクターの使用」の請求項1〜18に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3129451号の請求項1〜18に係る発明の特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3129451号は、平成2年12月26日(パリ条約による優先権主張:1989年12月27日、米国)に出願され、平成12年11月17日に特許の設定登録がなされたものであり、その後、この特許につき、松村陽一より、特許異議の申立がなされ、これに基づき、取消理由が通知され、特許権者より、その指定期間(期間延長を含む)内である平成14年8月15日付けで、明細書の訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
II-1.訂正事項
本件明細書につき、平成14年8月15日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される、次の(a)〜(j)のとおりの訂正を求めるものである。
(a)特許請求の範囲の請求項8における、
「【請求項8】酸素消費ガス又は酸素含有ガスを含む環境中で、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる、電気化学リアクターセルであって、入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する固体多成分膜を特徴とし、該固体膜が請求項1〜3のいずれか1項に記載のものであり、該要素が請求項4〜7のいずれか1項に記載のものである、前記電気化学リアクターセル。」を、
「【請求項8】酸素消費ガス又は酸素含有ガスを含む環境中で、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる、電気化学リアクターセルであって、入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する要素中の固体多成分膜を特徴とし、該固体膜が請求項1〜3のいずれか1項に記載のものであり、該要素が請求項4〜7のいずれか1項に記載のものである、前記電気化学リアクターセル。」と訂正する。
(b)明細書段落0072第9表(特許公報第32頁第9表)における、
「実施例C-2による」を、「実施例E-2による」と訂正する。
(c)明細書段落0072第10表(特許公報第33頁第10表)における、
「実施例C-2による」を、「実施例E-2による」と訂正する。
(d)明細書段落0072第11表(特許公報第33頁第11表)における、
「実施例C-3による」を、「実施例E-3による」と訂正する。
(e)明細書段落0072第12表(特許公報第34頁第12表)における、
「実施例C-3による」を、「実施例E-3による」と訂正する。
(f)明細書段落0072第13表(特許公報第34頁第13表)における、
「実施例C-5による」を、「実施例E-5による」と訂正する。
(g)明細書段落0072第14表(特許公報第35頁第14表)における、
「実施例C-6による」を、「実施例E-6による」と訂正する。
(h)明細書段落0072第15表(特許公報第36頁第15表)における、
「実施例C-7による」を、「実施例E-7による」と訂正する。
(i)明細書段落0072第16表(特許公報第36頁第16表)における、
「実施例C-8による」を、「実施例E-8による」と訂正する。
(j)明細書段落0072第17表(特許公報第37頁第17表)における、
「実施例C-9による」を、「実施例E-9による」と訂正する。

II-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、拡張・変更の存否
II-2-1.上記(a)の訂正について
上記(a)の訂正は、具体的には、「固体多成分膜を特徴とし」を「要素中の固体多成分膜を特徴とし」と訂正するものである。
当該訂正事項は、請求項8において、要素と他の部材との関係が明示されないものであったところ、固体多成分膜を「要素中の」ものとなし、同項の記載における要素と電気化学的リアクターセルと固体多成分膜との関係をより明瞭にしようとするものであって、特許請求の範囲の明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
そして、当該訂正事項は、明細書の請求項7の記載、明細書の段落0013、同0014等の記載から一義的に導き出されるものであって、願書に添付された明細書に記載される事項の範囲内でなされるものである。
また、当該訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
II-2-2.上記(b)〜(j)の訂正について
上記(b)〜(j)の訂正事項は、それぞれ、第9〜17表に付記される実施例番号が、そこでの前後の記載からみて明らかに誤っていたものを明らかに正しいものに是正するものであり、これらの訂正事項は、誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、当該(b)〜(j)の訂正事項は、発明の詳細な説明の誤記を単に訂正するだけのものであって、願書に添付された明細書に記載される事項の範囲内でなされるものに他ならず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

II-3.訂正の適否の結論
よって、上記訂正請求は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、及び、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.本件発明
本件特許第3129451号の訂正後の本件請求項1〜18に係る発明は、訂正された明細書の特許請求の範囲に記載される次のとおりのものである。
(以下、訂正後の請求項1〜18に係る発明を、それぞれ、必要に応じて、「本件発明1〜18」という)
【請求項1】電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜であって、実質的にペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質を特徴とし、該ペロブスカイト構造が、(1)La又はY、あるいはLaとYの組合せ、(2)Ba、あるいはSrと少くとも1つの他のアルカリ土類金属の組合せ、(3)Fe、及び(4)Cr又はTi、あるいはCrとTiの組合せを含む、前記固体多成分膜。
【請求項2】ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質が、(1)La又はY、あるいはLaとYの組合せ、(2)Ba、あるいはSrとBa、SrとCa、又はSr、Ba及びCaの組合せ、(3)Fe、(4)Cr又はTi、あるいはCrとTiの組合せ、及び(5)Mn又はCo、あるいはMnとCoの組合せを含む、請求項1に記載の多成分固体膜。
【請求項3】ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質が、(1)La、(2)Sr、(3)Fe、(4)Cr、及び(5)Coを含み、該混合金属酸化物物質は粒間析出剤を含有しない、請求項1に記載の多成分固体膜。
【請求項4】電気化学リアクター又はリアクターセル中に使用する要素であって、酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性通路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性通路を有し、(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載されているぺロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質、及び(B)伝導性コーティング又は触媒、あるいは触媒を含む伝導性コーティングを含むことを特徴とする、前記要素。
【請求項5】触媒が硫黄酸化物還元性又は窒素酸化物還元性触媒を含む、請求項4に記載の要素。
【請求項6】電気化学リアクター又はリアクターセル中に使用する要素において、気密な固体電解質であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を含み、また酸素の酸素イオンヘの還元を促進できる伝導性の金属、金属酸化物又はそれらの混合物でコートされた第1表面、及び伝導性の金属、金属酸化物又はそれらの混合物でコートされた第2表面を有する、前記固体電解質を含み、2つの伝導性コーティングが外部回路により連結され、両コーティングが運転温度で安定であり、第1伝導性コーティングが硫黄酸化物還元性又は窒素酸化物還元性触媒を含む、前記要素。
【請求項7】電気化学リアクター又はリアクターセル中に使用する要素であって、酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性通路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性通路を有し、(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体多成分膜、並びに(B)伝導性コーティング、触媒、又は触媒を含む伝導性コーティングを含み、(B)が、(1)アルカリ又はアルカリ土類金属又は金属酸化物を伝導性コーティングの約1〜約50重量%の範囲内の量で含む伝導性コーティング、あるいは(2)酸化カップリング触媒を含むことを特徴とする、前記要素。
【請求項8】酸素消費ガス又は酸素含有ガスを含む環境中で、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる、電気化学リアクターセルであって、入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する要素中の固体多成分膜を特徴とし、該固体膜が請求項1〜3のいずれか1項に記載のものであり、該要素が請求項4〜7のいずれか1項に記載のものである、前記電気化学リアクターセル。
【請求項9】酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させることができる電気化学リアクターであって、
入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有するシェル、並びに、
シェル及びリアクターセルが一緒に第1ガス又はガス混合物を導入、反応及び排出するための第1帯域を形成し、リアクターセルを通る通路が電気化学リアクター内に第2ガス又はガス混合物を導入、反応及び排出するための通路を形成するようにシェル内に位置し、入口端、出口端、及びそれらの間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する、少くとも1つの電気化学リアクターセル、
を特徴とし、該電気化学リアクターセルが、第1帯域中で反応するガスに曝露される第1表面、第1表面に対向し、第2帯域中で反応するガスに曝露される第2表面を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を特徴とする、前記電気化学リアクター。
【請求項10】電気化学リアクターが第1又は第2帯域中の支持体上に触媒を含む、請求項9に記載の電気化学リアクター。
【請求項11】電気化学セルが請求項8に記載のものである、請求項9に記載の電気化学リアクター。
【請求項12】飽和炭化水素化合物から不飽和炭化水素化合物を製造する電気化学的方法であって、
(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を含む第1及び第2表面を有する多成分膜を準備し、
(B)酸素含有ガスを第1表面に接触して通過させ、一方、
(C)飽和炭化水素含有ガスを、任意に第2表面に隣接する脱水素触媒に接触して通過させ、
(D)不飽和炭化水素を回収する、
ことを特徴とし、飽和炭化水素ガスがメタン、エタン、プロパン、又はブタン、あるいはそれらの混合物を含み、多成分膜が多相膜であるとき、飽和炭化水素含有ガスを第2表面に隣接する脱水素触媒に接触させて通す、前記方法。
【請求項13】芳香族化合物の置換のための電気化学的方法であって、
(A)(i)請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を含む気密な固体電解質を含み、また酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性通路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性通路を有する要素、
(ii)第1表面に隣接する第1通路、及び、
(iii)第2表面に隣接する第2通路、
を含む電気化学セルを準備し、
(B)酸素含有ガスを第1通路に通し、一方、
(C)酸素消費ガスを第2通路に通し、ここで、酸素消費ガスが、置換芳香族化合物を生成させるための第2水素含有化合物と水素含有芳香族化合物との混合物を含む、
ことを含む、前記方法。
【請求項14】ガス浄化のための電気触媒法であって、
(A)請求項5又は6に記載の要素を含み、窒素酸化物又は硫黄酸化物還元性触媒が要素の第1表面上に存在する電気化学リアクターセルを準備し、
(B)窒素酸化物又は硫黄酸化物あるいはそれらの混合物を含むガスを要素の第1表面に接触して通過させ、
(C)酸素と反応できるガスを要素の第2表面に接触して通過させる、
ことを含む、前記方法。
【請求項15】ガスがN2O、NO、NO2、SO2、SO3又はそれらの混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】第1伝導性コーティングが硫黄酸化物還元性触媒を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】硫黄還元性触媒がZn及びFeの組合せを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】硫黄還元性触媒がZnFe2O3である、請求項17に記載の方法。

IV.特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として
甲第1号証:寺岡靖剛著、「欠陥ペロブスカイト型酸化物における酸素収脱
着と酸化物イオン電導性に関する研究」、昭和63年5月、
第1〜6,165〜198頁
甲第1号証の2:平成13年6月12日付け九州大学材料開発工学専攻
図書室作成による、証明書
甲第2号証:「電気化学および工業物理化学」、第54巻第8号、昭和61
年8月5日発行、社団法人電気化学教会、第686〜690頁
甲第2号証の2:甲第2号証の部分翻訳文
甲第3号証:「窯業協会誌」、Vol.93[12]1985、第11〜
17頁
甲第4号証:英国特許出願公開第2203446号明細書
甲第4号証の2:甲第4号証の部分翻訳文、
を引用し、
(1)本件請求項1〜18(訂正後の本件請求項1〜18)に係る発明は、甲第1、2、3及び4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり《理由-1》、
(2)本件請求項1〜18に係る発明の特許は、特許法第36条第4項及び5項の規定を満たしていない特許出願に対してなされものであり《理由-2》、したがって、これら特許を取り消すべきである旨、主張する。

V.証拠の記載内容
甲第1号証には、「欠陥ペロブスカイト型酸化物における酸素収脱着と酸化物イオン電導性に関する研究」と題し、次のことが記載されている。
(A-1)「ABO3で示される複合酸化物のうち、灰チタン石(Perovskite,CaTiO3)と同様の結晶構造を有する一連の化合物をペロブスカイト型酸化物と呼ぶ」(第1頁第3〜5行)
(A-2)「ペロブスカイト型酸化物の大きな特徴の一つは、その基本的構造を保持したままで、AサイトおよびBサイトの一部を一種あるいは複数の金属で置換できることである。A、Bサイトのみを置換したA1-xA’xBO3、AB1-yB’yO3やA、Bサイトを同時に置換したA1-xA’XB1-yB’yO3などが可能で、多い場合にはBサイトに9種類の遷移金属イオンが固溶した酸化物も報告されている[7]。図1-3はこれまでに報告されているペロブスカイト型酸化物中に認められる金属イオンをA、Bサイトに分けて示したものである(Mg、Th、PbなどはA、Bサイトいずれに入ったものも報告されているが、報告例の多い方を示した)。ペロブスカイト型酸化物はその格子中にほとんどすべての金属イオンを取り込み得ることが明らかであるとともに、それらの組み合わせにより無限の化合物が得られることが伺われる。」(第6頁第3〜14行)
(A-3)「BサイトにCoを含む欠陥ペロブスカイト型酸化物は、昇温過程で格子中より多量の酸素を容易に脱離し、また酸素を含む雰囲気中での降温により可逆的に酸素を取り込み得ることを・・・で明らかにした。・・・。また、このような酸素収脱着挙動や混合導電性の特性を生かせば酸素の電気化学的透過による純酸素の分離(抽出)が可能である[1.2]。図7-1は固体電解質(濃淡電池短絡法)と混合導電性材料における酸素透過を模式的に示したものである[2]。いずれの場合も高酸素圧側(界面I)で(7-1)式に従い酸素分子の解離、イオン化反応が、低酸素圧側(界面II)では(7-2)式により放電反応が進行するが、
界面I: O2+4e→2O2- (7-1)
界面II: 2O2-→O2+4e (7-2)
・・・。また、固体電解質を用いる場合には、気相-電極-電解質の接する三相界面でのみ上記(7-1)、(7-2)の反応が進行するのに対し、混合導電性材料では、膜全体が一種の電極として働くため、有効電極面積の増大という点からも有利である。」(第165頁第3行〜第166頁下から第16行)
(A-4)「本章では、希土類-コバルト系ペロブスカイト型酸化物について酸素透過能に及ぼす置換元素や酸化物組成の影響を調べ、酸素透過性材料としての欠陥ペロブスカイト型酸化物の特性を評価した。また酸素透過能と欠陥構造、混合導電性との関連や酸素透過機構についても検討した。」(第167頁第1〜4行)
(A-5)「第4節 Co系欠陥ペロブスカイト型酸化物の酸素透過特性に及ぼす置換元素の影響
4.1 Aサイト部分置換の影響
図7-8はLa0.6A’0.4Co0.8Fe0.2O3-δ(A’=La,Na,Ca,Sr,Ba)の酸素透過速度の温度依存性である。AサイトがLaのみのLaCo0.8Fe0.2O3では測定温度範囲で酸素の透過は認められないが、Laの一部を低原子価のアルカリ(Na)、アルカリ土類(Ca,Sr,Ba)元素で置換した場合には、酸素透過能には違いがあるもののいずれも酸素の透過が認められ、原子価制御による酸素空孔の導入が酸素透過能の発現に不可欠であることが伺われる。置換元素による酸素透過能の違いを見てみると、ある一定温度での透過速度はNa<Sr<Ca<Baの序列で増加し、透過開始温度はその逆の序列で低下しており、酸素透過能の向上という点からはBa置換が最も有効である。特に、Ba置換体では酸素透過の開始温度は約300℃であり、これは本研究で調べた欠陥ペロブスカイト型酸化物中で最も低い温度である。」(第178頁第1行〜第179頁第5行)
(A-6)「4.2 Bサイト部分置換の影響
La0.6Sr0.4CoO3-δのBサイトをCr、Mn、Fe、Ni、Cuで部分置換し、酸素透過能に及ぼすBサイト置換の影響を調べた(図7-9)。Aサイトの部分置換では置換元素により酸素透過の開始温度が大きく変化したが、Bサイトの部分置換では置換元素によらずほぼ一定(500〜550℃)である。しかし、透過速度は置換元素によって大きく異なり、Coの一部をCu、Niで置換した場合に増加し、Fe、Cr、Mnで置換した場合に減少している。」(第179頁下から第2行〜180頁下から第5行)
甲第1号証の2には、甲第1号証に当たる下記の学位論文を受け入れたことを照明するとの記載がある。
1.学位論文名:欠陥ペロブスカイト型酸化物における酸素収脱着と
酸化物イオン電導性に関する研究
2.著者:寺岡 靖剛
3.受入日:昭和63年7月25日

甲第2号証には、「一元素置換ペロブスカイトLa1-xSrxFeO3-αと二元素置換ペロブスカイトLa1-xCa0.55xBa0.45xFeO3-αとの構造と電気伝導性」と題し、以下のことが記載されている。
(B-1)「もう一つのLa1-xCa0.55xBa0.45xFeO3-α系は3つの異なる結晶相をとる。LaFeO3と同じ斜方晶はx=0.0から0.3の領域に存在し、立方晶ペロブスカイトはx=0.1から0.9の領域で観察された。ブラウンミラライト型の斜方晶はx=0.7から1.0の領域で観察された。」旨(第687頁第10〜14行)

甲第3号証には、「ペロブスカイト型酸化物における複合カチオン置換とカチオン価数の推定」と題し、以下のことが記載されている。
(C-1)「ペロブスカイト型酸化物のBサイトに多種の3d遷移金属イオンを同時に固溶させたものを合成し,その遷移金属イオンの価数を電気化学的概念を用いて決定した.当モルずつ同時に固溶させたペロブスカイト型酸化物で,最大9種類の遷移金属イオンが固溶した.それは組成式でLa(TiVCrMnFeCoNiCuZn)1O3と表される.」(第11頁下から第20行〜下から第17行)

甲第4号証には、飽和炭化水素から不飽和炭化水素への電気触媒による酸化脱水素反応に関する発明が記載されおり、具体的には、特許異議申立人によれば、以下のこと等が記載されているというものである。
(D-1)「飽和炭化水素から不飽和炭化水素を製造する方法であって、
a)酸素含有ガスをリアクターセルに通過させるが、前記リアクターセルは酸素イオンを伝導する固体電解質からなり、その第1表面に前記ガス中の自由あるいは化合した酸素を酸素イオンに還元する触媒能を有した電気伝導性金属、金属酸化物、あるいは電気伝導性金属/金属酸化物の混合物をコーティングし、第2表面に飽和炭化水素燃料から酸化脱水素反応で不飽和炭化水素を製造する触媒能を有した電気伝導性金属、金属酸化物、あるいは電気伝導性金属/金属酸化物の混合物をコーティングし、さらに電気伝導性を有する前記二つのコーティング表面が各々外部回路によって連結されており、前記酸素含有ガスはリアクターセルの第1表面を通過させる、
b)同時にガス状態の不飽和炭化水素燃料を前記第2表面に通過させる、
c)リアクターセルからガス状の不飽和炭化水素生成物を回収する。」旨(第17頁第2〜18行)

VI.特許異議申立に対する当審の判断
VI-1.特許異議申立の前記《理由-1》について
VI-1-1.本件発明1
甲第1号証には、前記(A-1)及び(A-3)により、ABO3で表現されるペロブスカイト型酸化物につき、BサイトにCoを含む欠陥ペロブスカイト型酸化物を用い電気化学的透過により純酸素を分離(抽出)すること、そして、このCoを含む欠陥ペロブスカイト型酸化物は混合導電性材料であって、当該導電性材料は膜の形態で用いられることが記載され、更に、前記(A-5)及び(A-6)により、当該Co系欠陥ペロブスカイト型酸化物の一種であるLa0.6A’0.4Co0.8Fe0.2O3-δにおいて、AサイトのA’をLa,Na,Ca,Sr,Baで置き換え、また、当該Co系欠陥ペロブスカイト型酸化物の一種であるLa0.6Sr0.4CoO3-δのBサイトをCr、Mn、Fe、Ni、Cuで部分置換して、その酸素透過性を評価したことが記載される。
そこで、本件発明1と甲第1号証に記載される上記のものとを対比する。
甲第1号証におけるBサイトにCoを含む欠陥ペロブスカイト型酸化物は、明らかに、混合金属酸化物からなり、実質的にペロブスカイト構造を保有し、かつ、それは、固体多成分の材料からなるものである。そして、当該欠陥ペロブスカイト型酸化物は、電気化学的透過により純酸素を分離できるものであるから、本件発明1でいう電気化学リアクターに利用できるものであり、また、その場合、本件発明と同様に、膜の形態で用いられるものである。
よって、両者は、
「電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜であって、実質的にペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質である、前記固体多成分膜」である点で軌を一にするものである。
しかし、本件発明は、電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜におけるペロブスカイト構造が、「(1)La又はY、あるいはLaとYの組合せ、(2)Ba、あるいはSrと少くとも1つの他のアルカリ土類金属の組合せ、(3)Fe、及び(4)Cr又はTi、あるいはCrとTiの組合せを含む」というものであるのに対し、甲第1号証に記載のものでは、そのペロブスカイト構造として、La0.6A’0.4Co0.8Fe0.2O3-δのA’をCa、Sr、又はBaで置き換え、また、La0.6Sr0.4CoO3-δのCoをCr又はFeで部分置換した例が示されるものの、上記(1)〜(4)の4成分を具備するものが示されず、この点で両者は相違する。
以下、この相違点に関する構成が容易に想到できるか否かにつき、検討する。
本件明細書には、
「発明者はペロブスカイトイオン格子のB部位におけるクロム及び(又は)チタンの存在がペロブスカイト構造の安定性を高めること、及びクロムの存在が、クロムが+4酸化状態にあるとしても、電子伝導性を高める追加の利点を有することを見出した。」(段落0061)と、本件発明1におけるペロブスカイト構造の4成分のうち、当該(4)のCr又はTi、あるいはCrとTiの組合せの成分は、ペロブスカイト構造の安定性を高めるために用いられることが記載される。
そして、本件発明1の構成、及び、ペロブスカイト型酸化物の性質ないしは物性はペロブスカイト型酸化物を構成する金属が相互に関与することにより生ずるものであるとの技術常識を基に、上記記載をみると、
本件発明1は、電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜のペロブスカイト構造において、当該(4)のCr又はTi、あるいはCrとTiの組合せの成分を採用することにより、他の当該(1)〜(3)の成分と相俟って、その用途からみて明らかなとおり酸素透過性を有するだけでなく、安定化された、ペロブスカイト構造を有する電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜を得たといえるものである。
これに対して、甲第1号証に記載の発明では、ペロブスカイト構造を有するLa0.6A’0.4Co0.8Fe0.2O3-δにおいて、A’をCa、Sr、又はBaで置き換え、また、ペロブスカイト構造を有するLa0.6Sr0.4CoO3-δのCoをCr又はFeで部分置換した場合の酸素透過性が示されるだけで、当該(4)の成分に相当するCrをペロブスカイトの安定化の目的で用いることまでが示されないものである。
また、甲第1号証の前記(A-6)によると、当該(4)に相当する成分を含むものとして唯一例示されるCrLa0.6Sr0.4CoO3-δのCoをCrで部分置換したものでは、その酸素透過能が他のものに比べ著しく劣るものである。そうすると、所要の酸素透過性が要求されるところのこの用途の固体多成分膜のペロブスカイト構造を設計するに際して、該Crで部分置換したものを基に、本件発明1の上記構成のようにすることは、直ちに、想到することはできないものである。
このように、甲第1号証の記載から、本件発明1の上記の構成を導き出す動機付けがない。
したがって、甲第1号証に記載の発明から、電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜において、そのペロブスカイト構造を、「(1)La又はY、あるいはLaとYの組合せ、(2)Ba、あるいはSrと少くとも1つの他のアルカリ土類金属の組合せ、(3)Fe、及び(4)Cr又はTi、あるいはCrとTiの組合せを含むようにすることが当業者の容易に想到できるものではない。

次に、この相違点につき、甲第2〜4号証の記載を順次みる。
甲第2号証には、二元素置換ペロブスカイトLa1-xCa0.55xBa0.45xFeO3-αの構造等に関し記載されるものであるが、ペロブスカイト構造が、本件発明1のように、当該(4)のCr又はTi、あるいはCrとTiの組合せの成分を用いて構成されるものではなく、また、当然のこととして、当該(4)の成分をペロブスカイト構造の安定化のために用いることが示されるものではない。
甲第3号証には、ペロブスカイト型酸化物で,最大9種類の遷移金属イオンが固溶したLa(TiVCrMnFeCoNiCuZn)1O3が示されるが、その固溶した9種の中のCr又はTi、あるいはCr及びTi成分が当該、ペロブスカイト構造の安定化のために用いることが示されるものではない。また、このものでは、当該(2)のBa、あるいはSrと少くとも1つの他のアルカリ土類金属の組合せの成分が示されない。
甲第4号証には、飽和炭化水素から不飽和炭化水素への電気触媒による酸化脱水素反応に関する発明が記載されるものの、本件発明1の4成分からなるペロブスカイト構造につき、教示するものはない。
このように、甲第2〜4号証のものからは、当該(4)のCr又はTi、あるいはCrとTiの組合せの成分を、電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜におけるペロブスカイト構造の安定化のために用いることが教示されない。
そうすると、甲第1号証に記載の発明に甲第2〜4号証に記載のものを併せてみても、本件発明1の上記相違点に関する構成が容易に導き出せるものではない。
したがって、本件発明1は、甲第1〜4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

VI-1-2.本件発明2〜18について
本件発明2〜18は、請求項1の記載を引用し、本件発明1の構成を全て具備するものである。
したがって、本件発明1につき上記VI-1-1.で説示した理由と同じ理由により、本件発明2〜18は、甲第1〜4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

VI-2.特許異議申立の前記《理由-2》について
ここでの特許異議申立人の具体的主張は、
(イ)請求項1〜3に限定する混合金属酸化物の全てについて優れた作用効果があることの開示がなく、当業者が容易に実施できる程度に発明が記載されておらず、
(ロ)請求項8において、「該要素が・・・記載のものである」とあるが、該要素の前文には要素の記載はなく、発明の構成が不明確であり、
(ハ)請求項12において、飽和炭化水素がメタンである場合に、これから不飽和炭化水素を回収する具体例の記載がない、というものである。
そこで、これらの具体的主張につき検討する。
上記(イ)について
本件明細書には、上記VI-1-1.の箇所で説示したとおり、「ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物の電子伝導性は、一般にAイオンを二価金属カチオン例えばBa、Ca又はSrで部分置換、又は「ドープ」したときに生ずる。より大きい電子伝導性へのこの傾向は、しばしば運転温度における一層大きい不安定性を随伴する。異なる構造に一部分解したペロブスカイトはもとのペロブスカイト構造のそれとは実質的に異なる電子伝導性を有するであろう。」(段落0060)、及び、「前記のように、発明者はペロブスカイトイオン格子のB部位におけるクロム及び(又は)チタンの存在がペロブスカイト構造の安定性を高めること、及びクロムの存在が、クロムが+4酸化状態にあるとしても、電子伝導性を高める追加の利点を有することを見出した。」(段落0061)と記載されるものである。
そして、この分野の技術常識を素に上記記載をみれば、本件発明1は、電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜のペロブスカイト構造において、そのAサイトに、当該(2)のBa、あるいはSrと少くとも1つの他のアルカリ土類金属の組合せを採用し、かつ、そのBサイトに、当該(4)のCr又はTi、あるいはCrとTiの組合せを採用することにより、当該(1)及び(3)の成分と相俟って、酸素透過性を有するだけでなく、高電子伝導性であって、かつ、安定な、電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜を得たといえるものである。
そしてまた、本件発明1の構成の全てを具備する本件発明2及び3の多成分固体膜においても、上記と同様な発明の効果を奏するものであり、この外、本件発明1の構成の全てを具備する本件発明4〜18の要素、電気化学的リアクターセル、電気化学的リアクター、電気化学的方法、又は、電気触媒法においても、安定的な電気触媒反応を実施できる等の有用な効果を奏したものであるといえる。
しれみれば、本件発明1〜3で限定する混合金属酸化物の全てについて優れた作用効果が開示されないとまではいえず、また、本件発明4〜18においても優れた作用効果が開示されないとまではいえず、したがって、この特許異議申立人の主張は当らない。
上記(ロ)について
請求項8の記載については、前記したとおり訂正請求により、「固体多成分膜を特徴とし」を「要素中の固体多成分膜を特徴とし」と訂正されたものである。
この訂正により、請求項8における、要素と電気化学的リアクターセルと固体多成分膜との関係が明瞭になったものであり、したがって、要素の前文には要素の記載はなく、発明の構成が不明確であるとはいえなくなったものである。
したがって、結果的には、特許異議申立人のこの主張は当たらない。
上記(ハ)について
メタンと酸素から触媒によりエチレンを製造することは、酸化的カップリング反応として本件出願前に当業者にとって周知な事項(必要ならば、特開昭63-77826号公報、特開昭64-29325号公報等を参照)となっている。
してみれば、請求項12に記載の発明につき、飽和炭化水素がメタンである場合の不飽和炭化水素化合物の製造方法に関する詳細な具体例が、発明の詳細な説明の項に記載されていなくとも、当該発明を当業者が容易に実施することができないとまではいえない。

したがって、本件発明1〜18の特許は、特許法第36条第4項、第5項及び第6項の規定を満たしていない特許出願に対してなされたものであるということはできない。

VII. まとめ
特許異議申立の理由及び証拠によっては、訂正後の本件請求項1〜18に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に訂正後の本件請求項1〜18に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
固体多成分膜、電気化学リアクター成分、電気化学リアクター、並びに酸化反応に対する膜、リアクター成分及びリアクターの使用
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】電気化学リアクター中に使用する固体多成分膜であって、実質的にペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質を特徴とし、該ペロブスカイト構造が、(1)La又はY、あるいはLaとYの組合せ、(2)Ba、あるいはSrと少くとも1つの他のアルカリ土類金属の組合せ、(3)Fe、及び(4)Cr又はTi、あるいはCrとTiの組合せを含む、前記固体多成分膜。
【請求項2】ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質が、(1)La又はY、あるいはLaとYの組合せ、(2)Ba、あるいはSrとBa、SrとCa、又はSr、Ba及びCaの組合せ、(3)Fe、(4)Cr又はTi、あるいはCrとTiの組合せ、及び(5)Mn又はCo、あるいはMnとCoの組合せを含む、請求項1に記載の多成分固体膜。
【請求項3】ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質が、(1)La、(2)Sr、(3)Fe、(4)Cr、及び(5)Coを含み、該混合金属酸化物物質は粒間析出剤を含有しない、請求項1に記載の多成分固体膜。
【請求項4】電気化学リアクター又はリアクターセル中に使用する要素であって、酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性通路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性通路を有し、(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載されているペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質、及び(B)伝導性コーティング又は触媒、あるいは触媒を含む伝導性コーティングを含むことを特徴とする、前記要素。
【請求項5】触媒が硫黄酸化物還元性又は窒素酸化物還元性触媒を含む、請求項4に記載の要素。
【請求項6】電気化学リアクター又はリアクターセル中に使用する要素において、気密な固体電解質であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を含み、また酸素の酸素イオンへの還元を促進できる伝導性の金属、金属酸化物又はそれらの混合物でコートされた第1表面、及び伝導性の金属、金属酸化物又はそれらの混合物でコートされた第2表面を有する、前記固体電解質を含み、2つの伝導性コーティングが外部回路により連結され、両コーティングが運転温度で安定であり、第1伝導性コーティングが硫黄酸化物還元性又は窒素酸化物還元性触媒を含む、前記要素。
【請求項7】電気化学リアクター又はリアクターセル中に使用する要素であって、酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性通路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性通路を有し、(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体多成分膜、並びに(B)伝導性コーティング、触媒、又は触媒を含む伝導性コーティングを含み、(B)が、(1)アルカリ又はアルカリ土類金属又は金属酸化物を伝導性コーティングの約1〜約50重量%の範囲内の量で含む伝導性コーティング、あるいは(2)酸化カップリング触媒を含むことを特徴とする、前記要素。
【請求項8】酸素消費ガス又は酸素含有ガスを含む環境中で、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる、電気化学リアクターセルであって、入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する要素中の固体多成分膜を特徴とし、該固体膜が請求項1〜3のいずれか1項に記載のものであり、該要素が請求項4〜7のいずれか1項に記載のものである、前記電気化学リアクターセル。
【請求項9】酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させることができる電気化学リアクターであって、
入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有するシェル、並びに、
シェル及びリアクターセルが一緒に第1ガス又はガス混合物を導入、反応及び排出するための第1帯域を形成し、リアクターセルを通る通路が電気化学リアクター内に第2ガス又はガス混合物を導入、反応及び排出するための通路を形成するようにシェル内に位置し、入口端、出口端、及びそれらの間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する、少くとも1つの電気化学リアクターセル、
を特徴とし、該電気化学リアクターセルが、第1帯域中で反応するガスに曝露される第1表面、第1表面に対向し、第2帯域中で反応するガスに曝露される第2表面を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を特徴とする、前記電気化学リアクター。
【請求項10】電気化学リアクターが第1又は第2帯域中の支持体上に触媒を含む、請求項9に記載の電気化学リアクター。
【請求項11】電気化学セルが請求項8に記載のものである、請求項9に記載の電気化学リアクター。
【請求項12】飽和炭化水素化合物から不飽和炭化水素化合物を製造する電気化学的方法であって、
(A)請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を含む第1及び第2表面を有する多成分膜を準備し、
(B)酸素含有ガスを第1表面に接触して通過させ、一方、
(C)飽和炭化水素含有ガスを、任意に第2表面に隣接する脱水素触媒に接触して通過させ、
(D)不飽和炭化水素を回収する、
ことを特徴とし、飽和炭化水素ガスがメタン、エタン、プロパン、又はブタン、あるいはそれらの混合物を含み、多成分膜が多相膜であるとき、飽和炭化水素含有ガスを第2表面に隣接する脱水素触媒に接触させて通す、前記方法。
【請求項13】芳香族化合物の置換のための電気化学的方法であって、
(A)(i)請求項1〜3のいずれか1項に記載の膜を含む気密な固体電解質を含み、また酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性通路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性通路を有する要素、
(ii)第1表面に隣接する第1通路、及び、
(iii)第2表面に隣接する第2通路、
を含む電気化学セルを準備し、
(B)酸素含有ガスを第1通路に通し、一方、
(C)酸素消費ガスを第2通路に通し、ここで、酸素消費ガスが、置換芳香族化合物を生成させるための第2水素含有化合物と水素含有芳香族化合物との混合物を含む、
ことを含む、前記方法。
【請求項14】ガス浄化のための電気触媒法であって、
(A)請求項5又は6に記載の要素を含み、窒素酸化物又は硫黄酸化物還元性触媒が要素の第1表面上に存在する電気化学リアクターセルを準備し、
(B)窒素酸化物又は硫黄酸化物あるいはそれらの混合物を含むガスを要素の第1表面に接触して通過させ、
(C)酸素と反応できるガスを要素の第2表面に接触して通過させる、
ことを含む、前記方法。
【請求項15】ガスがN2O、NO、NO2、SO2、SO3又はそれらの混合物を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】第1伝導性コーティングが硫黄酸化物還元性触媒を含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】硫黄還元性触媒がZn及びFeの組合せを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】硫黄還元性触媒がZnFe2O3である、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
〔0001〕
〔関連出願のクロスリファレンス〕
本特許出願は、1989年12月27日に提出した米国特許出願、出願番号第07/457,327号;1987年3月13日に提出し、1990年6月12日に米国特許第4,933,054号として発行された米国特許出願、出願番号第07/25,511号の一部継続である1989年12月27日に提出した第07/457,340号;1989年12月27日に提出した第07/457,384号;及び1989年5月25日に提出し、現在放棄されている米国特許出願、出願番号第07/357,317号の一部継続である1990年4月16日に提出した第07/510,296号の一部継続であり、それらが完全に参照される。
〔0002〕
〔技術分野〕
本発明は酸素の移動を促進する電気化学リアクターの分野に関する。より詳しくは、本発明は酸素半透膜、酸素半透膜を含む電気化学リアクター用成分、電気化学リアクター、並びに酸素半透膜及び任意の触媒を含むリアクター成分、並びに酸素半透膜及び任意の触媒を、酸素含有ガスからの酸素消費ガスへの酸素の輸送を利用する電気化学的プロセスの促進に用いる電気化学的方法に関する。
〔0003〕
〔発明の背景〕
合成ガスは主に水素及び一酸化炭素からなる。一般にH2/COモル比は約0.6〜6である。部分酸化による軽質炭化水素例えばメタン及び天然ガスからの合成ガスの製造が知られている。本発明は軽質炭化水素の合成ガスへの電気触媒転化を促進する固体多成分膜を有する電気化学リアクターを記載する。
〔0004〕
多くの刊行物がメタンを二酸化炭素及び水に完全に酸化する普通の燃料電池を記載している。これらの燃料電池は化学プロセスを行うためではなく、むしろ燃料ガス及び空気(又は酸素)から電気を発生するように設計される。燃料電池中で行われるプロセスは部分燃焼よりはむしろ完全燃焼のために選ばれ、燃料ガスの酸化を進行させるために外部電気回路の完成を必要とする。
〔0005〕
本発明の電気化学リアクターに対する他の用途にはオレフィン形成のための炭化水素の部分酸化、エタンの部分酸化、芳香族化合物の置換、1つ又はそれ以上の酸素含有ガス例えばSO2、SO3、N2O、NO、NO2、スチーム、CO2からの酸素抽出、メタンのアンモ酸化などが含まれる。
〔0006〕
飽和有機化合物の不飽和化合物への転化のための脱水素プロセスはよく知られている。継続する努力が近年、所望生成物への転化速度及び選択性を向上するためにそのようなプロセスの改良に対してなされた。本発明は飽和炭化水素例えばエタンをエチレン及びアセチレンに、またプロパンをプロペン及びプロピレンに脱水素する連続プロセスを記載する。本発明のこの方法において、水は副生物であり、また電気を発生することができる。
〔0007〕
平衡制限熱反応である商業的エタン脱水素法はエチレンの妥当な単流収率を得るために高い反応温度の使用に頼らねばならない。必要な高い温度の結果、競争的クラッキング及びコーキング反応の速度が生成物選択性に不利に影響するほど十分高い。
〔0008〕
内在的に平衡制限でない普通の酸化脱水素法もまた高エタン転化において不十分な生成物選択性に悩まされる。
〔0009〕
本発明は競争的クラッキング及びコーキング反応の低速度と結合して不飽和炭化水素への高い転化率を達成するために従来法に内在する不利益を克服する。
〔0010〕
芳香族化合物の置換のための方法がよく知られている。継続する努力が近年所望生成物への転化速度及び選択性を向上させるためにそのような方法の改良に対してなされた。本発明は芳香族化合物例えばベンゼンを第2の水素含有化合物で置換する連続法を記載する。本発明のこの方法において水は副生物であり、また電気を発生することができる。
〔0011〕
例えば硫黄及び窒素の酸化物は静止及び可動源例えば発電所、自動車、船舶、列車などから発散するガス流中のよく知られた有害汚染物質である。硫黄酸化物は水蒸気と結合して眼及び粘膜に対する刺激、金属含有構造物に対する損傷、及び酸性雨による植物に対する環境損傷を生ずる非常に腐食性の蒸気を形成することが知られている。窒素酸化物は有害刺激物であり、また環境に損傷を与える。カルボニルスルフィド(COS)はガス流流出物中に硫黄含有化合物と一酸化炭素の間の反応の生成物として形成される他の有毒汚染物質である。大気中へのこれらの汚染物質の排出に対する規制はますます厳しくなった。本発明は燃料ガスの化学的駆動力を利用してガス流からの硫黄及び窒素の酸化物を除去するための電気触媒法及び電気化学セルを記載する。
〔0012〕
〔発明の概要〕
本発明の方法において使用される固体多成分膜が記載される。固体多成分膜は一般に、電子伝導性相と酸素イオン伝導性相の均質なガス不透過性多相混合物及び(又は)ペロブスカイト構造を有し、電子伝導性及び酸素イオン伝導性両性質を有するガス不透過性「単相」混合金属酸化物を含む。また前記多相混合物及び(又は)前記混合金属酸化物を含む電気化学リアクター中に使用される固体多成分膜が記載され、混合金属酸化物は式:
AsA’tBuB’vB”wOx
(式中、Aはランタニド又はY、あるいはそれらの混合物を表わし;A’はアルカリ土類金属又はそれらの混合物を表わし;BはFeを表し;B’はCr又はTi、あるいはそれらの混合物を表し;B”はMn、Co、V、Ni又はCu、あるいはそれらの混合物を表し;s、t、u、v、wはそれぞれ、
S/tが約0.01〜約100に等しく;
uが約0.01〜約1に等しく;
vが0.01〜約1に等しく;
wが0〜約1に等しく;
xが式中のA、A’、B、B’、及びB”の原子価を満す数であり;
0.9<(s+t)/(u+v+w)<1.1、
であるような数を表す)により表される。
〔0013〕
酸素を酸素イオンに還元できる第1表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させることができる第2表面、第1及び第2表面の間の電子伝導性経路、並びに第1及び第2表面の間の酸素イオン伝導性経路を有し、本発明の方法において使用される要素が記載される。要素はまた(1)多孔性基体、(2)電子伝導性の金属、金属酸化物又はそれらの混合物、及び(又は)触媒を含むことができる。多孔性基体(1);伝導性コーティング(2);及び(又は)触媒(3)は別々の物質として適用でき、あるいは多孔性基体(1);伝導性コーティング(2);及び(又は)触媒(3)の機能を1つ又は2つの物質中に組合せることができる。要素が(1)触媒例えば表面における硫黄還元触媒、又は(2)(A)(1)電子伝子性相と酸素イオン伝導性相の均質な、ガス不透過性多相混合物又は(2)ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物物質を特徴とする固体多成分膜及び(B)伝導性コーティング、触媒、又は触媒を含む伝導性コーティングを含み、前記電気化学リアクター中に使用される要素が記載される。
〔0014〕
一般に入口端、出口端及びそれらの間の、1つまたはそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を含み、酸素を酸素含有ガスから酸素消費ガスへ輸送する電気化学リアクターセルもまた記載される。1態様において、入口端と出口端の間の通路は任意に、リアクターセルの入口端と出口端の間の通路中に詰められた触媒、例えば不連続粒子又は繊維状触媒、を含む。この電気化学リアクターセルは一側に酸素含有ガスを、他側に酸素消費ガスを含む環境中に、適当な温度及びそれぞれのガスの割合の反応条件下に置かれる。
〔0015〕
入口端、出口端及びそれらの間の、1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有するシェル、並びにシェル及びリアクターセルが一緒に第1ガス又はガス混合物を導入、反応及び排出させる第1帯域並びにリアクターセル内の、リアクターセルにより第1帯域から分離された第2ガス又はガス混合物を導入、反応及び排出させる第2帯域(すなわち、前記リアクターセル通路)を形成するようにシェル内に位置する少くとも1つの前記リアクターセルを含み、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる電気化学リアクターもまた記載される。1態様において、第1帯域及び(又は)第2帯域は任意に、シェルとリアクターの外部表面の間又はリアクターセル内の通路中に詰められた触媒例えば不連続粒子又は繊維状触媒を含むことができる。
〔0016〕
さらに本発明の範囲内に、反応物ガスを酸化する電気化学的方法が含まれる。「反応物ガス」という語はこゝに酸素又は酸素イオンと反応できるガスと定義される。
〔0017〕
本発明の1態様はメタン、天然ガス又は他の軽質炭化水素を不飽和炭化水素又は合成ガスに酸化する電気化学的方法である。電気化学的方法は一般に、
(A)第1帯域及び、前記要素により第1帯域から分離された第2帯域を含む電気化学セルを準備し、
(B)電気化学セルを約300〜約1400℃の温度に加熱し、
(C)酸素含有ガスを第1帯域中の要素に接触して通過させ、
(D)メタン、天然ガス又は他の軽質炭化水素を第2帯域中の要素に接触して通過させる、
ことを含む。
〔0018〕
上記方法はさらに、
(E)生成物を第2帯域から回収する、
ことを含むことができる。
〔0019〕
本発明がメタン、天然ガス又は他の軽質炭化水素を合成ガスに酸化する電気化学的方法であるとき、電気化学的方法は、
(A)第1帯域及び前記要素により第1帯域から分離された第2帯域を含む電気化学セルを準備し、
(B)電気化学セルを約1000〜約1400℃の温度に加熱し、
(C)酸素含有ガスを第1帯域中の要素に接触して通過させ
(D)メタン、天然ガス又は他の軽質炭化水素を第2帯域中の要素に接触して通過させる、
ことを含む。
〔0020〕
上記方法はさらに、
(E)合成ガス第2帯域から回収する、
ことを含むことができる。
〔0021〕
電気触媒法が飽和炭化水素化合物から不飽和炭化水素化合物を製造するためであるとき、方法は一般に、
(A)前記のように第1及び第2表面を有する要素を含む電気化学セルを提供する段階、
(B)酸素含有ガスを第1表面に接触して通過させる段階、同時に
(C)飽和炭化水素含有ガスを任意に第2表面に隣接する脱水素触媒に接触して通過させる段階、及び、任意に、
(D)不飽和炭化水素を回収する段階、
を含む。
〔0022〕
本発明が芳香族化合物を第2の水素含有化合物と反応させて置換芳香族化合物を形成する電気触媒法であるとき、この方法は
(A)(1)前記のように第1及び第2表面を有する要素、
(2)第1表面に隣接する第1通路、及び
(3)第2表面に隣接する第2通路、
を含む電気化学セルを準備し、
(B)酸素含有ガスを第1通路に通し、同時に
(C)酸素消費ガスが、置換芳香族化合物を生成する水素含有芳香族化合物と第2の水素含有化合物との混合物を含む酸素消費ガスを第2通路に通す、
ことを含む。
〔0023〕
1態様において、電気化学セルの第2通路は通路中又は第2表面上あるいはその両方に分布する触媒を含む。
〔0024〕
置換芳香族化合物を回収することを望むならば、前記方法はさらに、
(D)置換芳香族化合物を第2通路から回収する、
ことを含むことができる。
〔0025〕
本発明の他の観点は酸素含有ガスから酸素を抽出する電気化学的方法であり、その方法は、
(A)第1帯域及び前記要素により第1帯域から分離された第2帯域を含む電気化学セルを準備し、
(B)酸素含有ガスを第1帯域中の要素に接触して通過させ、
(C)反応物ガスを第2帯域中の要素に接触して通過させる、
ことを含む。
〔0026〕
本発明が遊離酸素以外の酸素を含むガス例えばSO2、SO3、N2O、NO又はNO2から酸素を抽出する電気化学的方法であるとき、電気化学的方法は、
(A)第1帯域及び前記要素により第1帯域から分離された第2帯域を含む電気化学セルを準備し、
(B)酸素が遊離酸素以外の形態で存在する酸素含有ガスを含むガスを第1帯域中の要素に接触して通過させ、
(C)反応物ガスを第2帯域中の要素に接触して通過させる、
ことを含む。
〔0027〕
この方法は、遊離酸素以外の酸素を含むガスが煙道又は排ガスであるガスの浄化のための方法に使用できる。
〔0028〕
望ましい生成物が前記酸素抽出法により得られる、例えば合成ガス、不飽和炭化水素、元素硫黄又は酸素を含まないガスであれば、これらの方法はさらに、それらが生成される帯域から所望の生成物を回収することを含むことができる。例えば、酸素を含まないガスを第1帯域から回収することができる。
〔0029〕
本発明がメタン及びアンモニアをシアン化水素に酸化する電気化学的方法であるとき、電気化学的方法は、
(A)第1帯域及び前記要素により第1帯域から分離された第2帯域を含む電気化学セルを準備し、
(B)電気化学セルを約1000〜約1400℃の温度に加熱する、
(C)酸素含有ガスを第1帯域中の要素に接触して通過させ、
(D)メタン及びアンモニアを第2帯域中の要素に接触して通過させる、
ことを含む。
〔0030〕
前記方法はさらに、
(E)シアン化水素を第2帯域から回収する、
ことを含むことができる。
〔0031〕
〔好ましい態様の説明〕
本発明は酸素含有ガスから酸素を消費する反応物ガスへ酸素を輸送する連続プロセスのための電気化学リアクターを提供する。本発明で行うことができるプロセスは、例えは水を生成する水素の燃焼、合成ガスを生成するメタン又は天然ガスの部分酸化、不飽和炭化水素を生成するメタン及び飽和炭化水素含有ガスの部分酸化、エタンの部分酸化、酸素含有ガスからの酸素の抽出〔例えばNOx’(式中、x’は0.5〜2の値を有する)、SOy(式中、yは2〜3の値を有する)、スチーム、CO2などからの酸素の抽出〕、シアン化水素へのメタンのアンモ酸化などである。
〔0032〕
本発明の電気化学リアクターの1態様は図1中に示すように略示でき、リアクター1の側面、断面図は要素4により第2帯域3から分離された第1帯域2を示す。第1帯域の外部周囲はリアクター管5により規定され、第2帯域の外部周囲はリアクター管6により規定される。リアクター管5及び6は、それぞれガラスシール7及び8により要素4と気密シールを形成する。フィード管9及び10は酸素含有ガス11及び酸素消費ガス12をそれぞれ帯域2及び3中へ導く。出口13及び14は反応したガス15及び16をそれぞれ帯域2及び3から排出させる。
〔0033〕
実際には、酸素含有ガス又はガス混合物は第1帯域中の要素に接触して通過させ、酸素消費ガス又はガス混合物例えば反応物ガス含有フィードガスは第2帯域中の要素に接触して通過させる。酸素含有ガス又はガス混合物は要素に接触し、酸素が酸素イオンに還元され、それが要素4を通って第2帯域に面する表面へ輸送される。第2帯域で、酸素イオンが酸素消費ガス又はガス混合物と反応して酸素消費ガスを酸化し、電子を放出する。電子は要素4を経て第1帯域に面する表面へ戻る。
〔0034〕
1態様において、酸素消費ガスはメタン又は天然ガスであり、酸素含有ガス又はガス混合物は空気である。空気が要素に接触すると空気の酸素成分が酸素イオンに還元され、それが要素を通って第2帯域へ輸送され、そこで酸素イオンがメタンと反応して、反応条件により、合成ガス又はオレフィンを生ずる。
〔0035〕
他の態様において、酸素消費ガスはメタン、天然ガス又は水素であり、酸素含有ガスはNOx′及び(又は)SOy(式中、x′及びyは前記のとおりである)を含む煙道又は排ガスである。煙道ガスが要素に接触し、NOx′及び(又は)SOyの酸素が酸素イオンに還元され、それが要素を通って第2帯域へ輸送され、そこで酸素イオンが酸素消費ガスと反応して、反応条件により、二酸化炭素及び水、合成ガス又はオレフィンを生ずる。1態様において、窒素ガス及び元素硫黄が第1帯域中でそれぞれNOx′及びSOyから電気化学的に生ずる。
〔0036〕
本発明のなお他の態様において、酸素含有ガスはスチーム含有ガス(すなわちH2Oガス)である。H2Oが要素に接触するとH2Oの酸素が酸素イオンに還元され、それが要素を通って第2帯域へ輸送され、そこで酸素イオンが、例えばメタン又は天然ガスと反応する。H2Oは第1帯域中で水素ガス(H2)に還元される。水素ガスは回収し、例えば不飽和炭化水素の水素化に、電流を生ずる燃料電池用の燃料の提供、本発明の電気化学セルを加熱する燃料の提供、又は本発明による酸素含有ガスから酸素を抽出する電気化学的方法のための反応物ガスの提供に使用することができる。
〔0037〕
共存する物質は本発明の要素で生ずる電気化学的還元又は酸化に関与することができる。例えばメタンがアンモニアとともに第2帯域中に存在するときに、シアン化水素及び水が第2帯域中で電気化学的に生成することができる。
〔0038〕
広範囲の生成物を生ずる互いに反応性の物質の他の組合せが可能であり、本発明の範囲内であるものとする。
〔0039〕
「酸素消費ガス」、「反応物ガス」及び「酸素含有ガス」という語はこゝに、本発明の適当な方法の温度範囲より低い温度でガスでない物質を含み、また室温で液体又は固体である物質を含むことができる。室温で液体である酸素含有ガスの例はスチームである。
〔0040〕
多成分膜
前記のように、本発明の電気化学リアクター中に使用される固体多成分膜は、電子伝導性物質と酸素イオン伝導性物質の均質なガス不透過性多相混合物及び(又は)ペロブスカイト構造を有し、電子伝導性及び酸素イオン伝導性の両性質を有するガス不透過性「単相」混合金属酸化物であることができる。「ガス不透過性」という語はこゝに、混合物が前記酸素消費又は酸素含有ガスの実質量をガスとして混合物中を通過させない点で「実質的にガス不透過性又は気密」を意味すると規定される(すなわち混合物は関連ガスに関して多孔性よりはむしろ非孔質である)。若干の場合に、ガスに対する最小度の透過性が、例えば水素ガスが存在するときに許容又は避け難いであろう。
〔0041〕
固体多成分膜に関する「混合物」という語は2つ又はそれ以上の固相からなる物質、及び種々の元素の原子が、後記イットリア安定化ジルコニア中のように、同一固相中に混ざり合った単相物質を含む。好ましい金属ドープした金属酸化物の例は単相物質であり、一方、「多相混合物」という語は単相溶液を形成することなく散在する2つ又はそれ以上の固相を含む組成物を示す。
〔0042〕
換言すると、多相混合物は、電子伝導性物質及び酸素イオン伝導性物質が、多成分膜の種々の成分の原子が大部分同一固相に混ざり合されないようにガス不透過性固体膜中に存在するので少くとも2つの固相として存在するので「多相」である。
〔0043〕
(1)多相
本発明の多相固体膜は当該技術において知られた「ドープした」物質とは実質的に異なる。典型的なドーピング操作は少量の元素又はその酸化物(すなわち、ドーパント)を多量の組成物(すなわち、ホスト物質)に、ドーパントの原子がドーピング操作の間にホスト物質の原子と永久に混ざり合い、それにより物質が単相を形成するように加えることを含む。一方、本発明の多相固体膜は前記ドーパント/ホスト物質の関係で存在しないで、実質的に不連続な相中に存在する酸素イオン伝導性物質及び電子伝導性物質を含む。従って、本発明の固体膜は、ドープした物質であるよりは、むしろ2相、二元伝導性多相、又は多成分膜として示すことができる。
〔0044〕
本発明の多相膜は、膜の多相領域にわたる組成の差異を検出できる電子顕微鏡試験、X線回析分析、X線吸着マッピング、電子回折分析、赤外分析などのような通常の操作によりドープした物質と区別することができる。多相組成物のそのような物理的証拠の例は図4及び図5として示される電子顕微鏡写真である。図4及び図5の詳細な説明は後記実施例1〜5の後に続く。
〔0045〕
典型的には、酸素イオン伝導性物質又は相は二価及び三価カチオンを含む酸化物、例えば酸化カルシウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタンなどと三価カチオンを含む酸化物例えばジルコニア、トリア及びセリアとの間に形成された固溶体(すなわち、固体「電解質」)であり、あるいは酸素イオン伝導性物質又は相はペロブスカイト構造の酸素イオン伝導性混合金属酸化物を含む。それらの高いイオン伝導性は酸素イオン部位空位の存在のためであると思われる。1つの酸素イオン空位は格子中の四価イオンを置換した各二価の又は各2つの三価カチオンのために生ずる。任意の多数の酸化物例えばイットリア安定化ジルコニア、ドープしたセリア、トリア基物質又はドープした酸化ビスマスを使用できる。若干の既知固体酸化物伝達物質にはY2O3安定化ZrO2、CaO安定化ZrO2、Sr2O3安定化ZrO2、Y2O3安定化Bi2O3、Y2O3安定化CeO2、CaO安定化CeO2、ThO2、Y2O3安定化ThO2、あるいはランタニド酸化物又はCaOの1つの添加により安定化したThO2、ZrO2、Bi2O3、CeO2又はHfO2が含まれる。多相混合物中に使用できる酸素イオン伝導性能力を示した多くの他の酸化物が知られ、それらはこの概念中に含まれる。
〔0046〕
これらの固体電解質の中でY2O3(イットリア)-及びCaO(カルシア)-安定化ZrO2(ジルコニア)物質が好ましい。これらの固体電解質は、それらの高いイオン伝導性、温度及び酸素圧の広い範囲にわたるそれらの酸素イオン伝導性並びにそれらの比較的低いコストに特徴がある。
〔0047〕
さらに、発明者はペロブスカイト構造を(運転温度で)有する混合金属酸化物が非常に良好な酸素イオン伝導性を有することができることを見出した。「ペロブスカイト」という語は鉱物ペロブスカイト、CaTiO3、の構造を基にした構造を有する物質の種類を示す。その理想形態において、ペロブスカイト構造が単位セルの角に金属イオン、その中心に他の金属イオン及び立方体縁の中央に酸素イオンを含む立方格子を有する。これはA及びBが金属イオンを表すABO3型構造として示される。
〔0048〕
一般に、ペロブスカイト構造はA及びBイオンの原子価の合計が6であることを必要とし、2つの金属イオンを含むABO3構造中のイオンの半径間の関係は
式、ra+r0=t/2(rB+r0)(I)
(式中、rA、rB及びr0はそれぞれAイオン、Bイオン及び酸素イオンの半径であり、tは0.7〜1.0の近似範囲内にあることができる「許容因子」である)により表すことができる。一般に、ペロブスカイト構造を有する化合物は約1.0〜約1.4オングストロームの半径をもつAイオン及び約0.45〜約0.75オングストロームの半径をもつBイオンを有する。発明者は一般に、ペロブスカイト構造の混合金属酸化物が前記の式により決定された所与Bイオンに対するAイオン半径範囲の下端に近づく半径を有するAイオンを含むと、「酸素イオン伝導性が一般に増すことを見出す。しかし、この高酸素イオン伝導性への傾向は、Aイオン半径が所与Bイオンを有するペロブスカイトに望まれる半径の下限に近づくとき、運転温度におけるペロブスカイト構造の大きい不安定性により制限されることができる。
〔0049〕
広範囲の金属及び金属の酸化物を本発明に有用なペロブスカイトの形成に使用できる。一般に、ペロブスカイトの要件を満たす金属の任意の組合せを使用できる。そのような金属の典型的な例はランタニド、Ia及びIIa族の金属、遷移金属Al、Ga、Geなどである。好ましい金属の例にはLa、Co、Sr、Ca、Fe、Cu、Ni、Mn、Cr、Y、Ba、Ti、Ce、Al、Sm、Pr、Nd、V、Gd、Ru、Pb、Na、W、Sc、Hf、Zr、それらの酸化物、及びそれらの混合物が含まれる。Bi及び(又は)Ceは、典型的には好ましい態様中に要求されないが、しかし、望むならば存在することができる。1態様において、Bi及び(又は)Ceは13モル%未満の量で存在する。
〔0050〕
本発明に有用なABO3型物質中のA金属の好ましい例にはランタニド(La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLu)、イットリウム及びアルカリ土類金属殊にMg、Ca、Sr及びBaが含まれる。
〔0051〕
本発明のためのABO3物質中の好ましいB金属には第1行の遷移金属、すなわち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びZnが含まれる。これらの金属の中で、Co、Mn、Fe及びCrがより好ましい。
〔0052〕
ペロブスカイト構造はA及びB部位の両方における広範な多カチオン置換を許容し、従って、A金属及びB金属の混合物を含む種々の一層複雑なペロブスカイト化合物が本発明に有用である。酸素のほかに2つより多い金属を含むペロブスカイト物質が好ましい。
〔0053〕
高い酸素イオン伝導性は、Aイオンとして、膜が利用される方法の運転温度で若干のAイオンが+3の酸化状態で安定であり他が+2の酸化状態で安定であるときのように異なる安定な酸化状態を有する金属の混合物の使用により達成できる。発明者は個々の理論により拘束されることを欲しないけれども、高安定酸化状態における金属の間の低安定酸化状態における金属イオンの存在が、ペロブスカイト物質中の酸素イオンの移動を容易にする酸素イオン空位をイオン格子中に生ずると思われる。
〔0054〕
発明者はまた、ペロブスカイトイオン格子のB部位中のクロム及び(又は)チタンの存在が電気触媒法の条件下のプロブスカイト構造の安定性を高めるために使用でき、後記のようにクロムで電子伝導性が高められることを観察した。
〔0055〕
ペロブスカイト構造を有する好ましい混合金属酸化物は式:
AsA’tBuB’vB”wOx(II)
(式中、Aは第1Aイオンを表し、A’は第2Aイオンを表し、Bは第1Bイオンを表し、B’は第2Bイオンを表し、B”は第3Bイオンを表し、s、t、u、v、w及びxはそれぞれ、
s/tが約0.01〜約100、好ましくは約0.1〜約20に等しく;
uは0.01〜約1、好ましくは約0.5〜約1に等しく;
vは0.01〜約1、好ましくは約0.05〜約0.5に等しく;
wは0〜約1、好ましくは約0.01〜約0.5に等しく;
xは式(II)中に存在する他の元素の原子価を満たす数であり、
0.9<(s+t)/(u+v+w)<1.1、好ましくは0.99<(s+t)/(u+v+w)<1.01、
であるような数を表す)
により表すことができる。
〔0056〕
1態様において、Aがランダニド又はY、あるいはそれらの混合物を表し;A’がアルカリ土類金属又はそれらの混合物を表し;BがFeを表し;B’がCr又はTi、あるいはそれらの混合物を表し;及び(又は)B”がMn、Co、V、Ni又はCu、あるいはそれらの混合物を表し、u及び、場合によりwがゼロより大きい。好ましい態様において、AがLa又はY、あるいはそれらの混合物を表し;A’がCa又はSr、あるいはそれらの混合物を表し;BがFeを表し;B’がCrを表し;及び(又は)B”がMn又はCo、あるいはそれらの混合物を表す。少量の他の元素、例えば不純物として存在するもの、が存在できる。
〔0057〕
本発明中に固体酸素イオン伝導性電解質として有用であるペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物の例にはランタン-ストロンチウムコバルタイト、ランタン-ストロンチウムフェライト、ランタン-ストロンチウム-鉄クロマイト、ランタン-ストロンチウム-鉄-クロムコバルタイト、ランタン-ストロンチウム-鉄-クロムマンガナイト、ランタン-ストロンチウムマンガナイト、ランタン-カルシウムコバルタイト、ランタン-カルシウム-鉄クロマイト、ランタン-カルシウム-鉄-クロムバルタイト、ランタン-カルシウム-鉄-クロムマンガナイト、ランタン-カルシウムマンガナイト、イットリウム-ストロンチウムフェライト、イットリウム-ストロンチウムコバルタイト、イットリウム-ストロンチウム-鉄クロマイト、イットリウム-ストロンチウム-鉄-クロムコバルタイト、イットリウム-ストロンチウム-鉄-クロマンガナイト、イットリウム-ストロンチウムマンガナイト、ストロンチウム-コバルトフェライト、ストロンチウム-鉄コバルタイト、ガドリニウム-ストロンチウムコバルタイトなど、及びそれらの混合物が含まれる。特定の例はLaaSrbCoOx、LaaSrbFeOx、LaaCabCoOx、SrCOaFebOx、GdaSrbCoOx、など(式中、a、b及びxは数であり、aとbの合計は1であり、xは式(II)中と同様に規定される)である。a:bにより表されるそれぞれの金属の間のモル比は広い範囲をカバーすることができる。a:bの典型的なドーピング比は4:1、3:1、1:4、1:3などである。
〔0058〕
膜の電子伝導性物質又は相は反応の条件下に十分な電子伝導性を示す任意の物質であることができる。典型的には、電子伝導性相は反応温度でかなりの電子伝導性を示す1つ又はそれ以上の金属又は金属酸化物からなる。適当な金属には銀、金、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、銅などが含まれ、それらの中でパラジウム及び白金が好ましい。適当な金属酸化物には酸化ビスマス、スズ-インジウム酸化物混合物、プラセオジム-インジウム酸化物混合物、セリウム-ランタン酸化物混合物、ニオブ-チタン酸化物混合物、ペロブスカイト構造の電子伝導性混合金属酸化物などが含まれ、それらの中で、金属ドープした金属酸化物例えばプラセオジムドープした酸化インジウム、スズドープした酸化インジウム、セリウムドープした酸化ランタン、ニオブドープした酸化チタン混合物、酸素イオン伝導性成分として適するペロブスカイトと連結した前記電子伝導性ペロブスカイトを含むペロブスカイト構造の電子伝導伝導性混合金属酸化物などが好ましい。金属ドープした金属酸化物の中で、プラセオジムドープした酸化インジウム及び混合金属酸化物が最も好ましい。
〔0059〕
多くのABO3型混合金属酸化物配合物中、実際の構造はイオンの小ディスプレースメントにより完全に対称な単純立方晶構造から誘導された擬似不斉変異体の連続体である。若干の場合に、これらのディスプレースメントは単位セルのわずかなひずみを生じ、従ってその対称性が正方晶又は斜方晶形に変形され、他において、変形は隣接セルがもはや正確に一致せず、従って、真の単位セルが1つより多い一層小さい単位を含む。多くのこれらの酸化物の強誘電性性質は理想構造からのそのような逸脱のためである。
〔0060〕
ペロブスカイト構造を有する混合金属酸化物の電子伝導性は、一般にAイオンを二価金属カチオン例えばBa、Ca又はSrで部分置換、又は「ドープ」したときに生ずる。より大きい電子伝導性へのこの傾向は、しばしば運転温度における一層大きい不安定性を随伴する。異なる構造に一部分解したペロブスカイトはもとのペロブスカイト構造のそれとは実質的に異なる電子伝導性を有するであろう。
〔0061〕
前記のように、発明者はペロブスカイトイオン格子のB部位におけるクロム及び(又は)チタンの存在がペロブスカイト構造の安定性を高めること、及びクロムの存在が、クロムが+4酸化状態にあるとしても、電子伝導性を高める追加の利点を有することを見出した。
〔0062〕
発明者は一定金属イオンの存在が電子伝導性を高める理由の個々の理論により拘束されることを望まないけれども、発明者は1つの酸化状態から他の状態へ高いレドックス電位を必要とすることなく変ることができる金属イオンの存在が一般に電子伝導性を高めることを見出した。クロム以外の例には鉄、コバルト及びマンガンが含まれる。
〔0063〕
混合金属酸化物物質の特定の例にはランタン-ストロンチウムマンガナイト、ランタン-ストロンチウムコバルタイト、ランタン-ストロンチウム-鉄クロマイト、ランタン-ストロンチウム-鉄-クロムコバルタイト、ランタン-ストロンチウム-鉄-クロムマンガナイト、ランタン-カルシウム-鉄-クロマイト、ランタン-カルシウム-鉄-クロムコバルタイト、ランタン-カルシウム-鉄-クロムマンガナイト、ランタン-マグネシウムクロマイト、ランタン-クロムフェライト、ランタンコバルタイト、イットリウム-ストロンチウム-鉄クロマイト、イットリウム-ストロンチウム-鉄-クロム-コバルタイト、イットリウム-ストロンチウム-鉄-クロムマンガナイト、イットリウム-バリウムキュポライト〔例えば、YBa2Cu3Ox(式中、xは式(II)中と同様に規定される〕など、及びそれらの混合物が含まれる。
〔0064〕
有用なABO3型化合物及びそれらの製法は発行NO.WO89/01922号のもとで1989年3月9日に発行されたダウ・ケミカル(Dow Chemical Company)のPCT出願No.89085506号;ミュラーほか(Muller and Ray),「主要三元構造群(The Major Ternary Structural Families)」pp.175〜201(1974);ラインズほか(Lines,M.E.and Glass,A.M.),「強誘電体及び関連物質の原理及び応用(Principles and Applications of Ferroelectrics and Related Materials)」,pp.280〜92、及びアペンディクス(Appendix,F.),pp.620〜32〔クラレンデン・プレス(Clarenden Press),オクスフォード(Oxford)(1977);並びにエバンス(Evans,R.D.),「結晶化学入間(An Introduction to Crystal Chemistry)」,ケンブリッジ・ユニバシティ・プレス(Cambridge Univ.Press),ケンブリッジ,2版(1964),pp.167〜71中に記載されている。これらの文献はそれぞれそれらのペロブスカイトに関連する開示が参照される。
〔0065〕
これらの多相成分膜は電子伝導性物質約1〜約75容量部及び酸素イオン伝導性物質約25〜約99容量部を含むことができる。元素Bi、Ce及びTiは個々に又は一団として、好ましい態様中に排除されることができる。
〔0066〕
多相多成分膜は少くとも1つの電子伝導性物質を少くとも1つの酸素イオン伝導性物質と混合し、混合した物質を造形して密、気密な多相固体膜を形成することにより成形することができる。殊に固体膜は、
(A)電子伝導性物質である少くとも1つの物質と少くとも1つの酸素イオン伝導性物質の均質な混合物を調製する段階、
(B)混合物を所望形状に成形する段階、
(C)成形した混合物を少くとも約550℃の温度に加熱して密な固体膜を形成する段階、
を含む方法により製造することができる。
〔0067〕
固体膜はまた、金属が電子伝導性である少くとも1つの金属酸化物から、
(A)金属が電子伝導性である少くとも1つの金属酸化物と少くとも1つの酸素イオン伝導性物質の均質な混合物を調製する段階、
(B)混合物を還元雰囲気中で高温に加熱して金属酸化物を金属に還元する段階、
(C)還元した混合物を所望の形状に成形する段階、
(D)成形した混合物を少くとも約500℃の温度に加熱して密な固体膜を形成する段階、
を含む方法により製造することができる。
〔0068〕
(2)単相混合金属酸化物
前記のように、本発明の電気化学リアクター中に用いる固体多成分膜は多相多成分膜の代りとして、又は多相物質に加えて、ペロブスカイト構造を有し、電子伝導性及び酸素イオン伝導性の両性質を有するガス不透過性「単相」混合金属酸化物を含むことができる。前記ペロブスカイト型物質の多くは本発明のこの態様に適する。有用であるペロブスカイト物質の特定例には次の物質:
LaCoOx;
La0.6Sr0.4CoOx;
La0.2Sr0.8CoOx;
YCoOx;
YBa2Cu3Ox
(式中、xは式(II)中のように規定される)などが含まれ、しかしそれらに限定されない。
〔0069〕
式、
AsA’tBuB’vB”wOx(式II)
により表される前記混合金属酸化物は、それらが電気触媒条件下の安定性並びに電子及び酸素イオン伝導性の利点を有するので、本発明の単相混合金属酸化物膜としての使用に十分適する。前記式Iの好ましい態様もまた本発明のこの観点に適合する。
〔0070〕
ペロブスカイトと追加の伝導性金属又は金属酸化物との混合物もまた本発明に用いる多成分膜の製造に有用である。追加の伝導性金属又は金属酸化物はペロブスカイト中に存在する元素と同じか又は異なることができる。追加の伝導性金属又は金属酸化物は加熱するとペロブスカイト物質とは別の相の形成し、プロブスカイト中に追加の伝導性物質を与えて膜を通る追加の電子伝導性通路を形成することが見出された。好ましい態様において、多成分膜はペロブスカイト、例えばランタンコバルタイト、ランタン-ストロンチウムコバルタイト、と過剰の伝導性金属又は金属酸化物、例えばコバルト含有ペロブスカイト中の過剰のコバルト金属、との混合物を含む。
〔0071〕
他の態様において、多成分膜は、各ペロブスカイトが電子伝導性又は酸素イオン伝導性に利点を有する2つ又はそれ以上のペロブスカイトの混合物を含み、前記のように追加の伝導性金属又は金属酸化物を含むことができる。
〔0072〕
種々の粉末製造法を、前記ペロブスカイトのように電子伝導性及び酸素イオン伝導性特性を有する固体膜の製造に用いることができる。適当な方法には(a)酸化物からの製造、(b)硝酸塩及び(又は)酢酸塩の熱分解、並びに(又は)(c)クエン酸製造法が含まれる。
(a)酸化物法による調製
一例として、固体膜は
(A)上記の金属A及びBを含むペロブスカイト粉末を調製し、
(B)混合物を所望の形状に成形し、
(C)成形された混合物を電子伝導性及び酸素イオン伝導性を有する稠密な固体膜を形成するのに充分な温度に加熱する
諸工程を含む方法により酸化物から調製し得る。典型的には、この工程の温度は少なくとも約500℃であり、一般には少なくとも約1000℃である。
(b)硝酸塩及び/または酢酸塩の熱分解による調製
硝酸塩及び/または酢酸塩の熱分解による混合金属酸化物組成物の調製は、
(A)所望の元素の硝酸塩及び/または酢酸塩を水の如き極性溶媒に溶解し、
(B)工程(A)で得られた溶液を固体粉末が得られるまで加熱して極性溶媒を除去し、
(C)乾燥固体を硝酸塩及び/または酢酸塩を分解するのに充分な温度に加熱し、
(D)混合物を所望の形状に成形し、ついで
(E)成形混合物を電子伝導性及び酸素イオン伝導性を有する稠密な固体膜を形成するのに充分な温度に加熱する
諸工程を含む。一般に、工程(C)及び(E)の温度は少なくとも約500℃であり、工程(C)は典型的には少なくとも約900℃の温度で行なわれ、工程(E)は典型的には少なくとも約1000℃の温度で行なわれる。
(c)クエン酸調製法による調製
クエン酸調製法による調製は
(A)所望の元素の硝酸塩及び/または酢酸塩を溶液中にクエン酸を含む、水の如き、極性溶媒中で混合し、
(B)混合物を高温に加熱して固体粉末を生成し、
(C)混合物を所望の形状に成形し、ついで
(D)成形混合物を電子伝導性及び酸素イオン伝導性を有する稠密な固体膜を形成するのに充分な温度に加熱する
ことを含む。再度、典型的には、この工程の温度は少なくとも約500℃であり、一般には少なくとも約100℃である。
多成分膜を製造する上記の方法に於いて、最終加熱工程の前に結合剤が一般に混合物に添加されて金属粒子及び/または金属酸化物粒子を結合して所望の形状に成形することを助ける。結合剤は成形混合物を少なくとも500℃の温度に加熱する最終工程に於いて稠密な固体膜の形成を妨げず、しかも混合物中に容易に分散し得る物質であることが好ましい。このような結合剤は、例えば、適当な溶媒中に分散または溶解されたワックスまたはパラフィン系炭化水素であってもよい。結合剤の特別な例は、結合量のワックスを電子伝導性粒子及び酸素イオン伝導性粒子上に分布させるのに充分なクロロホルム中に溶解されたカルボワックス(Carbowax)20M(商標)(スペルコ(Supelco))である。
ペロブスカイト構造の変性及び/または付加的な形成が、ペロブスカイト構造の混合金属酸化物を含むリアクターセル中で反応条件下で起こることがある。
要素
上記の“要素”は
(A-1)酸素を酸素イオンに還元し得る金属、金属酸化物またはこれらの混合物で被覆された第一表面と酸素イオンを酸素消費ガスと反応させ得る金属、金属酸化物またはこれらの混合物で被覆された第二表面を有する固体電解質(但し、両方の被覆物は安定であり、操作温度で電子伝導性であり、且つ外部の電子伝導性回路に接続されていることを条件とする)
(A-2)第一表面と第二表面を有し、且つ電子伝導性相と酸素イオン伝導性相の緊密なガス不透過性の多相混合物を含む固体多成分膜
を含むことが好ましい。
要素(A-1)が、以下に詳細に説明される。
(A-1)の固体電解質は、操作条件、特に300℃により高い温度で安定であり、且つ酸素イオンを伝達し得るあらゆる物質であり得る。固体電解質は本発明の多成分膜に関して上記された酸素イオン伝導性物質の中から選ばれることが好ましい。固体電解質は実質的に非多孔質のガス不透過性の固体であることが好ましい。
好ましい固体電解質は、Y2O3(イットリア)で安定化されたZrO2(ジルコニア)物質及びCaO(カルシア)で安定化されたZrO2(ジルコニア)物質並びにペロブスカイト構造を有する電解質である。これらの固体電解質は、それらの高いイオン伝導性、広範囲の温度及び酸素圧力にわたってのそれらの酸素イオン伝導性、及びそれらの比較的低いコストを特徴とする。
カソード側の導電被膜は、カソード表面で電子を供給することにより酸素から酸素イオンへの還元を促進でき、且つ操作条件下で安定であるあらゆる材料であってもよい。カソードの調製に有用な金属及び金属酸化物の例は、銀、白金、ニッケル、金、ビスマス、パラジウム、銅、コバルト、クロム、鉄、ニオブ-チタン混合物、ランタン-マンガン混合物、インジウム-酸化スズ混合物、プラセオジム-酸化インジウム混合物、上記のペロブスカイトを調製するのに使用されるいずれか二種の金属または金属酸化物の組合せ、電子伝導性ペロブスカイト、並びにペロブスカイトを調製するのに使用される上記の金属、金属酸化物及び組合せの混合物を含む。
アノード側の導電被膜は、酸素イオンと酸素消費ガスとの反応を促進し得る多種の導体のいずれであってもよく、但しその材料はまた操作条件下で安定であることを条件とする。アノード被膜を形成するのに有用な金属及び金属酸化物の例は、カソードを調製するのに有用なような上記の材料を含むが、更に詳細には銀、金、ニッケル、ビスマス、マンガン、バナジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、銅、亜鉛、コバルト、クロム、及び鉄の諸金属及び金属酸化物、上記の金属及び金属酸化物のあらゆる混合物、並びに銀-酸化ビスマス混合物、スズ-酸化インジウム混合物、プラセオジム-酸化インジウム混合物、セリウム-酸化ランタン混合物、等の如きその他の混合物、並びにこれらの混合物を含む。これらの中で、銀、金、及び銀と金の混合物が好ましい。
夫々の導電被膜は、薄いフィルムとして、及び/または多孔質導電被膜として存在してもよい。導電被膜は多孔質であることが好ましい。多孔質被膜は、膜または被覆電解質と処理すべき一種以上のガスとの間の接触面積を増大し、それにより電気触媒作用の速度を増すという利点を与え得る。電気化学反応速度は、この外部回路に電位を印加して酸素含有ガスと接触する導電表面の方向に電子の流れを増すことにより加速し得る。導電被膜が触媒を含む場合には、電気化学法の速度を更に一層増すことができる。
要素は多孔質支持体1を更に含んでもよい。多孔質支持体1は反応体ガスまたは生成物ガスに対して多孔性であり、導電被膜(A-1)及び/または固体多成分膜(A-2)を有する固体電解質の支持体として作用する。それは、反応条件下で反応プロセスを妨害しない限り所望の目的を達成する如何なる材料であってもよい。酸素伝導性物質として記載されたイットリアで安定化されたジルコニア、ドーピングされたセリア、トリア系材料、またはドーピングされた酸化ビスマス及び種々のその他の金属酸化物を含む多数の酸化物のいずれもが使用し得る。例はCaOで安定化されたZrO2;Y2O3で安定化されたZrO2;Sc2O3で安定化されたZrO2;Y2O3で安定化されたBi2O3;Y2O3で安定化されたCeO2;CaOで安定化されたCeO2;ThO2;Y2O3で安定化されたThO2;ランタニド酸化物またはCaOのいずれか一つの添加により安定化されたThO2、ZrO2、Bi2O3、CeO2またはHfO2;Al2O3;等を含む。
導電被覆(A-1)及び多成分膜(A-2)を有する固体電解質は、多孔質支持体上への蒸着、多孔質支持体の含浸、多孔質支持体の同時含浸、の如きいずれかの技術、またはセラミックを調製するのに普通使用されるあらゆるその他の技術により支持体に適用し得る。また、このような要素はスラリー混合物のテープ流延、スリップ流延、またはその他の技術により調製し得る。その他の技術は成形された被覆固体電解質または膜前駆体を熱処理して安定な構造を形成し、またはそれが気密になるまで熱処理し、ついで得られた被覆固体電解質または膜を支持体構造に付着し、更に熱処理して完成された支持された被覆固体電解質または膜を得ることである。支持体が酸素含有ガス及び酸素消費ガスを本発明の被覆固体電解質または膜と接触させるようにする限り、その他の技術が可能である。
本発明は、本発明の電気化学リアクターの態様を示す図2及び図3を参照して更に例示し得る。図2は図1に示された電気化学リアクターと異なる本発明の電気化学リアクターの平面図であり、図3は図2に示されたものと同じリアクターの側面図及び断面図である。図2及び図3の両方に於いて、電気化学リアクターは固体多成分膜を含む円形の固体円筒形リアクターセルまたはコアー21が置かれているシェル20を含む。図2及び図3に示された構成から見られるように、リアクターはコアー21の全長を横断するコアー21内の内部通路22及びコアー21の外表面とシェル20の内表面との間の外部通路23を含む。
実際に、本発明の方法は、例えば、酸素消費ガスを内部通路22に通し、酸素含有ガスを外部通路23に通すことにより図2及び図3に示されたような装置を用いて行なわれる。二重コンダクターコアー21の外表面と接触する酸素含有ガスは酸素イオンに転化され、これらイオンが固体コアー21を通ってコアー21の内表面へと移行する。コアー21の内表面で、酸素イオンが内表面と接触する酸素消費ガスと反応する。この反応中に、夫々の酸素イオンは二つの電子を失ない、これらの電子がコアー21の内表面からコアー21の外表面へと移動する。
上記の方法は、勿論、酸素含有ガスを内部通路22に通し、酸素消費ガスを外部通路23に通すことにより逆にすることができる。その後、酸素イオンは固体コアー21を通ってコアー21の外表面へと移行し、電子は内表面へと移動する。
典型的に、合成ガスがつくられる方法に関して、一種以上の軽質炭化水素が内部通路22中にあり、要素が固体コアー21の膜の多孔質支持体を含む場合には、多孔質支持体は通常膜の外表面上にある。しかしながら、酸素消費ガス及び酸素含有ガスに関してどの領域を使用するかについての決定、及び使用する場合の多孔質支持体の配置は、どの配置が本発明の特別な用途に最も適するかに依存する。最も適した配置の決定は、不適切な実験をしないで決定する当業者の能力内にある。
また、要素のペロブスカイト膜及び多相膜は、還元ガス及びその他の反応性ガス成分の存在に関して種々の程度の安定性を有する。本発明の方法は膜表面をこのような反応性成分に暴露するので、膜表面が使用時に接触するガスに対して安定性を有する金属、金属酸化物、またはペロブスカイトでもって膜の表面を配合するか、または膜を被覆することにより多成分膜の表面を保護することが望ましいことがある。本発明者らは、ランタニド及びクロムを含むプロブスカイトの最終層また多相多成分膜をつくることが、例えば、還元ガスまたは硫黄及び窒素の酸化物を含む腐食ガスの如き反応性ガスに暴露された表面の安定性を保持することを助ける一つの方法であるようであることを発見した。
一つの態様に於いて、要素は導電性金属、金属酸化物またはこれらの混合物で一面または両面で被覆された多成分膜(2)を含む。夫々の導電被膜は、(A-1)を含む要素に関して上記されたような薄いフィルムとして、及び/または多孔質被覆物として存在してもよい。このような要素が酸素から酸素イオンへの還元を促進し得る導電性金属、金属酸化物またはこれらの混合物で被覆された第一表面と導電性金属、金属酸化物またはこれらの混合物でまた被覆された第二表面を含む場合には、第一導電被膜及び第二導電被膜は第二導電性表面から第一導電性表面への電子の伝達を容易にするために上記の(A-1)の場合のように任意の外部回路により接続されてもよい。導電被膜は触媒を含んでもよく、電位が上記の(A-1)の場合のようにこの外部回路に印加されて電気化学反応速度を更に一層増してもよい。
本発明の要素が図8に図示されており、ここで多成分膜または固体電解質を含むコアー41は酸素を酸素イオンに還元するのに有効な材料43で一表面42で被覆されている。この被覆物はセルのカソード側を与える。コアー41の第二表面44上には材料45の別の被覆物がある。この被覆物はアノードである。二つの被覆物はワイヤリード線46及び47を介して外部回路により必要により接続されていてもよい。コアーは導電材料を含まない場合には、外部回路が必要とされる。電流計48が回路中に含まれていてもよい。また、二つの導電被膜(電極)の間に電位を適用するためのバッテリーが回路中に含まれていてもよい。
本発明が図9及び図10を参照して更に例示することができる。図9は本発明の電気化学リアクターの平面図であり、図10は同じリアクターの側面図である。図9及び図10の両方に於いて、電気化学リアクターはシェル50を含み、その中に多成分膜または固体電解質を含むコアー51を含む円形の固体の円筒形電気化学セルが置かれている。コアー51の内表面はアノード52として利用できる導電性金属または金属酸化物で被覆されている。コアーの外表面はカソードとして利用できる導電性材料53で被覆されている。必要により、ワイヤリード線56が内側被覆物52に付着され、第二ワイヤリード線57が外側被覆物53に付着され、二本のワイヤリード線が電流計58を介して接続されて外部回路を形成する。バッテリーは電流計と直列に接続されてもよい。図9及び図10に示される構成から見られるように、リアクターはセルの中央を通る内部開放空間54及び外部被覆物53即ちセルのアノードとシェル50との間の外部開放空間55を含む。
また、要素は、以上のものとは独立に触媒(3)を含んでもよい。触媒は要素の表面上にフィルムとして存在してもよく、固体の多成分膜の表面で分散または混合されてもよく(例えば、固体膜表面をドーピングすることにより)、あるいは導電被膜中に分散または混合されてもよい。触媒は、例えば、要素のカソード側の硫黄還元触媒であってもよく、または以下に更に記載されるようなアノード側の脱水素または酸化カップリング触媒であってもよい。
多孔質支持体(1);導電被膜(2);及び/または触媒(3)は別個の材料として適用されてもよく、あるいは多孔質支持体(1);導電被膜(2);及び/または触媒(3)の作用は一種または二種の材料中に組合されてもよい。
本発明の方法に使用される電気化学セルは、必要により要素に隣接する触媒を含んでもよい。電気化学セルが例えばガス浄化に使用される場合、本発明者らは、触媒の存在が電気化学セルの第一導電性表面(即ち、カソード)で硫黄及び窒素の酸化物の還元を促進でき、且つ/または硫化カルボニルの分解を促進し得ることを見い出した。電気化学セルが飽和炭化水素を不飽和炭化水素に転化するのに使用される場合、要素の第二表面に隣接する脱水素触媒の存在は、脱水素触媒を使用しないで得られるものよりも転化率及び選択率を増加し得る。その方法が芳香族化合物及び第二の水素含有化合物から置換芳香族化合物を製造するのに使用される場合には、本発明者らは、脱水素触媒または酸化カップリング触媒の如き触媒の存在が芳香族化合物の所望の置換に対する選択率を増大するのに使用し得ることを発見した。
触媒はセル膜の表面に隣接して充填された不連続の粒子または繊維の形態で存在してもよい。
図6及び図7に示された一つの態様に於いて、電気化学セルは酸素を酸素イオンに還元し得る第一表面32を有する固体多成分膜を含む固体コアー33を含む。コアー33は第二通路36中で酸素イオンを酸素消費ガスと反応させ得る第二表面34を有する。触媒35を含む第二通路36は第二表面34に隣接している。
実際に、不飽和炭化水素の製造または置換芳香族化合物の製造の如き本発明の方法は、図2及び図3の装置を用いる方法と同様に図6及び図7に示されたような装置を用いて行なわれてもよい。触媒35は、触媒35を第一表面32に隣接する第一通路中に置くことにより、または32が第二表面であり34が第一表面であるように第一表面32と第二表面34を逆にすることにより第二表面34に代えて第一表面32に隣接して配置させることができる。これらの最後の二つの配置は、例えば、酸素含有ガスから酸素の抽出方法に使用し得る。
図11に示された電気化学リアクターの態様に於いて、電気化学セルは酸素から酸素イオンへの還元を促進し得る第一電子伝導性表面63を形成するための材料62で被覆された固体電解質または固体の多成分膜を含む固体コアー61を含む。通路71は第一表面63に隣接している。第一電子伝導性表面63はセルのカソードを含む。固体コアー61は、酸素イオンと酸素消費ガスとの反応を促進し得る第二電子伝導性表面65を形成するための材料4で被覆される。触媒69は第二表面65隣接する第二通路70中に存在する。第二電子伝導性表面65はアノードを含む。リアクターは外部回路を形成する任意のリード線ワイヤ66及び67を有する。電流計68が外部回路中に含まれてもよい。
本発明が図12及び図13を参照して更に例示し得る。図12及び図13の両方に於いて、リアクターはシェル80を含み、その中に多成分膜または固体電解質を含むコアー81を含む円形の固体電気化学セルが配置されている。固体コアー81の一表面は導電性金属、金属酸化物、またはこれらの混合物で被覆されて第一導電性表面82を形成する。固体コアー81の別の表面は導電性材料で被覆されて第二導電性表面83を形成する。任意のワイヤリード線87が第一表面82に付着され、任意の第二ワイヤリード線88が第二表面83に付着され、二本のワイヤリード線が任意の電流計89を介して接続されて外部回路を形成する。バッテリーは電流計と直列に接続されてもよい。図12及び図13に示された構成から見られるように、セルは第一表面82に隣接する第一通路86を含む。触媒85を含む第二通路84が第二表面83とシェル80との間にある。
本発明の方法に使用し得る特別な触媒が以下の方法の説明に於いて詳しく記載される。
電気化学方法の好ましい態様は、以下のとおりである。
(1)合成ガスの製造
本発明の電気化学リアクターを使用して反応体ガスを酸化して合成ガスを生成する電気化学方法は、約1000℃〜約1400℃の温度で行なわれる。一つの態様に於いて、その方法は1000℃〜1300℃の範囲内の温度で行なわれる。電解セルは所望の温度に加熱することができ、その温度は外部の加熱及び/または反応の発熱により反応中に維持し得る。
第一帯域に面する側の固体膜と接触して通される酸素含有ガスは、空気、純粋な酸素、または少なくとも1%の遊離酸素を含むあらゆるその他のガスであり得る。その他の態様に於いて、酸素含有ガスはN2O、NO、NO2、SO2、SO3、スチーム、CO2、等の如きその他の形態の酸素を含む。酸素含有ガスは少なくとも約1%の遊離酸素(例えば、二酸素)を含むことが好ましく、酸素含有ガスが空気であることが更に好ましい。
合成ガスを製造するこの方法に従って処理される供給ガスは、メタン、天然ガス、エタン、またはその他の軽質炭化水素混合物の如き軽質炭化水素を含んでもよい。天然ガスは抗口天然ガスまたは処理天然ガスのいずれであってもよい。処理天然ガスの組成は、最終使用者の要望に応じて変化する。典型的な天然ガス組成物は、約70重量%のメタン、約10重量%のエタン、10重量%〜15重量%のCO2を含み、残りは少量のプロパン、ブタン及び窒素から構成される。
軽質炭化水素ガス供給原料は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、またはスチームを含むあらゆるその他のガスの如きあらゆる不活性希釈剤と混合することができ、希釈剤は所望の反応を妨害しない。窒素及びスチームが選択希釈剤である。
第二帯域に面する固体膜表面で本発明のこの方法により製造された合成ガスは、実質的に窒素を含まず、水素と一酸化炭素の混合物を含み、若干のアセチレンまたはエチレンまたはその両方を含み得る。また、合成ガスは、ごく少量の二酸化炭素を含んでもよい。合成ガスは、フィッシャートロプッシュ法を用いて液体に転化でき、商業的な方法によりメタノールに転化し得る。
(2)不飽和炭化水素の製造
本発明の方法に従って処理される飽和炭化水素含有ガスは、脱水素を受け易いあらゆる完全もしくは部分飽和炭化水素を含んでもよく、これらはその飽和もしくは不飽和形態のいずれかで操作温度で安定であることが好ましい。本発明に従って処理し得る飽和炭化水素の例は、1〜約6個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素、5個または6個の炭素原子を含む脂環式炭化水素、2〜約6個の炭素原子の脂肪族炭化水素を有する芳香族化合物、2〜約6個の炭素原子の脂肪族炭化水素置換基を有する脂環式炭化水素、夫々のヘテロ原子が窒素、酸素または硫黄である5員もしくは6員の複素環を含む飽和もしくは部分飽和複素環化合物、夫々のヘテロ原子が窒素、酸素または硫黄である5員もしくは6員の不飽和複素環を含み2〜約6個の炭素原子の脂肪族炭化水素置換基を有する複素環化合物、及びこれらの混合物を含む。好ましい飽和炭化水素は、2〜約6個の炭素原子を含む脂肪族炭化水素並びに分離もしくは縮合された6員の芳香族環と2〜約6個の炭素原子を有する少なくとも一つの脂肪族炭化水素置換基を有する芳香族化合物である。本発明の方法に従って処理される更に好ましい炭化水素は、エタン、エタン含有供給ガス、プロパン、プロパン含有供給ガス、エチルベンゼン、またはエチルベンゼン含有供給ガスである。
エタン含有供給ガスは、天然ガス、メタン熱分解流出ガス、酸化カップリング流出ガス、または少なくとも1%のエタンを含むあらゆるその他のガスであり得る。天然ガスは抗口天然ガスまたは処理天然ガスのいずれであってもよい。処理天然ガスの組成は、最終使用者の要望に応じて変化する。典型的な処理天然ガス組成物は、約70重量%メタン、約10重量%のエタン、10重量%〜15重量%のCO2を含み、残りは少量のプロパン、ブタン及び窒素から構成される。
本発明の別の態様に於いて、エタンがプロパン、ブタン、イソブタン及び/またはペンタンの如きその他の飽和脂肪族炭化水素と混合される。飽和炭化水素ガス供給原料は窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、またはスチームを含むあらゆるその他のガスの如きあらゆる不活性希釈剤と混合することができ、この希釈剤は炭化水素の酸化脱水素を妨害しない。スチーム、窒素及びメタンが選択希釈剤であり、スチーム及びメタンが好ましい。
本発明のこの方法は、少なくとも約300℃、一般には少なくとも約500℃の高温で一般に行なわれ、その方法は約1000℃以下の温度で一般に行なわれる。好ましい態様に於いて、例えば飽和炭化水素ガスがエタンである場合には、その反応は約600℃〜約1000℃の温度、更に好ましくは約700℃〜約950℃の温度で行なわれる。
本発明のこの方法は、約0.1〜約100気圧、更に好ましくは約0.5〜約10気圧の圧力で一般に行なわれる。特に好ましい圧力は1気圧である。
本発明の一局面は、約300℃から1000℃未満の温度で本発明の電気化学リアクターを使用して行なわれるメタン、天然ガスまたはその他の軽質炭化水素を不飽和炭化水素に酸化する電気化学方法である。一つの態様に於いて、その方法は約550℃〜約950℃の範囲内、好ましくは750℃〜950℃の範囲内の温度で行なわれる。電解セルは所望の温度に加熱でき、温度は外部加熱及び/または反応の発熱の利用により反応中に維持し得る。
本発明の方法のこの局面に従って処理される供給ガスは、メタン、天然ガス、エタン、またはその他の軽質炭化水素混合物の如き軽質炭化水素を含んでもよい。メタン含有供給ガスは、例えば、メタン、もしくは天然ガス、または少なくとも50%のメタンを含むあらゆるその他のガスであってもよい。天然ガスは抗口天然ガスまたは処理天然ガスのいずれであってもよい。処理天然ガスの組成は最終使用者の要望に応じて変化する。典型的な処理天然ガス組成物は、70重量%のメタン、約10重量%のエタン、10重量%〜15重量%のCO2を含み、残りは少量のプロパン、ブタン及び窒素から構成される。
軽質炭化水素ガス供給原料は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンまたはスチームを含むあらゆるその他のガスの如きあらゆる不活性希釈剤と混合でき、不活性希釈剤は所望の反応を妨害しない。窒素及びスチームが選択希釈剤である。
第二帯域に面する固体膜表面で本発明の方法のこの局面により製造される不飽和炭化水素は、例えば、エチレン、アセチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、及びこれらの混合物である。
第一帯域に面する側で固体膜と接触して通される酸素含有ガスは、空気、純粋な酸素、または少なくとも1%の遊離酸素を含むあらゆるその他のガスであり得る。別の態様に於いて、酸素含有ガスは、N2O、NO、NO2、SO2、SO3、スチーム、CO2、等の如きその他の形態の酸素を含む。酸素含有ガスは少なくとも約1%の遊離酸素(例えば、二酸素)を含むことが好ましく、酸素含有ガスが空気であることが更に好ましい。
本発明の方法の好ましい態様に於いて、飽和炭化水素含有ガスは要素の第二表面(アノード)に隣接する脱水素触媒と接触して通されて、改良された不飽和炭化水素収率及び選択率を得る。一つの態様に於いて、その方法は高い転化率及び選択率でしかも低いコーキング率でエタンからエチレンまたはアセチレンへの連続脱水素を与える。また、その他の好ましい方法が高い転化率及び選択率でエチルベンゼンからスチレンへの連続転化を与える。また、所望により、その方法は電流を発生するのに使用し得る。
本発明の方法は、酸素を酸素イオンに還元し得る第一表面、酸素イオンを酸素消費ガスと反応させ得る第二表面、及び酸素イオン伝導性通路を有する要素を有するセル中で行なわれる。脱水素触媒は第二表面と隣接する不飽和炭化水素含有ガス用の通路中に存在する。
図11を参照して、酸素含有ガスまたはガス混合物は通路71中を第一電子伝導性表面63(カソード)と接触して通され、飽和炭化水素化合物含有ガスが通路70中を第二表面65(アノード)及び脱水素触媒69と接触して通される。酸素含有ガスが第一表面63と接触する際に、酸素が酸素イオンに還元され、これらイオンがコアー61を通ってアノード側に輸送される。アノード(第二表面65)で、飽和炭化水素が脱水素触媒と接触して水素及び不飽和炭化水素を生成し、酸素イオンが水素と選択的に反応して水を生成し、電子を放出する。電子はリード線ワイヤ66及び67を通って外部回路を経由してカソード側に戻ることができる。このようにして、リアクターは飽和炭化水素を不飽和炭化水素に転化することに加えて電流を発生し得る。
また、本発明のこの方法は図11の装置を使用する方法と同様にして図12及び図13に示されたような電気化学リアクターセルを用いて行なわれてもよい。
別の態様に於いて、図12及び図13の第一導電性表面82と第二導電性表面83は逆にされ、その結果脱水素触媒85は第一導電性表面82に隣接する第一通路84中に存在する。実際には、酸素含有ガスは第二通路86中に通され、飽和炭化水素化合物含有供給ガスが水素触媒85を有する第一通路84中に通される。一種以上の飽和炭化水素含有化合物が上記のようにして一種以上の不飽和炭化水素に転化される。
電気触媒リアクターセル要素の表面上の好ましい導電被膜は、飽和炭化水素から不飽和炭化水素への転化または脱水素を触媒作用することができ、あるいは水素の選択的酸化を促進できる多種の導体のあらゆるものである。これらの好ましいアノード被覆物を形成するのに有効な金属の例は、銀、ニッケル、金、ビスマス、マンガン、バナジウム、白金、パラジウム、ルテニウム、銅、亜鉛、コバルト、クロム、鉄、インジウム-プラセオジム混合物、もしくはインジウム-スズ混合物、これらの酸化物、並びに上記の金属及び金属酸化物の混合物を含む。銀及び金が本発明に特に有効である。
好ましい電子伝導性物質は、銀含有金属組成物及び金含有金属組成物を含む。別の好ましい態様に於いて、第二表面は白金含有金属組成物を含む導電被膜である。
その方法は、図6及び図7に示されたようなリアクター中で行なわれてもよく、ここでは酸素イオン伝導性通路及び電子導電性通路が固体コアー33中に併存する。コアー33は酸素を酸素イオンに還元し得る第一表面32を有する。通路31は第一表面32に隣接している。コアー33は酸素消費ガスの転化を促進し得る第二表面34を有する。通路36は第二表面34に隣接し脱水素触媒35を含む。
実際には、本発明の方法は図12及び図13の装置を用いる方法と同様にして図6及び図7に示されるような装置を用いて行なわれる。
脱水素触媒は酸化脱水素及び熱(即ち、非酸化的)脱水素を促進するのに有効である触媒を含む。酸化脱水素触媒は水素原子を酸素の如き酸化剤に結合することを促進し、一方熱脱水素触媒は脱水素を行なうのに酸化剤の存在を必要としない。好ましい酸化脱水素触媒はビスマス、コバルト、スズ及びチタン、テルルのモリブデン酸塩またはタングステン酸塩、酸化アルミニウムに付着されたリン酸、ビスマス、鉄、ストロンチウム、ニッケル、クロム及びカルシウムのリン酸塩、タングステン、バナジウム、インジウム、ビスマスのリンモリブデン酸塩及びリンタングステン酸塩、モリブデン及びバナジウムの混合酸化物、モリブデン、バノジウム、及びニオブの混合酸化物、アンチモン及びスズ、チタンの混合酸化物、スズ及びヒ素とセレン及びテルルとの混合酸化物、鉄とアルミニウム及びクロムとの混合酸化物、炭酸カリウム、鉄、コバルト、マグネシウム、マンガン、金及び白金の塩基性ハロゲン化物の存存下の鉄及びクロムの混合酸化物、等の如きモノオレフィンの脱水素を促進する触媒である。
有効な脱水素触媒は、シェル(Schell)105触媒(これは約90%の酸化鉄、4%の酸化クロム及び6%の炭酸カリウムを含む)、約2%の酸化クロムと混合された組成Ca8Ni(PO4)6を有するカルシウムニッケルリン酸塩触媒、及びユニオンカーバイド(Union Carbide)のエトセン(Ethoxene)触媒(これはモリブデン、バナジウム及びニオブ系の酸化物である)である。
これらの触媒の製法及び使用方法は当業界で公知である。これらの触媒を記載する文献の例は、V.K.スカルチェンコ(Skarchenko)著、“炭化水素の酸化脱水素”INTERNATIONAL CHEMICAL ENGINEERING、9巻、1号、1〜23頁(1969年);C.N.サターフィールド(Satterfield)、Hete,ogenous Catalysis in Practice、199〜279頁、(マグロ-ヒルイ′コーポレーション(MaGraw-Hill Inc.),1980年);米国特許第4,315,864号、同第4,350,835号、同第4,410,752号、同第4,524,236号、及び同第4,524,6号明細書;及びトルステインソン(Thorsteinson)ら著、“モリブデン及びバナジウムの混合酸化物を含む触媒によるエタンの酸化脱水素”J.Catalysis52 116〜132頁(1978年)を含み、これらは夫々参考として本明細書に完全に含まれる。
酸化脱水素型触媒は電気化学セル要素のアノード表面に直接適用されることが好ましい。何となれば、その表面に与えられた酸素は酸化脱水素を行なうための酸化剤として使用し得るからである。
別の方法に於いて、酸化脱水素型触媒は電気化学セル要素のアノード表面に直接に適用されないが、担持触媒または非担持触媒として第二通路中に分布され、ヨウ素のような酸素以外の酸化剤が試薬と共に第二通路中に導入されて酸化脱水素に必要な条件を与える。
脱水素触媒は、熱脱水素を促進するのに有効である担持触媒または非担持触媒であることが好ましい。これらの触媒は、ロジウム、ルテニウム、パラジウムもしくは白金の諸金属、これらの酸化物、及びこれらの混合物を含む。これらの触媒の中で、白金が最も好ましい。何となれば、白金は脱水素触媒としてのその役割に加えてまた炭素質沈積物の形成を最小にするように作用するからである。炭素質沈積物の形成の減少は、白金に化学吸着された水素によるものであると推測され、水素は触媒の表面に沿って拡散し、表面上でコークス前駆体を水素化してその表面からの脱着を促進する。しかしながら、本発明者らはこの理論により束縛されたくない。何となれば、白金金属に伴なう利点に関する特別な理論は本発明を実施するのに重要ではないからである。
触媒は担体媒体で担持されることが好ましい。担体媒体は本発明の方法を妨害しないあらゆる物質である。このような担体媒体の例は、石英ウール、シリカ、アレミナ、チタニア、及びジルコニアを含み、石英ウールが好ましい。石英ウールは容易に充填でき、セル通路を充填するのに使用される力によりひき起こされるセルの損傷の可能性を減少する。
触媒上で起こる脱水素反応は比較的早く、約0.1〜約100秒の接触時間が不飽和炭化水素への所望の転化を生じるのに充分である。約1〜20秒の接触時間が一般に充分であり好ましい。
本発明の一つの態様に於いて、飽和炭化水素から不飽和炭化水素への転化は、電位をアノードとカソードとの間に適用することにより改良される。一般に、約4ボルトまでの電位、好ましくは約0.1〜約2ボルトの電位が電極間に適用し得る。所望の電位は、図12及び図13中の26、27及び28により形成される外部回路中に設置されたバッテリーの使用により適用し得る。
別の好ましい態様に於いて、反応がアノードで進行する速度は、酸素イオンが第一表面と第二表面との間で移動する必要がある距離を減少することにより増すことができる。換言すれば、セルの性能は、要素の表面積に対して薄い断面を有する要素を使用することにより高めるこができる。
(3)置換芳香族化合物の製造
本発明のこの方法は、上記の(A)に従って要素並びに第一及び第二の通路を含むいずれかの電気化学セルを用いて行なわれる。これらの型の電気化学セルはまた電解セル、発電セル(electrogenerative cell)または燃料セルと称される。電気化学セルの重要な特徴は、それが酸素イオンを酸素含有ガスと接触する要素の第一表面から酸素消費ガスと接触する第二表面へ移すことができるとともに電子を第二表面から第一表面へ逆に移すことができることである。これらの作用は一種より多い電気化学セルにより達成し得る。好ましい態様は金属、金属酸化物またはこれらの混合物で二面で被覆された固体の酸素イオン伝導性電解質を含む態様(“外部回路セル”)及び電子伝導性通路“ビルトイン(built in)”を有する固多成分膜を含む態様(“内部短絡セル”)を含む。本発明のこれらの二つの型の電気化学セルは、先に詳細に説明されている。
素がカソードとして使用される固体電解質上の導電被膜を含む場合、銀、白金及び銀と白金の混合物が導電被膜の金属及び金属酸化物として好ましい。
一つの態様に於いて、アノードはまた上記の導電性金属のいずれかに加えて、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及び相当する酸化物の如きアルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属または金属酸化物を含み得る。リチウムとマグネシウムの組合せが特に有効である。被覆物(アノード)中に含まれるアルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の量は、約1重量%〜約50重量%、好ましくは約5重量%〜約20重量%のような広い範囲にわたって変化し得る。このような混合アノードの特別な例は、Cu/Li/Mg、Ag/Li/Mg、Ag/Sm/Li/Mg及びAg/Bi/Li/Mgを含む。
アルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属またはこれらの金属酸化物は、導体が固体電解質の表面に付着される前またはその後に導体中に含まれてもよい。アノードを付加的な物質でドーピングし、被覆し、または特別に処理して飽和炭化水素との表面相互作用のためにその安定性、構造及び/または反応性に影響を及ぼすことがまた可能である。
本発明に有効な導電被膜の特別の例、及びこのような被覆物の調製方法は、以下のとおりである。
Ag:管が銀インク(エンゲル-ハード(Engel-hard)A3148)で被覆される。
Ag/Li/Mg:管が銀インク(A3148)、ついで水中の酸化マグネシウム(MgO)及び炭酸リチウム〔Li2CO3〕(14.6重量%のリチウム)のスラリーで逐次被覆される。
Pt:管がエンゲルハードからの白金インク(#6926)で被覆される。
Pt/Bi:上記のようにして調製された白金アノードが水中の酸化ビスマス〔Bi2O3〕のスラリーで被覆される。
一つの態様に於いて、電子伝導性物質は銀含有組成物を含む。一つの好ましい態様に於いて、その物質はビスマス及び必要によりアルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属またはその金属酸化物をも含む銀含有金属組成物を含む。別の好ましい態様に於いて、第二表面は白金含有金属組成物を含む導電被膜である。
本発明の一つの態様に於いて、芳香族化合物から混合物中の第二化合物で置換された芳香族化合物への転化は電位をアノードとカソードとの間に適用することにより改良される。一般に、約4ボルトまでの電位が電極間に適用し得る。所望の電位は図11中の66、67及び68により形成される外部回路中に設置されたバッテリー使用により適用し得る。
しかしながら、本発明者らはまた、高い転化率が電解質の露出表面積に対して第一表面と第二表面との間の小さい厚さ(即ち、単位面積当りの小さい容積)を有する固体電解質(これは平均酸素イオンが単位面積当りに電解質中を移動する必要がある距離を減少する)を選択することにより得ることができることを見い出した。この転化率を高める効果は外部直流電源の取り付けを必要とせず、これを転化率を経済的に増大する好ましい方法にする。
本発明の方法に使用される電気化学セルは、必要により第二通路中に触媒を含んでもよい。本発明者らは、第二通路中の触媒の存在が本発明の方法に所望され生成物の選択率及び転化率を得ることを容易にし得ることを見い出した。触媒は電気化学セルの要素の第二表面上に薄いフィルムとして存在してもよく、あるいは同セルの第二通路中に充填された不連続の粒子または繊維の形態で存在してもよい。触媒は外部回路セルまたは内部短絡セルと組合せて使用されてもよい。
この連続法は、水素含有化合物と第二の水素含有化合物の混合物が飽和炭化水素化合物に代えて使用される以外は、上記の不飽和炭化水素の製造方法と同様にして実施され、触媒は酸化カップリング触媒及び以下に更に説明される脱水素触媒であってもよい。
本発明の好ましい態様に於いて、第二通路中の触媒は脱水素触媒または酸化カップリング触媒であり、酸素消費ガス混合物は飽和炭化水素を含むことが好ましい。本発明者らは、飽和炭化水素による芳香族化合物の置換の選択率が一般にこのような触媒の存在下で増加されることを見い出した。
また、第二通路中の脱水素触媒または酸化カップリング触媒の存在は、反応混合物が第二の水素含有化合物として飽和炭化水素のみを含む場合であっても、不飽和炭化水素により置換された芳香族化合物の選択率を高めるのに使用し得る。ベンゼンとエタンの混合物の転化方法は、脱水素触媒または酸化カップリング触媒の存在により、エチルベンゼンまたはビフェニルの製造とは反対にスチレンの製造に対して一層選択的にし得る。
脱水素触媒は、上記の不飽和炭化水素化合物の製造方法に有効な触媒を含む。
或種の脱水素触媒が、反応帯域中でハロゲン含有添加剤または硫黄含有添加剤の存在下で使用される場合に好ましく、これら添加剤は反応条件下で分解してハロゲンまたは二酸化硫黄を生成する。このような触媒の例は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ビスマス、スズ、カドミウム及び銅の酸化物、リン酸マグネシウム、等(これらの混合物を含む)を含む触媒である。ハロゲン含有添加剤系が、例えば、米国特許第3,207,807号、同第3,207,808号、同第3,207,809号、同第3,207,810号、同第3,207,811号、同第3,210,436号及び同第3,211,800号;英国特許第988,619号;フランス特許第1,397,284号;オランダ特許出願第6,500,024号;及びベルギー特許第658,368号に記載されており、硫黄含有添加剤系がベルギー特許第617,892号;英国特許第998,784号及び同第984,901号;及びフランス特許第1,407,830号に記載されており、これらの特許の夫々が参考として本明細書に完全に含まれる。
本発明に使用し得る酸化カップリング触媒は、反応混合物中の炭化水素間の酸化カップリングに使用される触媒を含む。酸素消費ガスの第二の水素含有化合物としてメタンを使用するために、メタンをカップリングしてエタン及びエチレンを生成するのに有効な酸化カップリング触媒が使用でき、酸化カップリング触媒は水素含有芳香族化合物と第二の水素含有化合物との反応を促進するのに使用し得る。酸化カップリング触媒の例は、鉛、ビスマス、スズ、アンチモン、テルル、カドミウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、亜鉛、カルシウム、の酸化物並びにリマリウム、ホルミウム、ガドリニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、イットリウム、ランタン、ネオジム、ユウロピウム、ジスプロシウム、ルテチウム、プラセオジム及びテルビウムの如き希土類金属を含む。また、種々のドーピングされた酸化マグネシウムが酸化カップリング触媒として有効である。ナトリウム、カリウム、またはセシウムでドーピングされた酸化マグネシウムの如きアルカリ金属でドーピングされた酸化マグネシウムが有効な酸化カップリング触媒である。
これらの触媒は担持触媒であることが好ましい。担体物質は本発明の方法を妨害しないあらゆる物質である。担体物質の例は、石英ウール、シリカ、アルミナ、チタニア、及びジルコニアを含み、石英ウールが好ましい。石英ウールは容易に充填でき、セルの通路を充填するのに使用される力によりひき起こされるセルの損傷の可能性を減少する。
本発明の方法は一般に少なくとも約300℃の温度、好ましくは少なくとも約500℃の温度で行なわれる。温度は約1100℃以下であることが好ましく、約950℃以下であることが更に好ましい。特別な電気化学セル/供給ガス組成物系に関する温度は、最適の転化率温度に関して種々の温度で転化率を調べることにより当業者により容易に最適にし得る。操作温度の上限は、かなりの量の所望の生成物または反応体が望ましくないフラグメントまたは副生物に分解する温度より一般にわずかに低い。
第一表面即ちカソードと接触して通される酸素含有ガスは、空気、純粋な酸素または少なくとも1%の酸素を含むあらゆるその他のガスであってもよい。別の態様に於いて、酸素含有ガスは二酸素を含まないが、むしろN2O、CO2、SO2、NO2、NO、等の如きその他の形態の酸素を含む。酸化ガスは空気の如き二酸素含有ガスである。
水素含有芳香族化合物は、置換基として水素を有するあらゆる芳香族環含有化合物であってもよく、置換もしくは未置換の単環式もしくは多環式の芳香族化合物を含む。一つ以上の芳香族環は、芳香族化合物が主として芳香族炭化水素の特徴を保持する限り、置換基または環構成員として一つ以上のヘテロ原子またはヘテロ原子含有基を含んでもよい。典型的なヘテロ原子は、窒素、酸素及び硫黄を含む。
水素含有芳香族化合物は、一般に電気化学セルの操作温度で気体でしかもかなり安定である(即ち、分解に対して抵抗性である)水素含有芳香族化合物から選ばれる。このような芳香族化合物の例は、チオフェン、チアゾール、ピラゾール、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、フェノール、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、アセトフェノン、ピリジン、安息香酸、フェニルベンゼン、インデン、インドール、ベンゾチオフェン、ペンゾチアゾール、ナフタレキノリン、シノリン、アントラセン、アントラキノン、フェナントレン、ピ、カルバゾール、等を含む。これらの中から、6員の芳香族環を有する単環式芳香族化合物が好ましく、ベンゼンが操作温度に於けるその安定性のため及び経済上の理由のため最も好ましい。
第二の水素含有化合物は、電気化学セルの第二通路に導入された芳香族化合物と酸化カップリングし得る広範囲の水素含有化合物から選ばれてもよい。これらの化合物は、置換もしくは未置換の飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素の如き飽和もしくは不飽和の置換もしくは未置換の炭化水素化合物、及び水素含有無機化合物、例えば、メタン、置換メタン、シアン化水素、アンモニア、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素及びヨウ化水素)、等またはこれらの混合物を含む。置換メタンは、ハロゲン置換メタン、メタノール、メチルアミン、シアン化メチル、メチルイソシアネート、等を含む。当業者は本発明の精神及び範囲に従って芳香族化合物の置換基として好適な付加的な水素含有化合物を容易に同定し得る。
第二の水素含有化合物から誘導される置換基は単に少なくとも一つの水素原子の少ない第二化合物である。上記の例から、本発明の方法により製造される置換芳香族化合物の置換基の例として、ヒドロカルビル、シアノ、アミノ、ハロ等が挙げられる。
第二化合物が芳香族化合物にカップリングされる部位から1個より多くの水素原子が除去される場合には、第二化合物の不飽和の如き可能性が更に存在し、その結果、第二化合物が炭化水素であるならば、例えば、既に何も存在しなかった場所ではそれは二重結合を形成し得る。これは、例えば電気化学セルの第二通路に入る混合物がベンゼン及びエタンである場合に起こる。エチルベンゼンが生成し得るだけでなく、スチレン(即ち、ビニルベンゼン)も生成される。スチレンはポリスチレン及びそのモノマー単位の一つとしてスチレンを有する多くのコポリマーの商業上の製造の出発原料として公知である。
好ましい第二の水素含有化合物は置換もしくは未置換のメタン及び置換もしくは未置換の、分枝鎖もしくは直鎖の、飽和もしくは不飽和の脂肪族炭化水素、特に2〜約5個の炭素原子を有するこれら炭化水素、例えばメタン、メタクリル酸メチル、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブチレン、ペンタン、2-チルブタン、等である。これらの脂肪族炭化水素の中で特に好ましいものは、タン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、1-ブチル、ブタジエン、等の如き2〜4個の炭素原子を有するものである。何となれば、れらは比較的安定であり、しかも多くのその他の炭化水素よりも幾分容易に脱水素し得るからである。
本発明の方法は、一般に約0.1〜約100気圧、更に好ましくは約0.5〜約10気圧、更に好ましくは約1.0気圧の圧力で行なわれる。
セル中の反応混合物の流量は、所望の置換芳香族化合物を生成するために反応混合物によるアノードとの充分な接触がある限り、所望により変化し得る。0.1〜約100秒の接触時間が使用でき、1〜20秒の接触時間が一般に充分である。
(4)酸素含有ガスから酸素の抽出
本発明による酸素含有ガスから酸素を抽出する電気化学方法は本発明の電気化学セルを用いて行なわれる。その方法は一般に約300℃〜約1400℃の範囲内の温度で行なわれる。一つの態様に於いて、その方法は約500℃〜約1400℃の範囲で行ない得る。好ましい態様に於いて、その方法は少なくとも約400℃、好ましくは約1000℃以下、更に好ましくは約900℃以下の温度で行なわれる。電気化学セルは所望の温度に加熱でき、温度は熱煙道ガス、外部加熱を利用し、且つ/または反応の発熱を利用することにより反応中に維持することができる。本発明の方法に従って処理される酸素含有ガスは、遊離酸素を含み、且つ/またはN2O、NO、NO2、SO2、SO3、H2O(g)(即ち、スチーム)、または煙道ガスのような酸素含有ガスの混合物、等の如きその他の形態の酸素を含むあらゆるガスであってもよい。
反応体ガスは酸素または酸素イオンと反応し得るあらゆるガスを含み、気相中にあり、且つ処理条件下で酸素または酸素イオンと反応し得る一種以上の炭化水素、例えばメタン、天然ガス、エタン、エテン、アセチレン、プロパン、プロペン、プロピン、ブタン、ブテン、ブチン、イソブタン、イソブテン、等の如き飽和及び不飽和低級脂肪族炭化水素、シクロプロパン、シクロブタン、シクロブテン、等の如き飽和及び不飽和低級環状炭化水素、ベンゼン、ナフタレン、等の如き芳香族炭化水素、及びこれらの混合物;天然ガス;水素;一酸化炭素;硫化水素;メタノール;アンモニア;等及びこれらの混合物を含む。本発明の反応条件下で酸素または酸素イオンと反応し得る一種以上のガスの選択は当業者の権限内にある。
この方法に使用するのに好ましい反応体ガスまたはガス混合物は、単位容積当りで安価であり、工業プロセスの副生物であり、且つ/またはそれらが酸素または酸素イオンと反応する時に有用な生成物を生成するものである。反応体ガスとして使用するのに特に好ましいガスは天然ガスである。
本発明のこの方法の一つの態様に於いて、少なくとも一つの電気化学セルが煙道ガス放出物または廃ガス放出物を浄化、精製または循環するために煙道ガスまたは廃ガスの通路中に設けられる。この方法に於ける電気化学セルは、煙道ガスまたは廃ガスを含む帯域から煙道ガス帯域を分離する。
第一表面、即ちカソードと接触して通される硫黄及び/または窒素の酸化物を含むガスは、約0.001モル%程度の小量から100モル%までの量のSO2、、NO2、NO、N2O、等を含み得る。処理されるガス流中の硫黄及び/または窒素の量は約0.005〜約5モル%の範囲であることが好ましく、約0.1〜約1モル%の範囲にあることが更に好ましい。何となれば典型的な煙道流及び排出流はこの更に好ましい操作範囲で硫黄及び/または窒素の酸化物を含むからである。
実際には、硫黄及び/または窒素の一種以上の酸化物を含むガス混合物が要素の第一表面(カソード)と接触して通され、還元ガスが要素の第二表面(アノード)と接触して通される。汚染物質含有ガスが第一表面と接触する際に、酸素が酸素イオンに還元され、これらイオンが要素中をアノード側へと輸送される。アノード側(第二表面)で、酸素イオンが還元ガスと反応し、電子が放出される。電子はカソード側に戻る。
一つの態様に於いて、本発明の方法は図9及び図10に示されるような装置を用いて還元ガスを内部開放空間54中に通し、硫黄及び/または窒素の酸化物を含むガス流を外部開放空間55中に通すことにより行なわれる。外側の導電被膜53と接触する硫黄及び窒素の酸化物が還元され、酸素イオンを放出し、これらイオンがコアー51中を通って内側の導電被膜52へと移行する。内側の被膜52の表面で、酸素イオンが内側の導電被膜52と接触する還元ガスと反応する。この反応中に、酸素イオンは二つの電子を失ない、これら電子がコアー51及び必要によりリード線56及び57により形成された回路及び電流計/バーテリー58を通って内側の被膜52から外部表面被膜53へと移動する。
更に別の態様に於いて、アノードとカソードが逆にされる。即ち、内側の導電被膜52がカソードであり、外部導電被膜53がアノードである。この態様に於いて、煙道ガスが外部開放空間55中に通され、硫黄及び/または窒素の酸化物を含むガス流が内部開放空間、即ち中央開放空間54中に通される。それ以外の点では、この態様の方法は上記の態様と同じである。
本発明の最後の二つの態様に於いて、ガス浄化の速度はアソードとカソードの間に電位を適用することにより改良される。一般に、約4ボルトまでの電位が電極間に適用し得る。所望の電位は図10中の56、57及び58により形成された外部回路中に設置されたバーテリーの使用により適用し得る。
しかしながら、本発明者らはまた、高速のガス浄化が電解質の露出表面積に対して第一表面と第二表面との間の小さい厚さ(即ち、単位面積当りの小さい電解質容積)を有する固体膜または電解質(これは平均酸素イオンが単位面積当りに電解質中を移動する必要がある距離を減少する)を選ぶことにより得ることができるこを見い出した。1mmの壁に厚さのためこのような増大された効率効果を有する薄壁の高密度のイットリアで安定化されたジルコニア管が、例えば、オハイオ州ソロンにあるジルコア・プロダクツ(Zircoa Products)から入手し得る。この効率を高める効果は外部の直流電源の取り付けを必要とせず、これをその方法を経済的に行なうのに好ましい方法にする。
本発明の電気触媒セル固体電解質に使用される薄い気密の耐火性酸化物層を加工する一つの方法は、A.O.アイゼンベルグ(Isenberg)、PROCEEDINGS OF THE ELECTROCHEMICAL SOCIETY、77巻、6号、572〜583頁(1977年)に於いてウエスチングハウス・エレクトリック・コーポレーション(Westinghouse Electric Corporation)により開示された電気化学蒸着法の如き“蒸着法”である。その文献は参考として本明細書に含まれる。
カソード上で導電性金属、金属酸化物またはこれらの混合物として存在し得る金属及び金属酸化物の中で、銀、白金及び金が一般に好ましい。
硫黄及び/または窒素の酸化物に加えて、精製されるガス流はまた窒素ガス、酸素ガス、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、スチーム、一酸化炭素、未燃焼燃料、等の如きその他の成分を含んでもよい。酸素ガス及び二酸化炭素の如き酸素含有ガスの存在は、例えば、硫黄及び/または窒素の酸化物を転化するのに使用される燃料ガスの幾つかをむだにすることがある。しかしながら、本発明者らは、本発明がこのようなガス流と共に使用される場合に特に経済的であることを見い出した。何となれば、利用される付加的は燃料ガスは殆んどの領域に於いて1キロワット時の電力に対する燃料ガスの一般のコストのもとに米国特許第4,659,448号に開示された電解法の如き電解法に使用される電力よりもはるかに安価であるからである。
本発明の方法に使用される電気化学セルは、必要により第一導電性表面に隣接し、またはその上に被覆された触媒を含んでもよい。本発明者らは、触媒の存在が硫黄及び窒素の酸化物の還元を促進し、且つ/または電気化学セルの第一導電性表面(即ち、カソード)で硫化カルボニルの分解を促進することを見い出した。触媒は電気化学セルの固体電解質の第一導電性表面上にフィルムとして存在してもよく、また第一導電被膜中に分散または混合されてもよく(例えば、電子伝導性被膜をドーピングすることにより)、あるいはセルの第一導電性表面(カソード)に隣接して充填された不連続の粒子または繊維の形態で存在してもよい。
実際に、本発明の方法は図9及び図10の電気化学セルを使用する方法と同様にして図12及び図13に示されるような電気化学セルを用いて行なわれる。
第一通路に好ましい触媒は、ランタンの酸化物、ユウロピウム(Eu)でドーピングされたランタンの酸化物、ランタン、ストロンチウム及びコバルトの混合物の酸化物、亜鉛及び鉄の混合物の酸化物、モリブデンの酸化物及びタングステンの酸化物を含む。硫黄の酸化物を還元するための触媒の特別な例は、La2O3、La6Sr4CoO3(ペロブスカイト)、ZnFe2O4、ZnMoO4、FeWO4、等を含む。これらの触媒物質は本発明の方法中にここに記載された分子式及び/または構造を保持してもよく、また保持しなくてもよい。何となれば、硫黄原子は触媒例中の或種の元素に対して高度に反応性でありそれらと結合し得るからである。例えば、ランタン酸化物はランタンオキシスルフィド、上記のランタン-ストロンチウム-コバルトペロブスカイトの如きペロブスカイトを生成する傾向があり、例えば硫黄の酸化物と接触する時にしばしばそれらのペロブスカイト構造を失なう。
これらの触媒の製法及び使用法は当業界で公知である。これらの触媒を記載する文献の例は、バグリオ(Baglio)著、“SO2によるCO及びCOSの酸化のための触媒としてのランタンオキシスルフィド”Ind.Eng.Chem.Prod.Res.Dez(1982年)21巻、38〜41頁及びヒベート(Hibbert)ら著“煙道ガスの脱流:硫化されたLa1-xSrxCoO3上の一酸化炭素による二酸化硫黄の接触除去”パートII、Applied Catalysis(1988年)41巻、289〜299頁を含み、これらの文献は夫々それらの開示の関連部分に関して参考として本明細書に完全に含まれる。
本発明のこの方法は、少なくとも約300℃の温度、好ましくは少なくとも約400℃の温度で一般に行なわれる。処理温度は約1000℃以下であることが好ましく、約900℃以下であることが更に好ましい。特別な電気化学セル/供給ガス組成物系に関する温度は、最適の転化率温度に関して種々の温度で転化率を調べることにより当業者により容易に最適にし得る。操作温度の上限は、一般に電気化学セル成分が望ましくない物質に分解する温度よりわずかに低い。
電気化学セルを加熱する工程は、炭化水素の燃焼により発生されるような煙道ガスまたは廃ガス中に通常存在する熱により部分的に、もしくは完全に与えられてもよく、あるいは外部の源により加熱されてもよい。低温のガスまたはガス混合物を反応体ガス帯域及び/または煙道ガスまたは廃ガスを含む帯域中に注入することによる冷却、対流冷却、液体冷却、等を含む温度調節法が必要により使用されて電気化学方法中の過熱を防止することができ、当業界で公知の種々の手段により行ない得る。このような手段は、本発明の範囲内にあると考えられる。
一般に、本発明の方法は、約0.1〜約100気圧、更に好ましくは約0.5〜約10気圧、更に好ましくは約1.0気圧の圧力で行なわれる。
セル中の硫黄及び/または窒素の酸化物を含むガス流の流量は、硫黄及び窒素の酸化物の排出物の所望の減少を得るのに充分なカソードとガス流との接触がある限り、所望により変化し得る。0.1〜約100秒の接触時間が使用し得るが、一般には1〜20秒の接触時間が充分である。
また、還元ガスの流量は、硫黄及び窒素の酸化物の排出物の所望の減少を得るのに充分なアノードと還元ガスとの接触がある限り、所望により変化し得る。
以下の例に於いて、酸素消費ガスが図1に示されたリアクターと同様の実験室用リアクター中で処理される。
【実施例】
多成分膜製造実施例
実施例A-1ないしA-14に用いられた多成分膜は次の様にして製造された。
実施例A
以下のA-1およびA-2において用いられた二重導体膜は、電子的に伝導な相としてのパラジウム金属とイオン的に伝導な相としての酸化イットリウムで安定化されたジルコニア(以下“YSZ”という)とを含有するディスクを製造するこによって組み立てられた。
各々50%の酸化パラジウムと酸化イットリウム(8mol.%)で安定化されたジルコニアとの粉末混合物を最初に得た。次いで、この混合物を水素と窒素との混合物雰囲気中において、400℃で15分間加熱して酸化パラジウムを、パラジウム金属に還元した。この混合物4.0グラムに、クロロホルムに溶解した0.4グラムのCarbowax 20MTM(Supelco社より得られる)を添加し、得られた混合物を85℃において乾燥した。かくして得られたPd/酸化イットリウムで安定化されたジルコニア/Carbowax 20MTM粉末を60,000psi適用圧力を用いてディスクに圧入させた。次にこのディスクを、空気中において、1500℃で30分間焼成した。かくして得られたディスクは、密度が高くガスがもれない。このディスクは直径1インチで厚さ0.03インチ(0.76mm)である。
実施例B
以下のA-3に用いられた二重導体膜は、電子的に伝導な相としてのパラジウム金属と、イオン的に伝導な相としてのYSZとを含有するディスクを製造することによる組み立てられた。
Engelhard Platinum Ink 9.52グラム(Engelhahard Corpratin社製製品、カタログNO.6926)を、3ccのアルファーテルピノールで希釈し、次いで2.00グラムの酸化イットリウム(8mol.%)で安定化されたジルコニアを、この希釈されたインクに混合した。この混合物を蒸発乾固し、該テルピノールを炉中にて100℃で焼き尽くした。この乾焼塊団を粉砕し、8.49グラムのこの乾燥、粉砕化した粉末を、20ccのクロロホルムに溶解したCarbowax 20TM0.94グラムに添加した。このクロロホルムを蒸発除去し、得られた粉末を炉中にて、85℃で約30分間乾燥し、該粉末を軽く再粉砕化して、120メッシュのふるいにかけた。次いで、5.00グラムのふるいにかけられたPt/酸化イットリウムで安定化されたジルコニア/Cabowax20TM粉末を、60,000psi適用圧力を用いて、直径1-3/8インチ(3.50cm)を有するディスク中に圧入した。次いで、該ディスクを、1-1/2℃/分の割合で、1650℃まで加熱し、空気中で1650℃にて2時間焼成して、4℃/分の割合で冷却した。得られたディスクは、密度が高くガスもれはなかった。
実施例C
以下の実施例A-4に用いられた二重導体膜は、電子的に伝導な相としての酸化ランタン、クロムおよびマグネシウムならびにイオン的に伝導な相としてのYSZとの組合せを含有するディスクを製造することにより組み立てられた。
0.25グラムのMgO、5.52グラムのCrO3および10.00グラムのLa2O3の粉末混合物を、最初に製造した。次に、この粉末を100℃にて乾燥し、再粉砕した。次いで、5.0グラムの得られたLa(Cr9Mg)粉末を0.5グラムのB2O3を含む熱水溶液に添加して、得られた溶液を、次いで乾燥し、微粉末に粉砕した。次いで4.5ccのB-MgLaCr粉末と、4.5ccの酸化イットリウム(8mol.%)で安定化されたジルコニアとを混合させ、次いで10重量パーセントのCarbowax 20TM(クロロホルムに溶解)と混ぜた。次に得られた混合物を乾燥し、再粉砕して粉末混合物を得た。4.0グラムのこの粉末混合物を、60,000psi適用圧力を用いてディスク中に圧入した。このディスクを1℃/分から2℃/分の割合で1400℃まで加熱し、空気中にて1400℃で全体で45分間焼成して、3.9℃/分の割合で冷却した。かくして得られたディスクは密度が高くガスもれはなかった。
実施例D
以下のA-5において用いられている二重導体膜は、電子的に伝導な相としてのBMgLaCrOxおよびイオン的に伝導な相としてのYSZを含むディスクを、上記実施例Cに従って製造し、焼成後に、その一方の側面(アノード側)上に、プラセオジム、イットリウムおよびジルコニウムが含浸されているディスクによって組立てられている。
このBMgLaCrOx/YSZディスクは、水cc当り0.218グラムのPr(NO3)35H2Oおよび0.212グラムのZr(NO3)46H2Oおよび0.0115グラムのY(NO3)36H2Oを含有する0.1ccの水溶液を適用することによって、該ディスクの一つの表面に含浸された。次いで、このディスクを乾燥し、空気中で、1100℃まで加熱した。
実施例E
以下の実施例A-6およびB-3において用いた二重導体膜は、電子的に伝導な相としてのプラセオジムが添加されている酸化インジウムおよびイオン的に伝導な相としてのYSZを含有するディスクを製造することにより組み立てられた。
31.22グラムのIn2O3粉末、4.26グラムのPr6O11粉末、29.70グラムの酸化イットリウム(8mol.%)で安定化されたジルコニア粉末、100ccの蒸留H2O、4滴のParvan C(Norwalk,ConnecticutのR.T.Vanderbilt and Company,Inc.から商業的に入手し得る分散剤)、およびジルコニア粉砕媒体の粉末混合物を、17時間、ボールミル中において粉砕した。次にこの混合物を200℃で乾燥して、10重量パーセントのクロロホルムに溶解したCarbowax 20Mを混合し、全体の混合物を再び100℃で乾燥してクロロホルムを除去した。次いでこの粉末混合物を再度粉砕し、4.0グラムの該混合物を、60,000psi適用圧力を用いてディスク中に圧入した。次にこのディスクを、0.5℃/分から1℃/分の割合で1550℃まで加熱し、空気中1550℃で3時間焼成し、1℃/分の割合で冷却した。かくして得られたディスクは密度が高く、ガスもれはなくまた3.12cmの最終直径を有していた。
【図4】
上記実施例Eによって製造された二重導体膜の表面の、500倍率の電子顕微鏡後方散乱像が図4に示されている。該膜の二つの相に対応する二つの領域が該像にくっきりと明白にでている。平らでなめらかな領域は、X線吸着地図作成によって確認された、酸化物イオン伝導相、主として酸化イットリウムで安定化されたジルコニアからなる。顕微鏡写真の中央における頂部近くから底部にひろがっている薄く少さな粒状化リボンは、主として酸化インジウムからなる電子的に伝導な相である。
【図5】
実施例Eと同一の膜の、5,000倍の倍率の断面の第2の電子顕微鏡写真が図5に示されている。小さな白色の粒子は、電子的に伝道するインジウム含有相であり、灰色領域は、イオン的に伝導する相、主として酸化イットリウムで安定化されたジルコニアである。極めて暗い領域は、サンプル調製中、断面に生じた小さな空隙に基くものである。
以下の実施例は、灰チタン石構造の混合金属酸化物からなる膜をどの様に製造するかを説明するものである。
実施例F
固体膜を、式La2Sr8CoOxのABO3タイプの物質に基いて製造した。
7.5グラムのLa2O3、18.4グラムのCo3O4および19.08グラムのSrOの粉末混合物をジルコニア粉砕媒体を用いて、約24時間エチルアルコール中においてボールミルで粉砕した。得られたスラリーを90℃で蒸発乾固し、乾燥粉末に粉砕した。この粉末を10重量パーセントの、クロロホルムに溶解したCarbowax 20MTMと混合した。かくして得られた混合物を室温で乾燥し、粉末混合物に再粉砕化して、80メッシュのふるいにかけた。4グラムの粉末を60,000psi適用圧力を用いて所望の形態中に圧入した。次に、該形態混合物を、約600℃までゆっくり加熱してCarbowaxTM結合剤を焼き尽し約0.6℃/分の割合で1200℃まで加熱し、約5時間1200℃に維持し、約0.9℃/分の割合で約105℃まで冷却した。得られた膜は、密度が高く、ガスもれはなかった。
実施例G
等モル量のCaOをSrOに代えて用いたほかは、実施例下の方法に従って膜を調製して、式La3Ca3CoOxを有する組成物を得た。
以下の実施例H-Lは、上記の硝酸塩および/またはアセテート塩の熱分解法に従った固体膜の製造を説明するものである。
実施例H
約20.0グラムの酢酸ランタン、約49.35グラムの硝酸ストロンチウム、および約72.61グラムの酢酸コバルトを水に溶解した。該溶液を撹拌しながら熱プレート上でほぼ蒸発乾固した。次に濃縮混合物を空気中1時間450℃で加熱した。得られた粉末をアセトン中で粉砕し、次いで空気中、1150℃で5時間か焼した。かくして得られた粉末を、ジルコニア粉砕媒体を用いて20時間3滴のDarvanCTM分散剤を含有するアセトン中でボールミルを用い粉砕した。該粉末懸濁液を200℃で乾燥し、クロロホルム中に溶解した10重量パーセントのCarbowax 20MTMを混合して、次いで混合物全体を撹拌しながら熱プレート上でゆっくり乾燥し、次いで炉中で90℃に更に乾燥した。かくして得られた粉末を、乳鉢と乳棒で粉砕し、80メッシュのふるいに適した。4グラムの得られた粉末を、60,000psi適用圧力を用いて所望の形態に圧縮した。次に該形態混合物をゆっくり600℃まで加熱し、CarbowaxTM結合剤を焼き尽し、次いで約0.6℃/分の速度で1200℃まで加熱して、約5時間1200℃に維持して、冷却させた。かくして得たLa2Sr8CoOxABO3タイプの多成分膜は密度が高く、ガスもれはなかった。
実施例J
酢酸鉄を酢酸コバルとに代えて、等モル量の金属イオンを用いたほかは、実施例Hの方法に従って固体膜を調製した。該製品を示す式は、La2Sr8FeOxと表わすことができる。
実施例K
酢酸鉄および酢酸クロムを酢酸コバルトに代え、鉄のクロムに対するモル比が4:1であり、鉄およびクロムの合計モル含量がコバルトのモル数と等しい様な量において用いたほかは、実施例Hの方法に従って固体膜を製造した。得られた製品は、式La2Sr8Fe8Cr2Oxによって表わすことができる。
実施例L
酢酸カドリニウムを等モル量の金属イオンの酢酸ランタンに代えて用いたほかは、実施例Hの方法に従って固体膜を製造した。得られた製品は式Gd2Sr8CoOxによって表わすことができる。
上記クエン酸製造法による固体膜の製造が以下の実施例Mに示されている。
実施例M
La2Sr8Fe8Cr1Co1OxABO3タイプの多成分膜を、硝酸塩または酢酸塩からクエン酸溶液中でそれらを混合することによって製造した。
約30.0グラムの硝酸ランタン、60.96グラムの硝酸ストロンチウム、117.85グラムの硝酸鉄、14.59グラムの硝酸クロム、10.61グラムの硝酸コバルトおよび138.71グラムのクエン酸を水に溶解した。この溶液を丸口ガラスフラスコに入れ、該混合物が濃厚になるまで80℃にて減圧下、回転蒸発器上で混合した。該液体を蒸発皿中に注ぎ、減圧炉中で、部分減圧下、110℃で20時間乾燥した。この粉末を粉砕し、次いで空気中200℃で1時間か焼し、続いて900℃で24時間か焼した。この粉末をプラステック製ジャーに入れ、3滴のDarvan CTM分散剤を含有するアセトン中、ジルコニア粉砕媒体と共に24時間ボールミルで粉砕した。該粉末懸濁液を90℃で乾燥し、クロロホルム中の5重量パーセントのCarbowax 20MTMを添加して、次いで混合物全体を、撹拌しながら熱プレート上でゆっくり乾燥し、続いてさらに炉中にて90℃で乾燥した。得られた粉末を乳鉢と乳棒で粉砕して60メッシュのふるいに通した。4グラムの得られた粉末を、37,500psi適用圧力を用いて所望の形態に圧縮した。この形態混合物を、ゆっくり600℃まで加熱し、CarbowaxTM結合剤を焼き尽して、次いで、約0.6℃/分の速度で1200℃まで加熱し、約5時間1200℃に維持して、次いで冷却させた。得られた膜は、密度が高く、ガスもれがなかった。
実施例N
実施例Mの方法に従って、上記ABO3タイプの式において関連するモル量を達成するに必要な量において、この膜の金属類の硝酸塩(または各々の酢酸塩)を代えることによって、La2Sr8Fe8Mn2OxABO3タイプの多成分膜を製造した。
酸素流量結果
上記実施例A-Nの各々の二重導体ディスクを、2種の1インチ直径のYSZまたはムル石チューブ間に接着した。この組立体の一方は、酸素消費ガスを導入するための石英張りステンレス鋼またはムル石供給チューブと適合し、この組立体の他方は、酸素含有ガスを導入するためのステンレス鋼、ムル石、またはシルコンカーバイド供給チューブと適合した。以下の各々の実施例において、該組立体を1100℃まで加熱することのできる分割炉に入れた。実施例A-7からA-14において試験された混合金属酸化物からなるディスクを通しての酸素流量の比率は、該ディスクの燃料側に対し60cc/分の標準燃料混合物を供給し、該ディスクの反対側に対し200cc/分の空気を供給し、該ディスクの燃料側に存在するガス組成を、ガスクロマトグラフによりCO2、CO、およびN2の容量パーセントを求めるため分析し、該ディスクの燃料側に存在するガスから乾燥氷/アセトントラップにより水を集めることによって廃液中の水の容量パーセントを測定することによって測定される。以下の式は、全酸素流量および表面積単位当りの酸素流量がいかに計算できるかについての概要を示している。
全O2流量=(廃液中のO2)+(H2Oとしての廃液中のO2)-(供給中のO2)-(O2漏出)
廃液中の酸素=(流速出)×((%CO2)+0.5×(%CO))/100
H2Oとしての廃液中のO2=(集められたH2Oのグラム/時間)×(1モルH2O/18gH2O)×(1モルO2/2モルH2O)×(24,200cc/O2モル)×(1hr/60min)
供給中におけるO2=(流速入)×(供給中の%CO2)/100
廃液中のO2漏出(%N2に基く)=(流速出)×(21%O2/79%N2)×(%N2)/100
単位表面積当りのO2流量=全O2流量/燃料“混合”に露出する膜の表面積
特記しない限り、全ての部、パーセント、比率などは、標準温度および圧力(STP,25℃および1気圧)における容量によって示されている。温度または圧力が示されていないときは、その温度は室温(約25℃)でありその圧力は、約1気圧である。
実施例A-1
実施例AのPd/YSZ二重導体膜を含む反応器組立体を、1100℃まで加熱し、その間、酸素消費ガスが供給される側に対し、窒素を約60cc/分の速度で供給し、かつ酸素含有ガスが供給される二重導体膜の反対側に対し、空気を、200cc/分の速度で供給した。次に、窒素流を90部の水素および10部のアルゴンを含むガスで置きかえ、STPにおいて61.0cc/分の水素ガスが供給できる速度で供給された。廃液ガスを乾燥氷/アセトンの冷却トラップ(-78℃)を通して通過させ、得られた水を集め、次いで、ガスクロマトグラフィ分析のためガス捕集器を通して通過させた。この水素-アルゴンガス混合物を3時間反応器に供給し、1.23グラムの水をその反応時間中に集めた。
ガスクロマトグラフィ分析は、窒素がないことを示し、反応器中に空気の漏出がなく、全ての酸素が該二重導体ディスクを通して移送されていることを示している。
水素に対して露出されているディスクの表面積は、2.2cm2であり、ディスクを通して移送される酸素の量は、550mA/cm2の電流密度に等しい。
実施例A-2
この実施例における反応方法は、水素-アルゴンガス混合物を、17部のメタンおよび83部の窒素を含有するガス混合物に代えたほかは、前記実施例A-1と同様の方法において行なった。
通気ガスのガスクロマトグラフィ分析は、94%収量の一酸化炭素が水素と、1:2モル比において混合されていることを示した。ディスクを通して移送された酸素の量は、531mA/cm2の電流密度と等しい。
上記結果は、炭化水素混合物の合成ガスへのほぼ定量転化が、電子の流れの外部回路なしに得られ得るということを示している。
実施例A-3
この実施例における反応方法は、二重導体膜を実施例Bによって製造された、Pt/YSZ膜に置きかえ、水素-アルゴンガス混合物を61.6cc/分の水素ガスがSTPにおいて供給できる速度で供給し、水素-アルゴンガス混合物を、2時間30分反応器に供給したほかは、前記実施例A-1と同一の方法において行なわれた。反応器においては0.38グラムの水を生じた。水素に対し露出しているディスクの表面積は1.0cm2であり、ディスクを通して移送した酸素の量は463mA/cm2の電流密度と等しい。
実施例A-4
この実施例における反応方法は、二重導体膜を実施例Cに従って製造された、BMgLaCrOx/YSZ膜に置き替え、水素-アルゴンガス混合物を1時間を要して反応器に供給し、0.107グラムの水をその反応期間中に集めたほかは、前記実施例A-1と同一の方法において行なわれた。
水素に対して露出しているディスクの表面積は、2.8cm2であり、ディスクを通して移送される酸素の量は、114mA/cm2の最大電流密度に等しい。
実施例A-5
この実施例における反応方法は、(a)二重導体膜を、プラセオジウム、イットリウムおよびジルコニウムに含浸されているその側面が水素-アルゴンガス混合物と接するように配置されている、上記実施例Dによって製造されたPrYZr-BMgLaCrOx/YSZに置き換え、(b)水素-アルゴンガス混合物を、反応器へ1時間30分(Run A)および2時間(Run B)供給し、(c)0.16グラムおよび0.22グラムの水を、各々RunAおよびBの間集めたほかは、前記実施例A-1と同一の方法において行なわれた。
水素に対して露出しているディスクの表面積は、2.8cm2であり、その結果、該ディスクを通して移送される酸素の量は、RunAにおいては、114mA/cm2およびRunBにおいては117mA/cm2の電流密度と等しかった。
実施例A-6
この実施例における反応方法は、二重導体膜を実施例Eに従って製造した、PrIrOx/YSZ膜に置き替え、水素-アルゴンガス混合物を2時間反応器へ供給し、0.90グラムの水をその反応期間中集めたほかは、前記実施例A-1と同一の方法において行なわれた。
ガスクロマトグラフィ分析は、窒素がないことを示し、反応器中に空気漏出はなく、全ての酸素が二重導体ディスクを通して移送されていることを示した。水素に対し露出しているディスクの表面積は、2.2cm2であり、該ディスクを通して移送された酸素の量は、601mA/cm2の電流密度に等しい。
実施例A-7
実施例Fの灰チタン石ディスクを、炉中の330ステンレス鋼支持板上に置いた。コーニングすりガラス(#1724)を水と混合してペーストを作った。次に薄い層のペーストを、ディスクの縁に被覆し、次いでジルコニアまたはムル石チューブを該ディスク上に置き、該湿油ペーストでシールを形成するようにした。次に、このチューブとディスクとを炉の中で加熱した。925℃でこのすりガラスを溶かし、ディスクとチューブとの間を漏がない様にシールを形成させた。この反応器を次いで所望の温度まで加熱し、その間窒素をディスクのシールされた側(チューブ側)に供給し、空気を反対側に供給した。一度該ディスクが所望の温度になると、窒素供給を酸素流量を測定するため燃料に置きかえた。測定条件は、1100℃、60cc/分で燃料を該ディスクのシールされた側に供給、200cc/分の空気を該ディスクの反対側に供給することにあった。このディスクを、57%H2、21.5%CO2、16.5%CH4、5.0%Arからなる標準燃料“混合”により処理した。
実施例A-8ないしA-14
実施例A-8ないしA-14の反応方法は、実施例A-7の固体膜を実施例G〜Nの固体膜に各々置きかえたほかは実施例A-7と同一の方法において行なわれた。実施例A-8ないしA-14における反応条件は、実施例A-7と同一である。
実施例A-7ないしA-14の酸素流量のデータは以下の表1に示されている。
【表1】

不飽和炭化水素製造結果
次の特別の実施例においては、飽和炭化水素を本発明の方法に従って処理し、長さ、60cm(10mm.OD,8mm.ID)チューブであって、Zircoa Products(Corning)社から得られる8%の酸化イットリウムで安定化されたジルコニアからなるものから作られた実験室用反応器において、不飽和炭化水素を製造した。該チューブの内側は、アフファーテルピネオールで希釈された薄い層の銀インク(Engelhard A3148)で被覆されており、透過性のカソードを与える。銀インクのストライプを、チューブの外側にその一方からほぼ中央に塗った。該チューブを、空気中、765℃で約15分間加熱した。
次に、該チューブの外表面を、アノード物質で被覆し、わずかに該銀ストライプと重ねた。
脱水素触媒を、水で溶かしたPtCl2の5%水溶液で石英綿を含浸させて調製した。過剰の溶液を傾瀉した。該PtCl2被覆石英綿を120℃で2時間炉で乾燥し、次いで空気中、約16時間、800℃でか焼した。
銀導線を、カソードとアノードとの端にはんだ付けした。外径14mmおよび内径12mmの石英チューブの40cm部分を、SWAGELOKTMチューブ部品とテフロン部品とを用いてジルコニアの中央部分上に付けた。石英チューブとジルコニアチューブとのすき間は、脱水素触媒、石英綿上のPtで充填した。SWAGELOKTMチューブ部分も、石英スリーブの外にひろがっているジルコニアチューブの各々の端に取付けた。この組立体を、1100℃に加熱することのできる分割炉中に入れ、銀導線を電流計を介して連結した。
電極は、次の様な条件にした。空気を、50cc/分で、ジルコニアチューブの内側に通した。窒素を、20cc/分の速度で、ジルコニアと石英チューブとの間の空間を通して流し、該チューブを、約1.5時間を要して700℃まで加熱した。約700℃に達した後、窒素流(20cc/分)を飽和炭化水素に置きかえ、実験を開始した。
以下の実験においては、飽和炭化水素はエタンであり、反応温度は700℃に維持し、圧力は約1気圧にして、反応器の滞留時間は操作から操作まで一定に保った。ガス状生成物のサンプルを、約20分間隔で取り、該ガスのサンプルを、精製ガス混合物を分析するのに供されるカールシリーズS111HまたはカールシリーズS400のいずれかにおけるガスクロマトグラフィーにより分析した。ある実験においては、外部電位を電流計と直列に連結したLambdaモデル530の電力供給によって適用した。
比較例1は、触媒を用いない熱的エタン脱水素反応の例である。それは低表面積のシリカ(不活性充填物質)を充填した反応器空間容積を有する全て石英反応器において行なわれた。比較例2は、脱水素触媒を用いないで電解触媒反応器において行なわれるエタン脱水素反応の例である。反応器空間容積は、比較例1および2のガスの接触時間がほぼ同一になるように、同一の低表面積シリカで充填された。比較例2ならびに実施例B-1およびB-2における電解触媒反応器は、酸化イットリウムで安定化されたジルコニア固体電解質上の銀カソードおよび銀アノードにより組立てられた。
実施例B-1およびB-2は、本発明に従って脱水素触媒で充填した比較例2において使用したと同一の電解触媒反応器を用いる本発明の方法の例である。実施例B-1においては、外部回路は、連結されるが、電位は電池に印加されない。実施例B-2においては、外部回路が、連結され、0.8ボルトの電位が電池に印加される。
【表2】

実施例B-1およびB-2の結果は、本発明方法が電解触媒反応器を用いない熱的脱水素反応(比較例1)および脱水素触媒を充填していない電解触媒反応器中における熱的脱水素(比較例2)の両者のエチレン収量よりもより高いエチレン収量を有するということを示している。エチレンの高収量は、電位が印加されない場合(実施例B-1)よりも電位が印加された場合(実施例B-2)の方に得られる。実施例B-2における廃水素の減少からうかがえるように、水素は、高いエチレン選択率を維持しながら、選択的に消費されることのようである。脱水素触媒の効果は、比較例2と比較して実施例B-1においてみられる増大するエタン転化率をよび増大する廃水素から分る。
実施例B-3
実施例Eにおいて調製した様なディスクに、反応器を取り付け、イソブタノール中に懸濁しているコーニング(軟化点600℃を有するNO.8161)から得られるガラス粉末でシールされた。このシールは750℃で30分間硬化した。温度は、874℃まで上昇し、その間窒素を燃料側の上に通し、空気(200cc/分)をディスクの他の側の上に通した。窒素をエタン(57.2cc/分)と置きかえた。生じた液体を乾燥氷/アセトントラップ中に集め、エタンを有する流上で、60分後秤量した。生成ガスを集め、ガスクロマトグラフィで分析した。60分後温度を591℃までディスクの燃料側の窒素によって下げた。エタン(49.2cc/分)を、窒素におきかえ、生成物を前記の様にして集めた。78分後、温度を693℃に上げ、1時間その温度に維持した。温度を780℃に上昇した。その温度は3時間780℃に維持し、エタンの流速を82cc/分まで上昇し、この実験をさらに102時間続けた。エタンを窒素に置きかえ温度を640℃まで下げた。プロパン(33cc/分)を窒素と代え、温度をさらに3時間維持した。ヘリウムをプロパンと代え反応器を室温で放冷した。これらの実験の結果を以下の表に示した。
【表3】

反応器を取りはずし、ディスクをダイアモンドリウで支柱チューブから切り取った。ディスクに隣接していた支柱チューブの小部分を切り取り、α-SICのディスクに隣接していた供給チューブをよく取り除いた。これらの3種の物質を秤量し、空気中においてチューブ炉中に置き750℃まで加熱し、その上に沈積した炭素を全て燃やし尽した。冷却後、サンプルを再び秤量し、炭素沈積物を露出表面の機能が存する様にか焼した。これらの結果を以下の表に示す。
【表4】

本発明は飽和炭化水素を不飽和炭化素に転化する改善された連続方法に関するものである。本発明方法は選択的水素酸化反応との組合せによる触媒的非酸化エタン脱水素反応を包含するものである。本発明者らは、以下の反応式に示される様に、該方法の正味結果は選択的飽和炭化水素酸化脱水素反応であると信じている。
実施例の様なエタンのエチレンへの転化を用いて、本発明者らは、本発明方法は以下に示す様に表わすことができると信じている。
C2H6=C2H4+H2(反応1)
H2+1/2O2=H2O(反応2)
C2H6+1/2O2=C2H4+H2O(正味方法反応)
本発明方法は正味酸化反応と思われるので、飽和炭化水素転化において実質的に熱力学的に課される制限はないようである。
本発明の改善された方法は、選択的水素酸化反応(上記反応2)の使用ができ熱的脱水素反応(上記反応1)の平衡制限を取り除けると思われるので、高エチレン選択率を有する高エタン転化が可能となる。更に、本発明の改善された方法は、商業的エチレンからエタンへの方法よりも実質的に低温度で操作が可能となるため、コークス化が減少し、本発明の方法は実質的に商業的方法よりも時間が短かくなる様である。
本発明者らは、上記の仮定された反応式は正しいと信じているが、本発明の範囲はこの作用理論にしばられるものではなく、むしろこゝに開示された全ての精神および範囲によって定義されるべきであると希望する。
芳香族化合物置換結果
以下の実施例D-1からD-7およびC-1においては、水素含有芳香族化合物および第2の水素含有化合物の混合物を、図1および図2に示された反応器に類似する実験室的反応器において本発明の方法に従って処理した。反応器セルはZircoa Products(Corning)社から得られる8%の酸化イットリウムで安定化されたジルコニアからなる長さ60cm(10mm.直径(OD),8mm.内径(ID))のチューブから作られた。該チューブの内表面を、アルファーテルピネオールで希釈された薄い層の銀インク(EngelhardA3148)で被覆して、透過カソードを得た。4インチの銀アノードと接触ストライプを、再びEngelhard A3148銀インクを用いてカソードの反対のチューブの外表面上に塗った。該チューブを空気中、850℃において、加熱し、該銀を該チューブに付着させた。該銀電極を、2種の電極の端にはんだ付けされた銀導線を介して外部回路に連結させた。
14mm外径の石英チューブの40cmの部分を、SWAGELOKTMチューブ部品およびテフロン部品を用いて該ジルコニアの中央部位上に付けた。また、SWAGELOKTMチューブ部品を石英スリーブからひろがっているジルコニアチューブの各々の端に取り付けた。この組立体を1100℃まで加熱することができる分割炉中に置き、銀導線を電流計に連結し、調整できる電力を、電力供給から電位を印加または印加しないで電流を流すことのできる回路を介して供給する。
電極は次の様に条件ずけられている。空気を50cc/分でジルコニアチューブの内側を通して流した。窒素を、50cc/分の速度でジルコニアと石英チューブとの間の空間を通して流し、このチューブを約90分を要して700℃まで加熱した。所望の反応温度に達した後、50cc/分の窒素流を芳香族化合物と第2の水素含有化合物との混合物を含むガス流に代え、実験を開始した。
以下の実施例D-1からD-5までおよび対照実施例C-1においては、芳香族化合物はベンゼンであり、第2の水素含有化合物はエチレンである。実施例D-6においては、芳香族化合物はベンゼンであり、第2の水素含有化合物はエタンである。実施例D-7においては、芳香族化合物はベンゼンであり、第2の水素含有化合物はメタンである。対照実施例C-1は、オープン回路実験であり、それ故酸素イオンはジルコニアを介してベンゼン/エチレン供給に移送されない。ガス状生成物のサンプルを、約30分の間隔で得、該ガスサンプルを、ガスクロマトグラフィにより分析した。電流値は安定した値であり、報告されたベンゼン転化率は、実験終了時における転化率である。実施例D-1からD-5までにおいては、外部電位を、電流計と直列に連結したLambdaモデル530電力供給によって印加した。全ての実験は雰囲気圧において行なった。特記しない限り、全ての部、パーセント、比率などはモルである。
【表5】

【表6】

表5および表6の結果は、回路が閉じられ、ジルコニア壁を通じて酸素が移送されているとき、転化率および選択率が増加していることを示している。表5に報告されている電流は、電気が有用な副産物として発生することを示し、またその結果は、ベンゼンの転化率が電極間の電位印加のよって増加するということを示している。
実施例D-6は、スチレンがベンゼンおよびエタンから直接得られることを示している。実施例D-7は、ベンゼンがメタンと結合し、ほとんどが芳香族アルキル化を生ずることを示している。
エチレンによるアルキル化における、650℃から700℃までの温度上昇の効果は、転化されるベンゼンのパーセンテージにおいて、一般的増加となる。スチレンの増大する選択率は、実施例D-1と比較される実施例D-2におけるエエレンによるアルキル化に対し、エチレンのベンゼンへの比率における増大結果として観察される。
ガス洗浄結果
以下の実施例E-1からE-9までは、図9および図10に示されている反応器に類似する本発明によるガス洗浄用の電気化学的セルに使用することができるジルコニアチューブの製造を説明するものである。これらの例は、一般に明細書に開示されている本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
実施例E-1
PbO/AuカソードおよびPbO/Auアノードを有するオープンエンドチューブの製造:
Zircoa Products,Solon,Ohioから得られる密度の高い、12mm外径(OD)、1-mm壁の酸化イットリウムで安定化されたジルコニアチューブ(以下、“YSZチューブ1”という)を、その内部および外部表面の両面上をアルファーテルピネオールに分散した、等容量のPbOおよびゴールドインク(Engelhard Part No.A4650,LotNo.M-13966)から得られるスラリーの薄い層で被覆した。有機溶媒を、空気中、85℃で15-30分間、該チューブを乾燥することによって蒸発させた。この被覆されたチューブを、炉内でInconel 600チューブ中に懸濁させ、空気を流しながら850℃まで加熱した。温度は一夜850℃に維持し、次いで、該チューブを室温で放冷させた。
実施例E-2
PtカソードおよびPtアノードを有するオープンエンドチューブの製造:
YSZチューブを、該チューブの全体の内部長さに沿って、またその61.0cmの外部長さの40.6cmに沿って、アルファーテルピネオール中における5vol.%CoO,60vol.%NiO,および35vol.%ZrO2の懸濁液で処理した。このチューブを被覆し、空気中において120℃で乾燥し;この被覆操作をあと2回繰返した。この被覆されたチューブを、2時間1650℃において加熱し、冷却した。該加熱されたチューブを、濃HCl中にそれを入れることによって処理し、次いで蒸留水によりすゝいだ。この操作を、HCl溶液の色が変化しなくなるまで繰返えした。アノードを、該チューブの内表面上に、アルファーテルピネオール中における3wt.%のBi2O3を含有するPtインク(Engelhard)の懸濁液によりそれを処理することによって調製した。カソードも同様に、適当な外表面上に該懸濁液を塗ることによって調製した。このチューブを、空気中において120℃で乾燥して、1065℃で15分間加熱した。抵抗測定は、電極が電気的に伝導性であることを示した。
実施例E-3
Pt/K+KカソードおよびPtアノードを有するオープンエンドチューブの製法
実施E-2の方法に従って、プラチニウム電極をアノードおよびカソードに適用させた後、該チューブを空気中において120℃で乾燥する前に、水酸化カリウムの希釈水溶液を、カソードに適用させた。抵抗測定は、そのPt/K+Kカソードおよび該アノードが電気的に伝導性であることを示した。
実施例E-4
端が閉じられたチューブの製造:
端が閉じられたチューブを、pH9において、5モル%の酸化イットリウムで安定化されたジルコニアの水性スラリーからスリップ-キャスティング技術によって製造した。チューブは、9.52mmの外径(O.D)および6.35mm内径(I.D),26.7cmの長さを有しており、一方の端が閉じられている。これらのチューブを、1000℃で加熱し、取り出してみがいた。1000℃で再度加熱した後、これらのチューブ(以下、“YSZチューブ2”という)は、電極印加が可能である。
プラチニウム電極を、テルピネオールで希釈されたプラチニウムインク(Engelhard)で、YSZチューブ2の内表面(アノード)および外表面(カソードを被覆することにより調製した。外表面の頂部1インチは被覆しないままにした。過剰のインクを注いだ後、チューブを1500℃において加熱した。電極抵抗をマルティメーターで試験した。内部または外部被覆の抵抗が、0.5オームより高く測定できるならば、被覆および加熱を繰返えす。第2およびそれに続く被覆は、1000℃において加熱する。代表的に言えば、7-9回の被覆が、所望の抵抗に達するために要求される。
以下の実施例は、触媒含有反応器チューブの製造方法を説明するものである。
実施例E-5
La2O3/PtカソードおよびPtアノードを有する端が閉じられたチューブの製造
1グラムのLa2O3を、5mlのテルピネオールと混合した。実施例E-4に従って作られた端が閉じられているYSZチューブ2のプラチニウム外表面を、次いでこのスラリーにより被覆した。10%のこのスラリーだけを、該チューブ上に、該チューブの底4インチがカバーされる様に被覆した。次いで、この反応器を、触媒被覆がまだ湿っている間に注意深く組立てた。YSZチューブ2を、被覆領域が炉の熱い帯域にひろがる様にして、石英ライナーに挿入して、適当なガス取付部品を加えた。次に該反応器を、3-4時間かけてゆっくりと反応温度まで加熱した。反応器が加熱されている間、電極に空気を通じて、蒸発するテルピネオールを除去した。
実施例E-6
La6Sr4CoOx/PtカソードおよびPtアノードを有する端が閉じられているチューブの製造:
実施例E-5の方法に従ったが、異なる点は以下の通りである。触媒被覆のためのスラリー調製中、1グラムのLa2O3を、およそ1グラムのLa6Sr4CoOx灰タン石に代えた。
実施例E-7
ZnMnO4/PtカソードおよびPtアノードを有する端が閉じているチューブの製造
1グラムのLa2O3を、触媒被覆のためのスラリー製造中、約1グラムのZnMoO4に代えたほかは、実施例E-5の方法に従った。
実施例E-8
FeWO4/AuカソードおよびPtアノードを有する端が閉じているチューブの製造(アノード製造)
Zircoa Products社から供給されるYSZを、その内部表面上に、テルピネオールで希釈されたプラチニウムインクで被覆した。このプラチニウムインク(Engelhard)を、アルコールで約20%まで希釈した。YSZチューブの一端を、プラチニウムスラリーを添加する前にプラッグした。プラチニウムインクを添加した後、チューブをローリングし、内部表面を平らに被覆した。過剰のインクをチューブから注ぎ、後の被覆のために役立たせた。このテルピネオールを、乾燥炉中において1時間100℃蒸発させた。このプラチニウムアノードを、15分間1065℃で加熱した。さらに2回のプラチニウム被覆が要求され、アノード抵抗が1オーム以下に減少した。
(カソード製造)
上記の様にして調製されたプラチニウムアノードを有するYSZチューブを、金-鉄タングステン酸塩カソードで被覆した。このカソードは、ゴールドインク(Engelhard)と鉄タングステン酸塩(約10:1重量比)とを混合することによって調製された。約1グラムの澱粉を気孔形成剤としてこの混合物に添加した。この混合物を5mlのテルピネオールで希釈した。得られたスラリーを該チューブの外部に適用し、チューブの頂部および底部10.2cmを除き、全表面を被覆した。過剰の物質を続く被覆のために役立てた。このテルピネオールを、2時間850℃で加熱する前に、乾燥炉中において、100℃で1時間蒸発させた。さらに1回の被覆を行ないカソード抵抗を下げた。
実施例E-9
亜鉛亜鉄酸塩(ZnFe2O3)カソードおよびプラチニウムアノードを有する端が閉じられているチューブの製造:
1グラムのLa2O3を、1グラムの亜鉛亜鉄酸塩に代えたほかは、実施例E-5の方法に従った。
(二酸化イオウ除去の実施例)
上記で製造したチューブを石英チューブに入れ、連結器を取付けて、ガス混合物をその中心および環状領域に放った。これは、14mm外部直径石英チューブの一部分を、SWAGELOKTMチューブ取付部品およびテフロン部品を用いて、ジルコニアチューブの中央部上に取付けることによって完成された。またSWAGELOKTMチューブ取付部品を、石英スリーブからひろがっているジルコニアの各々の端につけた。この組立体を、1000℃に加熱することができる分割炉中におき、リード線を電流計を介して連結し、調整可能な電力を、電力供給から電位を印加または印加しないで流れる電流をそのまゝにした回路を介して供給した。
電極は次のように条件ずけられた。この装置を分割炉中につるして環状領域を介して空気を、中心領域を介して窒素を通しながら800℃まで加熱した。この反応器が800℃に達したとき、炉中サーモカップル上で示されるように、その窒素流は、20cc/分において水素で置きかえられ、空気をヘリウム中、100ml/分の1%(容積)SO2の流れに代えた。
1%二酸化イオウの流速および温度は、以下の表に示されているように調整して、生成ガスのFourierの変換-赤外分析の結果が示されている。
廃液中の二酸化イオウ中における還元パーセントを計算するのに使用された式および廃液から除去される正味イオウパーセントを計算するために使用する式は、以下の通りである。
還元されたSO2%=(廃液中のSO2供給ppm中のSO2ppm)×100/供給中のSO2ppm
除去された正味S%={(廃液中のCOSppm)/(供給中のSO2ppm)}×100
特記しない限り、全ての部、割合、などは、モル(重量および/または容積測定に基く)であり、“ppm”は、容量100万当りの部(理想ガスにおける、よく知られたガス法則PV=nRTに基く、モル数で100万当りの部に大体において等しい)で表わされる。
これらの方法を用いて得られるデータは、以下の表7から16までに示されている。表中の各々の実施例における数値は、少なくとも2回の操作における平均である。使用されたチューブの冷領域においてイオウがみつかった。
【表7】

実施例1-1は、短絡電気化学セルにおける燃料ガスとして水素を用いると、SO2は還元され得るということを示している。実施例1-2ないし1-6は、電位を印加し、かつ電気化学的セル中における燃料として水素を用いることにより、SO2が除去され得るということを示している。実施例1-7は、800℃においてこのセルにより得られた結果を示している。
1%二酸化イオウ流を、98ppmの二酸化イオウだけを含むものに代え、これらの実験を繰返えした。それらの結果を、以下の表8に示した。
【表8】

表8の結果は、印加電位の不存在における燃料として水素を用いると、二酸化イオウの水準が著しく減少することを示している。また、これらの結果は、二酸化イオウが非常に希釈された流れにおいてさえ還元され得るということを示している。
【表9】

表9の結果は、Pt電極を用いると、二酸化イオウの還元が行なわれ得るということを示している。
この1%SO2を含むガス流を、100ml/分における空気に置きかえて、この反応器セルのアノード側に約18時間を要して窒素ガスを供給することにより、表9の反応器セルを1000℃の条件にした。このように条件ずけられた反応器を用いて得た結果を以下の表10に示した。
【表10】

表10の結果は、イオウへの還元が空気の存在においても起こるということを示している。表9および10の間のSO2%除去における差異は、1000℃の条件で18時間において生じたかもしれないPtのある種の焼成に基くものと思われる。
【表11】

表11の結果は、回路が閉じられている(実施例5-1から5-3まで)ときもっとも短絡がない(比較例C/1)セル中において二酸化イオウ除去が起こるということを示している。
1%SO2を含有するガス流を空気15ml/分で希釈することにより、表11の反応器セルを1000℃に条件ずけた。この反応器セルに次いで30ml/分の空気を通じ、次に1%SO2を含むガス流に代えた。この条件の反応器セルを用いて得られた結果を以下の表12に示した。
【表12】

表11の結果は、プラニウムの焼成が、1000℃で空気処理中、起こったかもしれないことを示している。またこれらの結果は、アルカリ処理カソードが、空気の存在下二酸化イオウを除去(実施例5A-2)するにおいて効果的であるということを示している。
種々の触媒物質で被覆された反応器セルを用いて得られたデータの例示が、以下の表13-17に示されている。
【表13】

実施例6-1、6-2、6-4ならびに比較例C/2およびC/3は、1%SO2を含むガス流のため、還元されたSO2%および除去されたS%は、反応器セル短絡が本発明に従って完結しているとき(実施例6-1,6-2および6-4)、非常に効果的(>85%)であり、これに反し、回路がオープンになっているとき(C/2およびC/3)だけは、触媒の存在によりSO2還元20%および正味S%がより低くなるということを示している。実施例6-3および6-5から6-8までは、該反応器セルに電位が印加されず、また該反応器セルに、煙道ガスに似ているSO2、O2、CO2、およびN2の混合物を供給するとき、有毒なCOS(カルボニル スルファイド)の生成を最少にすることができ、かつ二酸化イオウを効率よく除去することができることを示している。
【表14】

実施例7-1から実施例7-27までは、一定の反応器セルに対し、温度、電位印加、供給ガス組成、および供給ガス流速を種々変えている一連の実施例を示している。還元されたSO2%および除去された正味S%についての印加された電位の効果は、高温度の場合よりも525℃以下の温度で、幾分高い。
【表15】

実施例8-1から8-4までは、SO2およびCOSの放出は該セル中に電位が印加されない本発明の他の反応器セル中において著しく減少できるということを示している。比較例C/4だけが他と比較して、触媒および熱活性が最少である。
【表16】

表16は、触媒および熱活性だけ(比較例C/5およびC/6)により達成される場合よりも、本発明は実質的により高いSO2除去およびCOS最少化を達成することができる(実施例9-1から9-4まで)ということを示している。
【表17】

実験10-1ないし10-4は、亜鉛亜鉄酸塩がSO2の還元に対し効果的な電解触媒であること、また増大する操作力(印加電位)はその除去率を高めるということを示している。また、実験10-1は、SO2を還元するためには電位を必要としないということを示している。
実験10-5および10-6ならびに比較実験C/7は、酸素の存在下においては亜鉛亜鉄酸塩はまだ効果的なSO2還元電解触媒であること、および比較実験C/7のオープン回路条件下、酸素移送が生じない場合には、SO2は除去されないことを示している。事実、予め吸着されたSO2は脱着し始める。
実験10-7は、高濃度の酸素はSO2還元法に逆に影響しないことを示し、また比較実験C/8は、回路が閉じられて酸素移送が休止したとき、SO2還元が終了し、SO2脱着が開始することを示す。比較実験C/9は、比較実験C/8の後、約24時間行なって、全ての吸着SO2が除去されたときSO2脱着工程が停止し、SO2濃度が供給とほぼマッチするということを示している。
実験10-8ないし10-10は、再構築された酸素移送は、SO2還元工程を再構築し、すなわち、この工程は可逆的であり、酸素移送に関与していることを示している。
表13-17における統合された結果は、電気化学的セルが触媒被覆からなり廃液から除去される二酸化イオウのパーセンテージを高めるばかりでなく、イオウの高い正味パーセンテージを廃液から除去し、これは消耗ガスおよび煙道ガス廃液に特徴ずけられる混合供給における二酸化イオウおよび二酸化炭素との間の反応生成物として生成したカルボニル、サルファイドの低レベルによるものである。また、表13-17は、多種の触媒物質が反応器セルの効率を高めるに当って有利にするため使用されることができるということ、および高い効率が本発明の反応器セル要素の酸素イオン移送に結びついていることを示している。
本発明をその好ましい実施態様に関連して説明してきたが、それは、これらの種々の変更が、明細書を読んで当業者に明らかとなると理解すべきである。従って、こゝに開示された発明は、特許請求の範囲の範囲内に入るような種々の変更を包含するものであると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学リアクターの第1態様の側面、断面図である。
【図2】本発明の電気化学リアクターの第2態様の平面、断面図である。
【図3】図2に示したリアクターの側面、断面図である。
【図4】本発明の固体多成分薄膜の1態様の表面の500倍拡大電子顕微鏡写真後方散乱像である。
【図5】図4に示したと同じ固体多成分薄膜の断面の5,000倍拡大電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の方法の実施に有用な電気化学リアクターの第3様態の平面、断面図である。
【図7】図6に示したリアクターの側面断面図である。
【図8】本発明の方法の実施に適する要素の側面、断面図である。
【図9】本発明の方法の実施に有用な他の電気化学リアクターの平面、断面図である。
【図10】図9に示したリアクターの側面、断面図である。
【図11】本発明の方法の実施に適する本発明のなお他の態様の側面、断面図である。
【図12】本発明の方法の実施に有用な他の電気化学リアクターの平面、断面図である。
【図13】図12に示したリアクターの側面、断面図である。
【符号の説明】
1……リアクター
2……第1帯域
3……第2帯域
4……要素
5、6……リアクター管
9、10……フィード管
11……酸素含有ガス
12……酸素消費ガス
20、50……シエル
21、33、41、51、61、81……コア
22……内部通路
23……外部通路
35、69、85……触媒
46、47、56、57、66、67、87、88……リード線
48、58、68、89……アンメーター
 
訂正の要旨 訂正の要旨
特許第3129451号の明細書につき、平成14年8月15日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載される、次の(a)〜(j)のとおりの訂正する。
(a)特許請求の範囲の請求項8における、
「【請求項8】酸素消費ガス又は酸素含有ガスを含む環境中で、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる、電気化学リアクターセルであって、入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する固体多成分膜を特徴とし、該固体膜が請求項1〜3のいずれか1項に記載のものであり、該要素が請求項4〜7のいずれか1項に記載のものである、前記電気化学リアクターセル。」を、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「【請求項8】酸素消費ガス又は酸素含有ガスを含む環境中で、酸素消費ガスを酸素含有ガスと反応させる、電気化学リアクターセルであって、入口端、出口端、及びその間にある1つ又はそれ以上のガスの入口端から出口端への移動のための通路を有する要素中の固体多成分膜を特徴とし、該固体膜が請求項1〜3のいずれか1項に記載のものであり、該要素が請求項4〜7のいずれか1項に記載のものである、前記電気化学リアクターセル。」と訂正する。
(b)明細書段落0072第9表(特許公報第32頁第9表)における、
「実施例C-2による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-2による」と訂正する。
(c)明細書段落0072第10表(特許公報第33頁第10表)における、
「実施例C-2による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-2による」と訂正する。
(d)明細書段落0072第11表(特許公報第33頁第11表)における、
「実施例C-3による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-3による」と訂正する。
(e)明細書段落0072第12表(特許公報第34頁第12表)における、
「実施例C-3による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-3による」と訂正する。
(f)明細書段落0072第13表(特許公報第34頁第13表)における、
「実施例C-5による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-5による」と訂正する。
(g)明細書段落0072第14表(特許公報第35頁第14表)における、
「実施例C-6による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-6による」と訂正する。
(h)明細書段落0072第15表(特許公報第36頁第15表)における、
「実施例C-7による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-7による」と訂正する。
(i)明細書段落0072第16表(特許公報第36頁第16表)における、
「実施例C-8による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-8による」と訂正する。
(j)明細書段落0072第17表(特許公報第37頁第17表)における、
「実施例C-9による」を、誤記の訂正を目的として、「実施例E-9による」と訂正する。
異議決定日 2002-10-08 
出願番号 特願平2-419124
審決分類 P 1 651・ 531- YA (C01G)
P 1 651・ 534- YA (C01G)
P 1 651・ 121- YA (C01G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三崎 仁  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
野田 直人
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3129451号(P3129451)
権利者 ザ スタンダード オイル カンパニー
発明の名称 固体多成分膜、電気化学リアクター成分、電気化学リアクター、並びに酸化反応に対する膜、リアクター成分、及びリアクターの使用  
代理人 村社 厚夫  
代理人 中村 稔  
代理人 中村 稔  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 今城 俊夫  
代理人 大塚 文昭  
代理人 串岡 八郎  
代理人 竹内 英人  
代理人 小川 信夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 村社 厚夫  
代理人 串岡 八郎  
代理人 今城 俊夫  
代理人 小川 信夫  
代理人 竹内 英人  
代理人 大塚 文昭  

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