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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
管理番号 1070449
異議申立番号 異議2000-74291  
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-01-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-11-29 
確定日 2003-01-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第3046000号「防汚塗料組成物」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3046000号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3046000号の請求項1、2に係る発明は、平成10年7月1日に特許出願され、平成12年3月17日にその特許権の設定登録がなされ、その後、当該請求項1、2に係る発明の特許について、日本ペイント株式会社(以下、申立人という。)から、特許異議の申立てがなされたものである。

II.特許異議申立てについて
(II-1)本件発明
本件請求項1、2に係る発明(以下、本件発明1、2という。)は、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された次のとおりものである。
【請求項1】(イ)カルボキシル基を含有する酸価20〜400KOHmg/gの樹脂からなる結合剤、(ロ)金属含有防汚剤、及び(ハ)式 X-COOH(式中、Xは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基である。)で示されるカルボキシル基を含有する一塩基酸の金属石鹸、を含むことを特徴とする防汚塗料組成物。
【請求項2】前記樹脂(イ)の前記カルボキシル基と、前記金属石鹸(ハ)に含まれる金属との当量比が、(1:0.1〜3.0)である請求項1記載の防汚塗料組成物。

(II-2)申立ての理由の概要
異議申立人は、甲第1〜4号証を提示し、(イ)本件請求項1、2に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証に記載された発明であり、(ロ)本件請求項1、2に係る発明は、甲第1号証または甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、2に係る発明の特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものであり、取り消すべきものである旨を主張している。
甲第1号証:特開昭63-128084号公報
甲第2号証:実験報告書
甲第3号証:特開昭62-57464号公報
甲第4号証:13398の化学商品(化学工業日報社)

(II-3)甲各号証の記載
甲第1号証(特開昭63-128084号公報):
「(1)酸基を有する基体樹脂と低沸点有機塩基酸の金属塩、但し該金属はアルカリ金属よりイオン化傾向の低い2価以上の金属、および高沸点有機一塩基酸とを、低沸点有機塩基酸を系外に除去しつつ加熱反応せしめて得られる金属含有樹脂組成物をビヒクルとして含むことを特徴とする防汚塗料。・・・(4)酸基を有する基体樹脂の酸価が、25〜350mgKOH/gである特許請求の範囲第1項記載の塗料。」(特許請求の範囲参照)、「本発明での低沸点有機塩基酸は・・・好ましくは炭素数1〜7のカルボン酸、・・・の金属塩で、該金属種としてはイオン化傾向がアルカリ金属より低い2価以上の金属、例えば・・・Cu、・・・Zn・・・でありうる。・・・低沸点有機塩基酸は、他方の高沸点有機一塩基酸との対比において相対的に低沸点と称されるにすぎないが・・・具体例としては酢酸、プロピオン酸・・・等が挙げられる。・・・本発明方法で用いられる高沸点有機一塩基酸としては沸点が低沸点有機酸よりも充分高いもの、例えば20℃以上高いものであることが好ましく、・・・、ナフテン酸、・・・、オレイン酸、・・・などである。」(4頁左上欄10行〜右下欄8行参照)、
「尚、本発明で用いられる側鎖末端に一価有機酸金属エステルを有する樹脂において、樹脂側鎖の有機酸が全てこのような金属エステル結合をもつ必要はなく、所望により遊離有機酸基のままある程度残存させておいてもかまわない。従って酸価を有する樹脂と低沸点有機塩基酸の金属塩ならびに高沸点有機一塩基酸の割合は、比較的任意に選択可能であるが、樹脂中に低沸点有機塩基酸が残存しないよう配慮せられる必要がある。」(4頁右下欄17行〜5頁左上欄5行)、
「本発明の防汚塗料は・・・、他に通常の防汚塗料調整に使用せられる任意の構成成分を含有せしめることが出来る。かかる成分としては、例えば(1)防汚剤:銅、亜鉛、・・・などの金属粉末あるいはフレークなど:・・・銅、亜鉛などの酸化物、・・・がある。」(5頁右上欄1行〜同頁左下欄末行)、
「参考例1 ・・・得られた樹脂溶液中の・・・固形分酸価は200mgKOH/gのワニスAを得た。 参考例2 ・・・得られた樹脂溶液中の・・・固形分酸価は50mgKOH/gのワニスBを得た。」(6頁右下欄9行〜7頁左上欄15行参照)、
「ワニス製造例1 ・・・ワニスA100部、酢酸亜鉛25.9部、オレイン酸40.3部、キシレン120部を加え、120℃に加熱し、溶剤と共に反応が進行するにつれ生成する酢酸を除去した。反応の終点は流出溶剤中の酢酸を定量し、決定した。・・・粘度R-Sのワニス1を得た。 ワニス製造例2 ・・・ワニスB100部、プロピオン酸銅7.4部、ナフテン酸10部、脱イオン水20部を加え、100℃に加熱し、水と共に反応が進行するにつれ生成するプロピオン酸を除去した。反応の終点は流出溶剤中のプロピオン酸を定量して決定し、系内の水を完全に除去し、反応を終え、キシレンを加えた。・・・粘度Pのワニス2を得た。」(7頁右上欄9行〜7頁左下欄7行参照)、
「実施例1 ワニス製造例1で得られたワニス1(・・・)30部、亜酸化銅30部、・・・・、合計100部をボールミル中で5時間分散処理し、塗料組成物を得た。 2〜44および比較例1〜3 実施例1と同様方法で、但し第1表の塗料配合により各々塗料組成物を得た。」(9頁左上欄6〜16行参照)、
実施例7における塗料配合は、ワニス1が40、亜酸化銅が35、亜鉛粉末が3、・・・、合計が100であり、実施例33における塗料配合は、ワニス2が30、亜酸化銅が25、亜鉛華が10、ナフテン酸銅10、・・・、合計が100であること(9〜10頁の第1表参照)。

甲第2号証(平成12年9月14日、日本ペイント株式会社、原田昭夫の実験報告書):
本件公報の4頁、表2に実施例2として記載される組成物に関して、その成分である樹脂溶液B、金属石鹸、それらの混練分散物の20℃、1日保存後の資料、および、甲第1号証の120℃で加熱して作成したワニスについて、それぞれ、IRスペクトル測定した結果と、当該結果から、前記した本件発明の実施例2においても、樹脂溶液のカルボキシル基の一部はエステル化されているとの考察が記載されている。

甲第3号証(特開昭62-57464号公報):
「本発明は新規なる金属含有樹脂組成物に係り、更に詳しくは側鎖末端に特定の基を有する加水分解型樹脂からなる金属含有樹脂組成物、ならびに該樹脂組成物をビヒクルとして含む防汚塗料組成物に関するものである。」(2頁右上欄末行〜同頁左下欄4行)、
「本発明の樹脂組成物は次のようにして製造せられる。・・・(3)側鎖に有機酸を有する樹脂(g)に一価有機酸の金属エステル(h)を所望生成物の分解温度以下の温度で反応させ、エステル交換反応により樹脂側鎖末端に金属エステル部を導入する。・・・通常(h)量は樹脂(g)中の有機酸1当量に対し0.3〜3当量、好ましくは・・・である。」(4頁右上欄7〜16行参照)、
「本発明で用いられる側鎖末端に一価有機酸金属エステルを有する樹脂において、樹脂側鎖の有機酸が全てこのような金属エステル結合をもつ必要はなく、所望により遊離有機酸基のままある程度残存させておいてもかまわない。」(6頁右下欄9〜13行)、
「本発明に金属含有樹脂中の酸価、水酸基価は必ずしも0である必要はなく、水中で樹脂が溶解〜溶出しない程度であればある程度までは許容せられる。より具体的には酸価は40KOHmg/gまで、・・・が許容範囲である。」(7頁右上欄9〜16行参照)、
「塗料化にさいしては、従来公知の任意の有機、無機系の防汚剤、・・・などが適宜選択され、常法により防汚塗料が作られる。」(7頁左下欄1〜4行参照)、
「ワニス製造例1 ・・・110℃から120℃に保つ。この溶液中にアクリル酸エチル60部、アクリル酸2-エチルへキシル25部、アクリル酸15部、アゾビスイソブチロニトリル2部の混合液を・・・2時間保温する。得られた樹脂溶液の・・・ワニスAを得た。」(7頁右下欄末行〜8頁左上欄9行参照)、
「実施例5 ・・・ワニスA100部、ステアリン酸亜鉛23部を加え、120℃で2時間攪拌し・・・ワニスV-5を得た。・・・。 実施例6 ・・・ワニスA100部、ナフテン酸銅15部、ラウリン酸ジブチルスズ10部を加え、80℃で2時間攪拌し、・・・ワニスV-6を得た。」(9頁右上欄6〜19行参照)、
ワニスV-5を35部に亜酸化銅を25部配合した塗料の実施例19、およびワニスV-6を45部に亜酸化銅を30部配合した塗料の実施例19(11頁第1表参照)。

甲第4号証(13398の化学商品 1998年 化学工業日報社発行):
「ナフテン酸金属塩」の項に、標準品質としてナフテン酸銅の銅含有量は5〜10%である旨が記載(672頁〜第673頁参照)。

(II-4)当審の判断
甲第1号証には、酸価が25〜350mgKOH/gである酸基を有する基体樹脂と低沸点有機塩基酸の2価以上の金属塩と高沸点有機一塩基酸とを低沸点有機塩基酸が樹脂中に残存しないよう系外に除去しつつ加熱反応させて得られる側鎖末端に一価有機酸金属エステルを有するビヒクルとしての樹脂組成物と 防汚剤とを含有する塗料組成物が記載されているものの、加熱反応後における樹脂の酸価および当該樹脂組成物の組成について記載するところはない。
甲第3号証には、側鎖に有機酸を有する樹脂に一価有機酸の金属エステルを所望生成物の分解温度以下の温度(例えば、110〜120℃)で反応させてエステル交換反応で樹脂側鎖末端に金属エステル部を導入することにより製造された、樹脂の酸価が40KOHmg/g以下である加水分解型樹脂からなる樹脂組成物と防汚剤とを含有する塗料組成物が記載されているものの、反応させたのちの樹脂組成物の組成について記載するところはなく、当該樹脂組成物に一価有機酸の金属エステルを残存させることを示唆する記載もない。
また、甲第2、4号証には前記内容が記載されているにすぎない。
してみると、甲第2、4号証を総合しても、甲第1、3号証に本件発明1、2における「(イ)カルボキシル基を含有する酸価20〜400KOHmg/gの樹脂からなる結合剤、及び(ハ)式 X-COOH(式中、Xは、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基又はアリール基である。)で示されるカルボキシル基を含有する一塩基酸の金属石鹸、を含むことを特徴とする防汚塗料組成物」という特定事項(以下、「本件特定事項」という。)が記載または示唆されているとすることはできない。
そして、本件発明は、前記本件特定事項を採用することにより、実施例および比較例を用いて特許明細書中で説明されているとおりの、金属含有防汚剤を混練しても混練時に増粘-ゲル化せずに長期間の保存が可能であり、優れた研磨性、長期防汚性を有するという、効果を奏するものである。
よって、本件発明1、2は、甲第1、3号証に記載された発明であるとも、甲第1、3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることができず、申立人の主張は採用することができない。
なお、申立人は証人尋問申請書を提出しているが、証人尋問は甲第2号証における実験条件及び結果を証明するというものであり、当該証明により甲第2号証に記載の内容が変更するというものでもなく、甲第2号証の記載に基づいても申立人の主張が採用できないことは前述したとおりであるから、証人尋問の申立ては採用しない。

(II-5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件発明1、2の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2002-12-03 
出願番号 特願平10-185796
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C09D)
P 1 651・ 113- Y (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 雨宮 弘治
特許庁審判官 佐藤 修
井上 彌一
登録日 2000-03-17 
登録番号 特許第3046000号(P3046000)
権利者 大日本塗料株式会社
発明の名称 防汚塗料組成物  
代理人 小川 信夫  
代理人 仲村 義平  
代理人 竹内 英人  
代理人 今城 俊夫  
代理人 中村 稔  
代理人 浅井 賢治  
代理人 深見 久郎  
代理人 森田 俊雄  
代理人 大塚 文昭  
代理人 村社 厚夫  
代理人 宍戸 嘉一  
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