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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) E03B
管理番号 1071149
審判番号 無効2000-35676  
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-17 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-12-14 
確定日 2002-09-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2832183号発明「給水システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2832183号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
1-1.本件特許第2832183号の請求項1乃至4に係る発明についての出願は、平成3年8月27日に出願され、平成10年9月25日にそれらの発明について特許の設定登録がされたものである。
1-2.無効審判請求人は、本件特許の請求項1に記載の発明は、甲第1号証に記載された発明と同一、あるいはそれと甲第2乃至7号証に記載された発明に基づいて、または、本件特許出願の出願前に公然と実施された発明である甲第8号証に基づいて、容易に発明できたものであり、同じく請求項2に記載の発明は、その出願前の刊行物である甲第1乃至7号証に記載された発明に基づいて、または、同じく出願前に公然と実施された発明である甲第8号証に基づいて、容易に発明できたものであり、それぞれ特許法29条1項または2項の規定に該当し、同法123条1項2号の規定により、その特許は無効とすべきものである旨主張する。
1-3.被請求人は、平成13年3月22日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。当該訂正の内容は、本件特許発明の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものである。すなわち、
(a)訂正前明細書の特許請求の範囲の請求項1を削除し、請求項2を新たな請求項1として、「流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯留してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定の制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴とする給水システム。」と訂正、
(b)訂正前明細書の【請求項3】、【請求項4】を【請求項2】、【請求項3】に繰り上げ、
(c)訂正前明細書の段落【0012】の記載を、「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯留してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定の制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴としている。」と訂正、
(d)訂正前明細書の段落【0013】の記載を削除、
(e)訂正前明細書の段落【0014】1行の「請求項3記載の」との記載を「請求項2記載の」と訂正、
(f)訂正前明細書の段落【0015】1行の「請求項4記載の」との記載を「請求項3記載の」と訂正、
(g)訂正前明細書の段落【0016】【発明の実施の形態】1行の「請求項1〜3記載の」との記載を「請求項1、2記載の」と訂正、
(h)訂正前明細書の段落【0035】【発明の実施の形態2】1行の「請求項4記載の」との記載を「請求項3記載の」と訂正、
(i)訂正前明細書の段落【0038】【発明の実施の形態3】1行の「請求項4記載の」との記載を「請求項3記載の」と訂正、
(j)訂正前明細書の段落【0040】の【発明の実施の形態4】との記載を【発明の実施に相当しない形態4】と訂正、
(k)訂正前明細書の段落【0048】1行の「請求項3及び4記載の」との記載を「請求項2及び3記載の」と訂正、
(l)訂正前明細書の【図面の簡単な説明】の【図1】1行の「請求項1〜3記載の」との記載を「請求項1、2記載の」と訂正、
(m)訂正前明細書の【図面の簡単な説明】の【図5】、【図6】1行の「請求項4記載の」との記載を「請求項3記載の」と訂正、
(n)訂正前明細書の【図面の簡単な説明】の【図8】1行の「水位検出器の変形例を備えた」との記載を「発明の実施に相当しない」と訂正、
(o)訂正前明細書の「図面の簡単な説明」の【符号の説明】の「51超音波発振器(水位検出器)」との記載を削除、
(p)訂正前明細書の段落番号【0014】〜【0049】を【0013】〜【0048】と訂正、しようとするものである。
2.訂正の可否についての判断
2-1.上記訂正事項について検討すると、訂正事項(a)における訂正前明細書の請求項1の削除は特許請求の範囲の減縮に相当するものである。また、訂正事項(a)の新たな請求項1は訂正前明細書の請求項2に記載された発明の「導水設備」を「給水元管」に、「水」を「市水」に各々限定し、さらに「ポンプにより」との構成を付加するものであるが、かかる構成は訂正前明細書に記載されていたものであるから、当該訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。また、訂正事項(b)乃至(p)は訂正事項(a)に伴い明細書の記載の平仄を合わせるものであって、明りょうでない記載の釈明に該当する。
2-2.したがって、平成13年3月22日付け訂正は、特許法134条2項及び同条5項で準用する同法126条2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
なお、請求人は、平成13年9月3日付弁駁書において上記訂正に関し、特許法36条6項2号違反を根拠に訂正事項(a)は同法134条5項で準用する同法126条4項の規定に適合しないから訂正は認めるべきではない旨の主張をするが、本件審判請求が適用される平成11年法律41号による改正特許法134条5項の規定は、同法123条の審判の請求がされていない請求項の訂正につき126条4項所定の要件の判断を行うという趣旨である。
3.本件特許発明に対する判断
3-1.本件特許発明
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、本件特許発明という。)は特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯留してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴とする給水システム。」
3-2.引用例
請求人の提出した甲第3号証(特開昭59-60516号公報、以下引用例1という。)に、「第1図は本発明を利用した送配水施設及び制御装置の一例を示す図であり、この例では上水道の送配水系を示している。図において1は浄水場、2、6は管路、3は流入弁、4はポンプ井である。管路2は浄水場1とポンプ井4とをつなぐもので、管路2のポンプ井4側に浄水場1からポンプ井4へ流入する水の量を調整するために流入弁3を設けてある。また5はポンプ井4の水を管路6を介して配水池7に揚水するためのポンプ、8は配水池7より給水を受ける需要家である。9は前記流入弁3の開度を検出する流入弁開度検出器、10は前記井4の水位を検出して水位検出信号を出力するポンプ井水位検出器、11は前記配水池7の水位を検出し、水位検出信号を出力する配水池水位検出器、」(2頁左上欄12行乃至右上欄7行)、「このような構成において、水は浄水場1から管路2、流入弁3を通り自然流下でポンプ井4へ送水される。そして、ポンプ井4よりポンプ5によって管路6を通り配水池7へ揚水され、そして、この配水池7より需要家8へと配水される。」(2頁左下欄8行乃至13行)、「ポンプの吐出量が変化することによるポンプ井4の水位の変動の制御は、ポンプ井水位検出器10と流入弁開度検出器9により検出されたプロセス量をポンプ井水位制御ブロック14へ入力し、設定データ入力装置13より与えられる現時刻における水位目標値に対し現在の水位との差から必要な流入弁開度を求め、この開度となるように制御出力を流入弁に与えて流入量を調整することにより行う。」(2頁右下欄4行乃至12行)と記載されていることが認められる。
上記引用例1の記載によれば、引用例1はポンプ井と需要家との間に配水池を介在させるというものであるが、引用例1の配水池で行われている制御内容、すなわち、配水池水位検出器により配水池の水位を検出し、配水池の目標水位を維持するに必要なポンプ運転台数を決定するという制御と、ポンプ井で行われている制御内容、すなわち時刻別にポンプ井の水位目標値を設定し、各時刻毎に設定水位目標値を得て、ポンプ井の水位をこの水位目標値に維持するようにポンプ井への流入弁による給水量を決定するという制御とは別個独立した制御であるから、その発明の認定に当たってポンプ井と配水池とを一体不可分のものとして捉えなければならないという性格のものではない。
他方、訂正明細書の「受水槽1の底部近傍には吸込み管15を介して揚水ポンプ16が接続され、該揚水ポンプ16は駆動モータ17に連動連結し、該駆動モータ17により回転駆動される。揚水ポンプ16の吐出部には上方に延びる揚水管20が接続されている。一方マンション等の建築物Tの屋上には高置水槽21が設置されており、該高置水槽21には上記揚水管20の先端部が上方から開口している。高置水槽21の底部には下方に延びる給水管23が接続され、該給水管23の途中に例えば各階毎に給水栓25が設けられている。」(段落【0017】)との記載によれば、受水槽と給水栓等の末端部に高置水槽を介在するものも本件特許発明の実施例とするものといえるところ、本件特許発明は、受水槽と給水栓等の末端部との間に何らの設備も介在させないというものである。
そうであれば、引用例1には、本件特許発明との対比の限度で、「流入弁を有する管路から供給される上水を貯留してポンプにより需要家に供給するポンプ井を備えた給水システムにおいて、ポンプ井内の水位を検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉しポンプ井内の水位を所定水位とする制御装置とを備え、制御装置は、時間帯により異なるポンプ井水位目標値となるようにしており、該水位検出器は、ポンプ井の上部に設けられて水位を検知する水位検出器である給水システム。」との発明(以下、引用例1発明という。)が開示されていると認めることができる。
同じく、請求人が提出した甲第1号証(特開昭53-38883号公報、以下、引用例2という。)に、「循環通路3のバーナ入口側には液面検出器13が設けられている。液面検出器13はダイヤフラムからなる受圧部材14を循環通路3と連結路15にて連通した操作室16に臨ませると共にその反対側にばね17を作用させ、受圧部材14の中央部から操作室16の反対側へ延びる応動部材18に光源19を装着すると共にこの光源19をカバー20で覆ってその孔21から光線22が一方向のみに放射されるようにし、更に受圧部材14の動作方向と平行な方向へ延びる光導電セル23およびその両側にそれぞれ沿わせた金属被膜抵抗24および鋼板からなる電極板25で形成した信号電圧発生器26を設けて構成されている。」(2頁右上欄7行乃至左下欄4行)、「浴槽1の水量即ち水位の変化に伴ってその底近くに接続された循環通路3の水圧が変化し、このため操作室16に臨んだ受圧部材14が圧力変化に対応して移動し、これと一体の光源19からの光線22の光導電セル23への照射個所22aが変動する。従って水位に応じて信号電圧発生器26の分圧比が連続的に変化し、その結果生じた連続的な電圧変動が比較制御部31へ印加される。」(2頁左下欄15行乃至右下欄7行)、「以上のように本発明は例えば光導電セルを用い浴槽、各種の液体容器、貯水池更に河川等の液面変化を直接または間接に無接点で電気的に検出するものであるから、」(4頁右上欄1行乃至4行)と記載されていることが認められる。
同じく、請求人の提出した甲第2号証(特開昭58-26131号公報、以下、引用例3という。)に、「本発明は、ポンプにより揚水された水を配水管路を介して需要家側へ供給する配水塔の水位制御装置に関するものであり、更に詳しくは、配水塔の設定水位を配水流量に依存して自動的に変えることにより、配水管末端需要家側における水圧が常に必要最小限の一定圧になるように制御する水位制御装置に関するものである。」(1頁右欄9行乃至15行)、「第2図は本発明の一実施例を示すブロック図である。同図において、複数台のポンプ1(図では1台しか図示していない)を並列に運転しポンプ井2から配水塔3へ揚水され、ポンプは回転数制御または吐出弁制御を受けて任意流量に揚水流量を設定できるものとする。流量によって、運転台数の変更も可能であるとする。制御装置は、低域フィルター4、水位設定器5、水位調節器6、流量調節器7、ポンプ台数調節器8から成り、配水塔水位検出器9、配水流量検出器10,ポンプ吐出量検出器11からの信号を入力として、ポンプ回転数または吐出弁開度の指令値をポンプ1へ向けて出力する。」(2頁右下欄4行乃至16行)、「第3図に示すように(2)式で演算して配水流量Qに応じて設定水位を求める本発明方式により、配水流量Qが小のとき、設定水位Hが従来より小で済み、ポンプ動力の削減につながると共に、配水管路の不必要な高圧を防ぐ事ができる。」(3頁左下欄1行乃至6行)と記載されていることが認められる。
同じく、請求人の提出した甲第7号証(「上下水道機材辞典」上下水道機材辞典編集委員会編集、株式会社産業調査会発行、昭和53年7月20日、以下、引用例4という。)の370頁乃至372頁に「1.4レベル計」との標題のもとに、フロート式レベル計、偏位式レベル計、ダイヤフラム式、エアパージ式、静電容量式レベル計、超音波レベル計、電極式レベル計の各レベル計の原理、性能、特徴、用法が記載されていることが認められる。
3-3.対比・判断
本件特許発明と引用例1発明を対比するに、先ず、両者で使用されている用語につきそれらの技術的意義ないし機能面から見ると、引用例1発明の「管路」、「上水」、「需要家」、「ポンプ井」はそれぞれ本件特許発明の「給水元管」、「市水」、「給水栓等の末端部」、「受水槽」に相当するといえるから、そうすると、両者は「流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯留してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定とする制御装置とを備えた給水システム。」の点で一致し、
(1)本件特許発明の水位検出器が受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に連続検知するものであるのに対し、引用例1発明の水位検出器が受水槽内の上部に設けられ、その検知態様について記載するところがない点、
(2)本件特許発明の制御装置が水位を所定の制御水位範囲に維持し、給水栓側の需要量に応じて水位設定するのに対し、引用例1発明の制御装置が時間帯により異なる受水槽水位目標値となるように受水槽水位を制御するものである点、でそれぞれ相違する。
そこで、前記各相違点について検討する。
A.相違点(1)について
前示引用例4の記載によれば、本件特許発明の出願前に、様々な種類のレベル計が液面の変位を測定するためにそれぞれの特徴、用法に従って使用されていたものということができる。
ところで、訂正明細書の「受水槽1の水位検知のため図11のような複数本の寸法の異なる電極を使用し、それらの検知信号により制御盤26内のリレー回路を介して流入弁3の開閉あるいは警報器の作動を制御するシステムでは次のような課題を生じる。」(段落【0007】)との記載によれば本件特許発明が水圧により無段階に連続検知できる水位検出器を採用したのは引用例4に示されている電極式レベル計(ポンプ制御のように、1水槽で数カ所の液位を検出する時は、各液位に相応した長さの電極を検出点に相応して増して測定する。(372頁左欄26行乃至28行))が有する問題点、すなわち、電極棒により各設定水位は固定式になるため、一旦設定すると変更ができず、不便であること(訂正明細書段落【0008】)、各種設定水位に応じたそれぞれの長さを有する電極棒を作り、受水槽にセットするため、製造時の長さの間違いあるいは取付け時のミス(同段落【0009】)等の問題点を回避するためと認められるが、これらの問題点は電極式レベル計の原理・構造に依拠する自明の問題点であって、給水システムの受水槽に電極式レベル計を用いた場合においてもこれらの問題点が存在することは当業者が当然のこととして認識できるものということができ、そうであれば、かかる問題点を回避するため電極式レベル計に代わるものとして他のレベル計の採用を試みるのは当業者が容易に着想するところというべきである。
しかるところ、前示引用例4にダイヤフラム式レベル計として「(1)原理 タンクの側面にダイヤフラムを直接フランジで取付け、ダイヤフラムに加わるレベルヘッドを圧力として検出する。検出した圧力は、ストレンゲージなどの変換部で液位に比例した計測信号として発信する。」(370頁右欄32行乃至36行)と記載されており、また、前示引用例2に記載されているように水圧により水位(液位)を無段階に検知する水位検出器(但し、引用例2は比較制御部を除く部分)は本件特許発明の出願前に公知の水位検出器であり、そして、引用例1発明には、この水位検出器の適用を妨げるべき技術的理由が存在するものともいえない。
また、かかる水位検出器は、その検出原理上受水槽において制御すべき水位の範囲の下限値が検出できる部位に設けられなければならないのであるから、結局その配設部位は制御水位範囲によって定まることになり、そして、受水槽内の制御水位範囲は当業者の任意の設定事項といえるものである。
そうすると、引用例1発明において水位検出器として水圧により水位を無段階に検出できる水位検出器を採用し、その配設部位を受水槽内の底部とすること、すなわち、本件特許発明の前記相違点(1)にかかる構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。
B.相違点(2)について
引用例3には、前示のとおり配水流量(需要家側の需要量を意味することは明らかである。)に応じて設定水位を自動的に変え、水位を所定の制御水位範囲に維持するという本件特許発明と同様の制御内容が記載されている。
もっとも、引用例3は配水塔においてその制御内容を実行し、また、所定の制御水位範囲を維持するための操作器がポンプである点で受水槽においてその制御内容を実行し、流入弁を操作器とする本件特許発明とは異なるものではあるが、しかしながら、配水塔も受水槽も需要家に給水するため市水を貯留する設備であるとの観点、ポンプも流入弁もそのような貯留設備に対し給水するためのものであるとの観点では同じであるから、引用例3の前記制御内容を、受水槽、流入弁を備えた引用例1発明に適用しようとすることは容易に着想できることである。
しかるに、引用例1発明には引用例3の前記制御内容を適用することが困難であるとする技術的理由も見当たらず、かかる適用に当たっては受水槽の水位を制御水位範囲に維持すべく流入弁を操作して足りるのであるから、そうすると、本件特許発明の相違点(2)にかかる構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。
そして、本件特許発明が奏する「(1)受水槽1の水位を水圧等によって無段階に連続的に検出する水位検出器を備えているので、従来の複数の電極棒による固定式の水位設定に比べて水位の設定及び変更を任意に簡単にでき、各種需要に応じた給水が容易に可能となる。」(訂正明細書段落【0043】)、「(2)受水槽1の水位を水圧によって無段階に連続的に検出する水位検出器を備えているので、従来のように多数の電極棒を利用した固定式水位検出器を備える場合に比べ、設置が容易であると共に、製造時の長さの間違いあるいあは取付け時のミス等が発生する心配はなく、それらによる誤信号をなくすことができる。」(同段落【0044】)、「すなわち水位設定が給水装置メーカーの工事範囲となり、設置ミス等のトラブルの発生が少なくなる。またたとえ事故が生じても給水装置メーカーの一元的サービスによるので、それの修理あるいは改善にかかる手間等を節約できる。すなわち給水装置の事故処理は一刻を争い、迅速な処理が要求されるが、これに答えることができる。」(同段落【0045】)、「(3)金属製の電極棒を使用する従来例に比べ、腐食、汚染等により誤動作が生じる可能性は小さく、メンテナンスにあまり手間がかからない。」(同段落【0046】)との作用効果も当業者が引用例1発明乃至引用例4に記載された発明に基づいて予測できる範囲のものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明は、引用例1、2、3、7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当する。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
給水システム
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯溜してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定の制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴とする給水システム。
【請求項2】 流入弁を有する導水設備から供給される水を貯溜して給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽と給水栓等の末端部との間に、受水槽からの水を貯溜して給水栓等に供給する高置水槽と、上記受水槽から高置水槽へ揚水する揚水ポンプとを備え、受水槽及び高置水槽には水位を無段階に連続検出する水位検出器を備え、各槽内の設定水位を記憶している設定水位記憶手段と、水位検出器からの水位信号が設定水位になっているかを判別する比較判別手段と、該比較判別手段の判別に基づいて、導水設備あるいは揚水ポンプ等の水位制御機器に制御信号を出力する制御信号出力手段を有する制御装置を備え、かつ制御装置には遠隔から水位設定しうる遠隔操作部を接続していることを特徴とする給水システム。
【請求項3】 流入弁を有する導水設備から供給される水を貯溜して給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽と給水栓等の末端部との間に、受水槽から給水栓等に水を直接圧送する直圧式ポンプを備え、受水槽には水位を無段階に連続検出する水位検出器を備え、受水槽内の設定水位を記憶している設定水位記憶手段と、水位検出器からの水位信号が設定水位になっているかを判別する比較判別手段と、該比較判別手段の判別に基づいて、導水設備あるいは直圧式ポンプ等の水位制御機器に制御信号を出力する制御信号出力手段を有する制御装置を備え、かつ制御装置には遠隔操作部を接続していることを特徴とする給水システム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は流入弁を有する導水設備から供給される水を貯溜して給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
現在実施されているこの種の給水システムとしては、図10に示す高置水槽式、図12に示すポンプ直圧式等がある。
図10の高置水槽式の給水システムにおいて、市水管等の給水元管2から市水が供給される受水槽1と、ビル等屋上に配置される高置水槽21を備え、受水槽1と高置水槽21は揚水ポンプ16及び揚水管20を介して接続されており、高置水槽21から下方に給水管23が設けられ、給水管23の途中に順次給水栓25が設けられている。
駆動モータ17により揚水ポンプ16を駆動し、それにより受水槽1から高置水槽21に水を送って高置水槽21内に一旦水を溜め、そこから重力により各給水栓25に給水するようになっている。
【0003】
図12に示すポンプ直圧式給水システムでは高置水槽はなく、圧力調整型ポンプ16aにより所定の圧力で直接給水管23に水を供給するようになっている。
【0004】
上記いずれの構造においても、受水槽1内の水位制御のために、流入弁3にこれを開閉するための給水電磁弁10を設けると共に、各種水位を検知する機構として、図11に示すように複数の電極棒P1〜P8を受水槽1内に上方から挿入している。各電極棒P1〜P8は各種設定用にそれぞれ異なった寸法に形成され、それぞれの下端部が検知位置になっている。最も高位置を検知する電極棒、すなわち最も短い電極棒P1は満水検知用であり、そしてP2からP8まで順次長くなっている。電極棒P2は流入弁閉用、電極棒P3は流入弁開用、電極棒P4は空転防止解除用、電極棒P5は減水警報用、電極棒P6は空転防止用、電極棒P7及びP8はアース用である。
【0005】
各電極棒P1〜P8は制御盤26内のリレー回路に接続し、各電極棒による検知信号によりリレー回路を作動させて、流入弁3の開閉、警報器の作動あるいはポンプ16(16a)の発停制御を行なうようになっている。
【0006】
また図10の高置水槽式では、高置水槽21内にも上記同様な複数本の電極棒が挿入され、各電極棒の検知に対応してリレー回路を作動させ、揚水ポンプ16を発停させるようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
受水槽1の水位検知のために図11のような複数本の寸法の異なる電極を使用し、それらの検知信号により制御盤26内のリレー回路を介して流入弁3の開閉あるいは警報器の作動を制御するシステムでは次のような課題が生じる。
【0008】
(1)電極棒により各設定水位は固定式になるため、一旦設定すると変更ができず、不便である。たとえば休日が続く時あるいは集合住宅で入居開始早々時等には、水質劣化防止のため受水槽の貯溜量を減らしたい必要があるが、上記のように電極棒の設定水位が固定式であると、これに対応できない。せいぜい高低2段階に電極棒を設置することぐらいであるが、この手段だと自由度があまり増えない割には、電極棒の数が増え、工事の手間が増加する。
【0009】
(2)各種設定水位に応じたそれぞれの長さを有する電極棒を作り、受水槽1にセットするため、製造時の長さの間違いあるいは取付け時のミス、たとえば番号を間違えて結線するようなミスが生じ易い。特に給水システムの施工においては、ポンプ、制御盤等からなる給水装置は給水装置メーカー等の納入を受け、電極棒の設置や流入弁3の設置と共に施工業者が行なっており、上記施工ミスが多く発生している。
上記のように電極棒の設置ミス等があると、制御盤から誤った指示が出力されるので、たとえば空転防止水位でもポンプが停止せず、ポンプの焼付きが生じたり、あるいは給水元管から市水が導入されない等の不具合が生じる。
【0010】
(3)電極棒の設置は給水ポンプメーカーとは無関係のところで行なわれるので、事故が生じてもそれを修理あるいは改善するのに手数と多くの時間がかかる。すなわち給水装置の事故処理は一刻を争い、迅速な処理が要求されるのに、これに答えることができない場合が多い。
【0011】
(4)電極棒は一般に金属であり、腐蝕、汚染等により誤動作が生じる可能性が大きく、定期的なメンテナンスが必要であり、メンテナンスに手間がかかる。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯溜してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記の流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定の制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴としている。
【0013】
請求項2記載の発明は、流入弁を有する導水設備から供給される水を貯溜して給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽と給水栓等の末端部との間に、受水槽からの水を貯溜して給水栓等に供給する高置水槽と、上記受水槽から高置水槽へ揚水する揚水ポンプとを備え、受水槽及び高置水槽には水位を無段階に連続検出する水位検出器を備え、各槽内の設定水位を記憶している設定水位記憶手段と、水位検出器からの水位信号が設定水位になっているかを判別する比較判別手段と、該比較判別手段の判別に基づいて、導水設備あるいは揚水ポンプ等の水位制御機器に制御信号を出力する制御信号出力手段を有する制御装置を備え、かつ制御装置には遠隔から水位設定しうる遠隔操作部を接続していることを特徴としている。
【0014】
請求項3記載の発明は、流入弁を有する導水設備から供給される水を貯溜して給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽と給水栓等の末端部との間に、受水槽から給水栓等に水を直接圧送する直圧式ポンプを備え、受水槽には水位を無段階に連続検出する水位検出器を備え、受水槽内の設定水位を記憶している設定水位記憶手段と、水位検出器からの水位信号が設定水位になっているかを判別する比較判別手段と、該比較判別手段の判別に基づいて、導水設備あるいは直圧式ポンプ等の水位制御機器に制御信号を出力する制御信号出力手段を有する制御装置を備え、かつ制御装置には遠隔操作部を接続していることを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は請求項1、2記載の発明が適用される高置水槽式の給水システムの配管略図を示しており、この図1において、受水槽1には市水管等の給水元管2が開口し、該給水元管2にはこれを開閉するピストン開閉式流入弁3が設けられている。流入弁3は上部水圧室3aを備え、該水圧室3aが加圧されると図示しないピストンを押し下げて流入弁3を閉じ、反対に水圧室3aが大気等に開放されるとピストンが上昇して流入弁3を開くようになっている。
【0016】
上部水圧室3a内の水圧を制御するために水圧室3aは給水元管2の上流側及び排出用枝管7に連通しており、枝管7の途中には電磁弁10が備えられ、枝管7の端部は受水槽1に上方から開口している。即ち電磁弁10はそのソレノイド10aを通電することにより開き、これにより上部水圧室3aの圧力が抜かれてピストンが上昇し、流入弁3は開く。一方ソレノイド10aが非通電状態になると電磁弁10は閉じ、それにより枝管7は封鎖されて水圧室3aの水圧は給水元管2からの水圧により上昇し、ピストンを押し下げて、流入弁3を閉じる。
【0017】
受水槽1の底部近傍には吸込み管15を介して揚水ポンプ16が接続され、該揚水ポンプ16は駆動モータ17に連動連結し、該駆動モータ17により回転駆動される。揚水ポンプ16の吐出部には上方に延びる揚水管20が接続されている。一方マンション等の建築物Tの屋上には高置水槽21が設置されており、該高置水槽21に上記揚水管20の先端部が上方から開口している。
高置水槽21の底部には下方に延びる給水管23が接続され、該給水管23の途中にたとえば各階毎に給水栓25が設けられている。
【0018】
上記揚水ポンプ16、駆動モータ17及び水位制御のための制御盤26が1つの給水装置ユニットとしてユニット台等に組み付けられている。受水槽1の底部には受水槽1内の水圧を計測することにより水位0から満杯まで無段階に連続的に水位を検知する水圧式の受水槽用水位検出器(水位伝送器)30が設けられ、高置水槽21の底部には高置水槽21内の水圧を計測することにより水位0から満杯まで無段階に連続的に水位を検知する水圧式の高置水槽用水位検出器(水位伝送器)31が設けられており、上記各水位検出器30,31は制御盤26内の制御装置32に接続され、各水位検出器30,31で計測した水位を電気信号に変換して制御装置32に入力する。
【0019】
制御装置32のブロック図を示す図4において、制御装置32はCPU35及び受水槽用,高置水槽用水位設定記憶手段43,44を有し、CPU35は受水槽用,高置水槽用比較判別手段45,46及び制御信号出力手段47等からなっている。
【0020】
受水槽用水位設定記憶手段43には、たとえば図2に示すように満水警報水位P1、流入弁閉水位P2、流入弁開水位P3、空転防止解除水位P4、減水警報水位P5及び空転防止水位P6が順に設定され、記憶されている。
【0021】
高置水槽用水位設定記憶手段44には、たとえば図3に示すように満水警報水位Q1、ポンプ停止水位Q2、ポンプ運転開始水位Q3及び減水警報水位Q4が順に設定され、記憶されている。
【0022】
図4の受水槽用比較判別手段45は受水槽用水位検出器30から入力された水位信号と受水槽用水位設定記憶手段43に記憶された各設定水位を比較し、いずれの設定水位に一致してそれを越えたかあるいはそれより下ったかを判別し、判別した設定水位に応じて警報器38、駆動モータ17あるいは電磁弁10に対して制御信号出力手段47から各種制御信号を発信するようにプログラムされている。すなわち満水警報水位P1を越えた場合には警報器38に満水警報用の作動信号を送り、流入弁閉水位P2を越えた場合には、電磁弁10にそのソレノイド10aを非通電として電磁弁10を閉じる制御信号を送り、流入弁開水位P3より下った場合には、電磁弁10にそのソレノイド10aを通電させて電磁弁10を開く制御信号を送り、空転防止解除水位P4より下った場合には、ポンプ駆動用モータ17にこれを運転状態とする制御信号を送り、減水警報水位P5より下った場合には警報器38に減水警報用の作動信号を送り、空転防止水位P6より下った場合にはポンプ駆動用モータ17に停止用制御信号を送るようになっている。
【0023】
高置水槽用比較判別手段46は高置水槽用水位検出器31から入力された水位信号と高置水槽用水位設定記憶手段44に記憶された各設定水位を比較し、いずれの設定水位に一致してそれを越えたかあるいはそれより下ったかを判別し、判別した設定水位に応じて警報器38あるいは駆動モータ17に対して制御信号出力手段47から各種制御信号を発信するようにプログラムされている。すなわち満水警報水位Q1を越えた場合には警報器38に満水警報用の作動信号を送り、ポンプ停止水位Q2を越えた場合にはポンプ駆動用モータ17に停止用制御信号を送り、ポンプ運転開始水位Q3より下った場合にはポンプ駆動用モータ17に作動開始用制御信号を送り、減水警報水位Q4より下った場合には警報器38に減水警報用の作動信号を送るようになっている。
【0024】
なお警報器38における受水槽用満水警報、受水槽用減水警報、高置水槽用満水警報及び高置水槽用減水警報はそれらが区別できるように、それぞれ異なったランプあるいは音等で警報を発するようになっている。
【0025】
図4において、上記各水位設定記憶手段43,44は遠近切換手段42を介して遠隔操作手段40と、制御盤上の現場操作手段41に接続されており、切換手段42を切り換えることにより、操作現場と遠隔場所のいずれからでも受水槽用及び高置水槽用の各種設定水位を設定し、あるいは変更調節することができるようになっている。
【0026】
尚枝管7の先端部には上下揺動自在なフロート弁19を備え、該フロート弁19を受水槽1に浮かべ、受水槽1が満杯になった時には上昇して枝管7を閉じるようになっている。すなわちたとえ電磁弁10が故障等により開状態のままであっても、受水槽1が満水になった時は、フロート弁19が押し上げられることにより枝管7が閉じ、それにより上部室3aの圧力を上昇させて流入弁3を閉じるようになっている。
【0027】
制御装置32内の各記憶手段43,44に記憶される各種設定水位は、中央コントロ-ル室等から遠隔操作手段40によりあるいは現場において現場操作手段41により任意の水位に設定される。
【0028】
そして受水槽1内の水位の変動に対して水位検出器30が各種設定水位を検知すると、検知した設定水位に応じて、警報器38により警報を発したり、電磁弁10の開閉により流入弁3を開閉したり、駆動モータ17を作動あるいは停止をしたりして、受水槽1内が常に一定範囲内の水量を保つように制御する。
【0029】
たとえば受水槽1内に水が減少して流入弁開水位P3より下がると流入弁3を開き、受水槽1に給水するが、さらに下って減水警報水位P5にくると警報器38を作動させて減水警報を発する。そしてさらに下って空転防止水位P6より下がると、ポンプ16が運転されている場合はこれを停止する。
【0030】
反対に受水槽内の水が上昇する場合、空転防止解除水位P4を越えるとポンプ運転を再開し、流入弁閉水位P2を越えると流入弁3を閉じ、さらに上昇して満水警報水位P1まで達すると警報器38を作動させて、満水警報を発する。
【0031】
また高置水槽21の変動に対して水位検出器31が各種設定水位を検知すると、検知した設定水位に応じて、駆動モータ17を作動あるいは停止したり、警報器38を作動して減水警報あるいは満水警報を発して、高置水槽21内が常に一定範囲内の水量を保つように制御する。
【0032】
なお上記のように手動で設定する場合の他に次のように自動的に設定するようにすることもできる。
たとえば事務所などでは土、日曜日は需要が極端に下がるので、1週間の水位パターンとして、月曜日〜金曜日用の設定水位と、土、日曜日用の設定水位の2種類を中央コントロール室の制御部に記憶させておき、週間タイマー等を用いて自動的に選択し、遠隔操作部40を介して制御装置32内の各設定水位を変更する。
【0033】
また多目的ビル等では毎日の貯水量等を自動的に変更したいことがあるが、これを中央コントロール室の制御部からの遠隔指令により需要に応じて水位設定する。たとえば毎日の建物の入場者数とか在館者数とか人が増減する要素によって水位設定をいくらにするかを中央コントロ-ル室側(1次側)のCPU回路などで決定し、この信号を遠隔指令によって制御盤の制御装置32に送信し、水位を設定する。これだと毎日の需要量がどのように変化しても、1次側で対応できるので、その遠隔指令を受信することにより希望の水位設定が自動的に行なわれる。
【0034】
【発明の実施の形態2】
図5は請求項3記載の発明を適用したポンプ直圧式給水システムを示しており、受水槽1の底部に接続される水ポンプとして吐出圧力を制御できる圧力調整型ポンプ16aを備えている。圧力調整の手段としては、可変速モータを利用したり、インバータ制御を利用したりその他すきま制御、流体継手など各種手段を利用できる。
上記圧力調整型ポンプ16aの吐出部から給水管23が上方に立ち上っており、その途中に順に給水栓25が備えられている。
このようなポンプ直圧式給水システムに前記図1と同様な受水槽用の水位検出器30を備え、そして制御盤26内には図7で示すような各種手段を有する制御装置32が備えられている。
【0035】
図7の制御装置32は、前記図4で示す制御装置と比較して、高置水槽用設定記憶手段と判別手段が備えられていないだけで、その他の手段、すなわち遠近切換手段42,受水槽用水位設定記憶手段43、受水槽用水位比較判別手段45、及び制御信号発信手段47は同様に備えられている。
また受水槽用水位設定記憶手段43には、前記図2で示すような各種設定水位が記憶されている。受水槽1の水位制御については、図4で説明した内容と同様である。
【0036】
なおポンプ16aの運転制御に関しては、たとえばポンプ16aの吐出量及び給水管23の圧力を検知する検知機構を備え、吐出量及び圧力に応じてポンプ16aを発停させ、あるいはその吐出圧力を制御する。
【0037】
【発明の実施の形態3】
図6は請求項3記載の発明を適用した圧力タンク式直圧式給水システムを示しており、受水槽1の底部に接続される水ポンプ16を備え、ポンプの下流側に圧力タンク52を備え、該圧力タンク52内に蓄積される圧力によって給水管23を介して給水栓25に直接給水する構造である。そのほかの構造は図5と同様であり、受水槽用の水位検出器30を備え、そして制御盤26内には図7で示すような各種手段を有する制御装置32が備えられている。
【0038】
ポンプ16の運転制御に関しては、圧力タンク52内の圧力を検知する圧力スイッチとポンプ流量を検知するフロースイッチを備えている。水を使用するとタンク内圧力が低下するが、圧力タンク52内の圧力がポンプ始動圧力まで下がると圧力スイッチによりポンプ16を始動する。また水を使用しなくなり圧力タンク内の圧力が上昇した場合、圧力スイッチ停止圧力以上となり給水量がフロースイッチ作動量以下になると、ポンプは停止する。
受水槽1の水位制御に関しては、前記図4で説明した場合と同様である。
【0039】
【発明の実施に相当しない形態4】
水位検出器としては図8に示すような超音波発信器50,51を利用し、受水槽1及び高置水槽21の各水位を、水位0から満杯まで無段階に検出するようにすることもできる。なお図8において、図1と同様の部品には同じ番号を付している。
【0040】
【発明の実施の形態5】
図9は受水槽1の変形例を示しており、2つの分槽1a,1bを有する2槽式の受水槽であり、このような受水槽にはたとえば切換弁53を介して1個の水位検出器30を備えることができる。即ち一方の分槽1aを利用している期間においては、他方の分槽1bの切換弁53を閉めておき、他方の分槽1bを利用している期間においては、一方の分槽1aの切換弁53を閉めておく。
【0041】
【その他の実施の形態】
前記実施の形態1に示す高置水槽式の給水システムにおいて、図4では1つの制御装置32内に高置水槽用の制御用各種手段と、受水槽用の制御用各種手段を内蔵している例を示しているが、図7のような受水槽専用の制御装置とこれと同様な高置水槽専用の制御装置をそれぞれ独立に準備して、それらを並列に備えるようにしてもよい。このように各水槽専用の同様の制御装置を備えるようにすると、コスト的に有利である。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように本願発明によると次のような利点がある。
【0043】
(1)受水槽1の水位を水圧等によって無段階に連続的に検出する水位検出器を備えているので、従来の複数の電極棒による固定式の水位設定に比べて水位の設定及び変更を任意に簡単にでき、各種需要に応じた給水が容易に可能となる。
【0044】
(2)受水槽1の水位を水圧等によって無段階に連続的に検出する水位検出器を備えているので、従来のように多数の電極棒を利用した固定式水位検出器を備える場合に比べ、設置が容易であると共に、製造時の長さの間違いあるいは取付け時のミス等が発生する心配はなく、それらによる誤信号をなくすことができる。
【0045】
すなわち水位設定が給水装置メーカーの工事範囲となり、設置ミス等のトラブルの発生が少なくなる。
またたとえ事故が生じても給水装置メーカーの一元的サービスによるので、それの修理あるいは改善にかかる手間等を節約できる。すなわち給水装置の事故処理は一刻を争い、迅速な処理が要求されるが、これに答えることができる。
【0046】
(3)金属製の電極棒を使用する従来例に比べ、腐食、汚染等により誤動作が生じる可能性は小さく、メンテナンスにあまり手間がかからない。
【0047】
(4)請求項2及び3記載の発明では、上記各効果に加え、遠隔操作部により遠隔操作可能としているので、現場に出向かなくとも中央制御室等から水位設定や設定替え作業が容易に行なえる。
【0048】
なお図示しないが、工場の給水設備などのように平面的な給水配管及び給水栓に対しても、上記と全く同様に利用し得るのはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本願請求項1、2記載の発明を適用した高置水槽式給水システムの配管図である。
【図2】 受水槽用設定水位の一例を示すグラフである。
【図3】 高置水槽用設定水位の一例を示すグラフである。
【図4】 図1の制御装置のブロック図である。
【図5】 本願請求項3記載の発明を適用したポンプ直圧式給水システムの配管図である。
【図6】 本願請求項3記載の発明を適用した圧力タンク直圧式給水システムの配管図である。
【図7】 図5及び図6の給水システムに備えられる制御装置のブロック図である。
【図8】 発明の実施に相当しない給水システムの配管図である。
【図9】 受水槽の変形例を示す断面図である。
【図10】 従来の高置水槽式給水システムの配管図である。
【図11】 従来の受水槽用水位検出器を示す断面図である。
【図12】 従来のポンプ直圧式給水システムの配管図である。
【符号の説明】
1 受水槽
2 給水元管
3 流入弁
10 電磁弁
16 揚水ポンプ
16a 圧力調整型ポンプ
21 高置水槽
23 給水管
25 給水栓
26 制御盤
30 水位検出器
31 水位検出器
 
訂正の要旨 訂正の内容
本件訂正の内容は、特許第2832183号の明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書の通り訂正しようとするものであり、その訂正箇所は下記の通りである。

(1). 特許請求の範囲の減縮を目的として、
【特許請求の範囲】における【請求項1】を削除する。
(2). 特許請求の範囲の減縮を目的として、
【特許請求の範囲】における【請求項2】を【請求項1】として、次の通り訂正する。
「【請求項1】流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯溜してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定の制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴とする給水システム。」
(3). 上記訂正(1)、(2)に付随して、
(3.1) 【請求項3】、【請求項4】を夫々【請求項2】、【請求項3】と訂正し、
(3.2) 【0012】の【課題を解決するための手段】の内容を
「【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、流入弁を有する給水元管から供給される市水を貯溜してポンプにより給水栓等の末端部に供給する受水槽を備えた給水システムにおいて、受水槽内の水位を無段階に連続検知する水位検出器と、該水位検出器から水位信号を受け、この水位信号に対応して上記流入弁を開閉し受水槽内の水位を所定の制御水位範囲に維持する制御装置とを備え、制御装置は、給水栓側の需要量に応じて水位設定するようにしており、該水位検出器は、受水槽内の底部に設けられ水圧により水位を無段階に検知する水位検出器であることを特徴としている。」と訂正し、
(3.3) 【0013】欄を全て削除し、
(3.4) 【0014】1行の「請求項3記載の」を「請求項2記載の」と訂正し、
(3.5) 【0015】1行の「請求項4記載の」を「請求項3記載の」と訂正し、
(3.6) 【0016】【発明の実施の形態】1行の「請求項1〜3記載の」を「請求項1、2記載の」と訂正し、
(3.7) 【0035】【発明の実施の形態2】1行の「請求項4記載の」を「請求項3記載の」と訂正し、
(3.8) 【0038】【発明の実施の形態3】1行の「請求項4記載の」を「請求項3記載の」と訂正し、
(3.9) 【0040】の【発明の実施の形態4】を【発明の実施に相当しない形態4】と訂正し、
(3.10) 【0048】1行の「請求項3及び4記載の」を「請求項2及び3記載の」と訂正し、
(3.11) 【図面の簡単な説明】の【図1】1行の「請求項1〜3記載の」を「請求項1、2記載の」と訂正し、
(3.12) 【図5】、【図6】1行の「請求項4記載の」を「請求項3記載の」と訂正し、
(3.13) 【図8】1行の「水位検出器の変形例を備えた」を「発明の実施に相当しない」と訂正する。
(3.14) 【符号の説明】の「51 超音波発信器(水位検出器)」を削除する。
(3.15) 最後に【0014】〜【0049】を【0013】〜【0048】と訂正する。
審理終結日 2001-11-19 
結審通知日 2001-11-22 
審決日 2001-12-04 
出願番号 特願平8-196107
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (E03B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤原 伸二  
特許庁審判長 大森 蔵人
特許庁審判官 蔵野 いづみ
鈴木 公子
登録日 1998-09-25 
登録番号 特許第2832183号(P2832183)
発明の名称 給水システム  
代理人 大森 忠孝  
代理人 大森 忠孝  
代理人 青山 葆  
代理人 大森 忠孝  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 青山 葆  
代理人 峰 隆司  
代理人 青山 葆  

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