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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F04D
管理番号 1070397
異議申立番号 異議2001-70526  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-02-14 
確定日 2002-07-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3079367号「ターボ分子ポンプ」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3079367号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3079367号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成9年10月3日に特許出願され、平成12年6月23日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし3に係る発明の特許について、竹野哲雄より、また、請求項1及び2に係る発明の特許について、吉田勝広(「広」は旧字)より、特許異議の申立てがなされ、平成13年5月22日に取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年7月31日に訂正請求がなされ、平成13年9月10日に取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成13年11月19日に意見書が提出され、平成14年2月19日に取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成14年4月30日に、上記平成13年7月31日付けの訂正請求についての取下書が提出されるとともに、訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1)訂正事項a
本件特許第3079367号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の「ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、」との記載を、「ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、」と訂正する。

(2)訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」との記載を、「吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」と訂正する。

(3)訂正事項c
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「平均自由工程λ」との記載を、「平均自由行程λ」と訂正する。

(4)訂正事項d
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、」との記載を、「ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、」と訂正する。

(5)訂正事項e
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」との記載を、「吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」と訂正する。

(6)訂正事項f
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「平均自由工程λ」との記載を、「平均自由行程λ」と訂正する。

(7)訂正事項g
特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除する。
なお、訂正事項gは、訂正請求書の「(3)訂正の要旨」の項には明記されていないが、訂正請求書に添付された全文訂正明細書には、【特許請求の範囲】の欄に【請求項3】が記載されていないことから、上記訂正事項gのとおり認定する。

(8)訂正事項h
特許明細書の段落【0002】の「その軸方向の間隔が5mm程度に設定されている。」との記載を、「その軸方向の間隔が5mmに設定されている。」と訂正する。

(9)訂正事項i
特許明細書の段落【0007】の「【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明は、ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、この軸受に支持されたロータ軸を回転させるモータと、ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。」との記載を、「【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明は、ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。」と訂正する。

(10)訂正事項j
特許明細書の段落【0008】の「本発明は、次にように表現することも可能である。すなわち、本発明は、ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、この軸受に支持されたロータ軸を回転させるモータと、ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。」との記載を、「本発明は、次にように表現することも可能である。すなわち、本発明は、ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。」と訂正する。

(11)訂正事項k
特許明細書の段落【0009】の「上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の設定は、少なくとも吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼について行うようにした。また、上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の具体的な設定は、気体分子の平均自由行程に基づいて行う。」との記載を、「上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の具体的な設定は、気体分子の平均自由行程に基づいて行う。」

(12)訂正事項l
特許明細書の段落【0010】の「このように、本発明では、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」との記載を、「このように、本発明では、ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受を備えたターボ分子ポンプにおいて、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」と訂正する。

(13)訂正事項m
特許明細書の段落【0027】の「【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」との記載を、「【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受を備えたターボ分子ポンプにおいて、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a及び訂正事項dについて
上記訂正事項a及び訂正事項dは、特許明細書の段落【0016】の「次に、本発明の好適な実施の形態について、図3を参照して説明する。・・・ロータ軸12を磁力により支持する磁気軸受20と、・・・とを備えている。」(特許公報第5欄第36〜45行参照)との記載事項、及び段落【0021】の「また、上述の磁気軸受20は、ロータ軸12に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石22、24および軸方向電磁石26と、ロータ軸12の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサ30、32、および軸方向センサ34と、これら半径方向センサ30、32、および軸方向センサ34の検出信号を基に半径方向電磁石22、24および軸方向電磁石26などの励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系36とを備えている。」(特許公報第6欄第33〜42行参照)との記載事項に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項b及び訂正事項eについて
上記訂正事項b及び訂正事項eは、特許明細書の特許請求の範囲の欄の【請求項3】の「前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aの設定は、少なくとも吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼について行うことを特徴とする請求項1または請求頁2記載のターボ分子ポンプ。」(特許公報第2欄第9〜12行参照)との記載事項に基づくものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項c及び訂正事項fについて
上記訂正事項c及び訂正事項fは、特許明細書の段落【0009】の「上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の具体的な設定は、気体分子の平均自由行程に基づいて行う。」(特許公報第4欄第26〜28行参照)との記載事項に基づくものであり、誤記の訂正を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項gについて
上記訂正事項gは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項hについて
上記訂正事項hは、特許明細書の段落【0024】の「次に、この実施の形態について、従来装置と同様に流量特性の実験を行い、図4の実線Bで示すような実験結果を得た。ここで、この実施の形態の場合には、上述のロータ翼141とステータ翼181などの軸方向の間隔は2.5mmとし、従来装置の同間隔は5mmとする。」(特許公報第7欄第9〜14行参照)との記載事項に基づくものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項iないしmについて
上記訂正事項hないしmは、上記訂正事項aないしgと整合を図るために発明の詳細な説明の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とする明細書の訂正に該当する。したがって、上記訂正事項aないしgと同様に、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
上記II.で説示したとおり上記訂正が認められるから、本件特許第3079367号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、平成14年4月30日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定することを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項2】ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定することを特徴とするターボ分子ポンプ。」

2.刊行物に記載された発明
(1)当審で通知した平成14年2月19日付けの取消しの理由で引用した刊行物1(特開平8-42486号公報)には、以下の事項が記載されている。
a.「従来から様々な形式の排気用の摩擦ポンプが公知となっている。摩擦ポンプの動作メカニズムの基本は、運動する壁面から気体粒子へ、運動量が伝達されるということである。これによって所望の方向の気体の流れを発生させている。摩擦ポンプは、気体分子の自由行程がポンプの幾何学寸法より大きくなるような圧力範囲で作動するものであり、そのため分子流領域で作動する摩擦ポンプは、分子ポンプと呼ばれている。」(第2欄第42〜49行)
b.「気体摩擦ポンプの発展の中で、大いなる進歩と呼べるのは、ベッカー形の構成であった・・・。ベッカー形の構成では、運動壁体と固定壁体とを交互に何層にも配設し、それら運動壁体と固定壁体との両方を、タービンブレードを備えたタービン羽根車の形態にしたものである。そのため、このベッカー形の構成に対しては、ターボ分子ポンプという名称が使用される」(第3欄第12〜19行)
c.「ターボ分子ポンプは、・・・高真空領域及び超高真空領域への適用に特に適している。しかしながら、それより圧力が高い領域への適用には制約があり、その原因は、ターボ分子ポンプはポンプ構成要素の間の間隔が大きいため、約10-1ミリバール以下の低圧でないと十分に機能しないことにある。」(第3欄第28〜35行)
d.「この種のポンプの機能に関しては、逆流損失ないし逆輸送損失を小さく抑えるために、回転部材と固定部材との間の間隙を非常に小さく抑えることが本質的に必要とされている。・・・そうすることによって、これら摩擦ポンプでは(並びにターボ分子ポンプでも)、回転部材と固定部材との間の間隙が、ポンプで排気しようとしている気体の分子の平均自由行程より小さくなるという条件を満たすようになり、より圧力の高い方の圧力領域でも分子流量域でも作動できるようになる。」(第3欄第44行〜第4欄第4行)
e.「以上に挙げたポンプの全てに共通しているのは、運動する壁面の機能を果たしている回転部材の周速度に対して、圧力比は指数関数的に変化し、排気速度は一次関数的に変化するということである。そのため、効果的なポンプ性能を得るには、ロータ回転数を非常に高くすることが基本的に必要であるが、一方では、連続運転を高い信頼性をもって行えるようにすることも基本的に必要である。・・・そのため、ロータを軸支する軸受構造が非常に重要になる。・・・現在では、・・・完全無接触状態で軸支するための様々な実施態様のアクティブ制御式磁気軸受も採用されている。」(第4欄第7〜20行)

そして、上記摘記事項eの「以上に挙げたポンプの全てに共通しているのは、・・・ロータ回転数を非常に高くすることが基本的に必要である・・・ロータを軸支する軸受構造が非常に重要になる。・・・現在では、・・・アクティブ制御式磁気軸受も採用されている。」との記載、及び技術常識からみて、刊行物1には、ターボ分子ポンプを含むポンプの全てに共通するポンプ構成要素として、「ロータ軸」、「ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受」、及び「磁気軸受に支持されたロータ軸を回転させる手段」を備えることが記載されていると認められる。
そして、ターボ分子ポンプについて、上記摘記事項bの「運動壁体と固定壁体とを交互に何層にも配設し、それら運動壁体と固定壁体との両方を、タービンブレードを備えたタービン羽根車の形態にしたものである。そのため、・・・ターボ分子ポンプという名称が使用される」との記載を加味すれば、刊行物1には、
「ロータ軸と、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させる手段と、前記ロータ軸に取り付けられた複数層のタービン羽根車の形態にした運動壁体と、この複数層の運動壁体の間に配置された複数層のタービン羽根車の形態にした固定壁体とを備えたターボ分子ポンプ。」という発明(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。(なお、当該刊行物1に記載される発明は、周知の発明ともいえるものである。)

(2)当審で同じく通知した取消しの理由で引用した刊行物2(特開平9-112482号公報)には、以下の事項が記載されている。
f.「本発明は、半導体製造装置で利用される真空排気装置等に用いられるターボ分子ポンプに関する。」(第1欄第27〜29行)
g.「下部ケーシング27には、・・・ロータ軸26の軸線に直交する方向の変位を検知するラジアル位置センサ29と、ロータ軸26を軸線に直交する方向に磁気力によって非接触で回転自在に支持するラジアル磁気軸受30と、ロータ軸26を回転する上記ビルトインモータ21と・・・が備えられている。」(第3欄第20〜29行)
h.「ロータ軸26の下端部の周囲には、ロータ軸26を軸方向に磁気力によって非接触で回転自在に支持するアキシャル磁気軸受33と、ロータ軸26の軸方向の変位を検知するアキシャル位置センサ34とが備えられている。アキシャル磁気軸受33は、・・・軸方向に対向して配置された一対の電磁石からなっている。」(第3欄第30〜36行)
i.「ラジアル磁気軸受30は、・・・ロータ軸26を挟んで対向して配置された一対の電磁石からなり」(第3欄第40〜42行)
j.「位置センサは、・・・その検出信号が上記磁気軸受制御部52に入力され、磁気軸受の制御に利用される。」(第4欄第2〜6行)

(3)当審で同じく通知した取消しの理由で引用した刊行物3(特開平8-338393号公報)には、以下の事項が記載されている。
k.「本発明は、ロータ軸を高速回転し得る磁気軸受装置に関し、特に、半導体プロセス等で使用される真空ポンプに適用される磁気軸受装置に係る。」(第1欄第33〜35行)
l.「ハウジング内に、このハウジングの軸線方向に沿って延びたロータ軸を磁気力により非接触で支持する電磁石と、上記ロータ軸の位置を検出する位置検出センサと、この位置検出センサからの出力信号に基づいて上記電磁石へ供給する励磁電流値を演算する演算手段、及びこの演算手段の演算結果に基づいて上記電磁石へ供給する励磁電流を増幅するトランジスタを有する制御部とを備えた磁気軸受装置」(第2欄第10〜18行)
m.「ロータ室11には、多数のタービン翼12aを有するロータ12が配置されている。このロータ12は、ロータ軸2の上端部2aに同軸に固定されている。磁気軸受ハウジング20内には、(1)この磁気軸受ハウジング20の軸線方向に沿って延び、磁気軸受ハウジング20に収容されたロータ軸2と、(2)このロータ軸2の軸方向略中央部に配置されており、ロータ軸2を高速回転駆動させるステータモータ21と、(3)ロータ軸2の下端部2bに固定されたロータディスク3を挟んだ両側に一対が配置されており、それぞれ、ロータディスク3を介してロータ軸2を磁気力により軸方向に非接触で支持するアキシャル電磁石22と、(4)ステータモータ21を挟んだ両側に一対が配置されており、それぞれ、ロータ軸2を磁気力により径方向に非接触で支持するラジアル電磁石23と、(5)ロータ軸2の下端面に対向して配置されており、ロータ軸2の軸方向位置を検出するアキシャル方向位置検出センサ24と、(6)ラジアル電磁石23の近傍に配置されており、ロータ軸2の径方向位置を検出する一対のラジアル方向位置検出センサ25とを備えている。」(第3欄第26〜45行)

3.対比・判断
(1)本件発明1について
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者の「ロータ軸」は、その技術的意義において、前者の「ロータ軸」に相当し、以下同様に、「複数層のタービン羽根車の形態にした運動壁体」は「複数段のロータ翼」に、「複数層のタービン羽根車の形態にした固定壁体」は「複数段のステータ翼」に、それぞれ相当するものと認められる。
そして、後者の「前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受」と、前者の「前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受」とは、共に、ロータ軸を磁力により回転自在に支持するものと認められるから、両者は、「ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受」といえるものである。
また、後者の「ロータ軸を回転させる手段」と、前者の「ロータ軸を回転させるモータ」は、共に、ロータ軸を回転させるものと認められるから、両者は、「ロータ軸を回転させる手段」といえるものである。
してみると、両者の一致点、及び相違点は、以下のとおりである。
【一致点】
ロータ軸と、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させる手段と、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備えたターボ分子ポンプ。

【相違点】
イ.磁気軸受について、本件発明1は、「ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受」であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、「磁気軸受」の具体的構成が不明である点。
ロ.ロータ軸を回転させる手段について、本件発明1は、「モータ」であるのに対し、刊行物1に記載された発明は、その具体的手段が不明である点。
ハ.ロータ翼とステータ翼の設置に関し、本件発明1は、「吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定する」のに対し、刊行物1に記載された発明は、それについて明らかでない点。

上記相違点イ〜ハについて検討する。
〈相違点イについて〉
刊行物2、3には、その記載事項(上記摘記事項f〜m)からみて、それぞれ、真空ポンプ(ターボ分子ポンプを含む)の磁気軸受として、「ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受」が記載されていると認められる。
そして、上記刊行物2、3に記載された技術的事項は、本件発明1及び刊行物1に記載された発明と同様、「ターボ分子ポンプ」に関する技術分野に属するものであるから、刊行物1に記載された発明の磁気軸受として、刊行物2、3に記載された磁気軸受を適用する点に格別の困難性は認められない。
してみると、相違点イに係る本件発明1を特定する事項は、刊行物1に記載された発明、及び刊行物2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るものと認められる。

〈相違点ロについて〉
ロータの回転手段としてモータを用いることは、例えば、刊行物2、3にも記載されているように、「ターボ分子ポンプ」に関する技術分野において従来周知の技術的事項であり(上記摘記事項g、m参照)、当該周知の技術的事項を刊行物1に記載された発明に適用できないとする特段の事情も存在しない。
してみると、相違点ロに係る本件発明1を特定する事項は、刊行物1に記載された発明、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るものと認められる。

〈相違点ハについて〉
刊行物1には、ターボ分子ポンプの性能・特性に関して、「ターボ分子ポンプは、・・・高真空領域及び超高真空領域への適用に特に適している。しかしながら、それより圧力が高い領域への適用には制約があり、その原因は、ターボ分子ポンプはポンプ構成要素の間の間隔が大きいため、約10-1ミリバール以下の低圧でないと十分に機能しないことにある。」(上記摘記事項c参照)と記載されている。要するに、ターボ分子ポンプとして、ポンプ構成要素の間の間隔が大きいと、約10-1ミリバール以下の低圧でないと十分に機能しない、ことが記載されている。
さらに、刊行物1には、「この種のポンプの機能に関しては、逆流損失ないし逆輸送損失を小さく抑えるために、回転部材と固定部材との間の間隙を非常に小さく抑えることが本質的に必要とされている。・・・そうすることによって、これら摩擦ポンプでは(並びにターボ分子ポンプでも)、回転部材と固定部材との間の間隙が、ポンプで排気しようとしている気体の分子の平均自由行程より小さくなるという条件を満たすようになり、より圧力の高い方の圧力領域でも分子流量域でも作動できるようになる。」(上記摘記事項d参照)と記載されている。すなわち、ターボ分子ポンプでも、回転部材と固定部材との間の間隙を、ポンプで排気しようとしている気体の分子の平均自由行程より小さくすれば、より圧力の高い方の圧力領域でも作動できるようになる、ことが記載されている。
してみると、刊行物1には、ターボ分子ポンプの排気性能に関して、「ポンプ構成要素の間の間隔が大きいことに起因するターボ分子ポンプの排気性能が低下する高い圧力領域、例えば約10-1ミリバール以上の高い圧力領域であっても、ターボ分子ポンプの運動壁体(回転部材)と固定壁体(固定部材)との間の間隙を、気体の分子の平均自由行程より小さくすることにより、前記排気性能が低下する高い圧力領域でも作動できる」との技術的事項が記載されているのは明らかである。
そして、刊行物1に記載されるターボ分子ポンプの上記排気性能に関する技術的事項の「ターボ分子ポンプの運動壁体(回転部材)と固定壁体(固定部材)との間の間隙を、気体の分子の平均自由行程より小さくする」ことは、その技術的意義において、本件発明1の「ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定する」ことに相当するものと認められ、加えて、上記技術的事項は、約10-1ミリバールより高い圧力領域でも作動できるものであることから、「定常運転時の圧力が10mTorr以上」で作動できる構成であるのは技術常識に照らして明らかである(「約10-1ミリバール」の換算値が「約75mTorr」であって、「10mTorr」より高い圧力領域であるのは自明である。)。なお、排気性能が低下する高い圧力領域として、「定常運転時の圧力が10mTorr以上」の領域を設定する点にも、何ら技術的困難性は認められない。
さらに、刊行物1に記載された上記技術的事項に関し、「ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定する」設定位置は、特に限定(制限)されるものでないことからして、常識的にみれば、当該技術的事項は、上流側位置から下流側位置、すなわち吸気口側の位置から排気口側の位置に亘って配設される「ロータ翼とステータ翼」の軸方向の間隔aを、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するもの、というべきであり、「吸気口側」に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔を、気体分子の平均自由行程未満の値に設定する点に、何ら技術的困難性は認められない。
以上総合すると、刊行物1に記載された発明において、定常運転時の圧力が10mTorr以上の高い圧力領域であっても、ターボ分子ポンプが機能するように、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定することは、当業者であれば容易に想到し得るものといわざるを得ない。
したがって、相違点ハに係る本件発明1を特定する事項は、刊行物1に記載された発明、及び同刊行物1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るものと認められる。

次に、本件発明1の効果について検討する。
本件訂正明細書には、本件発明1の効果について、「本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」(本件訂正明細書第9頁第20〜23行)と記載されている。要するに、本件発明1の効果は、圧力が10mTorr以上の領域であっても、その排気性能を十分に発揮できる、というものである。
一方、刊行物1には、「この種のポンプの機能に関しては、逆流損失ないし逆輸送損失を小さく抑えるために、回転部材と固定部材との間の間隙を非常に小さく抑えることが本質的に必要とされている。・・・そうすることによって、これら摩擦ポンプでは(並びにターボ分子ポンプでも)、回転部材と固定部材との間の間隙が、ポンプで排気しようとしている気体の分子の平均自由行程より小さくなるという条件を満たすようになり、より圧力の高い方の圧力領域でも分子流量域でも作動できるようになる。」(上記摘記事項d参照)と記載されている。してみると、回転部材(ロータ翼)と固定部材(ステータ翼)との間の間隙を気体の分子の平均自由行程より小さくすれば、より圧力の高い方の圧力領域(圧力が10mTorr以上の領域)であっても作動できる(その排気性能を十分に発揮できる)という効果は、当業者であれば当然予測可能な範囲のものである、といわざるを得ない。
なお、平成14年4月30日付けの特許異議意見書において、特許権者は、「訂正後の本件発明では、分子流領域となる間隔を吸気口側としたことで、より高い圧力領域にあっても排気することができるという分子流の効果を得るだけでなく、更に、逆流防止の効果を得ることができるものである。」(第3頁第15〜27行参照)、旨主張するが、上記「逆流防止の効果」は、そもそも本件訂正明細書には記載されていないことから(願書に添付した明細書にも記載されていない。)、特許権者の上記主張は、何ら理由のないものである。仮に、上記「逆流防止の効果」を本件発明1が奏するとしても、「ターボ分子ポンプ」に関する技術分野において、「逆流損失ないし逆輸送損失を小さく抑える」ことは、例えば、刊行物1にも、「この種のポンプの機能に関しては、逆流損失ないし逆輸送損失を小さく抑えるために、回転部材と固定部材との間の間隙を非常に小さく抑えることが本質的に必要とされている。」と記載されているように、従来周知の技術課題であると認められ(上記摘記事項d参照)、さらに、ターボ分子ポンプにおいて、「吸気口側」に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定すれば、吸気口側で排気性能を充分に発揮できるのは明らかであるから、当業者であれば、刊行物1に記載された発明に、刊行物1に記載された技術的事項を適用した発明が、逆流防止効果を得ることも予測できる範囲のものである。
したがって、本件発明1の効果は、刊行物1に記載された発明、同刊行物1に記載された技術的事項、刊行物2、3に記載された技術的事項、及び上記周知の技術的事項から、当業者が予測可能な範囲のものであって、格別なものではない。

以上のとおりであるから、本件発明1は、刊行物1に記載された発明、同刊行物1に記載された技術的事項、刊行物2、3に記載された技術的事項、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

(2)本件発明2に対して
本件発明2は、本件発明1の「圧力が10mTorr以上」という技術的事項を、「排気流量が1000SCCM以上の領域」という技術的事項に変更したものであるから、本件発明2と刊行物1に記載された発明とを対比すると、両者は、上記「(1)本件発明1について」の項に示した一致点で一致し、上記「(1)本件発明1について」の項に示した相違点イ、ロと実質的に同じ相違点に加え、次の相違点ハ’で相違するものである。(なお、相違点イ、ロについては、判断済みである。)
【相違点】
ハ’.ロータ翼とステータ翼の設置に関し、本件発明2は、「吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定する」のに対し、刊行物1に記載された発明は、それについて明らかでない点。
上記相違点ハ’について検討する。
上記「(1)本件発明1について」の項で説示するとおり、ロータ翼とステータ翼の設置に関し、「吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定する」点は、刊行物1に記載された発明、及び同刊行物1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るものと認められるところ、排気流量の増加が圧力の増加と相関関係にあることは当業者には自明であることからして、刊行物1に記載された発明のターボ分子ポンプを、ポンプの性能や使用状況に応じて、「定常運転時の圧力が10mTorr以上」の領域と相関関係をなす「定常運転時の排気流量が1000SCCM以上」の領域で使用することも、当業者の通常の創作能力の発揮によって適宜なし得る程度のものといわざるを得ない。

してみると、相違点ハ’に係る本件発明2を特定する事項は、刊行物1に記載された発明、及び同刊行物1に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易になし得るものと認められる。

そして、本件発明2の効果も、本件発明1と同様の理由により、刊行物1に記載された発明、同刊行物1に記載された技術的事項、刊行物2、3に記載された技術的事項、及び上記周知の技術的事項から、当業者が予測可能な範囲のものであって、格別なものではない。

したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明、同刊行物1に記載された技術的事項、刊行物2、3に記載された技術的事項、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、刊行物1に記載された発明、同刊行物1に記載された技術的事項、刊行物2、3に記載された技術的事項、及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1及び2についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ターボ分子ポンプ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロータ軸と、
前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、
この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、
この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、
吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定することを特徴とするターボ分子ポンプ。
【請求項2】 ロータ軸と、
前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、
この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、
前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、
この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、
吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定することを特徴とするターボ分子ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造装置などの真空装置として使用されるターボ分子ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
ターボ分子ポンプは、高速回転するロータ軸に取り付けられたロータ翼と、外装体によって固定されたステータ翼とが交互に配置され、ロータ翼とステータ翼との対がロータ軸の軸方向に複数段にわたって設けられたものである。ロータ翼は、所定の角度で傾斜する複数のブレード(羽根)からなる。ステータ翼は、ロータ翼と同様に複数のブレードからなるが、ブレードの傾斜方向はロータ翼のブレードの傾斜方向と逆になっている。
ロータ翼とステータ翼との軸方向の間隔は、設計上の都合などにより設定されている。例えば、吸気口の近傍に配置されるロータ翼とステータ翼とでは、その軸方向の間隔が5mmに設定されている。
【0003】
このような構成からなるターボ分子ポンプでは、ロータ軸の回転によりロータ翼が回転し、ロータ翼のブレードは、気体分子を回転方向に叩くことにより軸方向に移動させ、これにより排気を行っている。
また、この種のターボ分子ポンプは、例えば、半導体製造装置の真空室の排気に使用され、その真空室では、半導体の加工処理のために真空室内に常に気体が供給され、この供給された気体をターボ分子ポンプで排気する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、近年、真空室へ供給される気体の量が増加する傾向にあり、これに伴って、ターボ分子ポンプが定常運転時に排気すべき気体の量も増加の傾向にある。
そこで、このように排気すべき気体流量が増加した場合に、従来のターボ分子ポンプで十分な真空度(排気性能)が得られるか否かを確認するために、流量特性の試験を行い、図4の1点鎖線Aで示すような結果を得た。
ここで、排気される気体は窒素(N2)であり、補助ポンプとして1300(l/min)のドライポンプを使用している。
【0005】
この試験結果から、排気すべき気体の流量が少ない場合には、十分な真空度が得られるが(例えば、圧力が10-2Torr以下、すなわち圧力が10mTorr以下)、排気すべき気体の流量が多い場合には、十分な真空度が得られない(例えば、圧力が10mTorr以上)、ということがわかった。
この結果に基づき、発明者は、気体流量の多い場合に十分な真空度が得られない原因を追求するために、鋭意研究を続けた。
その結果、ターボ分子ポンプの吸気口側に設けられたロータ翼とステータ翼の軸方向の隙間において、排気気体が分子流を形成しないために、排気性能が低下するという新知見を得た。すなわち、気体流量の増加に伴う真空度の低下は、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔と相関があるという新知見を得た。
【0006】
そこで、本発明は、その新知見に基づきなされたものであり、定常運転時の気体の排気流量が増加しても、その気体流量の増加を確保したまま必要な真空度を確保できるターボ分子ポンプを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。
【0008】
本発明は、次にように表現することも可能である。
すなわち、本発明は、ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。
【0009】
上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の具体的な設定は、気体分子の平均自由行程に基づいて行う。
【0010】
このように、本発明では、ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受を備えたターボ分子ポンプにおいて、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。
このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の説明に先だって、まず本発明の基本的な考え方について、以下に説明する。
図1は、本発明の基本的な考え方を説明するために、本発明の要部のみを取り出した断面図である。図2は、そのロータ翼とステータ翼の関係を示す展開図である。
本発明は、上記の新知見に基づくものであり、図1に示すように、少なくとも吸気口側に設けられたロータ翼141とステータ翼181の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体が分子流として扱える値に設定するようにした。
【0012】
また、ターボ分子ポンプを、定常運転時に真空室に供給される気体を排気して使用する場合には、排気すべき気体の流量があらかじめ決まっている。このため、ターボ分子ポンプは、定常運転時にその排気流量の条件を満たすと同時に、そのときに必要な真空度(例えば、20mTorr以下)が得られなければならない。そこで、本発明は、次のように表現することも可能である。
すなわち、本発明は、少なくとも吸気口側に設けられたロータ翼141とステータ翼181の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体が分子流として扱える値に設定するようにしたものである。
【0013】
次に、このような考え方に基づき、例えば、ロータ翼141とステータ翼181の軸方向の間隔aを具体的に設定する方法について、以下に説明する。
上記のように、ロータ翼141とステータ翼181の軸方向の隙間において、気体が分子流として扱えるかどうかは、気体分子の平均自由行程により決まり、この平均自由行程λは、概略次の(1)式により表される。
λ=0.05/圧力(mm)・・・(1)
ここで、(1)式中の圧力の単位はTorrである。
この平均自由行程λが、上記の間隔a以上であれば、気体は分子流として扱える。
【0014】
そこで、定常運転時の圧力が20mTorr以下において、気体を分子流とする場合について説明する。
圧力が20mTorrにおける平均自由行程λは、(1)式からλ=2.5mmとなる。
従って、ロータ翼141とステータ翼181の軸方向の間隔aを2.5mm以下に設定すれば、圧力が20mTorr以下の領域において気体を分子流として扱うことができる。
【0015】
なお、後述のロータ翼142とステータ翼182の軸方向の間隔、ロータ翼143とステータ翼183の軸方向の間隔、およびロータ翼144とステータ翼184の軸方向の間隔についても、上記と同様に、気体が分子流として扱えるように設定される。
【0016】
次に、本発明の好適な実施の形態について、図3を参照して説明する。
図3は、本発明の実施の形態であるターボ分子ポンプの全体の構成を示す断面図である。
この実施の形態のターボ分子ポンプ10は、図3に示すように、略円柱形状のロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられたロータ翼部14と、略円筒形状の外装体16によって固定されたステータ翼部18と、ロータ軸12を磁力により支持する磁気軸受20と、ロータ軸12にトルクを発生させるモータ21とを備えている。
【0017】
ロータ翼部14は、ロータ軸12に取り付けられたほぼ筒状の筒体14aと、この筒体14aの外周に取り付けられた4種類のロータ翼141、142、143、144で構成されている。
ステータ翼部18は、そのロータ翼141、142、143、144に対応して外装体16の内周に固定された、4種類のステータ翼181、182、183、184で構成されている。
【0018】
ロータ翼141は、図2に示すように、ロータ軸12に対して所定角度で傾斜させ、かつ放射状に筒体14aの外周面に取り付けた複数のブレード(羽根)141aから構成される。
ロータ翼142、143、144は、ロータ翼141と同様に、それぞれ筒体14aの外周に一体に形成された複数のブレードから構成されるが、そのブレードの大きさや傾斜角度は、ロータ翼142、143、144によって異なる。
ステータ翼181は、図2に示すように、複数のブレード181aから構成されるが、各ブレード181aの傾斜方向がロータ翼141のブレード141aの傾斜方向と逆になっている。
ステータ翼182、183、184は、ステータ翼181と同様に複数のブレードから構成されるが、そのブレードの大きさや傾斜角度は、ステータ翼182、183、184によって異なる。
【0019】
このような構成からなるロータ翼141〜144と、対応するステータ翼181〜184とは、その軸方向において、所定の間隔をおいて上下方向に交互に配置されている。
すなわち、ロータ翼141とステータ翼181の軸方向の間隔、ロータ翼142とステータ翼182の軸方向の間隔、およびロータ翼143とステータ翼183の軸方向の間隔とは、上記のように、圧力が20mTorr以下の領域で気体が分子流として扱えるように、2.5mmに設定されている。
【0020】
このような配置により、ロータ翼141とステータ翼181とで排気段が形成され、ロータ翼142、143とステータ翼182、183とで中間段が形成され、ロータ翼144とステータ翼184とで圧縮段が形成される。
【0021】
また、上述の磁気軸受20は、ロータ軸12に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石22、24および軸方向電磁石26と、ロータ軸12の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサ30、32、および軸方向センサ34と、これら半径方向センサ30、32、および軸方向センサ34の検出信号を基に半径方向電磁石22、24および軸方向電磁石26などの励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系36とを備えている。
【0022】
次に、このような構成からなる実施の形態の動作について、図面を参照して説明する。
この実施の形態のターボ分子ポンプ10は駆動時において、磁気軸受20によってロータ軸12が所定の浮上位置に非接触の状態で保持され、この状態でモータ21が駆動されることで、ロータ軸12が回転する。
そして、ステータ翼181〜184の間で各ロータ翼141〜144が回転することで、図3に示すように、気体が吸気口38から吸気され、圧縮されることで排気口39から排出される。
【0023】
この実施の形態では、ロータ翼141とステータ翼181とで形成される排気段と、ロータ翼142、143とステータ翼182、183とで形成される中間段とでは、気体の流れは分子流として取り扱えるため、気体分子はロータ翼141、142、143のブレードに叩かれて排気口39側に向けて移動する。
【0024】
次に、この実施の形態について、従来装置と同様に流量特性の実験を行い、図4の実線Bで示すような実験結果を得た。
ここで、この実施の形態の場合には、上述のロータ翼141とステータ翼181などの軸方向の間隔は2.5mmとし、従来装置の同間隔は5mmとする。
この実験結果によれば、例えば、流量が1000SCCMのときに、従来装置では圧力が30mTorrになって必要な圧力である20mTorrを上回ってしまうが、この実施の形態では圧力が10mTorrとなり必要な圧力を十分に確保できる。さらに、流量が1500SCCMの場合には、従来装置では圧力が60mTorr以上になるが、この実施の形態では圧力が20mTorrとなり必要な圧力を確保できる。
【0025】
このように、この実施の形態では、従来よりも排気流量が増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)10〜20mTorrを確保できる。
これは、この実施の形態が、ロータ翼141とステータ翼181などの軸方向の間隔を上記のように設定し、ロータ翼141とステータ翼181などの軸方向の隙間において、気体の流れが分子流となるからと考えられるからである。
【0026】
なお、上記の実施の形態では、ロータ翼141とステータ翼181の軸方向の間隔、ロータ翼142とステータ翼182の軸方向の間隔、およびロータ翼143とステータ翼183の軸方向の間隔とは、圧力が20mTorr以下の領域で気体が分子流として扱えるように、2.5mmに設定するようにした。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明では、ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受を備えたターボ分子ポンプにおいて、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。
このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の基本的な考え方を説明するターボ分子ポンプの要部の断面図である。
【図2】
同要部のロータ翼とステータ翼の展開図である。
【図3】
本発明の実施の形態によるターボ分子ポンプの断面図である。
【図4】
この実施の形態と従来装置との流量特性の試験結果を示す図である。
【符号の説明】
a 間隔
10 ターボ分子ポンプ
12 ロータ軸
14 ロータ翼部
14a 筒体
141、142、143、144、145 ロータ翼
141a ブレード
18 ステータ翼部
181、182、183、184 ステータ翼
181a ブレード
20 磁気軸受
 
訂正の要旨 訂正の要旨
1.本件特許第3079367号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の「ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、」との記載を、「ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、」と訂正する。
2.特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」との記載を、「吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」と訂正する。
3.特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「平均自由工程λ」との記載を、「平均自由行程λ」と訂正する。
4.特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、」との記載を、「ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、」と訂正する。
5.特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」との記載を、「吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、」と訂正する。
6.特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の「平均自由工程λ」との記載を、「平均自由行程λ」と訂正する。
7.特許明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除する。
8.特許明細書の段落【0002】の「その軸方向の間隔が5mm程度に設定されている。」との記載を、「その軸方向の間隔が5mmに設定されている。」と訂正する。
9.特許明細書の段落【0007】の「【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明は、ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、この軸受に支持されたロータ軸を回転させるモータと、ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。」との記載を、「【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、本発明は、ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。」と訂正する。
10.特許明細書の段落【0008】の「本発明は、次にように表現することも可能である。すなわち、本発明は、ロータ軸と、このロータ軸を回転自在に支持する軸受と、この軸受に支持されたロータ軸を回転させるモータと、ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。」との記載を、「本発明は、次にように表現することも可能である。すなわち、本発明は、ロータ軸と、前記ロータ軸に対して半径方向の磁力と軸方向の磁力をそれぞれ発生させる半径方向電磁石および軸方向電磁石と、前記ロータ軸の半径方向の位置と軸方向の位置とをそれぞれ検出する半径方向センサおよび軸方向センサと、これら半径方向センサおよび軸方向センサの検出信号を基に前記半径方向電磁石および軸方向電磁石の励磁電流をそれぞれフィードバック制御する制御系とを有し、前記ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受と、この軸受に支持された前記ロータ軸を回転させるモータと、前記ロータ軸に取り付けられた複数段のロータ翼と、この複数段のロータ翼の間に配置された複数段のステータ翼とを備え、吸気口側に位置する前記ロータ翼と前記ステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の排気流量が1000SCCM以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。」と訂正する。
11.特許明細書の段落【0009】の「上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の設定は、少なくとも吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼について行うようにした。また、上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の具体的な設定は、気体分子の平均自由行程に基づいて行う。」との記載を、「上記のロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔の具体的な設定は、気体分子の平均自由行程に基づいて行う。」
12.特許明細書の段落【0010】の「このように、本発明では、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」との記載を、「このように、本発明では、ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受を備えたターボ分子ポンプにおいて、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」と訂正する。
13.特許明細書の段落【0027】の「【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、、気体分子の平均自由工程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」との記載を、「【発明の効果】以上説明したように、本発明では、ロータ軸を磁力により回転自在に支持する磁気軸受を備えたターボ分子ポンプにおいて、吸気口側に位置するロータ翼とステータ翼の軸方向の間隔aを、定常運転時の吸気口の圧力が10mTorr以上の領域で、気体分子の平均自由行程λ未満の値に設定するようにした。このため、本発明では、定常運転時に圧力が10mTorr以上の領域で気体を分子流として扱うことができ、その排気性能を十分に発揮できる。従って、本発明は、定常運転時に真空室に供給される気体の流量が従来よりも増加しても、その流量の増加を確保したまま必要な圧力(真空度)を確保できる。」と訂正する。
異議決定日 2002-05-27 
出願番号 特願平9-288025
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (F04D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 黒瀬 雅一  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 清田 栄章
氏原 康宏
登録日 2000-06-23 
登録番号 特許第3079367号(P3079367)
権利者 エスティーエムピー株式会社
発明の名称 ターボ分子ポンプ  
代理人 田中 秀佳  
代理人 川井 隆  
代理人 白石 吉之  
代理人 仲野 均  
代理人 仲野 均  
代理人 江原 省吾  
代理人 川井 隆  
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