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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1071247 |
審判番号 | 審判1997-15786 |
総通号数 | 39 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-07-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-09-18 |
確定日 | 2003-01-15 |
事件の表示 | 平成 6年特許願第339142号「中国語漢字検索方式」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 7月16日出願公開、特開平 8-185396]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成6年12月29日の出願であって,平成9年7月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年9月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年9月24日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成9年9月24日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成9年9月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 本願補正発明 本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は, 「漢字コードと漢字文字パターンとの対応情報を格納する中国語文字パターンファイルと, アルファベット文字およびJIS規格の標準キーボードにおける特殊記号文字で表現されるピンイン記号と数字で表現される声調記号とによって特定される中国語漢字と漢字コードとの対応情報を格納する中国語漢字ファイルと, 中国語漢字検索処理時に,ピンイン記号を示すアルファベット文字およびJIS規格の標準キーボードにおける特殊記号文字と声調記号を示す数字とを入力し,入力した情報を表示装置に表示するピンイン記号等入力部と, 中国語漢字検索処理時に,前記ピンイン記号等入力部により入力されたアルファベット文字およびJIS規格の標準キーボードにおける特殊記号文字ならびに数字に対応する漢字コードを前記中国語漢字ファイルから読み出す漢字ファイル検索部と, 中国語漢字検索処理時に,前記漢字ファイル検索部により読み出された漢字コードに対応する漢字文字パターンを前記中国語文字パターンファイルから読み出し,その読出しに基づいて検索候補表示情報を表示装置に表示し,その検索候補表示情報に対する選択指定に基づいて検索対象の中国語漢字を確定する文字パターンファイル検索部とを有することを特徴とする中国語漢字検索方式。」 と補正された。 上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「特殊記号文字」について「JIS規格の標準キーボードにおける」との限定を付加するものであって,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-79165号公報(以下「引用例1」という。),特開昭62-47774号公報(以下「引用例2」という。)には,それぞれ,図面とともに下記の事項が記載されている。 2-1 引用例1(特開昭63-79165号公報) (1)「発音入力部と平仄入力部と華字変換部から成る華字入力装置において,同一発音同一平仄を有する華字の選択部を設けたことを特徴とする華字入力装置。」(特許請求の範囲) (2)「本発明の目的は,中国語発音表記を,アルファベット文字の入力キーと,平仄と特殊韻母を入力するキーにより中国語の発音表記記号を入力した後,同一発音同一平仄を有する複数華字から特定華字の選択が可能な華字入力装置を提供することにある。」(1頁右下欄1〜6行) (3)「中国語の発音を表記するには,通常中国式ローマ字が使用されるが,この方式は,アルファベットと,ドイツ語のウムラウトに当たる記号“¨”と,平仄を示す“`”,“´”,“-”,“v”の組合せにより,発音を表示することができるが,華字には,同一発音同一平仄を有するものが複数存在する場合がある。この場合に,複数華字から特定の華字を選択する機構を設けることにより,発音表記により華字を指定する華字入力装置を実現できる。」(1頁右下欄8〜17行) (4)「以下,本発明の一実施例を,第1〜第4図により説明する。第1図に,本発明の華字入力装置の概要図を示すが,華字入力装置は,入力部110,表示部120,華字変換部140より成る。第2図に,入力部110の詳細を示すが,アルファベット入力キー210,“¨”入力キー220,平仄キー230,変換キー240,選択キー250より成る。 次に,第1〜第4図に従い,本発明による,華字への変換方法の詳細を示す。本変換は,中国語の発音表記記号に従って入力し,これを華字に変換するが,この表記方法には数種類ある。本実施例では,中国式ローマ字表記法に従い説明するものとする。今,“毛沢東”を入力する場合には,第4図の項#1に示す通り,まず“M´AO”と中国式ローマ字方式に従って“毛”の中国語発音表記記号を入力部110より入力し発音表記入力の終わった後に,変換キー240が押下されると,発音表記“Mao”を華字変換部140に送り,第3図に示す内部テーブルにより“Mao”に対応する華字“茅”と“毛”の華字コード(4C33)16と(4C54)16を制御部130に返送する。制御部130は,表示部120に入力された発音表記“Mao”を表示した後に,華字変換部140より返送された華字コードに対応した華字“茅”と“毛”を表示すると共に最初に表示した“茅”にアンダラインを付す。オペレータは本表示により,“Mao”に対応する華字が複数存在することを知り,入力したい華字“毛”が二番目に表示されていることから,選択キー250を押下し,アンダラインを“毛”の表示に移した後変換キー240を押下する。制御部130は,上記操作により“毛”の華字が選択されたことを知り,表示部120に“毛”の華字のみ表示する。以下同様に第4図項#2,3に示したように“沢”,“東”と入力することができる。」(1頁右下欄19行〜2頁右上欄14行) (5)「本発明によれば,アルファベット文字と数種の記号により華字入力が可能となり,さらに同一発音同一平仄を有する複数華字から特定華字の選択が可能となり正確に華字入力ができる効果がある。」(2頁右上欄19行〜左下欄2行) なお,引用例1中の特殊な文字は,近似する文字に置き換え,また明白な誤記は訂正して上記のとおり認定した。 2-2 引用例2(特開昭62-47774号公報) (1)「中国語の漢字の発音記号と声調の記号に合わせて中国語の漢字の文字パターンをファイルした漢字文字パターンファイル装置と,ディスプレイとキーボードからなる端末装置と,上記キーボードから発音記号と声調をアルファベット文字および数字で入力された場合,発音記号と声調に合った中国語の漢字を上記漢字文字パターンファイルより呼び出して上記ディスプレイに表示するとともに表示された漢字の内から目的の漢字をキーボードからの入力で選択する情報処理システムとからなる中国語の漢字検索方式。」(特許請求の範囲) (2)「本発明の目的は,一般会話で話している発音記号と声調をキーボードのアルファベットと数字によって入力し,検索することにより一般に使用されている端末(汎用端末)装置を利用して簡単に検索の行なえる中国語の漢字検索方式を提供することにある。」(2頁左上欄3〜8行) (3)「・・・本発明は,中国語の漢字の検索を中国国内で標準語で話されている発音記号と声調(四声)を一般の端末装置のキーボードから入力するだけで簡単に行える。」(2頁右下欄9〜12行) 3 対比 (1) 上記2-1の記載事項を総合すれば,引用例1には, 「アルファベット文字と特殊韻母からなる発音と平仄によって表記される中国語発音表記と華字コードを対応付ける内部テーブルと, アルファベット入力キー,“¨”入力キー,平仄入力キー,変換キー,選択キーを有し,アルファベット文字と特殊韻母と平仄を入力し,変換キーを押下すると,入力された発音表記が後記制御部によって表示部に表示されるようになっている入力部と, 前記入力部により入力されたアルファベット文字と特殊韻母と平仄に対応する華字コードを前記内部テーブルから読み出し制御部に返送する華字変換部と, 入力された中国語発音表記を表示部に表示した後に,前記華字変換部より返送された華字コードに対応した華字を表示部に表示するとともに,前記選択キー及び変換キーを操作することにより選択された華字のみを表示する制御部とを有する華字入力装置。」 の発明が記載されているものと認められる。 (2) そこで,本願補正発明と引用例1に記載された発明とを対比するに,引用例1の「アルファベット文字と特殊韻母からなる発音」,「平仄」,「華字」,「華字コード」,「内部テーブル」,「入力部」,「華字変換部」,「制御部」,「華字入力装置」が本願補正発明の「アルファベット文字および特殊記号文字で表現されるピンイン記号」,「声調記号」,「中国語漢字」,「漢字コード」,「中国語漢字ファイル」,「ピンイン記号等入力部」,「漢字ファイル検索部」,「文字パターンファイル検索部」,「中国語漢字検索方式」にそれぞれ相当する。 (3) したがって,両者は, 「アルファベット文字および特殊記号文字で表現されるピンイン記号と声調記号とによって特定される中国語漢字と漢字コードとの対応情報を格納する中国語漢字ファイルと, 中国語漢字検索処理時に,ピンイン記号を示すアルファベット文字および特殊記号文字と声調記号を表現する字とを入力し,入力した情報を表示装置に表示するピンイン記号等入力部と, 中国語漢字検索処理時に,前記ピンイン記号等入力部により入力されたアルファベット文字および特殊記号文字ならびに声調記号を表現する字に対応する漢字コードを前記中国語漢字ファイルから読み出す漢字ファイル検索部と, 中国語漢字検索処理時に,前記漢字ファイル検索部により読み出された漢字コードに対応する漢字文字パターンを読み出し,その読出しに基づいて検索候補表示情報を表示装置に表示し,その検索候補表示情報に対する選択指定に基づいて検索対象の中国語漢字を確定する文字パターンファイル検索部とを有することを特徴とする中国語漢字検索方式。」 である点で一致し,以下の点で違する。 [相違点1]本願補正発明は,「漢字コードと漢字文字パターンとの対応情報を格納する中国語文字パターンファイル」を有するのに対し,引用例1には,中国語文字パターンファイルについて記載がない点。 [相違点2]本願補正発明の特殊文字記号は,「JIS規格の標準キーボードにおける特殊記号文字」であるのに対し,引用例1では,“¨”入力キーによる特殊韻母である点。 [相違点3]本願補正発明の声調記号は,「数字で表現される」のに対し,引用例1では,平仄入力キーで入力される点。 [相違点4]本願補正発明では,漢字文字パターンを中国語文字パターンファイルから読み出しているのに対し,引用例1では,どこから読み出すかについて記載がない点。 4 判断 上記相違点について検討する。 (1) 相違点1,4について 中国語漢字検索方式において,漢字コードと漢字文字パターンとの対応情報を格納する中国語文字パターンファイルを用いることは周知の事項であり,引用例1においても,華字コードに対応した華字が表示されている以上,引用例1は,漢字コードと漢字文字パターンとの対応情報を格納する中国語文字パターンファイルを有し,漢字文字パターンを中国語文字パターンファイルから読み出していると解するのが,当業者の素直な理解である。 (2) 相違点2,3について 引用例2には,一般に使用されている端末(汎用端末)装置のキーボードから中国語の発音記号と声調を入力する中国語漢字検索方式が記載されている。ここにおいて,汎用端末のキーボードとして,JIS規格の標準キーボードは周知のものである。 そうすると,引用例2には,中国語漢字検索方式において,専用のキーボードを用いるのではなく,JIS規格の標準キーボードにより発音記号と声調を入力することと,そのために,JIS規格の標準キーボードには存在しない声調記号キーの代わりに数字キーを使用することが記載されているということができる。 引用例1,2は,いずれも,発音と声調を入力する中国語漢字検索方式という同一の技術分野に属するものであるから,引用例2記載のJIS規格の標準キーボードを用いるという技術思想を引用例1記載の発明に適用し,JIS規格の標準キーボードに存在しない引用例1の“¨”入力キーと平仄キーをアルファベット文字キー以外のキーに割り当てることは,当業者が容易に着想することである。 その際,平仄キーを数字キーに割り当てることは,引用例2に記載されている。また,“¨”入力キーをアルファベット文字キー以外のどのキーに割り当てるかは,当業者が任意に決定し得る設計的事項であり,本願補正発明のようにJIS規格の標準キーボードにおける特殊記号文字に割り当てることに何らの困難性はない。 (3) 本願補正発明の作用効果についてみても,引用例1,2及び上記周知事項から当業者が容易に予測し得る程度のものであり,格別のものとはいえない。 5 むすび 以上のとおり,本件補正は,特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり,特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成9年9月24日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,同項記載の発明を「本願発明」という。)は,出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。 「漢字コードと漢字文字パターンとの対応情報を格納する中国語文字パターンファイルと, アルファベット文字および特殊記号文字で表現されるピンイン記号と数字で表現される声調記号とによって特定される中国語漢字と漢字コードとの対応情報を格納する中国語漢字ファイルと, 中国語漢字検索処理時に,ピンイン記号を示すアルファベット文字および特殊記号文字と声調記号を示す数字とを入力し,入力した情報を表示装置に表示するピンイン記号等入力部と, 中国語漢字検索処理時に,前記ピンイン記号等入力部により入力されたアルファベット文字および特殊記号文字ならびに数字に対応する漢字コードを前記中国語漢字ファイルから読み出す漢字ファイル検索部と, 中国語漢字検索処理時に,前記漢字ファイル検索部により読み出された漢字コードに対応する漢字文字パターンを前記中国語文字パターンファイルから読み出し,その読出しに基づいて検索候補表示情報を表示装置に表示し,その検索候補表示情報に対する選択指定に基づいて検索対象の中国語漢字を確定する文字パターンファイル検索部と を有することを特徴とする中国語漢字検索方式。」 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例,および,その記載事項は,前記第2の2に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は,前記第2で検討した本願補正発明から「特殊記号文字」の限定事項である「JIS規格の標準キーボードにおける」との構成を省いたものである。 そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記第2の3及び4に記載したとおり,引用例1,2及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1,2及び周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび したがって,本願発明は,引用例1,2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2002-10-31 |
結審通知日 | 2002-11-12 |
審決日 | 2002-11-26 |
出願番号 | 特願平6-339142 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂庭 剛史 |
特許庁審判長 |
小林 信雄 |
特許庁審判官 |
岡 千代子 久保田 健 |
発明の名称 | 中国語漢字検索方式 |
代理人 | 京本 直樹 |