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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61B |
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管理番号 | 1070361 |
異議申立番号 | 異議2001-73341 |
総通号数 | 38 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-04-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-12-11 |
確定日 | 2002-10-21 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3175980号「血圧計」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3175980号の請求項1ないし4、6に係る特許を取り消す。 同請求項5、7に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3175980号の請求項1ないし7に係る発明についての出願は、平成4年10月2日に特許出願されたもので、平成13年4月6日にその発明について特許の設定登録がなされた後、村野親、安藤義和より、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成14年7月15日に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 特許権者が求めている訂正の内容は次の訂正事項1)ないし3)のとおりである。 ・訂正事項1):特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】 腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることを特徴とする血圧計。」 と訂正する。 ・訂正事項2):特許明細書の段落【0005】を、 「【課題を解決するための手段】 しかして本発明は、腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることに特徴を有している。」 と訂正する。 ・訂正事項3):特許明細書の段落【0014】を、 「【発明の効果】 以上のように本発明においては、本体における重量物は圧迫帯の周方向に沿った両端に振り分けられて配設されているものであり、本体が低重心となる上に、いわゆる「やじろべえ」を構成していることから、腕や手首への装着時に本体が安定した状態を保つものであって、圧迫帯を片手で巻き付ける時もずれるおそれが少なくなっているものであり、被測定者自身による取り付けをきわめて容易に行えるものである。」 と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 訂正事項1)は、請求項1に記載された「夫々重量物が配されている」を「重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置している」と限定するものであり、この訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、この訂正は、特許明細書の段落【0006】の「本体において重量物が圧迫帯の周方向に沿った両端に振り分けられて配設されている」という記載、段落【0010】の「本体1において一方に張り出した電池収納部11には重量物である電池6が納められ、他方に張り出したポンプ収納部12には同じく重量物であるポンプユニット3が納められて、‥‥‥‥電池6の重心Paとポンプユニット3の重心Pbとが左右に振り分けられる」という記載があることから、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 訂正事項2)は、訂正事項1)において訂正された記載との整合をとるために段落【0005】の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、訂正事項2)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項3)は、段落【0014】に記載された「両端振り分けられて」を「両端に振り分けられて」とするものであり、誤記の訂正を目的とするものである。そして、訂正事項3)は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立ての概要 (1)特許異議申立人村野親は、本件の請求項1ないし4、6、7に係る発明は、下記甲第1号証ないし甲第11号証に記載された発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件の請求項1ないし4、6、7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張している。 ・甲第1号証:特開平2-34143号公報 ・甲第2号証:特開昭53-141664号公報 ・甲第3号証:実開昭62-24391号公報 ・甲第4号証:実公平1-43045号公報 ・甲第5号証:特開昭61-33640号公報 ・甲第6号証:特開昭59-115025号公報 ・甲第7号証:特開昭60-190932号公報 ・甲第8号証:実開昭61-111404号公報 ・甲第9号証:意匠登録第660635号公報 ・甲第10号証:意匠登録第660635号の類似1公報 ・甲第11号証:意匠登録第744397号公報 (2)特許異議申立人安藤義和は、本件の請求項1ないし7に係る発明は、下記甲第1号証ないし甲第4号証及び参考資料1ないし5に記載された発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件の請求項1ないし7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであると主張している。 ・甲第1号証:特開平3-221030号公報 ・甲第2号証:特開昭63-5727号公報 ・甲第3号証:特開平2-17030号公報 ・甲第4号証:特開平2-34143号公報 ・参考資料1:特開昭59-232531号公報 ・参考資料2:実願平1-71733号(実開平3-12353号)のマイ クロフィルム ・参考資料3:特開昭62-105579号公報 ・参考資料4:特開昭64-21862号公報 ・参考資料5:特開昭53-141664号公報 4.本件の請求項1ないし7に係る発明 本件の請求項1ないし7に係る発明は、訂正明細書及び図面の記載からみて、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることを特徴とする血圧計。 【請求項2】本体は圧迫帯の周方向と直交する幅方向のほぼ中央位置に重心を有していることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項3】本体内には空気系と電気系の両部品が分けて配設されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項4】本体における表示部は本体における圧迫帯の周方向に沿った方向のほぼ中央に配されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項5】本体内に配された電磁弁で形成されている急速排気弁は、その閉塞部材による閉塞のための移動方向と閉塞部材の自重移動方向とが一致する方向に配されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項6】圧迫帯は弾性を有する円弧状のクリップ板を備えて、本体と圧迫帯とは本体とクリップ板とのフックによる係合で連結されているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端は、上記係合部よりも外側に張り出していることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項7】圧迫帯は弾性を有する円弧状のクリップ板を備えているとともに、腕や手首のほぼ半周を囲む長さとされているクリップ板の一端寄りに本体が連結されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。」 5.本件の請求項1に係る発明の特許について (1)刊行物記載の発明 当審で通知した取消しの理由で引用した刊行物1(特開平2-34143号公報:村野親が提出した甲第1号証、安藤義和が提出した甲第4号証)には、 「以下本発明を図示の実施例に基づいて説明すると、この血圧計は図からも明かなように、手首に巻き付けられるカフ帯1と、このカフ帯1に直接取り付けられた血圧計本体2とからなるもので、カフ帯1は第2図に示すように、空気袋11とこれを包む内布12及び外布13の他に、外布13内面と空気袋11外面との間にいれられたクリップ板15とから構成され、面状ファスナー14によって手首に巻き付け固定される。 ここにおけるクリップ板15は、可撓性を有する合成樹脂板で形成されたもので、その断面形状が手首の掌側の半周に合わせた形状、つまりは楕円を長軸で切った形状となっており、外周面側からは外布13を貫通して外部に突出する突部としてのマウント部16を一体に備えている。 一方、表面に血圧値表示部21や操作スイッチ22、23が設けられている血圧計本体2は、上記マウント部16に連結されることでその表面とクリップ板15の長軸方向とが平行となるようにカフ帯1に取り付けられたもので、クリップ板15の中央に形成された孔を通じて空気袋11に接続される圧力センサーや空気ポンプ(図示せず)等を内蔵している。」(第2頁右上欄第3行〜左下欄第5行)、 と記載されている。 また、血圧計本体に電池を内蔵させることは周知慣用の技術事項である(例えば、特開昭59-232531号公報(安藤義和が提出した参考資料1)、実願昭58-128734号(実開昭60-37305号)のマイクロフィルム(村野親が提出した甲第4号証を参照のこと)等を参照のこと)。このような技術事項をも考慮すると、刊行物1には 「腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の部分を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされ、重量物である加圧用ポンプユニットや電池を内蔵し、上記左右の斜め下方に張り出す一対の部分は本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する血圧計。」 という発明が記載されていると認められる。 (2)対比・判断 本件の請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、 「腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の部分を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされ、重量物である加圧用ポンプユニットや電池を内蔵し、上記左右の斜め下方に張り出す一対の部分は本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する血圧計。」 である点で一致し、 本件の請求項1に係る発明においては、本体の左右の斜め下方に張り出す一対の部分が収納部であり、両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池が配され、重量物が左右に振り分け配置されているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、本体の左右の斜め下方に張り出す一対の部分が収納部であるのかがそもそも明確でなく、両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池が配され、重量物が左右に振り分け配置されているのかが明確でない点において相違している(以下、相違点1という。)。 相違点1について検討する。 刊行物1に記載された発明において、左右の斜め下方に張り出す一対の部分も重量物を収納する本体の一部である以上、当該部分が収納部となり得ることは、当業者には明らかなことである。また、刊行物1の第2図等を参照すると、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の部分を含めて左右対称となっており、あえて対称性を崩す必要性は見出せないから、重量物である加圧用ポンプユニットや電池についても左右に振り分けて収納部に配置すればよいことは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 よって、本件の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 6.本件の請求項2に係る発明の特許について 本件の請求項2に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、相違点1のほかに、本件の請求項2に係る発明においては、本体は圧迫帯の周方向と直交する幅方向のほぼ中央位置に重心を有しているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、本体がどの位置に重心を有しているのかが明確でない点において相違している(以下、相違点2という。)。 まず、相違点1については前示のとおりである。 次に、相違点2について検討する。 本体の重心をどの位置にするかは、本体の安定性等を考慮した上で当業者が適宜選択しうる事項であり、本体の重心を圧迫帯の周方向と直交する幅方向のほぼ中央位置にすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 よって、本件の請求項2に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 7.本件の請求項3に係る発明の特許について 本件の請求項3に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、相違点1のほかに、本件の請求項3に係る発明においては、本体内には空気系と電気系の両部品が分けて配設されているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、本体内で空気系と電気系の両部品が分けて配設されているのかが明確でない点において相違している(以下、相違点3という。)。 まず、相違点1については前示のとおりである。 次に、相違点3について検討する。 空気系と電気系はそもそも別の系であるから、それらの系の部品を分けて配設することは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 よって、本件の請求項3に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 8.本件の請求項4に係る発明の特許について 刊行物1の第1図には、本体における表示部を本体における圧迫帯の周方向に沿った方向のほぼ中央に配することが記載されている。 とすれば、本件の請求項3に係る発明と刊行物1に記載された発明との相違点は、相違点1だけとなるが、相違点1については既に検討済みである。 よって、本件の請求項4に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 9.本件の請求項5に係る発明の特許について 本件の請求項5に係る発明と刊行物1に記載された発明とを比較すると、相違点1のほかに、本件の請求項5に係る発明においては、本体内に配された電磁弁で形成されている急速排気弁は、その閉塞部材による閉塞のための移動方向と閉塞部材の自重移動方向とが一致する方向に配されているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、急速排気弁が設けられているのかが明確でなく、また、急速排気弁の閉塞部材による閉塞のための移動方向と閉塞部材の自重移動方向とが一致する方向に配されていない点において相違している(以下、相違点4という。)。 まず、相違点1については前示のとおりである。 次に、相違点4について検討する。 急速排気弁自体はこの出願前に公知であるが、急速排気弁の閉塞部材による閉塞のための移動方向と閉塞部材の自重移動方向とが一致する方向に配する構成は、安藤義和が提出した甲第1号証ないし甲第3号証及び参考資料1ないし5や村野親が提出した甲第2号証ないし甲第11号証には記載されておらず、また、当該構成を採用することにより特許明細書の段落【0012】に記載された効果を奏するのであるから、刊行物1に記載された発明において当該構成を採用することが当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない。 よって、本件の請求項5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえない。 10.本件の請求項6に係る発明の特許について 刊行物1に記載された発明において、本体と圧迫帯とは本体2とクリップ板15のマウント部16での係合で連結されているが、マウント部16はフック状である(第2図、第3図を参照のこと。)から、フックによる係合であるといえる。また、刊行物1に記載された発明において、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端は、係合部であるマウント部よりも外側に張り出している。 とすれば、本件の請求項6に係る発明と刊行物1に記載された発明との相違点は、上記相違点1だけとなるが、相違点1については既に検討済みである。 よって、本件の請求項6に係る発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 11.本件の請求項7に係る発明の特許について 本件の請求項7に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、相違点1のほかに、本件の請求項7に係る発明においては、本体が腕や手首のほぼ半周を囲む長さとされているクリップ板の一端寄りに連結されているのに対し、刊行物1に記載された発明においては、本体がクリップ板のほぼ中央で連結されている点において相違している(以下、相違点5という。)。 まず、相違点1については前示のとおりである。 次に、相違点5について検討する。 血圧計の本体を腕や手首のほぼ半周を囲む長さとされているクリップ板の一端寄りに連結する構成は、安藤義和が提出した甲第1号証ないし甲第3号証及び参考資料1ないし5や村野親が提出した甲第2号証ないし甲第11号証には記載されておらず、また、当該構成を採用することにより特許明細書の段落【0013】に記載された効果を奏するのであるから、刊行物1に記載された発明において当該構成を採用することが当業者にとって容易に想到し得ることであるとはいえない。 よって、本件の請求項7に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるとはいえない。 12.むすび 以上のとおりであるから、本件の請求項1ないし4、6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。また、本件の請求項5、7に係る発明の特許については、取消理由を発見しない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 血圧計 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることを特徴とする血圧計。 【請求項2】 本体は圧迫帯の周方向と直交する幅方向のほぼ中央位置に重心を有していることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項3】 本体内には空気系と電気系の両部品が分けて配設されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項4】 本体における表示部は本体における圧迫帯の周方向に沿った方向のほぼ中央に配されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項5】 本体内に配された電磁弁で形成されている急速排気弁は、その閉塞部材による閉塞のための移動方向と閉塞部材の自重移動方向とが一致する方向に配されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項6】 圧迫帯は弾性を有する円弧状のクリップ板を備えて、本体と圧迫帯とは本体とクリップ板とのフックによる係合で連結されているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端は、上記係合部よりも外側に張り出していることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【請求項7】 圧迫帯は弾性を有する円弧状のクリップ板を備えているとともに、腕や手首のほぼ半周を囲む長さとされているクリップ板の一端寄りに本体が連結されていることを特徴とする請求項1記載の血圧計。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 圧迫帯に本体が一体的に取り付けられた血圧計が各種提供されているが、このものでは、被測定者自身が血圧計を腕や手首に取り付けようとすると、本体の重みのために、圧迫帯を巻き付ける途中でずれ落ちてしまうことが多々ある。このために、圧迫帯内に円弧状で弾性を有するクリップ板を内蔵させて、クリップ板の弾性を利用して腕や手首に嵌めつけた後に巻き付けを行えるようにしたものがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 このクリップ板の存在は、クリップ板が無い場合に比して、被測定者自身による腕や手首への装着をかなり容易にしているが、巻き付けのために圧迫帯の一端を引っ張った時にずれてしまい、腕や手首まわりの方向において、血圧計がずれてしまうことが多々ある。 【0004】 本発明はこのような点に鑑み為されたものであり、その目的とするところは腕や手首への片手による装着をより容易に行うことができる血圧計を提供するにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】 しかして本発明は、腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることに特徴を有している。 【0006】 【作用】 本発明によれば、本体において重量物が圧迫帯の周方向に沿った両端に振り分けられて配設されているために、本体が低重心となり、腕や手首への装着時に本体が安定した状態を保つものであって、ずれるおそれが少なくなる。 【0007】 【実施例】 以下本発明を図示の実施例に基づいて詳述すると、図示例の血圧計は、図4に示すように、手首に装着して使用するものであって、手首に巻き付けられる帯状の圧迫帯2は、図1に示すように、手首をほぼ一周する長さを有している阻血袋20と、阻血袋20の外周を囲んでいる優円弧状のクリップ板21とを内蔵しており、一端外面と他端内面とには互いに係着自在な面状ファスナー22,23が取り付けられている。ここにおけるクリップ板21は、合成樹脂からなる弾性を有するもので、圧迫帯2の手首への装着を容易とするとともに、阻血袋20の外面側への膨張を規制する。 【0008】 一方、本体1はその片側に電池収納部11を、他方側にポンプユニット3を収納するポンプ収納部12を張り出したもので、中央部上面には表示部15とスイッチ16,17とが配設され、中央部内に回路基板13,13や液晶表示板14が配設されており、圧迫帯2には上記クリップ板21の外面から突設されて本体1の中央部底面側に係合する複数個のフック24によって取り付けられ、この時、図3に示すように、上記ポンプユニット3と阻血袋20とがノズル30を通じて連通し、回路基板13上に設けられた圧力センサー18と阻血袋20とがノズル19を通じて連通する。図中25はノズル19,30部分からの空気漏れを防ぐパッキンである。 【0009】 ここにおいて、本体1の上記電池収納部11とポンプ収納部12とは、本体1中央部から両側に夫々斜め下方に向けて張り出して本体1の中央部底面が両収納部11,12間において凹部となるように構成されており、中央部底面に圧迫帯2を連結した時、クリップ板21によって円弧状を保っている圧迫帯2の外面に周方向において本体1が添うものとなっている。このために、圧迫帯2を手首に巻き付けるにあたってクリップ板21を撓ませる時、図1に鎖線で示すように、クリップ板21の撓みが本体1によって制限されるものであり、クリップ板21を大きく撓ませた時に生ずるおそれがあるフック24の外れが起きることがない。つまり、圧迫帯2と本体1との連結組立はフック24の利用で簡単に行えるものの、このフック24による連結は簡単には外れないようになっているものである。 【0010】 また、本体1において一方に張り出した電池収納部11には重量物である電池6が納められ、他方に張り出したポンプ収納部12には同じく重量物であるポンプユニット3が納められて、全体としての重心が本体1の中央下部に位置するようにされているために、圧迫帯2を手首に巻き付けるに際して、手首を上に向けた状態でクリップ板21を撓ませて手首に被せた時、図6に示すように、電池6の重心Paとポンプユニット3の重心Pbとが左右に振り分けられるものであり、安定した状態を保つことができて、上記面状ファスナー22,23を係着させることによる巻き付け作業を片手で行うことが容易となっている。さらに、面状ファスナー22,22を係着させるために圧迫帯2の端部を引っ張った時に本体1の位置が図7に示すように少々ずれたとしても、重量物である電池6とポンプユニット3との重心位置の関係から本体1全体の重心も低重心となっているために、手首からずれ落ちてしまうことはない。 【0011】 なお、本体1の形状とクリップ板21を内蔵しているために圧迫帯2が優円弧状となっていることの関係、並びに表示部15の保護の点から、この血圧計を机上に置く時には、図8に示すように、立てた状態で置くことになるが、この時、どちらを下にして置いても安定した状態を保つように、本体1全体の重心を上述のように幅方向の中央に置くだけでなく、直交する方向においても中央に位置するようにしており、この条件を満足するために、図示例のものにおいては、本体1の片側に電池6を、他側にポンプユニット3を配置し、本体1の中央部の上層側には電子部品を、下層には空気系の配管を配している。これは、図5に示すように、電気系部材Cと、空気系であるポンプユニット3及び配管との組立性の利便も向上させることになっている。 【0012】 更に、上記ポンプユニット3は、図2に示すように、モータ31と加圧ポンプ32とに加えて、加圧ポンプ32に夫々チューブ35で接続した急速排気弁33と徐々排気弁34を備えたものとなっており、そして急速排気弁33としては、図9に示すように、ヨーク330とコイルボビン331とコイル332とプランジャー334とからなる電磁弁として形成されるとともに、プランジャー334を復帰ばね335に抗して吸引した時にバルブ部336が閉じられるものを用いているのであるが、バルブ部336を閉じるためのプランジャー334の移動方向をMとする時、図6及び図7に示すように、手首に装着した時に、この方向Mが斜め下方を向くようにしてある。つまり、プランジャー334が自重で復帰ばね335を圧縮する方向となっている。このために、加圧ポンプ332で阻血袋20を加圧している間と、徐々排気弁34から排気を行って血圧測定を行う測定中との間の急速排気弁33の閉塞動作である復帰ばね35に抗したプランジャー334の吸引移動に際して、プランジャー334の自重に逆らう必要がなく、コイル332に流す電流が少なくてすむものであり、電池6の寿命を長くすることができる。 【0013】 図10及び図11に他の実施例を示す。これは圧迫帯2に設けたクリップ板21を手首のほぼ半周強を囲む長さとするとともに、このクリップ板21の一端側に寄せたところに本体1を連結したもので、ポンプユニット3から阻血袋20に空気を送って膨張させると、阻血袋20におけるクリップ板21で囲んでいないところがクリップ板21で囲まれたところよりも大きく膨張するために、阻血袋20の膨張前の状態に比して、本体1が角度θだけ傾き、この結果、片手に取り付けた血圧計における本体1の表示部15が被測定者にとって見やすくなる。 【0014】 【発明の効果】 以上のように本発明においては、本体における重量物は圧迫帯の周方向に沿った両端に振り分けられて配設されているものであり、本体が低重心となる上に、いわゆる「やじろべえ」を構成していることから、腕や手首への装着時に本体が安定した状態を保つものであって、圧迫帯を片手で巻き付ける時もずれるおそれが少なくなっているものであり、被測定者自身による取り付けをきわめて容易に行えるものである。 【図面の簡単な説明】 【図1】 一実施例の縦断面図である。 【図2】 同上の本体の破断平面図である。 【図3】 同上の横断面図である。 【図4】 同上の斜視図である。 【図5】 同上のブロック図である。 【図6】 同上の重量配分を示す説明図である。 【図7】 同上の重量配分を示す説明図である。 【図8】 同上の斜視図である 【図9】 同上の急速排気弁の破断正面図である。 【図10】 他の実施例の縦断面図である。 【図11】 同上の斜視図である。 【符号の説明】 1 本体 2 圧迫帯 3 ポンプユニット 6 電池 21 クリップ板 24 フック |
訂正の要旨 |
訂正事項1):特許請求の範囲の請求項1を、特許請求の範囲の減縮を目的として、 「【請求項1】腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることを特徴とする血圧計。」 と訂正する。 訂正事項2):特許明細書の段落【0005】を、明りょうでない記載の釈明を目的として、 「【課題を解決するための手段】 しかして本発明は、腕や手首に巻き付けられる圧迫帯に、血圧の測定表示部を備えた本体が一体的に取り付けられた血圧計において、本体は左右の斜め下方に張り出す一対の収納部を備えて環状になっている圧迫帯の外周面に添う形状とされているとともに、本体における圧迫帯の周方向に沿った両端に位置する上記両収納部内に重量物である加圧用ポンプユニットや電池を配して、重量物を左右に振り分け配置していることに特徴を有している。」 と訂正する。 訂正事項3):特許明細書の段落【0014】を、誤記の訂正を目的として、 「【発明の効果】 以上のように本発明においては、本体における重量物は圧迫帯の周方向に沿った両端に振り分けられて配設されているものであり、本体が低重心となる上に、いわゆる「やじろべえ」を構成していることから、腕や手首への装着時に本体が安定した状態を保つものであって、圧迫帯を片手で巻き付ける時もずれるおそれが少なくなっているものであり、被測定者自身による取り付けをきわめて容易に行えるものである。」 と訂正する。 |
異議決定日 | 2002-08-30 |
出願番号 | 特願平4-265156 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZD
(A61B)
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最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 居島 一仁 |
特許庁審判長 |
渡部 利行 |
特許庁審判官 |
関根 洋之 森 竜介 |
登録日 | 2001-04-06 |
登録番号 | 特許第3175980号(P3175980) |
権利者 | 松下電工株式会社 |
発明の名称 | 血圧計 |
代理人 | 森 厚夫 |
代理人 | 森 厚夫 |
代理人 | 田村 敏朗 |
代理人 | 西川 惠清 |
代理人 | 西川 惠清 |